JP3780116B2 - ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤおよびその製造方法 - Google Patents

ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、コンジットチューブ内の送給性に優れた全自動および半自動溶接等のガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にガスシールドアーク溶接には0.8〜2.0mmの溶接用鋼ワイヤが使用されているが、溶接時に溶接機の付属装置である送給機に設置され、送給ローラを通り3〜20m程度の長さのコンジットチューブを通って溶接される。そのためコンジットチューブ内では一定速度でワイヤが供給されることが必要である。しかし、コンジットライナー、トーチ、チップとの接触抵抗およびコンジットチューブの屈曲部での抵抗力が作用するため、送給速度が不均一になり溶接アークの不安定などによる溶接欠陥が生じる。そのため従来では、鋼線表面に粒界酸化を形成させた後伸線加工し、微少亀裂を表面に生成させて含油させ潤滑能を高めて送給性を改善する技術、表面にアーク安定性を促す元素を付着させる技術が提案されている。このように溶接用鋼ワイヤにはコンジットチューブ内での送給性とアーク安定性の両方が要求される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
特開昭60−231590号公報ではワイヤ表層部を酸化し粒界酸化を形成させ、表層部の酸素量の増加、表層への微少亀裂の形成により、送給性とアーク安定性を改善した。この場合、表層の酸素量を1100〜8000ppmに調整する必要があるが、熱処理により粒界酸化は長手方向、周方向でばらつきが大きいこと、銅めっき前処理の酸洗等で粒界酸化が一部消失するなど、安定して作製するには課題があった。特開昭54−141349号公報ではワイヤ表面の平坦率を規定してコンジットチューブとの抵抗を下げ送給性を改善した。この場合、強制潤滑伸線法、高粘度潤滑剤の使用などの条件があり、ワイヤの降伏応力と潤滑剤の圧力を適正に調整しなければならないなど操業上のノウハウが必要であり、容易に操業するには困難が伴った。また、溶接ワイヤの銅めっき中に元素を添加した発明として、特開昭63−149093号公報のカリウム添加が提唱されている。カリウムは確かにアークを安定させ送給性も改善する元素であるが、最近ではよりハイテン化に対応するためによりレベルが高いものが要求されておりこの発明では対応できなくなってきた。また、カリウムは銅粒子の間に取り込む形で入るのでめっき中に均一に分布し難いが、特許請求の範囲および明細書の内容からカリウムはワイヤ全体に対して0.5〜20ppmと適正範囲があることは明確であり、カリウムを所定量に制御する必要があるのは明白なので、操業上かなりのノウハウがあるものと考えられる。その制御方法は記載されていないために同業者が容易に実施することは難しく、現在の高級品質に対応するにはこの発目では無理が生じてきた。このように、送給性を改善させる技術は多く提案されているものの、実操業で安定して適用するには課題が残った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の実状に鑑みてなされたものであって、その要旨はガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤにおいて鋼素地の表面に焼鈍による粒界酸化層、銅めっきを有し、該銅めっき中にカリウムを含有すると共にナトリウム又はすずの1種以上を含有し、かつ、銅めっき中に対しカリウム含有量A:100〜6000ppm、ナトリウム又はすずの内1種以上の含有量B:100〜4000ppmであり、かつA+Bが160〜9000ppm、さらに銅めっき中にりんを10〜1000ppm含有し、銅めっきはワイヤ長手方向