JP3777483B2 - セグメント - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば道路、鉄道、放水路、上下水道用等のシールドトンネルに用いられる一次覆工用セグメントとして好適なセグメントに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図12は本出願人の一部により既に提案されている従来のコンクリートセグメントの全体構成を示す斜視図、図13はその継手部を拡大して示す縦断面図である(特願平7-187351号)。
このコンクリートセグメントは、セグメント1相互の継手面1a,1bの幅方向に、セグメント間で係合してこれらを結合する断面T形の条鋼からなる雄金具(あり)2と断面C形の条鋼からなる雌金具(あり溝)3とで形成された埋め込み金具を設け、かつこれら埋め込み金具は各セグメント本体の主構造材4,5にそれぞれ結合し、各セグメントの結合(組立)は雄金具2と雌金具3の位置合わせを行なってから挿入する側のセグメントをトンネル軸方向に押し込むことにより行われる。
【0003】
また、従来のこの種コンクリートセグメントの継手の他の例として特開平7-269297号公報のものがある。
この公報のコンクリートセグメントは、セグメント相互の継手面の幅方向に、各セグメント本体の主構造材にそれぞれ結合された断面C形の条鋼からなる雌金具(あり溝)で形成された埋め込み金具を設け、各セグメントの結合時(組立時)は、別体からなる断面H形の条鋼からなる雄金具(あり)を用い、雄金具の各フランジを各雌金具のあり溝にトンネル軸方向より押し込むことにより行われる。またこの公報のコンクリートセグメントは、雄雌金具の引張荷重作用面の双方あるいは一方にテーパを形成し、結合時に楔効果が得られるようにしている。
【0004】
ここで、従来のあり継ぎ式継手の引張強度を確認するために行った実験結果について図14および図15に基づき説明する。図14は引張強度試験に用いた雄金具の試験体Aの諸元を示す説明図、図15は実験結果であり、試験体Aにおける引張荷重(tf)と雄金具、雌金具それぞれの標点間変位(mm)の関係を示す図である。
【0005】
図14に示すように、ここでは試験体Aとして、材質SS400を用い、長さ20mm、フランジ厚さ9mm、フランジ幅30mm、ウェブ厚さ6mm、ウェブ長さ25mmとし、フランジ上面の両側とウェブ両側面のそれぞれに歪みセンサ6を取り付けた。なお、以下で説明する実験(試験体A,B,C,D,E)はすべて直径4800mm、幅1000mm、厚さ200mmの下水道用コンクリートセグメントの継手に関するものである。セグメントの諸元、設計条件が変われば、継手金具の寸法は当然変わるが、本発明の効果は全く変わらない。
【0006】
試験体Aは、図15に示すようにa点までは弾性変形(直線部)し、a点から引張強さの最大点であるj点までは、降伏点となるa点にて若干の線形的な変化態様を示すものの基本的に弾性変形の線に沿うような連続的な塑性変形曲線となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、セグメント1相互の継手面1a,1bにそれぞれ雄金具2と雌金具3とからなる埋め込み金具を設けたもの、換言すれば雄雌金具の引張荷重作用面にテーパが形成されていない前者のものにあっては、製造、組立精度が悪い場合、結合時に雄雌金具間に空隙が発生したり、或いは断面T形の雄金具に大きな引張力が作用し、これが設計上の弱点となり易い。
【0008】
また、雄雌金具の引張荷重作用面にテーパを形成した後者のものにあっては、製造上あるいは組立上の精度いかんによっては結合時(組立時)に断面H形の雄金具の雌金具への嵌合部(T字部)に大きな引張力が作用し、多くの場合、引張変形能が小さいために、雄金具のT字部が降伏してしまい、継手部には大きな張力が残存する。このような状態下において外力が作用すると、セグメントリングの構造上の弱点となり易い。更に嵌合時にも大きな押し込み力を要するため、セグメント1ピースあたり2ヶ所の継手のうち片方のみに押し込み荷重が作用し(いわゆる偏荷重)、嵌合がスムーズに行われない可能性があった。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、あり継ぎ方式のセグメント間継手において、本来の剛性を失うことなく、継手部に引張力が作用したとき、引張荷重による引張変位開始点から所定量変位するまでの間、雄金具(あり)のウェブ降伏力よりも小さな引張力で変形を可能とすることができるセグメントを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係るセグメントは、下記の構成からなるものである。すなわち、セグメント相互の継手面の幅方向に、セグメント間で係合してこれらを結合するありとあり溝からなる埋め込み金具をそれぞれ設け、これら埋め込み金具と各セグメント本体の主構造材とをそれぞれ結合してなるセグメントにおいて、埋め込み金具を、断面T形の条鋼からなる雄金具と断面C形の条鋼からなる雌金具とから形成するとともに、これら雄雌金具の引張荷重作用面のいずれか一方における雄金具のウェブを挟む両側部に突条を設け、この突条を引張荷重が加わった当初の支点部としたものである。なお、この突条は必ずしも幅方向全長にわたらないでも良い。また、断続的に設けても良い。
