JP3773215B2 - 転写シート - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は転写シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、装飾性を付与するのみならず、その複製が困難であることからホログラムや回折格子等の光回折構造をクレジットカード、キャッシュカード、金券類等の各種の基材に設け、これらのものの偽造防止を図っている。
【0003】
そして、上記の如き各種基材に光回折構造を設けるには、転写シートを用いて光回折構造を転写形成するといった方法が一般に採用されており、通常用いられるこの種の転写シートとしては基材シート上に剥離層、光回折構造が形成されている樹脂層、及び接着剤層を順次積層してなる構成のものが知られている(例えば、特開平4−281489号公報等)。
【0004】
しかしながら、近年では光回折構造の製作技術もさほど難しい技術ではなくなり、光回折構造の複製も従来に比して容易に行うことができるようになってきている。このため、光回折構造の有する偽造防止の効果が薄らぎつつあり、より複製の困難な複雑な光回折構造を製作するとともに、光回折構造を転写形成するために用いられている前述したような転写シートの流通経路において、該転写シートにどのような光回折構造が形成されているかが知られないよう、厳格な商品管理が行われることが望まれている。
【0005】
本発明者らは上記の点に鑑み、光回折構造が形成された転写シートの厳格な商品管理をなし得るよう本発明を完成させた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明転写シートは基材シート上に光回折構造形成層を設けてなる転写シートであって、基材シートの光回折構造形成層が設けられている側と反対側の面には背面滑性層を有し、上記光回折構造形成層に形成された光回折構造を、基材シート側と光回折構造形成層側との両側から目視されぬよう光回折構造を隠蔽する光非透過性の層が、光回折構造形成層の上側及び基材シートと背面滑性層との間の両方に設けられていることを特徴とする。
【0008】
【実施例】
以下、本発明転写シートを図面に基づき詳細に説明する。尚、図1は本発明転写シート1の一例を示す断面図であり、図中2、7、8は、それぞれ本発明において必要に応じて設けられる背面滑性層、剥離層、感熱接着剤層である。
【0009】
本発明転写シート1にあっては、光回折構造が形成された光回折構造形成層4が基材シート3上に設けられているとともに、上記光回折構造が目視されぬよう隠蔽されている。
【0010】
本発明において光回折構造を隠蔽するには、着色顔料が添加された光非透過性の隠蔽層6、6を図1に示すように設けることができる。
【0011】
本発明において、隠蔽層6、6に添加される着色顔料は、隠蔽層6、6を光非透過性とすることができるものであれば特に限定されず、このような着色顔料としては耐熱性の良好な各種無機顔料や有機顔料を用いることができるが、ヘッド適性等からその粒径は1μm以下であるのが望ましい。
【0013】
ここで、本発明における光回折構造とは回折格子又はホログラムを意味し、本発明転写シート1の基材シート3上に設けられている光回折構造形成層4には、回折格子やホログラムの干渉縞が記録されている。光回折構造形成層4に記録する回折格子やホログラムの干渉縞は、表面凹凸のレリーフとして記録されているもの(ホログラムを例にとれば、干渉縞がこのように記録されているものは「平面ホログラム」と一般に称されている)、その厚み方向に立体的に記録されているもの(ホログラムを例にとれば、干渉縞がこのように記録されているものは「体積ホログラム」と一般に称されている)、又は透過率の変化による光の振幅の変化で回折が起こるように記録されているもの(ホログラムを例にとれば、干渉縞がこのように記録されているものは「振幅ホログラム」と一般に称されている)のいずれであっても良く、更に、光回折構造としてのホログラムについてその具体例を挙げると、フレネルホログラム、フラウンホーファーホログラム、レンズレスフーリエ変換ホログラム、イメージホログラム等のレーザー再生ホログラム、リップマンホログラム、デニシュークホログラム、レインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、これらの原理を利用したホログラフィックスステレオグラム、マルチプレックスホログラム、カラーホログラム、コンピューターホログラム、ホログラムディスプレー、ホログラフィック回折格子等を挙げることができる。
【0014】
