JPH05277633A - 崩壊性砂中子の製造方法 - Google Patents

崩壊性砂中子の製造方法

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JPH05277633A
JPH05277633A JP12102392A JP12102392A JPH05277633A JP H05277633 A JPH05277633 A JP H05277633A JP 12102392 A JP12102392 A JP 12102392A JP 12102392 A JP12102392 A JP 12102392A JP H05277633 A JPH05277633 A JP H05277633A
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    • F02F1/02Cylinders; Cylinder heads  having cooling means
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 シェルモールド法を用いて固めた砂中子原型
でも,コーティングが充分に行え,かつ崩壊性に優れた
砂中子を得る。 【構成】 RCSを固めた砂中子原型を稀硫酸水溶液等
中に浸漬するなどして酸処理した砂中子原型を得,この
砂中子原型を加熱乾燥した後水洗し,次いで無機塩処理
し乾燥した後,第1のコーティング液中に浸漬するなど
して砂中子原型の表面に均一な第1のコーティングを行
い,次いで,第1のコーティングの上にアルミニウム粉
を含有する第2のコーティング液中に浸漬するなどして
第2のコーティングを行い,その後,乾燥して崩壊性砂
中子を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,例えば,クローズドデ
ッキタイプの自動車用エンジン等,アンダーカット部分
を有する鋳造品の高圧ダイカスト鋳造時に用いる耐圧性
および良好なコーティング性と崩壊容易性を有する崩壊
性砂中子の製造方法に関するものである。さらに詳しく
は,シェルモールド用の砂を用いて造型した砂中子原型
を鉱酸で処理し,次いで水洗し,さらに無機塩で処理す
ることにより,第1のコーティング剤を1回だけで厚く
コーテイングできるとともに,その上にアルミニウム粉
を含有する第2のコーティング剤をコーティングしても
同コート層が堅固にでき,しかも,鋳造後の崩壊性に優
れた高圧鋳造用にも適した砂中子の製造方法に関するも
のである。ここで,良好なコーティング性とは,砂中子
原型にコーティング剤をコーティングする際に,コーテ
ィング剤が,薄い液状で砂中子原型の内部に広がった状
態で深く浸み込まずに,または,砂中子原型の表面から
はじかれずに,砂中子原型の表面層のみにかつ全面に,
所定の厚さで均一に,かつ,確実容易に強固に形成さ
れ,それが剥がれないようにコーティングされることで
あり,鋳造時の高圧の鋳込圧力に充分に耐え得ることで
ある。
【0002】
【従来の技術】従来より,例えば,クローズドデッキタ
イプの自動車用エンジンブロックやその他のアンダーカ
ット部分を有するアルミニウム合金やマグネシウム合金
等の鋳造品をダイカストで鋳造して製造する場合,崩壊
性砂中子を用いてダイカスト鋳造することが行われてい
る。そして,崩壊性砂中子を得る場合,まず,砂を所望
の形に固め,次に,その固めた砂中子原型の表面にコー
ティング剤を塗布し,高圧下での溶湯鋳込時には砂中子
が破損したり,溶湯が砂中子内に侵入しないようにし,
鋳造後には,ほとんど力を加えずに砂中子を崩壊させて
容易に取出せるようにし,かつ,砂が隅々まで充分に取
出せるようにすることが試みられている。勿論,その場
合,砂中子原型の成分,砂の固め方,コーティング剤の
成分,コーティングの仕方等,従来よりいろいろ試みら
れているが,充分に満足し得るものは得られていないの
が現状である。なお,コーティング剤としては,例え
ば,特開昭63−40639号公報に記載されているよ
うに,粉末状の耐火物,金属酸化物からなる第1のコー
