JP4774539B2 - 凍結鋳型及びその造型方法 - Google Patents
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Description
鋳型に充分な強度を付与するためには、鋳型を焼成するかまたは別の物質を導入して化学結合または例えばCO2硬化を起させることにより砂型の硬化を促すことが知られている。これらの方法は鋳型強度に所望の効果を与えるものの鋳物砂の回収再生は不可能になる。
上記問題の解決のため、下記内容を持つ提案が特許文献1(特公昭56−30107号公報)に開示されている。
則ち、鋳型の凍結により鋳造時に所要の強度を持たせるとともに、鋳物砂の効率的再生使用を可能としたものである。
上記液体窒素使用の場合、鋳型が−100℃以下になることもあって作業者に凍傷を強いる危険な作業を余儀なくされていた。
また、凍結鋳型が大気と接触すると過飽和な水蒸気が急速に鋳型に付着して鋳型面に霜付き現象を起し鋳造欠陥の原因形成の問題を内蔵していた。
則ち、上記提案によれば、冷凍機により冷却された−3℃以下の低温空気を鋳型内を水分が移動しない程度の差圧でファンにより吸引もしくは加圧し鋳物砂からなる鋳型内に流通させて鋳型を凍結させる。
鋳型内を流通した空気は冷凍機の熱交換器で冷却して再び鋳型に送り、冷却空気を系内で循環させる。
即ち水溶性塗型の場合は、塗型の水分が塗布時に凍結するため、塗型に斑ができるとともに、塗型の水分がそのまま凍結するため、鋳型表面の水分量が多くなり、水分による「きらい」が出る。また、水分によるピンホールなどが発生することもある。
なお塗型を行なわないで、鋳込みを行なうと、鋳型が溶湯の熱により解凍されるため、砂が流されて「砂かみ、洗われ(金属の突出欠陥)」などの欠陥が発生する。また、砂の粒度が粗いと焼付き(砂の一部が溶けて鋳物表面に混ざりこんだ状態)欠陥を生じる。
しかしながら凍結鋳型を結合させている力は鋳物砂に含有させた水分の凍結によるものであるため、高粘性の材質からなる溶湯を注湯する場合、溶湯の粘性と高温により凍結鋳型表面の砂が削られる現象が発生する。また鋳造品の鋳肌表面が荒らされ、鋳造欠陥の原因となっている。凍結鋳型表面から剥離した鋳物砂は、溶湯内に拡散するため、鋳造欠陥の原因となり、鋳造品の品質低下につながる。
凍結鋳型は鋳物砂に含有した水分の凍結により立体構造を保持する。
2〜12重量%の水分を混合させた鋳物用砂で形成した鋳型であって、該鋳型の少なくとも溶融金属と接触する内面を凍結してなる凍結鋳型において、
前記溶融金属と接触する凍結された鋳型内面に水ガラスを0.5〜5重量%含有した鋳物砂からなる肌砂層を有する鋳型を形成し、該鋳型の少なくとも溶融金属と接触する内面を凍結してなる凍結鋳型であって、
該凍結鋳型内面の肌砂層を炙り処理して、前記肌砂層が硬化された表面保護砂層が形成されてなることを特徴とする。
前記第1の構成において、鋳型の凍結表面に水ガラスを鋳物砂に対して0.5〜5重量%含有した鋳物砂を短時間炙ることにより、硬い強固な表面保護砂層を形成することができる。これによって溶湯の鋳型への注湯時に、溶湯の粘性と高温により凍結鋳型内面の砂が削られる現象を防止することができる。
なお表面保護砂層の炙り処理に要する時間は、例えば鋳物工場に備え付けられたガスバーナで炙る場合は2〜5秒と極短時間で済むため、凍結鋳型全体にはほとんど影響しない。
2〜12重量%の水分を混合させた鋳物用砂で形成した鋳型であって、該鋳型の少なくとも溶融金属と接触する内面を凍結してなる凍結鋳型において、