この請求項1の発明において、埋め込み金具の雄金具のウェブを挟む両側部に設けた突条からなる支点部は、引張荷重が加わる当初の荷重を受けて引張変位開始点から所定量変位するまでの間の変形を容易にして見掛け上の継手部引張剛性を小さくする。このため、製造上あるいは組立上の理由から雄雌金具の嵌合時に雄雌金具間の位置関係が適正になっていない場合でも、雄金具のウェブ降伏力よりも小さな引張力で変形して、嵌合時の引張力を吸収させることができ、かつ残存引張力も小さくすることができる。
また、突条からなる支点部による変形を積極的に利用することにより、結合時に雄雌金具間に空隙が発生するのを防止することができ、それにより、止水性の確保が容易となる。
更に、引張荷重作用点から突条までの距離に基づくモーメントにより、雄雌金具の本来の引張荷重作用面相互が接触するまでの変形が容易に行われる。このため、引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間の剛性を小さくすることができる。
これらのことから、設計上も不利となることがない。
【0012】
また、本発明の請求項に係るセグメントは、埋め込み金具を、断面矢印形の条鋼からなる雄金具と断面C形の条鋼からなる雌金具とから形成し、雄金具の山形フランジの両側縁部を引張荷重が加わった当初の支点部としたものである。
この請求項の発明において、引張荷重が作用すると、比較的小さな荷重で塑性変形が始まり雄金具は雌金具に対する接触面が当初の山形フランジ両側縁部から山形フランジ内方へと次第に拡大していき、所定の接触面積まで拡大すると、本来の継手剛性が機能して引張荷重を受ける。したがって、引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間の変位量を大きくすることができる。このため、設計的自由度が拡大する。
【0013】
また、本発明の請求項に係るセグメントは、埋め込み金具を、断面T形の条鋼からなる雄金具と断面C形の条鋼からなる雌金具とから形成するとともに、雌金具側の引張荷重作用面となるリップ部内面に雄金具側の引張荷重作用面となるフランジ内面の両側部に向けて間隔が広がる山形フランジ状の突条を設け、該突条の山形フランジの両側縁部を引張荷重が加わった当初の支点部としたものである。なお、この突条は必ずしも幅方向全長にわたらないでも良い。
この請求項の発明において、引張荷重が作用すると、雌金具は雄金具に対する接触面が当初の山形フランジの両側縁部から山形フランジ内方へと次第に拡大していき、所定の接触面積まで拡大すると、本来の継手剛性が機能して引張荷重を受ける。したがって、引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間の変位量を大きくすることができ、設計的自由度が拡大する。
【0014】
また、本発明の請求項に係るセグメントは、埋め込み金具を、断面T形の条鋼からなる雄金具と断面C形の条鋼からなる雌金具とから形成するとともに、これら雄雌金具の引張荷重作用面間に弾性体あるいは柔らかい金属又は、プラスチックのような非金属を介在設置し、該弾性体あるいは柔らかい金属又は、プラスチックのような非金属を引張荷重が加わった当初の支点部としたものである。
この請求項の発明においては、引張荷重による引張変位開始点から所定量変位するまでの間の変位を弾性体あるいは柔らかい金属又は、プラスチックのような非金属により行わせることができるので、雄雌金具間に引張荷重が作用すると、引張荷重による引張変位開始点から所定量変位するまでの間は弾性体あるいは柔らかい金属又は、プラスチックのような非金属が雄金具のウェブ降伏力よりもより小さな引張力で変形し、当該介在物の変形が完了すると、T字形金物の継手剛性が機能して引張荷重を受ける。従って、引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまでの変位を大きくすることができ、設計自由度が大きくなる。
【0015】
【発明の実施の形態】
実施形態1.