ティング剤と,第1のコーティング剤の上に塗布する鱗
片状のアルミニウム粉やマイカ等を含有する第2のコー
ティング剤等が用いられている。
【0003】その中で,砂を固めて砂中子原型を得る方
法として,ハードックス法,ウォームボックス法,
シェルモールド法,コールドボックス法等がある。
ハードックス法としては,例えば,特公昭64−989
8号公報に記載されている技術が知られている。そし
て,この方法においては,砂中子原型は砂,酸硬化性樹
脂および酸化剤を主成分とする結合剤からなっており,
二酸化硫黄によって硬化される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記ハードックス法に
おいては,所望の形状に造型した砂を硬化して砂中子原
型を得る場合,二酸化硫黄すなわち亜硫酸ガスを使用し
て硬化する。したがって,亜硫酸ガスを使用するため,
作業環境が悪く,日本の工場では,人体に悪影響を与え
るようなガスの使用は好まれない。また,仮に亜硫酸ガ
スを使用するとしても,人体に悪影響を与えず,作業環
境も悪化させないようにするためには,その為の付属設
備の設置が大変であり,また,その設置,運転のために
法規制も受ける。
【0005】そのため,本発明者は,酸化剤と亜硫酸ガ
スの代りに結合剤を使用するシェルモールド法の良さを
見直すこととした。シェルモールド法では,砂と結合剤
の混合物を固めて砂中子原型を得るのに亜硫酸ガスを使
用するのではなく,予めフェノールレジン等の石炭酸系
合成樹脂をコーティングしたレジンコーテッドサンド
(RCS)を,砂中子原型造型用の金型内に圧縮空気で
吹込んで加熱硬化させて造型する。しかし,この場合,
前記ハードックス法ではかなり良好に行われていたコー
ティング剤と同一のコーティング剤を砂中子原型に塗布
しても,コーティング剤が濡れずにはじかれてしまい,
うまくいかなかった。
【0006】一方,本願発明の発明者は,RCSを用
い,シェルモールド法を用いて砂中子原型を造型し,こ
の砂中子原型を例えば,稀硫酸,燐酸等の鉱酸で処理し
た後,それを乾燥した砂中子原型の表面に粉末状の耐火
物を主成分とする中性水分散体からなるスラリ状のコー
ティング剤をコーティングし,それを乾燥させることに
よって崩壊性砂中子を得る方法を発明し,特許出願し
た。この方法で得られた崩壊性砂中子は,それなりに有
効なものであるが,高圧グイカスト時の溶湯の崩壊性砂
中子への差込みをより確実に無くすために,このコーテ
ィングを第1のコーティング層とし,その表面に,前記
した特開昭63−40639号公報に示されているよう
なアルミニウム粉を含有する第2のコーティング剤をコ
ーティングすることを試みた。しかし,この組合わせで
は良好なコーティングが得られなかった。すなわち,砂
中子原型の表面付近に残存していた酸が第1のコーティ
ング層を透過して第2のコーティング層にまでにじみ出
て,第2のコーティング剤中の成分であるアルミニウム
粉と反応する。その結果,第2のコーティング層が禿げ
たり剥れたりする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明においては,RC
Sを用いて砂中子原型を造型する工程と,この砂中子原
型を酸で処理する工程と,この酸で処理した砂中子原型
を乾燥する工程と,この乾燥した砂中子原型を水洗する
工程と,この水洗した砂中子原型を無機塩で処理する工
程と,この無機塩で処理した砂中子原型を乾燥する工程
と,この乾燥した砂中子原型の表面に粉末状の耐火物を
主成分とする中性水分散体からなるスラリ状の第1のコ
ーティング剤をコーティングする工程と,このコーティ
ングして得た砂中子を乾燥させる工程と,このコーティ
ングした砂中子にアルミニウム粉を含有するスラリ状の
第2のコーティング剤をコーティングする工程と,この
コーティングして得た砂中子を乾燥させる工程によって
崩壊性砂中子を得る。
【0008】砂中子原型を処理する酸としては,例え
ば,硫酸,燐酸等の鉱酸を用いる。また,砂中子原型を
酸で処理する場合は,例えば,稀硫酸のような酸性溶液
