JP3779891B2 - 孔版印刷装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像形成された用紙を排紙するための用紙搬送装置を備えた孔版印刷装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図21は、一般的な孔版印刷装置を示している。
孔版印刷装置の一側には、印刷用紙Pが積載される給紙台100が設けられている。係る印刷用紙Pは、捌きローラ101により最上方の一枚のみが分離されて孔版印刷装置内に給紙される。給紙された印刷用紙Pは、レジストローラ102により所定のタイミングで孔版印刷装置内に設けられた版胴103側に搬送される。版胴103は、インキ通過性の周壁104を円筒状にしてなり、自身の軸線周りに図21中反時計廻り方向に回転する。版胴103の外周面には、製版済みの孔版原紙が巻装される。版胴103の内部には、版胴103の内周面にインキを供給するインキ供給手段105が設けられている。版胴103の外部には、前記インキ供給手段105に対向する位置にて版胴103の外周面に対して接離可能に移動するプレスローラ106が設けられている。そして、レジストローラ102にて搬送された印刷用紙Pは、プレスローラ106によって版胴103の外周面にある孔版原紙に圧接され、その一面に版胴103の内周面から孔版原紙の穿孔部を介して押し出されたインキが転移される。印刷された印刷用紙Pは、版胴103の回転によって搬出され、バキュームファン107および用紙搬送ベルト108を有するバキュームコンベア(サクションベルト)方式による用紙搬送装置によって、孔版印刷装置の他側(給紙台100とは反対側)に設けられた排紙台109に排紙される。このように、一連の印刷動作が行われる。
【0003】
上記一連の印刷動作において、プレスローラ106によって版胴103側に圧接された印刷用紙Pは、インキの粘着力によって版胴103の外周面にある孔版原紙側に貼り付くこととなる。
そこで、従来では、版胴103の用紙搬出側である用紙搬送装置の手前に、先端が尖った分離爪110を設け、この分離爪110を版胴103側に貼り付いた印刷用紙Pに引っかけることにより、印刷用紙Pを版胴103側から分離しようとしている。また、従来では、上記分離爪110に加え(あるいは代えて)、版胴103の用紙搬出側である用紙搬送装置の手前に、送風ファン111を設け、この送風ファン111の送風力により、印刷用紙Pを版胴103側から分離しようとしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の孔版印刷装置では、分離爪110の場合、印刷用紙Pを版胴103側から分離する際、印刷用紙Pの印刷画像面に直接接触するために、画像部分が擦れて印刷品位が低下するという問題がある。
【0005】
また、送風ファン111の場合には、その吹き出し口付近の空気流の下方において負圧域が生じる。そして、印刷用紙Pを版胴103側から分離する際、用紙搬送装置側に向かうべき印刷用紙Pが、負圧域の吸引作用で送風ファン111側に引き寄せられて送風ファン111の吹き出し口に接触することがある。これにより、分離爪110の場合と同様に印刷用紙Pの画像部分が擦れて、印刷品位が低下するという問題がある。
【0006】
ところで、印刷画像の印字率が大きい場合、即ち、ベタ部分が多い場合では、インキの粘着力が大きくなって版胴103側から印刷用紙Pが分離し難くなる。即ち、版胴103側からの印刷用紙Pの分離時間が遅れて、版胴103側に印刷用紙Pが保持される時間が長くなる。これにより、例えば印刷用紙Pの送り先端側が分離されて用紙搬送装置にて搬送されようとするが、送り後端側が版胴103側から分離されないで版胴103側に残る。このため、印刷用紙Pの送り後端側が舞い上がり、最悪の場合は、排紙ジャムが発生して、印刷動作が中断してしまうという問題がある。
【0007】
また、印刷用紙Pの搬送方向の左右にて印字率が異なる場合には、印刷用紙Pの左右にて版胴103側から分離する時間が異なる。これにより、印刷用紙Pの排紙送りが斜行したり、この斜行により排紙ジャムが生じるおそれがある。
【0008】
また、インキは、主に印刷用紙Pに浸透する形態で印刷画像を形成する。しかし、上記の如く版胴103側に印刷用紙Pが保持される時間が長い場合、インキの毛細管現象によって印刷用紙Pに必要以上のインキを転移させてしまう。このように、インキの転移量が必要以上に多いと、印刷画像部が滲んで印刷品位を低下させたり、ベタ部分においては濃淡が生じたりする。また、浸透しきれずに印刷用紙Pの表面に残った余剰インキが、次に排紙される印刷用紙Pの裏面に接触して裏移りさせるという不具合が発生する。
【0009】
各孔版原紙では、それぞれ印刷画像の印字率が様々に異なるが、この印字率が大幅に異なると、版胴103側からの印刷用紙Pの分離タイミングが異なることとなる。すなわち、用紙搬送装置側に印刷用紙Pの送り先端側が分離された際の剥離軌道が変化して用紙先端位置が変化する。また、印刷用紙Pの搬送方向の左右にて印字率が異なる場合には、上記の如く印刷用紙Pが斜行するため、用紙搬送装置側に印刷用紙Pの送り先端側が分離された際の用紙先端位置が斜行する。このように、印刷用紙Pの用紙先端位置が変化すると、特に、版胴103の後段に別の版胴(不図示)を設けて、多版印刷や両面印刷を行うようにした孔版印刷装置では、初段の版胴103にて印刷された印刷用紙Pの画像に対し、後段の版胴にて印刷する印刷画像が相対的にズレてしまうという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、上記課題を解消するために、印刷の印字率にかかわらず、且つ、印刷用紙の印刷画像面に接触することなく版胴側からの印刷用紙の分離を行うことができるとともに、版胴側からの印刷用紙の分離を用紙先端位置を揃えて行うことができる孔版印刷装置を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明による請求項1記載の孔版印刷装置は、インキ通過性の円筒状の周壁を有して自身の軸線廻りに回転可能とされた版胴と、前記周壁の内周面からインキを供給するスキージローラと、前記版胴の外部に設けられて前記スキージローラとの間にて前記周壁の外周面に巻装された孔版原紙に対して印刷用紙を圧接するプレスローラとを備えた孔版印刷装置であって、
