JP3783018B2 - 可撓継手の固定リング - Google Patents

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Description

本発明は可撓継手を固定する固定リングに関するものであり、主として下水道などのマンホールでの配管を接続するための可撓継手を固定する固定リングに関するものである。
下水道では地中に埋めた配管を通じて下水が流れるが、その配管は流れるための僅かな傾斜はあるものの、ほぼ水平に配置されマンホールに繋がっている。そして、その配管とマンホールの接続に当っては、地震や自動車が通過することによる振動吸収、地震による地層変化の吸収、マンホールに設けられた配管用横穴と敷設配管との位置ズレの吸収などを行うために、いわゆる可撓継手を使う。
図5に従来の可撓継手43の施工例を示す。この可撓継手43は一般的にゴム製の円筒状または円錐状の筒形状をしており、その片方を下水配管40の外径に被せて固定リング44で留め、反対側をマンホール41の側壁の横穴42の内径に挿入して可撓継手43の内側から別の固定リング45を使って固定する。後者の固定リング45は一般的に円環状帯材であり、内側から固定リング45を拡張して留める。これにより、可撓継手43とマンホール41の横穴42の内周面との間の隙間を塞いで、接続部での止水性を確保する。この接続部は機能および安全上から、1気圧の水圧をかけた状態で、水平位置はもちろんのこと、配管40が傾いたり芯ズレ状態に移動しても、漏水のないことが求められる。
可撓継手43を配管40外径に接続する場合は、現場以外で前もって接続工事が可能であり、あるいは現場で接続工事を行う場合でも可撓継手43の外側にスペースがあるために、作業がし易く固定の方法としては簡単である。しかし、現場に据え付けたマンホール41の壁面の横穴42の内径に可撓継手43を挿入して固定するためには、内径側に固定リング45を装着して固定せねばならない。そのとき配管40の内径は例えば30cm位の小径のものもあり、工具の使用や作業方法に著しく制限を受ける。また内側にあるため水流およびゴム継手損傷の点から固定リング45の内周側に大きな突起は許されない。そのために、この固定リング45は、コンパクトな形状でありながら、狭いスペースで固定作業ができ、確実に漏水を起こさないものが求められる。
固定リング45に関しては、これまで様々なタイプのものが提案されてきたが(例えば特許文献1〜3参照)、その一例を図6に示す。これは、適切な工具を使用して、円環状帯材の固定リング50の両端50aと50bの間を広げて円環の径を拡大し、そこに出来た隙間にスペーサ51を挿入して拡大径を維持固定するものである。
これは簡単な構造ではあるが、径に合わせた各種寸法のスペーサ51を用意せねばならない。また加工したマンホール横穴42の実寸に合わせるために複数の寸法のスペーサ51を組み合わせて使うこともあるが、狭い継手内径寸法の中に工具があり、更に狭くなっているところでは、組み合わせたスペーサ51を狭い隙間に挿入することは容易にはできない。
図7は別の従来技術である。これは留め具となる円環状帯材の固定リング55の両端55aおよび55bの間に屈曲自在なV字形状の固定金具56の両端を嵌め込みまたは溶接したものである。取り付けに当っては、この固定リング55を可撓継手の内側に挿入して固定位置に置いた後、固定金具56の頂点にあたる部分と円環の180°対向する位置との間にジャッキなどの拡張工具を据え付けて、その間隔を押し広げることにより固定金具56を押し潰して円周方向寸法を大きくし、固定リング55を可撓継手内周面に押し付けて固定するものである。
この方法は構成部品が少ないという利点があるが、マンホール穴の寸法変化に対応できない。すなわち、数多くマンホール横穴42をあけるに従い工具が磨耗し、それに対応して横穴42の穴径が小さくなるので、そのときの最小寸法に合わせておく必要があり、横穴42が大きいときと小さいときとでは嵌め合いの状態に差を生じる。また、一種類の可撓継手内径寸法にしか対応できず、僅かな称呼寸法の違いでもそれぞれの寸法の固定リング55を準備せねばならない。
図8は更に別の従来技術である。この従来技術は、拡張する部分を二つのテーパスライド63,64で構成している。すなわち、円環状帯材の固定リング60の両端部60aと60bに相対する二つの面がテーパとなっているテーパスライド63,64を設け、その間にそのテーパと角度を合わせたテーパスペーサ61,62を配置し、テーパスペーサ61,62を貫通したねじ65を締め付けることにより、テーパスペーサ61,62の間隔を狭め、それに伴いテーパスライド63,64のついた両端部60aと60bを反対側に押し広げて可撓継手を固定するものである。
