JP3775472B2 - 多色縫いミシン - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、複数の縫糸で複数色が混在した刺繍模様を縫製する為に、各色の縫糸に対応して設けた複数のルーパの中から一つを選択的に針落位置にもたらして縫製を行うようにしている多色縫いミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】
基枠には、針落位置に位置するルーパを駆動する為の駆動歯車を水平回動可能に備えさせる。一方、ルーパ台を基枠に対し横移動可能に設け、そのルーパ台に夫々受動歯車を備える複数のルーパを回動自在に装着して、ルーパ台の横移動によりルーパを選択的に針落位置に到来させるようにする。上記基枠には、駆動歯車から離れた受動歯車が噛合う為のラックを取付け、ルーパ台の横移動に伴ないルーパが針落位置から離れたときには受動歯車が駆動歯車とは交換的に上記のラックと噛み合うようにしたものがある(例えば特公昭61−27075)。
【0003】
上記のような構成のものでは、ルーパが一旦針落位置から離れその後再び針落位置に戻っても、そのルーパの回動方向の位置は針落位置から離れたときと同じ適正な位置に戻る。従って上記針落位置に到来したルーパはそのままの位置ですぐに縫製動作に入ることが出来る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記のような構造のものは、ルーパ台を横移動させる場合、各ルーパに付されている糸を切り離し、かつ、各ルーパに対して糸を拘束しておかねば糸は脱落する恐れが生じる問題点がある。
またルーパが横移動して、ルーパと糸の繰出部との位置関係が遠近変化し、ルーパを再度針落位置に戻した場合は、縫い始めにおいて糸の張力等、糸調子が変化して良質な縫い目が形成できない問題点があった。
【0005】
本願発明は上記従来技術の問題点(技術的課題)を解決する為になされたもので、複数のルーパを何れも横動方向の位置の再現性高く針落位置にもたらすことが出来、しかも、複数のルーパを保持するルーパ台の横動によって、それらのルーパを選択的に針落位置から遠くしたり、針落位置に戻して位置させたりした場合においても、何れのルーパを用いて縫製を行う場合でも、常に縫い始めから良好な糸調子で縫うことができるようにした多色縫いミシンを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明における多色縫いミシンは、基枠(A)には、針落位置(4)に位置するルーパ(15)を駆動する為の駆動歯車を備え、一方、上記基枠(A)に対し横移動自在に装着したルーパ台(7)には、夫々駆動歯車との噛合用の受動歯車を備え、かつ、夫々水平回動自在な複数のルーパ(15)を、ルーパ台(7)の横移動により選択的に針落位置(4)に位置するよう配設している多色縫いミシンにおいて、
上記ルーパ台(7)の下方位置には、糸調子機構保持用のフレーム(120)をルーパ台(7)における上記複数のルーパ(15)との一体的な横動を可能に連結し、
そのフレーム(120)には、上記複数のルーパ(15)の夫々に向けて供給される複数の糸(46)の調子を個別に調節する為に、上記の夫々の糸(46)に抗力を与える為の糸調子器(124)と、上記の夫々の糸(46)に張力を与える為のテンション装置(125)とから成る複数の糸調子機構(121)を配設し、
さらに、上記糸調子器(124)の夫々における基枠(A)の側には、糸(46)に対する抗力を変更させる為の抗力変更部材(130)を備えさせ、
上記テンション装置(125)の夫々における基枠(A)の側には、糸(46)に対する張力を変更する為の操作腕(135)を備えさせ、
一方、基枠(A)には、上記複数の糸調子機構(121)の内、フレーム(120)の移動に伴って、針落位置(4)に選択的に位置される糸調子機構(121)に対応させる位置に、上記糸調子機構(121)における糸調子器(124)の抗力変更部材(130)と、テンション装置(125)の操作腕(135)との夫々の位置を同時に変更して、対応する糸調子器(124)の糸(46)に対する抗力と、テンション装置(125)の糸(46)に与える張力とを同時に変更できるように上記糸調子器(124)の抗力変更部材(130)を操作する為の操作部(147)と、上記テンション装置(125)の操作腕(135)を操作する為の操作部(148)とを一体動自在に備える変更機構(122)を備えさせたものである。
【0007】
【実施例】
以下本願の実施例を示す図面について説明する。図1〜4には多頭の多色縫い刺繍ミシンにおける一つのベッドAが示される。このようなベッドAは図1の左右方向に複数が並設されている。図示はせぬが各ベッドAの空間的上方位置には夫々ミシンヘッドが設けられている。図3にはミシンヘッドに備えられた上下動自在の縫製用の鉤針Bが示される。CはベッドAにおける基枠、Dはルーパ装置を示す。
【0008】
上記基枠Cについて説明する。1はフレーム、2は被縫製物や刺繍枠を支える為の天板で、フレームに取付けられた種々の部材のメンテナンスの為にフレーム1に取外し自在に取付け(例えばボルト止)てある。3は針板で、針落孔4や糸引き上げ孔を備えており、天板に着脱自在に取付けてある。
【0009】
上記ルーパ装置Dについて説明する。6はフレーム1に取付けたレールで、図2の紙面と垂直方向に長く形成してある。7はルーパ台で、下面に取付けたスライド体8によって上記レール6に沿って真っ直ぐに横動可能となっている。移動方向は水平面内において円弧軌跡を描く方向であってもよい。9はルーパアセンブリで、ルーパ台7の横動により選択的に針落位置に到来するようルーパ台7の移動方向に並設させてある。
【0010】
図1の10はルーパ台7を横動させる為の部材で、本例ではフレーム1に貫挿した横動杆が示される。ルーパ台7は該横動杆10と固定してあり、横動杆10の図示外の端部はルーパ台7を横動させる為の駆動装置に連結してある。11は針落位置のルーパを回転駆動する為の駆動装置、12は針落位置のルーパを上方の作動位置と下方の退避位置との間で上下動させる為の昇降装置、13は退避位置にあるルーパをその回動方向において所定の準備位置に保持する為の保持機構を夫々示す。
【0011】
上記ルーパアセンブリ9を示す図6について説明する。14はルーパを回動及び上下動自在に支える為のルーパ軸で、ルーパ台7に回動及び上下動自在に取付けてある。ルーパ軸14は糸の挿通の為に中空である。15はルーパ軸14に固着した周知のルーパで、針落孔16や上記中空部と連通する糸導出孔17を有する。18はルーパ15に回転駆動力を伝える為の受動歯車で、ルーパ軸14に取付けてある。19はルーパ15の回動方向の位置決用カムで、係合凹部20を備えており、図8の如く取付用の押ねじ19aでもってルーパ軸14に取付けてある。図3に示される21は昇降装置12からの昇降駆動力をルーパ15に伝える為の連繋体で、先端部には昇降装置との係合片22を、元部には回り止片23を夫々備えルーパ軸14に対して相対回動自在かつ軸線方向に一体化させる為のベアリング24で取付けてある。
【0012】
上記駆動装置11について説明する。31は連繋用の歯車を収容するハウジングで、フレーム1に取付けてある。32はハウジング31の蓋である。33は主軸で、フレーム1、ハウジング31を貫通する状態に横設され、図示外の一端部には駆動源例えばモータが接続してある。35はルーパ駆動用の駆動軸で、ハウジング31内において連繋用の歯車34, 36を介して主軸33と連繋している。37はルーパを回転駆動する為の駆動歯車で、軸35に固着してある。38は駆動歯車37に対する受動歯車18の噛合を案内する為の案内歯車で、図9の如く有歯部39と欠歯部40とを備えている。有歯部39は駆動歯車37と同径、同ピッチに形成してある。欠歯部40の範囲は、後述のように受動歯車が横移動する場合にそれとの噛合を防止するに充分な大きさにしてある。上記案内歯車38は駆動歯車37の歯と有歯部39の歯とが連続する状態で駆動軸35に取付けてある。本例では案内歯車38と駆動歯車37とは一体形成してある。
【0013】
上記保持機構13について説明する。41はルーパ台7に固定した基板、42はカム19との係合用の回り止片で、図7の如く各ルーパアセンブリ9のカム19と対応する数が備わっており、各々は丸棒状に形成され、基板41に取付けてある。尚43は取付ねじ19aを操作する為の操作窓で、図5の如く退避位置にある全ルーパアセンブリ9におけるカム19の取付ねじ19aと対向する位置及び大きさに形成してある。又44は連繋体21を回ることなく上下に案内する為の部材を示し、上記回り止片23と係合させてある。図1及び図8に示される45はカム19の凹部20が上記回り止片42から外れることを防止する為の離脱規制部材で、図8から明らかなように高さ方向の位置は、退避位置にある受動歯車18の上面との間の間隙が、凹部20に対する回り止片42の嵌合深さよりも小さくなる位置に設けられ、図2に示す如く、平面的には針落位置にあるルーパ15以外のルーパ15に係わる受動歯車18と重合する位置に設けてあって、フレーム1に対する固定の為に前記ハウジング31に取付けてある。
【0014】
次に上記刺繍ミシンの動作を説明する。通常の縫製時においては、針落位置にあるルーパアセンブリ9即ちルーパ15の針落孔16が針板3の針落孔4と重合する状態となる位置にあるルーパアセンブリ9は、昇降機構12により上昇されて図3の如く作動位置にあり、その受動歯車18は駆動歯車37に噛み合っている。主軸33が往復回動され、歯車34, 36、駆動軸35、駆動歯車37、受動歯車18を介してルーパ15が周知の如く往復回動される。この回動は周知のように縫製用の鉤針Bの上下動と同期して行われる。また天板2の上では刺繍枠に張り広げられた布が鉤針Bの上下動と同期して間欠的に横移動される。その結果、ルーパ15の糸導出孔17を通して供給される縫糸46により針板3上において上記の布に対する縫製が行われる。尚上記縫製の場合において、上記鉤針Bにおける鉤部の方向は、周知のように縫製の仕方及び布の移動方向に応じて決定され、環縫いを行う場合は鉤部から糸が外れにくいよう布の移動方向と反対方向であり、糸を1針毎に布から引き上げるだけの縫い方(ループ縫いと称せられる縫い方)の場合は糸の外れが容易に行われ得るよう同方向である。ルーパ15が回動を行う始点の方向例えば針落孔16に対する糸導出孔17の方向は、周知のように鉤部に対する糸の掛かりが確実となるよう上記鉤部の方向に応じて定められ、例えば糸導出孔17が針落孔16に対して鉤部の方向とは反対側を向く状態にされる。
