JP3774622B2 - 燃料電池スタック - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子電解質膜をアノード側電極とカソード側電極とで挟んで構成される単位燃料電池セルが、セパレータを介して水平方向に複数個積層される車載用燃料電池スタックに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜(陽イオン交換膜)からなる電解質膜の両側にそれぞれアノード側電極およびカソード側電極を対設して構成された単位燃料電池セルを、セパレータによって挟持することにより構成されている。この固体高分子型燃料電池は、通常、単位燃料電池セルおよびセパレータを所定数だけ積層することにより、燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
この種の燃料電池スタックにおいて、アノード側電極に供給された燃料ガス、例えば、水素含有ガスは、触媒電極上で水素イオン化され、適度に加湿された電解質膜を介してカソード側電極側へと移動する。その間に生じた電子が外部回路に取り出され、直流の電気エネルギとして利用される。カソード側電極には、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスあるいは空気が供給されているために、このカソード側電極において、前記水素イオン、前記電子および酸素ガスが反応して水が生成される。
【0004】
ところで、上記の燃料電池スタックを車両等に搭載して使用する場合、走行中の振動や発進および停止の繰り返し等によって前記燃料電池スタックに負荷が作用してしまうため、該燃料電池スタックを車両に対して強固に固定する必要がある。このため、例えば、特開平5−82157号公報に開示されているように、燃料電池スタックの周域に補強枠を構築するとともに、前記補強枠の頂部に支持具を介して燃料電池スタックの上部締め付け板を支持する支持構造が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術では、燃料電池スタックがセルスタック、マニホールドおよび上下締め付け板から構成されており、この燃料電池スタックを車体の床面上にベース架台を介して据え付けるとともに、前記燃料電池スタックの周域に補強枠を構築し、この補強枠を構成する支持ピンで上締め付け板を拘束支持することにより、該燃料電池スタックを固定支持している。
【0006】
しかしながら、支持構造が高さ方向に相当に大きな寸法を有することになり、燃料電池スタックを配置する車両の種類や配置箇所が限定されてしまい、例えば、前記燃料電池スタックを乗用車車体の床下等に設置することができないという問題が指摘されている。
【0007】
さらに、燃料電池スタックでは、運転温度と雰囲気温度の差による熱膨張や電解質膜の含水による膨張等によって燃料電池スタックが積層方向に向かって伸縮し易い。ところが、上記の支持構造では、燃料電池スタック自体の伸縮に対応することができず、発電性能の劣化や燃料ガスや酸化剤ガス等の漏れが発生するという不具合が指摘されている。
【0008】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、燃料電池スタックを車両等に確実に固定するとともに、前記燃料電池スタック自体の伸縮に確実に対応して所望の発電性能を保持することが可能な燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る燃料電池スタックでは、一方のエンドプレート側を車両に保持する固定支持手段と、他方のエンドプレート側を前記車両に対して積層方向に移動可能に保持する可動支持手段とが設けられている。従って、燃料電池スタックの周囲温度や運転温度の変化等によって前記燃料電池スタックが積層方向に伸縮する際、可動支持手段の作用下に他方のエンドプレートが積層方向に進退し、マウント構造に応力が発生することがない。
【0014】
しかも、固定支持手段では、車両側に固定されるマウントブラケットにバックアッププレートが固定されるとともに、規制部材を介して一方のエンドプレートが前記バックアッププレートから所定間隔以上に離間することを阻止している。これにより、燃料電池スタックに振動等が発生しても、一方のエンドプレートがバックアッププレートから必要以上に大きく離間することがなく、前記一方のエンドプレートにマニホールド等の補器が装着されている際にも、前記補器の締結部やシール部が影響を受けることがない。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に関連する第1の実施形態に係る燃料電池スタックが組み込まれる燃料電池システム10の概略斜視説明図であり、図2は、前記燃料電池システム10の側面説明図である。
【0016】