上面にガイド板を有したケースと、
前記ケースに設けられた吸引力発生部と、
前記ガイド板の一端部に設けられ、前記吸引力発生部による吸引力を、前記版胴側から前記印刷用紙を引き剥がす吸引力とする剥離吸引口と、
からなる剥離吸引手段を備え、
前記剥離吸引口が、前記版胴の軸線に交差する前記スキージローラの中心線に直交し、且つ、前記プレスローラと前記版胴側との圧接位置を通る基準線の下方にて、前記プレスローラに近接して配されている孔版印刷装置において、
前記剥離吸引手段は、更に、無端状とされた搬送ベルトを前記ガイド板の一端部側および他端部側に軸支された一対のプーリに対して掛け回し、前記搬送ベルトの上側部分を前記ガイド板の上面に沿うようして駆動する搬送部を有し、
前記剥離吸引口が、前記ガイド板の一端部側である前記ケースの上端縁に設けられ、
前記搬送部が、前記剥離吸引口の近傍にある前記プーリを前記ケース内に配して、前記搬送ベルトを前記剥離吸引口から前記ケース内に入るように掛け回すとともに、前記剥離吸引口の開口部分に、前記搬送ベルトを掛ける支持軸を有していることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の孔版印刷装置は、請求項1記載の孔版印刷装置において、前記剥離吸引手段には、前記剥離吸引口にて前記版胴側から引き剥がされた前記印刷用紙を撓むことなく支持し、前記搬送ベルトに向けて導くガイドリブが設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項記載の孔版印刷装置は、請求項1又は2記載の孔版印刷装置において、前記剥離吸引手段を介して前記版胴が複数設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項記載の孔版印刷装置は、インキ通過性の円筒状の周壁を有して自身の軸線廻りに回転可能とされた版胴と、前記周壁の内周面からインキを供給するスキージローラと、前記版胴の外部に設けられて前記スキージローラとの間にて前記周壁の外周面に巻装された孔版原紙に対して印刷用紙を圧接するプレスローラとを備えた孔版印刷装置であって、
上面にガイド板を有したケースと、
前記ケースに設けられた吸引力発生部と、
前記ガイド板の一端部に設けられ、前記吸引力発生部による吸引力を、前記版胴側から前記印刷用紙を引き剥がす吸引力とする剥離吸引口と、
無端状とされた搬送ベルトに通気穴を設け、該搬送ベルトを前記ガイド板の一端部側および他端部側に軸支された一対のプーリに対して掛け回し、前記搬送ベルトの上側部分を前記ガイド板の上面に沿うようして駆動する搬送部と、
前記ガイド板の前記搬送ベルトと重なる部位に設けられ、前記吸引力発生部による吸引力を、前記印刷用紙を前記搬送ベルト側に吸着する吸引力とする搬送吸引口と、
からなる吸引搬送手段を備え、
前記剥離吸引口が、前記版胴の軸線に交差する前記スキージローラの中心線に直交し、且つ、前記プレスローラと前記版胴側との圧接位置を通る基準線の下方にて、前記プレスローラに近接して配されている孔版印刷装置において、
前記剥離吸引口が、前記ガイド板の一端部側である前記ケースの上端縁に設けられ、
前記搬送部が、前記剥離吸引口の近傍にある前記プーリを前記ケース内に配して、前記搬送ベルトを前記剥離吸引口から前記ケース内に入るように掛け回すとともに、前記剥離吸引口の開口部分に、前記搬送ベルトを掛ける支持軸を有していることを特徴とする。
【0019】
請求項記載の孔版印刷装置は、インキ通過性の円筒状の周壁を有して自身の軸線廻りに回転可能とされた版胴と、前記周壁の内周面からインキを供給するスキージローラと、前記版胴の外部に設けられて前記スキージローラとの間にて前記周壁の外周面に巻装された孔版原紙に対して印刷用紙を圧接するプレスローラとを備えた孔版印刷装置であって、
上面にガイド板を有したケースと、
前記ケースに設けられた吸引力発生部と、
前記ガイド板の一端部に設けられ、前記吸引力発生部による吸引力を、前記版胴側から前記印刷用紙を引き剥がす吸引力とする剥離吸引口と、
無端状とされた搬送ベルトに通気穴を設け、該搬送ベルトを前記ガイド板の一端部側および他端部側に軸支された一対のプーリに対して掛け回し、前記搬送ベルトの上側部分を前記ガイド板の上面に沿うようして駆動する搬送部と、
前記ガイド板の前記搬送ベルトと重なる部位に設けられ、前記吸引力発生部による吸引力を、前記印刷用紙を前記搬送ベルト側に吸着する吸引力とする搬送吸引口と、
からなる吸引搬送手段を備え、
前記剥離吸引口が、前記版胴の軸線に交差する前記スキージローラの中心線に直交し、且つ、前記プレスローラと前記版胴側との圧接位置を通る基準線の下方にて、前記プレスローラに近接して配されている孔版印刷装置において、前記剥離吸引口の総開口面積に対する前記搬送吸引口の総開口面積が小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項6記載の孔版印刷装置は、請求項4又は5記載の孔版印刷装において、前記吸引搬送手段には、前記剥離吸引口にて前記版胴側から引き剥がされた前記印刷用紙を撓むことなく支持し、前記搬送ベルトに向けて導くガイドリブが設けられていることを特徴とする。
【0021】
請求項記載の孔版印刷装置は、請求項4又は5又は6記載の孔版印刷装置において、前記吸引搬送手段を介して前記版胴が複数設けられていることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
図1は本発明による孔版印刷装置の一例を示す側面図である。
この孔版印刷装置は、原稿読み取り部1と、製版部2と、印刷部3と、給紙部4と、排紙部5と、排版部6とを有している。
【0023】
原稿読み取り部1は、イメージスキャナであり、副走査方向に搬送される原稿の画像の読み取りを行うラインイメージセンサ7と、原稿送りローラ8とを有している。なお、原稿読み取り部1としては、上記の構成に限らず、固定の原稿に対してラインイメージセンサ7を副走査方向に移動させて原稿の画像を読み取るように構成してもよい。すなわち、原稿読み取り部1は、原稿とラインイメージセンサ7を相対移動させることにより原稿の画像を読み取る。
【0024】
