JP3771297B2 - チーズ被膜組成物及びチーズ上に保護被膜を製造するための方法 - Google Patents
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Description
本発明はチーズのための保護被膜として適切な被膜組成物に関する。より詳しくは、本発明は、ステアリン酸及びベヘン酸を主に含む長鎖脂肪酸のモノグリセリドの酢酸エステルを包含する被膜組成物に関する。本発明はまた、チーズ上に保護被膜を製造するための方法、及び被膜組成物の保護層により被覆されたチーズにも関する。
【0002】
発明の背景
室温への通常の冷却による溶融状態からのアセチル化されたモノグリセリドは、油性の多型形よりもむしろ、高い柔軟性及び伸縮性を有し、そして水蒸気に対する減じられた透過性をさらに示すロウ質の多型形に固化することは良く知られている(Feuge et al., Journal American Oil Chemists Society, 1952, 29, 11-14) 。
【0003】
それらの独特の性質のために、アセチル化されたモノグリセリド、特に飽和された脂肪酸のモノグリセリドは食品のための保護被膜として使用され又は保護被膜としての使用について示唆されて来た。
【0004】
アメリカ特許第2,615,159号(1952年10月21日に公開された)は、非対称トリグリセリドのロウ質の半透明α−及びサブα−形を記載しており、ここで酸酸基の1つは12〜22個の炭素原子を有する脂肪酸の基であり、そして2つの隣接する酸残基は2〜4個の炭素原子を有する脂肪酸、すなわち酢酸、プロピオン酸又は酪酸の基である。
【0005】
さらに、30℃〜37℃の融点を有し、そして1−パルミチル−2,3−ジアセチン又は1−ステアリル−2,3−ジアセチンを主に含む固体トリグリセリドは、食品成分として示唆されている。
【0006】
アメリカ特許第2,615,160号(1952年10月21日に公開された)は、非アセチル残基が12〜22個の炭素原子を有する脂肪酸の基である、高い安定性のロウ質の半透明形で存在する、対称又は非対称ジアセチルトリグリセリドの混合物を開示する。
【0007】
その混合物は、アセチル基を含まない、モノグリセリド、ジグリセリド、グリセロール、脂肪酸及びトリグリセリドを実質的に有さない。
【0008】
ジアセチルトリグリセリドの調製方法はまた、記載されており、たとえばナタネ油に由来する水素化されたジアセチルトリグリセリドにより例示される。31℃〜38℃の融点を有するロウ質の半透明形は、融解された材料を冷却することにより得られる。
【0009】
いづれの特定の教授も開示しないが、アメリカ特許第2,615,160号は、室温よりも高いが、しかし体温よりも低い融点を有するそれらのジアセチルトリグリセリドが食品、たとえば果物、チーズ、保存物及び冷凍肉のための被膜として適切であることを示唆する。
【0010】
アメリカ特許第2,745,749号(1956年5月15日に公開された)は、アセチル化されたモノグリセリド、たとえばグリセロールモノステアレート、グリセロールモノパルミテート又はそれらの混合物から実質的に成る混合物のアセチル化により得られるアセチル化されたモノグリセリドに関する。この文献はまた、それらのアセチル化されたモノグリセリドが多くの可能性ある食品用途、たとえば肉製品、キャンディ、アイスクリームバー及びチーズのための被膜を有することを言及する。
M.E.Zabik and L.E.Dawson, Food Technology, 1963, 17, 87-91は、生鮮及び冷凍貯蔵の間、調理された家禽に対するアセチル化されたモノグリセリド被膜の効果を記載する。
【0011】
G.F.Luce, Food Technology, 1967, 21, 48-54は、被覆食品、たとえば切り肉、家禽、ソーセージ、海産食品、小さな果物及び堅果へのアセチル化されたモノグリセリドの種々の適用法を教授する。チーズの被膜は言及されていない。
しかしながら、それらの初期の開示及び提案にもかかわらず、アセトグリセリド自体は、チーズのための被膜材料として実際に重要なものになっていない。
【0012】
多分、これは、市販のアセトグリセリドのみ、すなわち主にC16−C18又は低級脂肪酸を含み、そして約45℃までの温度で溶融する飽和、一部飽和又は不飽和トリグリセリドに由来するアセトグリセリドが注目される事実によるものである。そのようなアセトグリセリドは、固化するのに長い時間を要し、そしてチーズ及び他の食品のための被膜材料として、特に食品の消費の前、消費者により剥ぎ取られる被膜としてそれらを不適切にするかなり軟質で且つべとついた性質である。
【0013】
従来技術は、それらの欠点を克服するための手段を示唆している。今までのすべての示唆は、他の被膜材料、たとえばワックス、無機パラフィン及び/又は合成ポリマーと共にアセトグリセリドの使用を言及する。
