JP4496488B2 - 筒型ダイナミックダンパ - Google Patents

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Description

本発明は、例えば自動車のドライブシャフトやプロペラシャフト等の回転軸に取付けられて、その回転軸に生じる有害振動を抑制する筒型ダイナミックダンパに関する。
自動車に装備されるドライブシャフトやプロペラシャフト等の回転軸には、その回転に伴って生じる回転アンバランスによる曲げ振動や捩じり振動等の、本来発生しないのが望ましい有害振動が発生することから、その有害振動を抑制するために、種々のダイナミックダンパが用いられている。このダイナミックダンパは、回転軸に励起される有害振動の卓越振動数にその共振周波数(固有振動数)を合わせることにより、回転軸の振動エネルギを共振によりダイナミックダンパの振動エネルギに変換して吸収することでその機能を果すものである。
このようなダイナミックダンパとして、例えば特許文献1〜3には、回転軸の外周側に距離を隔てて同軸状に配置される筒状の質量部材と、該質量部材の軸方向両側に位置し前記回転軸の外周面に取付けられる一対のリング状の固定部と各該固定部と前記質量部材の各軸端部とにそれぞれ連結されて前記質量部材を弾性支持する一対のテーパ筒状の弾性支持部とを有する一対のゴム弾性支持部材とを備えた筒型ダイナミックダンパが開示されている。
そして、特許文献1及び2には、ゴム弾性支持部材は、その肉厚や軸方向長さを変化させることによって形成された、軸直角方向におけるばね定数が特定値よりも高く設定された高ばね部分と前記特定値よりも低く設定された低ばね部分とを有し、それら高ばね部分と低ばね部分が周方向において交互に配置されるように構成することが開示されている。なお、特許文献1においては、質量部材の両軸端部には、低ばね部分の一端が連結される軸方向内方へ凹んだ凹端面と、該凹端面よりも軸方向外方に位置し高ばね部分の一端が連結される凸端面が周方向において交互に設けられている。これにより、特許文献1及び2の筒型ダイナミックダンパは、回転軸の目標となる一つの共振周波数を跨ぐようにして筒型ダイナミックダンパの複数の共振周波数を広範囲に設定することができることから、回転軸や筒型ダイナミックダンパの共振周波数のばらつきによって生じる振動抑制効果の低減を最小限に抑えることが可能となる。なお、筒型ダイナミックダンパの共振周波数は、質量部材の質量とゴム弾性支持部材の軸直角方向のばね定数とによって基本的に決まるものである。
また、引用文献3には、質量部材の両軸端部の内周側角部において、質量部材の軸方向端面と内周面に亘って面取り状に広がる傾斜面を、周方向に連続したテーパ筒形状に形成して、該傾斜面に対してゴム弾性支持部材の一方の軸端部を固着するように構成することが開示されている。これにより、ゴム弾性支持部材を軸方向内方にシフトさせて位置させることが可能となり、ゴム弾性支持部材の有効自由長を確保しながら、ゴム弾性支持部材における質量部材の軸方向端面からの軸方向突出長さを小さくすることができることから、質量部材の質量確保と全体サイズのコンパクト化を、両立して達成することが可能となる。
ところで、自動車に装備されるドライブシャフト等の回転軸には、車輪のホイールを介して伝達される振動により有害振動が励起されることが知られている。よって、それら回転軸に装着されるダイナミックダンパの共振周波数をチューニングする場合には、ホイールの共振周波数(固有振動数)も考慮しなければならない。しかし、通常使用されるホイールは、鉄製のものとアルミ製のものとに大別されるが、鉄製ホイールの共振周波数とアルミ製ホイールの共振周波数は大きく離れており、アルミ製ホイールの共振周波数は鉄製ホイールの共振周波数の約1.5倍以上となる。
そのため、特許文献1及び2に開示されているタイプの筒型ダイナミックダンパにおいて、鉄製ホイール用とアルミ製ホイール用の二つの共振周波数をチューニングしようとしても、ゴム弾性支持部材の高ばね部分と低ばね部分が質量部材を弾性支持するように構成されていることから、それらの肉厚や自由長の調整を最大限に行っても、高周波側の共振周波数が低周波側の共振周波数の1.5倍程度となるようにチューニングするのが限界となる。
