JP7432931B2 - リングを用いた連結機構付き鋼管、その連結体、および、施工方法 - Google Patents

リングを用いた連結機構付き鋼管、その連結体、および、施工方法 Download PDF

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Description

本発明は、トンネル工事等において、地山の補強のために地山に打ち込まれる鋼管に関する。
トンネル工事においては、掘削されたトンネルの周壁部の地山を補強するために、トンネルの周壁部に複数の鋼管を削孔装置によって所定の間隔で打ち込むNATM(New Austrian Tunneling Method)工法が知られている。鋼管の打ち込み後、必要に応じて、鋼管を通して硬化剤が地山へ注入される。NATM法に用いられる鋼管は、3メートル程度の長さであるが、地山の補強に必要な長さは、3メートルよりも長いため、鋼管を1本打ち込むたびに、後端に新たな鋼管を連結し、再び打ち込むという動作を繰り返す。
鋼管の同士を接続する構造としては、鋼管の一端の内周面に雌ねじが刻まれ、他端の外周に雄ねじが刻まれたものを用い、1本目の鋼管の後端の雄ねじに2本目の鋼管の先端の雌ねじを螺合させることにより連結する構造が主流である(特許文献1参照)。
また、特許文献2に開示されている鋼管は、後端の外周面に環状溝が設けられ、C字形のリングがはめ込まれている。前端の内径は、後端の外径より大きく、内周面に環状溝が設けられている。1本目の鋼管の後端部に、2本目の鋼管の前端部を嵌合すると、1本目の鋼管の後端部のC字型リングが、2本目の鋼管の環状溝に係合する。
鋼管を地山に打ち込む削岩機は、特許文献1および2に記載されているように、先端にビットと呼ばれる削孔工具が取り付けられたロッドを、鋼管の内部に軸方向に通し、鋼管の先端からビットを突出させた状態で、ロッドに打撃力と推進力を与える構造である。このとき、鋼管をロッドとともに進めるために、特許文献2に記載されているように、鋼管の後端を押す構造の装置と、特許文献1に記載されているように鋼管の先端をビット近傍に装着し、鋼管の先端を引っ張ることで鋼管を進める構造の装置とがある。
特開2019-203362号公報 特開平9-42239号公報
特許文献1に記載された鋼管のように、一方の鋼管の端部の内周面に雌ねじが刻まれ、他方の鋼管の端部の外周面に雄ねじが刻まれ、2本の鋼管を螺合させて連結する鋼管構造は、長さ約3m、外径約10cmの鋼管2本の軸芯を位置合わせし、少なくとも一方の鋼管の全体を回転させながらねじ込む必要がある。そのため、軸心合わせとねじ込む労力が必要であり、作業者の大きな負担になる。
一方、特許文献2のように、一方の鋼管の端部の外周面に設けたC字型リングを、他方の鋼管の端部の内周面に設けた環状溝と嵌合させることにより連結する構造は、一方の鋼管を軸方向に移動させて押し込むだけでよいため、連結の作業は比較的容易である。この鋼管を地山に打ち込む削岩機として、特許文献2では、ロッドの後端と鋼管の後端とを押しながら進む装置が用いられている。そのため、後ろ側の鋼管が前の鋼管に削岩機によって押し付けられ、鋼管の連結部に離脱方向の力は作用せず、地山への打ち込み中に、鋼管の連結部が外れることを防いでいる。このことは、特許文献2の段落「0018」にも記載されている。
しかしながら近年、削岩機としては、特許文献1のように、鋼管の先端近傍にビットを装着して削孔を進める装置が用いられている。この削岩機の場合、2本目以降の鋼管は、1本目の鋼管に引っ張られながら進むため、鋼管の連結部には、連結部を離脱させる方向の力が作用する。
発明者らの実験によれば、特許文献1のように鋼管の先端近傍にビットを装着して、鋼管を引っ張りながら削孔していく装置に、特許文献2のC字型リングを環状溝に係合させる連結構造の鋼管を用いた場合、連結部の引張強度不足のため、連結部が外れてしまうという問題が発生することが分かった。
本発明の目的は、2本の鋼管の端部を容易に連結でき、かつ、連結強度が大きく、鋼管の先端近傍に削岩機のビットを装着して削孔を進める工法に好適な鋼管を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の地山補強用鋼管は、鋼管本体と、同形状の第2の鋼管と連結するために鋼管本体の一端に設けられたソケット部および他端に設けられた差し込み部とを有する。ソケット部および差し込み部は、鋼管本体と同軸の円筒であり、ソケット部の内径は、差し込み部の外径以上である。ソケット部の内周面は、周方向に2以上の第1溝が設けられている。差し込み部の外周面には、周方向に2以上の第2溝が設けられ、第2溝内にはそれぞれ、一部が切り欠かれたC字型のリングが、差し込み部の外周面から少なくも一部が突出するように配置されている。差し込み部に、同形状の第2の鋼管のソケット部をかぶせて軸方向に押した場合、差し込み部のリングが、第2の鋼管のソケット部の第1溝に係合する。
