JP3773891B2 - 推進工法用の掘進装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、掘進装置に関し、詳しくは、推進工法において地盤にトンネルを形成しながら推進されていく掘進装置を対象にしている。
【0002】
【従来の技術】
推進工法の掘進装置として、推進方向を修正したり変更したりするために、掘進装置を前後に屈曲自在な複数の分割体で構成したものがある。
全体が筒状をなす掘進装置を、その中心軸に沿って前後に2体あるいは3体に分割しておく。前後の分割体の連結個所には、周方向の複数個所に配置された修正ジャッキを備える。複数個所の修正ジャッキにおける伸縮量に差を付けると、前後の分割体が屈曲する。分割体が屈曲したままで掘進装置の全体を推進させると、掘進装置の最前部の分割体が向いている方向に、推進方向が変化していく。
【0003】
推進工法の作業中に、地盤からの抵抗に偏りがあったり、掘進装置の後方に連結された埋設管列に加わる推力の向きがずれたりするなど、何らかの原因で推進方向が設計ラインから外れた場合には、前記した修正ジャッキを作動させて、推進方向を正しい設計ライン上に戻すことができる。また、曲線推進工法では、設計ラインの曲率に合わせて、前記修正ジャッキで掘進装置を屈曲させ曲線ラインに沿って推進させる。
掘進装置の屈曲は、水平面内で左右に屈曲させる場合だけでなく、垂直面内で上下方向に屈曲させる場合もある。例えば、埋設管の埋設深さを徐々に深くしたり浅くしたりする場合である。勿論、推進方向が上下方向にずれる場合の修正も必要である。当然、上下と左右を組み合わせた屈曲が必要になることが多い。
【0004】
掘進装置の分割体同士を、必要とされる上下左右斜めの何れの方向にも任意に屈曲できるようにするには、修正ジャッキと前後の分割体との連結を何れも、球面軸受などを利用して、任意の方向に屈曲できるようにしておくことが望ましい。
ところが、修正ジャッキと分割体との連結が、任意の方向に屈曲できる状態であると、前後の分割体が互いに屈曲できるだけでなく、相対的に周方向に回転する捻れ方向の運動を行ってしまうという問題がある。
分割体同士が捻れてしまうと、掘進装置の推進方向が正確に決められなくなる。例えば、最前部の分割体を、目的の推進方向に合わせて上下および左右に所定の角度だけ屈曲させようとして修正ジャッキの伸縮量を設定しても、分割体が捻れて上下左右の中心線が傾いてしまえば、設定した方向に屈曲できず、推進方向が変わってしまう。
【0005】
そこで、分割体同士が捻れないようにする捻れ防止手段が必要になる。各種のピンやリンク、ガイド部材による連結あるいは軸受機構などを利用して、捩れ防止を図ることが考えられる。
また、修正ジャッキの本数が増えると、前記捩れは起こり難くなる。例えば、分割体同士の連結個所に周方向に間隔をあけて多数の修正ジャッキを設置した場合には、修正ジャッキ同士が互いの捩れ方向への運動を規制することになるので、大きな捩れは生じない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来における掘進装置の捻れ防止技術では、分割体同士の屈曲の自由度を損なわずに捩れだけを確実に防止することが困難であった。特に、小口径の掘進装置において、実用的な技術が見当たらなかった。
修正ジャッキの本数を増やして捩れを防ぐ方法は、多数の修正ジャッキが装着可能な大口径の掘進装置には適用できるが、数本あるいは2本の修正ジャッキしか装着できないような小口径の掘進装置には適用困難である。修正ジャッキの本数が増えれば、それだけ設備コストが嵩み、掘進装置の稼動に要するコストも増大する。
【0007】
本件特許出願人は、図6に示す技術を検討した。
分割体の一方110にはU字形の金具112を他方100にはピン102を取り付け、ピン102をU字金具112に挿入しておく。ピン102がU字金具112の左右の内面に当接することで分割体100、110の捩れ方向の運動を防止する。U字金具112に対してピン102は前後方向に傾いたり移動したり軸方向に移動したり回転したりすることはできるので、分割体100、110同士の屈曲が許容できる。