また、質量部材の両軸端部を一対のゴム弾性支持部材で弾性支持するようにした構造の筒型ダイナミックダンパでは、ゴム弾性支持部材における質量部材への連結部位に応力が集中し易く、その連結部位に質量部材のエッジ部(内周側角部)が存在することによって更なる応力集中が発生して、ゴム弾性支持部材の耐久性が十分に確保され難くなる恐れがある。その点、特許文献1においては、質量部材の両軸端部に、周方向において交互に設けられる凹端面と凸端面が軸方向において段差状に形成されることから、高ばね部分と低ばね部分のばね比を大きくしようとすると、凹端面と凸端面の段差が大きくなり易いため、耐久性を十分に確保する上で不利となる。
特開2004−92674号公報 特開平9−89047号公報 特開2002−98193号公報
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、二つの異なる共振周波数をより大きく離してチューニングすることができ、且つ耐久性を有利に確保することができる筒型ダイナミックダンパを提供することを解決すべき課題とするものである。
記課題を解決する本発明は、回転軸の外周側に距離を隔てて同軸状に配置される筒状で軸方向長さが全周に亘って一定の質量部材と、該質量部材の軸方向両側に位置し前記回転軸の外周面に取付けられる一対のリング状の固定部と各該固定部と前記質量部材の各軸端部とにそれぞれ連結されて前記質量部材を弾性支持する一対の筒状の弾性支持部とを有する一対のゴム弾性支持部材と、を備えた筒型ダイナミックダンパにおいて、前記質量部材は、両前記軸端部の内周側角部に面取り状に設けられた周方向において形状が変化する傾斜面を有し、該傾斜面に一端が連結された前記弾性支持部の自由長が周方向において変化するように構成されていることを特徴としている。
なお、本明細書において、質量部材の傾斜面に一端が連結された弾性支持部の自由長Laとは、質量部材の傾斜面と端面とが交わる交線P1及び傾斜面と内周面とが交わる交線P2を通って質量部材の軸Oと交わる直線L1に対して直角に交わる弾性支持部の弾性主軸Lb方向において、直線L1と、弾性支持部の内周面と固定部の内周面とが交わる交線P3を通り直線L1と平行な直線L2と、の間の長さのことをいう。また、質量部材の傾斜面が設けられていない部位に一端が連結されている場合の弾性支持部の自由長Laは、質量部材の端面と内周面とが交わる交線P4を通って質量部材の軸Oと45°の角度で交わる弾性支持部の弾性主軸Lb方向において、交線P4を通って弾性主軸Lbと直角に交わる直線L3と、交線P3を通り直線L3と平行な直線L4と、の間の長さのことをいう。
本発明の筒型ダイナミックダンパでは、質量部材の両軸端部の内周側角部に周方向において形状が変化する傾斜面が設けられ、その傾斜面に一端が連結された弾性支持部の自由長が周方向において変化するように構成されていることから、弾性支持部の自由長が最大となる部分と最小となる部分とにおいて、軸直角方向におけるばね比をより大きく設定することが可能となる。これにより、二つの異なる共振周波数をより大きく離してチューニングすることが可能となる。この場合、傾斜面の形状を、周方向において無段階的に徐々に変化するように形成することにより、その傾斜面に一端が連結される弾性支持部の自由長が周方向において無段階的に徐々に変化することとなり、極めて滑らかに変化させることが可能となる。
また、本発明の筒型ダイナミックダンパでは、荷重入力時に応力集中が発生し易いゴム弾性支持部材の軸方向内側端部が、質量部材の両軸端部の内周側角部に面取り状に形成された傾斜面に連結されていることから、ゴム弾性支持部材における応力集中が緩和されて亀裂等の発生が防止されることにより、良好な耐久性が有利に確保される。
本発明において、質量部材は、ゴム弾性支持部材の弾性支持部の軸直角方向のばね定数との関係において、所定の質量を有するように筒状に形成される。この質量部材の形成には、比重が大きい鉄系金属を好適に採用することができ、パイプ材や鋳造品、鍛造品等から有利に形成することができる。質量部材の両軸端部の内周側角部に設けられる傾斜面は、質量部材の端面と内周面に亘って面取り状に形成されるものであって、周方向において形状が徐々に変化するように形成される。傾斜面は、例えば、質量部材の軸に対する傾斜角度が略一定でその形成位置を軸方向に徐々に変化させることにより形成したり、或いは質量部材の軸に対する傾斜角度を周方向において徐々に変化させることにより形成することができる。
本発明における傾斜面は、筒状に形成される質量部材の周方向のバランスを考慮して形成されるものであって、質量部材の軸方向両端面において、質量部材の内孔を挟んで軸対称となる2箇所の部位に、軸方向内方へ最も深く入り込んだ部分が位置するようにして、その最も深く入り込んだ部分から周方向両側へ向かうに連れて軸方向内方への入り込みが無段階的に徐々に浅くなるように形成される。なお、この傾斜面は、軸対称となる部位であれば、2箇所に限らず4箇所以上に設けることも可能である。
