JP3778484B2 - 塗膜形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物、土木構築物や、それらに用いられる建築土木資材等の各種被塗物への塗装仕上げ、及び、被塗物表面の既存塗膜への改装、改修塗装仕上げに使用することができ、主に建築物、土木構築物等の躯体保護を行うことを目的とする汚れ防止塗膜の形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、建築物、土木構築物等の駆体の保護、意匠性の付与及び美観性の向上のため各種塗装仕上げが行われている。最近では、温度、湿度の変化、大気中の炭酸ガス等によるコンクリートの劣化対策や外壁の漏水防止対策が、見直されており、コンクリート外壁等のひび割れ(以下、「クラック」ともいう。)に対する追従性、外壁の漏水防止効果を持つ弾性塗材が注目され、広く用いられている。
【0003】
また、サイディングボード、押出成形板に代表される、乾式建材による乾式工法が、従来の左官による湿式工法に代わり、住宅関係等で大幅に増加している。このような乾式建材どうしの付き合わせ部(目地部)は、シーリング材で接合されており、このシーリング材を含めた外壁全体に塗装仕上げを行う場合、建材の目地部、即ち、シーリング材打設部のムーブメントに追従する弾性塗材が用いられる。
【0004】
さらに、金属等の膨張収縮が比較的大きい素材や、構造上ムーブメントが予想される下地に対しても、弾性塗材がよく用いられている。
【0005】
ところが、このように形成された弾性塗膜は、一般に硬質タイプの塗膜に比べ、表面の耐汚染性に劣るという欠点がある。
【0006】
一般に耐汚染性を改善する手法としては、塗材を構成する樹脂のガラス転移温度(以下「Tg」という。)を上げる方法があるが、この方法では、下地への追従性の低下を招き、経時でひび割れ、はがれなどが発生し、また耐汚染性改善の十分な効果は得られず、好ましくない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、経時でひび割れ、はがれなどが発生することがなく、防水性、密着性且つ耐汚染性に優れ、長期に亘り美観を保つことができる塗膜形成方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
これらの課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を行い、その結果、20℃雰囲気下での伸び率が50〜800%の塗膜を形成する塗材を塗装した上に、反応性シリル基を有する合成樹脂エマルション、特定の側鎖を有するポリシロキサン化合物を含有する塗材を塗装することが有効であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
建築物または土木構築物等の表面に
20℃雰囲気下での伸び率が50〜800%の塗膜を形成する塗材(A)を塗装した後、
(B-1)反応性シリル基を有する合成樹脂エマルション、
(B-2)片末端が−OH基であるポリオキシアルキレン鎖を有し、水酸基価が5〜150KOHmg/gであるポリシロキサン化合物、
を主成分とし、(B-1)の固形分100重量部に対し、(B-2)を0.1〜8.0重量部含有する塗材(B)を塗装することを特徴とする塗膜形成方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態とともに詳細に説明する。
【0011】
〔塗材(A)〕
本発明における塗材(A)は20℃雰囲気下での伸び率が50〜800%、好ましくは75〜500%の塗膜を形成するものである。伸び率が50%以下であると下地の変位に追従できず、割れを生じやすくなり、800%以上であると塗材(B)にクラックが発生し、防水性に劣る。なお、本発明における伸び率は、JIS A 6909 6.31「伸び試験」の「20℃時の伸び試験」に準じて測定される値である。
【0012】
本発明の塗材(A)は水性型、弱溶剤型、溶剤型等特に限定されないが、特に合成樹脂エマルションを結合材として用いる水性型塗材は環境問題、VOC問題対策等の観点から好適に用いられる。
【0013】
合成樹脂エマルションとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、酢酸ビニル樹脂エマルション、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂エマルション、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合樹脂エマルション、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂エマルション、酢酸ビニル−ベオバ共重合樹脂エマルション、アクリル酸エステル−塩化ビニル共重合樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、シリコン変性アクリル樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション等が使用でき、適宜混合して使用することも可能である。このようなエマルションは、エマルション粒子内部で自己架橋するタイプや、架橋剤を加えて架橋反応をさせる二液硬化タイプでもよい。さらに粉末型のエマルションも使用可能である。