に交差する亀裂を有し、ワイヤ表面には液状潤滑剤が付着していることを特徴とするガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ、およびガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤの製造方法であって、熱間圧延線材をデスケール後2〜3mmに伸線加工し、焼鈍により表面に酸化層を生成させ、続いて該焼鈍ワイヤをピロりん酸銅、ピロりん酸カリウムを主成分とし、さらにピロりん酸ナトリウム、ピロりん酸すずの1種以上を含有する水溶液を用いて電気めっきを施し銅めっきワイヤとし、該銅めっきワイヤを1ダイス当たり3〜20%の減面率で伸線加工を施し、さらに、めっき液の流速が5〜60m/minであることを特徴とするガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤの製造方法にある。
【0005】
コンジットチューブ内での送給性は表面の潤滑能に支配されるため、表面の潤滑能向上および送給時の潤滑能維持についての研究を本発明者は鋭意推進し、表面に長手方向に交差する亀裂を多数存在させ、液状潤滑剤を含有させることが最も有効であることを突き止めた。この亀裂は製造過程において焼鈍を行いワイヤ表層部に粒界酸化を形成させ、銅めっき、伸線加工を行うことにより生成させることが可能であることがわかっているが、粒界酸化の程度ばらつき、めっき前処理での粒界酸化層の一部消失などに影響されず、安定して亀裂を生成させるには、銅めっき中にカリウムの他にナトリウム、すずのうちから1種以上の元素、さらにはりんを含有させる必要があることがわかった。これらの元素が存在することにより粒界酸化で亀裂が発生、その亀裂が表面に伝播しやすくなるため、伸線加工により亀裂発生がより安定して起こることになる。図2は従来技術の、焼鈍、銅めっき後および更に仕上げ伸線した成品の表層部断面を示す模式図である。図2(a)は素地1の粒界酸化部3,4および銅めっき層2を示し、(b)は図2(a)に示すワイヤを仕上げ伸線し、粒界酸化層5からめっき表面まで延長的に亀裂7が伝播して表面に至っている状況、および比較的狭い粒界酸化層9においては仕上げ伸線によって銅めっき層2に亀裂が発生していない。よって、従来は前述のように、狭い小さな粒界酸化部4では銅めっき表面に亀裂が発生せず、銅めっきワイヤ表面に潤滑剤の必要量を均一に塗布、保持するには強い焼鈍による大きな粒界酸化層を発生させねばならなかった。その場合はめっきの密着性が悪く溶接用ワイヤとして必要な送給性、および他の必要な品質が得られなかった。
【0006】
【発明の実施の形態】
また、本発明は、ワイヤ表層部の粒界酸化程度が弱い粒界であっても銅めっき層の亀裂発生に十分寄与できるものであり、多数の微少亀裂がワイヤ表面に形成され、所定量の液状潤滑剤が保持されてワイヤの送給性向上に寄与する。本発明のワイヤ表層部断面の形態を図1に示す模式図で詳細に説明する。図1(a)は素地1に粒界酸化部3,4および銅めっき層2を示し、図1(b)は図1(a)に示すワイヤを1パス3〜20%の減面率で仕上げ伸線した成品の表層部の断面であり、めっき表面まで粒界酸化層5および6の粒界酸化部から延長的に銅めっき部2に亀裂7および8が伝播して表面に至っている状況の模式図である。図1(b)に示す如く比較的狭くて小さい粒界酸化層6においても仕上げ伸線によって銅めっき層2に亀裂8が伝播しているのがわかる。このように本発明のめっき層2は従来の粒界酸化層に基づいた亀裂に加えて比較的微少な粒界酸化部4からの亀裂も銅めっき2の表面に発生して、ワイヤ表面に占める亀裂7,8の面積も大きくなって液状潤滑剤の保持能力が極めて均一にかつ多くなる。ワイヤの送給性向上に必要な潤滑剤が均一かつ必要量を塗布できる。このように銅めっき層2に多数の亀裂7,8が仕上げ伸線においてめっきの特徴を損なうことなく確保できるのは銅めっき層にカリウム、ナトリウムまたはすず、りんを所定量含有させることにある。
