JPH0543973Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、アルゴンガス等の不活性雰囲気で溶
融されたNd合金溶湯を冷却ドラムの外周面に噴
射させるNd合金注湯ノズルに関する。

〔従来の技術〕

溶融金属を冷却凝固して金属薄帯を製造する方
法は、非晶質合金の開発を契機として利点が注目
され、新しい材料の開発のための手段として脚光
を浴びている。この急冷凝固法による金属薄帯の
製造技術は、高温の溶融物質を高速回転している
冷却ドラムの外周面に吹き付けて急冷し、非晶質
或いはそれぞれに近い結晶質の材料を製造するも
のである。この技術によるとき、機械加工が困難
な、たとえば冷間圧延が不可能な材料の薄帯を溶
融金属から直接的に得ることができる。また、通
常の冷却手段では不可能な高温相の非晶質化を室
温で実現することができる。

他方、Nd−Fe−Ｂ系永久磁石を急冷凝固法に
よつて製造する技術として、特開昭57−210934号
公報、特開昭60−9852号公報等で紹介された方法
がある。また、同様な方法が、大学、企業等の研
究成果として多数報告されている。しかし、従来
の技術は、いずれも少量の合金を石英坩堝中で溶
解し、急冷凝固させる実験室規模のものである。

そこで、本考案者等は、第３図に示す設備構成
をもつた装置を開発し、注湯容器に関する提案を
特願昭63−333829号で行つた。この装置において
は、装置本体３１の内部を溶解室３２とフレーク
化室３３とに区分し、それぞれを真空排気装置３
４に接続している。溶解室３２には、高周波コイ
ル３５を備えた溶解容器３６が傾動可能に配置さ
れている。

溶解室３２とフレーク化室３３とを仕切る仕切
り壁３７にはベローズ３８が装着されており、こ
のベローズ３８に漏斗３９及び注湯容器４０が取
り付けられる。注湯容器４０の下端には噴射ノズ
ル４１が設けられており、注湯容器４０本体及び
噴射ノズル４１それぞれを所定温度に保持するた
めの高周波コイル４２が周囲に配置されている。
なお、高周波コイル４２による注湯容器４０の加
熱を効率良く行なうため、注湯容器４０と高周波
コイル４２との間に黒鉛ブロツク４３が介在され
ている。また、黒鉛ブロツク４３と高周波コイル
４２との間に外坩堝４５を配置して、注湯容器４
０を支持する。

溶解容器３６で所定量のNd−Fe−Ｂ系合金原
料を溶解した後、溶解容器３６を傾動させること
によつて、Nd合金の溶湯４４を溶解容器３６か
ら漏斗３９を介して注湯容器４０に移し替える。
なお、溶解室３２の内部は、溶解室扉４６の開閉
によつて開放又は封止される。

注湯容器４０に供給された溶湯４４は、溶湯容
器４０底部にある噴射ノズル４１から冷却ドラム
４７の外周面に吹き付けられる。溶湯４４は、冷
却ドラム４７の外周面上でパドル４８を形成し、
冷却ドラム４７を介した抜熱によつてフレーク４
９として飛翔する。このフレーク４９が、ダクト
５０を経てフレーク室５１に集められる。なお、
冷却ドラム４７による溶湯４４の冷却を均一に行
うため、パドル４８形成位置の上流側に研磨ロー
ル５２及びブラシロール５３を設けている。

フレーク室５１に集められたフレーク４９は、
粒鉄を除去した後、所定のサイズに粉砕されて、
磁石材料となる。

〔考案が解決しようとする課題〕

Nd合金溶湯は、粘性が非常に高いものであり、
噴射ノズル４１の内部に滞留して噴出口を閉塞し
がちである。たとえば、溶解室３２内に浮遊して
いる異物が沈着して噴射ノズル４１の噴出口に付
着すると、この異物を核としてNDd合金による
噴出口の閉塞が促進される。また、噴出口に異物
が付着した状態では、噴射ノズル４１から流出す
る溶湯流が乱れ、冷却ドラム４７外周面上での冷
却条件が撹乱され、安定した品質のフレーク４９
を製造することが困難になる。