【0014】
アメリカ特許第3,000,748号(1961年9月19日に発行された)は、酸残基の1つが10〜30個の炭素原子の長鎖の不飽和脂肪酸の基であるアセトグリセリド及びセルロースエステル誘導体の混合物を含んで成る食品のための被膜組成物を記載し、そしてアメリカ特許第3,388,085号(1968年6月11日に発行された)は、十分にアセチル化された液体モノグリセリドに溶解されたエチレンビニルアセテートコポリマーから成る被膜組成物を記載する。
【0015】
次のいくつかの特許が、食品、特に肉製品を被覆するための類似する組成物を開示する:FR−A−1,453,977号、DE−A−2,030,429号(1971年12月13日に公開された)、DE−A−2,222,280号(1973年11月15日に公開された)、DE−A−2,324,936号(1974年12月5日に公開された)、DE−A−2,411,058号(1975年9月11日に公開された)及びEP−A−037,086号(1981年10月7日に公開された)。
【0016】
EP−A−141,299号(1985年5月15日に公開された)は、チーズの被覆のための方法を開示し、ここで第1段階で被覆されるチーズは水素化された脂肪酸のモノグリセリドの酢酸エステルの層により被覆され、その後、第2段階におけるそのような被覆されたチーズ片が低溶融微結晶性ワックス及びプラスチックパラフィンの混合物から成るワックス層により被覆される。好ましいアセトグリセリドは、0.5〜0.7の範囲でアセチル化の程度を有し、そして飽和脂肪酸、特にステアリン酸及びパルミチン酸の群を含むものである。そのような生成物は市販されており、そして35〜40℃の範囲で滴点を有することにより特徴づけられる。
【0017】
この方法の欠点は、最初に適用され、そして低い溶融性のアセトグリセリド層の第2の被覆段階の間に溶融する傾向であり、“つらら”を有する不均等な被膜をもたらし、そしてパラフィン及びアセトグリセリドの混合物は技術的観点からこの方法を適用するのに非実用的にする。
【0018】
さらに、データは、無機炭化水素の明確な又は可能性ある毒性を示した。従って、直接的な消費を通しての摂取により又はそれらの無機炭化水素が移動した食用チーズに起因するチーズ被膜組成物に無機炭化水素を用いることによって健康上の危険性が存在するように思える。
【0019】
EP−A−403,030号(190年12月19日に公開された)は、チーズを被覆するための方法に関し、ここで1又は2種の酸残基が1〜6個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸の基であり、そして他の酸残基が14〜22個の炭素原子を有する飽和脂肪酸の基であるトリグリセリド、及び鉱物起原のものではなく、そして60℃〜110℃の範囲でトリグリセリドの融点よりも高い融点(滴点)を有するロウ又はロウ状成分の混合物を含んで成る被膜組成物が使用される。0.5〜0.7のアセチル化の程度及び35〜40℃の融点(滴点)を有するアセチル化されたモノ/ジグリセリドを含む被膜調製物が特に開示されている。
【0020】
しかしながら、成分の部分的混和性及び/又は多形性挙動のために、そのような二元混合物は複雑な溶融及び固化性質を有し、これが広い温度範囲にわたって生じる溶融/固化をもたらす。これは、被膜が十分な強さを得るために十分な時間の冷却を要することを意味する。滴点はそのような挙動を開示しない。示差走査熱量計(DSC)によれば、そのような混合物の溶融/固体を解明することが可能である。たとえば、0.7のアセチル化の程度を有するアセチル化されたモノグリセリド70%及びステアリン酸30%を固化に基づいて含んで成る液体混合物が43℃及び33℃で2つの明白な結晶化(発熱)ピークを示すことが明らかである。類似する挙動が、55℃及び32℃での結晶化ピークにより、0.6のアセチル化の程度を有するアセチル化されたモノグリセリド60%及びグリセリルモノステアレート40%を含んで成る混合物の固化の間に観察され、そして0.6のアセチル化の程度を有するアセチル化されたモノグリセリド55%、硬化された植物脂肪40%及びカルナバロウ5%を含んで成る混合物は60℃,36℃及び30℃で3種の結晶化ピークをもたらした。従って、上記ヨーロッパ特許出願における開示される被膜組成物はチーズ被膜としてすべて適切ではない。
【0021】
要約すれば、チーズのための被膜組成物を得る努力に関して上記の従来技術に示される溶液は効果的でないことが言及される。
従来技術の上記の言及の観点から、比較的高い融点を有し、そして一時的な及び明確な固化を有し、そして無機パラフィン、ロウ又は合成ポリマーの存在に基づかれないチーズ被膜組成物を供給することが最とも所望される。
