JP3776478B2 - コプロスタンジオール誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はコプロスタンジオール誘導体の製造方法に関する。詳しくは、リトコール酸を出発原料とした、大量合成に適するコプロスタンジオール誘導体の製造方法に関する。本発明の製造方法により製造されるコプロスタンジオールは、医薬品として有用な、1α,25−ジヒドロキシビタミンD3などの活性型ビタミンD3誘導体の合成中間体として有用である。
【0002】
【従来の技術】
リトコール酸を出発原料としたコプロスタンジオールの製造方法としては従来、Ikan等の方法(J.Org.Chem.37,1892(1972))、Ochi等の方法(J.Chem.Soc.Perkin I,161(1979))などが知られているが、大量の取扱いには危険な試薬を使用する、精製にカラムクロマトグラフィーを要する、収率が低いなど、大量合成法として満足できるものはない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ビタミンD誘導体の合成中間体として有用なコプロスタンジオール誘導体の大量合成に適する製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、比較的安価なリトコール酸を出発原料としたコプロスタンジオールの製造方法について鋭意研究を重ねた結果、リトコール酸誘導体を還元して得られるアルコール体を、(1)ニトリル体へと変換し、これをエステル体とした後、または(2)メチルチオメチル−p−トリルスルホン(MTスルホン)を作用させることにより1炭素増炭した後、さらにチオエステル体またはケトン体へと変換した後に、グリニャール型の反応によりコプロスタンジオールを得るという経路による製造方法が、収率よく進行し、かつ結晶化などによる簡便な精製が可能である、大量合成に適した製造方法であることを見いだした。
【0005】
さらに本製造方法の最終工程である一般式(V)
【化26】
(式中、R1は水素原子または保護基を示し、R4は置換基を有していてもよい低級アルキル基を示す)で示されるエステル体から、一般式(IX)
【化27】
(式中、R1は水素原子または保護基を示し、R6,R7は同一で、置換基を有していてもよい低級アルキル基を示す)で示されるコプロスタンジオール誘導体を得る反応において有機セリウム試薬を用いると反応が円滑に進行することを見いだした。
【0006】
本発明の方法の反応経路を式で示すと次のようになる。
【化28】
(式中、R1は水素原子または保護基を示し、R2は置換基を有していてもよい低級アルキル基を示し、R3は脱離基を示し、R4は置換基を有していてもよい低級アルキル基を示し、R5は置換基を有していてもよい低級アルキル基またはメチルチオ基を示し、R6,R7は同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい低級アルキル基を示す)。
【0007】
本発明において低級アルキル基とは直鎖または分岐鎖状のアルキル基を示し、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基のほか、ペンチル基、ヘキシル基などがあげられ、R4,R5,R6,R7の低級アルキル基における好ましい例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基があげられ、さらに好ましくはメチル基、エチル基があげられる。R6,R7としてはメチル基が最も好ましい。
【0008】
保護基としてはアシル基、3置換されたシリル基、アセタール型の保護基、ベンジル基などがあげられ、好ましくは3置換されたシリル基またはテトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基などであり、さらに好ましくはt−ブチルジフェニルシリル基またはt−ブチルジメチルシリル基があげられ、最も好ましいものとしてはt−ブチルジメチルシリル基である。
【0009】
脱離基としては、たとえばハロゲン原子、アルキルあるいはアリールスルホニルオキシ基などがあげられ、好ましくはヨウ素原子、臭素原子、塩素原子、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基などがあげられ、さらに好ましくはヨウ素原子、臭素原子、p−トルエンスルホニルオキシ基などがあげられ、最も好ましくはヨウ素原子である。
【0010】
