JP3779123B2 - 半導体ウエハ用シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハをダイシング(半導体ウエハをチップ状に切断・分離する)際に、該半導体ウエハを貼り付け、固定する半導体ウエハ用シートにかかり、特に、室温においてエキスパンドする際、MD(マシン・ディレクション;シートの流れ方向)方向とTD(トランス・ディレクション;シートの幅方向)方向のエキスパンド・バランスに優れる半導体ウエハ用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体ウエハ用シートにあっては、合成樹脂製シート状基材の一方の面に粘着剤層が積層され他方の面には剥離剤又は剥離紙が積層される。該半導体ウエハ用シートは、ダイシングする前の半導体ウエハを粘着剤層面に貼り付けて強く固定するものであり、ダイシングして得られた半導体チップをピックアップする前にエキスパンドされて該半導体チップ同士の間隔を広げるものである(例えば特開平9−328663号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
半導体ウエハをダイシングする際には、半導体ウエハの裏面に貼り付けた半導体ウエハ用シートにまで刃が侵入して半導体ウエハをダイシングする。このダイシングの際に発生する回転丸刃の熱によって半導体ウエハ用シートの切削部分が溶融・延伸されて細糸状の切削屑になってしまい、半導体チップのピックアップ・ミスや半導体チップに付着して積載不良を生じさせてしまった。
【0004】
この課題を解決するためにエチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の三元共重合体や、これらを陽イオンで架橋したアイオノマ樹脂を基材に採用する手段が開示されている(例えば特開平9−8111号公報参照)。
【0005】
しかし、かかる手段は、細糸状の切削屑の発生防止には効果があるが、室温におけるMD方向とTD方向のエキスパンド・バランスが悪かった。このため、エキスパンド後の半導体チップ同士の間隔にバラツキが生じてしまい、ピックアップの際に誤動作が起きてしまうという新たな課題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、室温でエキスパンドしてもMD方向とTD方向のエキスパンド・バランスに優れ且つ切削屑が生じにくい半導体ウエハ用シートを提供することにある。
【0007】
本発明者等は、上記に鑑み鋭意検討を重ねた結果、シート状の基材と、該該基材の一方の面に積層された粘着剤層を有する半導体ウエハ用シートにおいて、該基材が、カルボキシル基を有する化合物を陽イオンで架橋したアイオノマ樹脂100重量部と、オクテン含有共重合体10〜100重量部を有する組成物をシート状にしたものであり、前記オクテン含有共重合体がエチレン・オクテン共重合体、プロピレン・オクテン共重合体、オクテン・アクリル酸メチル共重合体、オクテン・アクリル酸エチル共重合体、オクテン・メタクリル酸メチル共重合体、オクテン・メタクリル酸エチル共重合体から選択されるものであり、これにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成させた。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる半導体ウエハ用シートの基材の組成物として、カルボキシル基を有する化合物を陽イオンで架橋したアイオノマ樹脂を採用したのは、切削屑発生防止のためである。該アイオノマ樹脂としては、重合体構成成分としてポリエチレンの分子鎖にカルボキシル基側鎖を持ち、一部が陽イオンによって架橋されたアイオノマ樹脂が良く、具体的には、エチレン/メタクリル酸/アクリル酸エステルの三元共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体等の単体及び/又は混合体のカルボキシル基を陽イオンで架橋したものがある。
【0009】
上記組成物にオクテン含有共重合体を配合したのは基材の柔軟性を向上させるためであり、また、該オクテン含有共重合体がアイオノマ樹脂と物理的にブレンドし易く且つ相溶性が良いからである。該オクテン含有共重合体としては、エチレン・オクテン共重合体、プロピレン・オクテン共重合体、オクテン・アクリル酸メチル共重合体、オクテン・アクリル酸エチル共重合体、オクテン・メタクリル酸メチル共重合体、オクテン・メタクリル酸エチル共重合体がある。
