JP3771722B2 - ウエハ支持部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパッタリング、PVD、CVD等の成膜装置やエッチング装置に使用される半導体ウエハ等のウエハを支持するサセプタや静電チャックなどのウエハ支持部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体装置の製造工程におけるスパッタリング、PVD、プラズマCVD、減圧CVD、光CVDなどの成膜装置やプラズマエッチング、光エッチングなどのエッチング装置においては、半導体ウエハを支持するためにサセプタや静電チャックなどのウエハ支持部材が用いられている。
【0003】
例えば、図7に示すウエハ支持部材21はヒータ内蔵型サセプタで、円盤状をした板状セラミック体22からなり、その上面を半導体ウエハWの載置面23とするとともに、内部にヒータ電極用としての内部電極24を埋設してなり、上記板状セラミック体22の下面に穿孔された下穴22aにロウ付け固定してなる金属製の給電端子25を介して内部電極24へ通電するようになっていた。
【0004】
また、図8に示すウエハ支持部材31はヒータ内蔵型静電チャックで、円盤状をした板状セラミック体32からなり、その上面を半導体ウエハWの載置面33とするとともに、内部の載置面33側に静電吸着用としての内部電極36を、載置面33と反対側にヒータ電極用としての内部電極34をそれぞれ埋設してなり、上記板状セラミック体33の下面に穿孔された下穴32a,32bにロウ付け固定してなる金属製の給電端子35,37を介してそれぞれの内部電極34,36へ通電するようになっていた。
【0005】
なお、図7及び図8に示すウエハ支持部材21,31おける給電端子25,35,37には、いずれもロウ付け時の残留応力を緩和するために外径が2〜15mm程度の中実の円柱状をしたものが使用され、板状セラミック体22,32の下穴22a,32a,32bは内部電極24,34,36を貫通してそれぞれ穿孔されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、成膜装置やエッチング装置では、図7及び図8に示すウエハ支持部材21,31の内部電極24,34に通電し、100〜300℃、さらには500℃程度の高温に半導体ウエハWを加熱した状態で各種処理が行われるのであるが、ウエハ支持部材21,31には常温から各種処理温度の範囲で熱サイクルが加わることになる。
【0007】
そして、このような温度範囲での熱サイクルが繰り返し加わると、給電端子25,35,37と板状セラミック体22,32との間の熱膨張差に伴う熱応力が下穴22a,32a,32bに集中し、板状セラミック体22,32にクラックが発生してウエハ支持部材21,31が破損するといった課題があった。
【0008】
そこで、本件出願人は図9に示すように、給電端子45の接合側の端面に凹部45aを設けるとともに、この凹部45aに板状セラミック体22(32)と同程度の熱膨張係数を有するセラミック製の応力緩和材48を挿嵌することにより、給電端子45の熱膨張に伴う変形を板状セラミック体22(32)と応力緩和材48とで拘束して防ぐとともに、下穴22a(32a,32b)に集中する熱応力を緩和し、板状セラミック体22(32)の破損を防ぐことを先に提案した。
【0009】
しかしながら、近年、半導体ウエハWに成膜する膜材質の多様化により、これまで使用されていたW膜以外に、Ti膜、SiO2 膜、WSiX 膜などが使用されるようになり、これに伴いこれまで処理温度が500℃程度であったものが550℃〜900℃の処理温度で成膜することが要求されており、このような高温域になると急速な昇温や冷却の繰り返しに伴う熱サイクルによって図9に示すような構造を採用したとしても板状セラミック体22(32)と給電端子45との間の熱膨張差に伴う熱応力を十分に緩和しきれず、ロウ材qが板状セラミック体22(32)の下穴22a(32a,32b)から剥離し、その部分の抵抗値が部分的に大きくなるために、ロウ材qが剥離した部位において局部的な異常発熱を起こすといった結果があった。