前記したピン102とU字金具112との組み合わせ構造では、分割体100、110同士の屈曲を自由にするため、U字金具112に対してピン102が傾いたりできる余裕あるいは遊びが必要であった。円柱状のピン102と平面状のU字金具112内面とは線接触するため、遊びがないと、局部的に過大な負荷が加わって、相対的な移動が困難になったり接触面が削られしまったり、ひどい場合には、ピン102やU字金具112が折れてしまったりする。
【0008】
前記図6において、ピン102の外周面とU字金具112の内周面との間には隙間があいている。しかし、ピン102とU字金具112との間の遊びは、分割体100、110の捩れを許容してしまう。図6(a)で、破線矢印方向への捩れ運動が十分に阻止できないのである。
また、上記構造では、分割体100、110の軸方向において、U字金具112からピン102が外れてしまう方向に移動できてしまう。これでは、分割体100、110が分離してしまう。そこで、U字金具112とピン102とによる連結に加えて、分割体100、110を軸方向に連結しておく手段あるいは機構が必要になる。例えば、棒状の支持部材を分割体100、110に球面軸受で支持することで、屈曲を許容しながら、分割体100、110の軸方向の移動を阻止している。支持部材の分だけ装置が複雑になり、掘進装置の内部スペースを狭くしてしまう。
【0009】
本発明の課題は、前記した分割構造を有する掘進装置において、分割体同士の屈曲動作が容易であるとともに、望ましくない捩れ運動を確実に阻止できるようにすることである。特に、小口径の掘進装置にも適用し易い技術を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる推進工法用の掘進装置は、推進工法に使用され、複数の分割体が互いに屈曲自在に軸方向に連結されてなる掘進装置であって、前記分割体の連結個所では、一方の分割体の端部外周面が、他方の分割体の端部内周面と対面して、互いに屈曲可能に配置されてなり、前記分割体の連結個所において、前記掘進装置の中心軸と直交する断面で中心軸との交点から放射方向に延びる直径軸に対して左右対称になる位置に配置され、前後の分割体に対して屈曲可能に連結され、軸方向に伸縮自在である、少なくとも一対の修正ジャッキと、前記左右の修正ジャッキの対称軸である前記直径軸上の1個所に配置され、前後の分割体を、一方の分割体の直径軸に沿って他方の分割体が移動可能であり直径軸上の点を中心に球面方向に互いに回転可能であるが周方向には不動に連結する捻れ防止連結具とを備える。
【0011】
〔掘進装置〕
基本的には、通常の推進工法に使用されている掘進装置と同様の構造が採用される。
掘進装置の口径は、埋設する埋設管の口径に対応するが、通常、25〜300cmの範囲に設定される。特に、口径50〜300cmの掘進装置に有用である。掘進装置の全長は通常、1〜6mの範囲に設定される。
掘進装置は、複数の分割体が互いに屈曲自在に軸方向に連結されてなる。分割体の数は、少なくとも前後の2体からなり、前部、中間、後部の3体、あるいは、それ以上の数で構成される場合もある。掘進装置を構成する分割体は、全て同じ長さであってもよいし、それぞれの機能に合わせて長さが異なる場合もある。
【0012】
各分割体には、掘進装置の掘進装置の作動あるいは推進工法の実行に必要な各種の機器装置や部材が収容される。
例えば、掘進装置の最前部に配置される分割体には、地盤を掘削したり圧密したりするための機構を備えておく。掘進装置の前面などに掘削用の泥水や薬液を供給する機構も備えておくことができる。これらの装置機構は、最前部の分割体だけでなく、その後方の分割体の内部にわたって配置される場合もある。
掘進装置の最後部に配置される分割体には、掘進装置の後方に連結される埋設管の連結構造を備えておく。具体的には、ボルト結合構造や嵌合構造などが採用される。
【0013】
分割体同士の連結個所には、分割体の屈曲運動を許容する隙間や空間が設けられる。この隙間や空間から土砂などが浸入しないように、水密構造が設置される。具体的には、パッキンやOリング、水封装置などの通常の土木装置における水密構造が適用できる。
〔修正ジャッキ〕