【0007】
次に、銅めっき層の組成とその含有量、めっき層の亀裂生成方法について詳細に説明する。銅めっき中にカリウム、ナトリウムまたはすず、りんを含有させるにはピロりん酸銅、ピロりん酸カリウムを主成分とし、さらにピロりん酸ナトリウム、ピロりん酸すずのうち1種以上を含むめっき液から構成されるピロりん酸銅めっき浴が最も効率的かつ安定的である。すずは電気的に析出するので制御可能であるが、カリウム、ナトリウムはめっき中に取り込まれることにより入る元素であり制御が難しいので、当業者が容易に実施できるように図3で示すようにめっき中の組成を制御することにより調整できることを明らかにした。また、このワイヤを1パス3〜20%の減面率で伸線加工すれば、ワイヤの中心に比べ表層の変形度が大きくなるので、表層に引張応力を効率的に付与することが可能となり、表面に亀裂を形成させることがさらに容易となる。
【0008】
さらに本発明を詳細に説明する。
【0009】
鋼素地の表面に焼鈍による粒界酸化、銅めっきを有し、銅めっき中にカリウムを含有すると共にナトリウム又はすずの1種以上を含有し、かつ、銅めっき中に対しカリウム含有量A:100〜6000ppm、ナトリウム又はすずの内1種以上の含有量B:100〜4000ppmであり、かつA+Bが160〜9000ppm、さらに銅めっき中にりんを10〜1000ppm含有する理由について述べる。従来技術は図2(a),(b)に示す如く、表面に粒界酸化を有すると伸線加工により表面に引張応力が付加され、銅めっきに亀裂が生成しやすいが、あくまでも粒界酸化の幅が大きい箇所ではめっき密着性が劣り亀裂発生箇所となるので、粒界酸化が弱く幅が狭い箇所は亀裂生成に寄与しない。そこで、銅めっき層中にカリウム、さらにはナトリウム又はすずを含有させることにより、粒界酸化程度が弱い箇所でも銅めっきの亀裂発生に寄与できるようにした。粒界酸化は主に鉄の酸化物FeO,Fe3 4 ,Fe2 3 が主であるが、めっき中にカリウム、ナトリウム、すずが存在すると、伸線加工時の発熱により粒界酸化部から酸素を受け、粒界酸化部に(K,Na)O,K2 SnO3 等のカリウム系の微少な酸化物を生成する。そのため伸線加工時にこれらの酸化物が起点となり亀裂の生成に寄与しやすくなる。これらの酸化物は粒界酸化が弱くても生成しやすいので、粒界酸化程度によらず亀裂生成に寄与でき、図5に示すように図6に比較して非常に微細な多くの亀甲状亀裂が生成する。そのためカリウムを含むことは必須であり、さらにナトリウム、又はすずが必要となる。カリウム単独の場合はK2 Fe4 7 ,K6 Fe2 6 等のカリウム−鉄系酸化物が形成されやすいが、これらは粒界酸化部よりは表面に分散して均一に生成しやすいため亀裂の起点になりにくく従来どおりの粒界酸化幅が大きい箇所での亀裂生成にとどまるので、カリウム単独では効果がない。カリウム含有量A:100〜6000ppmの理由は100ppm未満では酸化物形成能力が弱く、6000ppmを超えると酸化物が粒界酸化部以外にも生成しやすくなりめっき密着性を低下させやすいためである。ナトリウム又はすずの内1種以上の含有量B:100〜4000ppmの場合も同様の理由である。亀裂に寄与する酸化物はカリウムとナトリウム、又はすずとの組み合わせなのでこれら単独の元素量のみでは不十分で合計の規定量も同時に必要である。これについて調査したところ、A+Bが160ppm未満では(K,Na)O,K2 SnO3 等のカリウム系の微少な酸化物の生成量が少なく亀裂発生に寄与できないこと、9000ppmを超えるとめっき密着性が低下することから160〜9000ppmとした。また、めっきはその析出過程で格子欠陥が生じるが、りんは欠陥に集まりやすい性質を持つ。加工において欠陥部は亀裂伝播しやすくなるので、りんは亀裂伝播を促すには有効な元素である。つまり、カリウム、ナトリウム、すず添加により亀裂を生成しやすく、りん添加により亀裂を伝播しやすくなるので、有効にめっき表面に亀裂を形成させることが可能となる。りんは銅めっき中に対し10ppm未満では効果無く、1000ppmを超えると脆くなり、さらに溶接金属の靭性を低下させる。そこで10〜1000ppmに限定した。