R2の置換基を有していてもよい低級アルキル基における置換基としては、たとえば低級アルコキシ基などがあげられ、好ましくはメトキシ基があげられる。R4,R5,R6,R7の置換基を有していてもよい低級アルキル基における置換基としては、たとえばアリール基などのその後の反応に悪影響を及ぼさないものであればかまわないが、R4に置換し得る置換基の好ましい例としてはたとえばフェニル基などがあげられ、R4で置換基を有しているものの例としてはたとえばベンジル基などがあげられる。
【0011】
有機金属試薬とは、グリニャール試薬、有機セリウム試薬、有機サマリウム試薬、有機スズ試薬、有機亜鉛試薬などがあげられ、好ましくはグリニャール試薬、有機セリウム試薬であり、一般式(V)から(IX)への反応においてさらに好ましいものとして有機セリウム試薬があげられる。
【0012】
すなわち、リトコール酸は必要に応じ常法により、たとえば酸触媒の存在下、低級アルコールでエステル化される。ここで用いられる酸触媒としては、例えばハロゲン化チオニル、酸ハロゲン化物、酸性イオン交換樹脂、塩化水素などが用いられ、好ましくは塩化チオニル、塩化アセチル、アンバーリスト(登録商標)塩化水素などがあげられ、さらに好ましくは、塩化アセチルがあげられる。低級アルコールとしては、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノールなどがあげられるが、好ましくはメタノール、エタノールがあげられ、さらに好ましくはメタノールがあげられる。ここでメトキシメチルエステルや3置換されたシリル基も好ましい例としてあげることができる。
【0013】
反応温度は用いる試薬などにより異なるが−20から60℃好ましくは0から40℃さらに好ましくは室温付近であり、反応時間は用いる試薬、化合物の量などにより異なるが10から300分好ましくは100から200分さらに好ましくは約180分である。
【0014】
得られたエステル体の3位の水酸基は必要に応じ保護基で保護される。ここで用いられる保護基の好ましい例としては、3置換されたシリル基の保護基や、アセタール型の保護基、ベンジル基、t−ブチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などがあげられ、さらに好ましくは3置換されたシリル基またはテトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基などであり、さらに好ましくはt−ブチルジフェニルシリル基またはt−ブチルジメチルシリル基があげられ、最も好ましいものとしてはt−ブチルジメチルシリル基である。
【0015】
ここで行われたエステル化反応および水酸基の保護反応の一方または両方の反応を行うことなく次の反応に進むこともできる。
【0016】
一般式(I)で示される化合物を還元することにより一般式(II)で示される化合物を得ることができる。ここで用いられる還元剤としては、例えば金属水素化物や金属水素錯化合物が用いられ、金属水素錯化合物が好ましい。金属水素錯化合物としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウムなどの還元剤が用いられ、好ましくは活性化剤としてメタノール、酢酸などを用いた水素化ホウ素ナトリウムがあげられる。ここで用いられる溶媒としては、還元剤の種類により異なるが反応に不活性なものであればよく、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチエルエーテルなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒などがあげられるが、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いる場合には、テトラヒドロフランまたはメタノールが最も好ましい。
【0017】
反応温度は用いる試薬などにより異なるが還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いる場合には、−20から100℃好ましくは還流温度付近であり、反応時間は用いる試薬、化合物の量などにより異なるが10から300分好ましくは100から200分さらに好ましく約180分である。
【0018】
