JP3775941B2 - 杭 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一方の杭端部に筒部を設けるとともに、他方の杭端部に軸部を設けて、杭軸芯方向で隣り合う杭の前記筒部と前記軸部とを互いに抜け止め状態で接続自在に構成してある杭の接続構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記杭の接続構造は、所望長さで地中に埋設できるように、杭端部に筒部と軸部とを設けて、杭軸芯方向で隣り合う杭の筒部と軸部とを互いに抜け止め状態で接続できるようにしたものであるが、従来、雌ネジ部を形成してある筒部内周面を備えた筒部と、雄ネジ部を形成してある軸部外周面を備えた軸部とを設け、筒部と軸部とを螺合嵌合させて、隣り合う杭どうしを互いに抜け止め状態で接続できるようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の杭の接続構造によれば、杭どうしを相対回転させながら徐々に近接移動させて筒部と軸部とを螺合する必要があるので、杭どうしの接続作業に多大な手間を要し、その上、杭自体が大型で重量物であるような場合には、螺合中に雄ネジ部と雌ネジ部の間でこじれが生じ易く、その接続作業に一層手間がかかるので、作業コストが高くなり易い欠点がある。
また、一旦接続した杭どうしの接続を解除することは、特に考えられておらず、杭が所定の位置迄入らずに杭穴を再ボーリングする為、一旦接続した杭の接続を解除する必要が生じた場合、前記の杭の接続構造によれば、杭どうしを相対回転させながら徐々に離間させて筒部と軸部の螺合を解除する必要があるので、杭どうしの解除作業に多大な手間を要し、作業性が悪いものであった。
【0004】
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであって、接続作業に多大な手間をかけずに作業コストを安くできるようにしながら、杭どうしを確実に抜け止め状態で接続できると共に、一旦接続した杭どうしの接続を解除する解除作業が容易な杭を提供するところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の特徴構成は、一方の杭端部に筒部を設けるとともに、他方の杭端部に軸部を設けて、杭軸芯方向で隣り合う杭の前記筒部と前記軸部とを互いに抜け止め状態で接続自在に構成してある杭であって、前記筒部の筒部内周面部を杭端側ほど大径のテーパー面で形成するとともに、前記軸部の軸部外周面部を杭端側ほど小径のテーパー面で形成して、前記隣り合う杭の前記筒部と前記軸部とを嵌合自在に構成し、前記筒部内周面部に、周方向に沿う内向き溝部を形成するとともに、前記軸部外周面部に周方向に沿う外向き溝部を、その軸部外周面部に嵌合した前記筒部内周面部の前記内向き溝部に対向するように形成し、前記内向き溝部と前記外向き溝部とに跨る状態にCリング形状の弾性リングキーを嵌入して、前記筒部と前記軸部とを抜け止め状態に係合して接続した隣り合う杭に対して、前記筒部の筒部外周面から前記内向き溝部内に内外連通する貫通孔を複数設けるとともに、前記弾性リングキーとは別体のキー押し込み操作部材を前記貫通孔に挿通させ、前記キー押し込み操作部材の先端を前記弾性リングキーに当接させて、前記筒部外周面から前記外向き溝部側に向けて前記弾性リングキーを押し込み操作することによって、前記弾性リングキーによる係合状態を解除し、前記嵌合した隣り合う杭の前記筒部と前記軸部との接続を解除自在に構成してあるところにある。
【0006】
〔作用及び効果〕
請求項1の発明の特徴構成によれば、前記筒部の筒部内周面部を杭端側ほど大径のテーパー面で形成するとともに、前記軸部の軸部外周面部を杭端側ほど小径のテーパー面で形成して、前記隣り合う杭の前記筒部と前記軸部とを嵌合自在に構成し、前記筒部内周面部に、周方向に沿う内向き溝部を形成するとともに、前記軸部外周面部に周方向に沿う外向き溝部を、その軸部外周面部に嵌合した前記筒部内周面部の前記内向き溝部に対向するように形成し、前記内向き溝部と前記外向き溝部とに跨る状態にCリング形状の弾性リングキーを嵌入して、前記筒部と前記軸部とを抜け止め状態に係合して接続した隣り合う杭に対して、前記筒部の筒部外周面から前記内向き溝部内に内外連通する貫通孔を複数設けるとともに、前記弾性リングキーとは別体のキー押し込み操作部材を前記貫通孔に挿通させ、前記キー押し込み操作部材の先端を前記弾性リングキーに当接させて、前記筒部外周面から前記外向き溝部側に向けて前記弾性リングキーを押し込み操作することによって、前記弾性リングキーによる係合状態を解除し、前記嵌合した隣り合う杭の前記筒部と前記軸部との接続を解除自在に構成してあるから、接続作業に手間がかからず杭どうしを確実に抜け止め状態で接続できると共に、一旦接続した杭どうしの接続を解除する解除作業が容易である。
