JP3781365B2 - 凍結鋳型の造型方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、凍結鋳型の造型法に関し、特に塗型処理を含む凍結鋳型の造型方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、鋳物砂よりなる鋳型の条件として、溶融金属の鋳造を進めるのに必要な型の強度保持と、鋳型形成に使用されている砂の回収と再生使用が要求されている。
鋳型に充分な強度を付与するためには、鋳型を焼成するかまたは別の物質を導入して化学結合または例えばCO硬化を起させることにより砂型の硬化を促すことが知られている。これらの方法は鋳型強度に所望の効果を与えるものの鋳物砂の回収再生は不可能になる。
上記問題の解決のため、下記内容を持つ提案が特公昭56−30107号公報に開示されている。
【0003】
則ち、上記提案では、ベンナイト等の粘土を粘着剤とするとともに、硅砂に対し所定量の水分を添加混合させた鋳物砂を使用する構成とし、該鋳物砂を混練造型した生砂型を凍結させることにより凍結鋳型を形成したものである。
則ち、鋳型の凍結により鋳造時に所用の強度を持たせるとともに、鋳物砂の効率的再生使用を可能としたものである。
ところで、上記提案の場合、高い強度を得るため、通常の0℃にて徐々に冷却するのではなく、過冷却の状態で急速凍結することが必要で、窒素などの液化ガスもしくはドライアイスなどの冷媒が用いられ、一般的に液体窒素溶液中への鋳型の浸漬が主として使用されてきた。
上記液体窒素使用の場合、鋳型が−100℃以下になることもあって作業者に凍傷を強いる危険な作業を余儀なくされていた。
また、凍結鋳型が大気と接触すると過飽和な水蒸気が急速に鋳型に付着して鋳型面に霜付き現象を起し鋳造欠陥の原因形成の問題を内蔵していた。
【0004】
上記問題解決のため、特開平11−138235号公報には下記提案が開示されている。
則ち、上記提案によれば、冷凍機により冷却された−3℃以下の低温空気を鋳型内を水分が移動しない程度の差圧でファンにより吸引もしくは加圧し鋳物砂からなる鋳型内に流通させて鋳型を凍結させる。
鋳型内を流通した空気は冷凍機の熱交換器で冷却して再び鋳型に送り、冷却空気を系内で循環させる。則ち、前記冷凍機により一度冷却された空気が外界と遮断された系内を循環させることにより鋳型内の急速冷却を可能とし、高強度の凍結鋳型を得ている。また、霜付きが起きる作業である型抜き作業、中子作業、型合わせ作業などを上記冷凍機によって除湿された庫内にて、凍結鋳型の凍結処理の後行ない前記霜付きを最小限に抑えた雰囲気下で行い、更に冷凍機によって0℃以下に冷却された冷凍庫内にて凍結鋳型を保管する。また、鋳型の開口部に消失性の蓋をして霜付きを防ぐ。このことにより、鋳型を効率よく凍結でき、無駄を防止するともに鋳肌の良好な鋳造品を得るようにしている。
【0005】
ところで、前記塗型は、鋳型や中子の表面に行なう、刷毛塗り、どぶ付け、スプレーなどにより行なう塗型剤の塗布操作を指しているが、約1450℃の高温の湯の注湯に際しては鋳型の表面は溶湯の高熱に曝され、破壊されやすい状態に置かれる。これを防ぐため鋳型の表面に塗装を行い、鋳肌の改善などによる鋳造欠陥の防止、焼付き防止などの機能を持たしている。
【0006】
ところが、凍結鋳型に上記塗型を行なう場合、本出願人等のテストの結果からも下記問題点を内蔵して居ることが分かり、下記問題点を解決した塗型の実現が、凍結鋳型にとっては、解決すべき最大課題と考えられる。
【0007】
なお、下記問題点を列記すると、
a、水溶性塗型の場合は、塗型の水分が塗布時に凍結するため、塗型に斑ができる。
b、水性塗型の場合は、塗型の水分がそのまま凍結するため、鋳型表面の水分量が多くなり、水分による「きらい」が出る。また、水分によるピンホールなどが発生することもある。
c、アルコール塗型及び水性塗型ともに、アルコール若しくは水分が凍結した砂解凍するため、塗型面付近の表面安定性が悪くなる。このため、塗型の「すくわれ(鋳物表面にできる粗い不規則な金属の板状突出欠陥)、砂かみ(鋳物表面近くにできる塊状・板状の砂の捲き込み)」などの欠陥が発生する。
d、塗型を行なわないで、鋳込みを行なうと、溶湯の熱により解凍されるため、砂が流されて「砂かみ、洗われ(金属の突出欠陥)」などの欠陥が発生する。また、砂の粒度が粗いと焼付き(砂の一部が溶けて鋳物表面に混ざりこんだ状態)欠陥を生じる。
注湯の際は、約1450℃の高温溶融金属が砂型の中に流入され、前記砂の焼付きを起し金属と溶着する欠陥を発生する。塗型は少なくとも上記鋳造欠陥の発生防止に必要である。