【0022】
本発明の目的は、チーズに適用される場合、被膜組成物が外部汚染、湿気の損失及び物理的な損傷に対して効果的な保護を付与するような機械的な性質をさらに有し、そして消費者により容易に除去されるような被膜組成物を供給することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、本発明の被膜組成物を用いてチーズ上の保護被膜を生成する方法及び前記組成物により被覆されたチーズを供給することである。
【0024】
発明の要約
1つの観点について、本発明は、合計脂肪酸の80重量%以上をステアリン酸及びベヘン酸が構成する、混合され、実質的に十分に水素化された長鎖の脂肪酸のモノグリセリドの酢酸エステルを包含するチーズのための保護被膜として適切な被膜組成物を提供し、ここで前記酢酸エステルの割合が前記組成物の少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%であり、ここで前記組成物の40〜57重量%が二酢酸エステルであり、そして40〜50重量%が一酢酸エステルであり、そして前記組成物に存在する前記長鎖脂肪酸成分における炭素原子の平均数が19.2〜21.5の範囲で存在し、前記組成物が差動走査熱量法により測定される場合、少なくとも48℃の融点を有することを特徴とする。
【0025】
さらなる観点において、本発明は、下記段階:
(i)チーズ上に層を供給するために溶融された条件下で被膜組成物を55〜100℃の範囲での温度でチーズに適用し、
(ii)室温又はそれ以下の温度で冷却することによって前記層の固化を可能にし、そして
(iii) 場合によっては、被膜組成物の追加層をそのようにして被覆されたチーズに上記段階(i)及び(ii)をくり返すことによって適用することを含んで成るチーズ上に保護被膜を製造するための方法に関し、ここで前記段階は本明細書に記載されるような被膜組成物の使用を包含する。
【0026】
さらにもう1つの観点においては、本発明は本明細書に定義されるような被膜組成物を含んで成る保護層により被覆されたチーズに関する。
【0027】
本発明の好都合な効果
本発明の被膜組成物は、従来の被膜組成物よりも多くの有意な利点を有する。補充物質の必要性を伴わないで、本発明の被膜組成物は適切に高い融点を有し、被覆されるチーズを過剰の温度に暴露しないで、ひじょうに短い固化時間を確保する。さらに、本発明の被膜組成物は、溶融状態で、本発明の組成物の融点よりも数度高い広い範囲の好ましい粘度を示し、そしてチーズへの効果的な被膜の適用を可能にする。
本発明の被膜組成物の使用は、チーズ上に柔軟で靱性の容易に剥離できる被膜を提供する。
【0028】
発明の特定の記載
上記のように、本発明は、1つの観点においては、合計脂肪酸含有量の少なくとも80%を構成する、ステアリン酸及びベヘン酸を含んで成る混合され、実質的に十分に水素化された長鎖脂肪酸の蒸留されたモノグリセリドに基づいてモノ−及びジアセチル化されたモノグリセリドを含んで成る固体被膜組成物に関する。
【0029】
上記主要脂肪酸の他に、全体の脂肪酸含有物は少量の脂肪酸、たとえばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキン酸、及びリグノセリン酸を包含し、そしてそのうちパルミチン酸、アラキン酸及びリグノセリン酸は合計脂肪酸の多くとも18%を構成する。さらに、奇数の炭素原子を有する、無視できる量の長鎖脂肪酸が存在する。
【0030】
また、無視できる量の不飽和脂肪酸が存在できる。ヨウ素価は脂肪酸の不飽和の程度の測定である。本発明の被膜組成物は好ましくは、多くても2、より好ましくは多くとも1のヨウ素価を有する。
本発明によれば、被膜組成物に存在する長鎖脂肪酸成分における炭素原子の平均数は、19.2〜21.5の範囲で存在する。
【0031】
本発明においては、用語“長鎖脂肪酸成分における炭素原子の平均数”は、エステル化された及び遊離成分として存在する長鎖脂肪酸成分における炭素原子の合計数をそれらの成分の合計数により割り算することに起因する平均として定義される。
【0032】
“長鎖脂肪酸”とは、10個よりも多くの炭素原子を有する、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸又はそれらの混合物を意味する。
前で言及したように、本発明の被膜組成物において二酢酸及び一酢酸エステルとして存在する酢酸エステルの割合は、組成物の少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%である。
【0033】