本発明においては、質量部材の傾斜面が上記のように設けられることによって、傾斜面に一端が連結されたゴム弾性支持部材の弾性支持部の自由長が、周方向において無段階的に徐々に変化するように構成される。これにより、弾性支持部の自由長が最大となる部分と最小となる部分とにおいて、軸直角方向におけるばね比をより大きく設定することが可能となるので、筒型ダイナミックダンパに設定される二つの異なる共振周波数をより大きく離してチューニングすることが可能となる。なお、弾性支持部の自由長に基づいて、弾性支持部の軸直角方向のばね定数を設定する際には、弾性支持部の肉厚も考慮されることから、弾性支持部の内周面及び外周面の少なくとも一方の面にすぐりを設けることにより、弾性支持部の設定されるばね定数を適宜調整することができる。
本発明におけるゴム弾性支持部材は、通常、成形型内の所定位置に位置決め配置された質量部材とともに加硫成形することにより、質量部材と一体的に固着された状態に形成される。この際、質量部材の周方向において形状が徐々に変化する傾斜面に対して、ゴム弾性支持部材の弾性支持部の一端部が連結されることから、質量部材と弾性支持部材との回転方向における位置合わせが必要となる。そのため、質量部材が成形型内に配置される際に成形型に対する回転方向の位置決めに用いられる係合凹部を質量部材に設けることにより、成形作業を容易にすることが可能となるばかりでなく、不良製品の発生も低減することができる。この係合凹部は、例えば、質量部材の支持面の1箇所又は複数箇所に切り欠きを形成したり、或いは二面巾を形成することにより設けることができる。
本発明の筒型ダイナミックダンパによれば、質量部材は、両軸端部の内周側角部に面取り状に設けられた周方向において形状が変化する傾斜面を有し、その傾斜面に一端が連結された弾性支持部の自由長が周方向において変化するように構成されているため、二つの異なる共振周波数をより大きく離してチューニングすることができるとともに、耐久性を有利に確保することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔実施形態1〕
図1は本実施形態に係る筒型ダイナミックダンパの軸方向に沿う断面図であって図2のI−O−I線矢視断面図であり、図2はその筒型ダイナミックダンパの左側面図であり、図3はその筒型ダイナミックダンパの右側面図であり、図4はその筒型ダイナミックダンパの軸方向に沿う断面図であって図2のIV−O−IV線矢視断面図である。
本実施形態の筒型ダイナミックダンパは、図1〜図3に示すように、回転軸(図示せず)の外周側に距離を隔てて同軸状に配置される筒状の質量部材1と、質量部材1の軸方向両側に位置し前記回転軸の外周面に取付けられる一対のリング状の固定部21、21と各固定部21、21と質量部材1の各軸端部とにそれぞれ連結されて質量部材1を弾性支持する一対のテーパ筒状の弾性支持部22、22とを有する一対のゴム弾性支持部材2、2と、から構成されている。
質量部材1は、鉄系金属パイプ材を切削加工することにより略一定の肉厚で略一定の径を有し軸方向長さが全周に亘って一定の円筒状に形成された質量体11と、質量体11の表面を被覆する被覆ゴム層15とからなり、所定の質量を有する。質量体11の両軸端部の内周側角部には、質量体11の端面と内周面に亘って面取り状に設けられた傾斜面12、12が周方向において形状が徐々に変化するように形成されている。この傾斜面12、12は、質量部材1の軸Oに対する傾斜角度αが略一定(45°)で、傾斜面12、12の形成位置が軸方向に徐々に変化するように形成されている。即ち、この傾斜面12、12は、質量体11の軸方向両端面において、質量体11の内孔を挟んで軸対称となる2箇所の部位(図2において左右両側)に、軸方向内方へ最も深く入り込んだ部分が位置するようにして、その最も深く入り込んだ部分から周方向両側(図2において上下両側)へ向かうに連れて軸方向内方への入り込みが無段階的に徐々に浅くなるように形成されている。