以下、図示実施形態に基づき本発明を説明する。
なお、本発明の継手は、コンクリートセグメント、鋼製セグメント、合成セグメント等、いずれの形式のセグメントにも適用可能であるが、以下の実施形態ではコンクリートセグメントに適用した場合の例について説明する。
図1は本発明の実施形態1に係るコンクリートセグメントの継手部の引張強度試験に用いられる雄金具(あり)の試験体Bの諸元を示す説明図、図2は試験体Bにおける引張荷重(tf)と雄金具、雌金具それぞれの標点間変位(mm)の関係を示す図、図3は試験体Bの引張強度試験時の変形態様の説明図である。なお、雄金具(あり)と雌金具(あり溝)の接続態様、およびこれらと各セグメント本体の主構造材との結合態様については基本的に前述の図12と同様であるので、これらの関係については説明を省略する。
【0016】
本実施形態のコンクリートセグメントは、セグメント相互の継手面の幅方向に、セグメント間で係合してこれらを結合する埋め込み金具を、基本的に断面T形の条鋼からなる雄金具(あり)2Aと断面C形の条鋼からなる雌金具(あり溝)3とから形成するとともに、雄金具2A側の引張荷重作用面となるフランジ2a下面の両側部に突条2b,2cを設け、これら突条2b,2cを引張荷重が加わった当初の支点部として構成したものである。
【0017】
図1に示すように、ここでは試験体Bとして、材質SS400の雄金具を用い、長さ20mm、フランジ厚さ5mm、フランジ幅30mm、ウェブ厚さ6mm、支点部までのウェブ高さ25mm、各突条の厚さはそれぞれ2mm、各突条の高さはそれぞれ3mmとし、フランジ両側の上下面とウェブ両側面のそれぞれに歪みセンサ6を取り付けた。
【0018】
試験体Bは、図2及び図3に示すように第1変曲点aまでは、引張荷重作用点から各突条2b,2cまでのそれぞれの距離に基づくモーメントにより、フランジ部が弾性変形し、a点から第2変曲点bすなわち雄雌金具の本来の引張荷重作用面相互が接触するまでは、前記モーメントによってフランジ部が塑性変形する。つまり引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間はウェブ降伏力よりも小さな引張力で変形する。
【0019】
また、雄雌金具の本来の引張荷重作用面相互が接触した第2変曲点bから引張強さの最大点jに至る途中のc点においては、フランジ部の変形は雌金具によりおさえられ、ウェブ部の引張特性が発揮される。更に引張強さの最大点jを超えて破断に至る下降曲線途中のd点においては、フランジ部が雌金具より抜け出すような変形となる。なお、フランジ部が雌金具より抜け出すような変形となったのは、本試験において、雌金具のリップ部のスリット間隔を10mmと大きく設定したためである。したがって、実際のセグメントへの適用に当たっては、雄金具のウェブ部と雌金具のリップ部との間隔を試験例よりも狭くなるように設定した。
【0020】
また、d点から先の下降曲線のどこで破断が起こったかは確認していないが、そのことは重要ではない。本試験の目的は、弾性変形を含む上昇曲線が段階的に変位していること、特に引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間はウェブ降伏力よりも小さな引張力で変形していることと、引張強さの最大点jが設計値どおりの値になっているかを確認することにあり、破断点を確認しなくても所期の目的は達成できる。
【0021】
このように、本実施形態のコンクリートセグメントにおいては、あり継ぎ式継手の雄金具2A側の引張荷重作用面となるフランジ2a下面の両側部に設けた突条2b,2cを、引張荷重が加わった当初の支点部として構成することにより、引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間はウェブ降伏力よりも小さな引張力で変形させることができる。このため、製造上あるいは組立上の理由から雄雌金具の嵌合時に、雄雌金具間の距離が適正な場合よりも小さめになっていても、その寸法分だけは小さな引張力で変形させることができ、嵌合時に雄金具に大きな引張力を生じさせることが無い。
【0022】
また、引張荷重が加わった当初の支点部となる突条2b,2cの設定位置を、雄金具2A側の引張荷重作用面となるフランジ2a下面の両側部としたことにより、引張荷重作用点から突条間に距離をおくことができ、この距離に基づくモーメントによって、雄雌金具の本来の引張荷重作用面相互が接触するまでの変形を容易に行わせることができる。このため、引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間の剛性を小さくすることができ、これによって嵌合時の押し込み力を小さくできて、嵌合作業をスムーズに行わせることができる。
【0023】
なお、ここでは引張荷重が加わった当初の支点部となる突条を雄金具側に設けたものを例に挙げて説明したが、この突条を雌金具側に設けても同等の作用効果を奏することは言うまでもない。
【0024】
実施形態2.