【0015】
次に縫製に用いる糸の変更の為のルーパ15の交換を説明する。針Bが上死点に位置し、ルーパ15が回動方向の原点に位置した状態、例えば糸導出孔17が図2の針落位置(駆動歯車37と連繋する状態となる位置)にあるルーパ15の如く時計の9時の位置に到来した状態でミシンを停止させる。次に、縫製を終えた糸を手作業又は後述の糸切断装置により切断する。次に昇降装置12により針落位置のルーパアセンブリ9を図4の如く退避位置に下降させる。
【0016】
この状態では、受動歯車18は図9の(A)の中段の図(この図は底面側から見た図である)に示される如く案内歯車38の有歯部39と噛み合っており、カム19は回り止片42の上に乗っている。次にその状態において主軸33によって案内歯車38が矢印X方向に回動される。その回動過程において、図9の(A)のように受動歯車18が案内歯車38の有歯部39と噛み合っている状態では受動歯車18は案内歯車38の矢印X方向の回動と連動して回動する。やがて図9の(B)に示されるように受動歯車18が案内歯車38の有歯部39から欠歯部40に出ると、そこで受動歯車18の回動は停止する。またこの停止の時、同図に示されているようにカム19における嵌合凹部20が回り止片42と嵌合する。その結果、ルーパ15の回動方向の位置は、受動歯車18が上記案内歯車38の有歯部39から外れた時の位置、例えば図1の針落位置以外の位置にあるルーパ15の如く糸導出孔17が時計の12時の位置(この位置を準備位置と呼ぶ)に保持される。尚このような状態が達成されるよう、カム19は受動歯車18との回動方向の位置関係が予め調整される。その調整は、凹部20が回り止片42と嵌合している状態において、取付ねじ19aを緩め、ルーパ15を軸14と共に所定の準備位置まで回し、そこでねじ19aを締めることにより行う。作業はミシンの前面側から窓43を通して行なう。
【0017】
引き続き案内歯車38が図9(B)の矢印X方向に回動され、図9の(C)に示される如き状態となる。この状態となると次に横動杆10によってルーパ台7が例えば図11の矢印47方向に横移動される。その横移動の場合、図10及び図11の如く全ての受動歯車18が欠歯部40を通って横移動する為、当然のことながらルーパ15は何等回動しない。上記ルーパ台7の横移動によって、図11の(B)の如く次に作動させるべきルーパ15(そのルーパ15には、先に作動させていたルーパとは異なる色あるいは種類の糸が予め装填されている)が針落位置にもたらされる。尚そのルーパ15に関しても保持機構13によって上記の説明と同様にしてその回動方向の位置が予め決められた準備位置に保持されている。
【0018】
上記新たなルーパ15が針落位置にくると、次に主軸33の回動によって案内歯車38が図9の(C)の矢印Y方向に回動される。そして案内歯車38における有歯部39が図9の(B)の如き位置までくると受動歯車18は有歯部39と噛み合って回動を開始する。受動歯車18の回動に伴ないカム19が回動する。するとカム19は嵌合凹部20が回り止片42から外れて図9の(A)の如く回り止片42の上に乗り上げる。上記有歯部39が受動歯車18と噛み合いを開始する場合、受動歯車18は以前に有歯部39から外れた時のままの状態に保持機構13によって保持されている為、その噛み合いの開始は受動歯車18の歯先と有歯部39の歯先とがぶつかり合ったりすることなく極めてスムーズに行われる。上記のようにして受動歯車18が案内歯車38の有歯部39と噛み合うに至ると、昇降装置12により上記新たに針落位置に到来したルーパアセンブリ9が上昇される。その結果、受動歯車18は案内歯車38の歯をガイドにして駆動歯車37に至り、ルーパ15は図3に示されるように縫製時の作動位置に至る。
【0019】
上記ミシンにおいてフレーム1に取付けた種々の部材のメンテナンスは天板2をフレーム1から取外して、上面側をオープン状態にし、そこから行なうことができる。この場合、待機位置即ち針落位置以外の位置にあるルーパアセンブリ9に誤って手を触れても、離脱規制部材45によりそのルーパアセンブリ9の上昇は阻止され、カム19の凹部20は回り止片42に嵌合したままに保たれる。従ってルーパ15の回動方向の位置は準備位置のままに保持される。
【0020】
次に図3、4、12に示される昇降装置12について説明する。この昇降装置12は、糸替えの為に多数のルーパを横動させてそれを選択的に針落位置に位置させると共に、上記ルーパは針落位置での縫製動作の為の上方の作動位置と、上記横動の為の下方の退避位置との間で位置替させるようにしてある多色縫い刺繍ミシンにおいて、上記ルーパの昇降をルーパの真下の位置に定められる糸の供給経路を避けた側方の位置から、円滑に行なわせ得るようにしようとするものである。
【0021】
以下図面について説明する。符号A〜D、1〜45で示される構造及びその作用は前述の通りである。次に昇降装置12について詳細に説明する。51は昇降装置12の各部材を針落位置にあるルーパ15の真下の糸46の供給経路Pを避けた側方の位置にて支える為の支持枠で、他の種々の機構を避ける為に上記経路Pの後方(該ミシンの操作者の位置する側即ち図3の左方から見て後方)の位置に設けられ、前面には縦長の回り止片52を備えておって、ボルト51aでフレーム1に取付けてある。53は案内杆である。54はルーパアセンブリ9を上下動させる為の昇降体で、案内杆53に上下動自在に装着してあり、回り止の為に後部に備えた嵌合体55を上記回り止片52に上下動自在に嵌合させてあり、前部には前記係合片22との係合部56を備える。係合部56はルーパ台7の横動に伴なう係合片22の左右方向への出入を自在とする為に、側面形状をコ字状に形成されている。係合部56は係合片22を上昇させる為の押上体57と、下降させる為の押下体58とを備える。押下体58における59は係合片22を下向に付勢する為の押片で、押下体の基材58aに対して上下動自在に備えられ、ばね60でもって下向に付勢してある。次に61〜63は上記昇降体54を上下動させる為の構成を示し、61は昇降用の駆動軸で、支持枠51に回動自在に装着してある。この軸61は他のベッドにも跨って水平状態に設けてあり、一端には昇降操作用の駆動装置が接続してある。62, 63は軸61の往復回動運動を昇降体54の上下運動に変換する為の部材を示し、62はレバー、63はリンクを夫々示す。リンク63は昇降体54をコジレ無しに円滑に上下動させる為に案内杆53の貫通部と係合部56との略中間において昇降体54に連結してある。
【0022】
上記昇降装置12の動作を説明する。ミシンの縫製動作時は昇降体54は図3及び図12の(A)に示すように上昇位置にあり、ルーパ15は作動位置にある。ルーパ15を退避位置に移動させるときは駆動軸61が図において左回転し、部材62, 63を経て昇降体54が図4及び図12の(B)の如く下降位置まで下降する。この下降の場合、係合片22はばね付勢の押片59によって押下げられる為、カム19の下面が凹部20以外の場所で回り止片42に当接しそこで係合片22の下降が停止しても何等支障は生じない。前述のようにルーパ15が準備位置まで回動すると凹部20が回り止片42と対向する為、押片59の押下力により係合片22が下降し、凹部20と回り止片42の嵌合が達成される。
【0023】
次に図1〜4、13〜18において、Eは糸切断装置を示す。この糸切断装置Eは、多数のルーパの交換的な利用により糸を種々に交換しながら縫製を行い得るようにしてあるミシンにおいて、糸の交換に当っては、それまで縫製に用いていた糸を、ルーパから抜け落ちることを阻止する為に保持してその保持状態で切断を行い、しかもそのように構成されたものであっても、該糸切断装置の組付、調整、メンテナンスの作業を容易に行うことができるようにする事を目的とするものである。
【0024】
以下図面について説明する。符号A〜D、1〜45の構造及びその作用は前述の通りである。次に糸切断装置Eについて説明する。該装置Eは、ルーパ15の上下動の支障とならぬようその上下動軌跡から側方に外れた位置において糸の切断を行なう切断機構E1及びその操作機構E2を備える。切断機構E1は、切断後布に付随してその下に残る側の糸と、ルーパ15の側に残る糸とを出来るだけ短くする為に、僅かにルーパ15の上下動の軌跡を避けただけの成るべくルーパ15に近い位置に設けてある。切断装置Eは又、針孔4とルーパ15との間の糸を上記切断機構E1にもたらす為の糸寄機構E3及びその操作機構E4とを備える。
【0025】
先ず切断機構E1について説明する。図13の66は切断機構E1の各部材を支える為の支持体で、天板2の下面に近接して位置する基板部66aと、基板部66aを上記位置に支える為の支持部66bから成り、支持部66bをフレーム1にボルト止してある。67はカッタを示し、カッタに向けてもたらされた糸をもたらされた位置のままで切断できるよう基板部66aに固定した固定メス68と、その固定メス68に対して枢着した可動メス70とにより構成してある。68a, 70aは各々の刃を示す。69は固定用ビス、71は枢着用のピンである。72は可動メス70の作動用のアームである。
【0026】
次に操作機構E2について説明する。図14の符号74は操作軸を示し、天板2近くの直下位置においてフレーム1を貫通する状態に横設してあり、図示外の駆動源に接続している。75はメス操作用のカムで、天板2の下の高さ寸法の小さい空間に収まるよう円筒カムが用いてある。76はカム75の動作を可動メス70に伝える為の伝動片で、天板2と、その下を横動するルーパ15や後述の糸保持機構との間の狭い空間に位置させ得るよう高さ方向の寸法が小さい平らな形状に形成され、中間部76cを基板部66aにピンでもって枢着され、一端に取付けた従動片76aをカム75のカム溝75aに嵌合させ、他端をピン76bでもってアーム72に連繋させてある。77はカム溝75aからの従動片76aの外れ(浮上り)を阻止する為の部材で、伝動片76に形成した長孔76dを通して後述の支持体80に止着したピンをもって構成してある。
【0027】
次に糸寄機構E3について説明する。80は糸寄機構E3の各部材を支える為の支持体で、天板2の下面に近接して設けられ、フレーム1にボルト止してある。81, 82は上側及び下側の糸寄片を示し、支持体80にボルト止したガイド83, 84によって水平方向への進退が自在となっている進退部材85の前端部に備えてある。尚下側の糸寄片82は進退部材85と一材で形成され、上側の糸寄片81は進退部材85に溶接してある。
【0028】