特に、ロウ材qの剥離が下穴22a(32a,32b)に露出する内部電極24(34,36)との間で起こると異常発熱によって内部電極24(34,36)が断線するといった課題があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、内部電極を埋設してなる板状セラミック体の上面をウエハの載置面とし、上記板状セラミック体の下面に上記内部電極を貫通する下穴を備え、該下穴に給電端子をロウ付けしてなるウエハ支持部材において、上記給電端子の接合側の端面に凹部を設け、該凹部に記板状セラミック体との熱膨張差が+2.9×10-6/℃以下でかつ上記給電端子の接合側の端面より部分的に突き出た突出部を有する応力緩和材を挿嵌せしめ、上記給電端子を記板状セラミック体の上記下穴にロウ付け固定するとともに、上記応力緩和材の上記突出部を上記下穴より露出する上記内部電極の露出部ともロウ付け固定し、さらに上記応力緩和材を絶縁性セラミックスにより形成するとともに、その内部に導体層を埋設し、該導体層の一部を上記突出部の側面より露出させるようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記板状セラミック体に穿孔された下穴の入口から応力緩和材の先端面までの距離を3mm以下とし、板状セラミック体の下穴入口部における破損を防ぐようにしたものである。
【0012】
さらに、本発明は、上記応力緩和材を絶縁性セラミックスにより形成するとともに、その内部に導体層を埋設し、該導体層の一部を突出部の側面より露出させるようにすることで、大電流が流れた際に下穴に露出する内部電極近傍が局部的に発熱することを抑え、載置面の温度がばらつくことを防ぐようにしたものである。
【0013】
また、本発明は、上記給電端子にAu−Ni系ロウ材を被覆することで、給電端子の耐酸化性を高めたものである。
【0014】
【作用】
本発明のウエハ支持部材によれば、給電端子の接合側の端面に凹部を設けることによって上記凹部を構成する薄肉部の厚み幅を極力薄くし、板状セラミック体との熱膨張差に伴う熱応力を緩和することができるため、板状セラミック体の割れを防ぐことができる。また、給電端子の凹部には板状セラミック体との熱膨張差が+2.9×10-6/℃以下である応力緩和材を挿嵌し、給電端子の薄肉部を板状セラミック体と応力緩和材とで挾持するようにしてあることから、給電端子が変形することによる導通不良を極力防ぐことができる。
【0015】
さらに、上記応力緩和材には給電端子の接合側の端面より部分的に突き出た突出部を設け、この突出部と板状セラミック体の下穴に露出する内部電極の露出部とを直接ロウ付け固定するようにしたことから、ウエハ支持部材を550℃以上の高温に加熱しても内部電極の露出部に加わる熱応力が小さく、この内部電極の露出部近傍におけるロウ材の剥離を生じることがない。その為、内部電極の露出部における局部的な異常発熱がなく、内部電極を断線させることがない。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明のウエハ支持部材をヒータ内蔵型サセプタとして用いた例を示す図であり、(a)はその斜視図、(b)はX−X線断面図である。
【0017】
このウエハ支持部材1は、円盤状をした板状セラミック体2からなり、その上面を半導体ウエハWの載置面3とするとともに、内部にヒータ電極用としての内部電極4を埋設したもので、上記板状セラミック体2の下面には上記内部電極4を貫通する2つの下穴2aを穿孔してあり、これら2つの下穴2aにロウ付け固定した給電端子5を介して上記内部電極4へ通電するようにしてある。そして、このウエハ支持部材1を作動させるには、半導体ウエハWを載置面3に載せた状態で内部電極4に通電してウエハ支持部材1を加熱することにより半導体ウエハWを所定の処理温度に加熱するようになっている。
【0018】
一方、図2は本発明のウエハ支持部材をヒータ内蔵型静電チャックとして用いた例を示す図であり、(a)はその斜視図、(b)はY−Y線断面図である。
【0019】
このウエハ支持部材11は、円盤状をした板状セラミック体12からなり、その上面を半導体ウエハWの載置面13とするとともに、内部の載置面13側に静電吸着用としての内部電極16を、載置面13と反対側にヒータ電極用としての内部電極14をそれぞれ埋設したもので、上記板状セラミック体12の下面には上記内部電極16を貫通する1つの下穴12bと、内部電極14を貫通する2つの下穴12aをそれぞれ穿孔してあり、各下穴12a,12bにロウ付け固定した給電端子15,17を介して上記内部電極14,15へそれぞれ通電するようにしてある。そして、このウエハ支持部材11を作動させるには、半導体ウエハWを載置面13に載置し、半導体ウエハWと内部電極16との間に通電して誘電分極によるクーロン力や微少な漏れ電流によるジョンソン・ラーベック力を発現させ、半導体ウエハWを載置面13に吸着固定するとともに、この状態で内部電極14に通電してウエハ支持部材11を加熱することにより半導体ウエハWを所定の処理温度に加熱するようになっている。