図4は本発明の実施形態2に係るコンクリートセグメントの継手部の引張強度試験に用いられる雄金具の試験体Cの諸元を示す説明図、図5は試験体Cにおける引張荷重(tf)と雄金具、雌金具それぞれの標点間変位(mm)の関係を示す図である。
【0025】
この実施形態のコンクリートセグメントは、前述の実施形態1で説明した雄金具側の各突条の内側面を傾斜面2d,2eに形成して、各突条先端が鋭角となるように構成したものであり、それ以外の構成は前述の実施形態1のものと同様である。
【0026】
図4に示すように、ここでも試験体Cとして、材質SS400の雄金具を用い、長さ20mm、フランジ厚さ5mm、フランジ幅30mm、ウェブ厚さ6mm、支点部までのウェブ高さ25mm、各突条の基部厚さはそれぞれ2mm、各突条の高さはそれぞれ3mmとし、フランジ両側の上下面とウェブ両側面のそれぞれに歪みセンサ6を取り付けた。
【0027】
試験体Cの引張強度試験時の変形態様は、前述の実施形態1の試験体Bとほぼ同様であった(図3参照)。ただ、各突条先端が鋭角となっていること、及びこれによって引張荷重作用点から各突条までのそれぞれの距離が前述の試験体Bよりも若干長くなっていることにより、図5に示す如く第1変曲点aまでのフランジ部の弾性変形の変位量が試験体Bよりも若干大きくなっていて、その分、以後の塑性変形点b,c,j,dにおける変位量も試験体Bよりも若干大きくなっていることが試験結果から判明した。
【0028】
したがって、この実施形態のコンクリートセグメントにおいては、引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間のウェブ降伏力よりも小さな引張力で変形する量を、前述の試験体Bよりも若干大きくすることができる。
【0029】
なお、この実施形態においても鋭角状の突条を雌金具側に設けてもよいことは言うまでもない。
【0030】
実施形態3.
図6は本発明の実施形態3に係るコンクリートセグメントの継手部の引張強度試験に用いられる雄金具の試験体Dの諸元を示す説明図、図7は試験体Dにおける引張荷重(tf)と雄金具、雌金具それぞれの標点間変位(mm)の関係を示す図、図8は試験体Dの引張強度試験時の変形態様の説明図であり、各図中、前述の実施形態1に相当する部分には同一符号を付してある。
【0031】
この実施形態のコンクリートセグメントは、雄金具2Bを断面矢印形の条鋼から形成し、雄金具の山形フランジ2fの両側縁部2g,2hを引張荷重が加わった当初の支点部としたものであり、それ以外の構成は前述の実施形態1のものと同様である。
【0032】
図6に示すように、ここでも試験体Dとして、材質SS400の雄金具を用い、長さ20mm、山形フランジ厚さ5mm、山形フランジの両片の幅をそれぞれ30mm、ウェブ厚さ6mm、支点部までのウェブ高さ25mmとし、山形フランジ両側の上下面とウェブ両側面のそれぞれに歪みセンサ6を取り付けた。
【0033】
試験体Dは、図7及び図8に示すように第1変曲点eまでは、引張荷重作用点から山形フランジ2fの両側縁部2g,2hまでのそれぞれの距離に基づくモーメントにより、山形フランジ2fが弾性変形し、e点から第2変曲点fすなわち雄雌金具の本来の引張荷重作用面相互が接触するまでは、前記モーメントによって山形フランジ部が潰れるように塑性変形する。つまり引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間はウェブ降伏力よりも小さな引張力で変形し、接触面が当初の山形フランジ両側縁部2g,2hから山形フランジ内方へと次第に拡大していき、所定の接触面積まで拡大する。
【0034】
また、雄雌金具の本来の引張荷重作用面(所定の接触面積)相互が接触した第2変曲点fから引張強さの最大点jに至る途中のg点においては、山形フランジ部の塑性変形はなくなって、ウェブ部が伸び変形し、ウェブ部の引張剛性が発揮される。更に引張強さの最大点jを超えて破断に至る下降曲線途中のh点においては、山形フランジの両側縁部が反り、この山形フランジ両側縁部が雌金具の引張荷重作用面より浮き上がるような変形となる。なお、ここでもh点から先の下降曲線のどこで破断が起こったかは確認していないが、そのことは重要ではない