燃料電池システム10は、水平方向(矢印A方向)に沿って互いに平行に配列される第1燃料電池スタック12と第2燃料電池スタック14とを備える。第1および第2燃料電池スタック12、14の同一側の一端部鉛直面を構成する第1エンドプレート16、18には、正極である第1電力取り出し端子20および負極である第2電力取り出し端子22が設けられる。
【0017】
第1および第2燃料電池スタック12、14の同一側の他端部鉛直面である第2エンドプレート24、26側には、前記第1および第2燃料電池スタック12、14に対して燃料ガス、酸化剤ガスおよび冷却媒体の供給と排出を行うための配管機構28が組み込まれる。第1および第2燃料電池スタック12、14は、マウント機構30を介して車両を構成する取り付けプレート31に固定される。
【0018】
第1燃料電池スタック12は、図3および図4に示すように、単位燃料電池セル32と、この単位燃料電池セル32を挟持する第1および第2セパレータ34、36とを備え、これらが複数組だけ水平方向(矢印A方向)に積層されている。第1燃料電池スタック12は、全体として直方体状を有しており、短辺方向(矢印B方向)が重力方向に指向するとともに、長辺方向(矢印C方向)が水平方向に指向して配置される。
【0019】
単位燃料電池セル32は、固体高分子電解質膜38と、この電解質膜38を挟んで配設されるカソード側電極40およびアノード側電極42とを有するとともに、前記カソード側電極40および前記アノード側電極42には、例えば、多孔質層である多孔質カーボンペーパ等からなる第1および第2ガス拡散層44、46が配設される。
【0020】
単位燃料電池セル32の両側には、第1および第2ガスケット48、50が設けられ、前記第1ガスケット48は、カソード側電極40および第1ガス拡散層44を収納するための大きな開口部52を有する一方、前記第2ガスケット50は、アノード側電極42および第2ガス拡散層46を収納するための大きな開口部54を有する。単位燃料電池セル32と第1および第2ガスケット48、50とが、第1および第2セパレータ34、36によって挟持される。
【0021】
第1セパレータ34は、カソード側電極40に対向する面34aおよび反対側の面34bが長方形状に設定されており、例えば、長辺55aが水平方向に指向するとともに、短辺55bが重力方向に指向して配置される。
【0022】
第1セパレータ34の短辺55b側の両端縁部上部側には、酸素含有ガスまたは空気である酸化剤ガスを通過させるための酸化剤ガス入口56aと、水素含有ガス等の燃料ガスを通過させるための燃料ガス入口58aとが、上下方向に長尺形状を有して設けられる。第1セパレータ34の短辺55b側の両端縁部下部側には、酸化剤ガス出口56bと燃料ガス出口58bとが、酸化剤ガス入口56aおよび燃料ガス入口58aと対角位置になるようにかつ上下方向に長尺形状を有して設けられている。
【0023】
第1セパレータ34の長辺55aの下端部には、矢印C方向に長尺な4つの冷却媒体入口60a〜60dが設けられるとともに、この第1セパレータ34の長辺55a側の上部には、同様に、矢印C方向に長尺な4つの冷却媒体出口60e〜60hが設けられる。冷却媒体入口60a〜60dには、純水やエチレングリコールやオイル等の冷却媒体が供給される。第1セパレータ34の面34aには、酸化剤ガス入口56aに連通する10本のそれぞれ独立した第1酸化剤ガス流路溝62が、水平方向に蛇行しながら重力方向に向かって設けられる。第1酸化剤ガス流路溝62は、5本の第2酸化剤ガス流路溝63に合流し、前記第2酸化剤ガス流路溝63が酸化剤ガス出口56bに連通する。第1セパレータ34には、タイロッド挿通用の孔部63が6箇所に形成されている。
【0024】
第2セパレータ36は長方形状に形成されており、この第2セパレータ36の短辺64b側の両端縁部上部側には、酸化剤ガス入口66aおよび燃料ガス入口68aが貫通形成されるとともに、その両端縁部下部側には、酸化剤ガス出口66bおよび燃料ガス出口68bが、前記酸化剤ガス入口66aおよび前記燃料ガス入口68aと対角位置になるように貫通形成されている。
【0025】
第2セパレータ36の長辺64a側の下部には、矢印C方向に長尺な4つの冷却媒体入口70a〜70dが貫通形成され、この長辺64a側の上部には、冷却媒体出口70e〜70hが、同様に、矢印C方向に長尺に貫通形成される。
【0026】
図5に示すように、第2セパレータ36の面36aには、燃料ガス入口68aに連通して10本の燃料ガス流路溝72が形成される。この第1燃料ガス流路溝72が5本の第2燃料ガス流路溝73に合流し、前記第2燃料ガス流路溝73が燃料ガス出口68bに連通する。
【0027】