分割体同士を屈曲させる機能を有する。また、分割体同士が分離しないように連結する機能も果たす。
基本的には、通常の掘進装置の修正ジャッキと同様の構造が採用できる。修正ジャッキは、本体構造に対して伸縮自在な作動構造を備えている。具体的には、本体構造であるシリンダ部と作動構造であるピストン部を備えている。シリンダ部に流体圧を加えることでピストン部を作動させることができる。流体圧とは、油圧、空圧、水圧が挙げられる。ピストンシリンダ機構として、中央に配置されたシリンダ部の前後からそれぞれピストン部が伸縮作動するものが使用できる。
【0014】
修正ジャッキとして、ピストンシリンダ機構のほか、トグル機構やリンク機構、歯車機構、ワイヤプーリ機構などの機械的な作動構造を備えたものも採用できる。流体機構と機械機構とを組み合わせたものも採用できる。電磁力による作動も可能である。
修正ジャッキの作動力は通常、50〜1000kNの範囲に設定される。修正ジャッキの伸縮長は通常、2〜30cmの範囲に設定される。
修正ジャッキと分割体との連結は、分割体に対して修正ジャッキの本体部分または作動部分を固定する場合と、屈曲自在に連結しておく場合がある。前後の分割体のうち少なくとも片側には屈曲自在に連結しておく。屈曲自在とは、左右や上下の一方向のみである場合と左右および上下方向の場合、さらには斜め方向を含む任意の方向である場合がある。
【0015】
通常は、修正ジャッキの両端をそれぞれ、分割体に対して任意の方向に屈曲可能に連結しておくことが望ましい。これによって、修正ジャッキの伸縮力をスムーズに分割体を屈曲させる力に転換できる。修正ジャッキと分割体とを任意方向に屈曲可能に連結する手段として、球面軸受機構が採用できる。
〔修正ジャッキの配置〕
修正ジャッキは、分割体同士の連結個所で、分割体同士を上下方向、左右方向、さらには任意の方向に屈曲させることができるように配置される。
具体的には、掘進装置の中心軸と直交する断面で中心軸との交点から放射方向に延びる直径軸に対して左右対称になる位置に配置することができる。直径軸の左右における修正ジャッキの伸縮量を変えれば、分割体同士を左右方向に屈曲できる。修正ジャッキを、前記直径軸に対して上下対称になる位置に配置すれば、分割体同士を上下方向に屈曲させることができる。左右対称あるいは上下対称に配置される修正ジャッキの一方を、伸縮しない単なる連結部材に置き換えたり、捩れ防止連結具に置き換えたりすることもできる。
【0016】
分割体同士の1個所の連結個所における中心軸と直交する断面で、修正ジャッキの設置個数は、少なくとも2個設置しておけば、分割体同士の任意方向への屈曲が可能になる。3個あるいはそれ以上に設置しておくことができる。前記断面の周方向で等角度に修正ジャッキを配置しておくこともできるし、不等間隔で配置される場合もある。1個所に複数個の修正ジャッキを並設しておくこともできる。
捩れ防止連結具あるいは連結部材を設置した個所には、修正ジャッキを設置しないでおくことができる。
【0017】
例えば、1対の修正ジャッキと1個の捩れ防止連結具とを、等角度すなわち120度の角度をあけて配置することができる。
〔捩れ防止連結具〕
分割体同士を屈曲可能に連結しておく機能を果たす。但し、特定の方向については分割体同士の相対運動を阻止する。
捩れ防止連結具は、左右に配置された修正ジャッキの対称軸になる直径軸上に配置される。捩れ防止連結具が配置された直径軸の左右に対称的に修正ジャッキが配置されることになる。
【0018】
捩れ防止連結具は、分割体同士を以下の条件で連結する。まず、前後の分割体を、直径軸に沿って移動可能に連結する。直径軸上の点を中心に球面方向に回転可能に連結する。球面方向とは、球面の中心周りに球面に沿う任意方向の回転運動が可能な状態である。回転の角度範囲は、任意方向に360度である必要はない。分割体に必要とされる屈曲角度を許容できるだけの回転が可能であればよい。通常は、3〜20度の範囲で回転できればよい。
捩れ防止連結具は、分割体同士を周方向には不動に連結する。周方向とは、一方の分割体に対して他方の分割体が捩れる方向である。不動とは、遊びや隙間による運動をも実質的に阻止できる状態を意味する。但し、本発明の効果を損なわない範囲で、工業的に不可避な程度の微小な運動までを阻止する必要はない。