つまり、杭同士を嵌合させる際、前記軸部の前記外向き溝部内に取り付けた前記弾性リングキーが、筒部内周面部に設けた前記テーパー面との接当により縮径誘導されて前記外向き溝部内に押し込まれ、前記内向き溝部が対向する位置にきたときに前記外向き溝部と前記内向き溝部とに跨る状態に前記弾性リングキーが嵌入して、前記筒部と前記軸部とを抜け止め状態に接続することができる。
そして、貫通孔に挿通させたキー押し込み操作部材により前記内向き溝部と前記外向き溝部とに跨って嵌入係合している前記弾性リングキーを、外向き溝部内に押し込んで、前記弾性リングキーによる係合状態を解除することで前記筒部と前記軸部との接続を解除することができる。
その結果、杭同士の接続が、筒部に軸部を嵌合させる操作だけで杭同士を確実に抜け止め状態で接続できるので、接続作業に多大な手間をかけずに作業コストを安くできると共に、一旦接続した杭同士の接続を解除する解除作業が容易な杭を提供することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、一方の杭端部に円筒状の筒部21を設けるとともに、他方の杭端部に小径円筒状の軸部11を設けて、杭軸芯X方向で隣り合う杭Aの筒部21と軸部11とを互いに抜け止め状態で接続自在に構成してある地滑り抑止用の杭Aを示し、この杭Aをクレーン等で吊り下げて、必要数の杭Aどうしを接続しながら、地盤に予め掘削した縦孔に挿入し、中空部E及び杭外周部にコンクリート等の充填材を充填して、地盤を補強できるようにしてある。
【0008】
図1に示すように、本発明の杭Aは、遠心鋳造法で鋳造した円筒状の鋳鋼管1の一方の端部に、筒部21を備えた第一鋳鋼管ボックス継手4を溶接接続すると共に、鋳鋼管1の他方の端部に、軸部11を備えた第二鋳鋼管ボックス継手5を溶接接続して、全長に亘って略一定の外径を備えた円筒状に形成してあり、第1鋳鋼管ボックス継手4を上側に向けて地中に埋設するように構成し、前記軸部11の外周面に複数(本実施例では3段)の環状の外向き溝部12を設けると共に、前記筒部21の内周面に複数(本実施例では3段)の環状の内向き溝部22を設け、夫々の前記外向き溝部内に進退自在に取り付けた複数(本実施例では3つ)のキー部材を、前記筒部21と前記軸部11との嵌合操作に伴って、前記内向き溝部22と前記外向き溝部12とに跨る状態に嵌入し、互いに嵌合した隣り合う杭Aの前記筒部22と前記軸部11とを抜け止め状態で接続自在に構成してある。
【0009】
また、前記第一、第二鋳鋼管ボックス継手4,5を構成する鋼は、いずれも鋳鋼管1を形成する鋼よりも高強度に構成してある。
【0010】
尚、本発明にいうキー部材3の「巾」とは、そのキー部材3を径方向に縦断したときの径方向の長さであり、また、「厚さ」は、キー部材3の軸心方向の長さを指す。また、各溝部12,22の「巾」とは、各杭Aの軸心方向に見た入り口12a、22aが開口している距離であり、「深さ」とは、各杭Aに対して径方向に引退する距離を指すものとする。
【0011】
杭の接続操作について図2、3に示す手順に従って説明する。
(1)予め、図2(イ)、図3(イ)に示すように、鋳鋼管1の一方の端部に、軸部11を備えた第二鋳鋼管ボックス継手5を溶接接続するとともに、鋳鋼管1の他方の端部に、筒部21を備えた第一鋳鋼管継手4を溶接接続し、前記軸部11の軸部外周面部13に環状の外向き溝部12を設けるとともに、前記筒部21の筒部内周面部23に環状の内向き溝部22を設け、自然状態で内径が前記外向き溝部12の入り口12aの径よりも小さく、かつ、外径が前記内向き溝部22の入り口22aの径よりも大きな、バネ材からなるCリング形状の弾性リングキー31(キー部材3の一例)の各々を夫々の前記外向き溝部12内に嵌入して取り付ける。
尚、前記の各外向き溝部12の深さは、前記弾性リングキー31の巾よりも大に形成しておくとともに、前記内向き溝部22の深さは、前記弾性リングキー31の巾よりも小に形成しておく。
(2)杭A同士の嵌合操作に伴って、前記軸部11の前記外向き溝部12内に取り付けた前記弾性リングキー31が、テーパー面に形成してある筒部内周面部23との接当によって縮径誘導されて前記外向き溝部12内に押し込まれる。(図2(ロ)、図3(イ)参照)
(3)前記内向き溝部22が対向する位置にきたときに前記外向き溝部12と前記内向き溝部22とに跨る状態に前記弾性リングキー31が嵌入して、前記筒部21と前記軸部11とが互いに係合連結された状態になる。(図2(ハ)、図3(ロ)参照)