図6に示すように、第2セパレータ36の面36aとは反対側の面36bには、冷却媒体入口70a〜70dと冷却媒体出口70e〜70hにそれぞれ個別に連通する冷却媒体流路74a〜74dが重力方向に向かって設けられる。冷却媒体流路74a〜74dは、冷却媒体入口70a〜70dと冷却媒体出口70e〜70hに連通するそれぞれ9本の第1流路溝76a、76bを備えるとともに、前記第1流路溝76a、76b間には、それぞれ2本の第2流路溝78が互いに重力方向に平行しかつ所定間隔ずつ離間して設けられる。第2セパレータ36には、第1セパレータ34と同様に、タイロッド挿通用の孔部63が6箇所に設けられている。
【0028】
図7に示すように、所定数だけ積層された単位燃料電池セル32の積層方向両端には、ターミナルプレートである端子板80と第1導電プレート82とが配設される。端子板80には、絶縁板84を介して第1エンドプレート16が積層されるとともに、この端子板80に第1電力取り出し端子20が装着される。
【0029】
図8に示すように、第1電力取り出し端子20は、円柱状の大径部86の両端に小径なねじ部88a、88bを設けている。このねじ部88aは、端子板80に形成された孔部90を通って第1セパレータ34の酸化剤ガス入口56a内に突出し、前記ねじ部88aにナット部材92が螺着される。大径部86の肩部には、端子板80との間のシール性を向上させるためにシール部材94が介装されるとともに、前記大径部86の外周と第1エンドプレート16に形成された孔部96との間に絶縁リング98が介装される。
【0030】
図9に示すように、第1導電プレート82は、第2セパレータ36とほぼ同一形状、すなわち、長方形状に設定されており、短辺側の両端縁部には、酸化剤ガス入口100a、燃料ガス入口102aおよび酸化剤ガス出口100b、燃料ガス出口102bが互いに対角位置に設けられている。第1導電プレート82の長辺側下部および上部には、それぞれ4つの冷却媒体入口104a〜104dと冷却媒体出口104e〜104hが設けられるとともに、タイロッド挿通用の孔部63が6箇所に形成されている。
【0031】
第1導電プレート82には、第1燃料電池スタック12の下側にかつ第2燃料電池スタック14に近接して延在する第1接続板部106が設けられる。第1接続板部106には、下方に突出して2本のボルト部108a、108bが設けられ、このボルト部108a、108bおよび第1導電プレート82は、導電性を有する材料、例えば、SUSや銅等で構成されている。図7に示すように、第1導電プレート82には、絶縁板110、蓋板112およびシール部材114を介して第2エンドプレート24が積層される。
【0032】
図10および図11に示すように、第2エンドプレート24は長方形状に構成されており、その短辺側の両端縁部上部側には、酸化剤ガス入口120aと燃料ガス入口122aとが貫通形成されるとともに、その短辺側の両端縁部下部側には、酸化剤ガス出口120bと燃料ガス出口122bとが前記酸化剤ガス入口120aおよび前記燃料ガス入口122aと対角位置になるように設けられる。
【0033】
第2エンドプレート24の内側の面24aには、第2セパレータ36の冷却媒体入口70a〜70dに連通する第1冷却媒体流路溝124a〜124dと、前記第2セパレータ36の冷却媒体出口70e〜70hに連通する第2冷却媒体流路溝124e〜124hが、水平方向に長尺でかつ所定の深さを有して形成される。第1冷却媒体流路溝124a〜124dは、それぞれ12本の第1溝部126aの端部に連通する。第1溝部126aは、互いに平行に上方に延在した後、それぞれ2本ずつ合流して第2溝部126bが設けられ、前記第2溝部126bがそれぞれ2本ずつ第3溝部126cに合流して冷却媒体供給口128に連通する。
【0034】
第2冷却媒体流路溝124e〜124hは、同様にそれぞれ12本の第1溝部130aに連通し、前記第1溝部130aが鉛直下方向に延在して第2溝部130bに2本ずつ合流する。第2溝部130bは、2本ずつ第3溝部130cに合流して冷却媒体排出口132に連通する。冷却媒体供給口128および冷却媒体排出口132には、図10に示すように、供給管路134と排出管路136が連結されており、この供給管路134およびこの排出管路136が、第1燃料電池スタック12の外方に所定の長さだけ突出している。第2エンドプレート24には、タイロッド挿通用の孔部63が6箇所に形成されている。
【0035】
図7に示すように、第1燃料電池スタック12は、締め付け機構140を介して積層方向(矢印A方向)に一体的に締め付け固定される。締め付け機構140は、第1エンドプレート16の外面側に設けられる液体チャンバ142と、この液体チャンバ142内に封入される非圧縮性の面圧付与用液体、例えば、シリコンオイル144と、第2エンドプレート24の外面側に設けられ、前記第2エンドプレート24を前記第1エンドプレート16側に押圧するために水平方向に所定間隔ずつ離間して配置される3つの皿ばね146a〜146cとを備える。
【0036】