製版部2は、原紙ロール部9と、横一列に配置された複数個の点状発熱体により構成されたサーマルヘッド10と、プラテンローラ11及び原紙送りローラ12と、原紙案内ローラ13と、原紙カッタ14とを有している。そして、プラテンローラ11の回転により、原紙ロール部9から孔版原紙Mを連続して引き出し、サーマルヘッド10とプラテンローラ11の間で搬送する。サーマルヘッド10には、上記原稿読み取り部1によって読み取られた原稿の画像データが入力されている。そして、サーマルヘッド10の複数個の点状発熱体が各々個別に選択的に発熱することにより、感熱性の孔版原紙Mにドットマトリックス式に感熱穿孔製版が行われる。この製版時において、プラテンローラ11によって原紙ロール部9から引き出された孔版原紙Mは、原紙案内ローラ13によって所望の引張力が付与されて皺等の発生を防止している。また、製版が行われた孔版原紙Mは、原紙送りローラ12によってさらに搬送され、原紙カッタ14により一版分に切断される。
【0025】
印刷部3は、多孔金属板、メッシュ構造体等により構成された多孔構造のインキ通過性の周壁15を円筒状に配置した版胴16を有している。版胴16は、図示されない駆動手段により自身の軸線O周りに図1にて反時計廻り方向に回転駆動される。また、版胴16の外周には、孔版原紙Mの先端部をクランプするクランプ部16aが設けられている。そして、版胴16は、搬送された製版済みの孔版原紙Mの先端部をクランプ部16aにてクランプしながら回転することにより、その外周面に孔版原紙Mを巻装着版する。また、版胴16の内部には、インキ供給ローラ17及びドクタローラ18によるインキ供給装置19が設けられている。さらに、版胴16の外側には、プレスローラ20が版胴16(周壁15)の外周面に接離し得るように移動可能に設けられている。
【0026】
給紙部4は、印刷部3の一方の側に設けられている。給紙部4は、印刷用紙Pが積み重ね載置される給紙台21と、給紙台21より印刷用紙Pを一枚ずつ取り出すピックアップローラ22と、印刷用紙Pを版胴16とプレスローラ20との間に送る給紙タイミングローラ23とを有している。
【0027】
排紙部5は、印刷部3の他方の側に設けられている。排紙部5は、印刷済みの印刷用紙Pが積層される排紙台24と、印刷部3にて印刷された印刷用紙Pを版胴16より引き剥がし、且つ、排紙台24に搬送する吸引搬送手段25とを有している。
【0028】
排版部6は、印刷部3の一方の側に設けられている。排版部6は、使用済みの孔版原紙Mを版胴16より引き剥がす剥離爪27と、引き剥がされた孔版原紙Mを搬送する排版ローラ28と、搬送された孔版原紙Mを収容する排版ボックス29とを有している。
【0029】
上記構成の孔版印刷装置においては、インキ供給装置19により版胴16の周壁15の内周面に所定のインキが供給される。版胴16は、自身の軸線O周りに図1にて反時計廻り方向に回転駆動される。印刷用紙Pは、版胴16の回転に同期して所定のタイミングにて給紙タイミングローラ23により図1の左方から右方へ移動する状態にて、版胴16とプレスローラ20との間に供給される。そして、印刷用紙Pが、プレスローラ20の移動により版胴16(周壁15)の外周面に巻装されている孔版原紙Mに対して圧接されることによって、印刷用紙Pに対して版胴16から孔版原紙Mを通過したインキが転写されて孔版印刷が行われる。
【0030】
以下、上記の如く構成の孔版印刷装置にかかり、排紙部5の吸引搬送手段25について説明する。
図2(a)は吸引搬送手段25の第一の例を示す平面図、図2(b)は図2(a)における側面図である。
【0031】
図2(a),(b)に示すように、吸引搬送手段25は、ケース30と、吸引力発生部31と、を備えている。
ケース30は、上面に板状のガイド板34を有して箱状に形成されている。ガイド板34は、略平坦状とされ、一端部34aを印刷部3側に向け、他端部34bを排紙台24側に向けて設けられている。
【0032】
吸引力発生部31は、ケース30の底面に設けられている。吸引力発生部31は、本実施の形態では吸引ファンをなし、ケース30内の空気をケース30外の下側に排気する。
【0033】
搬送部32は、無端状とされた帯体をなす搬送ベルト35が、一対のプーリ36a,36bに掛け回されてなる。搬送ベルト35は、各プーリ36a,36bに掛け回された上側が、ガイド板34の上面に沿うように配されている。また、搬送ベルト35には、通気穴38が設けられている。図2(a)で示す通気穴38は、略円形に開口して所定間隔をおいて複数形成されている。
【0034】
各プーリ36a,36bは、それぞれガイド板34の一端部34a側と他端部34b側にてそれぞれ平行に配された支軸37に固定されている。プーリ36aとプーリ36bは、各支軸37に複数(本実施の形態では三個)固定され、各々対向している。搬送ベルト35は、それぞれ対向するプーリ36a,36b間に掛け回されている。また、支軸37の一方は、駆動軸をなし、不図示の駆動モータから回転力を受けて所定の速度で回転駆動する。支軸37の他方は、回動可能に支持された従動軸をなす。そして、駆動軸をなす支軸37が回転駆動することにより、搬送ベルト35が図2(b)中矢印方向に循環する如く回転する。なお、各プーリ36a,36bは、両端より中央部分が膨出した、いわゆる太鼓状に形成され、掛け回された搬送ベルト35の蛇行を抑止している。
【0035】
印刷部3側に向くガイド板34の一端部34aには、剥離吸引口39が設けられている。図2(a)で示す剥離吸引口39は、略円形に開口して複数形成されている。この剥離吸引口39は、吸引力発生部31による吸引力を、版胴16(周壁15)の外周面側から印刷済みの印刷用紙Pを引き剥がす吸引力とする。
【0036】
ガイド板34の搬送ベルト35と重なる部位には、搬送吸引口40が設けられている。搬送吸引口40は、略円形に開口して複数等間隔に形成されている。この搬送吸引口40は、搬送ベルト35に設けられた通気穴38と重合し、その重合部分にて、吸引力発生部31による吸引力を、印刷用紙Pを搬送ベルト35側に吸着する吸引力とする。即ち、搬送ベルト35に吸着された印刷用紙Pは、搬送ベルト35の回転とともに、図2(b)中矢印方向である排紙台24の方向に搬送される。
【0037】
なお、搬送ベルト35に設けた通気穴38、ガイド板34に設けた剥離吸引口39および搬送吸引口40は、上述した形状に限定されることはない。
【0038】
図3(a)は吸引搬送手段の第二の例を示す平面図、図3(b)は図3(a)における側面図である。
