JP3777798B2 - 耐水段ボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は耐水段ボールに関し、さらに詳しくは、水産箱、青果物箱等に用いられるリサイクル可能な耐水段ボールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、耐水段ボールとしては、ワックス含浸段ボール、コルゲータ上で溶融ワックスをコーティングした段ボール、あるいは、耐水ライナと耐水中芯を貼合した段ボール等が存在する。
このうち、ワックス含浸の段ボールは、ワックスの使用量が対原紙重量比10%以上と多量であり、このため使用後にリサイクルできないという問題があった。
【0003】
又、耐水化剤として、例えばロジン系サイズ剤、グリオキザール、ジアルデヒド澱粉、ポリアミド−エポキシ樹脂等を内添または塗工して得られた耐水ライナや耐水中芯を貼合してなる耐水段ボールは、リサイクルが比較的容易である。
なお、本発明でのリサイクルとは、段ボール古紙をパルパーで離解してパルプとして再利用することを意味する。
しかし、これらの耐水段ボールは、段ボールシート表面となる側のライナ表面(以後外側面と称する)は撥水剤の塗工によって撥水度がR8以上にすることもあったが、中芯と貼合する側のライナ表面(以後貼合面と称する)及び中芯原紙の表裏両面は、耐水澱粉糊等の水系接着剤を使用しての貼合性を良好にするため撥水剤を塗工していなかった。
【0004】
このような耐水段ボールを使用した段ボール箱で予冷または凍結した内容物を梱包して輸送(コールド輸送)を行うと、段ボール箱が短時間でも外気に放置された場合、外気と内容物の温度差により結露水が発生し、その結露水が段ボールのフルート面等から撥水性のない中芯に浸透して中芯の強度低下が発生し、また状況によっては中芯とライナの接着面の分離も発生して、その結果段ボール潰れが発生する問題があった。
このような問題を解決するために、中芯原紙とライナの両方を撥水剤で含浸処理することによって撥水性を付与した段ボールとして実開昭60―78438号公報が提案されている。
【0005】
しかし、このように中芯原紙及びライナを撥水剤で含浸処理すると、中芯原紙及びライナの全ての面が撥水性を有し、吸水性がほとんどなくなるため、通常の水系の澱粉系貼合糊を使用すると接着速度が著しく低下し、その結果、通常の段ボール貼合時にはシングルフェーサー側で150〜250m/分であるコルゲータの貼合速度を大幅に下げなければならず、経済性を考慮すると、実用上段ボールを製造できないという問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、生産性に優れ、しかも高度の耐水性を有する耐水段ボールを提供するものである。また、本発明の別の目的は、段ボールとして使用した後にリサイクルが可能な耐水性段ボールを提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を採用する。即ち本発明の第1の発明は、耐水中芯原紙を段繰り成形した耐水中芯の両面に耐水ライナを貼合した段ボールであって、耐水中芯原紙の表裏両表面の撥水度(JIS P8137)がR6以上で、該耐水中芯の両面に片面につき0.01〜2.0g/m2以下の撥水剤を担持させたことを特徴とするリサイクル可能な耐水段ボールである。
【0009】
また本発明の第2は、撥水剤の主成分が融点70℃以下のワックスであることを特徴とする請求項1に記載のリサイクル可能な耐水段ボールである。
【0010】
また本発明の第3は、耐水中芯の両面に貼合された各耐水ライナの外側面の撥水度がR6以上であり、貼合面の撥水度がR4未満であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のリサイクル可能な耐水段ボールである。
【0011】
また本発明の第4は、澱粉、該澱粉を耐水化する耐水化剤、及び合成樹脂エマルジョンからなる耐水性の接着剤で耐水中芯の両面と耐水ライナを貼合したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリサイクル可能な耐水段ボールである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、中芯原紙の両面に撥水度R6以上の撥水性を付与した耐水段ボールである。本発明では撥水剤を中芯表面に担持させることにより撥水性を付与する。
撥水性の付与に用いる撥水剤としては、ワックス、石油樹脂、高級脂肪酸塩、シリコーン樹脂、フッ素系撥水剤、エチレン尿素系撥水剤、ピリジン系撥水剤、オレフィン系樹脂等を任意に使用することができる。
【0013】
本発明において中芯原紙表面への撥水性の付与は、これらの撥水剤の塗工、あるいは散布等によって行う。塗工方法としては、上記撥水剤を水分散液としたものを塗工することが好ましい。さらにその中でもワックスエマルジョン、またはワックスエマルジョンを主成分とした撥水剤が好適に使用できる。
本発明でいうワックスとは、いわゆる天然ロウ及び合成ワックスであり、カルナバロウ、モンタンロウ、石油ワックス等が挙げられる。石油ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスが代表的である。また合成ワックスとしては、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミド系合成ワックス等が挙げられる。
【0014】