【0019】
捩れ防止連結具は、通常、一方の分割体に固定される部材と、他方の分割体に固定される部材とが、互いの運動を許容あるいは阻止する状態で連結される。連結部分において、両側の部材は、面接触して摺動するようにしておけば、接触圧が低減され滑らかな摺動が可能になる。面接触であれば、部材同士間における遊びや余裕がなくても滑らかな摺動が容易になる。具体的な摺動構造は、通常の機械装置などにおける摺動機構や摺動部材の構造が採用できる。ボールベアリングや流体軸受などの軸受機構を採用することもできる。
<球面摺動を利用した捻れ防止連結具>
前記のような機能を良好に果たす捩れ防止連結具として、以下の構造を有するものが採用できる。
【0020】
前後の分割体のうち、一方の分割体に固定され、直径軸と同心の摺動軸を有する。摺動軸は、鋼棒材などの剛性強度を備えた材料であって、周面の摺動性が良好な材料からなるものが好ましい。摺動軸の表面に、メッキや溶射などの膜形成手段で低摩擦材料層を形成しておくこともできる。摺動軸は、一般的には断面円形であるが、円形以外の断面形状、例えば、長円形や楕円形、多角形も採用でき、歯車状やスプライン状の凹凸断面形状も採用できる。円形以外の断面であれば、摺動軸と球面摺動環との軸周り運動を阻止できる。
球面摺動環は、全体が環状をなし、前記摺動軸に挿通されて軸方向に摺動し、外周面が球面状をなす。球面摺動環は、軸受金属などの摺動性に優れた材料で構成できる。球面摺動環の内外周面のみを低摩擦材料層で形成することもできる。小さなチップ状の低摩擦材料片を、内外周面に埋め込んだり貼りつけたりして配置しておくこともできる。
【0021】
球面摺動環の内周面は摺動軸の外周面に対応する断面形状を有している。球面摺動環の外周面は球面の一部を切り取った構造をなしている。球面摺動環の周方向は360度の範囲で球面であるが、軸方向には球面を一定の幅で切り取った構造である。球面摺動環の内周面と摺動軸の外周面とは全面で面接触した状態で軸方向に滑らかに摺動することができる。
球面摺動受材は、摺動軸を設置した分割体に対応する反対側の分割体に固定設置される。球面摺動環が挿入されて球面摺動する。球面摺動受材は、球面摺動環と同様の軸受材料で形成されていたり内面に低摩擦材料層が配置されていたりする。球面摺動受材の内周面は、球面摺動環の外周面に対応する球面を構成している。実用的には、分割体の屈曲動作の範囲内で、少なくとも球面摺動環の外周面と摺動して、分割体の連結機能を果たすことができればよい。例えば、軸方向の厚みを球面摺動環の厚みよりも薄くしておくこともできる。軸周りにおいて、球面摺動環の複数個所に分割して当接摺動する球面摺動受材を採用することもできる。
【0022】
球面摺動受材は、分割体に直接に固定されていてもよいし、球面摺動受材を保持する保持部材や支持部材を介して分割体に固定しておくこともできる。この場合、保持部材や支持部材には安価で加工し易い構造鋼材などを使用できるので、実用性に優れている。
〔捩れ防止連結具の配置〕
捩れ防止連結具は、分割体の連結個所毎に1個づつ配置される。捩れ防止連結具の摺動軸の延長方向に前記直径軸が配置される。この直径軸を対象軸にして、左右に対称的に修正ジャッキが配置される。また、掘進装置の断面を等角度に分割して、複数個の修正ジャッキと捩れ防止連結具とを配置しておくこともできる。
【0023】
掘進装置を構成する分割体が3個以上ある場合、すなわち、連結個所が2個所以上ある場合には、全ての連結個所で、捩れ防止連結具と修正ジャッキとの配置構造を同一に設定しておくこともできるし、連結個所によって配置構造を違えておく場合もある。
例えば、前後に配置された連結個所で、捩れ防止連結具および修正ジャッキを、掘進装置の中心軸に対して前記直径軸の方向で対称位置に配置しておくことができる。前方の連結個所で上方に捩れ防止連結具が存在すれば、後方の連結個所では下方に捩れ防止連結具が配置される。前方の連結個所で下方に位置する修正ジャッキは、後方の連結個所では上方に配置される。一つの連結個所で、修正ジャッキが上下非対称に配置されている場合、前後の連結個所では、修正ジャッキの設置位置が上下に食い違う構造になる。これによって、長さ方向にスペースの少ない掘進装置であっても、前後の修正ジャッキを上下食い違い状態で余裕をもって設置しておくことが可能になる。前後の修正ジャッキおよびその付属設備が干渉することが防止できる。
