JP3779744B2 - 単糖誘導体または単糖誘導体を含有する脂肪乳剤 - Google Patents

単糖誘導体または単糖誘導体を含有する脂肪乳剤 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、新規な単糖誘導体およびこの単糖誘導体を含有する脂肪乳剤に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
医薬品、医薬部外品などの分野で各種乳化組成物が用いられており、たとえば、平均粒径が約0.2μmのリピッドスフェアを水相中に分散し、患者の栄養補給または脂溶性薬剤の非経口投与製剤用ドラッグキャリヤーとする[医薬品の開発13巻、第245頁(1989年)、廣川書店];水溶液で静脈注射すると血中からの消失が早いものをプロドラッグ化などにより脂溶性を高めた上で、脂肪乳剤のリピッドスフェア中に取り込み静脈注射する[薬理と治療、第16巻、第2号、第551-557頁(1988年)];水溶液として静脈注射が不可能な脂溶性薬剤の静脈注射用製剤とする[ターゲティング療法、第187-202頁(1985年)、医薬ジャーナル社]といったものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、一般に上述したようなマイクロスフェアを、静脈内、動脈内あるいは腹腔内投与した場合、細網内皮系の働きにより、速やかに血中より取り除かれ、充分な血中滞留時間が得られない。そこで、たとえば、マイクロスフェアの粒径を変化させて血中滞留時間を延長させる(特開平2-167217号)ことなどが試みられているが、満足な結果が得られていないのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような状況下、本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、分子中の一端にステロール残基を、他端に単糖を有し、この両者をポリエチレングリコールにより結合したつぎの一般式、
A−(CH2−CH2−O)n−R [1]
「式中、Aは、単糖残基を;Rは、ステロール残基を;nは、5〜200の整数を示す。」
で表される新規な単糖誘導体が脂肪乳剤に効率よく取り込まれること、およびこの新規な単糖誘導体を含有する脂肪乳剤に薬剤を含有させた脂肪乳剤は、薬剤の血中滞留時間を延長させることおよび血管透過性の亢進した病巣への送達が改善されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0005】
本発明の単糖残基の単糖としては、グルコース、ガラクトース、マンノースなどのヘキソース;キシロース、アラビノース、リボースなどのペントース;フコース、6−デオキシグルコース、ラムノースなどのデオキシヘキソースが挙げられ、好ましいものとしては、グルコース、ガラクトース、キシロース、フコースが挙げられ、特に好ましいものとしてフコースが挙げられる。
【0006】
本発明のステロール残基のステロールとしては、コレステロール;スチグマステロール、シトステロール、フコステロール、ブラシカステロール、カンペステロールなどフィトステロール;スタノールとしては、コレスタノール;スチグマスタノール、シトスタノール、フコスタノール、ブラシカスタノール、カンペスタノールなどフィトスタノールまたはそれらの混合物が挙げられ、好ましいものとして、コレスタノール、フィトスタノールが挙げられ、特に好ましいものとして、フィトスタノールが挙げられる。
【0007】
本発明化合物は、単糖が、そのアノマー位の水酸基でポリオキシエチレン鎖、すなわち、−(CH2−CH2−O)n−基の一端とαまたはβ型およびそれらの混合物としてエーテル結合し、もう一端がステロールの3位の水酸基とエーテル結合している。そしてポリオキシエチレン鎖の長さ、すなわち、nは5〜200であり、好ましくは20〜50、最も好ましいのは30である。
【0008】
一般式[1]で表わされる化合物は、適当な保護基を有する単糖誘導体と一端にステロール残基を有し他端が水酸基で種々の長さのポリオキシエチレン鎖をもつ化合物との間にエーテル結合を生成させた後、公知の方法で糖の保護基を除去することにより製造することができる。
【0009】
(1)ポリオキシエチレン−ステロール
一端にステロール残基を有し他端が水酸基で種々の長さのポリオキシエチレン鎖をもつ化合物は、エチレンオキサイドとステロール残基の3位の水酸基を反応させることにより得られ、反応条件などにより種々の長さのポリオキシエチレン鎖を持つものが得られるが、このような化合物は容易に入手できる(ポリオキシエチレンフィトステロール・フィトスタノール BPS-5, BPS-10, BPS-20, BPS-30, BPSH-25, BDHC-200 ;日光ケミカルズ製)。