鋼管本体の外径との関係では、例えば、ソケット部の外径を鋼管本体の外径よりも大きくする態様1と、差し込み部30の外径を鋼管本体の径よりも小さする態様2とを取ることができる。
本発明によれば、鋼管本体の端部に、外径が鋼管本体の外径よりも大きいソケット部を設けたことにより(態様1)、差し込み部の外径を鋼管本体と同等にすることが可能になり、C字型のリングを配置する第2溝の下の管の厚みを大きくできる。よって、鋼管同士の連結が容易な構造でありながら、連結部の強度を高めることができ、鋼管の先端近傍に削岩機のビットを装着して削孔を進める工法に好適な鋼管を提供することができる。また本発明によれば、差し込み部の外径を鋼管本体の径よりも小さくすることにより(態様2)、鋼管の連結部の外周面に段差をなくすことができ、地山補強用として用いた場合には、地山への打ち込み作業を円滑に行うことができる。
実施形態1のリングを用いた連結機構付き鋼管の正面図。 実施形態1のリングを用いた連結機構付き鋼管の左側面図。 実施形態1のリングを用いた連結機構付き鋼管の右側面図。 実施形態1のリングを用いた連結機構付き鋼管の軸方向の断面図。 実施形態1のリングを用いた連結機構付き鋼管の(a)ソケット部10の軸方向の断面図、(b)差し込み部30の軸方向の断面図。 実施形態1のリングを用いた連結機構付き鋼管を2本連結した場合の連結部の軸方向の断面図。 実施形態1のリングを用いた連結機構付き鋼管を位置合わせして連結する状態を示す軸方向の断面図。 (a)実施形態1のリングを用いた連結機構付き鋼管を連結した連結部の軸方向の拡大断面図、(b)比較例1の鋼管を連結した連結部の軸方向の拡大断面図。 実施形態2のリングを用いた連結機構付き鋼管の軸方向の断面図。 実施形態2のリングを用いた連結機構付き鋼管の連結状態を示す軸 実施形態1の鋼管を地山に打ち込む工法を説明する図。 実施形態1の鋼管を地山に打ち込む工法で用いる押し治具84の(a)正面図、(b)側面図。 実施形態1の鋼管を地山に打ち込む工法で用いる押し治具88の(a)側面図、(b)断面図。 実施例と比較例1,2の鋼管の連結体の引張強度を示すグラフ。 実施例と比較例1,2の鋼管の連結体の曲げ強度を示すグラフ。方向の断面図。
本発明の一実施形態のリングを用いた連結機構付き鋼管について図面を用いて以下に説明する。
<実施形態1>
図1は、リングを用いた連結機構付き鋼管の正面図であり、図2および図3は、左側面図および右側面図であり、図4および図5(a)、(b)は、軸方向に沿った断面図である。図6、図7および図8(a)は、2本の鋼管を連結した連結部の拡大図である。
図1に示すように、本実施形態の鋼管は、鋼管本体20と、鋼管本体20の一端に設けられたソケット部10と、他端に設けられた差し込み部30とを備えて構成される。図6のように、ソケット部10と、差し込み部30は、同形状の第2の鋼管と連結するために設けられている。
ソケット部10および差し込み部30は、図2および図3に示すように、鋼管本体20と同軸の円筒であり、ソケット部10の外径は、鋼管本体20の外径よりも大きく、ソケット部10の内径は、差し込み部30の外径以上である。
このように、鋼管本体20よりも外径の大きなソケット部10を設けたことにより、差し込み部30の外径を鋼管本体20の外径とほぼ同等にした場合であっても、差し込み部30をソケット部10に挿入して連結することができる。
ソケット部10の内周面には、図4および図5に示すように、周方向に2以上の第1溝11が設けられている。
一方、差し込み部30の外周面には、周方向に2以上の第2溝31が設けられている。第2溝31内にはそれぞれ、C字型のリング32が、差し込み部の外周面33から少なくも一部が突出するように配置されている(図1、図4および図5参照)。C字型のリング32は、一部が切り欠かれているため、ばね部材として作用する。リング32の材質は、差し込み部30およびソケット部10の材質よりも硬いものであることが望ましい。