次に得られたアルコール体(II)の水酸基を脱離基へと変換する。脱離基としては、ハロゲン原子、アルキルあるいはアリールスルホニルオキシ基などがあげられ、好ましくはヨウ素原子、臭素原子、p−トルエンスルホニルオキシ基などがあげられ、さらに好ましくはヨウ素原子である。水酸基の脱離基への変換反応は常法により行われる。たとえばヨウ素原子への変換反応の好ましい例としてはトリフェニルホスフィン、イミダゾール、ヨウ素の存在下でのヨウ素化反応などがあげられる。ここで用いられる溶媒としてはハロゲン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒などの非プロトン性溶媒があげられ、好ましくはハロゲン系溶媒があげられ、さらに好ましくはジクロロメタンがあげられる。
【0019】
反応温度は用いる試薬などにより異なるがトリフェニルホスフィン、イミダゾール、ヨウ素の存在下でのヨウ素化反応の場合には0から60℃好ましくは室温付近であり、反応時間は用いる試薬、化合物の量などにより異なるが1から150分好ましくは約60分である。
【0020】
以下、まず一般式(IV),(V)を経由する合成経路について述べる。得られた一般式(III)で示される化合物に金属シアン化物を作用させ一般式(IV)で示される化合物を得る。ここで用いられる金属シアン化物としては、シアン化ナトリウム、シアン化カリウムなどがあげられ、好ましくはシアン化ナトリウムである。反応溶媒としては、たとえば、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルホルムアミドなどとテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンなどの混合溶媒または単一溶媒などがあげられ、好ましくはジメチルスルホキシドとテトラヒドロフランとの混合溶媒である。
【0021】
反応温度は用いる試薬などにより異なるが0から100℃、好ましくは40から80℃さらに好ましくは60℃付近であり、反応時間は用いる試薬、化合物の量などにより異なるが10から600分好ましくは30から200分さらに好ましくは約120分である。
【0022】
次に得られた一般式(IV)で示される化合物のシアノ基をエステル基へと変換し、一般式(V)で示される化合物を得る。この反応は一般的なアルコリシスの反応であり、通常酸性条件下、低級アルコール中で行われ、ここでの好ましい条件としてたとえば塩酸−エタノール系などがあげられる。
【0023】
反応温度は用いる試薬などにより異なるが0から100℃好ましくは還流温度付近であり、反応時間は用いる試薬、化合物の量などにより異なるが10から300分好ましく20から100分さらに好ましくは約55分である。
【0024】
次に得られた一般式(V)で示される化合物を有機金属試薬と反応し、一般式(VI)で示される化合物を得る。一般式(V)を得るまでの反応において、3位の水酸基の保護基が脱保護されている場合(R1が水酸基である場合)には、有機金属試薬との反応に付す前に常法により水酸基の保護を行ってもよい。
【0025】
一般式(V)で示される化合物から一般式(IX)で示される化合物を得るこのような型の反応では通常グリニャール試薬が用いられるが本反応ではグリニャール試薬を用いると反応が途中で進行しなくなる場合が存在する。本発明者らは各種反応剤を検討した結果、有機セリウム試薬を用いると反応が円滑に進行し好収率で一般式(IX)で示される化合物が得られることを見いだした。すなわちここで用いられる反応剤としては、各種グリニャール試薬、有機セリウム試薬などがあげられるが、好ましくは有機セリウム試薬である。好ましい有機セリウム試薬の例として、メチルセリウムハライドなどがあげられ、さらに好ましくはメチルセリウムジクロライドがあげられる。反応に用いられる溶媒としては、エーテル系溶媒などがあげられ、好ましい例としてはテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどがあげられ、さらに好ましくは、テトラヒドロフランがあげられる。
【0026】
反応温度は用いる試薬などにより異なるが−78から10℃好ましくは−78から0℃さらに好ましくは−20から0℃であり、反応時間は用いる試薬、化合物の量などにより異なるが1から300分好ましくは10から100分さらに好ましくは約60分である。
【0027】