【0010】
(2)単糖−ポリオキシエチレン−ステロール
単糖とポリオキシエチレン鎖とのエーテル結合は、たとえば、ケミカル・ファーマシュチカル・ブリチン(Chem. Pharm. Bull.)、第40巻、第8号、第2019-2022頁(1992年)に記載の方法、すなわち、アノマー位の水酸基がアセチル化され、他の水酸基が緩和な条件で脱離可能な保護基で保護された単糖誘導体をトリフルオロメタンスルホン酸亜鉛とトリメチルシリルブロマイドを組み合わせた触媒の存在下、反応に関与しない溶媒(たとえば、塩化メチレン、ジクロロエタンなど)中、ポリオキシエチレン鎖の末端の水酸基と反応させる;アノマー位の水酸基がハロゲンで置換されたハロゲン化糖とポリオキシエチレン鎖の末端の水酸基とを、反応に関与しない溶媒(たとえば、塩化メチレン、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエンなど)中で活性化剤(トリフルオロメタンスルホン酸銀、炭酸銀、過塩素酸銀などの銀塩;酸化水銀、塩化水銀などの水銀塩;塩化すずなどのすず塩)の存在下で反応させる;水酸基がアシル化された糖とポリオキシエチレン鎖の末端の水酸基とを、反応に関与しない溶媒(たとえば、塩化メチレン、ジクロロエタンなど)中で、酸触媒(たとえば、三フッ化ホウ素・エーテル付加体、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート、ピリジウムパラトルエンスルホネートなど)の存在下で反応させることによって製造することができる。
【0011】
また、糖のアノマー位の水酸基が無保護の糖の場合は、このものを1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、炭酸カリウムなどの塩基と、トリクロロアセトニトリルで処理して、イミデートとした後、酸触媒(たとえば、三フッ化ホウ素・エーテル付加体、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート、ピリジウムパラトルエンスルホネートなど)の存在下、ポリオキシエチレン鎖の末端の水酸基と反応に関与しない溶媒(たとえば、塩化メチレン、ジクロロエタンなど)中で反応させることによっても製造することができる。
【0012】
アノマー位の水酸基がアシル化され、他の水酸基が緩和な条件で脱離可能な保護基、たとえば、ベンジル基で保護された単糖誘導体およびハロゲン化糖は公知の方法により合成できる。
【0013】
本発明の単糖誘導体に異性体が存在する場合、たとえば、単糖が、D体、L体およびそれらの混合物である場合、いずれの異性体も包含する。
【0014】
本発明の脂肪乳剤は、上述した本発明の単糖誘導体を配合した脂肪乳剤であって、該物質の特定の性質を専ら利用するものである。
【0015】
本発明の脂肪乳剤の調製には、本発明の単糖誘導体を使用する他には特別な制限はなく、たとえば、医薬品の開発、第15巻、第313-314頁(1989年)、廣川書店;ジーナル・オブ・ファーマシー・アンド・ファーマコロジー(J.Pharm.Pharmacol.)、第34巻、第49-50頁(1982年)など公知の方法で製造される。
また、マルチフェーズ・バイオメディカル・マテリアルズ(Multiphase Biomedical Materials)、第167-190頁(1989年)に記載の方法に準じた方法によっても製造できる。すなわち、すでに薬剤を含有して調製された脂肪乳剤に、使用されているリン脂質の0.05-1.0倍(重量比)、好ましくは0.1-0.7倍(重量比)の本発明の単糖誘導体を脂肪乳剤に添加し、15〜80℃で5分-18時間攪拌すればよい。
【0016】
すでに薬剤を含有して調製された脂肪乳剤は、脂質、薬剤、リン脂質および必要に応じ非イオン性界面活性剤、等張化剤としてグリセリンまたは食塩を含む水溶液や等張で生理的pH付近のリン酸緩衝液およびこれらを混合して含有する水溶液より常法に従い、たとえば、強力な剪断力を与える乳化機を用いて調製される。
【0017】
この場合、使用される脂質としては、大豆油、トウモロコシ油、サフラワー油、綿実油、ヤシ油、オリーブ油などの植物油;合成または半合成モノ、ジ、トリグリセリド;コレステロール、ケノデオキシコール酸などのステロール;コレステリルリノレート、コレステリルカプリレートなどのステロールエステル;オレイルオレエート、エチルリノレート、エチルラウレートなどのモノエステルが挙げられ、それらは二種以上混合して使用してもよい。
【0018】