【0010】
該オクテン含有共重合体の配合比は、あまりに少ないと基材の柔軟性が向上しないため室温においてエキスパンド・バランスが悪く、あまりに多いと切削屑が生じたりコスト高になったり、さらには効果が頭打ちになるため、10〜100重量部である。
【0011】
また、該オクテン含有共重合体としてエチレン・オクテン共重合体を採用する場合、オクテンモノマの含有率は全体の2〜20重量%であることが好ましい。これは、あまりに少ないとエキスパンドに十分な弾性を得ることができず、あまりに多いと切削屑が生じてしまうためである。
【0012】
前記カルボキシル基の架橋に用いる陽イオンとしては、ナトリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン又は亜鉛イオン等の金属イオンがある。
【0013】
本発明にかかる半導体ウエハ用シートの粘着剤層は、従来公知の粘着剤、紫外線硬化性粘着剤(例えば特開平9−328663号公報記載の粘着剤等)、加熱硬化性粘着剤(例えば特開平10−25456号公報記載の粘着剤等)、を使用できる。また、バンプがあるウエハのダイシングや半導体ウエハを搬送したり、単に位置固定したり、さらには移し替えしたりするためのシートの場合には、該粘着剤として自己粘着シートを採用できる。
【0014】
該粘着剤層として自己粘着シートを採用する場合には、該自己粘着シートを、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)やスチレン系ランダム共重合体の単体又は混合体を採用することが好ましい。これら樹脂を採用したのは、凹凸面においても密着性がよく、剥離の際の糊残りがないためである。該自己粘着シートを採用する場合、その厚みの最大値は、該粘着剤層自体をダイシング時に断ち切る必要があるため、ダイシング時の切削深さより小さい値であり、その厚みの最小値は製造安定性を保持できる値(例えば5μm)である。
【0015】
本発明にかかる半導体ウエハ用シートは、次の製法によって製造される。シート状に形成された基材の一方の面に粘着剤層がコンマロールコータ方式によって塗布され、剥離紙が該粘着剤層の表面に積層される。必要に応じて基材の前記一方の面(粘着剤層積層側面)にはコロナ処理及び/又はプライマ処理がなされ、該基材と該粘着剤層の密着性を向上させることができる。
【0016】
また、上記粘着剤を自己粘着シートにする場合には、基材と該自己粘着シートをラミネート、共押出等、任意の方法により積層することができる。
【0017】
本発明にあっては、シート状の基材と、該基材の一方の面に積層された粘着剤層を有する半導体ウエハ用シートにおいて、該基材が、カルボキシル基を有する化合物を陽イオンで架橋したアイオノマ樹脂100重量部と、オクテン含有共重合体10〜100重量部を有する組成物をシート状にしたものであり、前記オクテン含有共重合体がエチレン・オクテン共重合体、プロピレン・オクテン共重合体、オクテン・アクリル酸メチル共重合体、オクテン・アクリル酸エチル共重合体、オクテン・メタクリル酸メチル共重合体、オクテン・メタクリル酸エチル共重合体から選択されるものであることを特徴とし、これにより、室温でエキスパンドしてもMD方向とTD方向のエキスパンド・バランスに優れた半導体ウエハ用シートを得ることができる。
【0018】
【実施例】
本発明にかかる実施例を、表1を用いて、比較例と比較しつつ詳細に説明する。
【0019】
【表1】
Figure 0003779123
【0020】
実施例1の半導体ウエハ用シートは、厚さ70μmのシート状の基材と、該基材の一方の面に積層された厚さ30μmの粘着剤層を備えており、該粘着剤層の保護のために剥離紙が積層されたものである。
【0021】
該基材は、ベースポリマとしてのエチレン−メタクリル酸共重合体の分子間を金属イオンで架橋したアイオノマ樹脂(三井デュポンケミカル社製ハイミランH−1855)100重量部、オクテン含有共重合体としてのエチレン・オクテン共重合体(ダウケミカル社製アフィニティPF1140)10重量部を配合したものである。
【0022】
該粘着剤は、ベースポリマとしてのアクリルゴム系粘着剤(日本ゼオン社製AR72LF)100重量部、光重合性化合物としてのウレタンアクリレート系オリゴマ(荒川化学工業社製ビームセット575)3重量部が配合されたものである。
【0023】