操作機構E4について説明する。図14の86は糸寄片81, 82を進退動させる為のカムで、操作機構E2, E4の組立に当りカム75, 86を操作軸74に取付ける場合に両カム75,86の位置関係に考慮を払わずとも、可動メス70と糸寄片81, 82との動作タイミングの関係が設計通りとなるようカム75と一体に形成してある。87はカム86の動きを糸寄片81, 82に伝える為の伝動片で、伝動片76と同様の考慮から平たい形状に形成してある。尚87aはカム溝86aに対する従動片、87bは進退部材85との連繋用のピン、87cは中間部を支持体80に枢着する為のピンを夫々示す。
【0029】
次に図1及び図2のFは上記糸切断装置Eに関連して設けられた糸保持装置を示す。該装置Fは糸の切断を行う場合に切断された糸がルーパ15から抜け落ちることを防止する為のものであり、以下図1、図2及び図15、図16に基づいて説明する。図1、2の90は各ルーパ15に関して夫々個別に設けられた糸保持手段である。各糸保持手段90は前記切断機構E1と同様の目的で各ルーパ15に成るべく近く設けてある。糸保持手段90は一対の把持片92, 93を有する。把持片92は組立の容易化のために全糸保持手段90に共通のベース91と一体に形成してある。把持片93は把持片92との挟着面92b,93bの当たりの調節の為に、その元部をベース91に対して横方向(図2の左右方向)への位置調節を可能に枢着してある。即ち図16に示されるように、把持片93の元部93aは保持筒94に回動可能に遊嵌され、保持筒94はその内径よりも細径の止め具(ボルトを例示する)95によりベース91に取付けてある。96は把持片93の抜け止め用のワシャである。この構成では、把持片93と把持片92とにおける挟着面93b,92bがそれらの全域においてぴったりと密着するように把持片93の元部93aの位置を決めることが出来る。そこで止め具95を固定する。このようにすると、糸が挟着面92b,93bの入口側或いは奥側等どの位置に来てもそれを確実に挟んで保持できる。97は把持片93の操作片、97aはばね受け用の凹部である。98はばねの保持片で、ベース91に取付けてある。99は把持片92, 93相互を所定の挟着力で閉じさせる為の圧縮コイルばね、100はばね受け用のワシャである。
【0030】
このような構成の糸保持装置Fは原点の位置で止まったルーパ15から糸寄機構E3によって糸保持手段90にもたらされる糸を確実に保持する為に、図17の(A)に示されるように、把持片92における挟着面92bの延長線92cが原点の位置にあるルーパ15の糸導出孔17の位置を通る状態となる位置関係でルーパ台7に取付けてある。
【0031】
次に図1〜図4に示されるGは針落位置に位置したルーパ15に関連する糸保持手段90を解除する為の解除機構である。該機構Gはフレーム1にブラケット101を介して取付けたソレノイド102によって構成されている。ソレノイド102のプランジャ103は、上記糸保持手段90の操作片97と対峙する。ソレノイド102へ通電するとプランジャ103が突出する。すると操作片97を押して把持片92,93の間を開く。
【0032】
次に上記糸切断装置E及びそれに関連する構造の作用を説明する。上記糸切断装置Eは、一つの例として、一つの糸を用いた縫製が終わり次に糸替えをして別の糸で縫製を行う場合に利用する。その動作について図17、18及び図19に基づき説明する。主軸回転数が通常の毎分500回転程度で縫製していた後、停止の為に主軸回転数を例えば200回転程度まで下げる。そして、布における所定場所までの縫製が終わると、図19に符号201で示す如く、先ず鉤針Bの上下動が停止されると共に、主軸33の回動が停止される。この場合、ルーパ15は回動方向の原点の位置例えば図17の(A)に示される如く糸導出孔17が時計の9時の位置で回動が停止する。次に昇降装置12によってルーパアセンブリ9が下降され、図4及び図17の(B)の如くルーパ15が糸寄片81, 82の進退経路から下方へ退避する(図19の符号202参照)。また解除機構Gによって把持片92, 93の間が図17の(C)の如く開かれる(図19の符号203参照)。次に糸寄片81, 82が図17の(C)、(D)の如く糸保持手段90の側へ前進し、針孔4とルーパ15における糸導出孔17との間の縫糸46を把持片92, 93の間及びメス68, 70の間にもたらす(図19の符号204参照)。次に解除機構Gの復旧によって図18の(E)、(F)の如く把持片92, 93の間が閉じられ、上記縫糸46が保持される。次に図18の(G)、(H)の如く、可動メス70の作動によって上記の縫糸46が切断される(図19の符号205参照)。この切断の場合、布104と把持片92, 93との間の縫糸46は、一端は布104に固定されており、他端は把持片92, 93により把持されている。即ちそれらの間の縫糸46は一定の引張状態で両端が固定されている。従ってメス70が作動した場合、縫糸46が切れぬままメス68, 70の重合面の間に入り込んでしまうようなことはなく、メス68, 70によって確実に切断される。上記切断が済むと糸寄片81, 82は元の位置に復帰される(図19の符号206参照)。
【0033】
上記のように糸の切断が完了すると、前述のようにルーパ15の交換を行う。ルーパ交換の過程で次に用いる糸が備わっているルーパ15が針落位置に来ると、そのルーパ15が図3の如く上昇される(図19の符号207参照)。ルーパ交換が完了すると、鉤針Bの上下動が開始される(図19の符号208参照)と共に、主軸33の回動が低速で開始され、又刺繍枠の横移動も開始されて刺繍柄の縫付が開始される。この開始の場合、縫糸の先端は把持片92, 93によって保持されている。従って鉤針Bがルーパ15の針落孔16内に下降し、ルーパ15が回動すると、ルーパ15の糸導出孔17を通して供給される糸は鉤針Bにおける鉤部に確実に引掛かる。従って縫製は目飛び無く適正に開始される。上記縫糸の先端の保持は、上記縫い始めの縫付が確実となった後、図19の符号209の如く解除される。そして主軸の回転数も上昇されて通常の縫製状態となる。
【0034】
次に、上記切断装置Eは別の利用例として、布における一つの場所での刺繍の縫製を終わって、他の場所に別の刺繍を縫製する場合に利用する。その場合、図19に符号210で示される時点において、新たに縫製を施す場所を針落位置に到来させる為の枠移動を行う。他の動作は上記糸替えの場合と同様である。
【0035】
次に図1、3、20、21において、Hは糸絡み防止機構を示す。この糸絡み防止機構Hは、縫製の終了後、糸を切断し、しかもその切断の場合、切れた糸がルーパ15から抜け落ちぬように予め保持した状態で切断するようにしてあるミシンにおいて、上記保持されている糸を用いて再び縫製を開始する場合に、その糸が回動するルーパ15に巻き付くことを防止できるようにすることを目的とするものである。
【0036】
以下図面について説明する。符号A〜G、1〜103の構造及びその作用は前述の通りである。次に糸絡み防止機構Hについて説明する。110は糸保持手段90によって保持されている糸46をルーパ15の近傍において持ち上げる為の持上部材である。持上高さは、ルーパ15に対する絡まりを防止する為に例えばルーパ15の上面15aと同等の高さである。ルーパ15における上面と側面との間の角部15bに滑らかなアールが形成されていてそこでの糸の滑りが良く、糸が多少ルーパ15の側面に当たっても上面の側に導かれるようになっている場合には、上記持上高さはもっと低くて良い。111は上記持上部材110を上記のように機能する位置まで持ち上げたり糸切断時の邪魔にならぬように下降させたりする為の昇降機構を示す。112は該機構111における昇降部材で、ルーパ台7の横動の邪魔にならぬようその横動範囲を避けてフレーム1に沿わせてあり、フレーム1に取付けたガイド113によって案内されている。114は持上部材110を支える為の部材で、左右の昇降部材112に橋架け状に取付けてある。115は昇降部材112を上下動させるための部材で、ルーパ15の上下動と同時作動の為にルーパ昇降駆動軸61に取付けたレバーが例示され、該レバー115の先端部115aが昇降部材112の連繋部112aと係合している。
【0037】
次に上記糸絡み防止機構Hの作用を説明する。糸切断装置Eの作動の為にルーパ15が図4のように退避位置に下降されると、持上部材110も同様に下降される。その後新たな刺繍縫いの開始の場合、ルーパ15が図3の如く作動位置に上昇されると、持上部材110も昇降機構111によって図3の如く上昇され、糸保持手段90によって先端が保持されている糸46を同図及び図21の(A)の如く持ち上げる。この状態において図21の(B)の如くルーパ15の作動が開始される。従って、持ち上げられた糸46は回動するルーパ15に絡まるようなことは無く、縫製の開始が円滑に行われる。
【0038】
次に図3、5、22〜24において、Jは糸調子装置を示す。この糸調子装置Jは、複数のルーパ15を保持するルーパ台7の横動によってそれらのルーパ15を選択的に針落位置に位置させることにより、各ルーパに付されている異色の糸を選択的に用いて布に対する縫製ができるミシンにおいて、どのルーパを用いて縫製を行う場合においても、常に縫い始めから良好な糸調子で縫うことができるようにすることを目的とするものである。
【0039】
以下図面について説明する。符号A〜G、1〜103の構造及びその作用は前述の通りである。次に糸調子装置Jについて説明する。120は糸調子機構保持用のフレームで、前記基板41を介してルーパ台7に取付けてある。120aは糸挿通用の窓である。121は各ルーパ15に至る糸の調子を個別に調節する為の複数の糸調子機構で、ルーパ台7が横移動しても各ルーパ15との位置関係を一定に保つ為に、上記フレーム120に取付けてある。122は各糸調子機構121の調子を変更するための変更機構を示す。
【0040】
次に上記糸調子機構121について図3、5に基づき説明する。123, 124は鉤針Bによって引かれる糸46に抗力を与える為の糸調子器、125は糸調子器124を通して引き出された糸に張力を与える為のテンション装置である。上記糸調子器123は糸に一定の抗力を与える周知のもの、124は抗力を強弱変更可能な公知(例えば実公昭53−6611号公報)のものである。これらにおいて126, 127は糸調子皿、128は糸調子皿127を糸調子皿126に押圧する為のばね、129は上記押圧力を調節する為のつまみである。糸調子器124における130は抗力を変更させる為の抗力変更部材で、糸調子皿127を糸調子皿126から離反させて抗力を弱めるようにしたゆるめ棒を例示する。