【0024】
〔分割体の動作〕
掘進装置の推進方向を変更したり修正したりする際には、前後に配置された分割体同士を所定の角度および方向に屈曲させる。この屈曲動作は、修正ジャッキの伸縮によって果たされる。修正ジャッキの作動方法や作動制御については、通常の掘進装置と同様に行うことができる。
修正ジャッキを伸縮させると、各修正ジャッキの位置で、前後の分割体が接近したり離れたりすることになる。周方向において、修正ジャッキの位置によって、前後の分割体の軸方向位置が変わることで、前後の分割体が屈曲する。
【0025】
前後の分割体の屈曲角度は通常、3〜20度の範囲に設定される。
このとき、捩れ防止連結具の位置では、前後の分割体が相対的に、直径軸に沿って移動するか、直径軸上の点を中心に球面方向に回転する。これによって、前後の分割体は任意の方向に屈曲することが許容される。しかし、捩れ防止連結具の位置では、分割体の周方向には不動に連結されているので、前後の分割体が捩れることは阻止される。
一つの連結個所で、周方向の1個所に捩れ防止連結具が設置されていれば、前後の分割体を屈曲可能でかつ分離してしまわないように連結しておけるので、複数個所に連結構造を設けたり、大掛りな捩れ防止構造を備えておいたりすることが不要になる。分割体の連結個所には、1個所の捩れ防止連結具と必要個所の修正ジャッキとだけを備えておけばよいので、小口径の掘進装置にでも、何ら支障なく、容易に設置しておくことができる。
【0026】
最小限の構成では、1個所の捩れ防止連結具と、捩れ防止連結具を通る直径軸を対称軸として左右対称に配置された一対の修正ジャッキとで、分割体の屈曲を良好に果たせることになる。捩れ防止連結具と一つの修正ジャッキとを、周方向に等角度で配置しておけば、分割体の屈曲動作が効率的に行える。
捩れ防止連結具が、前記した球面摺動構造と軸摺動構造とを組み合わせたものであれば、摺動個所において十分な面積を有する面接触による摺動が行われ、余分な遊びや隙間を設けておかなくても、滑らかな摺動を果たすとともに、分割体の連結個所に加わる負荷や外力にも十分に耐えることが可能になる。しかも、全体の構造は比較的に簡単で製造も容易になる。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1〜図4に示す実施形態は、前部、中間および後部の3体の分割体で構成された掘進装置を示している。
〔掘進装置の全体構造〕
図1および図2に示すように、掘進装置10は、全体が鋼材などで構築された円筒状の外郭構造の内部に必要な構造部材や機器装置が収容されている。掘進装置の具体的寸法として、例えば、口径150cm、全長4mに設定される。掘進装置10は、その中心軸Cに沿って、前部分割体20、中間分割体30および後部分割体40の3部分に分割構成されている。分割体20〜40の長さとして、例えば、前部分割体20を150cm、中間分割体30を100cm、後部分割体40を150cmに設定される。
【0028】
前部分割体20には、前面に掘削盤22を有し、前部分割体20から中間分割体30の内部空間に収容されたモータ24で掘削盤22が回転駆動される。掘削盤22で地盤を掘削しながら掘進装置10を推進させる。
後部分割体40の後端には、推進埋設する埋設管70が連結される。図示を省略したが、埋設管70は順次後方に継ぎ足されて埋設管列を構成する。
各分割体20〜40の内部には、掘進装置10の稼動に必要な装置機器として、モータの駆動電力などを供給する電力線や、地盤の掘削面に泥水を供給する泥水配管、掘削された土砂を泥水とともに排出する排土配管、推進位置の測量装置などが、必要に応じて収容設置されている。
【0029】
〔修正ジャッキと捩れ防止連結具の配置〕
分割体20〜40の連結個所にはそれぞれ、一対2基の修正ジャッキ50、50と捩れ防止連結具60とが配置されている。
