JP3774524B2 - 固形描画材組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パス、クレヨン、コンテなどの固形描画材組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、パス、クレヨン、コンテなどの固形描画材組成物には、ワックス、体質顔料、及び着色顔料が主要成分として配合されている。そして、そのうち着色顔料は、描画後の変色を防止する観点から、変色しにくい顔料があらかじめ選定されて用いられている。特に、耐水性の弱い顔料は、耐水性が低いため、配合時等において微量の水分が混入したり、描画後に周囲の湿気等に起因して経時変化により水分が吸収されると、変色を起こすため、固形描画材組成物中の着色顔料としてはこれらの水分変色性の着色顔料は従来使用されていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、パス、クレヨン、コンテなどの固形描画材を調色する場合、これらの水分変色性の着色顔料を用いることができれば、従来になく、より広範な調色のバリエーションが可能となる。特に、従来、水分変色で使用されなかった顔料が使用できることで、複雑な調色を行わずとも簡単に色出しが可能となる。
【0004】
また、耐水性、耐変色性のある従来の着色顔料は一般に高価なものも存在しており、これに代わる比較的廉価な水分変色性の着色顔料を使用することができれば経済性の点で好ましい。
【0005】
本発明の課題は、水分変色性の顔料を着色顔料として用いても、配合時等における湿気や水分の混入による変色、及び描画後の周囲の湿気等による変色を防止することができる固形描画材組成物を提供するところにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、鋭意検討した結果、固形描画材組成物中に、水分変色性の着色顔料を酸化亜鉛又は酸化亜鉛を含有する物質と共に配合させると、水分変色性の着色顔料が、描画後水分によって変色しにくくなることを見出した。また、固形描画材組成物中に酸化亜鉛又は酸化亜鉛を含有する物質を配合させた場合でも、調色に悪影響を与えることなく、しかも描画面に対する着色性と定着性を阻害する成分として作用し難いことを見出した。本請求項1の発明は、ワックス、体質顔料、及び着色顔料を含む固形描画材組成物であって、上記着色顔料中に少なくとも水分変色性の着色顔料を配合すると共に、更に酸化亜鉛又は酸化亜鉛を含有する物質を配合した固形描画材組成物である。
【0007】
この水分変色性を防止する原因については、固形描画材組成物中に含まれている酸化亜鉛又は亜鉛が、水分変色性の原因となっている着色顔料と水との水和を和らげ、着色顔料の変色性を抑える役割を果たすからではないかと考えられる。従って、着色顔料として従来使用が制限されてきた水分変色性の着色顔料を使用することができるため、従来の様に複雑な調色をしなくても、特定色の色出しが簡単にできる。また、調色のバリエーションが広範囲となる。
【0008】
前記の酸化亜鉛を含む物質としては、酸化亜鉛を含む酸化チタンや、亜鉛で表面処理された酸化チタンを配合することも可能である。本請求項2の発明は、酸化亜鉛を含有する物質が、酸化亜鉛を含む酸化チタン又は亜鉛で表面処理された酸化チタンである固形描画材組成物である。
【0009】
酸化亜鉛を含む酸化チタンや、亜鉛で表面処理された酸化チタンを配合した場合、酸化亜鉛によって水分変色性着色顔料の変色を防止すると同時に、本発明の配合系において分散性が向上する。また耐候性及び耐光性を発揮する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において使用するワックスは、固形描画材組成物として公知のものであればいずれのものも使用でき、特に限定されない。例えば、カルナウバワックス、パラフィン、木ロウ、硬化油、ケトンワックス、サゾールワックス、ペトロラクタム等のワックス類、椰子油、流動パラフィン、スピンドル油、マシーン油等の油分などが使用できる。但し、特に本発明の配合系において好ましいワックスは、ケトンワックス、牛脂硬化油、流動パラフィンである。これは、本発明の配合系において、他の成分との相溶性が特にすぐれており、また定着性や着色性も良好であり、また経時劣化も少ないためである。
【0011】
本発明において使用する体質顔料は、固形描画材組成物として一般に使用されている公知のものであればいずれのものも使用でき、特に限定されない。例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、クレー等である。但し、特に本発明の配合系において好ましい体質顔料は、炭酸カルシウムである。これは炭酸カルシウムが、本発明の配合系において分散性が良好であり、また着色顔料の発色を阻害しにくく、耐熱性及び耐油性の点で良好であるほか、更に経済性も良好なためである。
【0012】