【0041】
次に上記テンション装置125について説明する。131は糸に弾力的な引き力を与える為のばね腕で、糸取りばねとも称されるものであり、自由端部に糸通し環132を備える。該ばね腕131の元部133は、上記引き力の変更の為に、枢着片例えばピン134によりフレーム120に枢着してあると共に、操作腕135を一体に備える。操作腕135は、長孔136を通して上記変更機構122による操作の為にフレーム120の裏側に突出させてある。137は上記操作腕135を位置替え可能な範囲の一方の側に位置させる為の部材で、操作腕135が他方の側に移動することを可能にする為にばねが用いてあり、フレーム120に取付けた保持用のピン138に装着してある。ばね137の一端139はフレーム120の透孔140に係合させ、他端141を操作腕135に係合させてあって操作腕135をその位置決部としての長孔136の下端136aに押し付けるようにしてある。142,143は糸通し環132を通る糸の向きを張力の付与に適正な向きにする為の糸ガイドで、フレーム120に取付けてある。
【0042】
次に変更機構122について説明する。145は変更操作軸で、他のベッドにも共通に設けられており、一端には操作装置が取付けてある。146は操作部材で、上記部材130を操作する為の操作部147と操作腕135を操作する為の操作部148とを備えており、針落位置に位置したルーパ15に関連する糸調子機構121のみを操作するようその位置を選定して上記操作軸145に取付けてある。
【0043】
次に前記縫製の場合における糸調子の設定及び上記糸調子機構121の動作について説明する。縫製が環縫いの場合には糸46に与えられる抗力及び張力を大きくする。即ち操作部材146は図22の実線の位置におき、糸調子器124の糸調子皿127は図22の実線の状態に、テンション装置125のばね腕131は図23の実線の状態におく。この状態で縫製をすると縫製中における布に対する糸の引き締め力が大きく、しっかりと締まった適正な環縫いを施すことができる。
【0044】
一方縫製が公知のループ縫い(例えば特開平4−34062号)の場合、糸46に与えられる抗力及び張力を小さくする。即ち操作軸145を回して操作部材48を図22の2点鎖線の位置におき、糸調子器124の糸調子皿127は図22の2点鎖線の状態に、テンション装置125のばね腕131は図23の2点鎖線の状態におく。この状態で縫製をすると、針板3上では布からの糸の引上をスムーズに行え、所定の高さのループ縫いを適正に行える。
【0045】
次に、縫製に用いる糸の変更の場合、上記糸調子装置Jはルーパ台7に取付けてある為、ルーパ台7が横移動しても各ルーパ15と各々に関連する糸調子機構121との位置関係は不変である。従ってルーパ台7の横移動によるルーパ15の交換が行われても、各ルーパ15と各々に関連する糸調子機構121との間の糸は常に張りのある状態に保たれる(不要な弛みができるようなことは無い)。従ってどのルーパ15を用いて縫製を行う場合にも、ルーパ15に至る糸にはその縫製の開始時から糸調子器123,124による適正な抗力と、テンション装置125による適正な張力を与えた状態で縫製を行うことができる。
【0046】
次に図3、5、25において、Kは糸切れ検知装置を示す。この糸切れ検知装置Kは、複数のルーパ15を保持するルーパ台7の横動によってそれらのルーパ15を選択的に針落位置に位置させることにより、各ルーパに付されている異色の糸を選択的に用いて布に対する縫製ができるミシンにおいて、縫製時には確実な糸切れ検知ができ、糸替え中においては誤った検知を防止できるようにすることを目的とするものである。
【0047】
以下図面について説明する。符号A〜D、J、1〜62,121〜148の構造及びその作用は前述の通りである。次に糸切れ検知装置Kについて説明する。151は検知器本体で、極めて軽い力での作動を可能にする目的と次に述べる検知片の構成を簡易化する目的から、可動部152が回転動作する回転動作形のマイクロスイッチが用いてあり、前記支持枠51に取付けてある。153は糸切れの有無を探る為の検知片で、針落位置にあるルーパに係わる糸の通過経路Pに沿わせて、且つその経路を横切る方向への移動を自在に設けてあり、又糸に抗力及び張力がかかっていて張りがある場合にはその糸によって上記方向への移動が遮られ、糸が切れて上記張りが無くなった場合には糸を押して上記方向へ移動(糸が不存在の場合にはそのまま移動)するように上記方向への付勢力を持たせてある。この例ではマイクロスイッチの可動部152に取付けることによって上記移動を可能にすると共に、可動部152が有する付勢力を利用している。図5に示される如く、該検知片153における糸との対向部153aは糸との横ズレ防止の為にV字状にしてある。154は検知片153を非作動状態にする為の退避用レバー、155はレバー154を操作する為の操作片で、ルーパ交換の時にそれと連動して非作動とする為に、ルーパ昇降機構12のレバー62に取付けてある。
【0048】
上記糸切れ検知装置Kにあっては、通常の縫製中においては図25の(A)のように検知片153が糸46に当接し、検知器本体151は糸が適正な状態にあることを示す信号例えば導通信号を発する。一方糸46が切れた場合には検知片153が(B)の如く移動し、検知器本体151は糸切れが生じたことを示す信号例えば非導通信号を発する。糸替えの為のルーパ交換の時には、ルーパを下降させる為にルーパ昇降駆動軸61が回動すると操作片155によってレバー154が(C)の如く押され、検知片153は非作動状態となる。従って、ルーパ交換の理由によって検知片153の前から糸46が不存在となっても、検知器本体151が誤って糸切れ信号を発することが防止される。
【0049】
【発明の効果】
以上のように本願発明にあっては、ルーパ台7の下方位置に、糸調子機構保持用のフレーム120を連結し、それには、複数のルーパ15の夫々に対応させて、各ルーパに至る糸の調子を個別に調節する為の複数の糸調子機構121を備えさせ、ルーパ台7が横移動しても各ルーパと対応糸調子機構121の横方向の位置関係が一定に保たれるようにしてあるから、ルーパ台7を大きく横移動してルーパ15を針落位置4から遠く離しても、復帰させて縫製を再開させる場合には、常に縫い始めから良好な糸調子で美しい縫目を形成出来る優れた効果がある。
【0050】
その上本願発明にあっては、上記フレーム120には、上記複数のルーパの夫々に向けて供給される複数の糸46の調子を個別に調節する為に、夫々は上記の糸に抗力を与える為の糸調子器124と、糸に張力を与える為のテンション装置125とから成る複数の糸調子機構121、121・・121を備えさせ、しかも上記糸調子器124と、テンション装置125は、変更機構122によって対応する糸に対する抗力と、テンション装置の糸に与える張力とを変更できるようにしたものであるから、例えば環縫いの場合、ループ縫いの場合等、縫製の方法が変更された場合においても、糸調子を簡単に対応調節し得る作業上の効果がある。
しかも上記の糸調子を変更する場合、対応する糸調子器の糸に対する抗力と、テンション装置の糸に与える張力とを同時に変更できるものであるから、いずれか一方のみを変更し、他方の変更を怠る等の不測の事故は予め予防できる効果もある。
【0051】
その上本願発明にあっては、上記複数、例えば5個の糸調子機構121における全ての糸調子器124の糸に対する抗力と、テンション装置125の糸に与える張力とを必要時には同時に変更できるようにした変更機構122を備えさせるものであっても、その変更機構122は、基枠の側であって、上記複数の糸調子機構121の内、針落位置に選択的に位置された一つの糸調子機構121のみに対応させる位置に備えさせれば足りるものであるから、それを設備するための費用は極めて安価となり、保守点検も簡易になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】天板を除去した状態のベッドの平面図。
【図2】天板及び糸切断装置を除去した状態のベッドの平面図。
【図3】縦断面図。
【図4】ルーパアセンブリが下降した状態の縦断面部分図。
【図5】ルーパ装置の正面図。
【図6】駆動歯車及びルーパに関連する構造を示す一部破断斜視図。
【図7】ルーパの保持機構を示す底面図。
【図8】ルーパアセンブリとその保持機構を示す一部省略側面図。
【図9】ルーパ切替の動作順を説明する図。
【図10】ルーパ切替時における受動歯車と駆動歯車及び案内歯車との関係を示す正面図。
【図11】(A)、(B)はルーパ切替時における受動歯車と案内歯車との関係を示す水平断面図。
【図12】ルーパ昇降機構の動作説明図。
【図13】糸切断装置の斜視図。
【図14】糸切断装置の機構図。
【図15】糸保持装置の分解斜視図。
【図16】可動把持片元部の取付構造を示す断面図。
【図17】(A)〜(D)は糸引寄機構、糸保持手段及び糸切断機構の動作説明図。
【図18】(E)〜(H)は糸引寄機構、糸保持手段及び糸切断機構の動作説明図。
【図19】動作説明用タイムチャート。
【図20】糸絡み防止機構の機構図。
【図21】(A)、(B)は糸絡み防止機構の動作説明図。
【図22】糸調子機構の縦断面部分図。
【図23】テンション機構の正面図。
【図24】(A)は張力が大きい状態の場合のテンション機構の背面図、(B)は張力が小さい状態の場合のテンション機構の背面図。
【図25】(A)〜(C)は糸検知装置及びその動作を説明する為の図。
【符号の説明】
A 基枠
7 ルーパ台
13 保持機構
15 ルーパ
18 受動歯車
37 駆動歯車
38 案内歯車
【産業上の利用分野】
本発明は、複数の縫糸で複数色が混在した刺繍模様を縫製する為に、各色の縫糸に対応して設けた複数のルーパの中から一つを選択的に針落位置にもたらして縫製を行うようにしている多色縫いミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】
基枠には、針落位置に位置するルーパを駆動する為の駆動歯車を水平回動可能に備えさせる。一方、ルーパ台を基枠に対し横移動可能に設け、そのルーパ台に夫々受動歯車を備える複数のルーパを回動自在に装着して、ルーパ台の横移動によりルーパを選択的に針落位置に到来させるようにする。上記基枠には、駆動歯車から離れた受動歯車が噛合う為のラックを取付け、ルーパ台の横移動に伴ないルーパが針落位置から離れたときには受動歯車が駆動歯車とは交換的に上記のラックと噛み合うようにしたものがある(例えば特公昭61−27075)。
【0003】
