JP3782675B2 - 超音波流量計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は受信信号の増幅器におけるゲイン制御方式を改良した超音波流量計に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3により従来の超音波流量計の動作要領とそのゲイン制御方式を示し、以下その概要を説明する。
【0003】
同図において符号1は直管1aの両端に垂直な流体入口1bと同出口1cを有する流路用管体、2aおよび2bは直管1aの両端に設けた1対の超音波振動子を示す。3は切替器であり、励振パルス源4と受信信号の増幅器5とを前記振動子2aまたは2bへ交互に切り替えて接続するが、その切替信号についてはここでは触れない。
【0004】
増幅器5は入力端子5a、出力端子5bの他に、その増幅ゲインを制御するためのゲイン制御端子5cを備える。6は従来のデータ処理装置であり、増幅器5から出力される受信信号を演算処理して流量出力を得るための流量測定部6aを有する。流量測定方式としては伝播時間差方式や位相差方式が知られているが、ここでは特に触れない。7はピーク検出回路であり、受信信号の大きさを表す量としてそのピーク値を検出するためのピーク整流ダイオード7a、平滑コンデンサ7b等を備えている。
【0005】
ピーク検出回路7の出力はデータ処理装置6のゲイン制御部6bに送られ、同制御部6bに予め設定されているピーク設定値と比較されて受信波形の大きさが一定になるように増幅器5のゲイン制御端子5cへの電圧が制御される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら超音波流量計における従来のゲイン制御方式には次のような技術的問題が生じる。測定流体中に夾雑物たる気泡が含まれている場合には、気泡によって超音波信号が減衰し、したがって受信信号の大きさも図4に示すように変動する。
なお、同図において実線は気泡がない場合の受信波形、破線は気泡による減衰を受けた受信波形である。また、受信波形におけるピーク値Pは図5に示すように経時的に気泡の量に応じて減少あるいは消失する。
【0007】
ところが従来のゲイン制御方式では、気泡の混入によってピーク値が変動するので、いわゆるハンチング現象によって増幅器5へのゲイン制御信号も変動し、過大なゲインによって波形が飽和して不安定な受信波形になりやすい。
【0008】
また、上述のような波形の飽和を避けるためにゲインを一定の値に固定すると、流体の種類や温度によっては受信信号が小さく、S/N比が低い状態のままで測定しなければならない場合が生じる。
【0009】
従来の超音波流量計において、受信信号の大きさに依存せずに受信信号から流量を求めることができる計測方式として、一般にゼロクロス式や相関式あるいは位相差式が知られており、流体中に気泡が含まれて受信信号の大きさが変動する場合にはこれらの方式を利用するのが有利であるが、これらの方式を適用したとしても、受信波形が不安定では良好な測定、すなわち安定した正確な流量測定が困難になる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明に係る超音波流量計は、流路用管体の流体の流れ方向上流側と下流側における流路用管体の外側にそれぞれ取り付けた1対の超音波振動子と、これら1対の超音波振動子の送信、受信を交互に切り替える切替器と、流体内を伝播する超音波により受信側の超音波振動子に生じる受信信号を増幅する増幅器と、増幅された受信信号を処理して流量信号を出力するデータ処理装置を備え、前記増幅器は増幅ゲインの制御端子を有し、この制御端子に入力される制御信号に基づいて前記増幅ゲインの調整が行われ、前記データ処理装置はアナログ・デジタルコンバータ、プロセッサおよびメモリを備え、複数回の送、受信に伴う各受信信号中の少なくともピーク値を含むアナログデータよりなる波形データを、前記アナログ・デジタルコンバータによりデジタル変換して前記メモリにて保持するとともに、前記プロセッサは、所定の時間間隔毎のピーク値を、その前の時間間隔におけるピーク値と比較してピーク値の変化量を算出し、この変化量が予めプロセッサに設定されたしきい値を超えない場合には、現在の時間間隔内におけるピーク値と予め設定されたピーク設定値とを比較し、比較結果に基づいて前記増幅器のゲイン制御端子へ制御信号を送り、増幅器の出力信号中におけるピーク値がピーク設定値と同程度となるように制御され、前記ピーク値の変化量が前記しきい値を超える場合には、増幅器のゲイン制御動作が中止されるように構成したものとしてある。