本発明において使用する水分変色性の着色顔料は、公知のものであればいずれでも採用できる。特に、好ましい水分変色性の着色顔料としては、本発明の配合系において、分散性がよく、発色性も良好で、耐熱性及び耐油性が良好である水分変色性の着色顔料が望ましい。具体的には、ウォッチングレッドカルシウム(C.I.Pigment Red 48:2)、リン酸コバルト系顔料、ホウ酸コバルト系顔料を例示することができる。更にリン酸コバルト系顔料としては、ブルーバイオレット(C.I.Pigment Violet 49)、コバルトバイオレットディープ(C.I.Pigment Violet 14)、コバルトバイオレットライト(C.I.Pigment Violet 47)、ホウ酸コバルト系顔料としては、コバルトバイオレットノーバ(C.I.Pigment Violet 48)を例示することができる。
【0013】
本発明では、水分変色性の着色顔料単独で配合することができるが、従来、
固形描画材組成物として一般に使用されている公知の着色剤を混色して使用することもできる。例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ、多環顔料等の有機顔料、群青、酸化鉄、酸化チタン、カーボンブラック等の無機顔料、パール顔料、蛍光顔料等を例示できる。特に、本発明の配合系において、分散性がよく、発色性も良好で、耐熱性及び耐油性が良好であるほか、水分変色性の着色顔料との混色が良好である着色顔料としては以下のものが好適である。
【0014】
有機顔料中、アゾレーキ顔料としては、C.I.No.で、Pigment Red48、Pigment Red48:1〜4、Pigment Red49、Pigment Red49:1〜2、Pigment Red50、Pigment Red50:1〜2、Pigment Red52、Pigment Red52:1〜2、Pigment Red53、Pigment Red53:1〜2、Pigment Red57、Pigment Red57:1、Pigment Red58、Pigment Red58:1〜4、Pigment Red60:1、Pigment Red63、Pigment Red63:1〜2、Pigment Red64、Pigment Red64:1である。不溶性アゾ顔料としては、Pigment Yellow1、Pigment Yellow3、Pigment Yellow55、Pigment Yellow152、Pigment Orange13、Pigment Orange34、Pigment Red112、Pigment Red170、Pigment Red9がある。縮合アゾ顔料としては、Pigment Yellow128、Pigment Yellow93、Pigment Yellow94、Pigment Yellow95、Pigment Brown42、Pigment Red166である。多環顔料としては、Pigment Yellow138、Pigment Orange43、Pigment Red168、Pigment Blue15、Pigment Blue15:1〜6、Pigment Violet23、Pigment Violet19、Pigment Green7である。酸性染料又は塩基性染料系の顔料としては、Pigment Violet3、PigmentAcidViolet49、Pigment Basic Red12である。
【0015】
無機顔料中では、群青(Blue29)、亜鉛華(White4)、酸化鉄(Yellow42、Red101、Red102、Brawn6、Brawn7)である。またカーボンブラック(Black10)が好ましい。酸化チタン(White6)も好適に用いられる。体質顔料中、炭酸カルシウム(White18)、硫酸カルシウム(White25)、シリカ(White27)、タルク(White26)、クレー(White19)が好ましい。
【0016】
酸化亜鉛を含む物質としては、硫酸法により酸化亜鉛を含む酸化チタンや、亜鉛で表面処理された酸化チタンを例示することができる。亜鉛での酸化チタンの表面処理するには、例えば次の方法で得られる。まず酸化チタン原料を粉砕し分級したものに亜鉛の塩類水溶液を加えた後、これを中和するアルカリ又は酸を加える。次に、かかる反応で生成した含水酸化物Zn(OH)2 で酸化チタン表面を被覆する。その後、副生成物を濾過し洗浄し、pHを調節後、濾過し純水で洗浄し、乾燥後、粉砕して得られる。また亜鉛での酸化チタンの表面処理するには、酸化チタンを亜鉛で蒸着等することでも得られる。
【0017】
ワックス成分の配合量は30〜60重量%が好ましい範囲である。同配合量が30重量%未満の場合は、定着性及び着色性が低下する。同配合量が60重量%を超える場合は強度、耐熱性が低下する点で好ましくない。最適範囲は40〜50重量%である。
【0018】
体質顔料の配合量は10〜70重量%が好ましい範囲である。同配合量が10重量%未満の場合は強度、耐熱性が低下する。同配合量が70重量%を超える場合は定着性及び着色性が低下する。最適範囲は40〜60重量%である。