上記のような構成のものでは、ルーパが一旦針落位置から離れその後再び針落位置に戻っても、そのルーパの回動方向の位置は針落位置から離れたときと同じ適正な位置に戻る。従って上記針落位置に到来したルーパはそのままの位置ですぐに縫製動作に入ることが出来る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記のような構造のものは、ルーパ台を横移動させる場合、各ルーパに付されている糸を切り離し、かつ、各ルーパに対して糸を拘束しておかねば糸は脱落する恐れが生じる問題点がある。
またルーパが横移動して、ルーパと糸の繰出部との位置関係が遠近変化し、ルーパを再度針落位置に戻した場合は、縫い始めにおいて糸の張力等、糸調子が変化して良質な縫い目が形成できない問題点があった。
【0005】
本願発明は上記従来技術の問題点(技術的課題)を解決する為になされたもので、複数のルーパを何れも横動方向の位置の再現性高く針落位置にもたらすことが出来、しかも、複数のルーパを保持するルーパ台の横動によって、それらのルーパを選択的に針落位置から遠くしたり、針落位置に戻して位置させたりした場合においても、何れのルーパを用いて縫製を行う場合でも、常に縫い始めから良好な糸調子で縫うことができるようにした多色縫いミシンを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明における多色縫いミシンは、基枠(A)には、針落位置(4)に位置するルーパ(15)を駆動する為の駆動歯車を備え、一方、上記基枠(A)に対し横移動自在に装着したルーパ台(7)には、夫々駆動歯車との噛合用の受動歯車を備え、かつ、夫々水平回動自在な複数のルーパ(15)を、ルーパ台(7)の横移動により選択的に針落位置(4)に位置するよう配設している多色縫いミシンにおいて、
上記ルーパ台(7)の下方位置には、糸調子機構保持用のフレーム(120)をルーパ台(7)における上記複数のルーパ(15)との一体的な横動を可能に連結し、
そのフレーム(120)には、上記複数のルーパ(15)の夫々に向けて供給される複数の糸(46)の調子を個別に調節する為に、上記の夫々の糸(46)に抗力を与える為の糸調子器(124)と、上記の夫々の糸(46)に張力を与える為のテンション装置(125)とから成る複数の糸調子機構(121)を配設し、
さらに、上記糸調子器(124)の夫々における基枠(A)の側には、糸(46)に対する抗力を変更させる為の抗力変更部材(130)を備えさせ、
上記テンション装置(125)の夫々における基枠(A)の側には、糸(46)に対する張力を変更する為の操作腕(135)を備えさせ、
一方、基枠(A)には、上記複数の糸調子機構(121)の内、フレーム(120)の移動に伴って、針落位置(4)に選択的に位置される糸調子機構(121)に対応させる位置に、上記糸調子機構(121)における糸調子器(124)の抗力変更部材(130)と、テンション装置(125)の操作腕(135)との夫々の位置を同時に変更して、対応する糸調子器(124)の糸(46)に対する抗力と、テンション装置(125)の糸(46)に与える張力とを同時に変更できるように上記糸調子器(124)の抗力変更部材(130)を操作する為の操作部(147)と、上記テンション装置(125)の操作腕(135)を操作する為の操作部(148)とを一体動自在に備える変更機構(122)を備えさせたものである。
【0007】
【実施例】
以下本願の実施例を示す図面について説明する。図1〜4には多頭の多色縫い刺繍ミシンにおける一つのベッドAが示される。このようなベッドAは図1の左右方向に複数が並設されている。図示はせぬが各ベッドAの空間的上方位置には夫々ミシンヘッドが設けられている。図3にはミシンヘッドに備えられた上下動自在の縫製用の鉤針Bが示される。CはベッドAにおける基枠、Dはルーパ装置を示す。
【0008】
上記基枠Cについて説明する。1はフレーム、2は被縫製物や刺繍枠を支える為の天板で、フレームに取付けられた種々の部材のメンテナンスの為にフレーム1に取外し自在に取付け(例えばボルト止)てある。3は針板で、針落孔4や糸引き上げ孔を備えており、天板に着脱自在に取付けてある。
【0009】
上記ルーパ装置Dについて説明する。6はフレーム1に取付けたレールで、図2の紙面と垂直方向に長く形成してある。7はルーパ台で、下面に取付けたスライド体8によって上記レール6に沿って真っ直ぐに横動可能となっている。移動方向は水平面内において円弧軌跡を描く方向であってもよい。9はルーパアセンブリで、ルーパ台7の横動により選択的に針落位置に到来するようルーパ台7の移動方向に並設させてある。
【0010】
図1の10はルーパ台7を横動させる為の部材で、本例ではフレーム1に貫挿した横動杆が示される。ルーパ台7は該横動杆10と固定してあり、横動杆10の図示外の端部はルーパ台7を横動させる為の駆動装置に連結してある。11は針落位置のルーパを回転駆動する為の駆動装置、12は針落位置のルーパを上方の作動位置と下方の退避位置との間で上下動させる為の昇降装置、13は退避位置にあるルーパをその回動方向において所定の準備位置に保持する為の保持機構を夫々示す。
【0011】
上記ルーパアセンブリ9を示す図6について説明する。14はルーパを回動及び上下動自在に支える為のルーパ軸で、ルーパ台7に回動及び上下動自在に取付けてある。ルーパ軸14は糸の挿通の為に中空である。15はルーパ軸14に固着した周知のルーパで、針落孔16や上記中空部と連通する糸導出孔17を有する。18はルーパ15に回転駆動力を伝える為の受動歯車で、ルーパ軸14に取付けてある。19はルーパ15の回動方向の位置決用カムで、係合凹部20を備えており、図8の如く取付用の押ねじ19aでもってルーパ軸14に取付けてある。図3に示される21は昇降装置12からの昇降駆動力をルーパ15に伝える為の連繋体で、先端部には昇降装置との係合片22を、元部には回り止片23を夫々備えルーパ軸14に対して相対回動自在かつ軸線方向に一体化させる為のベアリング24で取付けてある。
【0012】
上記駆動装置11について説明する。31は連繋用の歯車を収容するハウジングで、フレーム1に取付けてある。32はハウジング31の蓋である。33は主軸で、フレーム1、ハウジング31を貫通する状態に横設され、図示外の一端部には駆動源例えばモータが接続してある。35はルーパ駆動用の駆動軸で、ハウジング31内において連繋用の歯車34, 36を介して主軸33と連繋している。37はルーパを回転駆動する為の駆動歯車で、軸35に固着してある。38は駆動歯車37に対する受動歯車18の噛合を案内する為の案内歯車で、図9の如く有歯部39と欠歯部40とを備えている。有歯部39は駆動歯車37と同径、同ピッチに形成してある。欠歯部40の範囲は、後述のように受動歯車が横移動する場合にそれとの噛合を防止するに充分な大きさにしてある。上記案内歯車38は駆動歯車37の歯と有歯部39の歯とが連続する状態で駆動軸35に取付けてある。本例では案内歯車38と駆動歯車37とは一体形成してある。
【0013】
上記保持機構13について説明する。41はルーパ台7に固定した基板、42はカム19との係合用の回り止片で、図7の如く各ルーパアセンブリ9のカム19と対応する数が備わっており、各々は丸棒状に形成され、基板41に取付けてある。尚43は取付ねじ19aを操作する為の操作窓で、図5の如く退避位置にある全ルーパアセンブリ9におけるカム19の取付ねじ19aと対向する位置及び大きさに形成してある。又44は連繋体21を回ることなく上下に案内する為の部材を示し、上記回り止片23と係合させてある。図1及び図8に示される45はカム19の凹部20が上記回り止片42から外れることを防止する為の離脱規制部材で、図8から明らかなように高さ方向の位置は、退避位置にある受動歯車18の上面との間の間隙が、凹部20に対する回り止片42の嵌合深さよりも小さくなる位置に設けられ、図2に示す如く、平面的には針落位置にあるルーパ15以外のルーパ15に係わる受動歯車18と重合する位置に設けてあって、フレーム1に対する固定の為に前記ハウジング31に取付けてある。
【0014】
次に上記刺繍ミシンの動作を説明する。通常の縫製時においては、針落位置にあるルーパアセンブリ9即ちルーパ15の針落孔16が針板3の針落孔4と重合する状態となる位置にあるルーパアセンブリ9は、昇降機構12により上昇されて図3の如く作動位置にあり、その受動歯車18は駆動歯車37に噛み合っている。主軸33が往復回動され、歯車34, 36、駆動軸35、駆動歯車37、受動歯車18を介してルーパ15が周知の如く往復回動される。この回動は周知のように縫製用の鉤針Bの上下動と同期して行われる。また天板2の上では刺繍枠に張り広げられた布が鉤針Bの上下動と同期して間欠的に横移動される。その結果、ルーパ15の糸導出孔17を通して供給される縫糸46により針板3上において上記の布に対する縫製が行われる。尚上記縫製の場合において、上記鉤針Bにおける鉤部の方向は、周知のように縫製の仕方及び布の移動方向に応じて決定され、環縫いを行う場合は鉤部から糸が外れにくいよう布の移動方向と反対方向であり、糸を1針毎に布から引き上げるだけの縫い方(ループ縫いと称せられる縫い方)の場合は糸の外れが容易に行われ得るよう同方向である。ルーパ15が回動を行う始点の方向例えば針落孔16に対する糸導出孔17の方向は、周知のように鉤部に対する糸の掛かりが確実となるよう上記鉤部の方向に応じて定められ、例えば糸導出孔17が針落孔16に対して鉤部の方向とは反対側を向く状態にされる。
【0015】
次に縫製に用いる糸の変更の為のルーパ15の交換を説明する。針Bが上死点に位置し、ルーパ15が回動方向の原点に位置した状態、例えば糸導出孔17が図2の針落位置(駆動歯車37と連繋する状態となる位置)にあるルーパ15の如く時計の9時の位置に到来した状態でミシンを停止させる。次に、縫製を終えた糸を手作業又は後述の糸切断装置により切断する。次に昇降装置12により針落位置のルーパアセンブリ9を図4の如く退避位置に下降させる。
【0016】