傾斜面12、12の軸方向内方へ最も深く入り込んだ部分は、図1の上側半分の断面に表されており、そこから図2において時計回り方向に約22.5°進んだ部分は、図4の上側半分の断面に表されており、更にそこから図2において時計回り方向に約45°進んだ部分は、図4の下側半分の断面に表されている。このように形成された傾斜面12、12は、図2及び図3に鎖線で示すように、その内周端形状が質量体11の内周形状と同じ大きさの円形となっているのに対して、その外周端形状は短径側が内周端の円形と略同じ大きさの楕円形となっている。
被覆ゴム層15は、天然ゴム等のゴム材料を加硫成形することにより形成されており、質量体11の内周面及び外周面にそれらの面の略全体を覆うようにして加硫接着されている。この被覆ゴム層15は、ゴム弾性支持部材2を質量体11とともに加硫成形して形成する際に、ゴム弾性体支持部材2と一体に連結された状態に形成されている。その際、被覆ゴム層15及びゴム弾性体支持部材2を同時に加硫成形する成形型には、成形型内に配置される質量体11を位置決め支持するための支持ピンが設けられており、その支持ピンが質量体11に当接する部位には被覆ゴム層15形成されずに、支持ピンの当接部形状に対応する形状の凹部16が複数箇所(本実施形態では8箇所)に形成されている。また、質量体11の一端側外周部の1箇所には、成形型に対する周方向の位置決めを確実にするために、切り欠き状に形成された係合凹部13が設けられている。
ゴム弾性支持部材2は、このゴム弾性支持部材2及び上記被覆ゴム層15を加硫成形する成形型内に質量体11を位置決め配置して、天然ゴム等のゴム材料を加硫成形することにより、質量体11の表面を覆う被覆ゴム層15と一体に連結された状態に形成されている。このゴム弾性支持部材2は、質量部材1の軸方向両側に位置し回転軸の外周面に圧入により嵌装されて取付けられる一対のリング状の固定部21、21と、各固定部21、21と質量部材1の各軸端部とにそれぞれ連結されて質量部材1を弾性支持する一対のテーパ筒状の弾性支持部22、22とからなり、質量部材1に対して同軸状に配置されている。固定部21、21は、回転軸の外径よりも少し小さい内径をもち、回転軸に取付けられたときに回転軸の外周面に圧着するようにされている。なお、一方の固定部21の外周面には、回転軸への取付け後に固定バンド(図示せず)が装着されるリング状の凹溝21aが設けられている。
弾性支持部22、22は、被覆ゴム層15よりも十分に厚肉のテーパ筒状に形成されており、その小径側が一方の固定部21に連結されているととともに、その大径側が質量体11の一方の軸端部に加硫接着により固着されている。弾性支持部22、22の大径側端部は、その肉厚方向の中央部が質量体11の両軸端部の内周側角部に設けられた傾斜面12、12の付近に位置するように連結されており、これにより、質量部材1の軸方向両側で質量部材1の両軸端部を弾性支持するようにされている。
この弾性支持部22、22は、質量体11の両軸端部の内周側角部に設けられた傾斜面12、12の形状が、周方向において徐々に変化するように形成されていることに対応して、傾斜面12、12に連結されている部分の自由長Laが周方向において徐々に変化するように構成されている。即ち、弾性支持部22、22の自由長Laは、傾斜面12、12が軸方向内方へ最も深く入り込んだ部分(図1の上側半分の断面に表された部分)で最も長くなり、逆に、そこから周方向両側へ90°位相がずれた位置(質量体11の傾斜面12、12が設けられていない部位であり、図1の下側半分に一方の位置が表されている)で最も短くなっている。
なお、質量体11の傾斜面12、12に一端が連結された弾性支持部22、22の自由長Laは、図1の上側半分及び図4に示すように、質量体11の傾斜面12、12(交線P1及びP2)を通って質量部材1の軸Oと交わる直線L1に対して直角に交わる弾性支持部22、22の弾性主軸Lb方向において、直線L1と、弾性支持部22、22の内周面と固定部21、21の内周面とが交わる交線P3を通り直線L1と平行な直線L2と、の間の長さである。また、図1の下側半分に示すように、質量体11の傾斜面12、12が設けられていない部位に一端が連結されている場合の弾性支持部22、22の自由長Laは、質量体11の端面と内周面とが交わる交線P4を通って質量部材1の軸Oと45°の角度で交わる弾性支持部22、22の弾性主軸Lb方向において、交線P4を通って弾性主軸Lbと直角に交わる直線L3と、交線P4を通り直線L1と平行な直線L4と、の間の長さである。
また、弾性支持部22、22の自由長Laが長くされている部分の内周面及び外周面には、その部分の肉厚が薄くなるように内側すぐり23、23と外側すぐり24、24が設けられていることにより、自由長Laが最も長くされている部位に向かうほど軸直角方向のばね定数がより小さくなるように調整されている。これらの内側すぐり23、23及び外側すぐり24、24は、軸Oを中心とする円周方向において約120°の角度範囲に設けられている(図2参照。)。
