JP3779225B2 - パーマネントウェーブまたは縮毛矯正用第2剤およびその使用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はパーマネントウェーブを形成するため、あるいは縮毛矯正のための第2剤およびそれを用いた毛髪のパーマネントウェーブまたは縮毛矯正方法に関するものである。更に詳しくは、パーマネントウェーブの繰返し施術により弾性率が低下し、パーマネントウェーブがかかりにくくなった毛髪に対しても効果の低下が少ない、過酸化水素溶液からなるパーマネントウェーブまたは縮毛矯正用第2剤および上記第2剤を用いた毛髪のパーマネントウェーブまたは縮毛矯正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
毛髪にパーマネントウェーブをかけるには、第1剤(還元剤)と第2剤(酸化剤)とを用いて、通常次の方法で行なわれる。
毛髪をロッドに巻いてウエーブを形成させ、これに第1剤として一般にチオグリコール酸アンモニウム、炭酸アンモン、アンモニア等の混合物による還元剤を塗布した後、頭部をキャップで覆って約5〜20分放置することによって毛髪のケラチン繊維のジスルフィド結合(−S−S−)を切断して可塑化し、毛髪に対し、ロッドの円周にそった変形を付与する。その後第1剤を一旦除去或いは酸性液で中和し還元を停止する。この段階で、毛髪中のケラチン繊維中のジスルフィド基の多くはメルカプト(SH)基に変化している。ついで、このように変形を付与された毛髪に対し、第2剤として過酸化水素水或いは臭素酸ナトリウムを塗布し、約15分間放置してSH基を酸化し、ジスルフィド基へ復元して毛髪変形を固定化し、その後水で第2剤を洗浄除去し、乾燥して作業を終了する。
【0003】
また逆に縮毛を矯正して、ちぢれのない毛髪にする縮毛矯正(ストレートナー)の場合も、第1剤と第2剤とを用いて、上記パーマネントウェーブと同様の方法で行なわれる。本発明はパーマネントウェーブまたは縮毛矯正用第2剤及びその使用方法に関するものであるが、両者とも原理は同じであるので、以下、パーマネントウェーブ用第2剤及びパーマネントウェーブ方法として説明する。
【0004】
パーマネントにおいて重要なことは、
▲1▼ウエーブがよくかかり、しかも弾性率の低下が少ないこと、また
▲2▼これらの性質が繰り返しパーマネント処理によっても低下せず、毛髪の損傷が少ないことが望まれる。
【0005】
すなわちパーマネントをかけた人は、一般に2〜3カ月毎に美容室でパーマネント処理を繰返して受け、カール変形を保持するが、パーマネント処理によって毛髪が繰返し還元、酸化工程を受けるため、毛髪の弾力率の低下、毛髪表面の平滑度や艶の低下等を起し、再び上記パーマネント処理を行っても、極めてカールを形成し難い所謂損傷毛となる。
【0006】
例えば第2剤としてもっとも広く用いられている臭素酸ナトリウム水溶液及び過酸化水素水溶液を用いてパーマネント処理をn回繰り返した後の弾性率をGnとし、パーマネント処理前の初期弾性率G0との比である弾性回復率[Mn=Gn/G0(%)]は、図1の▲5▼及び▲6▼に示すように、3回の繰り返しパーマネント処理により急激に低下する。
【0007】
また後記のとおり定義されたウエーブ効率(WI)も図1の▲2▼及び▲3▼に示すように、3回目の繰り返しパーマネント処理により急激に低下する。この繰り返しパーマネント処理による髪の損傷を最小にすることがパーマネント処理剤にとって重要な課題である。
【0008】
このような問題を解決するため、従来第1剤の組成を変えて、より弱い還元剤としてのシスティン等を用いたり、第1剤のpHや濃度を変えたり、種々の添加剤を第1剤、第2剤に混合するなどの方法が提案されているが、これらの方法によっても繰返しパーマネント処理による弾性率低下を効果的に防止することが困難であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、この毛髪の弾性率低下は、第1剤による還元工程よりも、むしろ第2剤による酸化工程に主な原因が存在すると考え、第2剤の改良処方を検討した。第2剤としては現在臭素酸ナトリウムおよび過酸化水素が主に使用されているが、本発明者は第2剤として過酸化水素溶液を用いた場合、過酸化水素溶液に特定量の塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを添加することにより、弾性率の低下を防止することができ、繰り返しパーマネント処理による損傷毛髪に対してもパーマネント処理ができることを見出した。