次に一般式(VII)、(VIII)(式中のR5が置換基を有していてもよいアルキル基を示す場合)を経由する合成経路について述べる。得られた一般式(III)で示される化合物に塩基の存在下、MTスルホンを作用させ一般式(VII)に示される化合物を得る。ここで用いられる塩基としては、たとえば金属水素化物、金属アルコキシドなどが通常用いられ、好ましくは水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどがあげられ、さらに好ましくは水素化ナトリウムがあげられる。反応溶媒としては、たとえば、非プロトン性極性溶媒、芳香族炭化水素、エーテル系溶媒などが用いられ、具体的にはジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、トルエン、テトラヒドロフランなどの混合溶媒または単一溶媒などがあげられ、好ましくはトルエン、テトラヒドロフラン、ジメチルイミダゾリジノンがあげられ、さらに好ましくはジメチルイミダゾリジノンがあげられる。
【0028】
反応温度は用いる試薬により異なるが、室温から100℃、好ましくは50℃から80℃付近である。反応時間は用いる試薬の種類、当量により異なるが、10分から5時間好ましくは30分から2時間である。
【0029】
得られた一般式(VII)で示される化合物に塩基の存在下、アルキル化剤を作用させた後に酸の存在化加水分解を行い一般式(VIII)に示される化合物を得る。ここで用いられる塩基としては、たとえば金属水素化物、金属アルコキシドなどが通常用いられ、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどがあげられ、好ましくは水素化ナトリウムがあげられる。アルキル化剤としてはジアルキル硫酸、トシル酸アルキル、ハロゲン化アルキルなどがあげられ、ここでアルキル部分としては特にメチルのものが好ましい。メチル化剤としては、たとえば、ジメチル硫酸、トシル酸メチル、よう化メチルなどがあげられ、好ましくはトシル酸メチル、よう化メチルがあげられる。反応溶媒としては、たとえば、非プロトン性極性溶媒、芳香族炭化水素、エーテル系溶媒などが用いられ、具体的にはたとえば、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミタゾリジノン、トルエン、テトラヒドロフランなどの混合溶媒または単一溶媒などがあげられ、好ましくはテトラヒドロフラン、ジメチルイミダゾリジノンがあげられ、さらに好ましくはジメチルイミタゾリジノンがあげられる。
【0030】
反応温度は用いる試薬により異なるが、室温から100℃、好ましくは室温から70℃付近である。反応時間は用いる試薬の種類、当量により異なるが、10分から5時間好ましくは10分から30分間である。
【0031】
加水分解に用いる酸としては、たとえば、塩酸、硫酸、臭化水素酸などがあげられ、好ましくは塩酸があげられる。反応溶媒としては、含水のメタノール、エタノール、テトラヒドロフランなどがあげられ、好ましくは含水のメタノールがあげられる。
【0032】
加水分解の反応温度は用いる試薬により異なるが、室温から80℃、好ましくは50℃から70℃付近である。反応時間は用いる試薬の種類、当量により異なるが、10分から2時間好ましくは30分から1時間である。
【0033】
なお、一般式(VIII)で示される化合物は、一般式(VII)で示される化合物を単離することなく、MTスルホン化後、直ちに同一溶媒でメチル化した後に加水分解して得ることもできる。
【0034】
次に得られた一般式(VIII)で示される化合物を有機金属試薬と反応し、一般式(IX)で示される化合物を得る。一般式(VIII)を得るまでの反応において、3位の水酸基の保護基が脱保護されている場合(式中のR1が水素原子である場合)には、有機金属試薬との反応に付す前に常法により水酸基の保護を行っていい。有機金属試薬としては、たとえば、各種グリニャール試薬、有機アルミニウム試薬、有機リチウム試薬などがあげられ、好ましくはグリニャール試薬さらに好ましくはメチルマグネシウムブロマイドがある。反応溶媒としては、非プロトン系溶媒、好ましくはエーテル系溶媒のテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンなどがあげられ、さらに好ましくはテトラヒドロフランがあげられる。
【0035】
反応温度は用いる試薬などにより異なるが、−78℃から室温、好ましくは−20から0℃であり、反応時間は用いる試薬の種類、当量により異なるが、1から120分好ましくは10から30分である。
【0036】