前記溶融金属と接触する凍結された鋳型内面に水ガラスを0.5〜5重量%含有した鋳物砂からなる肌砂層を有する鋳型を形成し、該鋳型の少なくとも溶融金属と接触する内面を凍結してなる凍結鋳型であって、
該凍結鋳型内面の肌砂層の上に静電塗装法により付着された帯電塗型剤の塗膜及び肌砂層を炙り処理して、該塗膜及び肌砂層が硬化された表面保護砂層が形成されてなることを特徴とする。
前記第2の構成において、溶湯が接触する鋳型内面に前記肌砂層及び該肌砂層の上に静電塗装法により付着された帯電塗型剤を短時間炙ることにより形成された表面保護砂層を有するため、高温かつ高粘性の溶湯を注湯しても溶湯の粘性と高温による凍結鋳型表面の砂削り現象をなくすことができる。
なお前記表面保護砂層の厚さは1〜20mmで十分であり、この範囲の厚さで凍結鋳型内面の砂削り現象を実質的になくすことができる。前記肌砂層は、例えば模型の表面にスラリ状になった水ガラスと鋳物砂の混合物をスプレーガンで模型表面に塗布し、その後内部に該模型を設置した鋳型に砂込めすることで、溶湯と接する鋳型内面に形成することができる。
2〜12重量%の水分を混合させた鋳物用砂を用いて鋳型を成形し、該鋳型の表面のうち少なくとも溶融金属と接触する内面を凍結する凍結鋳型の造型方法において、
水ガラスを0.5〜5重量%含有した鋳物砂からなる肌砂層を模型の表面に接する鋳型内面に形成した後、少なくとも該肌砂層を形成した鋳型内面を凍結処理し、
その後前記肌砂層を炙り処理することにより前記肌砂層が硬化された表面保護砂層を形成する。
2〜12重量%の水分を混合させた鋳物用砂を用いて鋳型を成形し、該鋳型の表面のうち少なくとも溶融金属と接触する内面を凍結する凍結鋳型の造型方法において、
水ガラスを0.5〜5重量%含有した鋳物砂からなる肌砂層を模型の表面に接する鋳型内面に形成した後、少なくとも該肌砂層を形成した鋳型内面を凍結処理し、
該鋳型内面に静電塗装法により帯電塗型剤を付着させ、
その後前記肌砂層及び塗膜を炙り処理することにより該塗膜及び肌砂層が硬化された表面保護砂層を形成するものである。
本発明方法の前記第2の構成においては、前記処理工程を実施することにより、溶湯と接する凍結鋳型内面に形成された前記肌砂層及び塗膜を瞬間的に硬化させ、強固な鋳型層を形成することができる。なお前記炙り処理はごく短時間の熱処理で済むため、凍結鋳型全体に影響を及ぼすことはない。その後通常通りの注湯を行なう。該炙り処理のやり方として、例えば前記肌砂層及び塗膜をガスバーナで2〜5秒炙るだけでよい。
一般的なガスバーナの外炎温度が1500℃程度であるので、2〜5秒の短時間炙るだけで硬化した表面保護砂層を形成することが可能である。
塗型剤が、硅砂、ジルコン、アルミナ、ムライト、電融シリカ、クロマイト、酸化鉄、黒曜石、黒鉛、雲母等の骨材のいずれか一つ若しくは幾つかの混合物からなる骨材に対して0.2〜10重量%のバインダを添加し、該バインダは加熱により強度を失わない樹脂による構成が好ましい。このように耐火性粉体からなる塗型剤を用いることにより、高温に対する耐久性を向上させることができる。
前記表面保護砂層は、肌砂層が1〜20mmと薄い層であり、静電塗装法による塗膜の膜厚が通常0.2〜0.3mmであるため、小さな力を加えることにより簡単に崩壊し、そのため鋳型の再利用が可能となる。
このように本発明によれば、簡単な短時間の炙り処理により、凍結鋳型を崩壊させることなく、凍結鋳型の特徴である良好な鋳型崩壊性を維持したまま、溶湯と接する鋳型内面に安定度の高い薄い表面保護砂層を形成することにより、該鋳型内面の焼き付き又は砂削り現象を防止できるとともに、薄い表面保護砂層は容易に崩壊するため、鋳型の再利用が可能となる。