したがって、図7に示すように、第1の鋼管100-1の差し込み部30に、同形状の第2の鋼管100-2のソケット部10を、軸を合わせながらかぶせて軸方向に押した場合、差し込み部30の2本のリング32は、第2の鋼管100-2の内周面によって第2溝31の内側に押し込まれ、第2の鋼管100-2のソケット部10の第1溝11がリング32の位置に到達すると、リング32が差し込み部30の外周面33から突出し、第1溝11に係合する。
これにより、図6のように、第1の鋼管100-1の差し込み部30と、第2の鋼管100-2のソケット部10とを軸合わせして押し込む動作により容易に2本の鋼管100-1、100-2を連結することができる。
また、ソケット部10の端部16の内周面に図4のように傾斜面12を設け、ソケット部10の端部16における内径を広げておくことにより、連結時の軸合わせに傾斜面12の高低差分の誤差があっても、ソケット部10を差し込み部30に被せることができ、位置合わせの許容度を広げることができる。
また、本実施形態では、ソケット部10を設け、ソケット部10の外径は、鋼管本体20の外径よりも大きくしているため、差し込み部30の外径を鋼管本体20の外径と同等程度にすることが可能である。これにより、溝31の下の管の厚さ(肉厚)T31を、比較例(図8(b))のようにソケット部を設けず、一方の端部の外周面を削り、他方の端部の内周面を削って連結する構成(特許文献2参照)の溝131の下の厚さ(肉厚)T131よりも厚くすることができる。
これにより、鋼管100-1,100-2の連結部の引張および曲げ強度を、比較例(図8(b))よりも大きくすることができる。引張および曲げ強度について、後で詳しく説明する。
また、本実施形態では、図4に示したように、ソケット部10は、鋼管本体20とは別部材により構成している。ソケット部10の鋼管本体20側の端部の内周面には、雌ねじを設けている。一方、鋼管本体20のソケット部10側の端部の外周面には、雄ねじを設けている。ソケット部10の雌ねじと鋼管本体20の雄ねじを螺合させることにより、ソケット部10は、鋼管本体20に固定されている。なお、ソケット部10の鋼管本体20への固定方法は、ねじによる固定に限られるものではなく、溶接等の他の固定方法を用いることも可能である。
このように、ソケット部10を鋼管本体20とは別部材にすることにより、鋼管本体20よりも外径の大きいソケット部10の製造を容易にすることができる。
リング32と第1溝11と第2溝31の形状について、図8(a)を用いてさらに詳細に説明する。
リング32は、軸方向の断面形状がくさび形であり、鋼管本体20に近い側の端面34が、差し込み部30の端部36に近い側の端面35よりも厚い。
また、端面34は、差し込み部30の中心軸に対して垂直な面である。しかも、リング32の端面34側の端部の上面は、力がリング32に加わっていない状態で、第2溝31から外周面33上に突出するように構成されている。
ソケット部10の第1溝11は、ソケット部10の端部16に近い側の底面13が、鋼管本体20に近い側の底面14よりも深くなるように形成されている。
また、ソケット部10の第1溝11のソケット部10の端部16に近い側の側面15は、ソケット部10の中心軸に対して垂直な面である。
これにより、第1の鋼管100-1の差し込み部30に、同形状の第2の鋼管のソケット部10を被せて連結して、第1の鋼管100ー1を第2の鋼管100-2を引っ張る方向に移動させた場合、第2の鋼管100-2のソケット部10の第1溝11の先端側の側面15が、くさび形のリング32の鋼管本体20に近い側の端面34と接触する。これにより、第2の鋼管100-2は、第1溝11の側面15とくさび型のリング32の端面34とが係合する。第1の鋼管100-1が第2の鋼管100ー2を引っ張る方向に移動すると、側面15がリング32の端面34に引っかかることにより、第1の鋼管100ー1の移動に伴い第2の鋼管100-2も移動する。
このとき、リング32が2本配置されているため、2つの端面34で力を分散して第2の鋼管100-2に伝達でき、連結部の引張強度を高めている。
また、ソケット部10の第1溝11は、ソケット部10の端部16に近い側の底面13が、1段深く掘り下げされている。これにより、垂直な側面15の面積を広く確保することができ、リング32の端面34との接触面積を広くし、係合を確実にしている。
さらに、差し込み部30の第2溝31の底面は、差し込み部30の端部36に近い領域37が傾斜している。これにより、第2溝31の差し込み部30の端部36に近い側を鋼管本体20に近い側の底面よりも浅くしている。