【0020】
このようなウエハ支持部材1,11を構成する板状セラミック体2,12の材質としては、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素のいずれか一種を主成分とするセラミックスを用いることができ、これらの中でも特に、アルミナ(Al2 3 )を主成分とし、シリカ(SiO2 )、マグネシア(MgO)、カルシア(CaO)等の焼結助剤を1重量%以下の範囲で含有するアルミナセラミックスや、アルミナ含有量が99.8重量%以上の高純度アルミナセラミックス、あるいは窒化アルミニウムを主成分とし、Y2 3 あるいはEr2 3 などの希土類元素の酸化物をl〜9重量%の範囲で含有する窒化アルミニウム質セラミックス、さらには窒化アルミニウム含有量が99.8重量%以上の高純度窒化アルミニウム質セラミックスは、成膜装置やエッチング装置等においてデポジッション用ガスやエッチング用ガス、あるいはクリーニング用ガスとして用いられるフッ素系や塩素系等のハロゲン系ガスに対して優れた耐食性を有するとともに、耐プラズマ性にも優れることから好適である。
【0021】
板状セラミック体2,12中に埋設する内部電極4,14,16の材質としては、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、レニウム(Re)、白金(Pt)等の高融点金属又はこれらの合金、あるいはタングステンカーバイト(WC)や窒化チタン(TiN)などの周期律表第4a族、第5a族、第6a族元素の炭化物又は窒化物を用いることができる。
【0022】
なお、板状セラミック体2,12の形状としては円盤状をしたものだけに限らず、四角形や六角形など多角形をしたものや楕円状をしたものなどどのような形状をしたものでも良く、また、板状セラミック体2,12中に埋設する内部電極4,14,16の形態としては、印刷等の手段による膜状をしたものや線材のいずれであっても構わない。
【0023】
ところで、図1や図2に示すウエハ支持部材1,11において、板状セラミック体2,12への給電端子5,15,17の接合は、例えば、図3に示すような円柱状をした給電端子5(15,17)の接合側の端面に、断面形状が円形をした凹部5a(15a,17a)を設け、この凹部5a(15a,17a)に前記板状セラミック体2,12との熱膨張差が+2.9×10-6/℃以下でかつ上記給電端子5(15,17)の接合側の端面より突き出た突出部8b(18b,19b)を有する応力緩和部材8(18,19)を挿嵌する。この応力緩和部材8(18,19)の突出部8b(18b,19b)は、給電端子5(15,17)の外径とほぼ同径としてあり、先端部8a(18a,19a)は突出部8b(18b,19b)より小径でかつ給電端子5(15,17)の凹部5a(15a,17a)に係合するような外形状としてある。
【0024】
そして、図4に示すように、板状セラミック体2,12の下穴2a(12a,12b)の内壁面にロウ材qを塗布しておき、応力緩和部材8(18,19)を挿嵌した給電端子5(15,17)を挿入したあと熱処理を加えてロウ付け固定するのであるが、この時、下穴2a(12a,12b)と給電端子5(15,17)とをロウ付け固定するとともに、下穴2a(12a,12b)に露出する内部電極4(14,16)の露出部4a(14a,16a)と応力緩和部材8(18,19)の突出部8b(18b,19b)ともロウ付け固定する。
【0025】
このように、給電端子5(15,17)の接合側の端面に凹部5a(15a,17a)を設けることによって上記凹部5a(15a,17a)を構成する薄肉部5b(15b,17b)の厚み幅tを薄くすることができるため、加熱や冷却の繰り返しにより熱膨張差に伴う熱応力が板状セラミック体2,12に加わったとしても、その熱応力を緩和し、板状セラミック体2,12の割れを防ぐことができる。
【0026】
