JP3775314B2 - 銘板付装置及びその製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自然楽器や電子楽器あるいは家具やその他電子機器など、備品やケース体などにプレート状の銘板を備えた銘板付装置、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種の製品には製品名やブランド名等を記した銘板が取り付けられている。この銘板の取り付け方として、備品やケース体などの母材に、銘板と同型状で銘板の厚さ程度の深さを有する凹部を形成し、この凹部に銘板を嵌合して接着等により固着する方法がある。また、母材の表面には例えば合成樹脂製の化粧用シート部材を被覆するものが多い。したがって、このような化粧用シート部材を被覆するものでは、前記凹部に倣って窪んだ化粧用シート部材上の凹部に銘板を嵌合接着するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の取り付け方では、経年変化により銘板の特に角部が浮き上がってしまい、見栄えが悪くなったり、最悪の場合その角部を引っかけて銘板が剥がれてしまうことがある。これは、化粧用シート部材は母材に対して接着されてはいるが、凹部内に窪まった部分では化粧用シート部材に張力(歪み応力)が加えられていることが原因と考えられる。この張力は凹部の一辺の部分ではその辺と直行する方向に働くが、隅の部分では両側の辺のそれぞれに対応する両方の力(すなわち辺の部分の略2倍の力)が加わって、特に、この隅の部分では化粧用シート部材が母材から剥がれる傾向が強い。別の表現をすれば、断面矩形の凹部に対して化粧用シート部材は丸みを持つように収縮してこの化粧用シート部材が母材から剥がれる傾向を示す。このため、銘板が特に角部において剥がれやすくなる。
【0004】
本発明は、プレート状の銘板を備えた銘板付装置において、銘板の剥がれを防止することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の銘板付装置は、銘板を固着する母材を有する銘板付装置において、前記母材は通気性を有し該母材に銘板嵌合用の凹部が形成されるとともに、該凹部の銘板端面近傍であって、少なくとも銘板の角部に対向する位置に、座ぐり溝または座ぐり孔が形成され、前記母材の凹部側の全面に化粧用シート部材が被覆して圧着され、前記母材と銘板との間に化粧用シート部材を介して、前記凹部に該銘板が嵌合されていることを特徴とする。
【0006】
上記のように構成された請求項1の銘板付装置によれば、母材の銘板嵌合用の凹部には、銘板端面近傍(銘板の周囲に対応する部分)の少なくとも銘板の角部に対向する位置に、座ぐり溝または座ぐり孔が形成されている。このため、化粧用シート部材は該凹部の部分で圧着されると、この化粧用シート部材は、この座ぐり溝あるいは座ぐり孔に対向する部分が、凹部内のその他の部分よりもさらに深く窪むようになる。一方、銘板は、母材の凹部に倣って窪んだ化粧用シート部材上の凹部に嵌合されるが、この銘板と化粧用シート部材との間には、上記座ぐり溝あるいは座ぐり孔に対向する部分で間隙ができる。したがって、この間隙の部分で化粧用シート部材が収縮しても、この化粧用シート部材が銘板の角部に接触しないか、仮に接触したとしてもこの角部に強い力を与えないので、銘板の剥がれが防止される。
【0007】
なお、前記銘板嵌合用の凹部を形成する工程と、前記座ぐり溝または座ぐり穴を形成する工程とは、同時進行する一つのステップでもよいし、別々に進行する二つのステップでもよい。また、「角部」とは多少丸みがあるものも含む。
【0008】