光回折構造形成層4に上記の如き回折格子やホログラムの干渉縞を記録するには、従来既知の方法によって記録することができ、例えば、回折格子やホログラムの干渉縞を表面凹凸のレリーフとして記録する場合には、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型として用い、この原版上に樹脂シートを置いて加熱ロール等の適宜手段によって両者を加熱圧接して上記原版の凹凸模様を複製する等すれば良く、このようにして表面凹凸のレリーフとして回折格子やホログラムの干渉縞を光回折構造形成層4の表面に記録するのは量産性やコスト面で好ましい。
【0015】
また、回折格子やホログラムの干渉縞が記録される光回折構造形成層4の材質としては、ポリ塩化ビニル、アクリル(例、MMA)、ポリスチレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレート等の熱硬化性樹脂を硬化させたもの、或いは、上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物が使用可能であり、これらのもの以外にもラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質を使用することもできる。
【0016】
更に、光回折構造形成層4の表面に凹凸のレリーフとして回折格子やホログラムの干渉縞を記録する場合には、回折効率を高めるための薄膜層4aをそのレリーフ面に形成するのが好ましく、光を反射する金属薄膜を薄膜層4aとして形成すれば反射型の光回折構造が得られ、また、透明薄膜を薄膜層4aとして形成すれば光回折構造が転写形成される基材が薄膜層4aによっては隠蔽されない透明型の光回折構造が得られ、これらのものは目的に応じて適宜選択することができる。
【0017】
光回折構造を反射型のものとする場合に形成される金属薄膜は、Cr、Ag、Au、Al、Sn等の金属及びその酸化物や窒化物等を単独、又は2種以上組み合わせ、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、電気メッキ等によりその膜厚が500〜1000Åとなるように形成するのが好ましく、また、当該金属薄膜は光回折構造が転写された被転写材が完全に隠蔽されないように網点状に形成することもできる。
【0018】
光回折構造を透明型のものとする場合に形成される透明薄膜は、回折効率を高めることができる光透過性のものであれば特に限定されないが、特開平4−281489号公報に開示されているような、1)光回折構造形成層4より屈折率の大きい透明連続薄膜であって、Sb2 S3 、TiO2、ZnS、SiO、TiO、SiO2等のような可視領域で透明なものや、赤外又は紫外領域で透明なもの、2)光回折構造形成層4よりも屈折率の大きい透明強誘電体、3)光回折構造形成層4よりも屈折率の小さい透明連続薄膜、4)厚さ200Å以下の反射金属薄膜、5)光回折構造形成層4と屈折率の異なる樹脂、6)上記1)〜5)の材質を適宜組み合わせてなる積層体、等を挙げることができる。
【0019】
上記1)〜6)のうち、4)の厚みは200Åであるが、1)〜3)、及び5)、6)の厚みは薄膜層4aを形成する材質の透明領域であれば良く、一般には、500〜2000Åである。また、上記1)〜4)により薄膜層4aを形成する場合は、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、電気メッキ等の一般的な薄膜形成手段で形成でき、上記5)により薄膜層4aを形成する場合は、一般的なコーティング法により薄膜層4aを形成することができる。更に、上記6)により薄膜層4aを形成する場合は、上記の各種手段、方法を適宜組み合わせることによって薄膜層4aを形成することができる。
【0020】
また、発明転写シート1における基材シート3としては、ある程度の剛性と耐熱性を有する6〜25μm程度のものが用いられ、具体的には、コンデンサーペーパー等の各種加工紙、又はポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチルテレフタレート、アラミド、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セロファン等からなる合成樹脂シートを例示することができるが、寸法安定性、耐熱性、強靱性等からポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0021】