また、給電端子5(15,17)に凹部5a(15a,17a)を設けただけでは、給電端子5(15,17)の薄肉部5b(15b,17b)が内側に変形することによりロウ材qが剥離し、導体不良を生じる恐れがあるが、上記給電端子5(15,17)の凹部5a(15a,17a)には、前記板状セラミック体2,12との熱膨張差が+2.9×10-6/℃以下である応力緩和部材8(18,19)を挿嵌してあることから、給電端子5(15,17)の薄肉部5b(15b,17b)が変形しようとするのを板状セラミック体2,12と応力緩和材8(18,19)とで挾持して拘束することができるため、導通不良の発生を極力抑えることができる。
【0027】
さらに、処理温度が550℃以上となると、給電端子5(15,17)の凹部5a(15a,17a)に応力緩和部材8(18,19)を挿嵌した構造としても板状セラミック体2,12と給電端子5(15,17)との間に働く熱応力を十分に緩和することができず、その結果、ロウ材qが下穴2a(12a,12b)から剥離して部分的に抵抗値が高くなり、局部的に異常発熱する。特に、厚みの薄い内部電極4(14,16)の露出部4a(14a,16a)でロウ材qの剥離が生じると、異常発熱によって内部電極4(14,16)が断線する恐れがあるが、内部電極4,14,16の露出部4a(14a,16a)は、板状セラミック体2,12と近似した熱膨張係数を有する応力緩和材8(18,19)の突出部8b(18b,19b)と直接ロウ付けし、その間に給電端子5(15,17)が介在しない構造としたことから、内部電極4(14,16)の露出部4a(14a,16a)に加わる熱応力をさらに小さくし、この露出部4a(14a,16a)でのロウ材qの剥離を防ぐことができる。その為、内部電極4(14,16)の露出部4a(14a,16a)において局部的な異常発熱を生じることがなく、内部電極4(14,16)を断線させることがないため、550℃以上の温度域でも常に安定した導通を図ることができる。なお、給電端子5(15,17)の薄肉部5b(15b,17b)の厚みtが厚すぎると熱応力を緩和する効果が小さいため、その厚みtは給電端子5(15,17)の直径Lに対して0.2倍以下とすることが良い。
【0028】
さらに、応力緩和部材8(18,19)の先端部8a(18a,19a)はできるだけ長くした方が良い。即ち、応力緩和部材8(18,19)の先端部8a(18a,19a)が、板状セラミック体2(12)の下穴2a(12a,12b)内にある状態では、下穴2a(12a,12b)の入口に作用する熱応力が大きくなるため、クラックは発生して破損する恐れがあるからであり、下穴2a(12a,12b)の入口から応力緩和材8(18,19)の先端面までの距離Lで3mm以下、好ましくは応力緩和材8(18,19)の先端部8a(18a,19a)が下穴2a(12a,12b)から突き出るように構成することが良い。
【0029】
ただし、図4に示す構造としても、応力緩和部材8(18,19)として、板状セラミック体2,12との熱膨張差が+2.9×10-6/℃より大きいものを用いると、ロウ付け直後や通電後の冷却時において、応力緩和部材8(18,19)と給電端子5(15,17)の薄肉部5b(15b,17b)とが収縮し、給電端子5(15,17)の薄肉部5b(15b,17b)が内側へ変形しようとするのを拘束する効果が小さくなるため、ロウ材qが剥離して局部的な異常発熱を生じる恐れがある。
【0030】
その為、応力緩和部材8(18,19)は板状セラミック体2(12)との熱膨張差が+2.9×10-6/℃以下である材質により形成する必要がある。なお、ここで板状セラミック体2(12)との熱膨張差が+2.9×10-6/℃以下であるとは、応力緩和部材8(18,19)の熱膨張係数が板状セラミック体2(12)の熱膨張係数に2.9×10-6/℃を加えた値より小さいことを言う。このような材質としては、板状セラミック体2(12)と同様にアルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素のいずれか一種を主成分とするセラミックスや超硬合金を用いることができ、好ましくは板状セラミック体2(12)と同じ主成分を有するセラミックス、望ましくは板状セラミック体2(12)と同組成のセラミックスを用いることが良い。
【0031】
ところで、給電端子5(15,17)を構成する材質としては、ステンレス、インコネル、ニッケル、Fe−Ni−Co合金、Fe−Ni合金を用いることができ、特に耐酸化性が要求されるような場合には、Au−Ni系ロウ材を給電端子5(15,17)に被覆することで、耐久性を高めることができる。なお、図3,4では給電端子5(15,17)として外形状が円形をしたものを示したが、これに限らず、四角形や三角形など多角形をしたもの、あるいは楕円状をしたもの、さらには半円状をしたものなどどのような外形状をしたものでも構わない。