中に浸漬したり,酸性溶液を砂中子原型の表面に刷毛塗
りしたり,吹付けたりする。次いで,この酸で処理した
砂中子原型を乾燥する。然る後に,この乾燥した砂中子
原型を水洗するが,これは単に水中に砂中子原型を浸漬
したり,砂中子原型に水を吹付けたりする。その後,こ
の水洗した砂中子原型を無機塩処理する。この場合の無
機塩は,Li,Na,K,CS,Cu,Cu
2+,Mg2+,Ca2+,Ba2+,Zn2+,A1
3+,Mn2+,Fe2+,Fe3+,Co2+,Ni
2+,NH などの陽イオンと,F,Cl,Br
,I,NO ,CO 2−,SO 2−,PO
3−などの陰イオンが電荷を中和する形で生成するもの
をいう。例えば,NaSO,KCO,MgCl
,Ba(PO,Al(SO,MnC
,FeSO,NHNO等が挙げられる。ま
た,上記のようにして得た砂中子原型を無機塩で処理す
る場合は,例えば,BaCl,Al(SO
溶液のような無機塩溶液中に浸漬したり,無機塩溶液を
砂中子原型の表面に刷毛塗りしたり,吹付けたり,無機
塩の微粉末を薄くまぶしたりする。
【0009】
【作用】本発明においては,まず,例えば,前記したよ
うにRCSを用いて砂中子原型を造型した後,その砂中
子原型を稀硫酸等の鉱酸溶液中に浸潰するなどして砂中
子原型の内部に鉱酸を浸み込ませ,次いで,この砂中子
原型を乾燥する。この場合,造型した砂中子原型(黄土
色)を,例えば稀硫酸溶液等の鉱酸溶液の中に浸漬すれ
ば,砂中子原型の表層部や中に鉱酸が付着したり浸み込
んだりする。この砂中子原型を浸漬槽から引き上げた
後,80〜200℃で数分〜2時間乾燥させると,砂中
子原型は黒褐色に変化する。これは,砂同志を結合して
いた硬化フェノールレジン等の石炭酸系合成樹脂が砂中
子原型に付着したり浸み込んだ鉱酸により脱水,炭化さ
せられたためである。すなわち,砂を互いに繋げている
硬化した石炭酸系合成樹脂は,この乾燥時の熱で酸化分
解反応が促進される。これにより,黒褐色化するととも
に,強度も低下する。この強度の低下は,鋳造時の加圧
力には充分耐え得るものである。鋳造時に,溶湯の熱に
より,当然硬化した石炭酸系合成樹脂も熱劣化するが,
上記のようにして予め強度を低下させておくと,鋳造
後,金型内から取出した鋳造品の中から砂中子を取出す
ときに,砂中子が極めて簡単容易に取出せる。
【0010】このような酸処理および乾燥を経て得た砂
中子原型に,粉末状の耐火物を主成分とする中性水分散
体からなるスラリ状の第1のコーティング剤を塗布すれ
ば,該砂中子原型の表面および表面近くに存在する鉱酸
により,第1のコーティング剤が瞬時に凝集して該砂中
子原型の表面ではじかれることなく,該砂中子原型の表
面に厚くコーティングでき,その後これを乾燥すれば,
所望の厚さの均質な第1のコーティング層が形成され
る。ところで,前記したように,この第1のコーティン
グ層の上にアルミニウム粉を含有するスラリ状の第2の
コーティングを施すと,砂中子原型の表面付近に残存し
ていた酸が第1のコーティング層を透過して第2のコー
ティング層にまでにじみ出て,第2のコーティング剤中
の成分であるアルミニウム粉と反応する。その結果,第
2のコーティング層が禿げたり剥れたりする。したがっ
て,前記したような酸処理および乾燥を経て得た砂中子
原型を,例えば,水中に数秒から数分間浸漬して,砂中
子表面付近に存在する酸を除去する。
【0011】ところで,表面付近の酸を除去した状態
で,粉末状の耐火物を主成分とする中性水分散体からな
るスラリ状の第1のコーティング剤を塗布しようとして
も,酸処理しない場合と同様,この第1のコーティング
剤は砂中子原型の表面ではじかれてしまい,砂中子原型
の表面に厚くコーティングすることはできない。そこ
で,前記したように水洗した砂中子原型をBaCl
Al(SO水溶液等の無機塩水溶液中に浸漬す
る等して砂中子原型の表面付近に無機塩を浸み込ませ,
次いで,この砂中子原型を乾燥する。次に,このような
処理をした後乾燥して得た砂中子原型の表面に,粉末状
の耐火物を主成分とする中性水分散体からなるスラリ状