液体チャンバ142を挟んで第1エンドプレート16に対向してバックアッププレート148が配設され、このバックアッププレート148とアルミニウムまたはステンレススチールの薄板150との間に液体チャンバ142が構成される。皿ばね146a〜146cは、第2エンドプレート24の面内に略等間隔ずつ離間して配置されるとともに、取り付け板152により支持される。取り付け板152から第1燃料電池スタック12を貫通してバックアッププレート148に6本のタイロッド(締め付けボルト)154が挿入される。タイロッド154の端部にナット156がねじ込まれることにより、第1燃料電池スタック12が一体的に保持される。
【0037】
図2および図12に示すように、マウント構造30は、第1燃料電池スタック12の積層方向(矢印A方向)一端側に配設される第2エンドプレート24側を車両の取り付けプレート31に保持する固定支持手段158aと、前記第1燃料電池スタック12の積層方向他端側に配設される第1エンドプレート16側を前記取り付けプレート31に対し前記積層方向に移動可能に保持する可動支持手段158bとを備える。固定支持手段158aおよび可動支持手段158bは、第1エンドプレート16の下部側に一体的に設けられるブラケット部(支持部)160a、160bと、第2エンドプレート24の下部側にねじ止めされるマワントブラケット(支持部)162a、162bとを備える。ブラケット部160a、160bには、第1燃料電池スタック12の積層方向(矢印A方向)に長尺な長孔164a、164bが形成される一方、マウントブラケット162a、162bに孔部166a、166bが形成される。
【0038】
長孔164a、164bおよび孔部166a、166bには、それぞれゴムマウント168が配置される。ゴムマウント168は、上下にねじ部170a、170bが設けられており、上部に突出する前記ねじ部170aにカラー部材172が配置されてこのカラー部材172がここから長孔164a、164bに挿入されるとともに、該ねじ部170aにナット174が螺合される。マウントブラケット162a、162b側では、ゴムマウント168のねじ部170aが孔部166a、166bに挿入されてその先端部にナット174が螺合される。ゴムマウント168の下部側に突出するねじ部170bは、取り付けプレート31に挿入されてナット176が螺合されることにより、第1燃料電池スタック12を車両等に固定する。
【0039】
図13に示すように、第2燃料電池スタック14は、上述した第1燃料電池スタック12とは対称的に構成されるとともに、電解質膜38に対してカソード側電極40とアノード側電極42とが逆側に配置されており、第1エンドプレート18側に負極である第2電力取り出し端子22が設けられる(図14参照)。第2燃料電池スタック14は、基本的には第1燃料電池スタック12と同様に構成されており、同一の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0040】
図15に示すように、第2燃料電池スタック14は、第2導電プレート180を備えており、この第2導電プレート180には、前記第2燃料電池スタック14の下側に延在しかつ第1燃料電池スタック12に設けられている第1導電プレート82の第1接続板部106に近接する第2接続板部182を設けている。第1および第2接続板部106、182には、それぞれ一対のボルト部108a、108bと184a、184bとが設けられている。
【0041】
ボルト部108aと184aおよびボルト部108bと184bには、それぞれ可撓性接続体、例えば、撚り線186a、186bが接続される。撚り線186a、186bは、多数の細線状の導線を網状に撚ることにより構成されており、それぞれゴムカバー188a、188bにより覆われている。
【0042】
図13に示すように、第1および第2燃料電池スタック12、14を構成する第2エンドプレート24、26には、それぞれ燃料ガス入口122aと酸化剤ガス出口120bとが互いに近接する位置に配置されており、この第2エンドプレート24、26に配管機構28が組み込まれる。
【0043】
図1および図16に示すように、配管機構28は、互いに並設される第1および第2燃料電池スタック12、14を構成する第2エンドプレート24、26の各燃料ガス入口122aを覆って前記第2エンドプレート24、26に一体的に固定される第1ブラケット190を備える。この第1ブラケット190には、各燃料ガス入口122aにそれぞれ連通する燃料ガス供給管192a、192bが設けられ、前記燃料ガス供給管192a、192bが合流して燃料ガス供給口194に連通する。
【0044】
第2エンドプレート24、26には、各酸化剤ガス出口120bを覆って第2ブラケット196が固定される。この第2ブラケット196に設けられ酸化剤ガス出口120bにそれぞれ連通する酸化剤ガス排出管198a、198bの先端部が、酸化剤ガス排出口200に一体的に連通する。