【0032】
また、板状セラミック体2(12)と給電端子5(15,17)とを接合するロウ材qとしては、高温域中で溶融、液化しないものを用いる必要があり、Ag−Cu系やTi−Cu−Ag系のロウ材qや、600℃以上の高温域中で使用する場合には、Au−Ni−V系のロウ材qが耐酸化性に優れることから好適である。
【0033】
次に、本発明の応用例について説明する。
【0034】
図5は図1や図2に示すウエハ支持部材1,11にプラズマ発生用としての内部電極を埋設した時の給電端子の接合部を拡大した断面図で、図6は図5に用いた応力緩和材58を示す斜視図であり、基本的には図4と同様の構造をしたものであるが、応力緩和材58の内部に導体層59を埋設するとともに、該導体層59の一部を突出部58bの側面と先端部58aの側面より部分的に露出させてある。そして、上記突出部58bの側面より露出する導体層59と、板状セラミック体2(12)の下穴52aに露出するプラズマ発生用としての内部電極54とがロウ付け固定されるように構成する。
【0035】
即ち、プラズマを発生させる場合、給電端子55に30アンペア程度の大電流を流す必要があるが、図4に示す構造にこのような大電流を流すと、応力緩和材58の表面だけに電流が流れ、内部電極54を断線させるまでには至らないものの、異常発熱するために載置面3,13を均一に加熱することができなくなる。これに対して図6に示すように、応力緩和材58中に導体層59を埋設し、その一部を突出部58bの側面より露出させてロウ材qと接触させることで、応力緩和材58中の導体層59を介して電流を内部電極54に印加することができるため、この接合部での異常発熱を抑え、載置面3,13の温度分布を均一にすることができる。
【0036】
(実施例)
以下、図1に示す窒化アルミニウムセラミック製のウエハ支持部材1を例にとって具体的に説明する。
【0037】
純度99.9%の窒化アルミニウム粉末に対してバインダーと溶媒を添加混練して泥漿を作製し、ドクターブレード法にて複数枚のグリーンシートを製作した。このうち数枚のグリーンシートを積み重ねたうえに内部電極4となる導体ペーストをスクリーン印刷機にて所定のパターン形状に敷設したあと、上記パターンを覆うように残りのグリーンシートを積み重ね、熱圧着にて一体化することによりグリーンシート積層体を製作した。そして、このグリーンシート積層体に切削加工を施して円盤状に形成したあと、窒素雰囲気中にて2010〜2100℃の温度で焼成することにより、ヒータ電極としての内部電極4を埋設してなり、直径約200mm、板厚約15mmの円盤状をした板状セラミック体2を得た。また、同様の方法により焼成した窒化アルミニウムセラミックスをICP−AES(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy)によって測定したところ、窒化アルミニウムの含有量が99.8重量%である高純度窒化アルミニウムセラミックスからなることが判った。
【0038】
次に、得られた板状セラミック体2の一方の主面に研磨加工を施して半導体ウエハWの載置面3とするとともに、板状セラミック体2の他方の主面にドリルでもって内部電極4を貫通する2つの下穴2aを穿設し、この下穴2aの内壁面にロウ材qを塗布した。なお、ロウ材qにはAu(82重量%)−Ni(18重量%)−V(3重量%)系のロウを用いた。
【0039】
一方、上記板状セラミック体2の下穴2aとほぼ同径の円柱状をなし、Fe−Co−Ni合金からなる給電端子5と、板状セラミック体2と同一組成の高純度窒化アルミニウムセラミックスからなり、先端部8bと突出部8aとが一体的に形成された応力緩和材8を用意し、上記給電端子5の一方の端面に凹部5aを形成したあと、該凹部5aに応力緩和材8の先端部8bを挿嵌した給電端子5を板状セラミック体2の下穴2aに挿入し、応力緩和材8の突出部8aを下穴2aに露出する内部電極4の露出部4aと位置合わせした状態で1050℃、10-5torrの真空中で10分間熱処理を加えることにより給電端子5をロウ付け固定してウエハ支持部材1を製作した。
【0040】
