JP3780548B2 - ダイナミックダンパ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のドライブシャフト等の回転軸に取付けて、その回転軸に生じる有害振動を抑制するダイナミックダンパに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のドライブシャフトやプロペラシャフト等の回転軸には、その回転に伴って生じる回転アンバランスによる曲げ振動や捩じり振動等、本来発生しないのが望ましい有害振動を抑制するために、ダイナミックダンパが多く用いられている。これらのダイナミックダンパは、その固有振動数を励起される有害振動の卓越振動数に合わせることにより、回転軸の振動エネルギを共振によりダイナミックダンパの振動エネルギとして変換して吸収することでその機能を果している。
【0003】
このような従来のダイナミックダンパとして図4に示すものが知られている。このダイナミックダンパは、軸方向に所定間隔を隔てて回転軸に挿通支持される一対のリング状の固定部材11、11と、一対の固定部材11、11の間に位置し前記回転軸の外側に間隔を隔てて同軸的に配置される筒状の質量部材12と、各固定部材11、11と各固定部材11、11に隣接する質量部材12の各軸端とを一体的に連結し質量部材12の両軸端部を剪断方向に弾性支持する一対のゴム弾性部材13、13とで構成されている。
【0004】
このダイナミックダンパの固有振動数は、質量部材12の質量とゴム弾性部材13、13のばね定数とによって基本的に決まる。この場合、ゴム弾性部材13、13は、質量部材12の径方向における振動に対して剪断方向に荷重を受けることになるため、このゴム弾性部材13、13は剪断ばね定数を有する方向で質量部材12を弾性支持している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のようなダイナミックダンパの振動抑制効果は、ダイナミックダンパが取付けられる回転軸の共振周波数(固有振動数)とダイナミックダンパの共振周波数(固有振動数)とが一致した状態で最も大きくなり、それぞれの共振周波数がある小さい範囲を越えてずれてしまうと急激に小さくなる。
【0006】
しかし、回転軸の共振周波数は、シャフト径やシャフト長さ等のばらつきによるばらつきがあるとともに、ダイナミックダンパの共振周波数は、ゴム弾性体のゴム硬度のばらつきや温度等の環境変化に伴う特性の変化によるばらつきがあるため、両者の共振周波数が完全に一致する状態に調整することは極めて困難であるばかりでなく、それらのばらつき全てを満足し得る範囲内で調整することも困難である。
【0007】
本発明は上記実情に鑑み案出されたものであり、回転軸やダイナミックダンパの共振周波数のばらつきによって生じる振動抑制効果の低減を最小限にすることができるダイナミックダンパを提供することを解決すべき課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する請求項1の発明は、軸方向に所定間隔を隔てて回転軸に挿通支持される一対のリング状の固定部材と、一対の該固定部材の間に位置し前記回転軸の外側に間隔を隔てて同軸的に配置される筒状の質量部材と、各前記固定部材と各前記固定部材に隣接する前記質量部材の各軸端とを一体的に連結し前記質量部材の両軸端部を剪断方向に弾性支持する一対のゴム弾性部材とを備えたダイナミックダンパにおいて、前記ゴム弾性部材は、少なくとも径方向の肉厚を厚くすることにより剪断方向におけるばね定数が目標とする特定値よりも高く設定された高ばね部分と少なくとも径方向の肉厚を薄くすることにより剪断方向におけるばね定数が前記特定値よりも低く設定された低ばね部分とを有し、且つ前記高ばね部分及び前記低ばね部分が周方向において交互にそれぞれ2箇所に配置されていることにより、前記高ばね部分及び前記低ばね部分の各前記ばね定数と前記質量部材の質量とに基づいて前記回転軸の目標となる一つの共振周波数を跨ぐようにして二つの共振周波数が設定されていることを特徴とするものである。
【0009】
ここでの目標とする特定値とは、回転軸の目標となる共振周波数に対応して、質量部材の質量とゴム弾性部材のばね定数とによって決まるダイナミックダンパの共振周波数を設定する際のばね定数の値のことをいう。
なお、ゴム弾性体の高ばね部分と低ばね部分とにより設定されるダイナミックダンパの二つの共振周波数は、回転軸の目標となる共振周波数に対して±10%の範囲に設定することが好ましい。