【0010】
ワイヤ表面に長手方向に交差する亀裂を有し、表面に液状潤滑剤が付着する理由は、亀裂中に潤滑剤を含有させることによりコンジットチューブ内のワイヤ表面との接触による摩擦抵抗を下げ、送給性を向上させることにある。長手方向と交差する亀裂が良いのは、コンジットチューブ内で送給される際、液状潤滑剤が亀裂から逃げ出し難いので潤滑能が持続できるためである。尚、交差とは必ずしも長手方向と90度でなくても効果は維持できる。
【0011】
銅めっきにピロりん酸銅、ピロりん酸カリウムを主成分としさらにピロりん酸ナトリウム、ピロりん酸すずの内1種以上を含有する水溶液を用いる理由は以下である。カリウム、ナトリウム、りんは、めっき浴中に多量に含有されている場合、金属が析出する際に、めっき粒子に取り込まれて微量に入る。一方、すずは電気的に析出可能な元素である。本発明者はこの点に着目し、カリウム、ナトリウム、りんをめっき中に取り込め、さらにすずを電気めっき可能な浴はピロりん酸塩浴であることを突き止めた。これら元素の添加量はめっき浴濃度、温度、電流密度、めっき液の流速により調整可能であるが、ピロりん酸銅めっきの最適電流密度は10A/dm2 程度、温度は50℃程度とほぼ決まっているのでめっき浴の濃度、めっき液の流速を変えることが最も簡単である。カリウム、ナトリウムは電析困難なので図3に示すようにナトリウムを含有させる場合はピロりん酸銅めっき浴の(ピロりん酸カリウム+ピロりん酸ナトリウム)/ピロりん酸銅の比率を調整することにより調整可能である。すずは銅と同様に電析させることができるので浴中の金属分濃度比により調整可能である。
【0012】
めっき液の流速5〜60m/minの理由はりんの含有量制御のためである。りんはめっき液の流速と関係し、図4に示す範囲に調整すればよいことがわかっている。流速5m/min未満ではりんの含有量は10ppm未満となり、60m/minを超えると1000ppmを超えてしまい本発明のりん含有量範囲に入らなくなるので液流速を5〜60m/minと限定した。以上のように、ピロりん酸銅、ピロりん酸カリウムを主成分としさらにピロりん酸ナトリウム、ピロりん酸すずの内1種以上から構成される水溶液を用いることにより、カリウム、ナトリウム、すず、りんの銅めっき中への取り込みが可能となる。
【0013】
1ダイス3〜20%の減面率で伸線加工する理由は、伸線加工により表面に効率よく引張応力を与えることにより、亀裂を生成させることが容易となるからである。3〜20%の減面率で伸線加工を行うと、ワイヤの中心よりも比較的表層側に多く引張応力が作用し、起点があれば亀裂は生成しやすくなる。上記記載のように、銅めっき中にカリウム以外にナトリウム、すずのうち1種以上を添加することにより粒界酸化部で微少酸化物が生成するために亀裂起点ができ、さらにりんを添加することによりめっき中に亀裂が伝播しやすくなるので、本伸線減面率に調整することにより、亀裂を効率的にかつ安定して生成できる。3%未満では減面率が低すぎてダイスのパス数が多くなり工業的な生産に向かない。20%を超えると表層と内部の変形度が同等となり、表層に優先的に引張応力が作用しなくなるので効率的な亀裂生成ができなくなる。
【0014】
【実施例】
以下に実施例を示す。
【0015】
C0.1%,Si0.75%,Mn1.5%,Ti+Zr0.25%成分の5.5mm線材を2〜3mmまで伸線加工し、窒素ガス雰囲気で焼鈍700〜750℃×3〜5hrを行った後に厚さ1〜1.5μmの電気銅めっきを行い、湿式伸線加工により1.2mmに仕上げた。電気銅めっきはピロりん酸銅めっきの他、シアン化銅めっき、ホウフッ化銅めっきの標準条件による銅めっきも比較として行った。ピロりん酸銅めっき浴はピロりん酸カリウム、ピロりん酸銅を主体にナトリウムを添加する場合はピロりん酸ナトリウムを図3に示すように添加量を変えてめっき中の含有量を調整した。pHは8.8に統一した。すずは電気めっきで析出可能なのでピロりん酸すずとして析出量に応じて添加した。りん含有量はめっき時の流速を変化させて調整した。また、湿式伸線加工はアプローチ角12度のダイヤモンドダイスを用いて1ダイス当たりの減面率を変えて行った。