上記基材シート3の光回折構造形成層4が設けられる側には、剥離性、箔切れ性を向上させるために必要に応じて剥離層7を0.1〜1.0μm程度の厚みで設けることができるが、その材質は基材シート3の材質に応じて適宜選択され、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、セルロース、シリコーン、炭化水素を主成分とするワックス類、ポリスチレン、塩化ゴム、カゼイン、各種界面滑性剤、金属酸化物等を例示することができ、これらのものは単独で用いても又は2種以上を混合して用いても良い。尚、基材シート3自体が剥離性を有していれば剥離層7を設ける必要は特になく、この場合には剥離層7が設けられる位置に転写後の光回折構造形成層4を保護する表面保護層を設けることもできる。
【0022】
また、必要に応じて設けられる感熱接着剤層8を構成する樹脂としては、ポリアクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ロジン又はロジン変成マレイン酸、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0023】
更に、本発明にあっては基材シートの光回折構造形成層が設けられている側と反対側の面に必要に応じて背面滑性層を設けることもでき、該背面滑性層2中にはリン酸エステル系界面活性剤及び/又はモース硬度が3未満の粒子が背面滑性層2に滑性を付与すべく含有されている。
【0024】
上記リン酸エステル系界面活性剤としては、炭素数6〜20、好ましくは炭素数12〜18の飽和又は不飽和の高級アルコール(例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等)のモノリン酸エステル又はジリン酸エステル等の長鎖アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル等のリン酸エステル、又は前述の如き高級アルコール、炭素数8〜12のアルキル基を少なくとも1〜2個有するアルキルフェノール(例えば、ノニルフェノール、ドデシルフェノール等)やアルキルナフトール又はジフェニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物(通常、付加モル数1〜8)のモノリン酸エステル塩又はジリン酸エステル塩等の非イオン性又は陰イオン性リン酸エステル界面活性剤が用いられ、モース硬度が3未満の粒子としては、タルク、カオリン、セキボク、硝石、石膏、ブルース石等の無機粒子や、アクリル樹脂、テフロン樹脂、シリコーン樹脂、ラウロイル樹脂、フェノール樹脂、架橋ポリアセタール樹脂等からなる合成樹脂粒子等が用いられる。
【0025】
尚、上記モース硬度が3未満の粒子は、その粒径が0.01〜10μm程度であるのが好ましく、背面滑性層2の厚みの30〜400%の範囲にあるものが好適である。更に、当該粒子の形状は球形に近い程背面滑性層2に優れた滑性を付与することができる。また、天然の無機粒子を用いる場合、不純物の含有量が5%未満であれば本発明において何ら支障なくこれを用いることができる。
【0026】
また、基材シート3上に充分な被膜強度をもって背面滑性層2を設けることが可能であれば、該背面滑性層2は上記リン酸エステル系界面活性剤及び/又はモース硬度が3未満の粒子のみから構成されていても良いが、被膜強度を充分なものとするためにリン酸エステル系界面活性剤やモース硬度が3未満の粒子を樹脂バインダーに配合して背面滑性層2を構成するのが好ましい。この場合に用いられる樹脂バインダーとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は電離放射線硬化性樹脂のいずれであっても良いが、柔軟性やヘッド追従性の点から熱可塑性樹脂やその架橋体が好ましい。このような熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリビニルクロリド系樹脂等を用いることができるが、本発明ではポリビニルブチラールやポリビニルアセタール等の反応性水酸基を有する樹脂を用いるのが好ましい。
【0027】
上記樹脂バインダーにリン酸エステル系界面活性剤及び/又はモース硬度が3未満の粒子を配合する場合には、リン酸エステル系界面活性剤は後述するアルカリ性物質を含め樹脂バインダー100重量部に対して5〜500重量部の割合で配合するのが好ましく、モース硬度が3未満の粒子は樹脂バインダー100重量部に対して5〜40重量部の割合で配合するのが好ましい。尚、樹脂バインダーに対するリン酸エステル系界面活性剤やモース硬度が3未満の粒子の配合量が少ない場合には背面滑性層2に充分な滑性が得られなくなり、配合量が多過ぎる場合には背面滑性層2の可撓性や被膜強度が低下してしまう。
【0028】