の第1のコーティング剤をコーティングする。この場
合,前記したように水洗した砂中子原型を,コーティン
グする前に,例えば,BaCl水溶液等の無機塩水溶
液の中に浸漬すれば,砂中子原型の表層部に無機塩が付
着したり浸み込んだりする。この砂中子原型を浸漬槽か
ら引き上げた後,80〜200℃で数分〜2時間乾燥さ
せると砂中子原型の表層部に無機塩の粉末が均一に付着
する。
【0012】このような酸処理,乾燥,水洗,無機塩処
理,乾燥を経て得た砂中子原型に,粉末状の耐火物を主
成分とする中性水分散体からなるスラリ状の第1のコー
ティング剤を塗布すれば,該砂中子原型の表面および表
面近くに存在する無機塩により,コーティング剤が瞬時
に凝集して該砂中子原型の表面ではじかれることなく,
該砂中子原型の表面に厚くコーティングできる。その後
これを乾燥すれば,所望の厚さの均質な第1のコーティ
ング層が形成される。
【0013】このようにして,第1層のコーティング層
を形成させた砂中子原型にアルミニウム粉を含有するス
ラリ状の第2のコーティング剤をコーティングする。次
いで,室温〜200℃で数分〜2時間乾燥させると,第
1のコーティング層の上にアルミニウム粉を含有する第
2のコーティング層が均ーに形成される。このようにし
て形成されたこの第2のコーティング層は,大気中は勿
論のこと,高湿度雰囲気に放置しても,その成分のアル
ミニウム粉がもはや酸に侵されることはなく,長期間安
定である。
【0014】このようにすれば,シェルモールド法で
も,砂中子原型を固めることができ,砂中子原型の表面
に粉末状の耐火物を主成分とする中性水分散体からなる
スラリ状の第1のコーティング剤を所望の状態で確実容
易にコーティングすることができ,かつ,第1のコーテ
ィング層の上にアルミニウム粉を含有するスラリ状の第
2のコーティング剤を所望の状態で確実容易にコーティ
ングすることができ,しかも,この第2のコーティング
層を長期間安定に維持することができる。
【0015】そして,この発明によって得られた崩壊性
の砂中子を用いれば,高圧グイカストのように高圧下で
の溶湯鋳込時に砂中子が破損したりクラックが入ったり
することもなく,溶湯が砂中子内に侵入することもな
い。また,鋳造後に溶湯が固まって鋳込製品を金型から
取出した後,砂中子を崩壊させて取出すとき,ほとんど
力を加えずに砂中子を崩壊させて容易に取出すことがで
きるとともに,砂が鋳造面の隅に残ることもなく,隅々
まで砂を充分にかつ確実に取出すことができる。つま
り,酸処理工程と引続く乾燥工程は,砂中子内部に浸み
込んだ酸が砂同志を結合していた硬化フェノールレジン
等の石炭酸系合成樹脂を脱水,炭化分解させるのに寄与
し,水洗工程,無機塩処理工程と引続く乾燥工程は,粉
末状の耐火物を主成分とする中性水分散体からなるスラ
リ状の第1のコーティングとアルミニウム粉を含有する
スラリ状の第2のコーティングを確実堅固に形成させる
のに寄与する。
【0016】
【実施例】砂中子原型を製造するときは,まず,フェノ
ールレジン等の石炭酸系合成樹脂を砂にコーティングし
たレジンコーテッドサンド(RCS)を用意する。RC
Sは混練温度,フェノール樹脂等の石炭酸系合成樹脂の
性状からコールド法,セミホット法,ドライホット法で
製造されるが,生産性,安定性,コストの面からドライ
ホット法が好ましい。すなわち,130〜160℃に加
熱された砂に固形樹脂をミキサーで溶融コーティングし
たのち,ノボラック樹脂の場合は硬化剤のへキサミン水
溶液,レゾール樹脂の場合は水のみを投入して,水の蒸
発潜熱およびエアレーションによって急冷しながら砂粒
同志の固着が少なくなった時点でステアリン酸カルシウ
ム等のワックスを分散させて乾態易流動性のRCSを得
る。なお,砂は,硅砂,ジルコンサンド,クロマイトサ
ンド,セラビーズ等,あるいは,それらの再生砂を用い
る。
【0017】このRCSを,所定の砂中子形状のキャビ
ティを有する金型内に加圧空気とともに吹込み,いわゆ
る,シェルモールド法と呼ばれている方法で砂中子原型
を成型した。この場合,中子成型用の金型の加熱温度は