この方法は前述の構造に比べ複雑であるが、無段で固定リング60の両端部60aと60bを拡張固定できるという利点がある。しかし、拡張部分の軸方向寸法が大きくなるという問題があり、また、無段と雖も調整できる寸法の範囲は制限される。
特開平11−13078号公報 特開平10−195900号公報 特開平9−144043号公報
よって本発明の課題は、前述したような制限を受けることなく、すなわち、コンパクトな形状・構造でありながら、広い範囲に亘って無段階で調整・固定できる可撓継手の固定リングを提供することにある。
前記課題を解決するため、本発明に係る可撓継手の固定リングは、管接続用可撓継手の内周面または外周面に装着される円環状帯材を有する固定リングであって、前記帯材の両端部を重ねた状態で固定すべく前記帯材の一端部内周面側または外周面側にあって前記帯材の内周面または外周面と所定間隙をあけて鋭角を成して対向するテーパ板部を前記帯材の一端部に固定すると共に、前記所定間隙内に1本のローラを前記固定リングの円周方向に転動自在に収納し、前記帯材の他端部を、前記帯材の一端部と前記ローラとの間に挿入したことを特徴とする(請求項1)。また前記ローラを、前記帯材の一端部と前記テーパ板部との間の所定間隙が狭まる方向にばねで附勢したことを特徴とする(請求項2)。また前記テーパ板部を前記帯材の一端部に対してねじで締付け移動可能にしたことを特徴とする(請求項3)。
前記テーパ板部は、図5の固定リング45のように可撓継手43の内径に装着する場合は帯材の内周面側に固定するが、固定リング44のように可撓継手43の外径に装着する場合は帯材の外周面側に固定する。
本発明は以上の構成により、
1.円環状帯材を拡径または縮径する簡単な操作で可撓継手の内周面または外周面に固定リングを簡単かつ短時間で装着できる。
2.固定リングの直径は円環状帯材の長さが許す範囲内で無段階に調節可能であり、一種類の固定リングで多種類の穴内径または管外径に可撓継手を固定することができる。
3.円環状帯材にテーパ板部とローラを付加するだけで発明の基本的に構成可能であるから、固定リングを低コストかつ薄型コンパクトにでき、特にスペース的に制約される可撓継手内径側に装着する場合に便利である。
4.円環状帯材を縮径または拡径させた後の帯材の戻りの力を利用して、ローラをテーパ板部に食い込ませるため、固定力が非常に確実かつ強固である。
本発明を可撓継手の内径側に装着する場合の基本原理を図1に示す。同図より明らかなように、鋼板から製作した円環状帯材1の一端部1aの内周側に、他端部1bが押し込まれる方向(円環径が小さくなる方向)に狭くなるようなテーパ空間を構成するテーパ板部2を固定的に設ける。テーパ板部2と帯材他端部1bとの間に、ローラ3を固定リングの円周方向に転動自在に配置する。ローラ3は適切な方法によりテーパ板部2および帯材他端部1bに対して接触を維持する。テーパ板部2と帯材1の一端部1aとが成す角度は、帯材他端部1bが押し込まれる力でローラ3が強力にテーパ板部2および帯材他端部1bに食い込むようにするため、好ましくは3〜25°の範囲とする。この角度範囲はさらに好ましくは5〜20°であり、最も好ましいのは8〜15°である。帯材1、テーパ板部2およびローラ3の材質は耐腐食性のあるステンレス製とするのがよい。
以上のように構成した固定リングは、最初は帯材他端部1bが最も押し込まれた位置(内径最小)にある。固定リングを可撓継手の内径側に挿入し、ジャッキ等の適切な工具を用いて固定リングを拡径して帯材他端部1bを相対的に引き出す。このときローラ3はテーパ板部2と離れる方向に遊転するから、帯材他端部1bは容易に図1で左方向に引き出され固定リングが拡径される。
一方、帯材他端部1bの引き出しを完了した後、可撓継手が縮径する力で帯材他端部1bが図1で右方向に押し込まれる場合、他端部1bとローラ3との間には摩擦が作用するので、ローラ3は図1で反時計回りに回転しようとし、他端部1bとテーパ板部2との間に食い込んで動かなくなるので、そのままの位置に保持固定される。すなわち、帯材1の他端部1bは固定リングの拡径方向には移動可能であるが、逆の縮径方向にはまったく移動不能なのである。
なお、以上の説明においては、固定リングを可撓継手の内径側に設けた場合について記述したが、向きを変えれば可撓継手の外径側の固定リングとしてもまったく同じ原理で使用することができる。この場合はテーパ板部2を固定リングの外周側に配置することは勿論である。このとき、帯材1の他端部1bは固定リングの縮径方向には移動可能であるが、逆の拡径方向にはまったく移動不能となる。