【0014】
さらに、塗膜形成後に反応性シリル基と結合可能な官能基を有すると、下地、塗材(B)との密着性、追従性、防水性が向上し、好ましい。
【0015】
塗膜形成後に、反応性シリル基と結合可能な官能基としては、例えば水酸基、アミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シラノール基、アルコキシシリル基などがあげられる。これらの官能基を導入する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができるが、例えば該官能基含有モノマーを重合させる方法、反応後に該官能基を生成させる方法などがある。
【0016】
該官能基含有モノマーを重合させる方法としては、一般的なエマルションの製造方法である乳化重合等によって行うことが可能であり、特に限定されることはない。このようなモノマーとしては、次に例示するようなモノマーを用いることができる。
【0017】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0018】
アミド基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N−メチロールアクリル酸アミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミドなどの酸アミド基を親水性基とするビニルモノマー類等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0019】
カルボニル基含有モノマーとしては、例えば、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセトニルアクリレート、2ーヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、及びブタンジオールアクリレートアセチルアセテート等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0020】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシル基を含む、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステルなどエチレン性不飽和カルボン酸等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0021】
シラノール基、アルコキシシリル基含有モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルプロピルビニルエーテル等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0022】
さらに、反応後に官能基を生成する方法としては、例えば合成樹脂エマルションの架橋反応等を利用することが可能である。このような架橋反応の官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基−カルボジイミド基、カルボキシル基−エポキシ基、カルボキシル基−アジリジン基、カルボキシル基−オキサゾリン基、カルボニル基−ヒドラジド基、エポキシ基−アミノ基等があげられるが、本発明では特にカルボキシル基−エポキシ基、カルボキシル基−オキサゾリン基架橋が好適に用いられる。以下に、エポキシ基、オキサゾリン基を有するモノマーの一例を例示する。
【0023】
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ誘導体等があげられる。これらの群から選ばれる1種の化合物を単独で使用したり、または、2種類以上の化合物を混合して使用したりすることができる。カルボキシル基−エポキシ基架橋はこれらから本発明に効果を阻害しない範囲で適宜選択し、使用することができる。
【0024】
オキサゾリン基含有モノマーとしては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4,
5−ジメチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの群から選ばれる1種の化合物を単独で使用したり、または、2種類以上の化合物を混合して使用したりすることができる。カルボキシル基−オキサゾリン基架橋はこれらから本発明の効果を阻害しない範囲で適宜選択し、使用することができる。
【0025】
このような合成樹脂エマルションの製造法は、一般的なエマルションの製造方法である乳化重合等によって行うことが可能であり、特に限定されることはない。また製造された合成樹脂エマルションの分子量、粒子径も特に限定されることはない。
【0026】