例えば200〜300℃,好ましくは,230〜270
℃程度とし,30秒〜2分程度加熱して,砂中子原型を
所定の強度に硬化させた。例えば,抗折力20〜50k
gの砂中子原型を得た。
【0018】次に,このようにして成型した砂中子原型
を,酸の水溶液で処理する。酸としては,硫酸,燐酸等
の鉱酸が挙げられる。これらの酸の水溶液中に砂中子原
型を浸漬し,砂中子原型に吸収させた後,加熱乾燥させ
る。水溶液の濃度は稀釈倍率(98%濃硫酸,89%リ
ン酸の稀釈倍率)200倍以内である。稀釈倍率が20
0倍を越えると鋳造後の砂中子の崩壊性が低下し,処理
効果がなくなる。浸漬時間は,処理液の濃度および砂中
子原型と処理液との親和性によっても異なるが,0.5
秒の短時間から5分程度である。
【0019】もし,砂中子原型が処理液に濡れにくい場
合は,予め砂中子原型をメタノール等の親水性有機溶媒
に短時間浸漬した後に処理液に浸漬するか,処理液に上
記親水性有機溶媒を砂中子原型が処理液に濡れるように
なるまで混合してから処理する。浸漬処理した砂中子原
型の加熱乾燥は,温度が高いほど時間が短くてすみ,目
安として120℃で30分程度である。なお,酸を稀釈
せずにそのまま使用してもよく,酸が濃硫酸(98%)
や燐酸(89%)のように液体の場合は,砂中子原型を
浸潰し,取出すだけでよい。前記したように,稀硫酸の
ように濃度の薄い溶液を用いたときは水を蒸発させるた
めに乾燥が必要であるが,濃硫酸のように水で稀釈しな
い場合は,乾燥を行う必要はない。処理された砂中子原
型は黒褐色化し,その抗折力は処理濃度に比例して低下
するが,強度の低下は,硫酸や燐酸の場合は酸による炭
化劣化が進行したためと考えられる。
【0020】次に,上記のように酸処理,乾燥された砂
中子原型を水洗する。水洗は前記砂中子原型を水中に浸
潰しても良いし,前記砂中子原型に水を吹付けたりして
も良いが,前者が簡単確実である。すなわち,前記砂中
子原型を水道水等の水中に数秒から数分間浸漬したのち
取出す。この水洗した砂中子原型は,乾燥しても良い
し,乾燥しなくても良いが,次に無機塩の水溶液で処理
する。この無機塩としては,BaCl,Al(SO
等の無機塩が挙げられる。
【0021】これらの無機塩の水溶液中に水洗した砂中
子原型を浸漬し,砂中子原型の表面付近に吸収させた
後,加熱乾燥させる。水溶液の濃度は稀釈倍率200倍
以内である。稀釈倍率が200倍を越えると第1のコー
ティング剤のコーティング厚みが薄く,処理効果がなく
なる。浸漬時間は,処理液の濃度および水洗した砂中子
原型と処理液との親和性によっても異なるが,0.5秒
の短時間から5分程度である。浸漬処理した砂中子原型
の乾燥は,温度が高いほど時間が短くてすみ,目安とし
て120℃で30分程度である。なお,無機塩を稀釈せ
ずにそのまま使用してもよく,水洗した砂中子原型に無
機塩微粉末をまぶし,余分な無機塩微粉末を拭き取る。
前記したように,BaCl水溶液のように濃度の薄い
溶液を用いたときは水を蒸発させるために乾燥が必要で
あるが,このように水で稀釈しない場合は,乾燥を行う
必要はない。
【0022】つぎに,上記のように処理された砂中子原
型の表面に第1のコーティング剤をコーティングする。
この場合,この砂中子原型を第1のコーティング剤中に
浸漬してもよいし,この砂中子原型の表面に第1のコー
ティング剤を刷毛塗りしたり吹付けたりしてもよい。第
1のコーティング剤は,微粉末シリカと微粉末アルミナ
を主成分とし,少量のコロイドシリカを加えた固形分5
0〜90重量%のスラリとした。固形分が50重量%以
下では第1のコーティング層の厚みが薄くなり,90重
量%以上になるとスラリを撹拌するのが極めて困難とな
る。なお,この第1のコーティング剤のpHを7.0±
1.0に維持していなければ,撹拌下でも沈殿,凝固す
ることがある。
【0023】なお,第1のコーティング剤としては,他
のコーティング剤を用いることもできる。例えば,グラ
ファイト,マイカ,ヒューズドシリカ,アルミナ,マグ
ネシア,カーボンブラックおよびジルコン粉末等の無機
耐火性材料約30〜80重量%と,コロイドシリカ,ア
