JP3775522B2 - ポリウレタン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性回復性に優れるポリウレタンに関するものであり、詳しくは高分子ポリオ−ル、有機ジイソシアネ−ト、及び鎖延長剤からなるポリウレタンであって、該鎖延長剤が芳香環を含む特定の構造異性体の混合物からなる弾性回復性に優れるポリウレタンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的にポリウレタンの製造にに用いられる鎖延長剤としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオールやエチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン等の脂肪族ジアミン等が挙げられる。また、ポリウレタンの耐熱性の向上を狙って、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香族環含有のジオールが鎖延長剤として用いられることもある。
【0003】
しかしながら、高分子ポリオ−ル、有機ジイソシアネ−ト、及び上記の如き鎖延長剤、即ち脂肪族ジオール、脂肪族ジアミン、または単一の芳香族環含有ジオールから製造されるポリウレタンの特性のうち、特に、弾性回復性は必ずしも満足できるものではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の課題は、高分子ポリオ−ル、有機ジイソシアネ−ト、及び鎖延長剤からなるポリウレタンであって、該鎖延長剤の主成分が芳香環を含む特定の構造異性体の混合物からなる、優れた弾性回復性を有するポリウレタンを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明者等は鋭意、研究、検討した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち本発明は、高分子ポリオ−ル、有機ジイソシアネ−ト、及び鎖延長剤からなるポリウレタンであって、該鎖延長剤の主成分が、下記一般式(I)、(II)、(III)、で示される構造異性体のうち、少なくとも2種以上の混合物からなっていることを特徴とするポリウレタン、該ポリウレタンであって、その構成成分である鎖延長剤の構造異性体の混合比が次式(1)から(3)を満足するポリウレタン、および該ポリウレタンであって、かつそのポリウレタンから得られるフィルムの次式(4)で表される弾性回復率が40%以下であることを特徴とするポリウレタンである。
【0006】
【化4】
Figure 0003775522
【0007】
【化5】
Figure 0003775522
【0008】
【化6】
Figure 0003775522
(前記一般式中、X、Yは{O(CH2 m n ZH、COO(CH2 m ZH、S(CH2 m ZH、(CH2 m ZHで示され、ZHは活性水素をもつヒドロキシル基(OH)またはアミノ基(NH2 )を表し、m、nは1<m<4、0<n<4を満足する整数を表す。なおX、Yは同一であっても、別であっても構わない。またA、B、C、Dはそれぞれ水素、炭素数4以下のアルキル基、またはハロゲン基を表し、A、B、C、Dは同一であっても、別であっても良い。)
0≦x1 ≦95 (1)
0≦x2 ≦99 (2)
0≦x3 ≦80 (3)
(x1 、x2 、x3 はそれぞれ、前記一般式(I)、(II)、(III)、で示される構造異性体が全鎖延長剤中に占めるモル%値である。
【0009】
本発明に用いられる高分子ポリオ−ルとしては、1,4−ブタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオ−ル、1,8−オクタンジオ−ルなどのようなヒドロキシル化合物と、アリ−ルカ−ボネ−ト、例えばジフェニルカ−ボネ−トとのエステル交換反応により得られるポリカ−ボネ−トジオ−ル、エチレンカ−ボネ−トをエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ブチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ルなどの多価アルコ−ルと反応させ、次いで得られた反応混合物をアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の有機ジカルボン酸と反応させた物、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコ−ルとアルキレンカ−ボネ−トとの反応物などで例示されるポリエステルポリカ−ボネ−トジオ−ル、ポリテトラメチレンエ−テルグリコ−ルに代表されるポリエ−テルジオ−ル、ポリエチレンアジペ−トに代表されるポリエステルジオ−ル、およびポリカプロラクトンジオ−ルなどが挙げられるが、これらは1種で用いても、2種以上を混合してもさしつかえない。
【0010】
また、有機ジイソシアネ−トとしては、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、パラフェニレンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、1,4−シクロヘキサンジイソシアネ−ト、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−ト等の脂肪族ジイソシアネートが挙げられ、これらは1種で用いても、2種以上を混合してもさしつかえない。
【0011】