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明はH2O2濃度0.1〜0.5重量%の過酸化水素溶液に塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウム5重量%以上が添加されたパーマネントウェーブまたは縮毛矯正用第2剤および、このパーマネントウェーブ用第2剤を用いて、ウエーブ形成または縮れの矯正された毛髪を酸化固定することを特徴とする毛髪のパーマネントウェーブまたは縮毛矯正方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で第2剤として用いられる過酸化水素溶液は、H 2 O 2 濃度が 0.1 〜 0.5 重量%の水溶液である。0.1%より薄い濃度では、処理時間が長くなる。また1.5%を超えると毛髪の損傷が大きくなる。本発明の塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを添加した過酸化水素水溶液の場合は、従来第2剤として使用されている過酸化水素水溶液よりも低い濃度で使用することができる。これも本発明の特徴の一つである。ここに過酸化水素濃度とはH2O2含有量(重量%)であり、通常H2O230重量%の市販の過酸化水素水溶液を希釈して用いる。
【0012】
本発明においてはパーマネントウェーブ用第2剤として、上記過酸化水素水溶液に、5重量%以上、好ましくは10〜25重量%の塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを添加したものである。
【0013】
また過酸化水素水溶液はpHが2.5〜4.5、特に2.5〜3.5の範囲のものを用いるのが好ましい。
【0014】
第2剤として過酸化水素を用いた場合、一般に高pH条件の方が、酸化力がより強くなるが、本発明の塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを添加した過酸化水素水は低pHのマイルドな条件においても十分使用できるという利点がある(図4および図5)。
【0015】
本発明の上記第2剤を用いて毛髪をパーマネントウェーブ処理するには、毛髪をロッド等に巻き付けて機械的に造形させ、その前または後、あるいは前後に、毛髪をケラチン還元性のパーマネントウェーブ第1剤で処理し、所定の時間接触させた後水洗し、ついで第2剤として本発明のパーマネントウェーブ用第2剤で処理し、所定の接触時間後に、ロッド上にカールされた毛髪を酸化固定する。
【0016】
本発明によるパーマネントウェーブ方法において、第1剤としては通常使用されている第1剤の中から任意に選択することができる。そのような第1剤としては、例えばチオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、システインなどをあげることができる。
【0017】
第2剤を塗布する際、毛髪との接触によって第2剤のpHが変化し、本発明の効果が充分に現われないことがあるので、本発明の第2剤には緩衝液を添加し、急激なpHの変化が起こらないようにしておくのが好ましい。
【0018】
また本発明の過酸化水素水溶液からなるパーマネントウェーブ用第2剤には、本発明の目的、効果を妨げない範囲内でパーマネントウエーブ処理の作用効果を高めるために種々の添加剤を加えることができる。
【0019】
そのような添加剤としては、毛髪への浸透促進のための界面活性剤や、毛髪の損傷補修のための補強剤である蛋白質の加水分解物などをあげることができる。またそのほかに例えばパーマネントウエーブ処理後の毛髪の感触をよくするためのミンクオイル、シリコーンなどのような添加剤を配合することもできる。
【0020】
【実施例】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明の効果を具体的に説明する。実施例における毛髪のパーマネントウエーブ処理方法及び毛髪の物性試験方法は下記のとおりである。
【0021】
[パーマネントウエーブ処理方法]
パーマネント歴および染毛歴のない健康女性の毛髪を採取し、この中から直径65〜80μmで、ちぢれのない正常なものを選び、これを試験用毛髪資料として用いた。
引張試験機に温度調節可能なガラスカラム(25±0.2℃)を装着し、カラムを通し、12cmの毛髪をチャック間に固定した。
【0022】
最初、カラム中に蒸留水を満たし、10分間放置し、毛髪に1.5%の一定歪を与え、その時発生する応力を測定し、パーマネント処理前の初期弾性率G0 を算出する。次いで水を除去し、チオグリコール酸アンモニウム、モノエタノールアミン、炭酸カリウムの混合物よりなるパーマネント第1剤(チオグリコール酸アンモニウム濃度6.9%、pH9.3)に置換し、20分間還元処理を行う。毛髪の還元が進むにつれ、チャート上に応力の緩和過程が記録される。次ぎにカラム中の第1剤を除去し、蒸留水で洗浄する。
ついで、pH及びH2O2濃度を調節した過酸化水素水溶液を主成分とする第2剤をカラムに満たし15分間放置後、第2剤をカラムより除去し、水洗いした。