この状態では、受動歯車18は図9の(A)の中段の図(この図は底面側から見た図である)に示される如く案内歯車38の有歯部39と噛み合っており、カム19は回り止片42の上に乗っている。次にその状態において主軸33によって案内歯車38が矢印X方向に回動される。その回動過程において、図9の(A)のように受動歯車18が案内歯車38の有歯部39と噛み合っている状態では受動歯車18は案内歯車38の矢印X方向の回動と連動して回動する。やがて図9の(B)に示されるように受動歯車18が案内歯車38の有歯部39から欠歯部40に出ると、そこで受動歯車18の回動は停止する。またこの停止の時、同図に示されているようにカム19における嵌合凹部20が回り止片42と嵌合する。その結果、ルーパ15の回動方向の位置は、受動歯車18が上記案内歯車38の有歯部39から外れた時の位置、例えば図1の針落位置以外の位置にあるルーパ15の如く糸導出孔17が時計の12時の位置(この位置を準備位置と呼ぶ)に保持される。尚このような状態が達成されるよう、カム19は受動歯車18との回動方向の位置関係が予め調整される。その調整は、凹部20が回り止片42と嵌合している状態において、取付ねじ19aを緩め、ルーパ15を軸14と共に所定の準備位置まで回し、そこでねじ19aを締めることにより行う。作業はミシンの前面側から窓43を通して行なう。
【0017】
引き続き案内歯車38が図9(B)の矢印X方向に回動され、図9の(C)に示される如き状態となる。この状態となると次に横動杆10によってルーパ台7が例えば図11の矢印47方向に横移動される。その横移動の場合、図10及び図11の如く全ての受動歯車18が欠歯部40を通って横移動する為、当然のことながらルーパ15は何等回動しない。上記ルーパ台7の横移動によって、図11の(B)の如く次に作動させるべきルーパ15(そのルーパ15には、先に作動させていたルーパとは異なる色あるいは種類の糸が予め装填されている)が針落位置にもたらされる。尚そのルーパ15に関しても保持機構13によって上記の説明と同様にしてその回動方向の位置が予め決められた準備位置に保持されている。
【0018】
上記新たなルーパ15が針落位置にくると、次に主軸33の回動によって案内歯車38が図9の(C)の矢印Y方向に回動される。そして案内歯車38における有歯部39が図9の(B)の如き位置までくると受動歯車18は有歯部39と噛み合って回動を開始する。受動歯車18の回動に伴ないカム19が回動する。するとカム19は嵌合凹部20が回り止片42から外れて図9の(A)の如く回り止片42の上に乗り上げる。上記有歯部39が受動歯車18と噛み合いを開始する場合、受動歯車18は以前に有歯部39から外れた時のままの状態に保持機構13によって保持されている為、その噛み合いの開始は受動歯車18の歯先と有歯部39の歯先とがぶつかり合ったりすることなく極めてスムーズに行われる。上記のようにして受動歯車18が案内歯車38の有歯部39と噛み合うに至ると、昇降装置12により上記新たに針落位置に到来したルーパアセンブリ9が上昇される。その結果、受動歯車18は案内歯車38の歯をガイドにして駆動歯車37に至り、ルーパ15は図3に示されるように縫製時の作動位置に至る。
【0019】
上記ミシンにおいてフレーム1に取付けた種々の部材のメンテナンスは天板2をフレーム1から取外して、上面側をオープン状態にし、そこから行なうことができる。この場合、待機位置即ち針落位置以外の位置にあるルーパアセンブリ9に誤って手を触れても、離脱規制部材45によりそのルーパアセンブリ9の上昇は阻止され、カム19の凹部20は回り止片42に嵌合したままに保たれる。従ってルーパ15の回動方向の位置は準備位置のままに保持される。
【0020】
次に図3、4、12に示される昇降装置12について説明する。この昇降装置12は、糸替えの為に多数のルーパを横動させてそれを選択的に針落位置に位置させると共に、上記ルーパは針落位置での縫製動作の為の上方の作動位置と、上記横動の為の下方の退避位置との間で位置替させるようにしてある多色縫い刺繍ミシンにおいて、上記ルーパの昇降をルーパの真下の位置に定められる糸の供給経路を避けた側方の位置から、円滑に行なわせ得るようにしようとするものである。
【0021】
以下図面について説明する。符号A〜D、1〜45で示される構造及びその作用は前述の通りである。次に昇降装置12について詳細に説明する。51は昇降装置12の各部材を針落位置にあるルーパ15の真下の糸46の供給経路Pを避けた側方の位置にて支える為の支持枠で、他の種々の機構を避ける為に上記経路Pの後方(該ミシンの操作者の位置する側即ち図3の左方から見て後方)の位置に設けられ、前面には縦長の回り止片52を備えておって、ボルト51aでフレーム1に取付けてある。53は案内杆である。54はルーパアセンブリ9を上下動させる為の昇降体で、案内杆53に上下動自在に装着してあり、回り止の為に後部に備えた嵌合体55を上記回り止片52に上下動自在に嵌合させてあり、前部には前記係合片22との係合部56を備える。係合部56はルーパ台7の横動に伴なう係合片22の左右方向への出入を自在とする為に、側面形状をコ字状に形成されている。係合部56は係合片22を上昇させる為の押上体57と、下降させる為の押下体58とを備える。押下体58における59は係合片22を下向に付勢する為の押片で、押下体の基材58aに対して上下動自在に備えられ、ばね60でもって下向に付勢してある。次に61〜63は上記昇降体54を上下動させる為の構成を示し、61は昇降用の駆動軸で、支持枠51に回動自在に装着してある。この軸61は他のベッドにも跨って水平状態に設けてあり、一端には昇降操作用の駆動装置が接続してある。62, 63は軸61の往復回動運動を昇降体54の上下運動に変換する為の部材を示し、62はレバー、63はリンクを夫々示す。リンク63は昇降体54をコジレ無しに円滑に上下動させる為に案内杆53の貫通部と係合部56との略中間において昇降体54に連結してある。
【0022】
上記昇降装置12の動作を説明する。ミシンの縫製動作時は昇降体54は図3及び図12の(A)に示すように上昇位置にあり、ルーパ15は作動位置にある。ルーパ15を退避位置に移動させるときは駆動軸61が図において左回転し、部材62, 63を経て昇降体54が図4及び図12の(B)の如く下降位置まで下降する。この下降の場合、係合片22はばね付勢の押片59によって押下げられる為、カム19の下面が凹部20以外の場所で回り止片42に当接しそこで係合片22の下降が停止しても何等支障は生じない。前述のようにルーパ15が準備位置まで回動すると凹部20が回り止片42と対向する為、押片59の押下力により係合片22が下降し、凹部20と回り止片42の嵌合が達成される。
【0023】
次に図1〜4、13〜18において、Eは糸切断装置を示す。この糸切断装置Eは、多数のルーパの交換的な利用により糸を種々に交換しながら縫製を行い得るようにしてあるミシンにおいて、糸の交換に当っては、それまで縫製に用いていた糸を、ルーパから抜け落ちることを阻止する為に保持してその保持状態で切断を行い、しかもそのように構成されたものであっても、該糸切断装置の組付、調整、メンテナンスの作業を容易に行うことができるようにする事を目的とするものである。
【0024】
以下図面について説明する。符号A〜D、1〜45の構造及びその作用は前述の通りである。次に糸切断装置Eについて説明する。該装置Eは、ルーパ15の上下動の支障とならぬようその上下動軌跡から側方に外れた位置において糸の切断を行なう切断機構E1及びその操作機構E2を備える。切断機構E1は、切断後布に付随してその下に残る側の糸と、ルーパ15の側に残る糸とを出来るだけ短くする為に、僅かにルーパ15の上下動の軌跡を避けただけの成るべくルーパ15に近い位置に設けてある。切断装置Eは又、針孔4とルーパ15との間の糸を上記切断機構E1にもたらす為の糸寄機構E3及びその操作機構E4とを備える。
【0025】
先ず切断機構E1について説明する。図13の66は切断機構E1の各部材を支える為の支持体で、天板2の下面に近接して位置する基板部66aと、基板部66aを上記位置に支える為の支持部66bから成り、支持部66bをフレーム1にボルト止してある。67はカッタを示し、カッタに向けてもたらされた糸をもたらされた位置のままで切断できるよう基板部66aに固定した固定メス68と、その固定メス68に対して枢着した可動メス70とにより構成してある。68a, 70aは各々の刃を示す。69は固定用ビス、71は枢着用のピンである。72は可動メス70の作動用のアームである。
【0026】
次に操作機構E2について説明する。図14の符号74は操作軸を示し、天板2近くの直下位置においてフレーム1を貫通する状態に横設してあり、図示外の駆動源に接続している。75はメス操作用のカムで、天板2の下の高さ寸法の小さい空間に収まるよう円筒カムが用いてある。76はカム75の動作を可動メス70に伝える為の伝動片で、天板2と、その下を横動するルーパ15や後述の糸保持機構との間の狭い空間に位置させ得るよう高さ方向の寸法が小さい平らな形状に形成され、中間部76cを基板部66aにピンでもって枢着され、一端に取付けた従動片76aをカム75のカム溝75aに嵌合させ、他端をピン76bでもってアーム72に連繋させてある。77はカム溝75aからの従動片76aの外れ(浮上り)を阻止する為の部材で、伝動片76に形成した長孔76dを通して後述の支持体80に止着したピンをもって構成してある。
【0027】
次に糸寄機構E3について説明する。80は糸寄機構E3の各部材を支える為の支持体で、天板2の下面に近接して設けられ、フレーム1にボルト止してある。81, 82は上側及び下側の糸寄片を示し、支持体80にボルト止したガイド83, 84によって水平方向への進退が自在となっている進退部材85の前端部に備えてある。尚下側の糸寄片82は進退部材85と一材で形成され、上側の糸寄片81は進退部材85に溶接してある。
【0028】
操作機構E4について説明する。図14の86は糸寄片81, 82を進退動させる為のカムで、操作機構E2, E4の組立に当りカム75, 86を操作軸74に取付ける場合に両カム75,86の位置関係に考慮を払わずとも、可動メス70と糸寄片81, 82との動作タイミングの関係が設計通りとなるようカム75と一体に形成してある。87はカム86の動きを糸寄片81, 82に伝える為の伝動片で、伝動片76と同様の考慮から平たい形状に形成してある。尚87aはカム溝86aに対する従動片、87bは進退部材85との連繋用のピン、87cは中間部を支持体80に枢着する為のピンを夫々示す。
【0029】