このように底面が傾斜した領域37を設けたことにより、第1の鋼管100-1が第2の鋼管100-2を引っ張る方向に移動した場合、くさび形のリング32の端面34に、第1溝11の側面15が係合し、くさび側のリング32を傾斜した領域37に押し付ける方向の力を加える。この際、傾斜した領域37に沿ってくさび形のリング32は移動し、上方(外周面33から突出する方向)に持ち上げられるため、くさび形のリング32の端面34が、第2溝31からさらに上方に突出し、第1溝11の側面15との接触面積が大きくなる。よって、第1の鋼管100-1と第2の鋼管100-2との接合を強めることができる。
また、図8(a)に示すように、ソケット部10の内周面には、第2の鋼管100-1の差し込み部30を差し込んだ場合、差し込み部30の端部36が突き当たる段差部17が設けられている。ソケット部10の内周面の段差部17と第1溝11との間の領域18a、2つの第1溝11の間の領域18b、および、第1溝11と端部16との間であって第1溝11に隣接する領域18cは、差し込まれた差し込み部30のそれぞれ対応する領域38a,38b,38cとのクリアランス(隙間)が0.5mm以下に設計されている。
このように、領域18と領域38とのクリアランスを0.5mm以下にすることにより、第1の鋼管100-1の差し込み部30に、第2の鋼管100-2のソケット部10をかぶせる際に、軸が完全に一致しておらず、曲がった状態でソケット部10が差し込み部30に被せられた場合でも、領域18と領域38が接触することにより、軸を一致させるガイドとして作用する。これにより、第1の鋼管100-1の差し込み部30と、第2の鋼管100-2のソケット部10の領域18と領域38のクリアランスが0.5mm以下ではない場合と比較して、容易に連結することができる。
上述してきたように、本実施形態のリングを用いた連結機構付き鋼管は、2本の鋼管の端部を容易に連結でき、かつ、連結強度が大きいため、鋼管の先端近傍に削岩機のビットを装着して削孔を進める工法に好適である。
<実施形態2>
実施形態1のリングを用いた連結機構付き鋼管は、図4及び図6に示したように、ソケット部10の外径を鋼管本体の外径よりも大きいものとし、これにより鋼管の内径が一様である構成としてが、本実施形態は、差し込み部30の径(外径及び内径)を鋼管本体の径よりも小さくして、鋼管本体端部に形成したソケット部10に、同形状の鋼管の差し込み部30を連結する構成としたものである。
本実施形態の連結機構付き鋼管の軸方向に沿った断面図を図9に示す。図9に示すように、鋼管100-1の一端部は、鋼管自体の厚みは一定のまま縮径した縮径部が形成されており、径が一定となる端部に差し込み部30が形成されている。差し込み部30の外周面の構造は、実施形態1と同様であり、外周面に、周方向の溝(第2溝)31が2以上形成されている。この第2溝31には、それぞれ、C型リング(図9では図示省略)が配置されている。
一方、鋼管100-1の他端部(図9では、鋼管100-1と連結される同形状の鋼管100-2の他端部)には、差し込み部30が差し込まれるソケット部10が形成されている。ソケット部10の内周面には、実施形態1と同様に、2以上の溝(第1溝)11が形成されており、端部に傾斜面が形成され、端部における内径が広げられている。溝11と傾斜面を除くソケット部10の内径は、差し込み部30の外径(溝31が形成されている部分以外の外径)と同じかわずかなクリアランスを持つ程度に大きく、傾斜面から他の鋼管の差し込み部30をソケット部10に差し込むことができる。
ソケット部10に他の鋼管の差し込み部30を差し込んだ時に、その第2溝31に嵌合しているC型リングが第1溝11と係合し、両鋼管を連結することは実施形態1と同様である。2本の鋼管が連結された状態では、図10に示すように、2本の鋼管の連結部において、ほぼ外径の変化はなくなり、且つ内周面についても、なめらかな径の変化はあるが大きな段差がないので、後述する地山補強用として連結しながら地山に打ち込んでいくときに、抵抗なく打ち込み作業を行うことができる。
本実施形態においても、実施形態1と同様に、2以上の鋼管の連結が容易で且つ連結強度の高い連結機構付き鋼管が提供される。また本実施形態によれば、鋼管の連結部の段差がないことから、地山への打ち込み作業をより円滑に行うことができる。
以下、地山75に鋼管100を打ち込む工法の一例について図11を用いて説明する。
