JP3776604B2 - ベーンポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両のパワーステアリング装置に用いられるベーンポンプの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のベーンポンプは、例えば特開平8−200239号公報に開示されているように、各ベーンを取り囲むカムリングを支持ピンを介して回動可能に支持し、ロータ軸芯に対するカムリングの偏心量を変化させることにより、ポンプ吐出流量を調節するものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のベーンポンプにあっては、ポンプ吐出圧が高い運転状態で、ロータの回転に伴ってポンプ室が吸込行程から吐出行程に移る過程でポンプ室が圧縮される予圧縮量が不足し、ベーンポンプの振動や騒音が増大する可能性があった。また、ポンプ吐出圧が高い運転状態で、ロータの回転に伴ってポンプ室が吐出行程から吸込行程に移る予減圧行程でポンプ室が減圧される予減圧量が不足し、ベーンポンプの振動や騒音が増大する可能性があった。
【0004】
また、これを防止するため、カムリング中心を吸込ポート側に予めずらしておき、予圧縮量および予減圧量を確保する方法があるが、この場合、ポンプ吐出圧が低い作動状態で予圧縮量および予減圧量が過大となり、ベーンポンプの振動や騒音が大きくなるという問題がある。
【0005】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、ベーンポンプにおいて、振動や騒音を低減することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、回転するロータから摺動可能に突出する複数のベーンと、各ベーンの外周端部を摺接させてポンプ室を画成するカムリングと、ロータの回転に伴って拡がるポンプ室に作動流体を流入させる吸込ポートと、ロータの回転に伴って収縮するポンプ室から作動流体を流出させる吐出ポートとを備えるベーンポンプにおいて、吸込ポートと吐出ポートの間に位置する圧力遷移区間を均等に分割する平面をケーシング遷移区間分割面Spとするとき、ポンプ吐出圧が上昇するのに伴いカムリングをケーシング遷移区間分割面Spに略垂直な方向に移動させてポンプ室の予圧縮量を増大させる可変予圧縮量機構を備えるものとした。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、可変予圧縮量機構はカムリングをケーシング遷移区間分割面Spに略垂直な方向に摺動可能に支持するアダプタリングと、
ポンプ室の予圧縮量が増大する方向にカムリングが変位するのに伴って拡がるカムリング圧力室と、カムリング圧力室にポンプ吐出圧を導く吐出圧導入通路とを備えるものとした。
【0008】
第3の発明は、第2の発明において、アダプタリングを回動させてポンプ押しのけ容積を変化させる可変容量機構を備えるものとした。
【0009】
【発明の作用および効果】
第1の発明において、ポンプ吐出圧が上昇するのに伴いポンプ室の予圧縮量および予減圧量が増大することにより、カムリングが移動してもポンプ室の圧力が滑らかに変化する状態が維持され、ベーンポンプの振動や騒音を低減できる。
【0010】
第2の発明において、ポンプ吐出圧が上昇するのに伴いカムリングがケーシング遷移区間分割面Spに略垂直な方向に変位してポンプ室の予圧縮量および予減圧量が増大することにより、カムリングが移動してもポンプ室の圧力が滑らかに変化する状態が維持され、ベーンポンプの振動や騒音を低減できる。
【0011】
第3の発明において、アダプタリングを回動させてポンプ押しのけ容積を変化させることにより、ベーンポンプからタンクへ戻される作動油の流量を少なくして無駄なエネルギ消費を低減する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を車両に搭載されるパワーステアリング装置の油圧源として設けられるベーンポンプに適用した実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1に示すように、ベーンポンプ1は、ケーシング60に回転可能に収装されるロータ50と、ロータ50から摺動可能に突出する複数のベーン24と、各ベーン24を取り囲むカムリング70とを主体として構成される。
【0014】