また、撥水剤が中芯原紙内部に染み込まないように、前記ワックスエマルジョンに合成樹脂エマルジョンを混合して使用することもできる。
合成樹脂としては、スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸エステル共重合体などが例示される。
【0015】
撥水剤の塗工量は片面につき撥水剤の固形分で0.01〜2.0g/m2が好ましい。
撥水剤の量が上記の範囲より少ないとR6以上の十分な撥水度を得ることが困難である。また上記範囲より多い場合は段ボール貼合時に蛇行トラブルが起こる原因となる。
さらに、パルパーにおける段ボールの離解性は、撥水剤の塗工量が少ないほど良好なので、リサイクル性の面を考慮すると、撥水剤の塗工量は片面につき1.0g/m2を越えないことがより望ましい。
なお撥水剤の塗工は中芯原紙を抄造する抄紙機で行っても、また抄造後別の塗工機で行っても良い。
【0016】
また、本発明で使用する撥水剤の融点は、90℃以下、さらに望ましくは70℃以下であることが望ましい。特にワックスエマルジョン、またはワックスエマルジョンを主成分としたものを撥水剤として使用した場合には、そのワックスの融点が70℃以下であることが望ましい。
現行のコルゲータは、中芯原紙を90℃以上に加熱して貼合用の接着剤を塗布することが一般的なので、撥水剤の融点が90℃以下であれば、中芯原紙を加熱したときに表面の撥水剤が溶融して中芯原紙内部に一旦染み込んで中芯原紙表面のセルロースが表面に露出することにより、通常使用している澱粉系の接着剤での貼合が容易になるからと推定されている。さらにこのとき中芯原紙内部に一旦染み込んだ撥水剤は、貼合後に中芯の表面にブリードアウトして、中芯表面に撥水性を付与すると考えられている。
【0017】
本発明で使用するライナ及び中芯は耐水ライナ及び耐水中芯である。耐水ライナ、耐水中芯とは、該ライナまたは該中芯のJISP8126によるリングクラッシュ強度を100%としたときに、該ライナまたは該中芯を24時間20℃の水中に浸漬した後のリングクラッシュ強度(浸水後残留強度)が10%以上であるものをいう。
耐水ライナ及び耐水中芯は、パルプは通常のライナ及び中芯と同様のものであるが、さらに耐水化剤を配合して抄紙するか、または、抄紙機における乾燥前に耐水化剤を含浸させて乾燥する方法等によって得られる。
【0018】
耐水化剤としては、例えばロジン系サイズ剤、合成系サイズ剤、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリ尿素−ホルムアルデヒド樹脂、グリオキザール、ジアルデヒド澱粉、環状尿素−グリオキザール反応物、アクリルアミド−グリオキザール反応物共重合体、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリアミド−エポキシ樹脂、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂等が挙げられる。
中でも、最も一般的にはポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂を対パルプ乾燥重量で0.2重量%〜1.0重量%配合したものが使用される。
本発明で使用する耐水ライナの外側面の撥水度はR6以上である。また貼合面の撥水度について制限はないが、段ボール貼合速度を考慮するとR4未満、さらに詳しくはR2〜R0の撥水度に調整することが望ましい。
【0019】
なお、両面の撥水度がR0である耐水中芯原紙、両面の撥水度がR8である耐水中芯原紙の2種類の中芯原紙を、外側面撥水度R10、貼合面撥水度がR0である耐水ライナと貼合して各々段ボールを作成し、そのフルート面を水に立てた状態で24時間浸漬して水が中芯に浸透する高さを測定した結果、撥水度R0の中芯は30〜40mm、撥水度R8の中芯は1〜6mmとなり、中芯への撥水性の付与により段ボールのフルート面からの浸水を大幅に防止できることを確認した。
【0020】
また本発明において、段ボールの貼合は耐水接着剤を用いて行う。但し本発明において耐水接着剤とは、その接着剤を用いて耐水中芯と耐水ライナを貼合して得た乾燥状態でのピン強度(片面ピン)30kgfの段ボールシートを1時間水に浸けた後のピン強度が2kgf以上のものを指すものとする。
なお、上記の浸水強度試験、ピン強度とも、前記した浸水後残留強度が10%の耐水ライナと耐水中芯を使用した段ボールシートによって行う。
【0021】
ライナと中芯の貼合に使用する耐水接着剤とは、澱粉に硼砂と水酸化ナトリウムを主成分とする澱粉系接着剤に、架橋剤を配合したものである。配合する架橋剤としては、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ケトン−ホルムアルデヒド系樹脂等のホルムアルデヒド系樹脂が挙げられる。また本発明におけるライナと中芯の貼合用耐水接着剤としては、上記の耐水接着剤にさらに合成樹脂エマルジョンを混合した耐水接着剤がさらに好適に用いられる。
混合する合成樹脂としては、スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸エステル共重合体などが例示される。
【0022】
合成樹脂エマルジョンを配合した耐水接着剤は、耐水性と粘着性がさらに向上する。接着剤の粘着性が向上することにより、表面に撥水性を有する中芯の貼合により好適である。また段ボールの貼合速度を向上させたい場合にも好適である。