図3(a),(b)で示す吸引搬送手段25は、図2(a),(b)で示した第一の例の吸引搬送手段25において、吸引力発生部31を印刷部3側である剥離吸引口39に近接して配置している。
【0039】
これにより、第二の例の吸引搬送手段25では、剥離吸引口39側の吸引力を搬送吸引口40側の吸引力よりも高くして、版胴16(周壁15)の外周面側から印刷済みの印刷用紙Pを引き剥がす吸引力を大きくする。
【0040】
図4(a)は吸引搬送手段の第三の例を示す平面図、図4(b)は図4(a)における側面図である。
図4(a),(b)で示す吸引搬送手段25は、図3(a),(b)で示した第二の例の吸引搬送手段25に対し、剥離吸引口39が、ガイド板34の一端部34a側であるケース30の上端縁に設けられている。本実施の形態では、ガイド板34の一端部34aとケース30との間に隙間を設け、この隙間を剥離吸引口39としている。また、剥離吸引口39が設けられた印刷部3側に向くケース30の前面は、下向きとなるように印刷用紙Pの搬送方向に向かって傾斜して形成されている。
【0041】
さらに、剥離吸引口39の近傍であるガイド板34の一端部34a側にあるプーリ36aは、ケース30内に配されている。そして、各プーリ36a,36bに掛け回される搬送ベルト35は、剥離吸引口39からケース30内に引き込まれている。また、剥離吸引口39の開口部分には、搬送ベルト35を掛ける支持軸41が設けられている。この支持軸41は、各プーリ36a,36bの径よりも細径に形成され、各プーリ36a,36bが固定された支軸37と平行であり、且つ、搬送ベルト35の回転に際して共に回転するようにケース30側に支持されている。
【0042】
これにより、第三の例の吸引搬送手段25では、剥離吸引口39を、より版胴16とプレスローラ20の圧接部分に接近させ、剥離吸引口39による吸引作用を十分に得られるようにする。さらに、第三の例の吸引搬送手段25では、剥離吸引口39の開口部分にかかる搬送ベルト35によって、版胴16(周壁15)の外周面側から引き剥がした印刷済みの印刷用紙Pを直ちに搬送ベルト35にて搬送できるようにする。
【0043】
図5は吸引搬送手段の第四の例を示す平面図である。
図5で示す吸引搬送手段25は、図4(a),(b)で示した第三の例の吸引搬送手段25において、搬送吸引口40を小さくし、剥離吸引口39の総開口面積に対して、搬送吸引口40の総開口面積が小さくなるように形成されている。具体的には、剥離吸引口39の総開口面積に対する搬送吸引口40の総開口面積が略10:1となるように形成されている。また、搬送吸引口40は、印刷部3側であるガイド板34の一端部34a側の配置が他端部34b側と比較して密となるように形成されている。
【0044】
これにより、第四の例の吸引搬送手段25では、上記各総開口面積の関係により剥離吸引口39の吸引力が増し、版胴16(周壁15)の外周面側から印刷済みの印刷用紙Pを引き剥がす吸引力をさらに大きくする。また、第四の例の吸引搬送手段25では、搬送吸引口40の配置をガイド板34の一端部34a側で密となるようにしていることにより、ガイド板34の一端部34a側で印刷用紙Pを搬送ベルト35に引き付けて、版胴16からの印刷用紙Pの引き剥がしを助勢する。
【0045】
上述した第一乃至第四の例の吸引搬送手段25は、孔版印刷装置に対し、図6乃至図10に示すように配置されている。なお、図6乃至図10で示す吸引搬送手段25は、第四の例の吸引搬送手段25としている。
【0046】
吸引搬送手段25は、図6,図9,図10に示すように、剥離吸引口39が、版胴16の軸線Oに交差するスキージローラ17の中心線Aに直交し、且つ、プレスローラ20と版胴16側との圧接位置を通る基準線Bの下方に位置するように配置されるとともに、プレスローラ20に近接して配置されている。これにより、剥離吸引口39が、印刷用紙Pをプレスローラ20によって版胴16側に圧接した直後の位置に近接し、印刷を行った直後に版胴16側から印刷用紙Pを引き剥がす吸引力を作用させることとなる。
【0047】
このように配置した場合、例えば、図6における部分拡大図である図7に示すように、プレスローラ20と版胴16側との圧接位置を通過した印刷用紙Pが、剥離吸引口39の吸引力によって搬送ベルト35側に吸引された状態にて、プレスローラ20、印刷用紙P、搬送ベルト35に囲まれた吸引領域Vを形成することとなる。そして、後続して圧接位置を通過した印刷用紙Pは、この吸引領域Vによって順次搬送ベルト35側に吸引されて搬送される。
【0048】
また、図8に示すように、剥離吸引口39が設けられた印刷部3側に向くケース30の前面に対し、上方に延出された延長片42を設けてもよい。これにより、剥離吸引口39による上記吸引力が、より効率よく印刷用紙Pに対して作用する。
【0049】
なお、各図に示した吸引搬送手段25は、ガイド板34が平板状に形成されているが、一端部34aよりも他端部34bが下側に位置するように湾曲させて形成してもよい。
【0050】
なお、図6で示す吸引搬送手段25の配置は、搬送ベルト35が沿うガイド板34の上面が、基準線Bに平行となるように配されている。これに対し、図9に示すように、吸引搬送手段25を、搬送ベルト35が沿うガイド板34の上面が、基準線Bに交差するようにして配置してもよい。この場合、剥離吸引口39の吸引力により版胴16側から引き剥がされた印刷用紙Pが、搬送ベルト35側により吸着するように接近することとなる。また、図10に示すように、吸引搬送手段25を、搬送ベルト35が沿うガイド板34の上面が、基準線Bから離れるように配置してもよい。この場合、ガイド板34の一端部34aよりも他端部34bが下側に位置するように傾斜して設けた構成と同様に、印刷用紙Pを搬送する過程において版胴16側から印刷用紙Pを引き剥がす方向に搬送力が作用することとなる。
【0051】
また、吸引搬送手段25の配置を示す図6乃至図10では、プレスローラ20が版胴16側に印刷用紙Pを圧接する圧接位置にある時、プレスローラ20の中心が、スキージローラ17の中心線A上となる構成である。その他、プレスローラ20が圧接位置にある時、プレスローラ20をスキージローラ17の中心線Aから給紙側にずらした位置にして、印刷用紙Pの挟み込みを良くする構成もある。この場合であっても、吸引搬送手段25を上述した配置にすればよい。
【0052】