そこで、このウエハ支持部材1の給電端子5間に交流電圧を印加して載置面3の最高温度が850℃となるように加熱し、この温度で10分間保持したあと、冷風機で常温まで急冷させる熱サイクル試験を繰り返し、異常発熱の有無、内部電極4の断線の有無、及び板状セラミック体2の破損の有無をそれぞれ調べる実験を行った。なお、異常発熱の判断は、異常発熱が発生すると載置面3の温度バラツキが大きくなることから、温度バラツキが±5%以上となった時を異常発熱有りとした。
【0041】
この結果、200回の熱サイクル試験においても板状セラミック体2の破損は見られず、また、内部電極4の断線もなかった。しかも、載置面3の温度バラツキが常に±2%以下と安定した温度分布が得られ、異常発熱もなかった。
【0042】
(実験例1)
ここで、実施例におけるウエハ支持部材1において、応力緩和材8の材質を変えて実施例と同様の熱サイクル試験を施し、異常発熱の有無と内部電極4の断線の有無を調べる実験を行った。なお、応力緩和材8の材質を変える以外、他の条件は実施例と同じ条件にて行った。また、本件出願人が先に提案した図9に示す構造を持ったウエハ支持部材21も試作し、これについても実験を行った。
【0043】
それぞれの結果は表1に示す通りである。
【0044】
【表1】
Figure 0003771722
【0045】
この結果、本件出願人が先に提案した図9に示す構造のものは、50回程度では内部電極4の断線は見られなかった。ただし、20個中10個において異常発熱が見られ、200回の熱サイクル試験を行うまえに全てのウエハ支持部材21において内部電極4が断線した。
【0046】
また、図4に示す構造のうち、応力緩和材としてベリリアを用いたものでは、板状セラミック体2との熱膨張差が+2.9×10-6/℃より大きいため、50回の熱サイクル試験により20個中8個において異常発熱が見られ、200回の熱サイクル試験では全てのウエハ支持部材21において異常発熱が見られた。
【0047】
これに対し、応力緩和材としてアルミナ、超硬合金、窒化珪素、スポジュメンを用いたものはいずれも板状セラミック体2との熱膨張差が+2.9×10-6/℃以下の範囲にあるため、応力緩和材として窒化アルミニウムを用いた時と同様に、200回の熱サイクル試験においても内部電極4の断線がなく、また、載置面3の温度バラツキが常に±2%以下と安定した温度分布が得られ、異常発熱も見られなかった。
【0048】
(実験例2)
次に、実施例におけるウエハ支持部材1において、板状セラミック体2の下穴2aの入口から応力緩和材8の先端面までの距離を異ならせて実施例と同様の熱サイクル試験を施し、異常発熱の有無と板状セラミック体2の破損の有無を調べる実験を行った。なお、給電端子5に形成する凹部5aの深さと応力緩和材8の先端部8aの長さを変える以外、他の条件は実施例と同じ条件にて行った。
【0049】
それぞれの結果は表2に示す通りである。
【0050】
【表2】
Figure 0003771722
【0051】
この結果、距離Lが0〜5mmの範囲においては200回の熱サイクル試験でも異常発熱は見られなかった。ただし、距離Lが4mmより大きくなると、50回の熱サイクル試験において板状セラミック体2に割れが見られ、200回の熱サイクル試験では10個中半分以上において板状セラミック体2に割れが発生した。
【0052】
これに対し、距離Lが0〜3mmの範囲では、200回の熱サイクル試験でも板状セラミック体2に割れがなく、長期使用が可能であった。
【0053】
この結果より、板状セラミック体2の下穴2aの入口から応力緩和材8の先端面までの距離Lは3mm以下とすることが良いことが判る。
【0054】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、内部電極を埋設してなる板状セラミック体の上面をウエハの載置面とし、上記板状セラミック体の下面に上記内部電極を貫通する下穴を備え、該下穴に給電端子をロウ付け固定してなるウエハ支持部材において、上記給電端子の接合側の端面に凹部を設け、該凹部に記板状セラミック体との熱膨張差が+2.9×10-6/℃以下で、かつ上記給電端子の接合側の端面より部分的に突き出た突出部を有する応力緩和材を挿嵌せしめ、上記給電端子と記板状セラミック体の上記下穴とをロウ付け固定するとともに、上記応力緩和材の上記突出部と上記下穴における上記内部電極の露出部とをロウ付け固定し、さらに上記応力緩和材を絶縁性セラミックスにより形成するとともに、その内部に導体層を埋設し、該導体層の一部を上記突出部の側面より露出させたことによって、550℃以上の高温に繰り返し加熱しても熱応力に伴う上記板状セラミック体の破損がなく、また、ロウ材の剥離に伴う異常発熱や上記内部電極の断線がないため、高温域において長期使用が可能な耐久性に優れた上記ウエハ支持部材を提供することができる。