図2(A)(B)は本発明の第一の実施例を示したものである。この例では、断面L字状(正面視では図2(B)のようにコ字状)のテーパ板部2aを帯材一端部1aに固定する。帯材他端部1bとテーパ板部2aとの間にローラ3を介在させ、かつテーパ板部2aと一体のばね支持部2dに弓形の板ばね4の中央部背面を固着させ、この板ばね4の両端部で常時ローラ3の両端部を押圧附勢してローラ3とテーパ板部2aおよびローラ3と帯材他端部1bとの接触を維持する。一度組み付けたら動かさないような使用においては、適切な手段でローラ3を押し込んで、帯材他端部1b、テーパ板部2aおよびローラ3間の確実な接触を保つことができれば、必ずしも板ばね4を使う必要はない。板ばね4に代えて他の任意の種類のばねを使用可能なことは勿論である。
図3(A)(B)は本発明の第二の実施例を示している。この実施例では帯材一端部1aに箱状金具5を傾斜状態で溶接等で固定し、この箱状金具5の内部にローラ3と矩形板状の可動テーパ板部2bを収納し、可動テーパ板部2bをねじ6で締付け可能にしている。帯材他端部1bは箱状金具5の前側スリット5aから挿入し後側スリット5bから引出す。この実施例は帯材他端部1bの引出し量を一度決めたら変化させない場合に有効であり、帯材他端部1bを引き出した後にねじ6で可動テーパ板部2bをローラ3に押圧する方向に締め付けて固定する。尚、帯材他端部1bを帯材一端部1aに重ね合せてねじだけで留める固定方法と違う点は、ねじだけで留める場合は帯材他端部1bの押し込み力(可撓継手に対する固定力を緩ませる力)がねじ6で押さえる力を超えると帯材他端部1bが抜けてしまうのに対し、前記の如く可動テーパ板部2bを使用する場合には帯材他端部1bがローラ3と帯材一端部1aとの間に更に食い込むので、締結がさらに強化される点である。
図4(A)(B)は本発明の第三の実施例を示している。この実施例は、第二実施例と考え方は同じであるが、テーパ板部2cを円環状帯材1と溶接等で固定せず、帯材一端部1aに傾斜固定したねじ10をテーパ板部2cのばか穴11に挿入し、ナット12をねじ10に螺合してテーパ板部2cを締付け、ローラ3をテーパ板部2cで帯材他端部1bに押圧する。この際、テーパ板部2cの端部13は帯材一端部1に当接して支点を構成する。帯材他端部1bの中央には図4(C)のようにねじ10を避けるために長溝14が所定長さにわたって形成される。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した技術的思想に基づき種々の変形が可能である。例えばテーパ板部2a〜2cの内面、ローラ3の外周面および帯材の他端部1bのローラ3と接触する面を、摩擦を増加させるため粗面あるいはローレット面としてもよい。
本発明に係る可撓継手の固定リングの基本原理図である。 本発明のローラの第一実施例であって、(A)は要部断面図、(B)は(A)のB−B線矢視断面図。 本発明のローラの第二実施例であって、(A)は要部断面図、(B)は(A)のB−B線矢視断面図。 本発明のローラの第三実施例であって、(A)は要部断面図、(B)は(A)のB−B線矢視断面図、(C)は帯材の他端部の平面図。 従来の可撓継手の施工例を示すマンホールの断面図。 可撓継手の従来の固定リングの要部斜視図。 可撓継手の従来の固定リングの要部斜視図。 可撓継手の従来の固定リングの要部斜視図。
符号の説明
1 円環状帯材
1a 一端部
1b 他端部
2 テーパ板部
2a テーパ板部
2b 可動テーパ板部
2c テーパ板部
3 ローラ
5 箱状金具
5a 前側スリット
5b 後側スリット
6 ねじ
10 ねじ
11 穴
12 ナット
14 長溝

Claims (3)

  1. 管接続用可撓継手の内周面または外周面に装着される円環状帯材を有する固定リングであって、前記帯材の両端部を重ねた状態で固定すべく前記帯材の一端部内周面側または外周面側にあって前記帯材の内周面または外周面と所定間隙をあけて鋭角を成して対向するテーパ板部を前記帯材の一端部に固定すると共に、前記所定間隙内に1本のローラを前記固定リングの円周方向に転動自在に収納し、前記帯材の他端部を、前記帯材の一端部と前記ローラとの間に挿入したことを特徴とする可撓継手の固定リング。
  2. 前記ローラを、前記帯材の一端部と前記テーパ板部との間の所定間隙が狭まる方向にばねで附勢したことを特徴とする請求項1の可撓継手の固定リング。
  3. 前記テーパ板部を前記帯材の一端部に対してねじで締付け移動可能にしたことを特徴とする請求項1の可撓継手の固定リング。
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