次に一般式(VIII)(式中のR5がメチルチオ基である場合)を経由する合成経路について述べる。得られた一般式(VII)で示される化合物を酸化してスルホキシド体を得て、さらにプンメラー型の反応に付し、一般式(VIII)で示される化合物を得る。スルフィドの酸化に使用する酸化剤としは、メタクロロ過安息香酸、過酢酸、過酸化水素、t−ブチルペルオキシド等があげられ、好ましくはメタクロロ過安息香酸、過酢酸がさらに好ましくはメタクロロ過安息香酸があげられる。反応溶媒としては、塩素系の有機溶媒などがあげられ、好ましくは塩化メチレン、クロロホルムがさらに好ましくは塩化メチレンがあげられる。
【0037】
反応溶媒は使用する試薬により異なるが、−20から50℃、好ましくは0から10℃付近である。反応時間は用いる試薬の種類、当量により異なるが、30分から5時間好ましくは30分から1時間である。
【0038】
プンメラー型の反応に使用する酸無水物としては、無水トリフルオロ酢酸、無水酢酸などがあげられ、好ましくは無水トリフルオロ酢酸があげられる。また、使用する塩基としては、有機アミン系の塩基があげられ、好ましくはトリエチルアミン、ピリジン、メチルピペリジン、メチルモルホリンなどがあげられ、好ましくはトリエチルアミン、ピリジンがあげられる。反応溶媒としては、たとえば、塩素系の有機溶媒などがあげられ、好ましくは塩化メチレン、クロロホルムがさらに好ましくは塩化メチレンがあげられる。
【0039】
反応温度は用いる試薬により異なるが、−78℃から室温、好ましくは−20から0℃付近である。反応時間は用いる試薬の種類、当量により異なるが、30分から5時間好ましくは2から3時間である。
【0040】
次に得られた一般式(VIII)で示される化合物を有機金属試薬と反応し、一般式(IX)で示される化合物を得る。一般式(VIII)を得るまでの反応において、3位の水酸基の保護基が脱保護されている場合(式中のR1が水素原子である場合)には、有機金属試薬との反応に付す前に常法により水酸基の保護を行っていい。有機金属試薬としては、たとえば、各種グリニャール試薬、有機アルミニウム試薬、有機リチウム試薬などがあげられ、好ましくはグリニャール試薬さらに好ましくはメチルマグネシウムブロマイドがある。反応溶媒としては、非プロトン系溶媒があげられ、好ましくはエーテル系のテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンなどがあげられ、さらに好ましくはテトラヒドロフランがあげられる。
【0041】
反応温度は用いる試薬などにより異なるが、−20℃から50℃、好ましくは0から30℃であり、さらに好ましくは25℃である。反応時間は用いる試薬の種類、当量により異なるが、20から2時間好ましくは10から30分である。
【0042】
なお、本反応で生成するメチルメルカプタンは悪臭のため、取り扱いにくいが、過剰の金属試薬を分解後、反応系に次亜塩素酸塩を添加し、生成したメルカプタンを酸化する事により、悪臭を回避することができる。
【0043】
以上の方法により得られた一般式(IX)で示される化合物は、越智等の方法(特開昭53−71056号公報、J.Chem.Soc.Perkin I,161(1979)など)によりビタミンD誘導体へと導くことができる。
【0044】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0045】
【実施例1】
3α−ヒドロキシコラン酸メチルの合成
70lポリバット中でリトコール酸2.53kgをメタノール25lに懸濁し、攪拌下、塩化アセチル240mlを徐々に加えた。3時間20分攪拌後、水、25lを徐々に加えた。析出してきた結晶を18インチ遠心分離機で2分割して分離、50℃で通気乾燥して、標記化合物を2.68kg(収率102.5%)得た。
m.p.129℃(アセトニトリル).
IR(KBr)cm−1:3519,2933,2861,1722,1714,1302
1H−NMR(CDCl3)δ:3.66(3H,s,CO2Me),3.58−366(1H,m,H3),2.15−2.41(1H,m,H23),0.91(3H,s,H19),0.90(3H,d,H21,J20,21=5.3Hz),0.64(3H,S,H18)
【0046】
【実施例2】
3α−t−ブチルジメチルシリルオキシコラン酸メチルの合成
50l計装釜中3α−ヒドロキシコラン酸メチル2.68kgをジメチルホルムアミド13lに懸濁した。攪拌下、イミダゾール1.49kg,t−ブチルジメチルシリルクロリド1.65kgを順次加えた。30分後メタノール26lを30分で加えた。反応液をブラインで0℃以下(−4℃)まで冷却し晶析した。結晶を18インチ遠心分離機で分離、メタノール13lで洗浄、50℃で通気乾燥して、標記化合物2.85kg(収率82.8%)を得た。
m.p.94−95℃(アセトニトリル).