図2(a)には、前部分割体20と中間分割体30との連結個所における、掘進装置10の中心軸Cと直交する断面での、修正ジャッキ50、50と捩れ防止連結具60の配置構造を示している。
修正ジャッキ50および捩れ防止連結具60は、分割体20、30の円筒状をなす外郭の内面に近い位置に配置されており、分割体20、30の中央空間に配置される各種配管や設備機器の設置の邪魔にならないようにしている。
【0030】
中心軸Cを中心にして、一対の修正ジャッキ50、50および捩れ防止連結具60が、互いに等角度θをなすように配置されている。角度θは360/3=120°である。また、捩れ防止連結具60の中心と中心軸Cとを結ぶ直径軸Dに対して、左右の対称位置にそれぞれ修正ジャッキ50、50が配置されている。図1に示すように、中間分割体30と後部分割体40との連結個所にも、前記同様に、一対の修正ジャッキ50、50と捩れ防止連結具60とが配置されている。
但し、修正ジャッキ50、50と捩れ防止連結具60との位置関係が違っている。図2(b)の断面構造において、修正ジャッキ50、50が上側、捩れ防止連結具60が下側に配置されている。図2(a)の連結個所とは丁度、対称になる配置である。このような配置構造を採用することで、前後方向に比較的に長さを要する修正ジャッキ50を、前後の連結個所で上下に食い違わせて配置することができる。その結果、内部空間が狭く多数の機器類を効率的に配置しなければならない掘進装置10において、修正ジャッキ50を効率良く配置しておくことが可能になる。
【0031】
〔修正ジャッキの構造〕
図3に示すように、修正ジャッキ50は、筒状をなすシリンダ部52の両端にピストン部54、54が取り付けられている。それぞれのピストン部54、54がシリンダ部52に対して進退し、ピストン部54、54の両端間の距離が伸縮する。修正ジャッキ50の具体的仕様として、例えば、油圧駆動で1000kNの作動力を発生し、伸縮長さが20cmであるものが採用できる。
ピストン部54の先端は、球状の端部56となっている。球状端部56を受ける球状軸受体58が、分割体20〜40の外郭構造の内面に固定されている。両端に配置された球状軸受体58は、前後に配置された分割体20と30または30と40とにそれぞれ別個に固定されている。
【0032】
球状端部56は球状軸受体58に対して滑らかに球面摺動を行う。その結果、球状軸受体58とそれが固定された分割体20…に対して、ピストン部52は任意の方向に屈曲できることになる。両側の球状軸受体58の何れに対しても、中央のピストン部52およびシリンダ部54すなわち修正ジャッキ50の全体が、任意の方向に屈曲できることになる。修正ジャッキ50を伸縮させて前後の分割体20〜40が任意の方向に屈曲することを許容することができる。
但し、このような修正ジャッキ50、50による連結では、前後の分割体20〜40が互いに捩れる方向に運動することを防止できない。
【0033】
〔連結構造〕
図4、5は、前部分割体20と中間分割体30との連結個所の詳細構造と、そこに設置された捩れ防止連結具60の構造を示している。
前部分割体20と中間分割体30との連結個所では、中間分割体30の先端32が、他の部分よりも少し外径が小さく狭められている。先端32のさらに先端には摺動環体34を有する。摺動環体34の外周面は、中間分割体30の中心軸Cに中心を有する球面状をなしている。この摺動環体34に対面する前部分割体20の内周面には複数個所にパッキン26が装着されている。パッキン26が中間分割体30の摺動環体34に当接することで水密性を発揮する。前部分割体20と中間分割体30とが屈曲したときにも、前記した球面状の外周面を有する摺動環体34とパッキン26とが良好に密着した状態の維持するので、水密性が損なわれることがない。
【0034】
さらに、前部分割体20の後端には、弾力的に変形可能なひれ片28が取り付けられている。ひれ片28の先端が摺動環体34の外周面に当接することで、土砂などの異物が、摺動環体34と前部分割体20との間に侵入することを阻止できる。
上記した連結構造は、中間分割体30と後部連結体40との連結個所にも設けられている。
〔捩れ防止連結具〕