【0010】
【作用】
本発明のダイナミックダンパでは、質量部材の両軸端部を剪断方向に弾性支持する一対のゴム弾性部材は、少なくとも径方向の肉厚を厚くすることにより剪断方向におけるばね定数が目標とする特定値よりも高く設定された高ばね部分と、少なくとも径方向の肉厚を薄くすることにより剪断方向におけるばね定数が前記特定値よりも低く設定された低ばね部分とを有し、前記高ばね部分及び前記低ばね部分が周方向において交互にそれぞれ2箇所に配置されている。
【0011】
これにより、本発明のダイナミックダンパを取付けた回転軸が回転すると、ゴム弾性部材の高ばね部分の径方向と低ばね部分の径方向において図3に示すような質量部材の共振現象が表れる。即ち、低ばね部分の中央部の方向においては、回転軸の目標とする共振周波数よりも少し小さい周波数でピークとなる共振特性(実線で示す)が表れ、高ばね部分の中央部の方向においては、回転軸の目標とする共振周波数よりも少し大きい周波数でピークとなる共振特性(点線で示す)が表れる。そして、低ばね部分の中央部と高ばね部分の中央部との間の方向においては、その変位角度に応じて連続的に変化する中間の周波数でピークとなる共振特性が表れる。
【0012】
したがって、本発明のダイナミックダンパは、回転軸の目標となる一つの共振周波数を跨ぐようにして二つの共振周波数が広範囲に設定されることとなり、回転軸やダイナミックダンパの共振周波数のばらつきによって生じる振動抑制効果の低減が最小限に抑制される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本実施形態に係るダイナミックダンパの軸方向に沿う断面図であり、図2はその側面図である。
本実施形態のダイナミックダンパは、ドライブシャフト等の回転軸(図示せず)の円柱状部分の外周面上に、軸方向に所定間隔を隔てて挿通支持される一対のリング状の固定部材1、1と、一対の固定部材1、1の間に位置し回転軸の外側に間隔を隔てて同軸的に配置される筒状の質量部材2と、各固定部材1、1と質量部材2の各軸端とを一体的に連結し高ばね部分3a、3a及び低ばね部分3b、3bを有する一対のゴム弾性部材3、3とで構成されている。
【0014】
固定部材1、1は、リング状をなして一対で使用され、天然ゴム等のゴム材料で形成されている。リング状の固定部材1の中心軸孔を形成する内周面の直径は、ドライブシャフトの外周面の直径よりも少し小さく形成されている。また、固定部材1の外周面には、固定バンドが締結されるリング状の係止溝1aが形成されている。
【0015】
質量部材2は、厚肉鋼管等の円筒状金属製質量体の外周面及び内周面に天然ゴム等のゴム材料をコーティングしたものである。この質量部材2の内周面と回転軸の外周面との間には、質量部材2の径方向における変位を可能にする空所が形成されている。なお、この空所は1〜2mm程度あれば充分にその機能を果たすことができる。
【0016】
ゴム弾性部材3、3は、天然ゴム等のゴム材料で略中空円錐台形状に形成されており、その小径側が固定部材1に連結されているとともに、その大径側が質量部材2の軸端に連結されている。各ゴム弾性部材3、3は、剪断方向におけるばね定数が目標とする特定値よりも高く設定された二つの高ばね部分3a、3aと前記特定値よりも低く設定された二つの低ばね部分3b、3bとを有し、これら高ばね部分3a、3a及び低ばね部分3b、3bは周方向において略四等分された幅で形成されて交互に配置されている。
【0017】
高ばね部分3a、3aは、軸方向の長さを短くしかつ径方向に厚く形成することにより前記特定値よりも高い所定のばね定数に設定されている。また、低ばね部分3b、3bは、軸方向の長さを長くしかつ径方向に薄く形成することにより前記特定値よりも低い所定のばね定数に設定されている。また、質量部材2の径方向における変位を可能にする前記空所の軸方向の長さを、高ばね3a.3a間は短く、低ばね部分3b.3b間は長くなるように設定して、ばね定数が異なるようにしている。
【0018】
なお、このゴム弾性体3、3は、両固定部材1、1及び質量部材2のコーティングゴムとともに一体加硫成形により形成されている。
以上のように構成された本実施形態のダイナミックダンパは、次のように使用される。まず、ダイナミックダンパをドライブシャフトに取付ける場合には、ドライブシャフトが自動車の車体に取付けられる前に、ダイナミックダンパの固定部材1、1の内孔を拡開してドライブシャフトの軸端から圧入し、所定の位置にダイナミックダンパを配置する。そして、両固定部材1、1の係止溝1a、1a内に固定バンドを締結することによりダイナミックダンパがドライブシャフトに取付けられる。