IR(KBr)cm−1:2935,2862,1734,1097.873,835
1H−NMR(CDCl3)δ:3.66(3H,s,CO2Me),3.5−3.7(1H,m,H3),2.20−2.35(1H,m,H23),0.91(3H,s,H19),0.90(3H,d,H21,J20,21=5.3Hz),0.89(9H,s,tBu),0.63(3H,S,H18),0.06(6H,s,SiMe2)
【0047】
【実施例3】
3α−t−ブチルジメチルシリルオキシコラン−24−オールの合成
50l計装釜中の3α−t−ブチルジメチルシリルオキシコラン酸メチル2.84kg、水素化ホウ素ナトリウム1.42kg、テトラヒドロフラン28lの混合物に加熱還下メタノール/テトラヒドロフラン(6.15l/10l)を1l/分の速さで滴下した。冷却後、水14lとn−ヘキサン14lを加え、有機層を分取した。得られた有機層を水7lで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮乾固した。濃縮残渣にメタノール14lを加えて懸濁し、更にアセトニトリル28lを加えて懸濁し、ブラインで−18℃に冷却した。結晶を14インチ遠心分離機で分離、50℃で通気乾燥して、標記化合物を2.23kg(収率83.3%)得た。
m.p.75℃(アセトニトリル).
IR(KBr)cm−1:3325,2926,2866,2862,1468,1448,1377,1053,1051,1016
1H−NMR(CDCl3)δ:3.5−3.7(3H,m,H3,24),0.90(3H,s,H19),0.89(3H,d,H21,J20,21=5.3Hz),0.89(9H,s,tBu),0.63(3H,S,H18),0.06(6H,s,SiMe2)
【0048】
【実施例4】
3α−t−ブチルジメチルシリルオキシコラン−24−イルヨージドの合成
3α−t−ブチルジメチルシリルオキシコラン−24−オール2.23Kg、トリフェニルホスフィン1.53kg、イミダゾール0.40kgを50l計装釜でジクロロメタン22.3lに溶解し、攪拌下、ヨウ素1.31kgを加えた。反応液を濾過後、濃縮乾固した。残渣をメタノーノレ22lで懸濁、結晶を14インチ遠心分離基で分離、50℃で通気乾燥して標記化合物2.63Kg(収率95.8%)を得た。
m.p.82−85℃(アセトニトリル).
IR(KBr)cm−1:2951,2924,2862,2854,1470,1464,1462,1373,1248,1097,1078,872,833,775
1H−NMR(CDCl3)δ:3.53−3.60(1H,m,H3),3.10−3.22(2H,m,H24),0.92(3H,s,H19),0.90(3H,d,H21,J20,21=7.3Hz),0.89(9H,s,tBu),0.63(3H,S,H18),0.06(6H,s,SiMe2)
【0049】
【実施例5】
3α−t−ブチルジメチルシリルオキシコラン−24−イルシアニドの合成
50l計装釜中で3α−t−ブチルジメチルシリルオキシコラン−24−イルヨージド2.00Kg、シアン化ナトリウム183.3g(純度95%以上)、ジメチルスルホキシド15l、テトラヒドロフラン5lの混合物を60℃、2時間攪拌した。冷却後反応液に、n−ヘキサン10l、水10lを加え液々分離した。分取した有機層を水10lで2回洗浄した。有機層を濃縮乾固しメタノール10lを加えて懸濁、結晶を18インチ遠心分離機で分離、50℃で通風乾燥して、標記化合物1.53Kg(収率95.4%)を得た。
m.p.148−149℃(アセトニトリル).