ロータ50はエンジンからの回転が図示しない駆動軸とプーリおよびベルト等を介して伝達され、図に矢印で示すように左回り方向に回転する。各ベーン24は回転するロータ50に対しそのラジアル方向に出入りしながらそれぞれの外周端部をカムリング70の内周面に摺接させてポンプ室を拡縮する。ロータ50の回転に伴って各ベーン24間で拡がるポンプ室には吸込ポート41から作動油が吸込まれ、各ベーン24間で収縮するポンプ室から作動油が吐出ポート42に吐出される。吸込ポート41は図示しない吸込通路を介してタンクに連通し、吐出ポート42はポンプ吐出通路11を介して図示しないパワーステアリング装置の油圧シリンダに連通される。ポンプ吐出通路11の途中には可変オリフィス80が介装される。
【0015】
カムリング70の内周面の断面は略円形に形成され、ロータ軸芯Opに対するカムリング中心Ocの偏心量Lが大きくなるほどポンプ押しのけ容積が増大し、ポンプ吐出流量が増える。カムリング中心Ocがロータ軸芯Op上にあるとポンプ吐出流量が零となる。
【0016】
ポンプ吐出流量を変化させる可変容量機構として、カムリング70を収装するアダプタリング90が設けられ、アダプタリング90はケーシング60に支持ピン91を介して回動可能に支持されている。アダプタリング90が図において左回り方向に回動してロータ軸芯Opに対するカムリング中心Ocの偏心量が大きくなるほどポンプ押しのけ容積が増大し、ポンプ吐出流量が増える。
【0017】
ここで、吸込ポート41と吐出ポート42の間に位置する圧力遷移区間を均等に分割し、ロータ軸芯Opを含む平面をケーシング遷移区間分割面Spとし、カムリング70内の空間を均等に分割し、ケーシング遷移区間分割面Spと平行な平面をカムリング遷移区間分割面Scと定義する。
【0018】
カムリング70が摺接するアダプタリング90の各スライド面はケーシング遷移区間分割面Spおよびカムリング遷移区間分割面Scと直交する平面状に形成され、アダプタリング90がケーシング遷移区間分割面Spと直交方向に移動するようになっている。
【0019】
アダプタリング90を図において左側に付勢するスプリング26が設けられる。スプリング26の付勢力によりアダプタリング90が最も左側に移動した状態で、ポンプ吐出流量は最大となる。
【0020】
アダプタリング90をスプリング26に抗して駆動するため、ケーシング60にはアダプタリング90を挟むように第一ハウジング圧力室7と第二ハウジング圧力室8が画成される。ケーシング60にはアダプタリング90の外周上部に摺接するシール材22が介装され、第一ハウジング圧力室7と第二ハウジング圧力室8をそれぞれ密封している。
【0021】
第一ハウジング圧力室7は通路12を介して可変オリフィス80より上流側のポンプ吐出通路11に連通する一方、第二ハウジング圧力室8は通路13を介して可変オリフィス80より下流側のポンプ吐出通路11に連通する。これによりポンプ吐出流量が増加して可変オリフィス80の前後差圧が上昇するのに伴ってアダプタリング90はスプリング26に抗して図において右回り方向に回動し、ポンプ吐出流量が減少するようになっている。
【0022】
各ベーン24の間に画成されるポンプ室はカムリング遷移区間分割面Scより図において上方の領域で拡大して吸込ポート41から作動油を吸込み、カムリング遷移区間分割面Scより図において下方の領域で収縮して作動油を吐出ポート42に吐出するが、ロータ50の回転に伴ってポンプ室が吸込行程から吐出行程に移る過程においてポンプ室が圧縮される予圧縮行程が存在し、ポンプ室の予圧縮量はカムリング遷移区間分割面Scが吸込ポート41側(上方向)に移動するほど増大する。また、ロータ50の回転に伴ってポンプ室が吐出行程から吸込行程に移る過程においてポンプ室が減圧される予減圧行程が存在し、ポンプ室の予減圧量はカムリング遷移区間分割面Scが吸込ポート41側に移動するほど増大する。
【0023】
ポンプ室の予圧縮量を変化させる可変予圧縮量機構として、カムリング70はアダプタリング90にカムリング遷移区間分割面Scおよびケーシング遷移区間分割面Spに垂直な方向について移動可能に支持される。
【0024】
カムリング70を図において下方向に付勢するスプリング27が設けられる。スプリング27の付勢力によりカムリング70が最も下方向に移動した状態で、ポンプ室の予圧縮量は最小となる。
【0025】
カムリング70をスプリング27に抗して駆動するため、アダプタリング90にはカムリング70を挟むように第一カム圧力室17と第二カム圧力室18が画成される。アダプタリング90にはカムリング70の外周側部に摺接する一対のシール材29が介装され、第一カム圧力室17と第二カム圧力室18の間を密封している。
【0026】
第一カム圧力室17は吐出圧導入通路14を介して吐出ポート42に連通する一方、第二カム圧力室8は通路15を介して吸込ポート41に連通する。これによりポンプ吐出圧が上昇するのに伴ってカムリング70はスプリング27に抗して図において上方向に移動し、ポンプ室の予圧縮量および予減圧量が増加するようになっている。なお、図示した各部の寸法差は、便宜上実際よりも誇張して大きくしてあるが、実際にカムリング70が上下方向に移動する距離はカム径の1%程度である。
