JP3776538B2 - 半導体発光素子およびその製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は基板上に、チッ化ガリウム系化合物半導体層が積層される半導体発光素子およびその製法に関する。さらに詳しくは、p形層全体に電流を拡散して発光効率を向上させると共に、電極との接触抵抗を小さくして順方向電圧を低くすることができる半導体発光素子およびその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、たとえば青色系の光を発光する半導体発光素子は、図4に示されるような構造になっている。すなわち、サファイア基板21上にたとえばGaNからなる低温バッファ層22と、高温でGaNがエピタキシャル成長されたn形層(クラッド層)23と、バンドギャップエネルギーがクラッド層のそれよりも小さく発光波長を定める材料、たとえばInGaN系(InとGaの比率が種々変わり得ることを意味する、以下同じ)化合物半導体からなる活性層(発光層)24と、p形のGaNからなるp形層(クラッド層)25とからなり、その表面にp側(上部)電極28が設けられ、積層された半導体層の一部がエッチングされて露出したn形層23の表面にn側(下部)電極29が設けられることにより形成されている。なお、n形層23およびp形層25はキャリアの閉じ込め効果を向上させるため、活性層23側にAlGaN系(AlとGaの比率が種々変わり得ることを意味する、以下同じ)化合物半導体層が用いられることがある。
【0003】
この種の半導体発光素子は、通常表面側を発光面として使用されることが多く、表面を電極で覆うと光が透過せず外部発光効率が低下する。そのため、p側電極28はワイヤボンディングのために必要最小限の大きさに形成される。一方、p側電極28とn側電極29との間に電圧が印加されると、積層された半導体を介して電流が流れ、活性層24の電流通路の部分が発光領域となる。したがって、電流通路が幅広く形成される方が好ましく、p形層5の全面に電流が拡がるように、p形層25の表面にNiとAuの合金層からなる電流拡散層(図示せず)が設けられる場合がある。この場合も、あまり厚くなると光を通さなくなるため5〜10nm程度と薄く形成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、p形層の表面には、Ni-Au合金層からなる電流拡散層が設けられる場合が多いが、これらの金属は真空蒸着やスパッタリングなどにより設けられるため、電流拡散層を設ける際、半導体層を積層したウェハをMOCVD装置から空気中に取り出さなければならない。一方、p形層にするためGaNやAlGaN系化合物半導体に通常ドーピングされるMgは、ドーピングされる際に、または半導体層の積層後に空気中に晒されることにより、O(酸素原子)やH(水素原子)などと化合しやすく、これらの元素と化合しているとドーパントとして作用しない。そのため、とくに半導体層を積層後金属層を蒸着するために、MOCVD装置から空気中に取り出されると、p形のチッ化ガリウム系化合物半導体層とその表面に設けられる金属層との間のオーミックコンタクト特性が低下し、順方向電圧が高くなるという問題がある。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、チッ化ガリウム系化合物半導体からなるp形層とp側電極との間の電気的接触を改良し、接触抵抗を下げることにより順方向電圧の低い半導体発光素子およびその半導体発光素子を得るための製法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による半導体発光素子は、基板と、該基板上にチッ化ガリウム系化合物半導体からなるn形層とp形層とが積層されることにより発光層を形成する半導体積層部と、前記p形層に電流拡散層を介して設けられるp側電極とからなり、前記電流拡散層の少なくとも前記p形層側にIn、GaおよびZnからなる群の少なくとも1種の金属のドロップレット層からなる低抵抗層を有するものである。この構造にすることにより、In、GaおよびZnなどの金属をMOCVD(有機金属化学気相成長)装置により半導体層の積層に続いて成膜することができるため、半導体層の表面を酸化させるなどの不純物層を介在させることなく金属からなる低抵抗層を形成することができる。
【0007】
ここにチッ化ガリウム系化合物半導体とは、III 族元素のGaとV族元素のNとの化合物またはIII 族元素のGaの一部がAl、Inなどの他のIII 族元素と置換したものおよび/またはV族元素のNの一部がP、Asなどの他のV族元素と置換した化合物からなる半導体をいう。また、ドロップレットとは、有機金属化合物から金属が粒状に析出して隙間を有しながら形成される層をいう。