また、耐水接着剤に合成樹脂エマルジョンを配合する場合には、澱粉と合成樹脂の固形分比率は1〜20:1の範囲が望ましい。
この範囲より合成樹脂の配合比率が大きい場合には、効果が頭打ちとなりコストが上がるので好ましくない。一方この範囲より比率が小さい場合は、添加による接着剤の粘着性、及び耐水性の向上効果は殆ど期待できない。
【0023】
【実施例】
以下の実施例及び比較例により本発明を説明する。
(実施例1)
クラフトパルプ20重量%、段古紙パルプ80重量%の配合で、耐水化剤として対パルプ0.5%のポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂を含有する耐水中芯原紙(米坪200g、浸水残留強度13%、両面撥水度R0)の両面に、荒川化学工業社製HA−541(ワックス融点57℃、30%濃度)とJSR社製SBR(TG=23℃、30%濃度)を2:1の比で混合したエマルジョンを撥水剤として片面固形分当たり0.06g/m2塗工し、両面の撥水度をR7とした耐水中芯原紙と、
クラフトパルプ50重量%、段古紙パルプ50重量%の配合で、耐水化剤として対パルプ0.5%のポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂を含有する耐水ライナ原紙の片面に撥水剤を塗工したもの(米坪280g、浸水残留強度13%、外側面撥水度R10,貼合面撥水度R0)を、
通常使用される段ボール貼合用耐水接着剤(豊年HR−160方式)とスチレン−ブタジエン系共重合体エマルジョン(TG=−5℃)を、澱粉と合成樹脂の固形分比が2:1となるように混合したものを接着剤として使用して貼合し、Bフルートの耐水段ボールを得た。
【0024】
(実施例2)
通常使用される段ボール貼合用耐水接着剤(豊年HR−160方式)を使用して貼合した点を除いては、実施例1と同一の手段を用いてBフルートの段ボールを得た。
【0025】
(比較例1)
中芯原紙に撥水剤を塗工せず、中芯の表裏両面の撥水度をR0とした点を除いては、実施例2と同一の手段を用いてBフルートの耐水段ボールを得た。
【0026】
(比較例2)
クラフトパルプ20重量%、段古紙パルプ80重量%の配合で、耐水化剤として対パルプ0.5%のポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂を含有する耐水中芯原紙(米坪200g、浸水残留強度13%、両面撥水度R0)と、
クラフトパルプ50重量%、段古紙パルプ50重量%の配合で、耐水化剤として対パルプ0.5%のポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂を含有する耐水ライナ原紙の片面に撥水剤を塗工したもの(米坪280g、浸水残留強度13%、外側面撥水度R10,貼合面撥水度R0)を、
通常使用される段ボール貼合用接着剤(澱粉、苛性ソーダ、硼砂を主成分とし、耐水性を持たない接着剤)を使用して貼合してBフルートの耐水段ボールを製造し、この段ボールをワックス溶融液に含浸し、250〜300g/m2のワックスを付着させワックス含浸段ボールを得た。
【0027】
実施例及び比較例の段ボール、及びその段ボールで製造した段ボール箱の特性を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
*1)マシン幅:1800mm(三菱重工製)のコルゲータにて貼合を行い、140m/分以上を◎、50m/分以下を×とした。
*2)段ボールシートをパルパーで離解し、容易に離解できるものを◎、離解が困難なものを×とした。
*3)段ボール箱にポリ袋で密封した氷を入れた後、30℃、90%RHの外気に30分間放置した場合の箱圧縮強度。
*4) 段ボール箱にポリ袋で密封した氷を入れた後、30℃、90%RHの外気に3時間放置した場合のフルート内を観察して、中芯への水の浸透がほとんどないものを◎、浸透が多いものを×とした。
*5) 段ボール箱にポリ袋で密封した氷を入れた後、30℃、90%RHの外気に3時間放置した場合の箱の底部を観察して、接着部の分離がないものを◎、分離がほとんどないものを○、分離がややあるものを△、分離が多いものを×とした。
【0030】
【発明の効果】
本発明により、生産性に優れ、高度の耐水性を有し、しかも段ボールとして使用した後リサイクルが可能な耐水段ボールを得ることができる。
Claims (4)
- 耐水中芯原紙を段繰り成形した耐水中芯の両面に耐水ライナを貼合した段ボールであって、耐水中芯原紙の表裏両表面の撥水度(JIS P8137)がR6以上で、該耐水中芯の両面に片面につき0.01〜2.0g/m2の撥水剤を担持させたことを特徴とするリサイクル可能な耐水段ボール。
- 撥水剤の主成分が融点70℃以下のワックスであることを特徴とする請求項1に記載のリサイクル可能な耐水段ボール。
- 耐水中芯の両面に貼合された各耐水ライナの外側面の撥水度がR6以上であり、貼合面の撥水度がR4未満であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のリサイクル可能な耐水段ボール。
- 澱粉、該澱粉を耐水化する耐水化剤、及び合成樹脂エマルジョンからなる耐水性の接着剤で耐水中芯の両面と耐水ライナを貼合したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリサイクル可能な耐水段ボール。
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