【0045】
第2エンドプレート24、26には、それぞれの酸化剤ガス入口120aおよび燃料ガス出口122bを覆って第3および第4ブラケット202、204が固定される。第3および第4ブラケット202、204には、酸化剤ガス入口120aに連通する酸化剤ガス供給管206の両端が連通するとともに、この酸化剤ガス供給管206の途上に酸化剤ガス供給口208が設けられる。第3および第4ブラケット202、204には、燃料ガス出口122bに連通する燃料ガス排出管210の両端が連通し、この燃料ガス排出管210の途上に燃料ガス排出口212が設けられる。
【0046】
第2エンドプレート24、26に設けられている各供給管路134に冷却媒体供給管214の両端が連結され、この冷却媒体供給管214に冷却媒体供給口216が設けられる。第2エンドプレート24、26に設けられている各排出管路136に冷却媒体排出管218が連結されるとともに、この冷却媒体排出管218に冷却媒体排出口220が設けられる。
【0047】
このように構成される燃料電池システム10の動作について、以下に説明する。
【0048】
図1に示すように、燃料電池システム10には、燃料ガス供給口194から燃料ガス(例えば、炭化水素を改質した水素を含むガス)が供給されるとともに、酸化剤ガス供給口208に酸化剤ガスとして空気または酸素含有ガス(以下、単に空気という)が供給される。さらに、冷却媒体供給口216に冷却媒体が供給される。
【0049】
燃料ガス供給口194に供給された燃料ガスは、燃料ガス供給管192a、192bを通って第1および第2燃料電池スタック12、14を構成する第2エンドプレート24、26の各燃料ガス入口122aに送られ、さらに第2セパレータ36の各燃料ガス入口68aから第1燃料ガス流路溝72に導入される。図5に示すように、第1燃料ガス流路溝72に供給された燃料ガスは、第2セパレータ36の面36aに沿って水平方向に蛇行しながら重力方向に移動する。
【0050】
その際、燃料ガス中の水素ガスは、第2ガス拡散層46を通って単位燃料電池セル32のアノード側電極42に供給される。そして、未使用の燃料ガスは、第1燃料ガス流路溝72に沿って移動しながらアノード側電極42に供給される一方、未使用の燃料ガスが第2燃料ガス流路溝73を介して燃料ガス出口68bから排出される。この未使用の燃料ガスは、第2エンドプレート24、26の各燃料ガス出口122bを通って燃料ガス排出管210に導入され、燃料ガス排出口212を介して燃料電池システム10から排出される。
【0051】
一方、酸化剤ガス供給口208に供給された空気は、酸化剤ガス供給管206を介して第2エンドプレート24、26に設けられた各酸化剤ガス入口120aに送られ、さらに第1および第2燃料電池スタック12、14内に組み込まれた第1セパレータ34の酸化剤ガス入口56aに供給される(図3参照)。第1セパレータ34では、酸化剤ガス入口56aに供給された空気が面34a内の第1酸化剤ガス流路溝62に導入され、この第1酸化剤ガス流路溝62に沿って水平方向に蛇行しながら重力方向に移動する。
【0052】
その際、空気中の酸素ガスは、第1ガス拡散層44からカソード側電極40に供給される一方、未使用の空気が第2酸化剤ガス流路溝63を介して酸化剤ガス出口56bから排出される。この酸化剤ガス出口56bに排出された空気は、第2エンドプレート24、26に設けられた酸化剤ガス出口120bから酸化剤ガス排出管198a、198bを介して酸化剤ガス排出口200より排出される(図1参照)。
【0053】
これにより、第1および第2燃料電池スタック12、14で発電が行われ、それぞれ特性の異なる第1および第2電力取り出し端子20、22間に接続される負荷、例えば、図示しないモータに電力が供給されることになる。
【0054】
また、第1および第2燃料電池スタック12、14内は、冷却媒体により有効に冷却される。すなわち、冷却媒体供給口216に供給された冷却媒体は、冷却媒体供給管214から第2エンドプレート24、26に設けられている供給管路134に導入される。この冷却媒体は、図11に示すように、第2エンドプレート24、26の冷却媒体供給口128に導入され、複数の第2溝部126bから第1溝部126aを通って第1冷却媒体流路溝124a〜124dに送られる。
【0055】
第1冷却媒体流路溝124a〜124dに導入された冷却媒体は、第2セパレータ36の下部側に形成された冷却媒体入口70a〜70dに導入され、図6に示すように、前記冷却媒体入口70a〜70dに連通する冷却媒体流路74a〜74dを下方から上方に向かって移動する。冷却媒体流路74a〜74dを通って各単位燃料電池セル32を冷却した冷却媒体は、冷却媒体出口70e〜70hを通って第2エンドプレート24、26の第2冷却媒体流路溝124e〜124hに導入される(図11参照)。この第2冷却媒体流路溝124e〜124hに導入された冷却媒体は、第1溝部130aから第2溝部130bを介して冷却媒体排出口132に送られ、排出管路136から冷却媒体排出管218を通って冷却媒体排出口220より排出される。