【0035】
この実施形態のコンクリートセグメントにおいては、雄金具2Bを断面矢印形の条鋼から形成して、その山形フランジの両側縁部を引張荷重が加わった当初の支点部としたので、引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間のウェブ降伏力よりも小さな引張力で変形する量を、前述の試験体A,Bの2倍程度まで大きくすることができる。このため、設計的自由度が拡大する。
【0036】
なお、ここでは引張荷重が加わった当初の支点部を雄金具側の山形フランジ両側縁部としたものを例に挙げて説明したが、この山形フランジを雌金具側に設けてもよい。この場合、埋め込み金具は、断面T形の条鋼からなる雄金具と断面C形の条鋼からなる雌金具とから形成するとともに、雌金具側の引張荷重作用面となるリップ部内面に雄金具側の引張荷重作用面となるフランジ内面の両側部に向けて前述の雄金具の山形フランジ2fのように間隔が広がる山形フランジ状の突条を設け、この突条の山形フランジの両側縁部を引張荷重が加わった当初の支点部とする。
【0037】
この引張荷重が加わった当初の支点部を雌側配置としたものにおいては、引張荷重が作用すると、雌金具は雄金具に対する接触面が当初の突条先端縁から突条内側面へと次第に拡大していき、所定の接触面積まで拡大すると、本来の継手剛性が機能して引張荷重を受ける。
【0038】
この支点部を雌側配置とした場合、突条の幅を試験体Dの山形フランジの幅ほど大きくできないため、引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間の変形量が、試験体Dよりも若干小さくなるが、ほぼ同等の効果が得られる。
【0039】
実施形態4.
図9は本発明の実施形態4に係るコンクリートセグメントの継手部の引張強度試験に用いられる弾性体付き雄金具の試験体Eの諸元を示す説明図、図10は弾性体付き試験体Eにおける引張荷重(tf)と雄金具、雌金具それぞれの標点間変位(mm)の関係を示す図、図11は弾性体付き試験体Eの引張強度試験時の変形態様の説明図であり、各図中、前述の実施形態1に相当する部分には同一符号を付してある。
【0040】
この実施形態のコンクリートセグメントは、雄金具2Cを断面T形の条鋼から形成するとともに、雌金具3を断面C形の条鋼から形成し、これら雄雌金具の引張荷重作用面間に弾性体7を介在設置し、弾性体7を引張荷重が加わった当初の支点部としたものである。
【0041】
図9に示すように、ここでも試験体Eとして、材質SS400の雄金具を用い、長さ20mm、フランジ厚さ9mm、フランジ幅30mm、ウェブ厚さ6mm、支点部(弾性体下面)までのウェブ高さ25mmとし、かつ弾性体7として厚さ5mmのゴムを用い、フランジ両側の上面とウェブ両側面のそれぞれに歪みセンサ6を取り付けた。
【0042】
試験体Bおよび弾性体(ゴム)7は、図2及び図3に示すように変曲点iまでは、主にゴム7が圧縮変形し、外側にはみ出していく。つまり引張荷重による引張変位開始点から変曲点iまでの間はウェブ降伏力よりも小さな引張力でゴム7が圧縮変形する。
【0043】
また、ゴム7の圧縮変形がほぼ完了した変曲点iから引張強さの最大点jまではウェブ部の伸びも加わる。
【0044】
この実施形態のコンクリートセグメントにおいては、雄雌金具の引張荷重作用面間にゴム7を介在設置し、ゴム7を引張荷重が加わった当初の支点部としたので、引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間を、ウェブ降伏力よりもはるかに小さな引張力で変形させることができる。このため、製造上あるいは組立上の理由から雄雌金具の嵌合時に雄雌金具の位置関係(距離)に誤差が生じても、この誤差に相当する変位は、小さな引張力で生じさせることができる。従って、雄金具に大きな引張力を生じさせない。更にゴム7の厚さ又は硬さを変えるだけで、引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間の変位量を簡単に調整することができる。
【0045】