図2は、本発明の第1実施例の作業手順を示す説明図、図3は、本発明の第2実施例の作業手順を示す説明図、図4は、本発明の前記第2実施例において、静電塗装による塗型を行なう情況を示す説明図、図5は、本発明の第3実施例の実験結果を示す図表である。
この方法は、図示しない冷凍機により形成された−3℃以下の低温空気fを鋳型6内の水分が移動しない程度の差圧でファンにより吸引もしくは加圧して鋳型6内に流通させて鋳型を凍結させる。
次に図2(d)に示すように、鋳型6を基盤1上から離して反転し、また木型2を鋳型6から離し、ガスバーナ7を用いて溶融金属と接する凍結鋳型内面6bを1500℃程度の外炎で2〜5秒程度炙る。
これによって凍結鋳型内面6bに肌砂層4が硬化した強固な表面保護砂層8が形成される。
次に鋳造品11が冷えて固まったら、鋳型6をこわす作業を行なうが、表面保護砂層8は薄い層厚であるので、ハンドハンマ12のような小型の打撃具でも簡単に崩壊する。
図2(c)に示す凍結処理を行った後、図3(a)に示すように、凍結した鋳型内面6bに静電塗装法により塗膜13を被覆する。
図4において、静電塗装機の帯電装置21内に塗型剤20cを充填し、該塗型剤20cを負に帯電させた後、前記凍結直後の凍結鋳型20を図示しない冷凍機によって形成された低温除湿雰囲気に枠20aを介してアースさせ地絡状態に置くとともに、ノズル22内に帯電装置21より帯電塗型剤を導入し加圧ガス24により凍結鋳型の内面に吹き付け、均一厚みを持つ塗膜20bを形成させる。
次に図3(b)に示すように、肌砂層4及び塗膜13をガスバーナ7で2〜5秒炙り、硬化した表面保護砂層8を形成させる。
次に図3(c)に示すように、鋳型6の一方を反転して2つの鋳型6を重ね合わせ、中空部10を形成し、該中空部10に湯道6cを通して湯つぼ9から溶湯を注入し、図3(d)に示すように鋳造品11をつくる。
なお図3の(b)〜(d)の作業は、前記第1実施例の図2(d)〜(f)の作業と同一である。
従来のCO2硬化法は、CO2ガスを鋳型内に強制通気することで砂中の水ガラスを硬化させるものであり、この方法では、硬化に5〜10分程度の時間を必要とし、一旦硬化した鋳型は強固に固まっており、バラバラに分解して再利用することが困難である。
・使用砂;珪砂6号
・含有水分;5重量%
・凍結時間;15分(従来と同じ凍結時間設定で実施)
・凍結用冷凍庫内温度;−40℃
ついでこの凍結鋳型に対し、静電塗装による塗型を図4に示す方法により行なう。表1には図4の静電塗装に使用した塗型剤の配合例を示す。表1中、%の表示は重量%を示す。
またバインダ量が10%重量を越える場合は、溶湯熱によるバインダの分解生成物が多くなりガス欠陥などを発生する問題が生じた。
また酢酸ビニルなどの高温強度のないバインダを用いた場合は、溶湯により流される問題が発生した。
なお、高温強度を有するバインダとしては、フラン、フェノール、水ガラス、アクリル系樹脂、酢ビ系樹脂、ゴム系樹脂を挙げることができる。
このように凍結鋳型の塗型に静電塗装を用いかつ高温強度を有するバインダを骨材に対して特定量添加混練することにより、均一で表面安定性の高い塗膜を形成することができることがわかった。
表1の塗型剤成分を水溶性塗型に改良して刷毛塗りを行なったが、この場合は均一皮膜を持つ塗型は得られないことは勿論であるが、鋳造後の塗型水分によるピンホールの発生等の問題が発生した。
以上のような方法で表面保護砂層を形成した凍結鋳型に対して、溶けたアルミを用いて注湯作業を行い、鋳肌表面の比較を行なった。