【0056】
この場合、第1の実施形態では、第1および第2燃料電池スタック12、14がそれぞれ積層方向(矢印A方向)に平行に配置されるとともに、マウント構造30を介して車両の取り付けプレート31に固定されている(図2および図12参照)。このため、第1および第2燃料電池スタック12、14の上部側にマウント構造30が突出することがなく、この上部側のスペースを有効に活用することが可能になる。従って、特に燃料電池システム10を車両に搭載する際に、この燃料電池システム10を床下等に容易に収容することができ、レイアウトの自由度が向上するという効果が得られる。
【0057】
さらに、マウント構造30は、可動支持手段158bを備えており、この可動支持手段158bが矢印A方向に長尺な長孔164a、164bを有するブラケット部160a、160bと、ゴムマウント168に装着され前記長孔164a、164bに沿って移動可能なカラー部材172とを備えている。
【0058】
このため、第1および第2燃料電池スタック12、14の周囲温度と運転温度の変化等によって積層部品の熱膨張や熱収縮が惹起し、前記第1および第2燃料電池スタック12、14が積層方向に伸縮する際、第1エンドプレート16、18が長孔164a、164bを介して矢印A方向に移動可能である。従って、第1および第2燃料電池スタック12、14の収縮時にマウント構造30に応力が作用することがなく、前記マウント構造30の損傷を阻止するとともに、前記第1および第2燃料電池スタック12、14からの燃料ガス、酸化剤ガスあるいは冷却媒体の漏れを確実に阻止することが可能になる。
【0059】
しかも、マウント構造30は、実質的に第1エンドプレート16に一体的に設けられ、長孔164a、164bが形成されたブラケット部160a、160bと、第2エンドプレート24にねじ止めされるマウントブラケット162a、162bとを備えている。これにより、このマウント構造30全体の構成が有効に簡素化され、極めて経済的であるという利点が得られる。
【0060】
なお、第1の実施形態では、第1および第2燃料電池スタック12、14を並列して燃料電池システム10を構成しているが、例えば、第1燃料電池スタック12のみを使用する場合に同様の効果が得られる。
【0061】
図17は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタック240の概略斜視説明図である。
【0062】
この燃料電池スタック240は、第2エンドプレート24aが配置されており、この第2エンドプレート24a側に配管機構28が組み込まれている。燃料電池スタック240は、マウント構造242を備え、このマウント構造242は、燃料電池スタック240の積層方向一端側に配設される第2エンドプレート24a側を、車両に対して保持する固定支持手段244と、前記燃料電池スタック240の積層方向他端側に配設される第1エンドプレート16a側を、車両に対して前記積層方向に移動可能に保持する可動支持手段158bとを備える。なお、第1の実施形態に係る第1燃料電池スタック12と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0063】
図17乃至図19に示すように、固定支持手段244は、車両側の取り付けプレート31に固定されるマウントブラケット246と、前記マウントブラケット246に固定されるとともに、燃料電池スタック240を積層方向に締め付けるタイロッド(締め付けボルト)154が係合するバックアッププレート248と、第2エンドプレート24aと前記バックアッププレート248に一体的に設けられ、該第2エンドプレート24aが該バックアッププレート248から所定間隔以上に離間する(矢印A1方向)ことを阻止する規制部材、例えば、保持ボルト250とを備える。
【0064】
マウントブラケット246は、車両側の取り付けプレート31にボルト252を介して固定される水平取り付け部254と、バックアッププレート248をボルト256を介して固定する鉛直取り付け部258とを備え、前記鉛直取り付け部258は、配管機構28を避けて前記バックアッププレート248の略中央部分に配置されている。
【0065】
図18に示すように、第2エンドプレート24aの略中央部に、複数、例えば、2つのねじ孔260が形成されるとともに、バックアッププレート248には、前記ねじ孔260に対応して段付孔部262が設けられる。保持ボルト250は、先端に設けられたねじ部264をねじ孔260にねじ込むとともに、頭部266と前記ねじ部264との間に設けられたロッド部268が、段付孔部262の小径側に摺動し得る程度に隙間を有して挿入される。保持ボルト250の頭部266は、バックアッププレート248の外面部と係合することにより、第2エンドプレート24aと前記バックアッププレート248との間に所定の間隔を確保し、この間隔以上に前記第2エンドプレート24aが前記バックアッププレート248から離間することを阻止する。