【0023】
[毛髪の物性試験]
(1)ウェーブ効率(WI)
第2剤をカラムより除去し、水洗後再びカラム中に水を満たし、引張試験機のクロスヘッドを上昇させ、歪0の状態に戻し、5分間放置する。記録紙送り速度を高速に切り替え、記録紙上に出発点を印した後、再びクロスヘッドを歪1.5%の点まで下降させる。パーマネント処理により毛髪は伸長しているが、応力発生が始まるまでの下降距離はパーマネント処理効果の程度により決まるので、出発点から応力発生地点までの距離を記録紙上で読み取る。n回処理後の毛髪におけるこの距離をl0とし、1.5%伸長時の移動距離をLとすれば、パーマ処理直後のウエーブ効率WInは
WIn=l0/L×100%で与えられる。その後再び毛髪の弾性率を測定する。
【0024】
(2)弾性回復率Mn=Gn/G0
チャート上に得られる第1剤添加前水中で与えた一定歪での弾性率G0と、n回繰り返しパーマネント処理後に得られた弾性率Gnとの比Gn/G0より、弾性率の回復率を測定した。
【0025】
[実施例1〜4、比較例1]
第2剤としてpH2.7、H2O2濃度0.1重量%の過酸化水素水溶液に食塩を夫々10,15、20及び25重量%(飽和濃度)添加した液を用い、上記の方法でパーマネント処理を3回繰り返し、M3(G3/G0)及びWI3を測定することによって、パーマネント作業の繰返しによる弾性率回復率及びウエーブ効率(パーマのかかりやすさ)の低下を測定した。また比較のため、食塩を添加しない過酸化水素水溶液を用いて、実施例1〜4と同じ方法で繰り返しパーマネント処理試験を行なった。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
[実施例5〜7]
第2剤としてpH3.5、H2O2濃度0.1重量%の過酸化水素水溶液に硫酸ナトリウムを夫々10,20及び25重量%(飽和濃度)添加した液を用い、実施例1〜4と同様にしてパーマネント処理を行った。結果を表1に併せて示す。
【0028】
また表1の結果から、塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウム濃度とパーマネント作業の繰返し回数3回における弾性率回復率との関係を図2に、ウエーブ効率との関係を図3に示した。
【0029】
表1、図2及び図3から明らかなように、塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを添加した過酸化水素溶液を第2剤として使用した場合、無添加の過酸化水素溶液に比べて、繰り返しパーマネント処理による弾性及びウエーブ効率の低下を防止することができ、損傷毛髪に対するパーマネントウェーブ用第2剤として十分使用可能であることがわかる。
【0030】
[実施例8〜10]
塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウム添加第2剤のpHを2.7、3.5及び4.5に変えて、実施例3と同様にして処理を行い、弾性回復率(M)、ウエーブインデックス(WI)を測定した。また比較のため、ナトリウム塩無添加の第2剤についてpHを変えてパーマネント処理を行い、第2剤のpH変動による影響を調べた。結果を表2に示す
【0031】
【表2】
【0032】
表2の結果から、塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウム添加第2剤を用いた場合の、pHとパーマネント作業の繰返し回数3回における弾性率回復率との関係を図4に、ウエーブ効率との関係を図5に示した。
【0033】
表2、図4及び図5から明らかなように、過酸化水素溶液に塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを添加した第2剤を使用した場合、弾性低下率及びウエーブ効率のpHによる影響が小さく、安定した処理が可能であることがわかる。
【0034】
[実施例14〜16、比較例6〜9]
第2剤として硫酸ナトリウム添加過酸化水素溶液を用い、過酸化水素濃度をそれぞれ0.1%,0.5%,1%及び1.5重量%にして実施例5と同じ方法で繰り返しパーマネント処理試験を行なった。また比較のため、ナトリウム塩無添加過酸化水素溶液の第2剤を用いて、同様に過酸化水素濃度を代えてパーマネント処理を行い、第2剤のH2O2濃度変動による影響を調べた。結果を表3に示す。
【0035】
【表3】
【0036】
表3の結果から、硫酸ナトリウム添加第2剤を用いた場合の、過酸化水素濃度とパーマネント作業の繰返し回数3回における弾性率回復率との関係を図6に、ウエーブ効率との関係を図7に示した。
【0037】
表3、図6及び図7から明らかなように、過酸化水素溶液に硫酸ナトリウムを添加した第2剤を使用した場合、特に過酸化水素低濃度においてウエーブ効率の低下が少なく、低濃度での使用が可能であることがわかる。