塗材(A)には、上述の成分の他に、必要に応じて通常塗料に用いられる無機系着色顔料箱、有機系着色顔料、体質顔料等を配合することができる。また、本発明に影響しない程度の造膜助剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、増粘剤、レベリング剤、顔料湿潤剤、顔料分散剤、色分かれ防止剤、乳化剤、粘度調整剤、沈降防止剤、たれ防止剤、硬化触媒、艶消し剤、難燃剤等の添加剤を単独あるいは併用して配合することもできる。
【0027】
無機系着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、モリブデートオレンジ、黄鉛、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等、有機系着色顔料としては、例えば、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等が使用できる。
【0028】
体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、陶土、珪藻土、含水微紛珪酸、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、珪砂、石英粉、ウォラストナイト、ホワイトカーボン等が使用できる。
【0029】
〔塗材(B)〕
本発明の塗材(B)は、反応性シリル基を有する合成樹脂エマルション(以下「B−1」という。)、片末端が−OH基であるポリシロキサン化合物(以下「B−2」という。)を必須成分として得られるものである。
【0030】
「B−1」において、シリル基を導入する方法としては、特に限定されず各種の方法を採用することができるが、例えば、
▲1▼反応性シリル基含有ビニル系単量体を共重合する方法、
▲2▼反応性シリル基含有ビニル系単量体を共重合した後に、シラン化合物を反応させる方法、
▲3▼樹脂中の官能基と、該官能基と反応可能な官能基を有するカップリング剤を反応させる方法、
▲4▼樹脂中の官能基と、該官能基と反応可能な官能基を有するカップリング剤を反応させた後に、シラン化合物を反応させる方法、
等があげられる。
【0031】
反応性シリル基としては、珪素原子にアルコキシル基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン等が結合したものである。
【0032】
▲1▼、▲2▼における反応性シリル基含有ビニル系単量体としては、反応性シリル基と重合性二重結合を含有する化合物であり、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルプロピルビニルエーテル等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0033】
▲2▼、▲4▼におけるシラン化合物としては、反応性シリル基を一分子中に2個以上有するものが用いられ、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能アルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン等の3官能アルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等の2官能アルコキシシラン類;テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン等のクロロシラン類;テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン等のアセトキシシラン類等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、反応性シリル基を一分子中に1個有する化合物を併用することもできる。
【0034】
▲3▼、▲4▼における官能基の組み合わせとしては、水酸基とイソシアネート基、アミノ基とイソシアネート基、カルボキシル基とエポキシ基、アミノ基とエポキシ基、アルコキシシリル基どうし等があげられる。カップリング剤は、例えば、一分子中に、少なくとも1個以上の反応性シリル基とそのほかの置換基を有する化合物であり、具体的には、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、イソシアネート官能性シランなどがあげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0035】
「B−1」におけるシリル基の重量比率は、通常、「B−1」の樹脂固形分中にSiO換算で0.1〜70重量%であるが、本発明では特に、0.3〜30重量%である場合に有効である。「B−1」におけるシリル基の重量比率が0.1重量%より少ない場合は、耐汚染性に劣る傾向となり、70重量%より多い場合は、割れが発生しやすくなる。
【0036】
なお、SiO換算とは、Si−O結合をもつ化合物を、完全に加水分解した後に、900℃で焼成した際にシリカ(SiO)となって残る重量分にて表したものである。
一般に、アルコキシシランやシリケート等は、水と反応して加水分解反応が起こりシラノールとなり、さらにシラノールどうしやシラノールとアルコキシにより縮合反応を起こす性質を持っている。この反応を究極まで行うと、シリカ(SiO)となる。これらの反応は一般式、