本発明の請求項2の銘板付装置の製造方法は、通気性を有する母材に、銘板嵌合用の凹部と該凹部の銘板端面近傍であって、少なくとも銘板の角部に対向する位置に、座ぐり溝または座ぐり孔とを形成するステップと、前記母材の前記凹部側の全面に化粧用シート部材を被覆して被せるステップと、前記化粧用シート部材側で前記母材のほぼ全面において、弾性を有する押え部材を配設するステップと、前記母材の前記凹部と反対側の面から大気を吸引して該母材に化粧用シート部材を吸着するステップと、前記母材と銘板との間に化粧用シート部材を介して、前記凹部に該銘板を嵌合するステップと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記のように構成された請求項2の銘板付装置の製造方法によれば、母材の凹部と反対側の面から大気を吸引するとき、母材の通気性により母材側から化粧用シート部材に対して負圧を与えることができるので、弾性を有する押え部材が化粧用シート部材を押さえる作用とこの負圧が相互に作用し、化粧用シート部材を母材の凹部に確実に吸着でき、請求項1の銘板付装置を好適に製造することができる。
【0010】
なお、母材に化粧用シート部材を吸着し結果としてこの化粧用シート部材の母材に対する圧着状態を維持する手段として、母材と化粧用シート部材との接合面の少なくともいずれか一方に接着剤を施すか、または両接合面間に摩擦形成処理を施すとよい。摩擦形成処理としては、例えば、一方の面に多数のパイルを布設し、他方の面に多数の微小な鈎状突起を布設し、鈎状突起がパイルに引っかかることで母材と化粧用シート部材との間に摩擦力が生じるようにする。これにより、化粧用シート部材が母材から剥がれなくなる。
【0011】
また、凹部以外の化粧用シート部材の表面と銘板の表面とを面一にすると、銘板に引っかかるのを防止できるとともに、見栄えもよくなる。
【0012】
また、座ぐり溝あるいは座ぐり孔は、角部だけに形成してもよい。また、「座ぐり溝」とは大きさに係わらず母材を貫通しない窪みのことであり、「座ぐり孔」とは母材を貫通する窪みも含む概念である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は実施形態の銘板付装置としての電子ピアノの譜面板10の一部平面図及び断面図であり、図1(B) は図1(A) のA−A矢視断面図である。なお、同電子ピアノの譜面板10以外の部分は本発明に直接係わりないので図示を省略する。また、以下の説明で「上端」とは譜面板10を立てた状態を基準とする概念である。譜面板10の中央上端方寄りには銘板1が取り付けられている。
【0014】
銘板1は金属板を加工して形成されたもので、上端側(図1(A) の左側)を僅かに円弧状にした略矩形状に形成され、その周囲4箇所の角部1aは丸みを付けた(いわゆる「アール」を付けた)形状とされている。Rの一例を上げると、R半径は4〜5mmである。また、銘板1の表面には、二点鎖線で仮想的に示したように製品の名称(ロゴタイプ)等11が記されるとともに表面保護の加工が施されている。
【0015】
譜面板10は楽器の左右方向(図1(A) の上下方向)に横長の部材であり、その上端側(図1(A) の左側)はゆるい円弧状の形状になっている。また、譜面板10は、木製板を加工して形成された母材2の表面に塩化ビニール製の化粧用シート部材3を接着剤で圧着して形成されている。
【0016】
母材2の化粧用シート部材3側の面には、銘板1に対応する位置に該銘板1の形状に整合する銘板嵌合用の凹部21が形成されている。さらに、この凹部21の内側の周囲には、この凹部21の中央部よりも深さの深い所定幅の座ぐり溝22が形成されている。この溝22の深さは例えば凹部21の底面から1mm程度である。化粧用シート部材3は、母材2の表面とともに凹部21の内側表面と座ぐり溝22の内側表面にも圧着されている。これによって、化粧用シート部材3の表面には、凹部21と座ぐり溝22に倣った形状の窪み3aが形成される。
【0017】
そして、銘板1は、この化粧用シート部材3の窪み3aに嵌合されるとともに、図示しない両面テープ等により窪み3a内に固着されている。なお、母材2における凹部21の中央部の深さは銘板1の厚み及び両面テープの厚みの和として設定されており、これにより、銘板1が固着された譜面板10において、該銘板1の表面と化粧用シート部材3の表面(窪み3a以外の表面)とは面一になっている。