【0019】
そして、ドライブシャフトの回転に伴って有害な振動が励起されると、その有害振動の振動数に固有振動数を適合させたダイナミックダンパの質量部材2がゴム弾性部材3、3の剪断変形を介して共振することにより、ドライブシャフトの振動エネルギが吸収され、励起された有害振動は抑制される。この場合、ダイナミックダンパの共振周波数は、ドライブシャフトの目標となる一つの共振周波数を跨ぐようにして二つの共振周波数を有するように広範囲に設定されているため、ドライブシャフト及びダイナミックダンパの共振周波数に多少のばらつきが生じていても、ドライブシャフトの共振周波数とダイナミックダンパの共振周波数とがばらつき等によって大きくずれてしまう可能性は少ない。したがって、ドライブシャフトの共振周波数とダイナミックダンパの共振周波数とが一致した状態となり、ダイナミックダンパの最大限の振動抑制効果を発揮できる状態が確保される。
【0020】
以上のように、本実施形態のダイナミックダンパは、回転軸の目標となる一つの共振周波数を跨ぐようにして二つの共振周波数が広範囲に設定されているため、回転軸やダイナミックダンパの共振周波数のばらつきによって生じる振動抑制効果の低減を最小限にすることができる。
なお、本実施形態では、ゴム弾性部材3の高ばね部分3a及び低ばね部分3bは周方向においてそれぞれ2箇所に設けられているが、それぞれ3箇所以上に設けるようにしてもよい。
【0021】
また、本実施形態では、ゴム弾性部材3の高ばね部分3a及び低ばね部分3bは、それらの長さや厚さを異ならせることによりばね定数が異なるように構成されているが、他の実施形態として、それらのゴム硬度を異ならせることによりばね定数が異なるように構成してもよい。
【0022】
【発明の効果】
本発明のダイナミックダンパによれば、ゴム弾性部材は、少なくとも径方向の肉厚を厚くすることにより剪断方向におけるばね定数が目標とする特定値よりも高く設定された高ばね部分と少なくとも径方向の肉厚を薄くすることにより剪断方向におけるばね定数が前記特定値よりも低く設定された低ばね部分とを有し、高ばね部分及び低ばね部分が周方向において交互にそれぞれ2箇所に配置されていることにより、高ばね部分及び低ばね部分の各ばね定数と質量部材の質量とに基づいて回転軸の目標となる一つの共振周波数を跨ぐようにして二つの共振周波数が広範囲に設定されているため、回転軸やダイナミックダンパの共振周波数のばらつきによって生じる振動抑制効果の低減を最小限に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るダイナミックダンパの軸方向に沿う断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るダイナミックダンパの側面図である。
【図3】本発明に係るダイナミックダンパの質量部材の加速度レベルと周波数との関係を示すグラフである。
【図4】従来のダイナミックダンパの軸方向に沿う断面図である。
【符号の説明】
1…固定部材 1a…係止溝 2…質量部材 3…ゴム弾性部材
3a…高ばね部分 3b…低ばね部分
Claims (1)
- 軸方向に所定間隔を隔てて回転軸に挿通支持される一対のリング状の固定部材と、一対の該固定部材の間に位置し前記回転軸の外側に間隔を隔てて同軸的に配置される筒状の質量部材と、各前記固定部材と各前記固定部材に隣接する前記質量部材の各軸端とを一体的に連結し前記質量部材の両軸端部を剪断方向に弾性支持する一対のゴム弾性部材とを備えたダイナミックダンパにおいて、
前記ゴム弾性部材は、少なくとも径方向の肉厚を厚くすることにより剪断方向におけるばね定数が目標とする特定値よりも高く設定された高ばね部分と少なくとも径方向の肉厚を薄くすることにより剪断方向におけるばね定数が前記特定値よりも低く設定された低ばね部分とを有し、且つ前記高ばね部分及び前記低ばね部分が周方向において交互にそれぞれ2箇所に配置されていることにより、前記高ばね部分及び前記低ばね部分の各前記ばね定数と前記質量部材の質量とに基づいて前記回転軸の目標となる一つの共振周波数を跨ぐようにして二つの共振周波数が設定されていることを特徴とするダイナミックダンパ。
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