次に図1及び図2のFは上記糸切断装置Eに関連して設けられた糸保持装置を示す。該装置Fは糸の切断を行う場合に切断された糸がルーパ15から抜け落ちることを防止する為のものであり、以下図1、図2及び図15、図16に基づいて説明する。図1、2の90は各ルーパ15に関して夫々個別に設けられた糸保持手段である。各糸保持手段90は前記切断機構E1と同様の目的で各ルーパ15に成るべく近く設けてある。糸保持手段90は一対の把持片92, 93を有する。把持片92は組立の容易化のために全糸保持手段90に共通のベース91と一体に形成してある。把持片93は把持片92との挟着面92b,93bの当たりの調節の為に、その元部をベース91に対して横方向(図2の左右方向)への位置調節を可能に枢着してある。即ち図16に示されるように、把持片93の元部93aは保持筒94に回動可能に遊嵌され、保持筒94はその内径よりも細径の止め具(ボルトを例示する)95によりベース91に取付けてある。96は把持片93の抜け止め用のワシャである。この構成では、把持片93と把持片92とにおける挟着面93b,92bがそれらの全域においてぴったりと密着するように把持片93の元部93aの位置を決めることが出来る。そこで止め具95を固定する。このようにすると、糸が挟着面92b,93bの入口側或いは奥側等どの位置に来てもそれを確実に挟んで保持できる。97は把持片93の操作片、97aはばね受け用の凹部である。98はばねの保持片で、ベース91に取付けてある。99は把持片92, 93相互を所定の挟着力で閉じさせる為の圧縮コイルばね、100はばね受け用のワシャである。
【0030】
このような構成の糸保持装置Fは原点の位置で止まったルーパ15から糸寄機構E3によって糸保持手段90にもたらされる糸を確実に保持する為に、図17の(A)に示されるように、把持片92における挟着面92bの延長線92cが原点の位置にあるルーパ15の糸導出孔17の位置を通る状態となる位置関係でルーパ台7に取付けてある。
【0031】
次に図1〜図4に示されるGは針落位置に位置したルーパ15に関連する糸保持手段90を解除する為の解除機構である。該機構Gはフレーム1にブラケット101を介して取付けたソレノイド102によって構成されている。ソレノイド102のプランジャ103は、上記糸保持手段90の操作片97と対峙する。ソレノイド102へ通電するとプランジャ103が突出する。すると操作片97を押して把持片92,93の間を開く。
【0032】
次に上記糸切断装置E及びそれに関連する構造の作用を説明する。上記糸切断装置Eは、一つの例として、一つの糸を用いた縫製が終わり次に糸替えをして別の糸で縫製を行う場合に利用する。その動作について図17、18及び図19に基づき説明する。主軸回転数が通常の毎分500回転程度で縫製していた後、停止の為に主軸回転数を例えば200回転程度まで下げる。そして、布における所定場所までの縫製が終わると、図19に符号201で示す如く、先ず鉤針Bの上下動が停止されると共に、主軸33の回動が停止される。この場合、ルーパ15は回動方向の原点の位置例えば図17の(A)に示される如く糸導出孔17が時計の9時の位置で回動が停止する。次に昇降装置12によってルーパアセンブリ9が下降され、図4及び図17の(B)の如くルーパ15が糸寄片81, 82の進退経路から下方へ退避する(図19の符号202参照)。また解除機構Gによって把持片92, 93の間が図17の(C)の如く開かれる(図19の符号203参照)。次に糸寄片81, 82が図17の(C)、(D)の如く糸保持手段90の側へ前進し、針孔4とルーパ15における糸導出孔17との間の縫糸46を把持片92, 93の間及びメス68, 70の間にもたらす(図19の符号204参照)。次に解除機構Gの復旧によって図18の(E)、(F)の如く把持片92, 93の間が閉じられ、上記縫糸46が保持される。次に図18の(G)、(H)の如く、可動メス70の作動によって上記の縫糸46が切断される(図19の符号205参照)。この切断の場合、布104と把持片92, 93との間の縫糸46は、一端は布104に固定されており、他端は把持片92, 93により把持されている。即ちそれらの間の縫糸46は一定の引張状態で両端が固定されている。従ってメス70が作動した場合、縫糸46が切れぬままメス68, 70の重合面の間に入り込んでしまうようなことはなく、メス68, 70によって確実に切断される。上記切断が済むと糸寄片81, 82は元の位置に復帰される(図19の符号206参照)。
【0033】
上記のように糸の切断が完了すると、前述のようにルーパ15の交換を行う。ルーパ交換の過程で次に用いる糸が備わっているルーパ15が針落位置に来ると、そのルーパ15が図3の如く上昇される(図19の符号207参照)。ルーパ交換が完了すると、鉤針Bの上下動が開始される(図19の符号208参照)と共に、主軸33の回動が低速で開始され、又刺繍枠の横移動も開始されて刺繍柄の縫付が開始される。この開始の場合、縫糸の先端は把持片92, 93によって保持されている。従って鉤針Bがルーパ15の針落孔16内に下降し、ルーパ15が回動すると、ルーパ15の糸導出孔17を通して供給される糸は鉤針Bにおける鉤部に確実に引掛かる。従って縫製は目飛び無く適正に開始される。上記縫糸の先端の保持は、上記縫い始めの縫付が確実となった後、図19の符号209の如く解除される。そして主軸の回転数も上昇されて通常の縫製状態となる。
【0034】
次に、上記切断装置Eは別の利用例として、布における一つの場所での刺繍の縫製を終わって、他の場所に別の刺繍を縫製する場合に利用する。その場合、図19に符号210で示される時点において、新たに縫製を施す場所を針落位置に到来させる為の枠移動を行う。他の動作は上記糸替えの場合と同様である。
【0035】
次に図1、3、20、21において、Hは糸絡み防止機構を示す。この糸絡み防止機構Hは、縫製の終了後、糸を切断し、しかもその切断の場合、切れた糸がルーパ15から抜け落ちぬように予め保持した状態で切断するようにしてあるミシンにおいて、上記保持されている糸を用いて再び縫製を開始する場合に、その糸が回動するルーパ15に巻き付くことを防止できるようにすることを目的とするものである。
【0036】
以下図面について説明する。符号A〜G、1〜103の構造及びその作用は前述の通りである。次に糸絡み防止機構Hについて説明する。110は糸保持手段90によって保持されている糸46をルーパ15の近傍において持ち上げる為の持上部材である。持上高さは、ルーパ15に対する絡まりを防止する為に例えばルーパ15の上面15aと同等の高さである。ルーパ15における上面と側面との間の角部15bに滑らかなアールが形成されていてそこでの糸の滑りが良く、糸が多少ルーパ15の側面に当たっても上面の側に導かれるようになっている場合には、上記持上高さはもっと低くて良い。111は上記持上部材110を上記のように機能する位置まで持ち上げたり糸切断時の邪魔にならぬように下降させたりする為の昇降機構を示す。112は該機構111における昇降部材で、ルーパ台7の横動の邪魔にならぬようその横動範囲を避けてフレーム1に沿わせてあり、フレーム1に取付けたガイド113によって案内されている。114は持上部材110を支える為の部材で、左右の昇降部材112に橋架け状に取付けてある。115は昇降部材112を上下動させるための部材で、ルーパ15の上下動と同時作動の為にルーパ昇降駆動軸61に取付けたレバーが例示され、該レバー115の先端部115aが昇降部材112の連繋部112aと係合している。
【0037】
次に上記糸絡み防止機構Hの作用を説明する。糸切断装置Eの作動の為にルーパ15が図4のように退避位置に下降されると、持上部材110も同様に下降される。その後新たな刺繍縫いの開始の場合、ルーパ15が図3の如く作動位置に上昇されると、持上部材110も昇降機構111によって図3の如く上昇され、糸保持手段90によって先端が保持されている糸46を同図及び図21の(A)の如く持ち上げる。この状態において図21の(B)の如くルーパ15の作動が開始される。従って、持ち上げられた糸46は回動するルーパ15に絡まるようなことは無く、縫製の開始が円滑に行われる。
【0038】
次に図3、5、22〜24において、Jは糸調子装置を示す。この糸調子装置Jは、複数のルーパ15を保持するルーパ台7の横動によってそれらのルーパ15を選択的に針落位置に位置させることにより、各ルーパに付されている異色の糸を選択的に用いて布に対する縫製ができるミシンにおいて、どのルーパを用いて縫製を行う場合においても、常に縫い始めから良好な糸調子で縫うことができるようにすることを目的とするものである。
【0039】
以下図面について説明する。符号A〜G、1〜103の構造及びその作用は前述の通りである。次に糸調子装置Jについて説明する。120は糸調子機構保持用のフレームで、前記基板41を介してルーパ台7に取付けてある。120aは糸挿通用の窓である。121は各ルーパ15に至る糸の調子を個別に調節する為の複数の糸調子機構で、ルーパ台7が横移動しても各ルーパ15との位置関係を一定に保つ為に、上記フレーム120に取付けてある。122は各糸調子機構121の調子を変更するための変更機構を示す。
【0040】
次に上記糸調子機構121について図3、5に基づき説明する。123, 124は鉤針Bによって引かれる糸46に抗力を与える為の糸調子器、125は糸調子器124を通して引き出された糸に張力を与える為のテンション装置である。上記糸調子器123は糸に一定の抗力を与える周知のもの、124は抗力を強弱変更可能な公知(例えば実公昭53−6611号公報)のものである。これらにおいて126, 127は糸調子皿、128は糸調子皿127を糸調子皿126に押圧する為のばね、129は上記押圧力を調節する為のつまみである。糸調子器124における130は抗力を変更させる為の抗力変更部材で、糸調子皿127を糸調子皿126から離反させて抗力を弱めるようにしたゆるめ棒を例示する。
【0041】
次に上記テンション装置125について説明する。131は糸に弾力的な引き力を与える為のばね腕で、糸取りばねとも称されるものであり、自由端部に糸通し環132を備える。該ばね腕131の元部133は、上記引き力の変更の為に、枢着片例えばピン134によりフレーム120に枢着してあると共に、操作腕135を一体に備える。操作腕135は、長孔136を通して上記変更機構122による操作の為にフレーム120の裏側に突出させてある。137は上記操作腕135を位置替え可能な範囲の一方の側に位置させる為の部材で、操作腕135が他方の側に移動することを可能にする為にばねが用いてあり、フレーム120に取付けた保持用のピン138に装着してある。ばね137の一端139はフレーム120の透孔140に係合させ、他端141を操作腕135に係合させてあって操作腕135をその位置決部としての長孔136の下端136aに押し付けるようにしてある。142,143は糸通し環132を通る糸の向きを張力の付与に適正な向きにする為の糸ガイドで、フレーム120に取付けてある。
【0042】