【0018】
このように、母材2に銘板嵌合用の凹部21が形成されるとともに、該凹部21の銘板1の端面近傍であって、少なくとも銘板1の角部1aに対向する位置に、座ぐり溝22が形成され、母材2の凹部21側のほぼ全面に化粧用シート部材3が被覆して圧着され、母材2と銘板1との間に化粧用シート部材3を介して、凹部21に銘板1が嵌合されている。なお、譜面板10は、銘板1側に化粧用シート部材3を圧着した後、裏面にも同様な化粧用シート部材が圧着される。
【0019】
図2は実施形態の譜面板10の製造方法を示す図である。なお、同図では、図面を見やすくするために部材の厚みや深さ等を誇張して図示し、断面を示す斜線は省略してある。製造過程は、図2(A) に示すように、所定の形状に切り出された母材2の表面に切削加工等により凹部21形成し、さらに凹部21の内側の全周に座ぐり溝22を形成する。なお、凹部21と座ぐり溝22は同一工程で形成してもよいし、別工程で形成してもよいことはいうまでもない。次に、図2(B) に示すように、母材2の凹部21(及び座ぐり溝22)とともに該母材2の全面に化粧用シート部材3を被覆して被せる。このとき、母材2の凹部21側の全面か化粧用シート部材3の裏面かのすくなくともいずれか一方(両方の面両でもよい)に接着剤を塗布あるいは噴霧しておく。次に、図2(C) のように、さらにその化粧用シート部材3の上に、ゴム幕でできた風船等の押え部材20を配設する。
【0020】
次に、図2(D) に示したように、母材2の裏側すなわち凹部21と反対側の面に吸引力を与えて大気を吸引する。ここで、母材2は通気性を有する木製板であり、母材2を介して化粧用シート部材3の母材2側の面に負圧が与えら、さらに、押え部材20により化粧用シート部材3が母材2側に押しつけられるので、化粧用シート部材3が母材2に吸着される。次に、図2(E) に示したように、化粧用シート部材3の表面形成された窪み3a内に銘板1を嵌合し、この銘板1の裏面の両面テープ4により銘板1を窪み3a内に圧着する。
【0021】
図3はこの吸引工程に用いる装置の一例を示す図であり、母材2が入る大きさのフレーム30内に、通気性のある浮かし部材として網状部材40が配置されている。この網状部材40の上に、化粧用シート部材3が被せられた母材2を載置し、さらに、その上に風船等の押え部材20を載置する。そして、押え部材20に圧搾空気を充填するとともに、フレーム30の下面に形成された吸引口30a,30aから真空ポンプ等により空気を吸引する。なお、母材2は通気性を有する木製板であり、網状部材40及び母材2を介して化粧用シート部材3の母材2側の面に負圧が与えられ、押え部材20の押圧力とにより化粧用シート部材3が母材2に吸着される。なお、押え部材は弾性を有するものであれば風船以外のものであってもよい。ただし、フレーム30内の気密性を保つものが好ましい。
【0022】
なお、母材2の通気性は木製板のその素材に応じた小さな通気孔により得られるものであるが、この小さな通気孔の大きさは木材程度のものでなく、これより大きくても小さくてもてもよい。すなわち化粧用シート部材を吸着できるとともに銘板を嵌合して保持するという母材としての機能を果たすものであれば通気孔の大きさは限定されるものではない。
【0023】
ここで、図1(B) 及び図2(E) に示したように、化粧用シート部材3を母材2に圧着することにより、座ぐり溝22の底部の殆どの部分(隅の部分まで)に化粧用シート部材3が圧着されている。これにより、この座ぐり溝22の部分において、銘板1と化粧用シート部材3との間には、間隙Sができている。したがって、この間隙Sの部分で化粧用シート部材3が収縮して銘板1に接近しても、この化粧用シート部材3が銘板1の角部1aに接触しない。仮に接触したとしてもこの角部1aに強い力を与えないので、銘板1の剥がれが防止される。
【0024】
なお、上記実施形態において、銘板1のサイズは、略5cm角程度の大きさで厚さが略0.8mm程度の厚さであり、このような実施形態の効果は銘板の大きさと厚さの比が60:1〜6:1程度のものに顕著である。