これにより、弾性支持部22、22の軸直角方向のばね定数は、軸O上で直交する2方向のばね比が最も大きくなるように設定されている。即ち、弾性支持部22、22の自由長Laが最も長くされている部位どうしを結ぶ方向のばね定数が最も小さくなるようにされ、自由長Laが最も短くされている部位どうしを結ぶ方向のばね定数が最も大きくなるようにされている。なお、本実施形態では、弾性支持部22、22の内側すぐり23、23及び外側すぐり24、24が設けられている部位の肉厚は、円周方向において略一定にされているが、自由長Laが最も長くされている部位から円周方向に遠ざかるに連れて肉厚が次第に厚くなるようにすることによって、円周方向におけるばね定数の大小の差がより大きくなるようにすることが可能である。
本実施形態の筒型ダイナミックダンパは、弾性支持部22、22が上記のように構成されていることにより、弾性支持部22、22の自由長Laが最も長くされている部分のばね定数と質量部材1の質量とに基づいて、目標とする一つの低周波数側の共振周波数f1(例えば、鉄製ホイール用としての低周波数側の共振周波数)がチューニングされている。また、弾性支持部22、22の自由長Laが最も短くされている部分のばね定数と質量部材1の質量とに基づいて、目標とする一つの高周波数側の共振周波数f2(例えば、アルミ製ホイール用としての高周波数側の共振周波数)がチューニングされている。これら二つの共振周波数f1及びf2は、弾性支持部22、22の自由長Laが最大となる部分と最小となる部分とにおける軸直角方向のばね比をより大きく設定することができるので、大きく離れた共振周波数にチューニングされている。
以上のように構成された本実施形態の筒型ダイナミックダンパは、図5に示すように、自動車のドライブシャフト等の回転軸5の軸端から治具等を用いて圧入されて、回転軸5の外周面の所定部位(通常、軸方向中央部の腹となる部位)に装着され、その後、ゴム弾性支持部材2の一方の固定部21に設けられた凹溝21aに固定バンド(図示せず)を装着することにより、回転軸5の外周面に強固に固定される。これにより、回転軸5の外周側に距離を隔てて同軸状に配置された質量部材1が、回転軸5に対して一対のゴム弾性支持部材2、2の弾性支持部22、22で両端部を弾性支持された状態に取付けられる。
そして、回転軸5の回転に伴って曲げ振動や捩じり振動等の有害振動が励起されて、筒型ダイナミックダンパにチューニングされた二つの共振周波数f1、f2に近い周波数の振動が発生すると、質量部材1がゴム弾性支持部材2、2の弾性支持部22、22の弾性変形を介して共振することにより、回転軸5の振動エネルギが吸収され、回転軸5に励起された有害振動が効果的に抑制される。
このとき、自動車の車輪に鉄製ホイールが使用されている場合には、鉄製ホイール用として、弾性支持部22、22の自由長Laが最も長くされている部分のばね定数に基づいてチューニングされた共振周波数f1に近い周波数の振動が励起されるので、鉄製ホイールを介して回転軸5に伝達される有害振動は筒型ダイナミックダンパにより効果的に抑制される。また、自動車の車輪にアルミ製ホイールが使用されている場合には、アルミ製ホイール用として、弾性支持部22、22の自由長が最も短くされている部分のばね定数に基づいてチューニングされた共振周波数f2に近い周波数の振動が励起されるので、アルミ製ホイールを介して回転軸5に伝達される有害振動も筒型ダイナミックダンパにより効果的に抑制される。
以上のように、本実施形態の筒型ダイナミックダンパは、質量部材1の両軸端部の内周側角部に周方向において形状が徐々に変化する傾斜面12、12が設けられ、その傾斜面12、12に一端が連結された弾性支持部22、22の自由長Laが周方向において徐々に変化するように構成されていることから、弾性支持部22、22の自由長Laが最大となる部分と最小となる部分とにおける軸直角方向のばね比をより大きく設定することができるので、二つの異なる共振周波数f1、f2をより大きく離してチューニングすることができる。この場合、弾性支持部22、22は、周方向において形状が徐々に変化する傾斜面12、12に対して一端が連結されているため、弾性支持部22、22の自由長Laが周方向において無段階的に徐々に変化することとなり、極めて滑らかに変化させることができる。