そして、上記事項から見ても、塗型剤には少なくとも水性、水溶性、アルコール性の液状塗型剤の使用には問題があること、及び形成された塗膜は緻密、且つ強靭な密着薄膜が必要であることが理解される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、
先に開発された凍結鋳型の前記塗型に対する問題を解決し、さらに有効な鋳型形成を可能とするべく、凍結鋳型に対して表面安定度の高い均一塗型層形成を可能とする凍結鋳型の造型方法の提供を目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明の凍結鋳型造型方法は、2〜12重量%の水分を混合させた鋳物用砂を用いた凍結鋳型を低温除湿雰囲気内での急速冷却処理後についで、前記低温除湿雰囲気を維持した状態で前記凍結鋳型をアースさせ地絡状態に置くとともに、骨材にフラン、フェノール、水ガラス、アクリル系樹脂、酢ビ系樹脂、ゴム系樹脂より選択した加熱により強度を失わない高温強度を有するバインダが添加混練された帯電塗型剤を前記凍結鋳型の内面に吹き付け、該凍結鋳型の内面に帯電塗型剤を電着させる静電塗装法による塗型を行なうようにしたことを特長とし、好ましくは骨材に、フラン、フェノール、水ガラス、アクリル系樹脂、酢ビ系樹脂、ゴム系樹脂より選択した加熱により強度を失わない高温強度を有するバインダを0.2〜10重量%の範囲内で添加混練された塗型剤を帯電させ、前記凍結後の凍結鋳型を冷凍機によって形成された低温除湿雰囲気下において、枠を介してアースさせ地絡状態に置くとともに、前記帯電塗型剤を前記凍結鋳型の内面に吹き付け、均一厚みを持つ塗型皮膜を形成させる工程とよりなることを特長とする。
【0010】
前記本発明は、塗型に従来の水溶性塗型、水性塗型、アルコール塗型に代わる粉体塗型剤を帯電させ被塗体の凍結処理後の凍結鋳型内面に電着させる静電塗装方法を使用するようにしたもので、該塗装方法の使用により塗型剤の砂粒子の裏側塗装を可能とするとともに、クーロン力による緻密で且つ強靭な均一薄膜の密着形成を可能としたものである。
【0011】
そして、本発明は、経済的且つ環境汚染を防止する塗型の形成を可能としたものである。
【0012】
また、前記凍結鋳型造型方法における静電塗装法は、
塗型剤が、硅砂、ジルコン、アルミナ、ムライト、電融シリカ、クロマイト、酸化鉄、黒曜石、黒鉛、雲母等の骨材のいずれか一つ若しくは幾つかの混合物からなる骨材に対して0.2〜10重量%のバインダを添加し、該バインダは加熱により強度を失わない樹脂による構成が好ましい。
【0013】
前記発明は、本塗型方法における塗型剤の特定について記載したもので、適量のバインダを添加した耐火性粉体よりなる構成について記載してある。
【0014】
また、前記凍結鋳型造型方法における塗型は、
低温除湿雰囲気内における凍結鋳型の凍結処理後についで、同雰囲気内で行なうようにした方が好ましい。
【0015】
前記発明は、本発明の塗型を当該凍結鋳型の凍結処理をした後の低温除湿雰囲気で行なうようにした霜付き防止手段について記載したものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明による凍結鋳型の造型方法の一実施例について説明する。
図1に、本発明の凍結鋳型の造型方法の凍結鋳型に対する静電塗装による塗型を行なう情況を示してあり、表1には図1の静電塗装に使用した塗型剤の配合の一例を示してある。
【表1】
Figure 0003781365
【0017】
上記表1に示す骨材( シリカ:60重量%、ジルコン:15重量%、黒曜石:5重量%、クロマイト:10重量%、酸化鉄:10重量%、計100重量% )加熱により強度を失わない高温強度を有するバインダを0.2〜10%の範囲(表1ではアクリル樹脂:2重量%)内で添加混練し、骨材にバインダコーティングされた状態で、図1に示す静電塗装機により凍結させた鋳型に塗型テストを行なった。
【0018】
バインダは、加熱により強度を失わないアクリル系樹脂を骨材に2.0重量%添加しコーティングしたものを図1に示す静電塗装に使用した。
硅砂に水3.5%を添加し、混練した鋳物砂を特開平11−138235号公報記載の提案(本出願人等の出願による)に示す凍結鋳型の製造法により凍結を行なった。
【0019】
まず、冷凍機により形成された−3℃以下の低温空気を当該鋳型内の水分が移動しない程度の差圧でファンにより吸引もしくは加圧して鋳物砂からなる鋳型内に流通させて鋳型を凍結させる。