【0009】
前記電流拡散層の表面側に少なくともNiを含む金属層が設けられることにより、一層電流拡散の効果が向上する。この場合、ドロップレットや金属薄膜などの低抵抗層と半導体層とはMOCVD装置で連続的に成膜されるため、酸化物などの不純物が介在することがなく、また低抵抗層はその大部分が金属であるため、その層とNiを含む金属層とは密着よく成膜される。
【0010】
本発明の半導体発光素子の製法は、(a)基板上に発光層を形成するn形層およびp形層を含むチッ化ガリウム系化合物半導体層を積層し、
(b)該半導体層を積層する装置で引き続き前記p形層上に、金属のドロップレットもしくは薄膜からなる低抵抗層または前記p形層の不純物濃度より高濃度の金属を含有する金属高濃度半導体層を形成し、
(c)前記金属の低抵抗層または金属高濃度半導体層上にp側電極を形成する
ことを特徴とする。
【0011】
前記(b)工程の後に、表面に保護膜を形成してからp形層のアニール処理を行うことにより、表面のInやZnなどの蒸発を防止すると共に、p形層中にこれらの金属が拡散してオーミック特性が向上するため好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
つぎに、図面を参照しながら本発明の半導体発光素子およびその製法について説明をする。図1の(a)には、たとえば青色系の発光に適したチッ化ガリウム系化合物半導体層がサファイア基板上に積層される本発明の半導体発光素子の一実施形態の断面説明図が示され、そのp形層5の表面にドロップレットによる低抵抗層が形成された状態の部分拡大模式図が(b)に示されている。
【0013】
本発明の半導体発光素子は、図1(a)に示されるように、たとえばサファイア(Al2 O3 単結晶)などからなる基板1の表面に発光領域を形成する半導体層2〜5が積層されて半導体積層部を形成し、その表面にIn、Zn、Gaなどのドロップレット層からなる低抵抗層7aおよびNiとAuの合金などからなる金属層7bからなる電流拡散層7を介して上部電極(p側電極)8が形成されている。また、積層された半導体層3〜5の一部が除去されて露出したn形層3にn側電極(下部電極)9が形成されている。なお、図1に示される例では、低抵抗層7a上に、NiとAuの合金などからなる金属層7bがさらに設けられて、電流拡散の効果を一層大きくしているが、この金属層7bは必ずしも必須のもではない。
【0014】
基板1上に積層される半導体層は、たとえばGaNからなる低温バッファ層2が0.01〜0.2μm程度堆積され、ついでn形のGaNからなるn形層(クラッド層)3が1〜5μm程度堆積されている。さらに、バンドギャップエネルギーがクラッド層のそれよりも小さくなる材料、たとえばInGaN系化合物半導体からなる発光層4が0.005〜0.3μm程度形成され、さらにp形のAlGaN系化合物半導体層5aおよびGaN層5bからなるp形層(クラッド層)5が全体で0.5〜1μm程度それぞれ順次積層されている。
【0015】
なお、p形層5はAlGaN系化合物半導体層5aとGaN層5bとの複層になっているが、キャリアの閉じ込め効果の点からAlを含む層が設けられることが好ましいためで、GaN層だけでもよい。また、n形層3にもAlGaN系化合物半導体層を設けて複層にしてもよく、またこれらを他のチッ化ガリウム系化合物半導体層で形成することもできる。
【0016】
図1に示される例の半導体発光素子では、電流拡散層7がIn、Zn、Gaなどのドロップレット層71(図1(b)参照)からなる低抵抗層7aとNiおよびAuの合金である金属層7b(図1(b)には図示されていない)とからなっている。このドロップレット層71は、図1(b)に模式図が示されるように、In、Zn、Gaなどの金属が膜にならないで粒状の層に形成される。したがって、このドロップレット層71の厚さは50nm程度に形成される。このIn、Zn、Gaなどのドロップレット層71を形成するには、これらの金属を、たとえばトリメチルインジウム(以下、TMInという)、ジメチル亜鉛(以下、DMZnという)、トリメチルガリウム(以下、TMGという)などの有機金属化合物として半導体層をエピタキシャル成長させるMOCVD装置内にキャリアガスと共に導入し、200〜600℃程度の析出温度にすることにより、析出させることができる。したがって、p形層5の成長に引き続きドロップレット層71を形成することができる。
【0017】