また、本実施形態の筒型ダイナミックダンパは、傾斜面12、12に一端が連結された弾性支持部22、22の自由長Laが最も長くされている部分の内周面及び外周面に、内側すぐり23、23及び外側すぐり24、24が設けられていることにより、その部分の軸直角方向のばね定数が小さくなるよう調整されているため、弾性支持部22、22の自由長が最大となる部分と最小となる部分とにおける軸直角方向のばね比を更により大きく設定することができ、二つの共振周波数f1、f2を更により大きく離してチューニングすることができる。
また、本実施形態の筒型ダイナミックダンパでは、荷重入力時に応力集中が発生し易いゴム弾性支持部材2、2の軸方向内側端部が、質量部材1の両軸端部の内周側角部に面取り状に形成された傾斜面12、12に連結されていることから、ゴム弾性支持部材2、2における応力集中が緩和されて亀裂等の発生が防止されることにより、良好な耐久性を有利に確保することができる。
さらに、本実施形態の筒型ダイナミックダンパによれば、弾性支持部22、22の自由長Laが長くされた部位は、質量部材1の両軸端部の内周側角部に面取り状に設けられた傾斜面12、12に対して連結されていることにより、軸方向内方に向かって長くなるようにされているので、質量部材1の軸方向外方に位置する部位の軸方向長さを長くする必要がない。そのため、筒型ダイナミックダンパ全体の軸方向長さが長くならないので、軸方向における大型化を回避することができる。
〔実施形態2〕
図6は本実施形態に係る筒型ダイナミックダンパの左側面図であり、図7は図6のVII−O−VII 線矢視断面図であり、図8はその筒型ダイナミックダンパの右側面図であり、図9は図6のIX−O線矢視断面図であり、図10は図6のX−O線矢視断面図である。
本実施形態の筒型ダイナミックダンパは、図6〜図10に示すように、質量体11及びゴム被覆層12からなる筒状の質量部材1と、一対のリング状の固定部21、21及び一対のテーパ筒状の弾性支持部22a、22aを有する一対のゴム弾性支持部材2、2と、から構成されており、実施形態1のものと基本的構成が同じであるが、質量体11の両軸端部の内周側角部に設けられる傾斜面12a、12aの形成の仕方が異なる。よって、実施形態1と共通する構成部材や部位等については図6〜図10に同じ符号を付して詳しい説明は省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
本実施形態において、質量体11の端面と内周面に亘って面取り状に設けられた傾斜面12a、12aは、質量部材1の軸Oに対する傾斜角度βが周方向において徐々に変化するように形成されている。即ち、この傾斜面12a、12aは、質量体11の軸方向両端面において、質量体11の内孔を挟んで軸対称となる2箇所の部位(図6において左右両側)に、傾斜角度βが最も小さくなることによって軸方向内方へ最も深く入り込んだ部分が位置するようにして、その最も深く入り込んだ部分から周方向両側(図6において上下両側)へ向かうに連れて、質量体11の端面を起点とする軸Oに対する傾斜角度βが徐々に大きくなる変化することにより、軸方向内方への入り込みが無段階的に徐々に浅くなるように形成されている。
傾斜面12a、12aの軸方向内方へ最も深く入り込んだ部分は、図7の上側半分の断面に表されており、そこから図6において時計回り方向に約22.5°進んだ部分は、図9の断面に表されており、更にそこから図6において時計回り方向に約22.5°進んだ部分は、図10の断面に表されている。このように形成された傾斜面12a、12aは、図6及び図8に鎖線で示すように、質量体11の肉厚幅よりも少し小さい略一定の幅で質量体11の内周面に沿って周方向に延びる円弧形状に形成されている。
一方、質量体11の両軸端部に設けられた傾斜面12a、12aに一端が連結される弾性支持部22a、22aは、傾斜面12a、12aの形状が周方向において徐々に変化するように形成されていることに対応して、その自由長Laが周方向において徐々に変化するように構成されている。即ち、弾性支持部22a、22aの自由長Laは、傾斜面12a、12aが軸方向内方へ最も深く入り込んだ部分(図7の上側半分の断面に表された部分)で最も長くなり、逆に、そこから周方向両側へ90°位相がずれた位置(図7の下側半分に一方の位置が表されている)で最も短くなっている。