【0025】
なお、以上の実施形態では、銘板嵌合用の凹部21の内側の周囲全周に座ぐり溝22を形成するようにしているが、図1(A) に示した銘板1の角部1aに対応する部分だけ形成してもよい。また、このように一部形成する場合(全周に形成しない場合)は、この角部1aの部分に母材2を貫通するような座ぐり孔を形成するようにしてもよい。この場合も、座ぐり溝の場合と同様な作用効果を得ることができる。
【0026】
以上の実施形態では、電子ピアノの譜面板を例に説明したが、銘板を天板、背面板部、口棒部のいずれかまたはその複数箇所、あるいはその他の部位に取り付けてもよく、これらの場合でも同様に製造することができる。また、母材は木製板以外のものでもよい。例えば図4に示したように、多数の穿孔5aを有する金属板でできた母材5を用いてもよい。すなわち、プレス加工等により母材5に銘板嵌合用の凹部51を形成するとともに座ぐり溝52を形成し、母材5の表面に接着剤等を塗布し、化粧用シート部材6を被せて、該化粧用シート部材6を母材5に圧着した後、銘板7を嵌合する。この場合、多数の穿孔5aが通気孔であり、前記実施形態と同様に母材5の裏側から大気を吸引する方法で製造することができる。
【0027】
また、以上の実施形態では、母材に化粧用シート部材を圧着し、この圧着状態を保つために、接着剤等を用いるようにしているが、例えば、母材と化粧用シート部材との両接合面間に摩擦形成処理を施すとよい。摩擦形成処理としては、前述のように、多数のパイルと多数の微小な鈎状突起を布設すればよい。
【0028】
実施形態では主に電子ピアノの譜面板に適用した例について説明したが、化粧用シート部材を用いるその他の製品に適用できることはいうまでもない。
【0029】
【発明の効果】
請求項1の銘板付装置によれば、銘板と化粧用シート部材との間に座ぐり溝あるいは座ぐり孔に対向する部分で間隙ができるので、銘板の剥がれを防止することができる。また、請求項2の銘板付装置の製造方法によれば、化粧用シート部材を母材の凹部に確実に圧着でき、請求項1の銘板付装置を好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における電子ピアノの譜面板の一部平面図及び断面図である。
【図2】本発明の実施形態における譜面板の製造方法を示す図である。
【図3】本発明の実施形態における吸引工程に用いる装置の一例を示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【符号の説明】
1…銘板、2…母材、3…化粧用シート部材、21…銘板嵌合用の凹部、22…座ぐり溝、S…間隙

Claims (2)

  1. 銘板を固着する母材を有する銘板付装置において、
    前記母材は通気性を有し該母材に銘板嵌合用の凹部が形成されるとともに、該凹部の銘板端面近傍であって、少なくとも銘板の角部に対向する位置に、座ぐり溝または座ぐり孔が形成され、
    前記母材の凹部側の全面に化粧用シート部材が被覆して圧着され、
    前記母材と銘板との間に化粧用シート部材を介して、前記凹部に該銘板が嵌合されていることを特徴とする銘板付装置。
  2. 通気性を有する母材に、銘板嵌合用の凹部と該凹部の銘板端面近傍であって、少なくとも銘板の角部に対向する位置に、座ぐり溝または座ぐり孔とを形成するステップと、
    前記母材の前記凹部側の全面に化粧用シート部材を被覆して被せるステップと、
    前記化粧用シート部材側で前記母材のほぼ全面において、弾性を有する押え部材を配設するステップと、
    前記母材の前記凹部と反対側の面から大気を吸引して該母材に化粧用シート部材を吸着するステップと、
    前記母材と銘板との間に化粧用シート部材を介して、前記凹部に該銘板を嵌合するステップと、
    を備えた銘板付装置の製造方法。
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