RO(Si(OR)O)R+(n+1)HO→nSiO+(2n+2)ROH
という反応式で表されるが、この反応式をもとに残るシリカ成分の量を換算したものである。
【0037】
「B−1」の共重合モノマーとしては、特に限定されないが、アクリル系モノマーを好適に用いることができる。アクリル系モノマーとしては、、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリル系単量体;(メタ)アクリル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリル系単量体;(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド含有(メタ)アクリル系単量体;アクリロニトリルなどのニトリル基含有(メタ)アクリル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体等があげられる。
【0038】
「B−1」においては、前記モノマーの他に、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸含有ビニル単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレンなどの塩素含有単量体;ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどの水酸基含有アルキルビニルエーテル;エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテルジエチレングリコールモノアリルエーテルなどのアルキレングリコールモノアリルエーテル;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル;エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテルなどのアリルエーテル等を用いることもできる。この他、エチレン性不飽和二重結合含有紫外線吸収剤、エチレン性不飽和二重結合含有光安定剤等を用いることもできる。
【0039】
重合に用いる乳化剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性、ノニオン−カチオン性、ノニオン−アニオン性のもの、あるいは非反応性のもの、反応性を有するものから適宜選択し、単独あるいは併用して使用する。このうち、ポリオキシアルキレン鎖と不飽和二重結合とを有する反応性乳化剤の使用は、割れ防止性、耐水性、貯蔵安定性を向上させることができ、好ましい。
【0040】
重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤を使用することができ、過硫酸アンモニウム塩などの過硫酸塩、過酸化水素と亜硫酸水素ナトリウムなどとの組み合わせからなるレドックス開始剤、さらに第一鉄塩、硝酸銀などの無機系開始剤を混合させた系、または、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタール酸パーオキシドなどの二塩基酸過酸化物、アゾビスブチロニトリルなどの有機系開始剤などが挙げられる。重合開始剤の使用量は、通常、単量体100重量部に対して0.01〜5重量部程度である。
【0041】
「B−1」の重量平均分子量は30000以上、さらには50000以上であることが好ましい。分子量が30000以上であることにより、耐汚染性、防水性、耐候性等を向上させることができる。また、「B−1」の最低造膜温度は0〜80℃であることが好ましい。最低造膜温度が0℃より低い場合は、耐汚染性に劣る傾向となり、80℃より高い場合は、に割れが生じやすくなる。
【0042】
「B−2」は、本発明組成物の形成塗膜に割れ防止性、耐汚染性、密着性を付与する成分である。本発明では、特定の水酸基価を有する「B−2」を特定量含有するため、「B−2」の末端−OH基が「B−1」の反応性シリル基と適度に相互作用し、該反応性シリル基どうしの急速な反応を制御するものと推測される。その結果、塗膜の割れ発生を防止することができる。また本発明では、「B−2」のポリオキシアルキレン鎖によって塗膜表面が親水化され、耐汚染性を付与することもでき、さらに、ぬれ性に優れ、塗材(A)との密着性にも有効である。
【0043】
「B−2」は、ポリシロキサンからなる主鎖に、片末端が−OH基であるポリオキシアルキレン鎖を側鎖及び/または末端に有する化合物であり、下記式に示す構造の何れか一方または両方を有するものである。
【0044】
【化1】
Figure 0003778484
【0045】
【化2】
Figure 0003778484
【0046】
(R、Rはアルキル基またはフェニル基、Rはアルキレン基またはフェニレン基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基で、炭素数は同一でも異なってもよい。nは1以上の整数。)
【0047】