そして、弾性支持部22a、22aの自由長Laが最も長くされている部分の内周面及び外周面に設けられている内側すぐり23、23及び外側すぐり24、24は、実施形態1の場合と同様に、軸Oを中心とする円周方向において約120°の角度範囲に設けられている(図6参照。)。また、弾性支持部22a、22aの軸直角方向のばね定数は、実施形態1の場合と同様に、軸O上で直交する2方向のばね比が最も大きくなるように設定されている。
以上のように構成された本実施形態の筒型ダイナミックダンパは、実施形態1の場合と同様に、弾性支持部22a、22aの自由長Laが最も長くされている部分のばね定数と質量部材1の質量とに基づいて低周波数側の共振周波数f1がチューニングされているとともに、弾性支持部22a、22aの自由長Laが最も短くされている部分のばね定数と質量部材1の質量とに基づいて、高周波数側の共振周波数f2がチューニングされている。そして、本実施形態の筒型ダイナミックダンパも、実施形態1の場合と同様の優れた作用及び効果を奏する。
〔実施形態3〕
図11は本実施形態に係る筒型ダイナミックダンパの左側面図であり、図12は図11のXII −O−XII 線矢視断面図であり、図13はその筒型ダイナミックダンパの右側面図であり、図14は図11のXIV −O線矢視断面図であり、図15は図11のXV−O線矢視断面図である。
本実施形態の筒型ダイナミックダンパは、図11〜図15に示すように、質量体11及びゴム被覆層12からなる筒状の質量部材1と、一対のリング状の固定部21、21及び一対のテーパ筒状の弾性支持部22b、22bを有する一対のゴム弾性支持部材2、2と、から構成されており、実施形態1のものと基本的構成が同じであるが、質量体11の両軸端部の内周側角部に設けられる傾斜面12b、12bの形成の仕方が異なる。よって、実施形態1と共通する構成部材や部位等については図11〜図15に同じ符号を付して詳しい説明は省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
本実施形態において、質量体11の端面と内周面に亘って面取り状に設けられた傾斜面12b、12bは、質量部材1の軸Oに対する傾斜角度θが周方向において徐々に変化するように形成されている。即ち、この傾斜面12b、12bは、質量体11の軸方向両端面において、質量体11の内孔を挟んで軸対称となる2箇所の部位(図11において左右両側)に、傾斜角度θが最も大きくなることによって径方向外方へ最も深く入り込んだ部分が位置するようにして、その最も深く入り込んだ部分から周方向両側(図11において上下両側)へ向かうに連れて、質量体11の内周面を起点とする軸Oに対する傾斜角度θが徐々に小さくなるように変化することにより、径方向外方への入り込みが無段階的に徐々に浅くなるように形成されている。
傾斜面12b、12bの径方向外方へ最も深く入り込んだ部分は、図12の上側半分の断面に表されており、そこから図11において時計回り方向に約22.5°進んだ部分は、図14の断面に表されており、更にそこから図11において時計回り方向に約22.5°進んだ部分は、図15の断面に表されている。このように形成された傾斜面12b、12bは、図11及び図13に鎖線で示すように、その内周端形状が質量体11の内周形状と同じ大きさの円形となっているのに対して、その外周端形状は短径側が内周端の円形と略同じ大きさの楕円形となっている。
一方、質量体11の両軸端部に設けられた傾斜面12b、12bに一端が連結される弾性支持部22b、22bは、傾斜面12b、12bの形状が周方向において徐々に変化するように形成されていることに対応して、その自由長Laが周方向において徐々に変化するように構成されている。即ち、弾性支持部22b、22bの自由長Laは、傾斜面12b、12bが軸方向内方へ最も深く入り込んだ部分(図12の上側半分の断面に表された部分)で最も長くなり、逆に、そこから周方向両側へ90°位相がずれた位置(図12の下側半分に一方の位置が表されている)で最も短くなっている。
なお、本実施形態の場合にも、弾性支持部22b、22bの自由長Laが最も長くされている部分の内周面及び外周面に設けられている内側すぐり23、23及び外側すぐり24、24は、実施形態1の場合と同様に、軸Oを中心とする円周方向において約120°の角度範囲に設けられている(図11参照。)。また、弾性支持部22b、22bの軸直角方向のばね定数は、実施形態1の場合と同様に、軸O上で直交する2方向のばね比が最も大きくなるように設定されている。