まず、1本目の鋼管100-1の先端近傍に、削岩機のビットを装着する。鋼管100-1を地山75の打設箇所近傍(ここでは切羽75a)に設置された削岩機のガイドシェル81にセットする。ガイドシェル81には、鋼管の芯を掘削方向に合致させるために一対の鋼管受治具(セントラライザー/サブセントラライザー)82が設けられ、その後方にドリフタ80(ビットの駆動源)が搭載されている。ドリフタ80にロッド70-1を連結し、ロッド70-1を鋼管100-1に挿入し、ロッド70-1の先端を1本目の鋼管100-1に固定されたビットに接続する。ロッド70-1は、鋼管100-1と同程度の長さのものを用いる。ロッド70-1の後端をドリフタ80に取り付けられたシャンクスリーブ83に接続する。ドリフタ80からロッド70-1に打撃力を与えながら、ドリフタ80をガイドシェル81に沿って前方に推し進める。これにより、地山75を削孔すると同時に1本目の鋼管100-1を削孔された孔の内部に挿入していくことができる。
1本目の鋼管100-1がほぼ地山75に打ち込まれ、鋼管100-1の後端の差し込み部30が地山75の切羽75aよりも手前に突出している状態(図11)になったならば、ビットとロッド70-1の係合を外してから、ロッド70-1をドリフタ80のシャンクスリーブ83から外し、ガイドシェル81に沿ってドリフタ80を後方に移動させる。
ガイドシェル81を降下させ、内部にロッド70-2が挿入されている2本目の鋼管100-2をガイドシェル81に搭載し、ロッド70-2をシャンクスリーブ83に接続する。ドリフタ80を前進させ、ロッド70-2の先端を鋼管100-2の先端から前方に突出させる。
ガイドシェル81を上昇させ、1本目の鋼管100-1の後端近傍まで移動させる。1本目の鋼管100-1のロッド70-1の後端と、2本目の鋼管100ー2のロッド70-2の先端とを軸合わせし、ロッドスリーブを用いて仮止めする。これにより、1本目の鋼管100-1と2本目の鋼管100-2もほぼ軸合わせされた状態となる。2本目の鋼管100-2を前方に移動させ、そのソケット部10の開口の入り口を、1本目の鋼管100-1の差し込み部30の後端を被せる。このとき、本実施形態では、ソケット部10の先端に傾斜面12を設けて、先端の内径を広げているため、差し込み部30にソケット部10を容易に被せることができる。
2本目の鋼管100-2とシャンクスリーブ83との間に、押し治具84をセットする。押し治具84は、図12(a),(b)に正面図と側面図をそれぞれ示したように、ロッド70-2が挿入される切り欠き89がそれぞれ設けられた円板85,86を所定の長さL1の軸部材87の両端に固定した構造である。押し治具84は、切り欠き89にロッド70-2の側面が挿入されるようにセットする。セット完了後、所定のフィード圧又は打撃によりドリフタ80をガイドシェル81に沿って前進させると、円板86がシャンクスリーブ83に押され、押し治具84がドリフタ80およびロッド70-2とともに前進し、2本目の鋼管100-2の後端に押し治具84の円板85が接触する。さらに、ドリフタ80を前進させると、押し治具84に2本目の鋼管100-2が押され、2本目の鋼管100-2の先頭のソケット部10が、1本目の鋼管100-1の後端の差し込み部30にかぶさる状態で押され、ソケット部10の2本の第1溝11に、差し込み部30の2つのリング32が挿入されて係合し、ソケット部10と差し込み部30が係合する。これにより、図11のように第2の鋼管100-2を前進させて押し込む動作により、容易に2本の鋼管100-1、100-2を連結することができる。なお、押し治具84の軸方向の長さL1は、ソケット部10の長さを考慮して、ソケット部10を前方の鋼管100-1の差し込み部30で連結させることができる長さに設計されている。
このとき、ソケット部10の内周面の突き当りの段差17近くの領域18と、差し込み部30の外周面の先端部の領域38とのクリアランスを0.5mm以下に設計しているため、2本目の鋼管100-2の軸が、1本目の鋼管100-1の軸に対して曲がったまま、ソケット部10が差し込み部30に被せられた場合であっても、領域18と領域38とが当接することにより、ガイドとなって、2本目の鋼管100-2の向きを、1本目の鋼管100-1の軸に一致させることができる。よって、軸の位置合わせの許容されるずれ量を、比較的大きくすることができる。
1本目の鋼管100-1と、2本目の鋼管100-2の連結を確認したら、押し治具84を取り外す。1本目の鋼管100-1と、2本目の鋼管100-2の連結と同時に、ロッド70-1とロッド70-2もロッドスリーブを介して連結されている。よって、再びドリフタ80でロッド70-1,70-2に打撃力を与えながら、ドリフタ80をガイドシェル81に沿って推し進めることにより、地山75を削孔すると同時に2本目の鋼管100-2を削孔された孔の内部に打ち込んでいくことができる。