したがって、上述した孔版印刷装置では、吸引搬送手段25により、従来別々の構成にて行っていた版胴16側からの印刷用紙Pの引き剥がしと、排紙台24への印刷用紙Pの搬送とを共に行うことが可能となる。
【0053】
また、版胴16側からの印刷用紙Pの引き剥がしに関し、従来の分離爪や送風ファンの構成に代えて、印刷用紙Pを吸引する方式としているため、印刷用紙Pの印刷画像面に接触することなく、画像部分の印刷品位の低下を防止することが可能となる。
【0054】
また、上記吸引搬送手段25では、剥離吸引口39を、ケース30の版胴16側に配置するようにしている。これにより、プレスローラ20が版胴16側に圧接する位置に剥離吸引口39をより近づけることができ、剥離吸引口39による吸引作用を十分に得ることが可能となる。さらに、吸引搬送手段25は、吸引力発生部31の配置、剥離吸引口39に対する搬送吸引口40の総開口面積の設定により、剥離吸引口39の吸引力を増し、版胴16(周壁15)の外周面側から印刷済みの印刷用紙Pを引き剥がす吸引力を大きくすることが可能となる。これにより、版胴16側からの印刷用紙Pの引き剥がしを安定して効率よく行うことができる。また、印刷画像の印字率が大きく、または偏っている場合であっても、印刷画像の滲み、濃淡の発生、裏移り、および排紙ジャム等の不都合を解消することが可能となる。
【0055】
また、上記吸引搬送手段25により、版胴16側からの印刷用紙Pの引き剥がしを安定して効率よく行う。これにより、印刷画像の印字率が大きく、または偏っている場合であっても、版胴103側からの印刷用紙Pの分離タイミングの変化をなくし、版胴16側からの印刷用紙Pの分離を用紙先端位置を揃えて行うことが可能となる。これにより、特に、後述するように、版胴16の後段に別の版胴を設けて、多版印刷や両面印刷を行うようにした孔版印刷装置では、初段の版胴16にて印刷された印刷用紙Pの画像に対し、後段の版胴にて印刷する印刷画像の相対的なズレを防止することが可能となる。
【0056】
以下、上記複数の版胴を備えた孔版印刷装置について説明する。
図11は複数の版胴を備えた孔版印刷装置の一例を示す側面図である。
なお、以下に説明する孔版印刷装置の例は、上述した図1に例示する孔版印刷装置に対し、印刷部3と排紙部5の間に、さらなる印刷を行う印刷部53と、この印刷部53にかかる製版部52および排版部56を備えている。ゆえに、上述した図1で示す孔版印刷装置と同一あるいは同等部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図11では、原稿読み取り部1にかかる構成を省略している。
【0057】
製版部52は、図11に示すように、製版部2と上下逆に配置されている。この製版部52は、原紙ロール部59と、横一列に配置された複数個の点状発熱体により構成されたサーマルヘッド60と、プラテンローラ61及び原紙送りローラ62と、原紙案内ローラ63と、原紙カッタ64とを有している。そして、プラテンローラ61の回転により、原紙ロール部59から孔版原紙Mを連続して引き出し、サーマルヘッド60とプラテンローラ61の間で搬送する。サーマルヘッド60には、上述した原稿読み取り部1によって読み取られた原稿の画像データが入力されている。そして、サーマルヘッド60の複数個の点状発熱体が各々個別に選択的に発熱することにより、感熱性の孔版原紙Mにドットマトリックス式に感熱穿孔製版が行われる。この製版時において、プラテンローラ61によって原紙ロール部59から引き出された孔版原紙Mは、原紙案内ローラ63によって所望の引張力が付与されて皺等の発生を防止している。また、製版が行われた孔版原紙Mは、原紙送りローラ62によってさらに搬送され、原紙カッタ64により一版分に切断される。
【0058】
印刷部53は、図11に示すように、印刷部3と上下逆に配置されている。この印刷部53は、多孔金属板、メッシュ構造体等により構成された多孔構造のインキ通過性の周壁65を円筒状に配置した版胴66を有している。版胴66は、図示されない駆動手段により自身の軸線周りに図11にて時計廻り方向に回転駆動される。また、版胴66の外周には、孔版原紙Mの先端部をクランプするクランプ部66aが設けられている。そして、版胴66は、搬送された製版済みの孔版原紙Mの先端部をクランプ部66aにてクランプしながら回転することにより、その外周面に孔版原紙Mを巻装着版する。また、版胴66の内部には、インキ供給ローラ67及びドクタローラ68によるインキ供給装置69が設けられている。さらに、版胴66の外側には、プレスローラ70が版胴66(周壁65)の外周面に接離し得るように移動可能に設けられている。
【0059】
排版部56は、図11に示すように、排版部6と上下逆に配置されている。この排版部56は、印刷部53の一方の側(図11中左側)に設けられている。排版部56は、使用済みの孔版原紙Mを版胴66より引き剥がす剥離爪77と、引き剥がされた孔版原紙Mを搬送する排版ローラ78と、搬送された孔版原紙Mを収容する排版ボックス79とを有している。
【0060】
図11に示す排紙部5には、上記第三の例あるいは第四の例の吸引搬送手段25が採用され、且つ、この吸引搬送手段25が図1等で示す構成と上下逆に配置されている。即ち、図11で示す吸引搬送手段25では、ケース30が、下面に板状のガイド板34を有して箱状に形成されている。また、吸引力発生手段31が、ケース30の平面に設けられ、ケース30内の空気をケース30外の上側に排気する。そして、搬送ベルト35が、ガイド板34の下面に沿うように配されている。これにより、図11で示す吸引搬送手段25は、吸引力発生部31による吸引力を、版胴66(周壁65)の外周面側から印刷済みの印刷用紙Pを引き剥がす吸引力とし、且つ、吸引力発生部31による吸引力を、印刷用紙Pをガイド板34の下面に沿う搬送ベルト35の下側面に吸着する吸引力として、搬送ベルト35の回転とともに排紙台24の方向に搬送する。
【0061】
また、図11で示す孔版印刷装置では、版胴16と版胴66との間に、別の吸引搬送手段75が配されている。この吸引搬送手段75は、図11乃至図13に示すように、ケース80と、吸引力発生部81と、搬送部82を備えている。
【0062】
ケース80は、上面に板状のガイド板84を有して箱状に形成されている。ガイド板84は、略平坦状とされ、一端部84aを版胴16側に向け、他端部84bを版胴66側に向けて設けられている。
【0063】