【0066】
図19に示すように、第2エンドプレート24aには、横方向両端縁部上部側に酸化剤ガス入口120aと燃料ガス入口122aとが設けられるとともに、その横方向両端縁部下部側には、燃料ガス出口122bと酸化剤ガス出口120bとが設けられる。第2セパレータ24aの長辺側下部および上部には、それぞれ冷却媒体入口270aと冷却媒体出口270bとが2つずつ形成されている。
【0067】
図17および図18に示すように、第2エンドプレート24aとバックアッププレート248との間には、水平方向に2列で合計6個のワッシャプレート276が配設される一方、第1エンドプレート16a側には、それぞれの中心が前記ワッシャプレート276の中心と矢印A方向に略一致するように、水平方向に2列で合計6個の皿ばね278が配設されている。
【0068】
このように構成される燃料電池スタック240では、マウント構造242を構成する固定支持手段244が、燃料電池スタック240に設けられるマウントブラケット246と、このマウントブラケット246に固定されるバックアッププレート248とを備えている。このため、バックアッププレート248側には第1エンドプレート16a側のように熱膨張対策としての可動構造を採用する必要がなく、マウントブラケット246の取り付け位置の自由度が増大するという効果がある。その際、バックアッププレート248側の上下左右に配管機構28が組み込まれているため、この配管機構28に干渉することがないように、マウントブラケット246を構成する鉛直取り付け部258が、前記バックアッププレート248の略中央部に容易に取り付けられる。
【0069】
さらに、第2の実施形態では、車両の取り付けプレート31にマウントブラケット246が固定され、このマウントブラケット246にバックアッププレート248がボルト256を介して固定されるとともに、前記バックアッププレート248に係合するタイロッド154により、燃料電池スタック240が積層方向(矢印A方向)に一体的に締め付けられている。このため、第2エンドプレート24aは、マウントブラケット246に対して直接固定されておらず、皿ばね278およびワッシャプレート276を介して燃料電池スタック240全体に均一な締め付け力が確実に付与される。
【0070】
しかも、第2エンドプレート24aは、保持ボルト250を介してバックアッププレート248に保持されている。この保持ボルト250は、ロッド部268がバックアッププレート248の段付孔部262内に摺動自在に挿入されており、頭部266が前記バックアッププレート248の外面部に係合する一方、ねじ部264が第2エンドプレート24aのねじ孔260に螺合している。従って、例えば、軽衝突時のように、燃料電池スタック240に振動が発生しても、第2エンドプレート24aがバックアッププレート248から離間する方向に大きく移動することがない。
【0071】
その際、第2エンドプレート24aには、反応ガスや冷却媒体用マニホールド等の補器(図示せず)が締結されている場合があり、この第2エンドプレート24aが矢印A1方向に大きく振動して前記補器の締結部やシール部に悪影響を及ぼすことを確実に阻止することが可能になる。
【0072】
さらにまた、皿ばね278は、配管機構28とは反対側に位置して第1エンドプレート16a側に配置されている。これにより、配管機構28との干渉が回避され、皿ばね278の設計自由度が向上するという効果が得られる。
【0073】
【発明の効果】
本発明に係る燃料電池スタックでは、燃料電池スタックの積層方向両端に設けられるそれぞれのエンドプレートがラバーマウントを介して車両に保持されるとともに、一のエンドプレートが可動支持手段を介して積層方向に移動可能に保持される。このため、燃料電池スタックが使用に際して伸縮しても、マウント構造に応力が作用することがなく、しかも積層部からの燃料ガス等の漏れを確実に阻止することができる。
【0074】
また、本発明に係る燃料電池スタックでは、車両側に固定されるマウントブラケットにバックアッププレートが固定されるとともに、規制部材の作用下に、一方のエンドプレートが前記バックアッププレートから所定間隔以上に離間することを阻止する。これにより、軽振動等が発生しても、一方のエンドプレートがバックアッププレートから必要以上に大きく離間することがなく、前記一方のエンドプレートに装着される補器類の締結部やシール部に悪影響を与えることを阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタックが組み込まれる燃料電池システムの概略斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池システムの側面説明図である。