また、リン脂質は、卵黄あるいは植物種子由来のレシチン、たとえば、卵黄レシチン、精製卵黄レシチン、大豆レシチン、それらの水素添加物;合成または天然物から分取、精製されたフォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、フォスファチジン酸、フィトグリコリピッドなどが挙げられ、それらは二種以上混合して使用してもよい。
【0019】
また、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下POEと略記する)ソルビタンモノオレエートなどのPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POEソルビットモノオレエートなどのソルビット脂肪酸エステル類;POEグリセリンモノステアレートなどのPOEグリセリン脂肪酸エステル類;POEモノオレエート、POEジステアレートなどのPOE脂肪酸エステル類;POEオレイルエーテルなどのPOEアルキルエーテル類;POEコレスタノールエーテル、POEコレステロールエーテル、POEフィトステロールエーテル、POEフィトスタノールエーテルなどのPOEステロールエーテル類;POEポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;POEヒマシ油などのPOEヒマシ油またはPOE硬化ヒマシ油誘導体類;デカグルセリンジオレートなどのポリグリセリン脂肪酸エステル類などが挙げられ、それらは二種以上混合して使用してもよい。
【0020】
脂肪乳剤に含有される薬剤としては、たとえば、デキサメタゾンパルミテート、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロンなどのステロイド抗炎症剤;フェルビナクエチル、インドメタシン、アミノピリン、フェナセチン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、ケトプロフェン、ジクロフェナク、スリンダクなどの非ステロイド性抗炎症剤;マイトマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、テガフールのオレイン酸エステル、カルモフールなどの抗癌剤;ペニシリン類、セファロスポリン類、マクロライド類、アミノグリコシド類、テトラサイクリン類などの抗菌剤;アムホテリシンB、フルコナゾール、ナイスタチンなどの抗真菌剤;プロスタグランジン類、合成ステロイドなどのホルモン剤;シクロスポリンなどの免疫調整剤;ビタミンA、ビタミンD、ビタミンEなどの脂溶性ビタミン剤などが挙げられる。
【0021】
【実施例】
つぎに本発明を参考例、実施例、比較例および試験例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、溶離液における混合比は、すべて容量比であり、また、カラムクロマトグラフィーにおける担体は、シリカゲル60、70-230メッシュ(メルク社製)を用いた。
【0022】
参考例1
2,3,4−トリ−O−ベンジル−L−フコピラノース2gをピリジン6mlに溶解させ、氷冷下、無水酢酸5mlを加え、室温で一夜反応させる。反応液に酢酸エチル30mlを加え、水、10%クエン酸水溶液、水、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧下に溶媒を留去する。
得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;トルエン:酢酸エチル=50:1〜30:1)で精製すれば、1−O−アセチル−2,3,4−トリ−O−ベンジル−L−フコピラノース1.88gを得る。
IR(KBr)cm-1:1742
NMR(CDCl3)δ値:1.17(3H,d,J=6Hz),2.02(1.2H,s),2.08(1.8H,s),3.45-4.30(4H,m),4.53-5.11(6H,m),5.56(0.4H,d,J=7Hz),6.36(0.6H,d,J=4Hz),7.29(15H,bs)
【0023】
同様にしてつぎの化合物を得る。
・1−O−アセチル−2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−D−グルコピラノース
IR(KBr)cm-1:1752
NMR(CDCl3)δ値:2.06(1.2H,s),2.09(1.8H,s),3.55-4.15(6H,m),4.36-5.10(8H,m),5.56(0.4H,d,J=7Hz),6.39(0.6H,d,J=3Hz),6.87-7.75(20H,m)
・1−O−アセチル−2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−D−ガラクトピラノース