図4、5に示すように、中間分割体30の摺動環体34の内面には、捩れ防止連結具60の一部を構成する摺動軸61が固定設置されている。摺動軸20の中心軸は、掘進装置10の中心軸Cと直交する断面において中心軸Cの位置から放射方向に延びる前記直径軸Dと同心になっている。摺動軸20の先端の延長上に中心軸Cが存在する。
【0035】
捩れ防止連結具60のうち、前部分割体20の側に設置された構造は、まず、前部分割体20の内面に固定され、掘進装置10の中心軸C方向に延びる支持部材62を有する。支持部材62には、支持部材62の側面から中間分割体30のほうに延びて、中央に孔を有する保持部材64を有する。
保持部材64の中央には、摺動性の良好な軸受金属などからなり、全体が環状をなし、内周面が球面状をなす球面摺動受材67が取り付けられている。球面摺動受材67の球面中心は、前記直径軸D上にある。
球面摺動受材67の内側には、球面摺動環68が収容されている。球面摺動環68も、摺動性の良好な軸受金属などからなる。球面摺動環68の外周面は、球面摺動受材67の内周面に対応する球面状をなし、互いにスムーズに摺動する。この摺動は、前記直径軸Dに中心を有する球面摺動である。
【0036】
球面摺動環68の内周面は、前記摺動軸61の内径に対応する円形孔になっており、摺動軸61に挿通されている。摺動軸61と球面摺動環68とは、互いの軸方向すなわち前記直径軸Dに沿って摺動する。
さらに、保持部材64の下端面には、円盤状の覆い蓋66が取り付けられている。覆い蓋66の上方で、球面摺動受材67、球面摺動環68および摺動軸61との間の空間にはグリスが充填され、各摺動部分における摺動性を向上させている。保持部材64の上端面側にも、円環状の覆い部材が取り付けられていて、摺動部分に異物が侵入し難くなっている。
【0037】
上記のような構造を有する捩れ防止連結具60は、前部分割体20と中間分割体30とに対して、前記直径軸D上の球面中心を中心とする球面摺動を許容する。また、直径軸Dに沿う直線運動も許容する。しかし、直径軸Dと直交する方向、すなわち中心軸Cに沿った前後運動および中心軸C周りの捩れ運動は阻止される。
捩れ防止連結具60の具体的仕様として、例えば、摺動軸61の径を20cm、球面摺動環68の球面半径を30cm、球面摺動環68に対する摺動軸61の最大摺動距離を5cm、球面摺動環68と球面摺動受材67との回転角度(上下方向)を15度にそれぞれ設定できる。
【0038】
なお、中間分割体30と後部分割体40との連結個所に配置された捩れ防止連結具60も同じ構造を備えている。
〔連結個所における運動〕
上記のような構造の捩れ防止連結具60と修正ジャッキ50とを備えた連結個所における前部分割体20と中間分割体30との運動を説明する。
図1において、左右一対の修正ジャッキ50を同時に伸ばすか縮めるかすると、捩れ防止連結具60の球面摺動の中心を支点にして、前部分割体20と中間分割体30とが屈曲する。上下方向への屈曲である。
【0039】
図2(a)において、左右一対の修正ジャッキ50の伸縮を逆にすると、捩れ防止連結具60の摺動軸61すなわち直径軸Dを回転軸にして、前部分割体20と中間分割体30とが水平方向に屈曲する。
左右一対の修正ジャッキ50の伸縮方向および伸縮量を調整すれば、前記した上下方向および水平方向の屈曲運動を組み合わせた任意の方向への屈曲が可能である。
なお、上記のような屈曲運動をさせると、中間分割体30の摺動環体34と前部分割体20のパッキン26との間隔が、拡がったり狭まったりする相対移動を行う。この相対移動が大きくなり過ぎると、水密性が低下する。前部分割体20の中心軸と中間分割体30の中心軸とがずれることになるため、掘進装置60の推進方向も大きくずれてしまう。これは、捩れ防止連結具60における球面摺動の中心が、中心軸Cからは離れた直径軸D上にあることによる。
【0040】
前部分割体20と中間分割体30とは、中心軸Cに屈曲の中心を置くような屈曲運動を行うことが望ましいのである。
そこで、捩れ防止連結具60において、摺動軸61と球面摺動環68とが直径軸Dに沿って摺動することが重要となる。この摺動が許容されていることによって、前部分割体20と中間分割体30とは自然に、中心軸Cに屈曲の中心を置くような屈曲運動を行い易くなり、中間分割体30の摺動環体34と前部分割体20のパッキン26との間隔も過大に変動することがなくなる。