更に、上記樹脂バインダーには、背面滑性層2の耐熱性や基材シート3との密着性、背面滑性層2を塗工形成する際の塗工性等を向上させるために、ポリイソシアネートを架橋剤として添加するのが好ましく、このようなポリイソシアネートとしては従来公知の塗料、接着剤、ポリウレタン等の合成に使用されているいずれのものであっても良いが、例えば、「武田薬品(株)製;タケネート」、「大日本インキ化学(株)製;バーノック」、「日本ポリウレタン(株)製;コロネート」、「旭化成工業(株)製;デュラネート」、「バイエル(株)製;ディスモジュール」等として市販されているものを用いることができる。
【0029】
そして、ポリイソシアネートを樹脂バインダーの架橋剤として用いる場合、ポリイソシアネートは樹脂バインダー100重量部に対して5〜200重量部の割合で添加し、NCO/OHの比が0.8〜2.0程度となるようにするのが好ましく、このときのポリイソシアネートの添加量が少ないと架橋密度が低く耐熱性が不充分になってしまい、また、ポリイソシアネートの添加量が多過ぎると形成される塗膜の収縮の制御が困難になってしまうとともに、硬化時間が長くなってしまったり、背面滑性層2中に残存する未反応のNCO基が空気中の水分と反応してしまったりする等の不都合が生じてしまう。
【0030】
また、背面滑性層2中には、前述の如きリン酸エステル系界面活性剤とモース硬度が3未満の粒子との両方又はいずれか一方が含有されていれば良いが、リン酸エステル系界面滑性剤を背面滑性層2中に含有せしめる場合には、光回折構造を被転写材に転写形成するときに、加熱媒体から背面滑性層2に熱が印加されてリン酸エステル系界面活性剤やその分解物から生じる酸根を中和して、加熱媒体が腐食されるのを防ぐことができるようにアルカリ性物質を添加しておくのが好ましい。
【0031】
このようなアルカリ性物質としては、ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミナ・マグネシウムアルミニウムグリシネート、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等のアルカリ性無機化合物や、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、エイコシルアミン、ドコシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、N−メチル−ノニルアミン、N−メチル−デシルアミン、N−エチル−パルミチルアミン等のアミン類を例示することができ、これらのものは単独で用いても混合して用いても良い。尚、アルカリ性無機化合物を添加する場合には、モース硬度が3未満のものを添加するのが好ましい。また、アミンは常温不揮発性であるとともに沸点が200℃以上のものが好ましい。
【0032】
また、上記アルカリ性物質はリン酸エステル系界面滑性剤1モル当たり0.1〜10モル程度の割合で添加されるのが好ましく、リン酸エステル系界面滑性剤に対するアルカリ性物質の添加量が少ないとリン酸エステル系界面活性剤やその分解物から生じた酸根を完全に中和することができず、また添加量を必要以上に多くしても得られる効果の向上は見られない。
【0033】
更に、背面滑性層2にはリン酸エステル系界面活性剤及び/又はモース硬度が3未満の粒子に加えて、ワックス、シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド、エステル、リン酸エステル系界面活性剤以外の界面活性剤等の滑剤や、4級アンモニウム塩、リン酸エステル等の帯電防止剤等を、背面滑性層2を設けることによって得られる後述するような効果を阻害しない範囲で必要に応じて添加することもできる。
【0034】
背面滑性層2は、該背面滑性層2を構成する上記組成成分を適宜選択してアセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等の適当な溶剤中に溶解又は分散せしめて調製した塗工液を用い、グラビアコーター、ロールコーター、ワイヤーバー等により塗工形成することができ、鉛筆硬度でH〜2H程度の硬度になるよう固形分基準で5.0g/m2 以下、好ましくは0.1〜1.0g/m2 の厚みに形成するのが好ましい。尚、樹脂バインダーの架橋剤としてイソシアネートを添加した場合には、未反応のイソシアネート基が残っている場合が多いので、背面滑性層2を塗工形成した後に充分な熟成処理を施すのが好ましい。
【0035】
このような背面滑性層2を基材シート3の光回折構造形成層4が設けられている側と反対側の面、即ち、転写時に加熱媒体が接する面に設ければ、光回折構造を転写する際に、空気が入り込んだりして転写層への熱伝導が不充分とならないよう転写シートに強く押し付けられながら移動するサーマルヘッドの如き加熱媒体が、転写シートに対して滑らか移動してスティッキング現象を起こすことなく光回折構造の良好な転写を行うことができるともに、加熱媒体との接触面が削られてカスが生じると、これが加熱媒体の熱で燃えて当該加熱媒体を損傷する原因となる虞があるが、背面滑性層2を設けておけばこのようなカスが生じることもないので、何ら不都合が生じることなくサーマルヘッドの如き加熱媒体によって光回折構造を任意のパターンでその目的や用途に応じて個別的に転写形成することができる。