鎖延長剤としては、主として、前記一般式(I)、(II)、(III)、で示される構造異性体のうち、少なくとも2種以上の混合物を用いるとよい。具体的には、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンのうちの2種以上の混合物、1,4−ビス(β−アミノエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(β−アミノエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(β−アミノエトキシ)ベンゼンのうちの2種以上の混合物、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレ−ト、ビス(β−ヒドロキシエチル)イソフタレ−ト、ビス(β−ヒドロキシエチル)フタレ−トのうちの2種以上の混合物、1,4−ビス(β−ヒドロキシエチルメルカプト)ベンゼン、1,3−ビス(β−ヒドロキシエチルメルカプト)ベンゼン、1,2−ビス(β−ヒドロキシエチルメルカプト)ベンゼンのうちの2種以上の混合物、p−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール、o−キシリレングリコールのうちの2種以上の混合物、等が挙げられる。
【0012】
鎖延長剤として2種以上の構造異性体の混合物を用いる理由は、それを用いて得られるポリウレタンのハードセグメントの結晶性を小さくして、ゴム弾性を有する軟質相(ソフトセグメント)を拘束するための硬質相、即ちハードセグメントのドメインを小さくしてやることにある。つまり、ポリウレタンのミクロ構造を加硫ゴムの構造(拘束相が共有結合点のみ)に近づけて、加硫ゴムに近いゴム性能を発現させるためである。また、鎖延長剤に芳香族環を持たせるのは、ポリウレタンの耐熱性を維持するためである。
【0013】
前記一般式(I)、(II)、(III)、で示される構造異性体の比率としては、2種以上を混合していれば良いが、より良い弾性回復性を得るためには、下記式(1)から(3)を満足することが望ましい。
0≦x1 ≦95 (1)
0≦x2 ≦99 (2)
0≦x3 ≦80 (3)
(x1 、x2 、x3 はそれぞれ、前記化1、化2、化3が全鎖延長剤中に占めるモル%値である。)
前記構造異性体のうち、少なくとも2種を用いればよく、x1 、x2 、x3 それぞれの下限値は0であっても差し支えない。但し上限値は、x1 が95%を越えると、得られるポリウレタンのハードセグメントのドメインが大きく、充分な弾性回復性を有しないため、95%以下が望ましい。x2 については100%であっても差し支えないが、より高い弾性回複性を有するためには、99%以下が望ましい。x3 については、得られるポリウレタンの弾性回復性、及び耐熱性の観点から、80%以下が望ましい。
【0014】
本発明における、高分子ポリオ−ルと鎖延長剤の比は各々の分子量やポリウレタンの所望物性などにより種々変え得るが、両者の合計モル数に対しジイソシアネ−トのモル数は1.00〜1.25の範囲が望ましい。この比が小さすぎると耐熱性、弾性回復性が低下するため好ましくなく、大きすぎると溶融粘度が小さく、固化速度が遅く、また表面の接着性が大きくなり、生産性が低下するため好ましくない。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のポリウレタンは、溶融法、溶液法など公知のウレタン化技術を用いて製造することができるが、コスト、作業環境などを考慮した場合、溶融法で製造することが好ましい。たとえば、高分子ポリオ−ルまたはこれと鎖延長剤の化合物を約40〜100℃に予熱した後、これらの混合物の合計モル数とイソシアネ−ト基の比が1:1〜1.25となる割合の量のジイソシアネ−トを加え、短時間に強力にかき混ぜた後、約50〜180℃、窒素下で放置することによりポリウレタンが得られる。また、ウレタンプレポリマ−を経由してポリウレタンを得る方法を用いることもできる。
【0016】
またポリウレタンの製造に当たっては、ポリウレタンの製造において通常使用されている、触媒、活性剤、消泡剤、滑剤、また紫外線吸収剤、黄変防止剤などの安定剤、顔料、帯電防止剤、表面処理剤、難燃剤、防黴剤、補強剤の任意の成分を必要に応じて使用することができる。
【0017】
本発明のポリウレタンは、樹脂、成形物、フィルム、弾性繊維など種々に成形して広範囲に利用することができるが、特に弾性繊維に適している。
【0018】
本発明のポリウレタンからなるフィルムは、次式(4)で表される弾性回復率が40%以下である。
弾性回復率(%)=〔(l−l0 )/l0 〕×100 (4)
(ここで、lは室温下、フィルムを1000%/分の速度で300%まで伸長し、直ちに同速度で初期長までリラックスさせ、さらに同速度で伸長した時に応力が現れる長さであり、l0 は初期長を表す。)
ここでいう弾性回復率とは、フィルムを伸長してリラックスした後の初期長に対する残存歪みの割合を表しており、値は小さい方がよく回復していることになり、弾性体としては望ましい。
【0019】
【実施例】
次に本発明を実施例を持って具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。また、実施例中の部は重量部を表す。さらに下記の例において、対数粘度、弾性回復率は下記の方法により測定した。
【0020】
《評価試料の作成》
ポリウレタンポリマ−をヒ−トプレス機により、220℃で約0.1mmのフィルムにした。
《対数粘度の測定》
作成したフィルムポリマ−0.0750gを0.05規定−ジブチルアミン/N,N−ジメチルアセトアミド溶媒25mlに溶解し、このポリマ−溶液10mlをオストワルド粘度計にとり、30℃の恒温槽中で落下秒数を測定して以下の式より対数粘度(ηinh )を求めた。