【0016】
銅めっき層の亀裂発生状況については、1.2mm伸線材の表面長手方向と交差する亀裂について評価し、「全面に有り」を◎、「半分程度有り」を○、「ほとんど無し」を×とした。
【0017】
ワイヤの送給性評価は、図7に示すように長さ約3mのコンジットチューブ12をほぼ中央で直径約200mmに回転させ、さらに溶接トーチ13側の半径を約250mmに固定して溶接した時の送給モーターの電機子電流値により、コンジットチューブ内の送給抵抗の評価を行った。送給性について、1〜2Aを良好(◎)、2〜3Aを並(○)、3A以上を不良(×)とした。
【0018】
アーク安定性は、上記溶接ワイヤを溶接トーチに送給し鋼板に連続的にアークを出して溶接した時の官能評価で判定した。良好を◎、並を○、不良を×とした。
【0019】
第1−1,1−2,1−3表に試験結果を示す。
[試験条件]
▲1▼ワイヤ径:1.2mm
▲2▼溶接条件:300A,32V,30cm/min
▲3▼ワイヤ突き出し長さ:25mm
▲4▼シールドガス:CO2 25リットル/min
▲5▼鋼板:SM400,厚さ20mm
【0020】
【表1】
Figure 0003780116
【0021】
【表2】
Figure 0003780116
【0022】
【表3】
Figure 0003780116
【0023】
比較例1,3,7はそれぞれカリウム、ナトリウム、すずが銅めっき中に対し100ppm未満であり、亀裂の起点が十分に形成されず1.2mm伸線材表面に亀裂がわずかしかできないために送給性、アークの安定性が並であった。
【0024】
比較例2,4,8はそれぞれカリウム、ナトリウム、すずが所定量を超えており、亀裂の起点が形成されすぎて1.2mm伸線後のめっき密着性が不良となり、亀裂はできるものの送給時に剥離しためっきがコンジットチューブ内に詰まるなどで逆に送給性、アークの安定性が不良となった。
【0025】
比較例5,9はそれぞれカリウム+ナトリウム、カリウム+ナトリウム+すずが銅めっき中に対し160ppm未満であり、亀裂の起点が十分に形成されず1.2mm伸線材表面に亀裂がわずかしかできないために送給性、アークの安定性が並であった。
【0026】
比較例6,10はそれぞれカリウム+ナトリウム、カリウム+ナトリウム+すずが9000ppmを超えており、亀裂の起点が形成されすぎて1.2mm伸線後のめっき密着性が不良となり、亀裂はできるものの送給時に剥離しためっきがコンジットチューブ内に詰まるなどで逆に送給性、アークの安定性が不良となった。
【0027】
比較例11はりんが10ppm未満であり、伸線加工において、亀裂の伝播が十分にできず1.2mm伸線材表面に亀裂がわずかしかできないために送給性、アークの安定性が並であった。
【0028】
比較例12はりんが1000ppmを超えており、めっきが脆くなり1.2mm伸線後にめっきが剥離するために、亀裂はできるものの送給時にめっきがコンジットチューブ内に詰まるなどで逆に送給性、アークの安定性が不良となった。
【0029】
比較例13は1パス減面率が20%を超えるために表層に優先的に引張応力を与えられず、全面に亀裂を生成できなかったが、半分程度は生成できたので送給性、アークの安定性は並であった。
【0030】
比較例14,15は銅めっき中の元素がカリウムのみであり、亀裂の発生に寄与できず、十分な亀裂生成ができずに送給性、アークの安定性が並であった。
【0031】