【0055】
しかも、ウエハ支持部材を構成する板状セラミック体は、フッ素系や塩素系等のハロゲン系ガスに対して優れた耐食性を有することから、半導体装置の製造工程における成膜装置やエッチング装置においても好適に使用することができる。
また、本発明は、板状セラミック体に穿孔された下穴の入口から応力緩和材の先端面までの距離を3mm以下としたことから、下穴の入口近傍に作用する熱応力を緩和し、下穴入口部の破損を防止することができる。
【0056】
さらに、本発明は、上記応力緩和材を絶縁性セラミックスにより形成するとともに、その内部に導体層を埋設し、該導体層の一部を突出部の側面より露出させるようにしたことから、内部電極がプラズマ発生用電極であって、大電流を流したとしても板状セラミック体の下穴に露出する内部電極近傍において異常発熱することがなく、載置面の温度分布を均一化することができる。
【0057】
また、本発明では、給電端子にAu−Ni系ロウ材を被覆するようにしたことから、給電端子の耐酸化性を高め耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のウエハ支持部材をヒータ内蔵型サセプタとして用いた例を示す図で、(a)はその斜視図、(b)はX−X線断面図である。
【図2】本発明のウエハ支持部材をヒータ内蔵型静電チャックとして用いた例を示す図で、(a)はその斜視図、(b)はY−Y線断面図である。
【図3】本発明のウエハ支持部材に用いる給電端子と応力緩和材を示す斜視図である。
【図4】板状セラミック体の下穴と給電端子との接合部を拡大した断面図である。
【図5】内部電極としてプラズマ発生用電極を埋設した時の給電端子の接合部を拡大した断面図である。
【図6】図5に示す給電端子の接合部に用いる応力緩和材を示す斜視図である。
【図7】従来のウエハ支持部材をヒータ内蔵型サセプタとして用いた例を示す図で、(a)はその斜視図、(b)はA−A線断面図である。
【図8】従来のウエハ支持部材をヒータ内蔵型静電チャックとして用いた例を示す図で、(a)はその斜視図、(b)はB−B線断面図である。
【図9】本件出願人が先に提案した板状セラミック体の下穴と給電端子との接合部を示す断面図である。
【符号の説明】
1,11,21,31 ・・・ウエハ支持部材
2,12,22,32 ・・・板状セラミック体
2a,12a,12b,22a,32a,32b・・・下穴
3,13,23,33 ・・・載置面
4,14,16,24,34,36 ・・・内部電極
5,15,17,25,35,37 ・・・給電端子
5a,15a,17a,25a,35a,37a・・・凹部
5b,15b,17b,25b,35b,37b・・・薄肉部
8,18,19 ・・・応力緩和材
8a,18a,19a ・・・先端部
8b,18b,19b ・・・突出部
W ・・・半導体ウエハ

Claims (3)

  1. 内部電極を埋設してなる板状セラミック体の上面をウエハの載置面とし、上記板状セラミック体の下面に上記内部電極を貫通する下穴を備え、該下穴に給電端子をロウ付け固定してなるウエハ支持部材において、上記給電端子の接合側の端面に凹部を設け、該凹部に記板状セラミック体との熱膨張差が+2.9×10−6/℃以下でかつ上記給電端子の接合側の端面より部分的に突き出た突出部を有する応力緩和材を挿嵌せしめ、上記給電端子を記板状セラミック体の上記下穴にロウ付け固定するとともに、上記応力緩和材の上記突出部を上記下穴における上記内部電極の露出部ともロウ付け固定し、さらに上記応力緩和材を絶縁性セラミックスにより形成するとともに、その内部に導体層を埋設し、該導体層の一部を上記突出部の側面より露出させたことを特徴とするウエハ支持部材。
  2. 上記板状セラミック体に穿孔された上記下穴の入口から上記応力緩和材の先端面までの距離を3mm以下としたことを特徴とする請求項1に記載のウエハ支持部材。
  3. 上記給電端子にAu−Ni系ロウ材を被覆したことを特徴とする請求項1または請求項に記載のウエハ支持部材。
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