【0011】
また本発明の実施様態は、前記プロセッサを、増幅器のゲイン制御動作の際にゲインの増加速度と減少速度とを異ならしめる構成のものとしてある。
【0012】
【実施例】
以下、図1に示す具体例に基づいて本発明に係る超音波流量計の構成およびそのゲイン制御方式の詳細について説明する。
なお、同図において符号1〜5は図3に示した従来のものと同じ構成であるので、説明は省略する。
【0013】
本発明におけるデータ処理装置8は、例えば数10MS/s程度のサンプリングレートと、10〜12ビット程度の分解能を有するアナログ・デジタルコンバータ(以下、ADCと称す)9と、クロック周波数が数10MHzのプロセッサ(以下、CPUと称す)10と、メモリ11等を備え、増幅器5によって増幅された受信信号をこのデータ処理装置8により演算処理して流量信号を出力し、また、被測定流体中における気泡や固形粉末等の夾雑物の有無に拘わらず、データ処理装置8により、前記増幅器5のゲインを適切に制御できるようにしてある。
【0014】
まず、受信側の振動子2aまたは2bから切替器3および増幅器5を経てデータ処理装置8へ送られた受信信号(アナログ波形信号)は、ADC9によってサンプリングされ、電圧値−時刻対のデジタルデータに変換されてメモリ内に格納される。
【0015】
前記CPU10はこのデジタルデータをゼロクロス式、相関式あるいは位相差式等の方式により演算処理して流量信号を出力するが、ここでは演算処理の詳細については触れない。
【0016】
また、CPU10は上記演算処理と並行して所定の時間間隔毎のピーク値と前回の時間間隔におけるピーク値との変化量を算出し、この変化量があらかじめCPUに設定した或るしきい値を超えない場合には流体内に気泡がないものと判断してこの時点のピーク値と予めCPUに設定されたピーク設定値とを比較し、比較結果に応じて増幅器5のゲインを制御する。
【0017】
より詳しくは、前記変化量がしきい値を超える場合には流体内に気泡があるものとして増幅器のゲイン制御動作を中止し、その結果増幅器のゲインは変更されず、気泡による誤制御は起こらず、次回の時間間隔において気泡が無ければ正常なゲイン制御動作が行われる。
したがって液温や液種がゆるやかに変化する場合には誤制御を起こすことなく十分対応することができる。
【0018】
前記ゲイン制御においては、比較結果の正負に応じて増幅器5のゲイン制御端子5cにゲイン制御信号を送って増幅器をアナログ的あるいはデジタル的に操作し、増幅ゲインを修正、操作する。数値例を示せば、1回あたりのゲイン増幅量は1〜2dB程度とする。
【0019】
本実施例の制御では、次の時間間隔に達するまでは開ループ状態が維持されるが、ゼロクロス式、相関式あるいは位相差式の超音波流量計では受信信号の大きさに依存せずに流量計測が可能であるから、増幅器5から出力される受信信号中のピーク値がピーク設定値と正確に合致していなくても大きな問題はない。
【0020】
また、本実施例の制御では長期的には閉ループ制御が達成されるので、流体中に気泡が含まれないときの受信信号のピーク値は流体の種類や温度が変わっても次第に設定値に到達することになる。
【0021】
さらに、前記時間間隔の生成は一般的にはタイマにより周期的に行えばよいが、運転者の要求によるいわゆるオンデマンド式にすることもでき、この場合には運転者による押しボタンの動作をCPU10に認識せしめて、このボタン操作後に上述のゲイン制御動作を所定回数繰り返した後に制御を終了するよう構成する。
【0022】
次に、本発明に係る超音波流量計のゲイン制御方式において、増幅器5の増幅ゲイン制御の具体例について説明する。
この具体例は、上記増幅器のゲインを制御する際に、ゲインの増加速度と減少速度とを異ならしめるものである。
【0023】