【0019】
水分変色性の着色顔料の配合量は、0.1〜40重量%が好ましい範囲である。0.1重量%未満では発色性が低下し、40重量%を超える場合は着色性及び定着性が低下する。最適範囲は10〜30重量%である。
【0020】
なお、耐水性のある従来の着色顔料と水分変色性の着色顔料を混色する場合も、その総和である着色顔料の配合量は、0.1〜40重量%が好ましい範囲である。0.1重量%未満では発色性が低下し、40重量%を超える場合は着色性及び定着性が低下する。最適範囲は10〜30重量%である。
【0021】
酸化亜鉛又は酸化亜鉛を含む物質の配合量は、水分変色性の着色顔料の配合量に応じて配合することになるが、通常は、0.1〜40重量%が好ましい範囲である。0.1重量%未満では変色の防止が不十分であり、40重量%を超えると、着色性及び定着性が低下し、また発色性が低下する。最適範囲は10〜30重量である。
【0022】
本発明の固形描画材組成物を製造するには、例えばワックス中に着色顔料を3本ロールで分散させる。次に、加熱し、再溶融する。次に体質顔料を添加する。続いて、加熱撹拌し、90〜100℃で20分間分散させる。これを金型に流し込んで冷却固化させる。なお、本発明の固形描画材組成物の製造方法は上記方法に限定されない。
【0023】
【実施例】
下記の表1に記載された実施例及び比較例の各配合で固形描画材組成物を製造した。いずれも配合量は重量%である。製造方法は、既述の通り、ワックス中に着色顔料を3本ロールで分散させた後、加熱し、再溶融する。次に体質顔料を添加した後、加熱撹拌し、90〜100℃で20分間分散させる。これを金型に流し込んで冷却固化させて固形描画材を得た。
【0024】
【表1】
Figure 0003774524
【0025】
なお、表中、体質顔料は炭酸カルシウム(C.I.Pigment White18)であり、ワックスはケトンワックス、牛脂硬化油、流動パラフィンの混合物であり、またウォッチングレッドカルシウム、コバルトバイオレットディープ(C.I.Pigment Violet14)、及びコバルトバイオレットノーバ(C.I.Pigment Violet 48)が水分変色性の着色顔料である。また、二酸化チタンは亜鉛の表面処理無しのものと、亜鉛の表面処理有りのものとがある。
【0026】
次に、上記の実施例及び比較例の各配合にて、22℃湿度80%の高湿度に保った恒温室中で、上記と同様の製造方法で固形描画材を得た。
【0027】
次に、前記通常の条件で試作された固形描画材と、上記高湿度下で試作された固形描画材とを、それぞれ測定用ろ紙に塗布し、分光光度計で測定し、色差ΔE* abで評価した。その結果、比較例は色差ΔE* ab=7.26であるのに対して実施例1は0.64、実施例2は0.28、実施例3は0.25、実施例4は0.2であった。これらの結果から、水分変色性の着色顔料を用いた比較例は変色が著しいが、実施例はいずれも変色が抑制されていた。また、通常の条件で試作された固形描画材と、上記高湿度下で試作された固形描画材とを、それぞれ紙上に描画した際の、筆記性、着色性及び定着性、並びに発色性を外観評価した結果、実施例はいずれも良好であった。特に、水分変色性の着色顔料を用いた実施例は、鮮やかな色出しが観察された。また、酸化亜鉛又は酸化亜鉛を含む物質の配合量は、0.1重量%未満では変色の防止が不十分であった。40重量%を超えると、着色性及び定着性が低下し、発色性が低下した。その結果、0.1〜40重量%が好ましい範囲であった。
【0028】
【発明の効果】
本発明は、ワックス、体質顔料、及び着色顔料を含む固形描画材組成物であって、上記着色顔料中に少なくとも水分変色性の着色顔料を配合すると共に、更に酸化亜鉛又は酸化亜鉛を含有する物質を配合した固形描画材組成物であるので、水分変色性の顔料を着色顔料として用いても、配合時等における湿気や水分の混入による変色、及び描画後の周囲の湿気等による変色を防止することができる。
【0029】
従って、パス、クレヨン、コンテなどの固形描画材を調色する場合、これらの水分変色性の着色顔料を用いることができるので、従来になく、より広範な調色のバリエーションが可能となる。特に、従来、水分変色で使用されなかった顔料が使用できることで、複雑な調色を行わずとも簡単に色出しが可能となる。また、高価な耐水性、耐変色性のある従来の着色顔料の代替着色顔料として比較的廉価な水分変色性の着色顔料を使用できる途が開発されたことにより、経済性を発揮する。

Claims (2)

  1. ワックス、体質顔料、及び着色顔料を含む固形描画材組成物であって、上記着色顔料中に少なくとも水分変色性の着色顔料を配合すると共に、更に酸化亜鉛を含む酸化チタン又は亜鉛で表面処理された酸化チタンを配合した固形描画材組成物。
  2. 前記酸化亜鉛を含む酸化チタン又は前記亜鉛で表面処理された酸化チタンが、0.1〜40重量%配合されている請求項1記載の固形描画材組成物。
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