吸引力発生部81は、ケース80の底面に設けられている。吸引力発生部81は、本実施の形態では吸引ファンをなし、ケース80内の空気をケース80外の下側に排気する。
【0064】
版胴16側に向くガイド板84の一端部84aには、剥離吸引口89が設けられている。剥離吸引口89は、ガイド板84の一端部84aとケース80との間に隙間を設け、この隙間が剥離吸引口89とされている。この剥離吸引口89は、吸引力発生部81による吸引力を、版胴16(周壁15)の外周面側から印刷済みの印刷用紙Pを引き剥がす吸引力とする。
【0065】
搬送部82は、無端状とされた帯体をなす搬送ベルト85の一部が、ガイド板84の上面に沿うように配されている。搬送ベルト85は、以下の構成により印刷用紙Pの搬送方向に沿って掛け回されている。
図12および図13に示すように、剥離吸引口89の開口部分には、支持軸91aが設けられている。また、ガイド板84の他端部84b側には、支持軸91aと同様の支持軸91bが設けられている。さらに、支持軸91aの下方であって、ケース80の内部には、支軸87に固定されたプーリ86が設けられている。支持軸91a,91bおよび支軸87は平行であり、且つ、回転可能にケース80側に支持されている。搬送ベルト85は、これら支持軸91a,91bおよび支軸87のプーリ86に掛け回されている。これにより、搬送ベルト85は、支持軸91a,91bに支持されてガイド板84の上面に沿い、且つ、剥離吸引口89からケース30内に引き込まれてプーリ86を介してケース80の外側に延出されて支持軸91bに至る。また、搬送ベルト85には、通気穴88が設けられている。図12で示す通気穴88は、略円形に開口して所定間隔をおいて複数形成されている。
【0066】
また、支軸87は、駆動軸をなし、不図示の駆動モータから回転力を受けて所定の速度で回転駆動する。支持軸91a,91bは、従動軸をなす。そして、駆動軸をなす支軸87が回転駆動することにより、搬送ベルト85が図12中矢印方向に循環する如く回転する。
【0067】
ガイド板84には、搬送ベルト85と重なる部位に、搬送吸引口90が設けられている。搬送吸引口90は、略円形に開口して複数等間隔に形成されている。この搬送吸引口90は、搬送ベルト85に設けられた通気穴88と重合し、その重合部分にて、吸引力発生部81による吸引力を、印刷用紙Pを搬送ベルト85側に吸着する吸引力とする。即ち、搬送ベルト85に吸着された印刷用紙Pは、搬送ベルト85の回転とともに、図12中矢印方向である版胴66の方向に搬送される。
【0068】
また、図11に示すように、ケース80は、剥離吸引口89(支持軸91a)が設けられた版胴16側に向く前面が、下向きとなるように印刷用紙Pの搬送方向に向かって傾斜して形成されている。これにより、吸引搬送手段75では、剥離吸引口89側を、図6,図9,図10で示す吸引搬送手段25と同様に、より版胴16とプレスローラ20の圧接部分に接近させ、剥離吸引口89による吸引作用を十分に得ている。また、搬送ベルト85が剥離吸引口89の開口部分にかかるので、版胴16(周壁15)の外周面側から引き剥がした印刷済みの印刷用紙Pを直ちに搬送ベルト85にて搬送できる。さらに、ケース80は、支持軸91bが設けられた版胴66側に向く背面が、下向きとなるように印刷用紙Pの搬送方向と逆に向かって傾斜して形成されている。これにより、吸引搬送手段75では、支持軸91bが支持する搬送ベルト85の部分を、版胴66とプレスローラ70の圧接部分に接近させて、版胴66側への印刷用紙Pの受け渡し精度を向上している。
【0069】
また、吸引搬送手段75は、版胴16と版胴66との間に配置するために吸引搬送手段25と比較して搬送方向に短尺に形成されて小型化が図られている。
【0070】
上記の如く、図11に示す孔版印刷装置においては、版胴16側にて印刷が行われた後の印刷用紙Pは、吸引搬送手段75を介して版胴66側に搬送される。版胴66では、インキ供給装置69により周壁65の内周面に所定のインキが供給される。版胴66は、自身の軸線周りに図11にて時計廻り方向に回転駆動される。これとともに、吸引搬送手段75により搬送された印刷用紙Pが、版胴66とプレスローラ70との間に供給される。そして、印刷用紙Pが、プレスローラ70の移動により版胴66(周壁65)の外周面に巻装されている孔版原紙Mに対して圧接されることによって、印刷用紙Pに対して版胴66から孔版原紙Mを通過したインキが転写されて孔版印刷が行われる。
【0071】
ところで、上述した吸引搬送手段75では、剥離吸引口89による吸引作用を十分に得て、版胴16側からの印刷用紙Pの引き剥がしを安定して効率よく行っている。印刷速度(用紙送り速度)や、印刷用紙Pの紙質が変化する場合には、図14に示すようP1あるいはP2のように、剥離吸引口89にて吸引される印刷用紙Pの剥離後の軌道に変化が生じる。具体的には、印刷速度が速い、あるいはコシのある紙質の印刷用紙Pの場合にはP1の軌道となり、印刷用紙が遅い、あるいはコシの無い紙質の印刷用紙Pの場合にはP2の軌道となる。このように、印刷用紙PがP1あるいはP2の如く異なる軌道を通過すると、僅かであるが搬送方向における印刷用紙Pの用紙先端位置にズレが生じることとなる。本発明では、以下の構成により、この用紙先端位置のズレをなくしている。
【0072】
図15に示すように、剥離吸引口89部分には、ガイドリブ92が設けられている。このガイドリブ92は、その上端縁92aが剥離吸引口89にて版胴16から引き剥がされた印刷用紙Pの非印刷面側に接触し、印刷用紙Pを撓むことなく支持する。ガイドリブ92の上端縁92aは、図15に示すように、支持された印刷用紙Pが最も撓まない条件での軌道をなし、且つ、版胴16から引き剥がされた印刷用紙Pを滑らかに搬送ベルト85上に導くように形成されている。即ち、上端縁92aは、P1相当の軌道をなすように形成されている。さらに、上端縁92aは、印刷用紙Pが最も撓まない直線状の軌道をなしていてもよい。また、ガイドリブ92は、図12および図13に示すように、剥離吸引口89を閉塞することなく板片状をなして複数設けられている。
【0073】