【0027】
以上のように構成される本発明の実施の形態につき、次に作用を説明する。
【0028】
ベーンポンプ1が停止状態からポンプ回転数が所定値まで上昇する間は、アダプタリング90がスプリング26の付勢力により左側に位置してロータ軸芯Opに対するカムリング中心Ocの偏心量Lが最大となる状態に保持され、ロータ50の回転数が上昇するのに伴ってポンプ吐出通路11を流れる作動油量が増加する。これにより、車両の低速走行時からポンプ吐出圧が十分に上昇し、パワーステアリング装置に必要な油圧アシスト力を確保できる。
【0029】
ポンプ回転数が所定値を超えて上昇する作動領域にて、可変オリフィス80の前後差圧が所定値を超えて上昇すると、スプリング26の付勢力に抗してアダプタリング90が右回り方向に回動し、ポンプ押しのけ容積が小さくなる。こうしてアダプタリング90の位置が自動的に調節され、ポンプ吐出量が制御されることにより、ベーンポンプ1からタンクに戻される作動油の流量を少なくして、無駄なエネルギ消費を少なくする。
【0030】
ところで、ポンプ室が吸込行程から吐出行程に移る予圧縮行程において、ポンプ室の圧力が滑らかに上昇しない場合に、振動や騒音が増大する。また、ポンプ室が吐出行程から吸込行程に移る予減圧行程において、ポンプ室の圧力が滑らかに降下しない場合に、振動や騒音が増大する。これに対処して従来のベーンポンプは、ポンプ室が吐出ポートに連通するタイミングを遅らせたり、カムリング遷移区間分割面をケーシング遷移区間分割面(ロータ軸芯)より吸込ポート側にずらして、予圧縮量を増減し調整していた。しかし、従来のカムリングの偏心量を変化させる可変容量型ベーンポンプでは、ポンプ押しのけ容積が増減するのに応じて適切な予圧縮量および予減圧量も変化するのに対して、すべての押しのけ容積(カムリングの偏心位置)で適切な予圧縮量(予減圧量)を確保することは困難であり、ポンプ押しのけ容積が変化するのに応じて予圧縮量および予減圧量が過大になったり不足して、振動や騒音が増大する。
【0031】
これに対処して本発明は、ポンプ吐出圧が上昇するのに伴いカムリング70を吸込ポート41側に移動させ、ポンプ室の予圧縮量および予減圧量が増大することにより、ポンプ室における見かけ上の流量変化が大きくなり、ポンプ室が吸込行程から吐出行程に移る予圧縮行程において圧力が滑らかに上昇する作動状態が維持されるとともに、ポンプ室が吐出行程から吸込行程に移る予減圧行程において圧力が滑らかに降下する作動状態が維持され、ベーンポンプ1の振動や騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すベーンポンプの断面図。
【符号の説明】
1 ベーンポンプ
7 第一ハウジング圧力室
8 第二ハウジング圧力室
11 ポンプ吐出通路
14 吐出圧導入通路
24 ベーン
50 ロータ
60 ケーシング
70 カムリング
80 スプール
90 アダプタリング
Oc カムリング中心
Op ロータ軸芯
Sc カムリング遷移区間分割面
Sp ケーシング遷移区間分割面
Claims (3)
- 回転するロータから摺動可能に突出する複数のベーンと、前記各ベーンの外周端部を摺接させてポンプ室を画成するカムリングと、前記ロータの回転に伴って拡がる前記ポンプ室に作動流体を流入させる吸込ポートと、前記ロータの回転に伴って収縮する前記ポンプ室から作動流体を流出させる吐出ポートと、を備えるベーンポンプにおいて、前記吸込ポートと前記吐出ポートの間に位置する圧力遷移区間を均等に分割する平面をケーシング遷移区間分割面Spとするとき、ポンプ吐出圧が上昇するのに伴い前記カムリングを前記ケーシング遷移区間分割面Spに略垂直方向に移動させて前記ポンプ室の予圧縮量を増大させる可変予圧縮量機構を備えたことを特徴とするベーンポンプ。
- 前記可変予圧縮量機構は前記カムリングを前記ケーシング遷移区間分割面Spに略垂直な方向に摺動可能に支持するアダプタリングと、前記ポンプ室の予圧縮量が増大する方向に前記カムリングが変位するのに伴って拡がるカムリング圧力室と、前記カムリング圧力室にポンプ吐出圧を導く吐出圧導入通路と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。
- 前記アダプタリングを回動させてポンプ押しのけ容積を変化させる可変容量機構を備えたことを特徴とする請求項2に記載のベーンポンプ。
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