次に変更機構122について説明する。145は変更操作軸で、他のベッドにも共通に設けられており、一端には操作装置が取付けてある。146は操作部材で、上記部材130を操作する為の操作部147と操作腕135を操作する為の操作部148とを備えており、針落位置に位置したルーパ15に関連する糸調子機構121のみを操作するようその位置を選定して上記操作軸145に取付けてある。
【0043】
次に前記縫製の場合における糸調子の設定及び上記糸調子機構121の動作について説明する。縫製が環縫いの場合には糸46に与えられる抗力及び張力を大きくする。即ち操作部材146は図22の実線の位置におき、糸調子器124の糸調子皿127は図22の実線の状態に、テンション装置125のばね腕131は図23の実線の状態におく。この状態で縫製をすると縫製中における布に対する糸の引き締め力が大きく、しっかりと締まった適正な環縫いを施すことができる。
【0044】
一方縫製が公知のループ縫い(例えば特開平4−34062号)の場合、糸46に与えられる抗力及び張力を小さくする。即ち操作軸145を回して操作部材48を図22の2点鎖線の位置におき、糸調子器124の糸調子皿127は図22の2点鎖線の状態に、テンション装置125のばね腕131は図23の2点鎖線の状態におく。この状態で縫製をすると、針板3上では布からの糸の引上をスムーズに行え、所定の高さのループ縫いを適正に行える。
【0045】
次に、縫製に用いる糸の変更の場合、上記糸調子装置Jはルーパ台7に取付けてある為、ルーパ台7が横移動しても各ルーパ15と各々に関連する糸調子機構121との位置関係は不変である。従ってルーパ台7の横移動によるルーパ15の交換が行われても、各ルーパ15と各々に関連する糸調子機構121との間の糸は常に張りのある状態に保たれる(不要な弛みができるようなことは無い)。従ってどのルーパ15を用いて縫製を行う場合にも、ルーパ15に至る糸にはその縫製の開始時から糸調子器123,124による適正な抗力と、テンション装置125による適正な張力を与えた状態で縫製を行うことができる。
【0046】
次に図3、5、25において、Kは糸切れ検知装置を示す。この糸切れ検知装置Kは、複数のルーパ15を保持するルーパ台7の横動によってそれらのルーパ15を選択的に針落位置に位置させることにより、各ルーパに付されている異色の糸を選択的に用いて布に対する縫製ができるミシンにおいて、縫製時には確実な糸切れ検知ができ、糸替え中においては誤った検知を防止できるようにすることを目的とするものである。
【0047】
以下図面について説明する。符号A〜D、J、1〜62,121〜148の構造及びその作用は前述の通りである。次に糸切れ検知装置Kについて説明する。151は検知器本体で、極めて軽い力での作動を可能にする目的と次に述べる検知片の構成を簡易化する目的から、可動部152が回転動作する回転動作形のマイクロスイッチが用いてあり、前記支持枠51に取付けてある。153は糸切れの有無を探る為の検知片で、針落位置にあるルーパに係わる糸の通過経路Pに沿わせて、且つその経路を横切る方向への移動を自在に設けてあり、又糸に抗力及び張力がかかっていて張りがある場合にはその糸によって上記方向への移動が遮られ、糸が切れて上記張りが無くなった場合には糸を押して上記方向へ移動(糸が不存在の場合にはそのまま移動)するように上記方向への付勢力を持たせてある。この例ではマイクロスイッチの可動部152に取付けることによって上記移動を可能にすると共に、可動部152が有する付勢力を利用している。図5に示される如く、該検知片153における糸との対向部153aは糸との横ズレ防止の為にV字状にしてある。154は検知片153を非作動状態にする為の退避用レバー、155はレバー154を操作する為の操作片で、ルーパ交換の時にそれと連動して非作動とする為に、ルーパ昇降機構12のレバー62に取付けてある。
【0048】
上記糸切れ検知装置Kにあっては、通常の縫製中においては図25の(A)のように検知片153が糸46に当接し、検知器本体151は糸が適正な状態にあることを示す信号例えば導通信号を発する。一方糸46が切れた場合には検知片153が(B)の如く移動し、検知器本体151は糸切れが生じたことを示す信号例えば非導通信号を発する。糸替えの為のルーパ交換の時には、ルーパを下降させる為にルーパ昇降駆動軸61が回動すると操作片155によってレバー154が(C)の如く押され、検知片153は非作動状態となる。従って、ルーパ交換の理由によって検知片153の前から糸46が不存在となっても、検知器本体151が誤って糸切れ信号を発することが防止される。
【0049】
【発明の効果】
以上のように本願発明にあっては、ルーパ台7の下方位置に、糸調子機構保持用のフレーム120を連結し、それには、複数のルーパ15の夫々に対応させて、各ルーパに至る糸の調子を個別に調節する為の複数の糸調子機構121を備えさせ、ルーパ台7が横移動しても各ルーパと対応糸調子機構121の横方向の位置関係が一定に保たれるようにしてあるから、ルーパ台7を大きく横移動してルーパ15を針落位置4から遠く離しても、復帰させて縫製を再開させる場合には、常に縫い始めから良好な糸調子で美しい縫目を形成出来る優れた効果がある。
【0050】
その上本願発明にあっては、上記フレーム120には、上記複数のルーパの夫々に向けて供給される複数の糸46の調子を個別に調節する為に、夫々は上記の糸に抗力を与える為の糸調子器124と、糸に張力を与える為のテンション装置125とから成る複数の糸調子機構121、121・・121を備えさせ、しかも上記糸調子器124と、テンション装置125は、変更機構122によって対応する糸に対する抗力と、テンション装置の糸に与える張力とを変更できるようにしたものであるから、例えば環縫いの場合、ループ縫いの場合等、縫製の方法が変更された場合においても、糸調子を簡単に対応調節し得る作業上の効果がある。
しかも上記の糸調子を変更する場合、対応する糸調子器の糸に対する抗力と、テンション装置の糸に与える張力とを同時に変更できるものであるから、いずれか一方のみを変更し、他方の変更を怠る等の不測の事故は予め予防できる効果もある。
【0051】
その上本願発明にあっては、上記複数、例えば5個の糸調子機構121における全ての糸調子器124の糸に対する抗力と、テンション装置125の糸に与える張力とを必要時には同時に変更できるようにした変更機構122を備えさせるものであっても、その変更機構122は、基枠の側であって、上記複数の糸調子機構121の内、針落位置に選択的に位置された一つの糸調子機構121のみに対応させる位置に備えさせれば足りるものであるから、それを設備するための費用は極めて安価となり、保守点検も簡易になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】天板を除去した状態のベッドの平面図。
【図2】天板及び糸切断装置を除去した状態のベッドの平面図。
【図3】縦断面図。
【図4】ルーパアセンブリが下降した状態の縦断面部分図。
【図5】ルーパ装置の正面図。
【図6】駆動歯車及びルーパに関連する構造を示す一部破断斜視図。
【図7】ルーパの保持機構を示す底面図。
【図8】ルーパアセンブリとその保持機構を示す一部省略側面図。
【図9】ルーパ切替の動作順を説明する図。
【図10】ルーパ切替時における受動歯車と駆動歯車及び案内歯車との関係を示す正面図。
【図11】(A)、(B)はルーパ切替時における受動歯車と案内歯車との関係を示す水平断面図。
【図12】ルーパ昇降機構の動作説明図。
【図13】糸切断装置の斜視図。
【図14】糸切断装置の機構図。
【図15】糸保持装置の分解斜視図。
【図16】可動把持片元部の取付構造を示す断面図。
【図17】(A)〜(D)は糸引寄機構、糸保持手段及び糸切断機構の動作説明図。
【図18】(E)〜(H)は糸引寄機構、糸保持手段及び糸切断機構の動作説明図。
【図19】動作説明用タイムチャート。
【図20】糸絡み防止機構の機構図。
【図21】(A)、(B)は糸絡み防止機構の動作説明図。
【図22】糸調子機構の縦断面部分図。
【図23】テンション機構の正面図。
【図24】(A)は張力が大きい状態の場合のテンション機構の背面図、(B)は張力が小さい状態の場合のテンション機構の背面図。
【図25】(A)〜(C)は糸検知装置及びその動作を説明する為の図。
【符号の説明】
A 基枠
7 ルーパ台
13 保持機構
15 ルーパ
18 受動歯車
37 駆動歯車
38 案内歯車
Claims (1)
- 基枠(A)には、針落位置(4)に位置するルーパ(15)を駆動する為の駆動歯車を備え、一方、上記基枠(A)に対し横移動自在に装着したルーパ台(7)には、夫々駆動歯車との噛合用の受動歯車を備え、かつ、夫々水平回動自在な複数のルーパ(15)を、ルーパ台(7)の横移動により選択的に針落位置(4)に位置するよう配設している多色縫いミシンにおいて、上記ルーパ台(7)の下方位置には、糸調子機構保持用のフレーム(120)をルーパ台(7)における上記複数のルーパ(15)との一体的な横動を可能に連結し、
そのフレーム(120)には、上記複数のルーパ(15)の夫々に向けて供給される複数の糸(46)の調子を個別に調節する為に、上記の夫々の糸(46)に抗力を与える為の糸調子器(124)と、上記の夫々の糸(46)に張力を与える為のテンション装置(125)とから成る複数の糸調子機構(121)を配設し、
さらに、上記糸調子器(124)の夫々における基枠(A)の側には、糸(46)に対する抗力を変更させる為の抗力変更部材(130)を備えさせ、
上記テンション装置(125)の夫々における基枠(A)の側には、糸(46)に対する張力を変更する為の操作腕(135)を備えさせ、
一方、基枠(A)には、上記複数の糸調子機構(121)の内、フレーム(120)の移動に伴って、針落位置(4)に選択的に位置される糸調子機構(121)に対応させる位置に、上記糸調子機構(121)における糸調子器(124)の抗力変更部材(130)と、テンション装置(125)の操作腕(135)との夫々の位置を同時に変更して、対応する糸調子器(124)の糸(46)に対する抗力と、テンション装置(125)の糸(46)に与える張力とを同時に変更できるように上記糸調子器(124)の抗力変更部材(130)を操作する為の操作部(147)と、上記テンション装置(125)の操作腕(135)を操作する為の操作部(148)とを一体動自在に備える変更機構(122)を備えさせたことを特徴とする多色縫いミシン。
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