このような異物としては、溶解室３２に浮遊し
ている微粒子、内部に配置した各種機器から発生
するダスト、Nd合金を溶解容器３６で溶解して
いる間に弾け出る微粒等がある。この異物による
悪影響を排除するためには、溶湯注入に先立つて
溶解室３２を減圧するとき、除塵を完全に行うこ
とが必要となつて、減圧操作が長時間を要するも
のとなる。また、溶解室３２内の雰囲気圧が低下
するに従つて、内部に配置した各種機器から雰囲
気に放出される微粒子も、悪影響を与える原因と
なる。更には、減圧した後、溶解室３２に導入さ
れるアルゴン等の不活性ガスによつて、微粒子が
持ち込まれたり、炉内の一部に静止していたゴミ
類がアルゴンガスの風で巻き上がることもある。
その結果、注湯容器４０にNd合金溶湯を注湯す
る前に、噴射ノズル４１の内壁面を完全に異物付
着がない状態にすることはできない。

そこで、本考案は、Nd合金溶湯を注入したと
きに浮上する閉塞防止体を噴射ノズルの噴出口上
方に配置することによつて、異物による噴出口の
閉塞を防止し、Nd合金溶湯の注油を安定状態で
開始し、高い生産性でNd合金フレークを製造す
ることを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

本考案のNd合金注湯ノズルは、その目的を達
成するため、不活性雰囲気中で溶解したNd合金
溶湯を冷却ドラムの外周面に噴射するNd合金注
湯ノズルであつて、長手方向側壁が上広がりとな
つた偏平な先端部と、該先端部の下端面に直列状
に穿設された複数の噴出口と、前記長手方向側壁
の内面に接触して前記噴出口の上方に配置される
単数又は複数の閉塞防止体とを備えており、該閉
塞防止体の比重が前記Nd合金溶湯の比重より小
さいことを特徴とする。

〔実施例〕

以下、図面を参照しながら、実施例により本考
案の特徴を具体的に説明する。

本考案例のNd合金注湯ノズル１は、第１図に
示すように注湯容器本体２と一体的に成形された
もの、或いは別途成形されたNd合金注湯ノズル
を注湯容器本体２に接続したものの何れであつて
も良い。この注湯ノズル１は、Nd合金溶湯に対
する耐食性に優れた石英等の材料で作られてい
る。

Nd合金注湯ノズル１は、下方に行くに従つて
相互の間隙が狭くなつている長手方向側壁３ａ，
３ｂと、長手方向側壁３ａ，３ｂの両端部を仕切
る端部側壁４ａ，４ｂとを備えており、これによ
つて下方に向けて先すぼまりとなつた偏平状内部
空間５が形成される。また、Nd合金注湯ノズル
１の下端面６には、長手方向に沿つて複数の噴出
口７が穿設されている。

偏平状内部空間５には、単数又は複数の閉塞防
止体８が配置される。この閉塞防止体８は、第２
図ａに示すように、偏平状内部空間５にNd合金
溶湯がない状態では、長手方向側壁３ａ，３ｂに
周面が接触し、噴出口７から所定の間隔Ｈをもつ
た高さに位置する。なお、複数の閉塞防止体８を
ノズル内に配置するとき、第１図に示すように相
互の閉塞防止体８間に若干の間隙d₁を設け、端部
にある閉塞防止体８と端部側壁４ａ，４ｂの内壁
面との間にも間隙d₂を設けることが好ましい。

閉塞防止体８の材質としては、耐熱性、耐食性
に優れ、注湯されるNd合金溶湯よりも比重が小
さなものが使用される。たとえば、Nd合金注湯
ノズル１及び注湯容器本体２と同材質の石英を使
用することができる。また、間隙Ｈは、溶湯を全
ノズル孔に均等に広がらせ、且つコスト面を考慮
した閉塞防止体の大きさ等から、15〜25mmの範囲
に維持することが好ましい。この間隙Ｈが10mm未
満であると、閉塞防止体８や長手方向側壁３ａ，
３ｂのちよつとした寸法のバラツキ等から、閉塞
防止体８が噴出口７に接近し過ぎて、溶湯が全ノ
ズル孔に均等に広がり難くなり、噴出口７によつ
ては噴出速度が異なつたものとなる。また、間隙
Ｈが30mmを超えるようになると、高価な石英で作
られている閉塞防止体８のサイズが大きくなり、
コストが高く、無駄になる。