「B−2」は、例えば、アリル化ポリエーテル化合物とメチルハイドロジェンシリコーンオイルのヒドロシリル化反応により製造することができる。
【0048】
「B−2」の水酸基価は、5〜150KOHmg/gであり、さらには10〜100KOHmg/g、より好ましくは40〜80KOHmg/gである。水酸基価が5KOHmg/gより小さい場合は、割れが発生しやすく、経時的に耐汚染性が低下する傾向となる。150KOHmg/gより大きい場合は、割れが発生しやすい傾向となる。
【0049】
アルキレンオキサイドとしては、メチレンオキサイド、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等があげられ、このうちエチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドが好ましく使用される。
【0050】
「B−2」の数平均分子量は1000〜50000であることが望ましい。このうち、アルキレンオキサイド鎖の数平均分子量は40〜30000であることが望ましい。アルキレンオキサイド鎖の数平均分子量が40より小さい場合は、割れ防止性、耐汚染性において十分な物性が得られない。逆に30000より大きい場合は、耐水性、耐汚染性、耐候性が低下してしまう。
【0051】
「B−2」の含有量は、「B−1」の固形分100重量部に対し、0.1〜8.0重量部である。「B−2」の含有量が0.1重量部より小さい場合は、割れ防止性、耐汚染性、密着性において十分な物性が得られない。8.0重量部より大きい場合は、割れ防止性、耐水性、耐候性、リコート性が低下してしまう。
【0052】
塗材(B)には、上述の成分の他に、必要に応じて通常塗料に用いられる無機系着色顔料、有機系着色顔料、体質顔料等を配合することができる。また、本発明に影響しない程度の造膜助剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、増粘剤、レベリング剤、顔料湿潤剤、顔料分散剤、色分かれ防止剤、乳化剤、粘度調整剤、沈降防止剤、たれ防止剤、硬化触媒、艶消し剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等の添加剤を単独あるいは併用して配合することもできる。
【0053】
無機系着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、モリブデートオレンジ、黄鉛、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等、有機系着色顔料としては、例えば、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等が使用できる。
【0054】
体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、陶土、珪藻土、含水微紛珪酸、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、珪砂、石英粉、ウォラストナイト、ホワイトカーボン等が使用できる。
【0055】
なお、顔料を用いる際の分散剤として、特に限定されないが、ポリオキシアルキレン鎖を有するアニオン性分散剤は割れ防止性、貯蔵安定性、有光沢塗料での高光沢を確保するために好適に用いられる。
【0056】
〔施工方法〕
本発明は、建築物、土木構築物や、それらに用いられる建築土木資材等の各種被塗物への塗装仕上、及び、被塗物表面の既存塗膜への改装、改修塗装仕上に使用することができる。下地としては、一般的な建材として用いられているものであれば特に限定されず、例えば金属、ガラス、磁器タイル、石膏ボード、珪酸カルシウム板、合板、石綿スレート板、コンクリート、サイディングボード、押出成形板、プラスチック等の各種素材の表面仕上げに使用することができる。
【0057】
本発明では、このような下地に対し、まず塗材(A)を塗装する。塗材(A)は下地に直接塗装することもできるし、何らかの表面処理(シーラー、フィラー等による下地処理等)を施した上に塗装することもできる。塗材(A)は、20℃雰囲気下での伸び率が50〜800%の塗膜を形成する必要があるが、通常、塗付量0.4〜4.0kg/mで塗装を行う。乾燥時間は、3時間以上である。塗装器具としては、リシンガン、タイルガン、万能ガン、スプレーガン、コテ、ローラー、刷毛等が用いられる。
【0058】
次に、塗材(B)を塗装する。塗材(B)は、通常、塗付量0.2〜0.5kg/mで塗装を行う。乾燥時間は、16時間以上である。塗装器具としては、スプレーガン、ローラー、刷毛等が用いられる。
本発明によって得られる塗膜の形状としては、ゆず肌状、さざ波状、スタッコ状、リシン状、石材状、岩肌状、スチップル状、クレーター状、繊維状、凹凸状等種々の形状が可能である。
【0059】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0060】
[塗料の作製]
表1、2に示すような原料を使用して、表3に示す配合にて塗料を作製し、各試験を行った。
【0061】
【表1】
Figure 0003778484
【0062】
【表2】