このとき、2本目の鋼管100-2は、1本目の鋼管100-1に引っ張られて削孔された孔の中を進んでいくため、連結部には、2本の鋼管100を引き離す方向の力が加わるが、本実施形態の鋼管100は、引張強度が大きいため、外れない。
この動作を繰り返すことにより、必要な本数の鋼管100を順次地山に打ち込むことができる。
なお、上述した打ち込み工法では、押し治具84によって鋼管100-2を後ろから押すことにより前進させ、前方の鋼管100-1と連結させたが、連結させる方法は、この方法に限られるものではなく、別の方法を用いることも可能である。例えば、図13(a),(b)に側面図と断面図を示したように、ソケット部10に隣接する鋼管本体20に、円筒を軸方向に沿って切断した片側の部材である半円筒形の押し治具88、または、半円筒形の部材を2つ合わせてヒンジ等で開閉可能な円筒形の押し治具88を装着しておく。この押し治具88を、セントラライザー82で押すことにより、鋼管100-2を前進させ、ソケット部10を前方の鋼管100-1の差し込み部30と連結させる構成にすることが可能である。セントラライザー82は、ガイドシェル81に固定されており、ガイドシェル81を前進させることにより、セントラライザー82を前進させることができる。なお、ソケット部10を前方の鋼管100-1の差し込み部30と連結させた後、押し軸88を取り外す。
押し治具88は、外径がソケット部10の外径よりも大きく、内径は、鋼管本体20の外径より大きくソケット部10の外径よりも小さい構造とする。押し治具88の軸方向の長さL2は、ソケット部10の長さを考慮して、ソケット部10を前方の鋼管100-1の差し込み部30で連結させることができる長さに設計されている。
また、上述の工法では、鋼管の先端近傍に削岩機のビットを装着する工法について説明したが、これに限られず、鋼管の後端を削岩機で推しながら削孔を進める工法に、本実施形態の鋼管100を用いることももちろん可能である。
さらに以上の説明では、実施形態1の連結機構付き鋼管を用いた例を説明したが、実施形態2の連結機構付き鋼管を用いても同様の効果が得られることは言うまでもない。
<実施例>
実施例として、上述の実施形態の鋼管100を製造した。
ソケット部10の長さ120mm、その外径120mm、差し込み部30の長さ54mm、その外径114.3mm、鋼管本体20の外径114.3mmとし、ソケット部10と鋼管本体20と差し込み部30を合わせた全長は、3100mmとした。内径は、全長にわたって、102.3mmとした。鋼材は、STK400を用いた。リングの材質は、STK400よりも硬い材料を用いた。
<比較例1>
比較例1として、図8(b)の構造の鋼管を製造した。鋼管本体の外径および内径、ならびに、材質は、実施例の鋼管本体20と同じにした。比較例1の鋼管の全長は、実施例の鋼管の全長と同じにした。
比較例1の鋼管の一端は、連結部として、外周面を削り、厚さを半分にして、溝131を設けた。他端は、連結部として、内周面を削り、厚さを半分にして、溝111を設けた。
<比較例2>
比較例2として、一端は外周面に雄ねじを形成し、他端は、内周面に雌ねじを形成した。鋼管本体の外径および内径、ならびに、材質は、実施例の鋼管本体20と同じにした。比較例2の鋼管の全長は、実施例の鋼管の全長と同じにした。
<引張強度と曲げ強度の測定>
実施例の2本の鋼管100-1,100-2を連結して連結体とし、引張強度と曲げ強度を測定した。
引張強度の測定装置(方法)としては、株式会社東京衡機製造所製 アムスラー型万能材料試験機 AU-500を用いた。
曲げ強度の測定装置(方法)としては、株式会社東京衡機製造所製 アムスラー型万能材料試験機 AU-500を用いた。
同様に、比較例1の2本の鋼管を連結し、引張強度と曲げ強度を測定した。また、比較例2の2本の鋼管を連結し、引張強度と曲げ強度を測定した。
測定結果を図14および図15に示す。
引張強度は、図14から明らかなように、比較例1が110kN程度、比較例2が340kN程度であるのに対し、実施例の鋼管の連結体は、410kNであり、比較例1、2よりも大きいことが確認された。
曲げ強度は、図15から明らかなように、比較例1が25kN程度、比較例2が47kN程度であるのに対し、実施例の鋼管の連結体は、65kNであり、比較例1,2よりも大きいことが確認された。