このように、ガイドリブ92を設けることにより、印刷速度や、印刷用紙Pの紙質が変化する場合でも、剥離吸引口89にて吸引される印刷用紙Pの剥離後の軌道に変化がないので、印刷用紙Pの用紙先端位置にズレが生じることがない。これにより、版胴16側からの印刷用紙Pの引き剥がしをさらに安定させることが可能となる。特に、図11に示すように、版胴16の後段に別の版胴66を設けて、多版印刷や両面印刷を行うようにした孔版印刷装置において、初段の版胴16にて印刷された印刷用紙Pの画像に対し、後段の版胴66にて印刷する印刷画像の相対的なズレをなくして、さらに正確な印刷位置の位置決めを行うことが可能となる。
【0074】
なお、上述したガイドリブ92は、複数の版胴16,66の間に設けられる吸引搬送手段75にのみ採用することに限らず、上述した版胴16(66)から排紙部5に印刷用紙Pを搬送する吸引搬送手段25に採用してもよい。吸引搬送手段25にガイドリブ92を採用した場合には、印刷用紙Pの用紙先端位置が揃うことにより、排紙台24に向けて送り出される印刷用紙Pの送り状態が変化しなくなるので、排紙台24上での紙揃えをより良くすることが可能となる。
【0075】
また、上述した総ての例では、ケース30(80)と、吸引力発生部31(81)と、剥離吸引口39(89)と、搬送部32(82)と、搬送吸引口40(90)からなる吸引搬送手段25(75)について説明したが、搬送部32(82)の搬送ベルト35(85)に設けた通気穴38(88)と搬送吸引口40(90)を除いた剥離吸引手段25A(75A)としてもよい。
【0076】
この場合、図2〜図4の吸引搬送手段25の例は、図16〜図18に示すように、通気穴38と搬送吸引口40がない剥離吸引手段25Aとなる。同様に、図12,図13の吸引搬送手段75の例も、図19,図20に示すように、通気穴88と搬送吸引口90がない剥離吸引手段75Aとなる。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の孔版印刷装置は、剥離吸引口が、吸引力発生部による吸引力を、版胴側から印刷済みの印刷用紙を引き剥がす吸引力とする。これにより、版胴側からの印刷用紙の引き剥がしに関し、従来の分離爪や送風ファンの構成に代えて、印刷用紙を吸引する方式としているため、印刷用紙の印刷画像面に接触することなく、画像部分の印刷品位の低下を防止することができる。
【0078】
また、剥離吸引口が、版胴の軸線に交差するスキージローラの中心線に直交し、且つ、プレスローラと版胴側との圧接位置を通る基準線の下方にて、プレスローラに近接して配されていることにより、版胴側からの印刷用紙の引き剥がす剥離吸引口の吸引力を効率よく印刷用紙に対して作用させることができる。
【0079】
特に、剥離吸引口が、吸引力発生部による吸引力を、版胴側から印刷済みの印刷用紙を引き剥がす吸引力とする。また、搬送吸引口が、吸引力発生部による吸引力を、印刷用紙を搬送ベルト側に吸着する吸引力とする。そして、搬送ベルトに吸着された印刷用紙を搬送ベルトの回転とともに排紙する。これにより、従来別々の構成にて行っていた版胴側からの印刷用紙の引き剥がしと、排紙側への印刷用紙の搬送とを吸引搬送手段にて共に行うことができる。
【0080】
また、吸引力発生部を剥離吸引口側に近接して設けたことにより、剥離吸引口の吸引力を増して、版胴側から印刷済みの印刷用紙を引き剥がす吸引力を大きくすることができる。これにより、版胴側からの印刷用紙の引き剥がしを安定して効率よく行うことができ、印刷画像の印字率が大きく、または偏っている場合であっても、印刷画像の滲み、濃淡の発生、裏移り、および排紙ジャム等の不都合を解消することができる。
【0081】
更に、剥離吸引口をガイド板の一端部側であるケースの上端縁に設け、この剥離吸引口の近傍にあるプーリをケース内に配して、搬送ベルトを剥離吸引口からケース内に入るように掛け回すとともに、剥離吸引口の開口部分に、搬送ベルトを掛ける支持軸を有している。これにより、剥離吸引口を、より版胴とプレスローラの圧接部分に接近させ、剥離吸引口による吸引作用を十分に得られるようにすることができる。さらに、剥離吸引口の開口部分にかかる搬送ベルトによって、版胴側から引き剥がした印刷済みの印刷用紙を直ちに搬送ベルトにて搬送することができる。
【0082】
また、剥離吸引口の総開口面積に対する搬送吸引口の総開口面積が小さくなるように形成したことにより、剥離吸引口の吸引力を増して、版胴側から印刷済みの印刷用紙を引き剥がす吸引力を大きくすることができる。これにより、版胴側からの印刷用紙の引き剥がしを安定して効率よく行うことができ、印刷画像の印字率が大きく、または偏っている場合であっても、印刷画像の滲み、濃淡の発生、裏移り、および排紙ジャム等の不都合を解消することができる。
【0083】
更に、剥離吸引手段に設けたガイドリブにより、印刷速度や、印刷用紙Pの紙質が変化した場合に、剥離吸引口にて吸引された印刷用紙Pの軌道に変化がなく、印刷用紙Pの用紙先端位置にズレが生じることがない。
【0084】
また、吸引搬送手段を介して版胴が複数設けられている場合、初段の版胴から後段の版胴に印刷用紙を搬送する際に、用紙先端位置を変化なく揃えることが可能となる。これにより、各版胴による印刷画像の相対的なズレをなくし、正確な印刷位置での印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による孔版印刷装置の一例を示す側面図。
【図2】(a)吸引搬送手段の第一の例を示す平面図。
(b)図2(a)における側面図。
【図3】(a)吸引搬送手段の第二の例を示す平面図。
(b)図3(a)における側面図。
【図4】(a)吸引搬送手段の第三の例を示す平面図。
(b)図4(a)における側面図。
【図5】吸引搬送手段の第四の例を示す平面図。
【図6】吸引搬送手段の孔版印刷装置に対する配置を示す側面図。
【図7】図6における部分拡大図。
【図8】吸引搬送手段の孔版印刷装置に対する配置を示す側面図。
【図9】吸引搬送手段の孔版印刷装置に対する配置を示す側面図。
【図10】吸引搬送手段の孔版印刷装置に対する配置を示す側面図。
【図11】複数の版胴を備えた孔版印刷装置の一例を示す側面図。
【図12】別の吸引搬送手段を示す平面図。
【図13】別の吸引搬送手段を示す斜視図。
【図14】印刷速度あるいは紙質が異なる場合の印刷用紙の軌道を示す図。
【図15】ガイドリブが設けられた吸引搬送手段を示す側面図。
【図16】(a)剥離吸引手段の第一の例を示す平面図。
(b)図16(a)における側面図。
【図17】(a)剥離吸引手段の第二の例を示す平面図。
(b)図17(a)における側面図。
【図18】(a)剥離吸引手段の第三の例を示す平面図。