IR(KBr)cm-1:1752
NMR(CDCl3)δ値:2.01(1.5H,s),2.09(1.5H,s),3.50-4.14(6H,m),4.24-5.29(8H,m),5.58(0.5H,d,J=7Hz),6.37(0.5H,d,J=3Hz),7.25(20H,bs)
・1−O−アセチル−2,3,4−トリ−O−ベンジル−D−キシロピラノース
IR(KBr)cm-1:1752
NMR(CDCl3)δ値:2.00(1.5H,s),2.12(1.5H,s),3.30-4.00(5H,m),4.43-4.88(6H,m),5.53(0.5H,d,J=7Hz),6.18(0.5H,d,J=3Hz),7.25(15H,bs)
【0024】
実施例1
(1)1−O−アセチル−2,3,4−トリ−O−ベンジル−L−フコピラノース0.8g、ポリオキシエチレン30−フィトステロール(BPS−30;日光ケミカルズ製)5.82g、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛0.92g、2−メトキシエチルエーテル1.2mlおよび塩化メチレン60mlの混合溶液に、氷冷下、トリメチルシリルブロマイド0.33mlを滴下し、3.5時間攪拌する。反応液に酢酸エチル200mlを加え、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。溶媒を減圧下留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;クロロホルム:メタノール=50:1〜20:1)精製すれば、2,3,4−トリ−O−ベンジル−L−フコシル−ポリオキシエチレン30−フィトステロール2.66gを得る。
IR(KBr)cm-1:2868,1106
NMR(CDCl3)δ値:0.69-2.52(49H,m),3.14-4.10(125H,m),4.29-5.33(8H,m),7.27(15H,s)
【0025】
同様にしてつぎの化合物を得る。
・2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−D−グルコピラノシル−ポリオキシエチレン30−フィトステロール
IR(KBr)cm-1:2370,1107
NMR(CDCl3)δ値:0.55-2.70(46H,m),3.16-4.16(127H,m),4.40-5.35(10H,m),7.26(20H,bs)
・2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−D−ガラクトピラノシル−ポリオキシエチレン30−フィトステロール
IR(KBr)cm-1:2870,1106
NMR(CDCl3)δ値:0.69-2.51(46H,m),2.60-3.97(127H,m),4.30-5.31(10H,m),7.23(20H,bs)
・2,3,4−トリ−O−ベンジル−D−キシロピラノシル−ポリオキシエチレン30−フィトステロール
IR(KBr)cm-1:2869,1109
NMR(CDCl3)δ値:0.69-2.52(46H,m),3.00-4.15(126H,m),4.30-5.33(8H,m),7.25(15H,bs)
【0026】
(2)2,3,4−トリ−O−ベンジル−L−フコシル−ポリオキシエチレン30−フィトステロール1.17gを95%エタノール20mlに溶解させ、5%パラジウム−炭素0.34gを加え、常圧で1.5時間水素添加する。触媒を濾去し、溶媒を減圧下留去した後、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液;クロロホルム:メタノール=30;1〜5:1)精製すれば、L−フコシル−ポリオキシエチレン30−フィトスタノール0.4gを得る。
IR(KBr)cm-1:3448,2872,1106
NMR(CDCl3)δ値:0.65-2.10(51H,m),3.00-5.30(126H,m)
【0027】
同様にしてつぎの化合物を得る。
・D−グルコピラノシル−ポリオキシエチレン30−フィトスタノール
IR(KBr)cm-1:3418,2872,1107
NMR(CDCl3)δ値:0.70-1.85(48H,m),3.33-4.90(128H,m)
・D−ガラクトピラノシル−ポリオキシエチレン30−フィトスタノール
IR(KBr)cm-1:3448,2871,1107
NMR(CDCl3)δ値:0.68-2.54(48H,m),2.80-5.33(128H,m)
・D−キシロピラノシル−ポリオキシエチレン30−フィトスタノール
IR(KBr)cm-1:3442,2871,1107