図6は、前記従来例の鋳型表面を示すカラー写真であり、図7は、本発明の前記実施例(図5のNo.3)の鋳型表面を示すカラー写真であり、図8は、前記実施例において溶湯の熱により硬化した肌砂層を示すカラー写真である。
また静電塗装法により塗型を行なうに際し、塗型剤が、硅砂、ジルコン、アルミナ、ムライト、電融シリカ、クロマイト、酸化鉄、黒曜石、黒鉛、雲母等の耐火性粉体からなる骨材を用い、これら骨材に対して0.2〜10重量%のバインダを添加し、該バインダは高温強度を有するフラン、フェノール、水ガラス、アクリル系樹脂、酢ビ系樹脂、ゴム系樹脂を用いることにより、高温に対する耐久性を向上させることができ、焼き付きや鋳型水分によるピンホールなどの欠陥のない塗膜を形成することができ、かかる塗膜を前記肌砂層とともに炙り処理することにより、さらに高強度の安定した表面保護砂層を形成することができる。
3 スプレーガン
4 肌砂層
5 鋳枠
6 鋳型
6a 鋳砂層
6b 鋳型内面
7 ガスバーナ
8 表面保護砂層
20 凍結鋳型
21 帯電装置
Claims (6)
- 2〜12重量%の水分を混合させた鋳物用砂で形成した鋳型であって、該鋳型の少なくとも溶融金属と接触する内面を凍結してなる凍結鋳型において、
前記溶融金属と接触する凍結された鋳型内面に水ガラスを0.5〜5重量%含有した鋳物砂からなる肌砂層を有する鋳型を形成し、該鋳型の少なくとも溶融金属と接触する内面を凍結してなる凍結鋳型であって、
該凍結鋳型内面の肌砂層を炙り処理して、前記肌砂層が硬化された表面保護砂層が形成されてなることを特徴とする凍結鋳型。 - 2〜12重量%の水分を混合させた鋳物用砂で形成した鋳型であって、該鋳型の少なくとも溶融金属と接触する内面を凍結してなる凍結鋳型において、
前記溶融金属と接触する凍結された鋳型内面に水ガラスを0.5〜5重量%含有した鋳物砂からなる肌砂層を有する鋳型を形成し、該鋳型の少なくとも溶融金属と接触する内面を凍結してなる凍結鋳型であって、
該凍結鋳型内面の肌砂層の上に静電塗装法により付着された帯電塗型剤の塗膜及び肌砂層を炙り処理して、該塗膜及び肌砂層が硬化された表面保護砂層が形成されてなることを特徴とする凍結鋳型。 - 前記表面保護砂層の層厚を1〜20mmとしたことを特徴とする請求項1又は2記載の凍結鋳型。
- 2〜12重量%の水分を混合させた鋳物用砂を用いて鋳型を成形し、該鋳型の表面のうち少なくとも溶融金属と接触する内面を凍結する凍結鋳型の造型方法において、
水ガラスを0.5〜5重量%含有した鋳物砂からなる肌砂層を模型の表面に接する鋳型内面に形成した後、少なくとも該肌砂層を形成した鋳型内面を凍結処理し、
その後前記肌砂層を炙り処理することにより前記肌砂層が硬化された表面保護砂層を形成することを特徴とする凍結鋳型の造型方法。 - 2〜12重量%の水分を混合させた鋳物用砂を用いて鋳型を成形し、該鋳型の表面のうち少なくとも溶融金属と接触する内面を凍結する凍結鋳型の造型方法において、
水ガラスを0.5〜5重量%含有した鋳物砂からなる肌砂層を模型の表面に接する鋳型内面に形成した後、少なくとも該肌砂層を形成した鋳型内面を凍結処理し、
該鋳型内面に静電塗装法により帯電塗型剤を付着させ、
その後前記肌砂層及び塗膜を炙り処理することにより該塗膜及び肌砂層が硬化された表面保護砂層を形成することを特徴とする凍結鋳型の造型方法。 - 前記炙り処理は、前記肌砂層若しくは前記肌砂層及び塗膜をガスバーナで2〜5秒間炙ることを特徴とする請求項4叉は5記載の凍結鋳型の造型方法。
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