比較例16,17はそれぞれシアン化銅、ホウフッ化銅浴による銅めっきの場合であるが、シアン化銅は比較例14,15同様カリウムのみ含有では亀裂発生に寄与できず、ホウフッ化銅は亀裂の起点、伝播に作用する要素がめっき中に無いために、幅の広い粒界酸化部では亀裂は生成するものの十分ではなく、送給性、アークの安定性は並であった。
【0032】
以上の比較例に比べ本発明例は亀裂の生成が十分にでき、亀裂内に油が溜まり潤滑能を高めるので、コンジットチューブ内の送給性は極めて良好である。
【0033】
【発明の効果】
本発明は以上のように実施できるので、既述の技術的課題を解決する顕著な効果がある。換言すると、本発明によりガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤのコンジットチューブ内の送給性を格段に向上させることが可能であり工業的メリットは大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明溶接用鋼ワイヤの銅めっき後(a)および成品(b)の表層部断面の模式概略図
【図2】従来の溶接用鋼ワイヤの銅めっき後(a)および成品(b)の表層部断面の模式概略図
【図3】ピロりん酸銅めっき中のカリウム+ナトリウムの総含有量に及ぼすピロりん酸銅めっき浴組成の関係を示す。
【図4】ピロりん酸銅めっき中のりん含有量に及ぼすめっき時のめっき液流速の関係を示す。
【図5】本発明の成品表面の亀甲状亀裂生成写真を示す。
【図6】従来の成品表面の亀甲状亀裂生成写真を示す。
【図7】ワイヤ送給性試験の概略図を示す。
【符号の説明】
1 ワイヤの素地
2 銅めっき部
3 強い粒界酸化(幅広い)
4 弱い粒界酸化(幅狭い)
5 強い粒界酸化部に発生した仕上げ伸線後の成品の亀甲状亀裂
6 弱い粒界酸化部に発生した仕上げ伸線後の成品の亀甲状亀裂
7 銅めっき部に発生した亀裂(強い粒界酸化部)
8 銅めっき部に発生した亀裂(弱い粒界酸化部)
9 亀甲状亀裂に発展しない弱い粒界酸化部
10 送給モーター
11 ワイヤスプール
12 コンジットチューブ(約3m長)
13 溶接トーチ
14 鋼板(SM400 20mm厚)
15 ターンテーブル
16 アーク

Claims (3)

  1. ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤにおいて、鋼素地の表面に焼鈍による粒界酸化層、銅めっきを有し、該銅めっき中にカリウムを含有すると共にナトリウム又はすずの1種以上を含有し、かつ、銅めっき中に対しカリウム含有量A:100〜6000ppm、ナトリウム又はすずの内1種以上の含有量B:100〜4000ppmであり、かつA+Bが160〜9000ppm、さらに銅めっき中にりんを10〜1000ppm含有し、銅めっきはワイヤ長手方向に交差する亀裂を有し、ワイヤ表面には液状潤滑剤が付着していることを特徴とするガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ。
  2. ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤの製造方法において、熱間圧延線材をデスケール後2〜3mmに伸線加工し、焼鈍により表面に粒界酸化層を生成させ、続いて該焼鈍ワイヤをピロりん酸銅、ピロりん酸カリウムを主成分とし、さらにピロりん酸ナトリウム、ピロりん酸すずの1種以上を含有する水溶液を用いて電気めっきを施し銅めっきワイヤとし、該銅めっきワイヤを1ダイス当たり3〜20%の減面率で伸線加工を施すことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤの製造方法。
  3. めっき液の流速が5〜60m/minであることを特徴とする請求項2記載のガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤの製造方法。
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