本発明の半導体発光素子によれば、電流拡散層7が低抵抗層7aと金属層7bとからなっており、低抵抗層7aがIn、Zn、Gaなどのドロップレット層71からなっているため、これらの金属を有機金属化合物としてMOCVD装置内で半導体層と連続して形成することができる。そのため、低抵抗層7aとp形層5との間に酸化膜などの絶縁膜が形成されることがなく、p形層5と低抵抗層7aとの間の接触抵抗が小さくなる。一方、この低抵抗層7aであるドロップレット層71は、粒状で連結して設けられるため、その間に隙間があり、発光層で発光した光を透過させながら、金属粒の連結部を介して電流が流れる。そのため、電流を拡散させながら発光層で発光した光を透過させる電流拡散層となり、しかも半導体層と小さな接触抵抗により接続される。低抵抗層7aとしてドロップレット層にすることにより、光の取出し効率を向上させることができる。
【0018】
以上のように、低抵抗層7aにより電流拡散作用をするため、電流拡散層としては低抵抗層7aだけでもよいが、さらにこの表面に従来のようにNiとAuの薄い合金層が設けられることにより、光を透過させながら電流拡散層の厚さを厚くすることができ、充分に電流を拡散させることができる。この場合、NiおよびAuはMOCVD装置から取り出されて真空蒸着装置またはスパッタリング装置により成膜されるが、本発明ではp形層5の表面に低抵抗層7aが設けられているため、空気中に取り出されてもその酸化が生じ難く、しかも金属層同士の接触であるため、小さな接触抵抗により積層される。したがって、低抵抗層7aと金属層7bとの間も低抵抗で接続される。
【0019】
本発明の低抵抗層7aは、上述のように、p形層5との間に不純物を介在させることなく成膜され、しかも発光層で発光する光を透過させながら電流を拡散できる層であればよい。したがって、前述のようなドロップレット層71でなくても、有機金属化合物とすることができる金属を同様の方法で析出させて、図2(a)に示されるようなIn、Zn、Gaまたはこれらの複合の薄膜72からなる低抵抗層7aにしても1〜10nm程度以下であれば光を透過し、ドロップレット層71と同様に機能する。低抵抗層7aとしてこのような薄膜72にすることにより、駆動電圧をより一層低下させることができる。
【0020】
この低抵抗層7aは同様の観点から、図2(b)に示されるように、たとえばp形のGaN層を成膜しながら、InもしくはZnまたはこれらの両方が高濃度に含まれるように導入することにより、p形層5より高濃度に金属を含有する金属高濃度半導体層73としても、前述の各例と同様に、p形層5と連続してMOCVD装置により成膜される低抵抗層7aになる。含有する金属は、前述の金属のほかに、Mgを高濃度に含有させてもよい。この場合、Mgの濃度が濃くなると、半導体層の結晶性が低下するが、クラッド層としては働かない半導体層の表面なので問題はない。低抵抗層7aとしてこのような金属高濃度半導体層73にする場合は、前述のドロップレットや薄膜の金属のみの層よりは抵抗が大きいため、この表面に前述の金属層7bを設けることが好ましいが、光の取出し効率が増加する。
【0021】
つぎに、図1に示される半導体発光素子の製法について説明をする。
【0022】
有機金属化学気相成長法(MOCVD法)により、キャリアガスのH2 と共にTMG、アンモニア(以下、NH3 という)などの反応ガスおよびn形とする場合のドーパントガスとしてのSiH4 などを供給して、まず、たとえばサファイアからなる基板1上に、たとえば400〜600℃程度の低温で、GaN層からなる低温バッファ層2を0.01〜0.2μm程度程度、同じ組成のn形層(クラッド層)3を600〜1200℃程度で1〜5μm程度結晶成長する。さらにドーパントガスを止めて、反応ガスとしてTMInを追加し、InGaN系化合物半導体からなる活性層4を0.005〜0.3μm程度成膜する。
【0023】
ついで、反応ガスのTMInをトリメチルアルミニウム(以下、TMAという)に変更し、ドーパントガスとしてシクロペンタジエニルマグネシウム(以下、Cp2 Mgという)を導入して、p形のAlGaN系化合物半導体層5aを0.1〜0.5μm程度、さらに再度反応ガスのTMAを止めてp形のGaN層5bを0.1〜0.5μm程度それぞれ積層し、p形層5を形成する。
【0024】