【図3】前記燃料電池システムを構成する燃料電池スタックの要部分解斜視図である。
【図4】前記燃料電池スタックの要部縦断面説明図である。
【図5】前記燃料電池スタックを構成する第2セパレータの一方の面の正面説明図である。
【図6】前記第2セパレータの他方の面の正面説明図である。
【図7】前記燃料電池スタックの概略縦断面説明図である。
【図8】前記燃料電池スタックを構成する電力取り出し端子の接続構造を示す説明図である。
【図9】前記燃料電池スタックを構成する導電プレートの斜視説明図である。
【図10】前記燃料電池スタック内の流体の流れを示す流路説明図である。
【図11】前記燃料電池スタックを構成する第2エンドプレートの内方側の面の正面説明図である。
【図12】前記燃料電池スタックの平面説明図である。
【図13】前記燃料電池システムの配管機構を省略した正面説明図である。
【図14】前記燃料電池システムの背面説明図である。
【図15】前記燃料電池システムの下側を示す斜視説明図である。
【図16】前記燃料電池システムの正面説明図である。
【図17】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図18】前記燃料電池スタックの側面説明図である。
【図19】前記燃料電池スタックの正面説明図である。
【符号の説明】
10…燃料電池システム 12、14、240…燃料電池スタック
16、16a、18、24、24a、26…エンドプレート
20、22…電力取り出し端子 28…配管機構
30、242…マウント構造 32…単位燃料電池セル
34、36…セパレータ 38…電解質膜
40…カソード側電極 42…アノード側電極
56a、66a、100a、120a…酸化剤ガス入口
56b、66b、100b、120b…酸化剤ガス出口
58a、68a、102a、122a…燃料ガス入口
58b、68b、102b、122b…燃料ガス出口
60a〜60d、70a〜70d、104a〜104d、270a…冷却媒体入口
60e〜60h、70e〜70h、104e〜104h、270b…冷却媒体出口
72…燃料ガス流路溝 74a〜74d…冷却媒体流路
80…端子板 82、180…導電プレート
106、182…接続板部 124a〜124h…冷却媒体流路溝
134…供給管路 136…排出管路
140…締め付け機構 142…液体チャンバ
146a〜146c、278…皿ばね
154…タイロッド 158a、244…固定支持手段
158b…可動支持手段 160a、160b…ブラケット部
162a、162b、246…マウントブラケット
164a、164b…長孔 168…ゴムマウント
172…カラー部材 186a、186b…撚り線
188a、188b…ゴムカバー 248…バックアッププレート
250…保持ボルト 276…ワッシャプレート
Claims (3)
- 固体高分子電解質膜をアノード側電極とカソード側電極とで挟んで構成される単位燃料電池セルが、セパレータを介して水平方向に沿って複数個積層される車載用燃料電池スタックであって、
前記燃料電池スタックを車両に搭載するためのマウント構造を備え、
前記マウント構造は、前記燃料電池スタックの積層方向一端側に配設される一方のエンドプレートに設けられ、前記一方のエンドプレート側を前記車両に保持する固定支持手段と、
前記燃料電池スタックの積層方向他端側に配設される他方のエンドプレートに設けられ、前記他方のエンドプレート側を前記車両に対して前記積層方向に移動可能に保持する可動支持手段と、
を備えるとともに、
前記固定支持手段は、前記車両側に固定されるマウントブラケットと、
前記マウントブラケットに固定されるとともに、前記燃料電池スタックを積層方向に締め付ける締め付けボルトが係合するバックアッププレートと、
前記一方のエンドプレートと前記バックアッププレートに一体的に設けられ、該一方のエンドプレートが該バックアッププレートから所定間隔以上に離間することを阻止する規制部材と、
を備えることを特徴とする燃料電池スタック。 - 請求項1記載の燃料電池スタックにおいて、前記一方のエンドプレートには、前記燃料電池スタックに対して反応ガス及び冷却媒体の供給と排出を行う配管機構が設けられるとともに、
前記マウントブラケットは、前記配管機構を避けて前記バックアッププレートに配置されることを特徴とする燃料電池スタック。 - 請求項1又は2記載の燃料電池スタックにおいて、前記他方のエンドプレートと前記燃料電池スタックとの間には、前記燃料電池スタックに対して前記積層方向に締め付け力を付与するためのばね部材が介装されることを特徴とする燃料電池スタック。
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