10…ソケット部、11…第1溝、12…傾斜面、13…底面、14…底面、15…側面、16…端部、17…段差部、18a,18b,18c…領域、20…鋼管本体、30…差し込み部、31…第2溝、32…C字型のリング、33…外周面、36…端部、37…傾斜した領域、38a,38b,38c…領域、80…ドリフタ、81…ガイドシェル、82…鋼管受治具(セントラライザー/サブセントラライザー)、83…シャンクスリーブ、84…押し治具、85,86…円板、87…軸部材、88…押し治具、89…切り欠き

Claims (13)

  1. 鋼管本体と、同形状の第2の鋼管と連結するために前記鋼管本体の一端に設けられたソケット部および他端に設けられた差し込み部とを有し、
    前記ソケット部および差し込み部は、前記鋼管本体と同軸の円筒であり、前記ソケット部の内径は、前記差し込み部の外径以上であり、
    前記ソケット部の内周面には、周方向に2以上の第1溝が設けられ、
    前記差し込み部の外周面には、周方向に2以上の第2溝が設けられ、前記第2溝内にはそれぞれ、一部が切り欠かれたC字型のリングが、前記差し込み部の外周面から少なくも一部が突出するように配置され、
    前記リングは、軸方向の断面形状がくさび形であり、前記鋼管本体に近い側の端面が前記差し込み部の端部に近い側の端面が厚く、前記リングの鋼管本体に近い側の端部は、第2溝から前記差し込み部の外周面上に突出しており、
    前記ソケット部の前記第1溝は、前記ソケット部の端部に近い側の底面が、前記鋼管本体に近い側の底面より深く、且つ、前記ソケット部の端部に近い側の底面が、1段深く掘り下げされており、
    前記差し込み部に、前記同形状の第2の鋼管のソケット部をかぶせて軸方向に押した場合、前記差し込み部の前記リングが前記第2の鋼管のソケット部の第1溝に係合して前記第2の鋼管を連結し、連結後に前記差し込み部を前記第2の鋼管とは逆方向に移動させた場合、前記第2の鋼管のソケット部の第1溝の1段深く掘り下げられた底面の側面が、前記リングの前記鋼管本体に近い端部の端面と接触することを特徴とするリングを用いた連結機構付き鋼管。
  2. 鋼管本体と、同形状の第2の鋼管と連結するために前記鋼管本体の一端に設けられたソケット部および他端に設けられた差し込み部とを有し、
    前記ソケット部および差し込み部は、前記鋼管本体と同軸の円筒であり、前記ソケット部の外径は、前記鋼管本体の外径よりも大きく、前記ソケット部の内径は、前記差し込み部の外径以上であり、
    前記ソケット部の内周面には、周方向に2以上の第1溝が設けられ、
    前記差し込み部の外周面には、周方向に2以上の第2溝が設けられ、前記第2溝内にはそれぞれ、一部が切り欠かれたC字型のリングが、前記差し込み部の外周面から少なくも一部が突出するように配置され、
    前記差し込み部に、前記同形状の第2の鋼管のソケット部をかぶせて軸方向に押した場合、前記差し込み部の前記リングが、前記第2の鋼管のソケット部の第1溝に係合することを特徴とするリングを用いた連結機構付き鋼管。
  3. 請求項2に記載のリングを用いた連結機構付き鋼管であって、前記ソケット部は、前記鋼管本体とは別部材であり、
    前記ソケット部の前記鋼管本体側の端部の内周面には、雌ねじが設けられ、
    前記鋼管本体の前記ソケット部側の端部の外周面には、雄ねじが設けられ、
    前記雌ねじと雄ねじを螺合させる又は溶接により、前記ソケット部は、前記鋼管本体に固定されていることを特徴とするリングを用いた連結機構付き鋼管。
  4. 請求項1に記載のリングを用いた連結機構付き鋼管であって、
    前記差し込み部は、前記鋼管本体の端部に形成された減径部に形成されており、外径が前記鋼管本体の外径よりも小さいことを特徴とするリングを用いた連結機構付き鋼管。
  5. 請求項2又は3に記載のリングを用いた連結機構付き鋼管であって、前記リングは、軸方向の断面形状がくさび形であり、前記鋼管本体に近い側の端面が、前記差し込み部の端部に近い側の端面よりも厚いことを特徴とするリングを用いた連結機構付き鋼管。
  6. 請求項5に記載のリングを用いた連結機構付き鋼管であって、前記断面形状がくさび形の前記リングは、前記鋼管本体に近い側の端面が、前記差し込み部の中心軸に対して垂直な面であり、前記リングの鋼管本体に近い側の端部は、第2溝から前記差し込み部の外周面上に突出していることを特徴とするリングを用いた連結機構付き鋼管。
  7. 請求項6に記載のリングを用いた連結機構付き鋼管であって、前記ソケット部の前記第1溝は、前記ソケット部の端部に近い側の底面が、前記鋼管本体に近い側の底面よりも深く、
    前記ソケット部の前記第1溝の前記ソケット部の端部に近い側の側面は、前記ソケット部の中心軸に対して垂直な面であり、