次に、前部分割体20の掘削盤22を回転させて掘削作業を行い、掘進装置10を推進させたときには、地盤からの抵抗による反力で、前部分割体20を中心軸Cの周りに回転させる力が作用する。後方の埋設管70列などと一体連結された中間分割体30と前部分割体20との間には、中心軸C周りのズレ力すなわち捩れ力が作用することになる。
【0041】
しかし、捩れ防止連結具60では、摺動軸61と球面摺動環68および球面摺動受材67との、中心軸C周りへの相対移動は阻止されているので、前部分割体20が中間分割体30に対して捩れ運動を行うことはない。
以上の結果、前部分割体20と中間分割体30とは、任意の方向に自由でスムーズな屈曲運動ができながら、捩れ運動は確実に阻止された状態になる。
なお、中間分割体30と後部分割体40との連結個所においても、前記同様の屈曲運動が許容されながら、捩れ運動については確実に阻止されることになる。
【0042】
【発明の効果】
本発明にかかる推進工法用の掘進装置は、前記構造の捻れ防止連結具を備えていることで、修正ジャッキによる分割体同士の屈曲運動は任意の方向に自由に行えながら、分割体の周方向における捩れ運動は確実に阻止することができる。
その結果、掘進装置の推進方向を修正したり曲線推進をさせたりする動作が正確かつスムーズに行えることになり、推進工法の作業精度あるいは作業品質の向上を図り、推進工法の需要拡大にも大きく貢献できることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態を表す掘進装置の側面図
【図2】 分割体の連結個所における断面図
【図3】 修正ジャッキの取付構造図
【図4】 捩れ防止連結具の一部断面側面図
【図5】 一部断面底面図
【図6】 捩れ防止機構の参考技術を示す正面図(a)、側面図(b)、平面図(c)
【符号の説明】
10 掘進装置
20 前部分割体
30 中間分割体
40 後部分割体
50 修正ジャッキ
60 捩れ防止連結具
67 球面摺動受材
68 球面摺動環
70 埋設管
61 摺動軸
C 中心軸
D 直径軸

Claims (4)

  1. 推進工法に使用され、複数の分割体が互いに屈曲自在に軸方向に連結されてなる掘進装置であって、
    前記分割体の連結個所では、一方の分割体の端部外周面が、他方の分割体の端部内周面と対面して、互いに屈曲可能に配置されてなり、
    前記分割体の連結個所において、前記掘進装置の中心軸と直交する断面で中心軸との交点から放射方向に延びる直径軸に対して左右対称になる位置に配置され、前後の分割体に対して屈曲可能に連結され、軸方向に伸縮自在である、少なくとも一対の修正ジャッキと、
    前記左右の修正ジャッキの対称軸である前記直径軸上の1個所に配置され、前後の分割体を、一方の分割体の直径軸に沿って他方の分割体が移動可能であり直径軸上の点を中心に球面方向に互いに回転可能であるが周方向には不動に連結する捻れ防止連結具と
    を備える
    掘進装置。
  2. 前記捻れ防止連結具が、
    前記前後の分割体のうち、一方の分割体に固定され、前記直径軸と同心の摺動軸と、
    全体が環状をなし、前記摺動軸に挿通されて軸方向に摺動し、外周面が球面状をなす球面摺動環と、
    他方の分割体に固定され、前記球面摺動環が挿入されて球面摺動する球面摺動受材と
    を備える
    請求項1に記載の掘進装置。
  3. 前記捻れ防止連結具および修正ジャッキが、前記掘進装置の中心軸と直交する断面において、中心軸との交点に対して等角度位置に配置されている
    請求項1または2に記載の掘進装置。
  4. 少なくとも3個の前記分割体が連結されてなり、
    前部の分割体と中間の分割体との連結個所と、中間の分割体と後部の分割体との連結個所とで、前記捻れ防止連結具および修正ジャッキが、前記掘進装置の中心軸に対して前記直径軸の方向で対称位置に配置されている
    請求項1〜3のいずれかに記載の掘進装置。
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