以上のように構成された本実施形態の筒型ダイナミックダンパは、実施形態1の場合と同様に、弾性支持部22b、22bの自由長Laが最も長くされている部分のばね定数と質量部材1の質量とに基づいて低周波数側の共振周波数f1がチューニングされているとともに、弾性支持部22b、22bの自由長Laが最も短くされている部分のばね定数と質量部材1の質量とに基づいて、高周波数側の共振周波数f2がチューニングされている。そして、本実施形態の筒型ダイナミックダンパも、実施形態1の場合と同様の優れた作用及び効果を奏する。
本発明の実施形態1に係る筒型ダイナミックダンパの軸方向に沿う断面図であって図2のI−O−I線矢視断面図である。 本発明の実施形態1に係る筒型ダイナミックダンパの左側面図である。 本発明の実施形態1に係る筒型ダイナミックダンパの右側面図である。 本発明の実施形態1に係る筒型ダイナミックダンパの軸方向に沿う断面図であって図2のIV−O−IV線矢視断面図である。 本発明の実施形態に係る筒型ダイナミックダンパをドライブシャフトに取付けた状態を示す断面図である。 本発明の実施形態2に係る筒型ダイナミックダンパの左側面図である。 本発明の実施形態2に係る筒型ダイナミックダンパの軸方向に沿う断面図であって図6のVII −O−VII 線矢視断面図である。 本発明の実施形態2に係る筒型ダイナミックダンパの右側面図である。 本発明の実施形態2に係る筒型ダイナミックダンパの軸方向に沿う断面図であって図6のIX−O線矢視断面図である。 本発明の実施形態2に係る筒型ダイナミックダンパの軸方向に沿う断面図であって図6のX−O線矢視断面図である。 本発明の実施形態3に係る筒型ダイナミックダンパの左側面図である。 本発明の実施形態3に係る筒型ダイナミックダンパの軸方向に沿う断面図であって図11のXII −O−XII 線矢視断面図である。 本発明の実施形態3に係る筒型ダイナミックダンパの右側面図である。 本発明の実施形態3に係る筒型ダイナミックダンパの軸方向に沿う断面図であって図11のXIV −O線矢視断面図である。 本発明の実施形態3に係る筒型ダイナミックダンパの軸方向に沿う断面図であって図11のXV−O線矢視断面図である。
符号の説明
1…質量部材 2…ゴム弾性支持部材 5…回転軸 11…質量体
12、12a、12b…傾斜面 13…係合凹部 15…被覆ゴム層
16…凹部 21…固定部 21a…凹溝
22、22a、22b…弾性支持部 23…内側すぐり 24…外側すぐり
La…自由長 Lb…弾性主軸 L1、L2、L3、L4…直線
P1、P2、P3、P4…交線 O…軸

Claims (7)

  1. 回転軸の外周側に距離を隔てて同軸状に配置される筒状で軸方向長さが全周に亘って一定の質量部材と、該質量部材の軸方向両側に位置し前記回転軸の外周面に取付けられる一対のリング状の固定部と各該固定部と前記質量部材の各軸端部とにそれぞれ連結されて前記質量部材を弾性支持する一対の筒状の弾性支持部とを有する一対のゴム弾性支持部材と、を備えた筒型ダイナミックダンパにおいて、
    前記質量部材は、両前記軸端部の内周側角部に面取り状に設けられた周方向において形状が変化する傾斜面を有し、該傾斜面に一端が連結された前記弾性支持部の自由長が周方向において変化するように構成されていることを特徴とする筒型ダイナミックダンパ。
  2. 前記傾斜面は、前記質量部材の軸に対する傾斜角度が略一定でその形成位置が軸方向に徐々に変化するように形成されている請求項1に記載の筒型ダイナミックダンパ。
  3. 前記傾斜面は、前記質量部材の軸に対する傾斜角度が周方向において徐々に変化するように形成されている請求項1に記載の筒型ダイナミックダンパ。
  4. 記傾斜面に一端が連結された前記弾性支持部の内周面及び外周面の少なくとも一方の面には、前記弾性支持部のばね定数を調整するすぐりが設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載の筒型ダイナミックダンパ。
  5. 前記すぐりは、前記弾性支持部の自由長が最も長い部位に設けられている請求項4に記載の筒型ダイナミックダンパ。
  6. 前記質量部材は、前記ゴム弾性支持部材を加硫成形する成形型内に配置される際に該成形型に対する周方向の位置決めに用いられる係合凹部を有する請求項1〜5の何れか1項に記載の筒型ダイナミックダンパ。
  7. 前記弾性支持部の軸直角方向のばね定数は、前記軸上で直交する2方向のばね比が最も大きくなるように設定されている請求項1〜6の何れか1項に記載の筒型ダイナミックダンパ。
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