ηinh ={ln(t/t0 )}/C
t :ポリマ−溶液の落下秒数(秒)
0 :溶媒の落下秒数(秒)
C :ポリマ−溶液の濃度(g/dl)
以上の方法により、フィルムの対数粘度を測定した。
【0021】
《弾性回復率の測定》
次式より求めた。
弾性回復率(%)=〔(l−l0 )/l0 〕×100
〔ここで、lは室温下、フィルムを1000%/分の速度で300%まで伸長し、直ちに同速度で初期長までリラックスさせ、さらに同速度で伸長した時に応力が現れる長さであり、l0 は初期長を表す。〕
優れた弾性回復性を有するポリウレタン弾性体は、伸長による構造の変形が起こりにくいため、上記式により定義した弾性回復率(残存歪み)は小さな値となる。
【0022】
実施例1
高分子ポリオ−ルとして両末端に水酸基を持つ数平均分子量2000のポリブチレンアジペ−ト(PBAと略す)100部、鎖延長剤として1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(Comp1と略す)19.19部と1,3−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(Comp2と略す)1.01部をガラス容器に入れ、窒素下約90℃に加熱攪拌して均一溶融物とした。これに有機ジイソシアネートとしてジフェニルメタンジイソシアネート(MDIと略す)38.8部(NCO/OH=1.02)を加え、窒素下約1分激しく攪拌した後、テフロンバットに移し、窒素気流下180℃で30分重合した。ヒ−トプレス機で溶融成形したフィルムを実施例1として、各測定を行った。その結果を表1に示す。
【0023】
実施例2、3
Comp1、Comp2の割合を表1記載の様に変えた以外は実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0024】
実施例4
鎖延長剤としてComp2 10.1部と1,2−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(Comp3と略す)10.1部を用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0025】
実施例5、6
鎖延長剤としてComp1、Comp3の割合を表1記載の様に変えた以外は実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0026】
実施例7
鎖延長剤としてComp1 6.73部、Comp2 6.73部、Comp3 6.73部を用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
【0027】
実施例8
高分子ポリオ−ルとして両末端に水酸基を持つ数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール(PTMGと略す)100部、鎖延長剤としてComp1 10.1部、Comp2 10.1部を用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
【0028】
比較例1
鎖延長剤としてComp1 20.2部を用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
【0029】
比較例2
鎖延長剤としてComp3 20.2部を用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
【0030】
比較例3
鎖延長剤として1,4−ブタンジオール(BDと略す)9.17部を用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
【0031】
【表1】
Figure 0003775522
【0032】
【表2】
Figure 0003775522
【0033】
【発明の効果】
表1および表2より明らかなように、本発明ポリウレタンは弾性回復率が40%以下であり、伸長による構造の変化が起こりにくいことが判る。つまり本発明ポリウレタンは、優れた弾性回復性を有しているため、その利用分野を飛躍的に拡大することができ、産業界に寄与すること大である。

Claims (2)

  1. 高分子ポリオ−ル、有機ジイソシアネ−ト、及び鎖延長剤からなるポリウレタンであって、該鎖延長剤の主成分が、下記一般式(I)、(II)、(III)、で示される構造異性体のうち、少なくとも2種以上の混合物からなっていることを特徴とするポリウレタン。
    Figure 0003775522
    Figure 0003775522
    Figure 0003775522
    (前記一般式中、X、Yは{O(CH2 m n ZH、COO(CH2 m ZH、S(CH2 m ZH、(CH2 m ZHで示され、ZHは活性水素をもつヒドロキシル基(OH)またはアミノ基(NH2 )を表し、m、nは1<m<4、0<n<4を満足する整数を表す。なおX、Yは同一であっても、別であっても構わない。またA、B、C、Dはそれぞれ水素、炭素数4以下のアルキル基、またはハロゲン基を表し、A、B、C、Dは同一であっても、別であっても良い。)
  2. 請求項1に記載のポリウレタンであって、その構成成分である鎖延長剤の構造異性体の混合比が次式(1)から(3)を満足するポリウレタン。
    0≦x1 ≦95 (1)
    0≦x2 ≦99 (2)
    0≦x3 ≦80 (3)
    (x1 、x2 、x3 はそれぞれ、前記一般式(I)、(II)、(III)、で示される構造異性体が全鎖延長剤中に占めるモル%値である。
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