ついで、前記鋳型内を流通した前記空気を冷凍機の熱交換器で冷却して再び鋳型に送り、冷却空気を系内で循環させる。そして、前記冷凍機により一度冷却された空気が外界と遮断された系内を循環させることにより、鋳型内の急速冷却を可能とし、高強度の凍結鋳型を得る。
【0020】
次に図1に示す静電塗装機の帯電装置11内に塗型剤10cを充填し、該塗型剤10cを負に帯電させた後、前記凍結直後の凍結鋳型10を前記冷凍機によって形成された低温除湿雰囲気に枠10aを介してアースさせ地絡状態に置くとともに、ノズル12内に前記帯電装置より帯電塗型剤を導入し加圧ガス14により凍結鋳型の内面に吹き付け、均一厚みを持つ塗型皮膜10bを形成させる。上記塗型の終了した凍結鋳型に約1400〜1450℃の球状黒煙鋳鉄の溶湯を鋳込み、各種の欠陥の模様を観察した。
【0021】
上記テストにおいて、バインダ量が0.2重量%以下の場合は、塗膜強度がなく溶湯により塗型が流される問題がある。
また、バインダ量が10重量%以上の場合は、溶湯熱によるバインダの分解生成物が多くなりガス欠陥などを発生する問題がある。
また、酢酸ビニルなどの高温強度のないバインダの場合は、溶湯により流される問題が発生する。
また、高温強度を若干なりとも有するバインダの場合は、塗型が溶湯により流されることがなかった。
なお、高温強度を有するバインダとしては、フラン、フェノール、水ガラス、アクリル系樹脂、酢ビ系樹脂、ゴム系樹脂を挙げることができる。
【0022】
上記実施例によれば、凍結鋳型の塗型に静電塗装を用いることにより、均一で表面安定性の高い塗型層を形成することができ、焼付き、砂の洗われ、砂かみなどの鋳造欠陥を排除することができる。
【0023】
この結果、静電塗装された塗型皮膜は鋳込み後も完全に残って居り、焼付きや鋳型水分によるピンホールなどの欠陥の発生も見られなかった。
なお、表1に示す塗型剤成分において、加熱により強度を失うバインダ、酢酸ビニール2%を用いて同様の試験を行なった。この場合は塗型皮膜が一部脱落しこの部位から焼付きが生じていた。
表1の塗型剤成分を水溶性塗型に改良して刷毛塗りを行なったが、この場合は均一皮膜を持つ塗型は得られないことは勿論であるが、鋳造後の塗型水分によるピンホールの発生等の問題が発生した。
【0024】
【発明の効果】
静電塗装と凍結鋳型を組み合わせた本発明によれば、凍結鋳型に簡単、且つ均一な塗型皮膜を持つ塗型を形成することができる。
この結果、焼付き、砂の洗われ、鋳型水分によるピンホールなどの鋳造欠陥の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の凍結鋳型の造型方法の凍結鋳型に対する静電塗装による塗型を行なう情況を示す図である。
【符号の説明】
10 凍結鋳型
10a 枠
10b 塗型皮膜
10c (帯電)塗型剤
12 ノズル
14 加圧ガス

Claims (3)

  1. 2〜12重量%の水分を混合させた鋳物用砂を用いた凍結鋳型を低温除湿雰囲気内での急速冷却処理後についで、前記低温除湿雰囲気を維持した状態で前記凍結鋳型をアースさせ地絡状態に置くとともに、骨材に、フラン、フェノール、水ガラス、アクリル系樹脂、酢ビ系樹脂、ゴム系樹脂より選択した加熱により強度を失わない高温強度を有するバインダが添加混練された帯電塗型剤を前記凍結鋳型の内面に吹き付け、該凍結鋳型の内面に帯電塗型剤を電着させる静電塗装法による塗型を行なうようにしたことを特長とする凍結鋳型の造型方法。
  2. 骨材に、フラン、フェノール、水ガラス、アクリル系樹脂、酢ビ系樹脂、ゴム系樹脂より選択した加熱により強度を失わない高温強度を有するバインダを0.2〜10重量%の範囲内で添加混練された塗型剤を帯電させ、前記凍結後の凍結鋳型を冷凍機によって形成された低温除湿雰囲気下において、枠を介してアースさせ地絡状態に置くとともに、前記帯電塗型剤を前記凍結鋳型の内面に吹き付け、均一厚みを持つ塗型皮膜を形成させる工程とよりなることを特長とする請求項1記載の凍結鋳型の造型方法。
  3. 前記静電塗装法は、塗型剤が、硅砂、ジルコン、アルミナ、ムライト、電融シリカ、クロマイト、酸化鉄、黒曜石、黒鉛、雲母等の骨材のいずれか一つ若しくは幾つかの混合物からなる骨材に対して0.2〜10重量%のバインダを添加し、該バインダはフラン、フェノール、水ガラス、アクリル系樹脂、酢ビ系樹脂、ゴム系樹脂からなることを特長とする請求項1若しくは2記載の凍結鋳型の造型方法。
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