【0036】
次に、本発明転写シートの具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0037】
〔実施例1〕
カーボンを練り込んだポリエチレンテレフタレートにより成形した厚さ12μmの基材シートを用い、その一方の面に乾燥後の厚みが1μmとなるように以下の組成の塗工液により背面滑性層を塗工形成した。
【0038】
〔背面滑性層〕
・ポリビニルブチラール(エスレックBX−1) 8部
・ポリイソシアネート硬化剤(バーノックD750) 18部
・リン酸エステル(プライサーフA208S) 5部
・タルク 1.5部
・メチルエチルケトン(a)+トルエン(b)(a:b=1:1) 130部
【0039】
また、基材シートの他方の面には、乾燥後の厚みが( )内の値となるよう保護層(1μm)と光回折構造形成層(3μm)を以下の組成の塗工液により順次塗工形成した後に、光回折構造形成層をレリーフホログラムとして構成し、次いで、光回折構造形成層上にTiOX により500Åの膜厚で金属薄膜層を形成した。
【0040】
〔保護層〕
・酢酸セルロース樹脂 5部
・メタノール 25部
・メチルエチルケトン 45部
・トルエン 25部
・メチロール化メラミン樹脂 5部
・微粒子マイクロシリカ(粒径0.1μm) 3部
・パラトルエンスルホン酸 0.05部
〔光回折構造形成層〕
・アクリル樹脂 40部
・メラミン樹脂 10部
・シクロヘキサノン 50部
・メチルエチルケトン 50部
【0041】
次に、金属薄膜層の上に、下記組成からなる感熱接着剤を乾燥後3μmとなるように形成し、本発明の転写シートを得た。
【0042】
〔感熱接着剤層〕
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 30部
・アクリル樹脂 10部
・カーボンブラック 10部
【0043】
得られた転写シートは、光回折構造形成層に形成された光回折構造が目視されぬよう隠蔽されているものであった。また、8ドット/mmの解像度のサーマルプリンター(サーマルヘッド)を用いて1.0mj/dotのエネルギーを印加して、スティッキングもなく良好な転写を行うことができた。更に、転写後の残紙部は、その構造が隠蔽されており、この点においてもセキュリティー上好ましいものであった。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明転写シートは光回折構造形成層に形成された光回折構造が目視されぬよう隠蔽されているので、どのような光回折構造が形成されているのかを知られることなく、厳格な商品管理のもとで本発明転写シートを流通させることができる。また、転写後にのみ、その転写部だけ、その光回折構造が発現するように工夫されており、更に、転写後の残紙部は、その構造が隠蔽されていることから、セキュリティー上望ましい形となっている。特に、光回折構造の両側に隠蔽層がある場合には、転写後に初めてその光回折構造が発現することになるため、セキュリティー性が非常に高く、また、その転写残紙の取り扱いも、その構造が充分隠蔽されているため第三者の目に触れにくい。
【0045】
更に、基材シートの光回折構造形成層が設けられている側と反対側の面に背面滑性層を設けておけば、サーマルヘッドの如き加熱媒体による転写を行っても、スティッキング等の問題が生じることなく光回折構造を任意の転写パターンで被転写材に良好に転写形成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明転写シートの一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 転写シート
2 背面滑性層
3 基材シート
4 光回折構造形成層
6 隠蔽層
Claims (1)
- 基材シート上に光回折構造形成層を設けてなる転写シートであって、基材シートの光回折構造形成層が設けられている側と反対側の面には背面滑性層を有し、上記光回折構造形成層に形成された光回折構造を、基材シート側と光回折構造形成層側との両側から目視されぬよう光回折構造を隠蔽する光非透過性の層が、光回折構造形成層の上側及び基材シートと背面滑性層との間の両方に設けられていることを特徴とする転写シート。
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