    前記差し込み部に、前記同形状の第2の鋼管のソケット部をかぶせて連結して、差し込み部を前記第2の鋼管とは逆方向に移動させた場合、前記第2の鋼管のソケット部の前記第1溝の前記ソケット部の端部に近い側の側面が、前記くさび形の前記リングの前記鋼管本体に近い側の端面と接触するように構成されていることを特徴とするリングを用いた連結機構付き鋼管。
  8. 請求項7に記載のリングを用いた連結機構付き鋼管であって、前記ソケット部の前記第1溝は、前記ソケット部の端部に近い側の底面が、1段深く掘り下げされていることを特徴とするリングを用いた連結機構付き鋼管。
  9. 請求項1ないし8のいずれか1項に記載のリングを用いた連結機構付き鋼管であって、前記差し込み部の前記第2溝の底面は、前記差し込み部の端部に近い領域が傾斜しており、前記第2溝の前記差し込み部の端部に近い側を前記鋼管本体に近い側よりも浅くしていることを特徴とするリングを用いた連結機構付き鋼管。
  10. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のリングを用いた連結機構付き鋼管であって、前記ソケット部の内周面には、前記同形状の鋼管の差し込み部を差し込んだ場合、当該差し込み部の端部が突き当たる段差部が設けられ、
    前記ソケット部の内周面の前記段差部と前記第1溝との間の領域は、差し込まれた前記差し込み部の対応する領域とのクリアランスが0.5mm以下になるように形成されていることを特徴とするリングを用いた連結機構付き鋼管。
  11. 2以上の鋼管を連結した連結体であって、
    前記2以上の鋼管は、請求項1ないし10のいずれか1項に記載のリングを用いた連結機構付き鋼管であることを特徴とする連結体。
  12. 請求項1ないし10のいずれか1項に記載の連結機構付き鋼管を用いて地山を削孔しトンネル周壁部を補強する施工方法であって、
    ガイドシェルと、前記ガイドシェル上に軸方向に移動可能に搭載されたドリフタとを備えた削岩機を用い、前記ガイドシェルの上に1本目の前記連結機構付き鋼管を搭載し、前記連結機構付き鋼管内に挿入されたロッドの後端をドリフタに接続し、前記ドリフタにより前記ロッドに打撃力を与えつつ前記ドリフタを前記ガイドシェル上で前進させることにより、前記ロッドの先端に取り付けられたビットにより前記地山を削孔しながら、形成した孔の中に1本目の前記連結機構付き鋼管を挿入し、
    前記1本目の前記連結機構付き鋼管の後端の前記差し込み部が前記地山の孔から外部に突出している状態で、前記ドリフタの前進を停止し、前記ドリフタを前記ガイドシェル上で後進させ、前記ガイドシェル上に2本目の前記連結機構付き鋼管を搭載し、
    2本目の前記連結機構付き鋼管の後端と前記ドリフタとの間に、押し治具を配置し、前記ドリフタを前進させることにより、前記押し治具により2本目の前記連結機構付き鋼管を押して前進させ、2本目の前記連結機構付き鋼管の先端の前記ソケット部を、1本目の前記連結機構付き鋼管の後端の前記差し込み部に被せて連結することを特徴とする施工方法。
  13. 請求項12に記載の施工方法であって、
    ガイドシェルと、前記ガイドシェル上に搭載された鋼管受治具と、前記ガイドシェル上に軸方向に移動可能に搭載されたドリフタとを備えた削岩機を用い、前記ガイドシェルの前記鋼管受治具上に1本目の前記連結機構付き鋼管を搭載し、前記連結機構付き鋼管内に挿入されたロッドの後端をドリフタに接続し、前記ドリフタにより前記ロッドに打撃力を与えつつ前記ドリフタを前記ガイドシェル上で前進させることにより、前記ロッドの先端に取り付けられたビットにより前記地山を削孔しながら、形成した孔の中に1本目の前記連結機構付き鋼管を挿入し、
    前記1本目の前記連結機構付き鋼管の後端の前記差し込み部が前記地山の孔から外部に突出している状態で、前記ドリフタの前進を停止し、前記ドリフタを前記ガイドシェル上で後進させ、前記ガイドシェルの前記鋼管受治具上に、前記ソケット部に隣接する前記鋼管本体に押し治具が装着された2本目の前記連結機構付き鋼管を搭載し、
    前記ガイドシェルを前進させることにより、前記鋼管受治具により前記押し治具を軸方向に押して、2本目の前記連結機構付き鋼管を前進させ、2本目の前記連結機構付き鋼管の先端の前記ソケット部を、1本目の前記連結機構付き鋼管の後端の前記差し込み部に被せて連結することを特徴とする施工方法。
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