第２図ａに示した状態で、注湯開始までの作業
が行われるため、溶解室３２に浮遊している微粒
子等が沈降したとき、噴出口７まで到達せず、閉
塞防止体８の周面に付着する。したがつて、噴出
口７は、異物付着がない清浄な状態に維持され
る。

また、閉塞防止体８を配置した状態で、高周波
コイル４２（第３図参照）によるノズル先端部の
予熱が行われるため、下端面６から閉塞防止体８
までの間隙Ｈにある雰囲気ガスの逸散が閉塞防止
体８で抑制される。そのため、昇温した雰囲気ガ
スが間隙Ｈに溜まる時間が長くなり、高い熱効率
での予熱が可能となり、予熱時間の短縮が図られ
る。

Nd合金注湯ノズル１の内部にNd合金溶湯９を
注湯すると、第２図ｂに示すように、比重差によ
つて閉塞防止体８は浮上し、噴出口７が開放され
る。このとき、最初に、注湯されたND合金溶湯
９が閉塞防止体８に当たり、下端面６の長手方向
に広がるため、各噴出口７から流出する溶湯流１
０の流量及び太さも極めて早い段階で一定したも
のとなる。その結果、目標品質をもつフレークが
歩留り良く製造される。たとえば、比重6.0g／cm³
のボンド磁石として（BH）_nax10.0MGOeの磁気
特性をもつ永久磁石用に使用されるフレークの製
造歩留りが、Nd合金原料を基準として91.4％で
あつた。これに対し、閉塞防止体８を使用しなし
場合（BH）_nax9.2MGOeのものが85.3％と特性、
歩留り共に低いものであつた。

〔考案の効果〕

以上に説明したように、本考案においては、ノ
ズル側壁に閉塞防止体を接触させて、噴出口の上
方に維持することによつて、溶解室内部に浮遊す
る異物等が噴出口に付着することが防止される。
そのため、噴出口の閉塞を起こすことなく、安定
した流れとしてNd合金溶湯を冷却ドラムの外周
面に噴射させることが可能となる。また、この閉
塞防止体は、噴出口の上方に雰囲気ガスの対流を
抑えた空間を形成するため、注湯に先立つ予熱段
階で熱効率良く且つ迅速にノズル先端部を予熱す
ることにも役立つ。また、注湯開始時にあつては
供給されたNd合金溶湯が閉塞防止体に一旦当た
つた後、噴出口が穿設された下端面に送り込まれ
るので、長手方向全長にわたつて均一な溶湯の分
配が行われ、各噴出口から流出する溶湯流の流量
及び太さが安定化する。このようにして、本考案
によるとき、作業性良く注湯開始が行われ、しか
も高い歩留りでフレークが製造される。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案実施例のNd合金注湯ノズルを
示し、第２図はノズル内部に配置した閉塞防止体
の挙動を説明するための図であり、第３図はNd
合金のフレークを製造する装置全体を示したもの
である。 １……Nd合金注湯ノズル、２……注湯容器本
体、３ａ，３ｂ……長手方向側壁、４ａ，４ｂ…
…端部側壁、５……偏平状内部空間、６……下端
面、７……噴出口、８……閉塞防止体、９……
Nd合金溶湯、１０……溶湯流。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 不活性雰囲気中で溶解したNd合金溶湯を冷却
   ドラムの外周面に噴射するNd合金注湯ノズルで
   あつて、長手方向側壁が上広がりとなつた偏平な
   先端部と、該先端部の下端面に直列状に穿設され
   た複数の噴出口と、前記長手方向側壁の内面に接
   触して前記噴出口の上方に配置される単数又は複
   数の閉塞防止体とを備えており、該閉塞防止体の
   比重が前記Nd合金溶湯の比重より小さいことを
   特徴とするNd合金注湯ノズル。