なお、ここでは雄雌金具の引張荷重作用面間に介在設置した弾性体を引張荷重が加わった当初の支点部としたものを例に挙げて説明したが、弾性体(コイルばね、板ばね等も含む)に代えて柔らかい金属(例えば鉛、銅、アルミニウムなど)または、プラスチックのような非金属を用いてもよく、このような場合でも同等の効果が得られる。
【0046】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1の発明によれば、埋め込み金具を、断面T形の条鋼からなる雄金具と断面C形の条鋼からなる雌金具とから形成するとともに、これら雄雌金具の引張荷重作用面のいずれか一方における雄金具のウェブを挟む両側部に突条を設け、この突条を引張荷重が加わった当初の支点部としたので、製造上あるいは組立上の理由から雄雌金具の嵌合時に雄雌金具の位置関係(距離)に誤差が生じても、この誤差に相当する変位は、小さな引張力で生じさせることができる。従って、雄金具に大きな引張力を生じさせない。また残存引張力も小さくすることができる。
また、支点部による変形を積極的に利用することにより、結合時に雄雌金具間に空隙が発生するのを防止することができ、止水性の確保が容易となる。
更に、引張荷重作用点から突条までの距離に基づくモーメントにより、雄雌金具の本来の引張荷重作用面相互が接触するまでの変形が容易に行われる。このため、引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間の剛性を小さくすることができる。
これらのことから、設計上も不利となることがない。
【0048】
また、請求項の発明によれば、埋め込み金具を、断面矢印形の条鋼からなる雄金具と断面C形の条鋼からなる雌金具とから形成し、雄金具の山形フランジの両側縁部を引張荷重が加わった当初の支点部としたので、引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間の変位量を大きくすることができる。このため、設計的自由度が拡大する。
【0049】
また、請求項の発明によれば、埋め込み金具を、断面T形の条鋼からなる雄金具と断面C形の条鋼からなる雌金具とから形成するとともに、雌金具側の引張荷重作用面となるリップ部内面に雄金具側の引張荷重作用面となるフランジ内面の両側部に向けて間隔が広がる山形フランジ状の突条を設け、該突条の山形フランジの両側縁部を引張荷重が加わった当初の支点部としたので、引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間の変位量を大きくすることができ、設計的自由度が拡大する。
【0050】
また、請求項の発明によれば、埋め込み金具を、断面T形の条鋼からなる雄金具と断面C形の条鋼からなる雌金具とから形成するとともに、これら雄雌金具の引張荷重作用面間に弾性体あるいは柔らかい金属またはプラスチックのような非金属を介在設置し、該弾性体あるいは柔らかい金属またはプラスチックのような非金属を引張荷重が加わった当初の支点部としたので、雄雌金具の嵌合時に雄金具に大きな引張力が作用しても、引張荷重による引張変位開始点から所定量変位するまでの間は弾性体あるいは柔らかい金属またはプラスチックのような非金属が雄金具のウェブ降伏力よりもより小さな引張力で変形して、嵌合時の引張力を吸収する。
更に、弾性体あるいは柔らかい金属またはプラスチックのような非金属の厚さまたは硬さを変えるだけで、引張荷重による引張変位開始点から本来の継手部引張剛性が機能するまで(所定量変位するまで)の間の変位量を簡単に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るコンクリートセグメントの継手部の引張強度試験に用いられる雄金具の試験体Bの諸元を示す説明図である。
【図2】試験体Bにおける引張荷重(tf)と雄金具、雌金具それぞれの標点間変位(mm)の関係を示す図である。
【図3】試験体Bの引張強度試験時の変形態様の説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るコンクリートセグメントの継手部の引張強度試験に用いられる雄金具の試験体Cの諸元を示す説明図である。