実施例2、実施例3、比較例1及び比較例2における半導体ウエハ用シートは、実施例1における基材中のエチレン・オクテン共重合体の配合量をそれぞれ50重量部、100重量部、5重量部及び110重量部に変更したものである。また、実施例4は、実施例2の粘着剤を自己粘着シートに置き換えたものであり、該自己粘着シートとして厚さ30μmのスチレン系ランダム共重合体の水素添加樹脂(ジェイエスアール社製、ダイナロン1320P)製シートを採用したものである。なお、実施例2〜4及び比較例1、2は、特に説明しない限り実施例1と同様なものである。
【0024】
ここで表1中、「切削屑残留度」とは、通常使用されるダイシング装置を用いてダイシングし終えた半導体ウエハチップ表面を光学顕微鏡(倍率:200倍)で観察し、一半導体ウエハ当たりの「切削屑が付着したチップ」の発生率である。発生率が0.3%以下のものがよく、0.3%を超えるものは製品として好ましくない。また、「エキスパンド均一性」は、半導体ウエハ用シートのMD方向への引張強度をTD方向への引張強度で除した値であり、数値が1に近い程、均一にエキスパンドされたことを示す。この値が0.8〜1.2の範囲外になる半導体ウエハ用シートは、製品として好ましくない。
【0025】
表1が示すように、実施例1〜4では切削屑がほとんど発生せず且つエキスパンド・バランスも優れたものであった。
【0026】
エチレン・オクテン共重合体の配合比が少なかった比較例1は、エキスパンド・バランスにバラツキがあり、エチレン・オクテン共重合体の配合比が多かった比較例2は、切削屑が残留してしまった。
【0027】
【発明の効果】
請求項1記載の発明にあっては、シート状の基材と、該基材の一方の面に積層された粘着剤層を有する半導体ウエハ用シートにおいて、該基材を、カルボキシル基を有する化合物を陽イオンで架橋したアイオノマ樹脂100重量部と、オクテン含有共重合体10〜100重量部を有する組成物をシート状にしたものであり、該オクテン含有共重合体がエチレン・オクテン共重合体、プロピレン・オクテン共重合体、オクテン・アクリル酸メチル共重合体、オクテン・アクリル酸エチル共重合体、オクテン・メタクリル酸メチル共重合体、オクテン・メタクリル酸エチル共重合体から選択されるものであることを特徴とした半導体ウエハ用シートであり、これにより、室温でエキスパンドしてもMD方向とTD方向のエキスパンド・バランスに優れ且つ切削屑が生じ難くなった。
請求項2記載の発明にあっては、前記オクテン含有共重合体としてエチレン・オクテン共重合体を採用し、オクテンモノマの含有率が、前記基材を構成する組成物全体の2〜20重量%とし、これにより、エキスパンドにより十分な弾性を得ることができた。
請求項3記載の発明にあっては、上記粘着剤層を、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)及び/又はスチレン系ランダム共重合体で形成された自己粘着シートとしたことを特徴とした半導体ウエハ用シートであり、これによりバンプがあるウエハのダイシングや半導体ウエハを搬送したり、単に位置固定したり、さらには移し替えしたりするのに好適となった。

Claims (3)

  1. シート状の基材と、該基材の一方の面に積層された粘着剤層を有する半導体ウエハ用シートにおいて、該基材が、カルボキシル基を有する化合物を陽イオンで架橋したアイオノマ樹脂100重量部と、オクテン含有共重合体10〜100重量部を有する組成物をシート状にしたものであり、前記オクテン含有共重合体がエチレン・オクテン共重合体、プロピレン・オクテン共重合体、オクテン・アクリル酸メチル共重合体、オクテン・アクリル酸エチル共重合体、オクテン・メタクリル酸メチル共重合体、オクテン・メタクリル酸エチル共重合体から選択されるものであることを特徴とする半導体ウエハ用シート。
  2. 前記オクテン含有共重合体としてエチレン・オクテン共重合体を採用し、オクテンモノマの含有率が、前記基材を構成する組成物全体の2〜20重量%であることを特徴とする請求項 1 記載の半導体ウエハ用シート。
  3. 上記粘着剤層が、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)及び/又はスチレン系ランダム共重合体で形成された自己粘着シートであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の半導体ウエハ用シート。
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