【0038】
[実施例14、比較例10〜11]
本発明及び市販の第2剤を用いた場合のパーマネントウエーブ処理前及び1〜3回パーマネント処理による弾性率回復率及びウエーブ効率の低下を測定した。
実施例14:本発明の第2剤(H2O2濃度0.1重量%、pH3.5の過酸化水素水溶液、硫酸ナトリウム20重量%添加)
比較例10:市販の過酸化水素系第2剤(H2O2濃度1.5重量%、pH3.5の過酸化水素水溶液、グリセリン20重量%添加、ナトリウム塩無添加)
比較例11:市販の臭素酸ナトリウム系第2剤(pH7.0の臭素酸ナトリウム8%水溶液)
結果を図1に示す。
【0039】
図1から明らかなように、本発明の第2剤(▲1▼及び▲4▼)は2回以上の繰返し処理において毛髪の損傷防止効果が大きく、特にウエーブ効率低下防止効果が大きい。
【0040】
【発明の効果】
第2剤として過酸化水素溶液に特定量の塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを添加することにより、繰り返しパーマネント処理による弾性率低下、ウエーブ効率低下が少なく、損傷毛髪に対してもパーマネント処理を行うことでき、また繰り返しパーマネント処理による毛髪の品質劣化を防ぐことができる。また第2剤のpH変動による影響が少なく安定な処理ができ、また特に過酸化水素濃度の低い第2剤を用いた場合の効果が大きいので、低濃度過酸化水素を用いるマイルドな条件でのパーマネント処理が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明及び従来の第2剤を用いた場合のパーマネントウエーブ処理回数とパーマネント処理による弾性率回復率及びウエーブ効率の低下の関係を示す図である。
【図2】塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを添加した過酸化水素水溶液を第2剤として用いて、3回繰返しパーマネント処理した場合の、塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウム濃度と毛髪の弾性率回復率(G3/G0)との関係を示す図である。
【図3】塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを添加した過酸化水素水溶液を第2剤として用いて、3回繰返しパーマネント処理した場合の、塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウム濃度と毛髪のウエーブ効率(WI3)との関係を示す図である。
【図4】塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを添加した過酸化水素水溶液を第2剤として用いて、3回繰返しパーマネント処理した場合の、pHと毛髪の弾性率回復率(G3/G0)との関係を示す図である。
【図5】塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを添加した過酸化水素水溶液を第2剤として用いて、3回繰返しパーマネント処理した場合の、pHと毛髪のウエーブ効率(WI3)との関係を示す図である。
【図6】硫酸ナトリウムを添加した過酸化水素水溶液を第2剤として用いて、3回繰返しパーマネント処理した場合の、過酸化水素水溶液濃度と毛髪の弾性率回復率(M3=G3/G0)との関係を示す図である。
【図7】硫酸ナトリウムを添加した過酸化水素水溶液を第2剤として用いて、3回繰返しパーマネント処理した場合の、過酸化水素水溶液濃度と毛髪のウエーブ効率(WI3)との関係を示す図である。
Claims (4)
- H2O2濃度0.1〜0.5重量%の過酸化水素溶液に塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウム5重量%以上が添加されたパーマネントウェーブまたは縮毛矯正用第2剤。
- 塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウム濃度が10〜25重量%である請求項1記載のパーマネントウェーブまたは縮毛矯正用第2剤。
- 過酸化水素溶液のpHが2.5〜4.5である請求項1または2に記載のパーマネントウェーブまたは縮毛矯正用第2剤。
- 毛髪を変形させる前に、ケラチン還元性のパーマネントウェーブ第1剤で処理し、水洗した後、第2剤として請求項1〜3のいずれかに記載のパーマネントウェーブまたは縮毛矯正用第2剤で処理し、造形された毛髪を酸化固定することを特徴とする毛髪のパーマネントウェーブまたは縮毛矯正方法。
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