【図5】試験体Cにおける引張荷重(tf)と雄金具、雌金具それぞれの標点間変位(mm)の関係を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るコンクリートセグメントの継手部の引張強度試験に用いられる雄金具の試験体Dの諸元を示す説明図である。
【図7】試験体Dにおける引張荷重(tf)と雄金具、雌金具それぞれの標点間変位(mm)の関係を示す図である。
【図8】試験体Dの引張強度試験時の変形態様の説明図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るコンクリートセグメントの継手部の引張強度試験に用いられる弾性体付き雄金具の試験体Eの諸元を示す説明図である。
【図10】弾性体付き試験体Eにおける引張荷重(tf)と雄金具、雌金具それぞれの標点間変位(mm)の関係を示す図である。
【図11】弾性体付き試験体Eの引張強度試験時の変形態様の説明図である。
【図12】従来のコンクリートセグメントの全体構成を示す斜視図である。
【図13】従来のコンクリートセグメントの継手部を拡大して示す縦断面図である。
【図14】従来のコンクリートセグメントの継手部の引張強度試験に用いた雄金具の試験体Aの諸元を示す説明図である。
【図15】試験体Aにおける引張荷重(tf)と雄金具、雌金具それぞれの標点間変位(mm)の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 セグメント
1a,1b 継手面
2A,2C 断面T形の雄金具(あり)
2b,2c 突条(支点部)
2B 断面矢印形の雄金具(あり)
2f 山形フランジ
2g,2h 山形フランジの側縁部(支点部)
3 断面C形の雌金具(あり溝)
4,5 主構造材
7 弾性体(支点部)

Claims (4)

  1. セグメント相互の継手面の幅方向に、セグメント間で係合してこれらを結合するありとあり溝からなる埋め込み金具をそれぞれ設け、これら埋め込み金具と各セグメント本体の主構造材とをそれぞれ結合してなるセグメントにおいて、
    前記埋め込み金具を、断面T形の条鋼からなる雄金具と断面C形の条鋼からなる雌金具とから形成するとともに、これら雄雌金具の引張荷重作用面のいずれか一方における雄金具のウェブを挟む両側部に突条を設け、該突条を引張荷重が加わった当初の支点部としたことを特徴とするセグメント。
  2. セグメント相互の継手面の幅方向に、セグメント間で係合してこれらを結合するありとあり溝からなる埋め込み金具をそれぞれ設け、これら埋め込み金具と各セグメント本体の主構造材とをそれぞれ結合してなるセグメントにおいて、
    前記埋め込み金具を、断面矢印形の条鋼からなる雄金具と断面C形の条鋼からなる雌金具とから形成し、前記雄金具の山形フランジの両側縁部を引張荷重が加わった当初の支点部としたことを特徴とするセグメント。
  3. セグメント相互の継手面の幅方向に、セグメント間で係合してこれらを結合するありとあり溝からなる埋め込み金具をそれぞれ設け、これら埋め込み金具と各セグメント本体の主構造材とをそれぞれ結合してなるセグメントにおいて、
    前記埋め込み金具を、断面T形の条鋼からなる雄金具と断面C形の条鋼からなる雌金具とから形成するとともに、該雌金具側の引張荷重作用面となるリップ部内面に、前記雄金具側の引張荷重作用面となるフランジ内面の両側部に向けて間隔が広がる山形フランジ状の突条を設け、該突条の山形フランジの両側縁部を引張荷重が加わった当初の支点部としたことを特徴とするセグメント。
  4. セグメント相互の継手面の幅方向に、セグメント間で係合してこれらを結合するありとあり溝からなる埋め込み金具をそれぞれ設け、これら埋め込み金具と各セグメント本体の主構造材とをそれぞれ結合してなるセグメントにおいて、
    前記埋め込み金具を、断面T形の条鋼からなる雄金具と断面C形の条鋼からなる雌金具とから形成するとともに、これら雄雌金具の引張荷重作用面間に弾性体あるいは柔らかい金属又は、プラスチックのような非金属を介在設置し、該弾性体あるいは柔らかい金属又は、プラスチックのような非金属を引張荷重が加わった当初の支点部としたことを特徴とするセグメント。
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