Figure 0003778484
【0063】
【表3】
Figure 0003778484
【0064】
[試験方法]
▲1▼耐湿潤冷熱繰り返し性
300×100×6mmの2枚のスレート板の間に、300×10×6mmのシーリング材を打設した試験材に、塗材(A)を塗付量1.0kg/mとなるようにローラー塗装し、標準状態で24時間乾燥を行った後、更に塗材(B)を塗付量0.3kg/mとなるようにスプレー塗装した試験体を作製した。作製した試験体をJIS K5660 4.13に準じ、20±2℃の水中に18時間浸した後、直ちに−20±3℃に保った恒温槽に3時間冷却し、次に50±3℃に保った別の恒温槽で3時間加温した。この操作を10回繰り返した後、標準状態に約1時間置いて、塗膜表面の状態を目視にて観察した。評価は以下の通りである。
○:クラックや剥がれなし
×:クラック、剥がれが認められる
【0065】
▲2▼耐雨筋汚染性
300×100×3mmのフレキシブル板に、塗材(A)を塗付量1.0kg/mとなるようにローラー塗装し、標準状態で24時間乾燥を行った後、更に塗材(B)を塗付量0.3kg/mとなるようにスプレー塗装し試験体を作製した。
作製した試験体を、標準状態で7日間乾燥養生した後、水平面に対して10度に傾斜し、かつ長さ600mmで深さ10mmの溝が35mmピッチで刻まれた屋根を有する架台に、屋根に降った雨が塗膜表面に筋状に流れ落ちるように垂直に取り付け、その状態で6ヶ月間暴露し、雨筋汚れの状態を目視にて評価した。評価は以下の通りである。
○:ほとんど雨筋汚染なし
△:僅かに雨筋汚染が認められる
×:明らかに雨筋汚染が認められる
【0066】
▲3▼汚れの染み込み抵抗性
300×100×3mmのフレキシブル板に、塗材(A)を塗付量1.0kg/mとなるようにローラー塗装し、標準状態で24時間乾燥を行った後、更に塗材(B)を塗付量0.3kg/mとなるようにスプレー塗装し試験体を作製した。
作製した試験体を、標準状態で7日間乾燥養生した後、塗膜面に15重量%カーボンブラック水分散液を、直径20mm、高さ5mmとなるように滴下し、50℃の恒温室中に2時間放置した。その後流水中にて洗浄し、塗膜表面の汚染の程度を目視にて評価した。評価は以下の通りである。
○:ほとんど痕跡なし
△:僅かに痕跡が認められる
×:明らかに痕跡が認められる
【0067】
▲4▼密着性
耐湿潤冷熱繰り返し性を評価した試験体をJIS K5400 8.5に準じ、碁盤目テープ法にて密着性を評価した。評価は以下の通りである。
◎:剥がれなし
○:剥れた欠損部の面積が15%未満
△:剥れた欠損部の面積が15%以上35%未満
×:剥れた欠損部の面積が35%以上
【0068】
[試験結果]
【表4】
Figure 0003778484
【0069】
試験結果を表4に示す。本発明組成物である実施例1〜6では、いずれの試験においても良好な結果であった。特に、塗材(A)に水酸基またはアミド基含有モノマーを共重合させたエマルションを含むか、または架橋反応を有する実施例4〜6は塗材(B)との密着性において、一段と優れた結果を得た。一方、塗材(A)の伸び率が本発明の範囲外である比較例1、2、塗材(B)のポリシロキサン化合物の水酸基価が範囲外である比較例3、塗材(B)がポリシロキサン化合物を含まない比較例4、塗材(B)がシリル基含有エマルション及びポリシロキサン化合物を含まない比較例5では、いずれも十分な結果を得ることができなかった。
【0070】
【発明の効果】
本発明の塗装方法によれば、塗材(A)、塗材(B)を積層することにより、経時でひび割れ、はがれなどが発生することがなく、防水性、密着性且つ耐汚染性に優れ、長期に亘り美観を保つことができる塗膜を提供することができる。

Claims (3)

  1. 建築物または土木構築物等の表面に20℃雰囲気下での伸び率が50〜800%の塗膜を形成する塗材(A)を塗装した後、
    (B-1)反応性シリル基を有する合成樹脂エマルション、(B-2)片末端が−OH基であるポリオキシアルキレン鎖を有し、水酸基価が5〜150KOHmg/gであるポリシロキサン化合物、を主成分とし、(B-1)の固形分100重量部に対し、(B-2)を0.1〜8.0重量部含有する塗材(B)を塗装することを特徴とする塗膜形成方法。
  2. 塗材(A)の結合材が、塗材(B)の反応性シリル基と結合可能な官能基を有する合成樹脂エマルションであることを特徴とする請求項1記載の塗膜形成方法。
  3. 請求項1または2記載の塗膜形成方法で得られた積層塗膜であって、
    建築物または土木構築物等の表面に、塗材(A)により形成された、20℃雰囲気下での伸び率が50〜800%の塗膜に
    (B - 1)反応性シリル基を有する合成樹脂エマルション、(B - 2)片末端が−OH基であるポリオキシアルキレン鎖を有し、水酸基価が5〜150KOHmg/gであるポリシロキサン化合物、を主成分とし、(B - 1)の固形分100重量部に対し、(B - 2)を0.1〜8.0重量部含有する塗材(B)を塗装するにより形成された塗膜を有することを特徴とする積層塗膜
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