その後、反応ガスをたとえばTMInのみにして温度を200〜600℃程度に下げることにより、Inのドロップレット層71が50nm程度の厚さに析出する。ついで、半導体層およびドロップレット層が積層されたウェハをMOCVD装置から取り出し、真空蒸着装置に入れて、図3に部分拡大説明図が示されるように、Ni層75およびAu層76をそれぞれたとえば5nm程度づつ蒸着する。さらにその表面にSiO2 またはSiN(チッ化ケイ素)などからなる保護層79を0.1〜0.2μm程度堆積し、p形ドーパントの活性化のため、700〜1000℃程度で10〜40分程度のアニールを行う。このアニールの際に、Ni層75およびAu層76は合金化し、透明になり膜厚も薄くなる。さらに、p形層5の表面に設けられたInなどもp形層5内に浸透し、一層低抵抗化に寄与する。すなわち、保護層79が設けられることにより、Inなどの低抵抗層の金属の蒸発を防止し、むしろ半導体層の中へ拡散させる効果がある。
【0025】
ついで、下部電極を形成するためn形層3が露出するように、積層された半導体層の一部を塩素ガスなどによる反応性イオンエッチングによりエッチングをする。この露出したn形層3の表面にn側電極9の金属のTiおよびAlをそれぞれ0.1μm程度と0.3μm程度づつ真空蒸着などにより成膜し、さらにp側電極のために図示しないSiNなどの保護膜の一部を除去して露出した金属層7b上にTiとAuをそれぞれ真空蒸着し、300〜500℃程度で5〜40分程度シンターすることにより、上部電極8および下部電極9を形成する。その結果、図1に示される半導体発光素子が得られる。これらの電極はリフトオフ法などにより形成される。
【0026】
低抵抗層7aとして、Znのドロップレットを形成するには、反応ガスとしてDMZnを導入して同様に析出させればよく、Gaのドロップレットを形成するには、反応ガスとしてTMGを導入して同様に析出させればよい。また、In、Zn、Gaなどの薄膜72を形成するには、前述と同じ反応ガスを前述の場合よりも大きな流量で導入し、析出させることにより、析出金属粒が重なり合って薄膜として形成される。さらに、金属高濃度半導体層73を形成する場合には、たとえばNH3 、TMGの半導体の成長ガスおよびドーバントガスのCp2 Mgと共に、TMInやDMZnなどの反応ガスを導入すればよい。また、Mgを高濃度にドーピングした半導体層にするには、ドーバントガスのCp2 Mgの流量を大きくすればよい。
【0027】
前述の各例では、ダブルヘテロ接合構造の例であったが、チッ化ガリウム系化合物半導体からなるpn接合構造でも同様である。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、p形層上に形成される電流拡散層が、p形層との間に不純物を介在させることなく設けられるため、p形層とp側電極との間の接触抵抗を小さくすることができる。その結果、チッ化ガリウム系化合物半導体のp形層と電極との間のオーミック特性が向上し、順方向電圧の低い半導体発光素子が得られる。
【0029】
また、本発明の製法によれば、p形層と接触する低抵抗層が半導体層を積層する装置と同じ装置で形成されるため、簡単にしかも不純物層を介在させることなく低抵抗層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体発光素子の一実施形態の断面説明図である。
【図2】本発明の半導体発光素子の他の形態のp形層上に設けられる低抵抗層部分の拡大説明図である。
【図3】p形層のアニールを行う場合のp形層上に積層される膜の例を示す図である。
【図4】従来の半導体発光素子の一例の斜視説明図である。
【符号の説明】
1 基板
3 n形層
4 活性層
5 p形層
7 電流拡散層
7a 低抵抗層
7b 金属層
Claims (5)
- 基板と、該基板上にチッ化ガリウム系化合物半導体からなるn形層とp形層とが積層されることにより発光層を形成する半導体積層部と、前記p形層に電流拡散層を介して設けられるp側電極とからなり、前記電流拡散層の少なくとも前記p形層側にIn、GaおよびZnからなる群の少なくとも1種の金属のドロップレット層からなる低抵抗層を有する半導体発光素子。
- 前記電流拡散層の表面側に少なくともNiを含む金属層を有する請求項1記載の半導体発光素子。
- (a)基板上に発光層を形成するn形層およびp形層を含むチッ化ガリウム系化合物半導体層を積層し、
(b)該半導体層を積層する装置で引き続き前記p形層上に金属のドロップレットまたは薄膜層を形成し、
(c)該金属のドロップレットまたは薄膜層の上部にp側電極を形成する
ことを特徴とする半導体発光素子の製法。 - 前記(b)の工程の後に、Niを含む金属層を蒸着またはスパッタリングにより成膜する請求項3記載の製法。
- 前記p側電極を形成する前に、表面に保護膜を形成してからp形層のアニール処理を行う請求項3または4記載の製法。
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