一般に受信信号の大きさに依存しない流量測定方式においては波形情報を利用するので、受信波形の著しい変化、例えば波形飽和は精度確保の上から好ましくない。したがって液温の低下により検出器出力が低下して増幅器5のゲインを増加させる必要が生じた場合には、ゲインの増加速度を遅くして飽和領域に近づかないようにし、飽和領域に入った場合にはゲインを急速に減少させる。
【0024】
例えばゲインを増加する際には、所定の時間間隔1回あたり1〜2dB程度増加せしめ、減少させる時は増加の際よりも大なる数dB低下させる。
別の方法として、増加時の制御時間間隔を減少時の制御時間間隔の数倍にすることも有効である。
【0025】
上述したゲイン制御方式を適用する本発明の超音波流量計における検出部の構成としては、図1に示すように流路用管体1の直管1aの両端に超音波振動子2a、2bを設ける構成のほかに、例えば図2に示すように超音波振動子12a、12bを直管よりなる流路用管体13の外周に設けるいわゆるクランプオン形とする場合もあり、検出部を図1のように構成すると同様に適用できて良好な結果が得られる。
【0026】
なお、図2においては超音波振動子12a、12bを流路用管体の同じ側(図2では上側)に設けてあるが、流路用管体に対して対向する側に設ける場合もある。
【0027】
【発明の効果】
本発明に係る超音波流量計のゲイン制御方式によれば、増幅器のゲインを流体中に含まれる気泡等の夾雑物の量に拘わらずに適切に制御することができ、流体の種類や液温の変動に対しても高いS/N比で流量計測を行うことが可能であり、したがって本発明の超音波流量計は常に正確な流量測定を安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超音波流量計のゲイン制御方式の構成図。
【図2】本発明を適用する検出部の他の様態を示す一部破断正面図。
【図3】従来の超音波流量計のゲイン制御方式の構成図。
【図4】従来の超音波流量計におけるゲイン制御方式における受信波形を示す図。
【図5】従来の超音波流量計におけるゲイン制御方式におけるピーク値を示す図。
【符号の説明】
1 流路用管体
2a、2b 超音波振動子
3 切替器
4 励振電圧源
5 増幅器
6 従来のデータ処理装置
7 ピーク検出回路
8 本発明におけるデータ処理装置
9 アナログ・デジタルコンバータ(ADC)
10 プロセッサ(CPU)
11 メモリ
12a、12b 超音波振動子
13 流路用管体
Claims (2)
- (a) 流路用管体の流体の流れ方向上流側と下流側における流路用管体の外側にそれぞれ取り付けた1対の超音波振動子と、これら1対の超音波振動子の送信、受信を交互に切り替える切替器と、流体内を伝播する超音波により受信側の超音波振動子に生じる受信信号を増幅する増幅器と、増幅された受信信号を処理して流量信号を出力するデータ処理装置を備え、
(b) 前記増幅器は増幅ゲインの制御端子を有し、この制御端子に入力される制御信号に基づいて前記増幅ゲインの調整が行われ、
(c) 前記データ処理装置はアナログ・デジタルコンバータ、プロセッサおよびメモリを備え、複数回の送、受信に伴う各受信信号中の少なくともピーク値を含むアナログデータよりなる波形データを、前記アナログ・デジタルコンバータによりデジタル変換して前記メモリにて保持するとともに、
(d) 前記プロセッサは、所定の時間間隔毎のピーク値を、その前の時間間隔におけるピーク値と比較してピーク値の変化量を算出し、この変化量が予めプロセッサに設定されたしきい値を超えない場合には、現在の時間間隔内におけるピーク値と予め設定されたピーク設定値とを比較し、比較結果に基づいて前記増幅器のゲイン制御端子へ制御信号を送り、増幅器の出力信号中におけるピーク値がピーク設定値と同程度となるように制御され、前記ピーク値の変化量が前記しきい値を超える場合には、増幅器のゲイン制御動作が中止されるように構成してなる超音波流量計。 - 請求項1に記載のプロセッサが、増幅器のゲイン制御動作の際にゲインの増加速度と減少速度とを異ならしめることを特徴とする超音波流量計。
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