(b)図18(a)における側面図。
【図19】別の剥離吸引手段を示す平面図。
【図20】別の剥離吸引手段を示す斜視図。
【図21】従来の孔版印刷装置を示す側面図。
【符号の説明】
15,65…周壁、16,66…版胴、17,67…スキージローラ、20,70…プレスローラ、30,80…ケース、31,81…吸引力発生部、32,82…搬送部、34,84…ガイド板、34a,84a…一端部、34b,84b…他端部、35,85…搬送ベルト、36a,36b,86…プーリ、39,89…剥離吸引口、40,90…搬送吸引口、41,91…支持軸、92…ガイドリブ、M…孔版原紙、P…印刷用紙。

Claims (7)

  1. インキ通過性の円筒状の周壁を有して自身の軸線廻りに回転可能とされた版胴と、前記周壁の内周面からインキを供給するスキージローラと、前記版胴の外部に設けられて前記スキージローラとの間にて前記周壁の外周面に巻装された孔版原紙に対して印刷用紙を圧接するプレスローラとを備えた孔版印刷装置であって、
    上面にガイド板を有したケースと、
    前記ケースに設けられた吸引力発生部と、
    前記ガイド板の一端部に設けられ、前記吸引力発生部による吸引力を、前記版胴側から前記印刷用紙を引き剥がす吸引力とする剥離吸引口と、
    からなる剥離吸引手段を備え、
    前記剥離吸引口が、前記版胴の軸線に交差する前記スキージローラの中心線に直交し、且つ、前記プレスローラと前記版胴側との圧接位置を通る基準線の下方にて、前記プレスローラに近接して配されている孔版印刷装置において、
    前記剥離吸引手段は、更に、無端状とされた搬送ベルトを前記ガイド板の一端部側および他端部側に軸支された一対のプーリに対して掛け回し、前記搬送ベルトの上側部分を前記ガイド板の上面に沿うようして駆動する搬送部を有し、
    前記剥離吸引口が、前記ガイド板の一端部側である前記ケースの上端縁に設けられ、
    前記搬送部が、前記剥離吸引口の近傍にある前記プーリを前記ケース内に配して、前記搬送ベルトを前記剥離吸引口から前記ケース内に入るように掛け回すとともに、前記剥離吸引口の開口部分に、前記搬送ベルトを掛ける支持軸を有していることを特徴とする孔版印刷装置
  2. 記剥離吸引手段には、前記剥離吸引口にて前記版胴側から引き剥がされた前記印刷用紙を撓むことなく支持し、前記搬送ベルトに向けて導くガイドリブが設けられていることを特徴とする請求項1記載の孔版印刷装置。
  3. 前記剥離吸引手段を介して前記版胴が複数設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の孔版印刷装置。
  4. インキ通過性の円筒状の周壁を有して自身の軸線廻りに回転可能とされた版胴と、前記周壁の内周面からインキを供給するスキージローラと、前記版胴の外部に設けられて前記スキージローラとの間にて前記周壁の外周面に巻装された孔版原紙に対して印刷用紙を圧接するプレスローラとを備えた孔版印刷装置であって、
    上面にガイド板を有したケースと、
    前記ケースに設けられた吸引力発生部と、
    前記ガイド板の一端部に設けられ、前記吸引力発生部による吸引力を、前記版胴側から前記印刷用紙を引き剥がす吸引力とする剥離吸引口と、
    無端状とされた搬送ベルトに通気穴を設け、該搬送ベルトを前記ガイド板の一端部側お よび他端部側に軸支された一対のプーリに対して掛け回し、前記搬送ベルトの上側部分を前記ガイド板の上面に沿うようして駆動する搬送部と、
    前記ガイド板の前記搬送ベルトと重なる部位に設けられ、前記吸引力発生部による吸引力を、前記印刷用紙を前記搬送ベルト側に吸着する吸引力とする搬送吸引口と、
    からなる吸引搬送手段を備え、
    前記剥離吸引口が、前記版胴の軸線に交差する前記スキージローラの中心線に直交し、且つ、前記プレスローラと前記版胴側との圧接位置を通る基準線の下方にて、前記プレスローラに近接して配されている孔版印刷装置において、
    前記剥離吸引口が、前記ガイド板の一端部側である前記ケースの上端縁に設けられ、
    前記搬送部が、前記剥離吸引口の近傍にある前記プーリを前記ケース内に配して、前記搬送ベルトを前記剥離吸引口から前記ケース内に入るように掛け回すとともに、前記剥離吸引口の開口部分に、前記搬送ベルトを掛ける支持軸を有していることを特徴とする孔版印刷装置。
  5. インキ通過性の円筒状の周壁を有して自身の軸線廻りに回転可能とされた版胴と、前記周壁の内周面からインキを供給するスキージローラと、前記版胴の外部に設けられて前記スキージローラとの間にて前記周壁の外周面に巻装された孔版原紙に対して印刷用紙を圧接するプレスローラとを備えた孔版印刷装置であって、
    上面にガイド板を有したケースと、
    前記ケースに設けられた吸引力発生部と、
    前記ガイド板の一端部に設けられ、前記吸引力発生部による吸引力を、前記版胴側から前記印刷用紙を引き剥がす吸引力とする剥離吸引口と、
    無端状とされた搬送ベルトに通気穴を設け、該搬送ベルトを前記ガイド板の一端部側および他端部側に軸支された一対のプーリに対して掛け回し、前記搬送ベルトの上側部分を前記ガイド板の上面に沿うようして駆動する搬送部と、
    前記ガイド板の前記搬送ベルトと重なる部位に設けられ、前記吸引力発生部による吸引力を、前記印刷用紙を前記搬送ベルト側に吸着する吸引力とする搬送吸引口と、
    からなる吸引搬送手段を備え、
    前記剥離吸引口が、前記版胴の軸線に交差する前記スキージローラの中心線に直交し、且つ、前記プレスローラと前記版胴側との圧接位置を通る基準線の下方にて、前記プレスローラに近接して配されている孔版印刷装置において、
    前記剥離吸引口の総開口面積に対する前記搬送吸引口の総開口面積が小さくなるように形成されていることを特徴とする孔版印刷装置。
  6. 記吸引搬送手段には、前記剥離吸引口にて前記版胴側から引き剥がされた前記印刷用紙を撓むことなく支持し、前記搬送ベルトに向けて導くガイドリブが設けられていることを特徴とする請求項4又は5記載の孔版印刷装置。
  7. 前記吸引搬送手段を介して前記版胴が複数設けられていることを特徴とする請求項4又は5又は6記載の孔版印刷装置。
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