【0012】
次に、杭の接続解除操作について説明する。
ボーリングした杭穴がくずれ、杭Aが所定の位置に入らず再ボーリングする為、杭Aを引上げて一旦接続した杭A同士の接続を解除する必要が生じた場合、図4(イ)に示すように、前記軸部11の前記外向き溝部12と前記筒部21の前記内向き溝部22とに跨る状態に嵌入して前記軸部11と前記筒部21を互いに係合連結している前記弾性リングキー31に対して、図4(ロ)に示すように、前記筒部21の筒部外周面24から前記内向き溝部22内に内外連通する状態に設けた複数の貫通孔16に前記弾性リングキー31とは別体のボルト17(キー押し込み操作部材Sの一例)を挿通させ、そのボルト17の先端を前記弾性リングキー31に当接させて押し込み操作することで前記外向き溝部12内に押し込む。そして、図4(ハ)に示すように、前記弾性リングキー31による前記軸部11と前記筒部21との係合状態が解除された状態のままで上側の杭Aを上方へ吊り上げることにより杭A同士の接続状態が解除される。
尚、図中18は、前記ボルト17を螺進操作させるための操作部(例えば、6角穴やドライバ用の溝等)である。
【0013】
〔別実施形態〕
以下に他の実施形態を説明する。
〈1〉内向き溝部及び外向き溝部は先の実施形態で説明した3段のものに限るものではなく、ともに1段以上であれば良く、その数は任意である。
〈2〉弾性リングキーの数は先の実施形態で説明した3つのものに限るものではなく、前記両溝部と同じく1つ以上あれば良く、その数は任意である。
〈3〉キー押し込み操作部材の数及び貫通孔の数は先の実施形態で説明した3つのものに限らず、弾性リングキーを外向き溝部内に押し込んで弾性リングキーの係合状態を解除できるなら、その数は任意である。
〈4〉キー押し込み操作部材は、先の実施形態で説明したボルトによるものに限るものではなく、ピンであっても良い。要するに、外部から弾性リングキーを外向き溝部内に押し込んで弾性リングキーの係合状態を解除できる構成であれば形状は任意である。また、予めキー押し込み操作部材の長さを設定しておけば弾性リングキーの押し込みが足らないといった問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による杭の一部断面側面図
【図2】本発明の一実施形態による杭の接続作用を説明する縦断面図
【図3】本発明の一実施形態による杭の接続作用を説明する横断面図
【図4】本発明の一実施形態による杭の接続解除作用を説明する要部拡大断面図
【符号の説明】
11 軸部
12 外向き溝部
13 軸部外周面部
16 貫通孔
21 筒部
22 内向き溝部
23 筒部内周面部
24 筒部外周面
31 弾性リングキー
A 杭
S キー押し込み操作部材
X 杭軸芯
Claims (1)
- 一方の杭端部に筒部(21)を設けるとともに、他方の杭端部に軸部(11)を設けて、杭軸芯(X)方向で隣り合う杭(A)の前記筒部(21)と前記軸部(11)とを互いに抜け止め状態で接続自在に構成してある杭(A)であって、前記筒部(21)の筒部内周面部(23)を杭端側ほど大径のテーパー面で形成するとともに、前記軸部(11)の軸部外周面部(13)を杭端側ほど小径のテーパー面で形成して、前記隣り合う杭(A)の前記筒部(21)と前記軸部(11)とを嵌合自在に構成し、前記筒部内周面部(23)に、周方向に沿う内向き溝部(22)を形成するとともに、前記軸部外周面部(13)に周方向に沿う外向き溝部(12)を、その軸部外周面部(13)に嵌合した前記筒部内周面部(23)の前記内向き溝部(22)に対向するように形成し、前記内向き溝部(22)と前記外向き溝部(12)とに跨る状態にCリング形状の弾性リングキー(31)を嵌入して、前記筒部(21)と前記軸部(11)とを抜け止め状態に係合して接続した隣り合う杭(A)に対して、前記筒部(21)の筒部外周面(24)から前記内向き溝部(22)内に内外連通する貫通孔(16)を複数設けるとともに、前記弾性リングキー(31)とは別体のキー押し込み操作部材(S)を前記貫通孔(16)に挿通させ、前記キー押し込み操作部材(S)の先端を前記弾性リングキー(31)に当接させて、前記筒部外周面(24)から前記外向き溝部(12)側に向けて前記弾性リングキー(31)を押し込み操作することによって、前記弾性リングキー(31)による係合状態を解除し、前記嵌合した隣り合う杭(A)の前記筒部(21)と前記軸部(11)との接続を解除自在に構成してある杭。
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