ルミナゾル,粘土およびアミン処理ベントナイト等の無
機結合剤約1〜25重量%と,水からなるものを用いて
もよい。この場合,より好ましいものは,ヒューズドシ
リカとコロイドシリカである。なお,これに約10容量
%のメタノールとカオリンを加えても良い。
【0024】前記第1のコーティング剤中に,酸処理,
加熱乾燥,水洗,無機塩処理,加熱乾燥を順次経て来て
処理された砂中子原型を数秒問浸漬し,その後,加熱乾
燥を行う。乾燥条件は,120℃,10分程度である。
第1のコーティングの厚みは,無機塩処理を行わない場
合には砂中子原型の表面からはじかれてほとんど塗れな
いのに対して,充分に厚く,また,砂中子原型の内部へ
の浸透も少なく,しかも,塗膜は堅固である。
【0025】上記第1のコーティングを終えた後に,ア
ルミニウム粉を含有するスラリ状の第2のコーティング
剤をコーティングする。この第2のコーティング剤とし
ては,例えば,3%水溶性フェノール樹脂溶液1リット
ルに対し,鱗片状アルミニウム粉500グラム,湿潤剤
としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10グラ
ム,消泡剤としてオクチルアルコール1グラムをよく撹
拌混合したもの,これにマイカ,カーボンブラック,ジ
ルコン粉末等を混合したもの等を用いることができる。
この第2のコーティングは前記第1のコーティングを終
えた砂中子原型を第2のコーティング剤中に浸漬した
り,該砂中子原型の表面に第2のコーティング剤を刷毛
塗りしたり吹付けたりした後,乾燥して形成する。乾燥
条件は,120℃,10分程度である。
【0026】さらに詳しい実施例として,実験例をつぎ
に示す。 (実験例1〜4,および比較例1〜4)フラタリ砂10
0部に対して2部のフェノール樹脂(硬化剤へキサミン
を含む)をコーティングしたRCSを用いて,重量約2
Kgのエンジンプロック用砂中子原型をシェルモールド
法で複数個造型した。造型条件は金型温度250℃,吹
込み圧0.8Kg/cm,加熱時間90秒であった。
1日放置した後の砂中子原型の抗折力は38Kgであっ
た。
【0027】次に,98%濃硫酸1部に水を各々49
部,99部混合して,稀釈倍率50,100倍の水溶液
をそれぞれ調製した。この処理液に砂中子原型を1分間
浸漬した後,120℃の循環式熱風加熱炉で30分間乾
燥した。この段階に留めて,次の水洗,無機塩処理を何
ら行わずに,本実験例と同一の第1,第2のコーティン
グを行ったので,比較例1,3として後記する表1に示
す。次いで,この稀硫酸処理,乾燥した砂中子原型を水
道水に10秒間浸漬して水洗した。同じく,この段階に
留めて,次の無機塩処理を何ら行わずに,本実験例と同
一の第1,第2のコーティングを行ったので,比較例
2,4として後記する表1に示す。
【0028】その後,この水洗した砂中子原型を取出
し,MgCl1部に水を各々9部,49部,199部
混合して得た稀釈倍率10,50,200部の水溶液に
1〜2秒間浸潰した後,120℃の循環式熱風加熱炉で
30分間乾燥した。(実験例1〜4)
【0029】これら水洗処理以降を行わなかったもの
(比較例1,3),無機塩処理以降を行わなかったもの
(比較例2,4)と,無機塩処理,乾燥まで行った砂中
子原型を,それぞれ同一の第1のコーティング剤に1〜
2秒間浸漬した後,120℃の循環式熱風加熱炉で10
分間乾燥した。第1のコーティング剤の組成は,微粉末
シリカ50部と微粉末アルミナ30部にコロイドシリカ
3部を水20部に懸濁させたもので,pHは7.2に調
整されたものであった。乾燥後の砂中子の抗折力は表1
に示す。
【0030】
【表1】
【0031】前記の第1層コーティングを終えた後,次
に第2層目のコーティングを行った。第2層のコーティ
ング剤としては,3%水溶性フェノール樹脂溶液1リッ
トルに対し,鱗片状アルミニウム粉500グラム,湿潤
剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10グ
ラム,消泡剤としてオクチルアルコール1グラムをよく