IR(KBr)cm−1:2929,2864,2243,1471,1462,1387,1383,1252,1176,1106,1101,1057,1007,953,931,901,874,837,775,668
1H−NMR(CDCl3)δ:3.53−3.59(1H,m,H3),2.30(2H,t,H24,J23,24=6.9Hz),0.88−0.93(15H,s,s,d,19,21,tBu),0.63(3H,S,H18),0.06(6H,s,SiMe2)
【0050】
【実施例6】
24−ホモリトコール酸エチルの合成
10lフラスコ中にエタノールを8l加え、氷水冷下、塩化水素ガス2.3kgを吹き込み、塩酸−エタノールを9.6l得た。こうして得られた塩酸−エタノール4.8lに3α−t−ブチルジメチルシリルオキシコラン−24−イルシアニド765gを加え10lフラスコ中で55分還流した。残りの塩酸−エタノール4.8lにも3α−t−ブチルジメチルシリルオキシコラン−24−イルシアニド765gを加え10lフラスコ中で55分還流した。反応液を合わせ濃縮した。濃縮残渣に酢酸エチル5l、テトラヒドロフラン2.5lを加えて溶解し、水、及び、重曹水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮乾固して、標記化合物1.52Kg(115%残留テトラヒドロフランを含む)を得た。
m.p.105−108℃(アセトニトリル).
IR(KBr)cm−1:3500,2980,2939,2864,2862,1707,1466,1464,1462,1377,1288,1257,1255
1H−NMR(CDCl3)δ:4.11(2H,q,−CO2CH2−,J=6.9Hz),3.54−3.65(1H,m,H3),2.17−2.28(2H,m,H24),0.90(3H,d,H21,J20,21=6.2Hz),0.90(3H,s,H19),0.62(3H,S,H18)
【0051】
【実施例7】
1,25−コプロスタンジオール
まず、メチルセリウムハライドを以下の方法で調整した。50l計装釜に、250℃、3時間予備乾燥し、細粉化した塩化セリウム(III)5.63kgを加え、アルゴン置換後、加熱(120℃)、攪拌下、エゼクターポンプで減圧(73mmHg)にした。アルゴン気流下常圧に戻し、放冷後、テトラヒドロフラン12lを加え、室温で1時間攪拌した。ブラインで−14℃まで冷却し、メチルマグネシウムブロミド(1mol/lテトラヒドロフラン溶液)を22.1l加え、1時間撹拌した。
次に24−ホモリトコール酸エチル1.52Kgのテトラヒドロフラン1.5l溶液を、メチルセリウムハライドの懸濁液中に1時間で添加した。反応液を塩化アンモニウム水溶液に展開した。有機層を分取、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮乾固した。残渣はn−ヘキサン7.51で懸濁、結晶を10インチ遠心分離機で分離、n−ヘキサン3.0lで洗浄、50℃で通気乾燥して、標記化合物1.17Kg(91.8%3α−t−ブチルジメチルシリルオキシコラン−24−イルシアニドより)得た。
m.p.180−182℃(アセトニトリル).
IR(KBr)cm−1:3346,2938,2866,2864,1468,1446,1381,1379,1151,1068,1039,945
1H−NMR(CDCl3)δ:3.58−3.63(1H,m,H3),0,92(3H,s,H19),0.91(3H,d,H21,J20,21=6.3Hz),0.64(3H,S,H18)
【0052】
【実施例8】
3α−t−ブチルジメチルシリルオキシコラン−24−イル(メチルチオ)メチル p−トリル スルホンの合成(化合物VII;R1がt−ブチルジメチルシリル基)
3α−t−ブチルジメチルシリルオキシコラン−24−イルヨージド2.60kg、MTスルホン 1.04kg、50%−水素化ナトリウム 0.52kgをジメチルイミタゾリジノン 26lに懸濁し、50℃で1時間攪拌した。反応液を10℃に冷却し、水 50lにゆっくりと展開した。析出した結晶を分離し、メタノール 16lに室温で2時間懸濁後、分離した。50℃で乾燥し標記化合物 3.35kg(定量的)を得た。
1H−NMR(CDCl3)d:7.77(2H,d),7.29(2H,d),3.5−3.8(1H,m),3.55(1H,dd),2.40(3H,s),2.17(1H,s),0.83(9H,s),0.05(6H,s)
【0053】
【実施例9】
3α−オキシコラン−24−イル メチル ケトン(化合物VIII;R5がメチル基、R1が水素原子)の合成
3α−t−ブチルジメチルシリルオキシコラン−24−イル(メチルチオ)メチル スルホン 500g、トシル酸メチル 276g、50%−水素化ナトリウム 89gをジメチルイミタゾリジノン 2.5lに懸濁し、50℃で15分間攪拌した。反応液を室温に冷却し、水 10lにゆっくりと展開した。析出した結晶を分離した。得られた結晶を濃塩酸 0.2lとメタノール 1.8lの混合物に加え、60℃で2時間加熱した。減圧でメタノールを留去後、水 0.8lを加え析出した結晶を分離した。さらに得られた結晶をヘキサン 1.0lで洗浄し、50℃で真空乾燥し標記化合物 230g(80%)を得た。