NMR(CDCl3)δ値:0.70-2.54(48H,m),3.10-5.33(127H,m)
【0028】
実施例2
デキサメタゾンパルミテートを4000μg含有する脂肪乳剤(リメタゾン;ミドリ十字製)1.0mlにL−フコシル−ポリオキシエチレン30−フィトスタノール6mgを加え、60℃で1.5時間攪拌する。この乳剤をセファロースCL−6Bを充填したカラム(φ1.5×25cm)ゲルろ過(溶離液、NaCl:5g、KCl:0.2g、NaHPO4・12H2O:14.5g、KH2PO4:1gを蒸留水で1000mlとした溶液)し、脂肪乳剤分画を分取すれば、デキサメタゾンパルミテート含有し、L−フコシル−ポリオキシエチレン30−フィトスタノールで修飾された脂肪乳剤を得る。
なお、本脂肪乳剤を減圧下乾固した後、重クロロホルムを溶媒としてNMRを測定すると、原料とした脂肪乳剤中に含まれるレシチンのトリメチルアンモニウムのメチルプロトンのシグナルとL−フコシル−ポリオキシエチレン30−フィトスタノールのオキシエチレン部分のメチレンプロトンのシグナルの比較により、L−フコシル−ポリオキシエチレン30−フィトスタノールの約80%が脂肪乳剤に取り込まれていた。
【0029】
比較例
リメタゾンとポリオキシエチレン30−フィトステロール(BPS−30;日光ケミカルズ製)とを実施例2と同様に処理して、BPS−30で修飾された脂肪乳剤を得る。
なお、BPS−30の脂肪乳剤への取り込み率は約90%であった。
【0030】
試験例
脂肪乳剤の血中滞留時間
実施例2の脂肪乳剤、比較例の脂肪乳剤およびリメタゾンをそれぞれ生理食塩液で希釈してデキサメタゾンパルミテートを約400μg/ml含有する脂肪乳剤を調製した。この3種の脂肪乳剤をddY系雄性マウス(4週齢;体重25〜28g)の尾静脈に0.2ml投与した。投与後、5分後、30分後に鎖骨下動脈より血液約1.0mlを採血し、遠心分離して血漿を得た。血漿0.2mlにイソプロパノール1mlを加え攪拌後、遠心分離して得られる上清1mlに塩化メチレン1.6mlついで生理食塩液2mlを加え攪拌後再び遠心分離し塩化メチレン層1mlを得た。この塩化メチレン層を減圧下乾固し残留物に移動相(アセトニトリル:プロパノール=85:1)0.5mlを加え溶解させ試料溶液とした。
試料溶液を高速液体クロマトグラフィー(カラム:Develosil ODS5;野村化学製)に付し、デキサメタゾンパルミテートを定量し、投与量に対する血漿中の薬物残存率を求めた。その結果を表1に示す。
【0031】
Figure 0003779744
【0032】
【発明の効果】
本発明の単糖誘導体で修飾された脂肪乳剤は、血中滞留時間が増加するため、脂肪乳剤に配合された薬物の作用時間の延長させ、また、配合薬物の病巣への送達を改善することができる。

Claims (10)

  1. 一般式、
    A−(CH−CH−O)n−R
    「式中、Aは、アノマー位の水酸基でポリオキシエチレン鎖の一端とエーテル結合しているグルコース、ガラクトース、キシロースまたはフコース残基を;Rは、ステロールの3位の水酸基でポリオキシエチレン鎖の一端とエーテル結合しているコレステロール、フィトステロール、コレスタノールまたはフィトスタノール残基を;nは、5〜200の整数を示す。」で表される単糖誘導体。
  2. 単糖誘導体が、フコース誘導体である請求項記載の単糖誘導体。
  3. コレステロール、フィトステロール、コレスタノールまたはフィトスタノール残基が、フィトスタノール残基である請求項1または2記載の単糖誘導体。
  4. nが20〜50である請求項1〜3記載の単糖誘導体。
  5. nが30である請求項記載の単糖誘導体。
  6. 一般式、
    A−(CH−CH−O)n−R
    「式中、Aは、アノマー位の水酸基でポリオキシエチレン鎖の一端とエーテル結合しているグルコース、ガラクトース、キシロースまたはフコース残基を;Rは、ステロールの3位の水酸基でポリオキシエチレン鎖の一端とエーテル結合しているコレステロール、フィトステロール、コレスタノールまたはフィトスタノール残基を;nは、5〜200の整数を示す。」で表される単糖誘導体を含有することを特徴とする脂肪乳剤。
  7. 単糖誘導体が、フコース誘導体である請求項記載の脂肪乳剤。
  8. コレステロール、フィトステロール、コレスタノールまたはフィトスタノール残基が、フィトスタノール残基である請求項6または7記載の脂肪乳剤。
  9. nが20〜50である請求項6〜8記載の脂肪乳剤。
  10. nが30である請求項記載の脂肪乳剤。
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