撹拌混合したものを用いた。すなわち,前記第1層コー
ティングを済ませた砂中子原型をこの第2層コーティン
グ剤中に1〜2秒間浸漬した後,120℃の循環式熱風
加熱炉で10分間乾燥した。以上のようにして得た砂中
子原型を温度33℃,相対湿度90%に保持された恒温
恒湿器の中に7日間放置した。7日後の第2コーティン
グ層の状態を表1に示す。
【0032】以上のようにして得た砂中子を金型にセッ
トし,アルミニウム合金ADC10を鋳造圧力600k
g/cm,湯口速度200mm/Sec,注湯温度7
60℃の条件下で高圧鋳造した。鋳造後に通常のコアノ
ックアウトマシンで砂落しを行ったところ,実験例1,
2,4の場合には中子砂は完全に除去され,優れた鋳造
品が得られた。実験例3の場合には中子砂の除去はやや
良かったが,比較例1〜4の場合には中子砂の除去は不
良であった。まとめて,結果を表1に示す。
【0033】
【発明の効果】このように,本発明においては,石炭酸
系合成樹脂をコーティングしたレジンコーテッドサンド
を用いて砂中子原型を造型する工程と,この砂中子原型
を酸で処理する工程と,この酸で処理した砂中子原型を
乾燥する工程と,この乾燥した砂中子原型を水洗する工
程と,この水洗した砂中子原型を無機塩で処理する工程
と,この無機塩で処理した砂中子原型を乾燥する工程
と,この乾燥した砂中子原型の表面に粉末状の耐火物を
主成分とする中性水分散体からなるスラリ状の第1のコ
ーティング剤をコーティングする工程と,このコーティ
ングして得た砂中子を乾燥させる工程と,このコーティ
ングした砂中子にアルミニウム粉を含有するスラリ状の
第2のコーティング剤をコーティングする工程と,この
コーティングして得た砂中子を乾燥させる工程によって
崩壊性砂中子を製造するようにしたので,砂中子原型は
予め所望の強度にまで低下し,また,第1のコーティン
グ剤でコーティングするとき,第1のコーティング剤は
砂中子原型の表面ではじかれることなく,均一で適当な
厚さの第1のコーティング層を形成する。また,この第
1のコーティング層の上にアルミニウム粉を含有する第
2のコーティング剤でコーティングしたとき,第2のコ
ーティング層は高湿度下でも安定な状態を長期間維持す
る。したがって,砂中子は,鋳造時には高圧の鋳込圧力
に耐え,鋳造後の崩壊性は良い。
【0034】すなわち,本発明で得られた崩壊性砂中子
を用いてダイカストのような高圧鋳造を行った場合,砂
中子中に溶湯が差込むことがなく,また,鋳造後,製品
から砂を排出する際も,砂中子の崩壊性が良いために,
簡単確実にかつ完全に砂の排出を行うことができる。勿
論,砂を排出した後の製品の鋳肌面には砂は全く残留せ
ず,非常に平滑である。したがって,このような砂中子
を,例えば,クローズドデッキ型のエンジンブロックの
冷却ジャケット部分のように,非常に複雑な形状を有す
る製品を鋳造する際に用いても,充分に満足のいく作業
状態と製品を確実容易に得ることができる。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 石炭酸系合成樹脂をコーティングしたレ
    ジンコーテッドサンドを用いて砂中子原型を造型する工
    程と,この砂中子原型を酸で処理する工程と,この酸で
    処理した砂中子原型を乾燥する工程と,この乾燥した砂
    中子原型を水洗する工程と,この水洗した砂中子原型を
    無機塩で処理する工程と,この無機塩で処理した砂中子
    原型を乾燥する工程と,この乾燥した砂中子原型の表面
    に粉末状の耐火物を主成分とする中性水分散体からなる
    スラリ状の第1のコーティング剤をコーティングする工
    程と,このコーティングして得た砂中子を乾燥させる工
    程と,このコーティングした砂中子にアルミニウム粉を
    含有するスラリ状の第2のコーティング剤をコーティン
    グする工程と,このコーティングして得た砂中子を乾燥
    させる工程からなる崩壊性砂中子の製造方法。
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