1H−NMR(CDCl3)d:3.62(1H,m),2.38(2H,m),2.13(3H,s),0.92(6H,s),0.63(3H,s),0.05(6H,s)
【0054】
【実施例10】
1,25−コプロスタンジオール(化合物IX;R1が水素原子、R6,R7がメチル基)の合成
1M−メチルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液 5lを窒素雰囲気下、−10℃に冷却し、オキシコラン−24−イル メチル ケトン 336gのテトラヒドロフラン溶液 2lを5分間かけて添加した。40分間同温度で攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液 2lを加え、過剰の試薬を分解した。酢酸エチル7lで抽出し、有機層を6N−塩酸、飽和食塩水で順次洗浄する。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル、ヘキサンで結晶化し、標記化合物 236g(71%)を得た。
【0055】
【実施例11】
3α−t−ブチルジメチルシリル−24−ホモリトコール酸チオメチルエステル(化合物VIII;R1がt−ブチルジメチルシリル基、R5がメチルチオ基)の合成
3α−t−ブチルジメチルシリルオキシコラン−24−イル(メチルチオ)メチル スルホン 1.07kgを塩化メチレン 5.5lに溶解し、0℃にて60%−メタクロロ過安息香酸 457gを添加した。同温度で30分間反応後、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 2lを加え、更に亜硫酸ナトリウム 142gを加え、過剰の試薬を分解した。水層を分離し、有機層を水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、スルホキシドの塩化メチレン溶液を得た。窒素雰囲気下、この溶液にピリジン 1.26kgを加え、−15℃に冷却した。無水トリフルオロ酢酸 1.24kgを10分間かけて滴下し同温度で30分反応した。水 4l、2N−塩酸 2.5lを添加し、水層を分離した。有機層を水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、塩化メチレンを留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、標記化合物 411g(48%)を得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:3.5−3.7(1H,m),3.4−2.6(2H,m),2.28(3H,s),0.88(9H,s),0.62(3H,s),0.05(6H,s)
【0056】
【実施例12】
1,25−コプロスタンジオール(化合物IX;R1が水素原子、R6,R7がメチル基))の合成
1M−メチルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液 9.2lを窒素雰囲気下、6℃に冷却し、 3α−t−ブチルジメチルシリル−24−ホモリトコール酸チオメチルエステル 410gのテトラヒドロフラン溶液 2lを5分間かけて添加した。23℃で3時間攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液 7.7lを加えた。さらに次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度5%) 2lを加え、生成したメチルメルカプタンを酸化した。酢酸エチル 15lで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄する。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。残渣を1M−テトラブチルアンモニウムフロリドのテトラヒドロフラン溶液 1.6lに溶解し、60℃で4時間反応した。酢酸エチル 8lを加え、有機層を水洗し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。析出した結晶を酢酸エチル 400mlで洗浄し、50℃で乾燥し、標記化合物 262g(80%)を得た。
【0057】
【発明の効果】
本発明の方法は、比較的安価なリトコール酸を出発原料とした医薬として有用なビタミンDの製造中間体であるコプロスタンジオールの製造方法であり、反応が収率よく進行し、かつ結晶化などによる簡便な精製が可能である、大量合成に適した製造方法である。
Claims (7)
- 一般式(V)で示される化合物に有機金属試薬を作用させて、一般式(IX)
で示される化合物に変換する工程を含む、請求項2記載の方法。 - R1が水素原子または3置換されたシリル基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- R1が水素原子、t−ブチルジフェニルシリル基またはt−ブチルジメチルシリル基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- R6,R7がメチル基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
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