そのような組成物は、少なくとも0.7(70%)の程度にアセチル化されているアセトグリセリドを用いることによって得られる。少なくとも0.7のアセチル化の程度は、被膜組成物におけるアセチル化されていないモノグリセリドの含有率がひじょうに低く、好ましくは組成物の5重量%以下であり、そして同じ時点でのモノグリセリドの酢酸エステルの含有率は組成物の少なくとも90重量%であることを確保する。本発明の被膜組成物においては、所望しないが、しかし回避できない成分、たとえばグリセロール、遊離脂肪酸及びグリセリドの含有率はひじょうに低い。従って、グリセロール、遊離脂肪酸、モノグリセリド及びジグリセリドの合計量は被膜組成物の多くとも10重量%、好ましくは多くとも5重量%である。
【0034】
本発明によれば、被膜組成物の40〜57重量%が二酢酸エステルであり、そして40〜50重量%が一酢酸エステルである。
本発明の被膜材料として適切であるアセトグリセリド組成物は当業界において良く知られている従来の方法により調製され得る。好都合には、それらは、90%以上のモノエステルの含有率を有する、脂肪酸の蒸留モノグリセリドと無水酢酸とを100℃〜150℃の温度で反応せしめ、同時に形成される酢酸を除去することによって生成され得る。実際、モノグリセリドに存在する長鎖脂肪酸成分における上記で定義されたような炭素原子の平均数と、本発明の被膜組成物における長鎖脂肪酸成分における炭素原子の平均数との間に実質的な調和が存在するであろう。
【0035】
融点は、液層又はフィルムとしてチーズに適用され、そして冷却することにより固化されるチーズ被膜組成物のためには重要な性質である。用語“融点”は、溶融が示差走査熱計量実験において加熱試験の間に観察されるピーク温度そして本明細書においては使用される。
上記定義によれば、本発明の被膜組成物は少なくとも48℃の融点を有する。
【0036】
少なくとも48℃の融点は、冷却が室温で生じる場合でさえ短時間の固化時間を達成し、そして同時に、軟化し、そしてべとつく被膜層を伴わないで、消費者のその被覆されたチーズの取扱い及びその被膜の除去を可能にする被膜をチーズ上に供給するために不可欠であることが見出された。
【0037】
他方、高過ぎる融点を有する被膜組成物は、チーズに適用される場合、チーズに損傷を引き起こす温度にチーズを暴露するので適切ではない。
驚くべきことには、本発明の組成物はチーズ、特に固体〜半固体のコンシステンシーの小さな及び中間サイズのチーズ上に被覆するためにひじょうに適切であることが見出された。本発明の被膜組成物は、室温で及び冷たい場所において、もろくならないで柔軟且つ強く、そしてチーズへの付着を伴わないでチーズから容易に除去され得る保護被膜を提供する。
【0038】
材料の強度及び延性に対する情報を提供する、自動材料試験機械(Model 4301;Instron Corporation, USA) により行なわれる本発明の組成物の引張試験は、本発明の被膜組成物が従来のチーズロウの性質に比較できる機械的性質を有することを示した。
【0039】
従って、本発明の組成物は次の機械的特性を示すことが見出された:
ピークでの歪度、%:9−22
曲げヤング率、 mPa:13.1−44.1
ピークでの応力(引張強さ)、 mPa:0.17−1.02。
【0040】
比較目的のために、表1は、無機パラフィン、及び0.5〜0.7のアセチル化度及び約30℃〜約45℃の融点を有する十分に水素化された食用ラード又は牛脂から製造された市販のアセトグリセリド(CETODAN)を含んで成る従来のチーズロウ(WITCO)の機械的性質を示す。表1はさらに、表2に示される化学分析を伴って2種のアセトグリセリド組成物の機械的性質も示す。それらの組成物は本発明により包含されるものではない。
【0041】
被膜材料として、特に被膜材料の剥離性質に関して、本発明の被膜組成物の適合性を評価する場合、曲げヤング率により表わされる弾性は、“ピークでの%歪度”及び“ピークでの応力”により表わされる可塑性よりも、より決定的であることが見出された。
従って、曲げヤング率の値が高いほど、組成物はよりもろくなることが見出された。
【0042】
約50mPa 又はそれ以上の曲げヤング率を有する被膜組成物は一般的にもろ過ぎ、そしてチーズに適用される場合、こわれない断片としてそのような組成物の被膜を剥離することが不可能であった。低い値の曲げヤング率を有する組成物は、それらの組成物により被覆された剥離チーズ上でやわらか過ぎ且つ延伸性過ぎることが見出された。
【0043】
【表1】
【0044】
組成物A及びBは表1に示されるようにもろ過ぎた。さらに、割れがそれらの組成物により被覆されたチーズを取扱う場合、その被膜に進行した。
【0045】
【表2】
【0046】
示差走査熱量法(DSC)により本発明の被膜組成物を試験する場合、その組成物は同じ一般的な挙動性を示した。本発明の被膜組成物を加熱する場合、約100J/gに相当する1つの鋭い融点のピークが48℃以上の温度で観察された。さらに、10〜28℃に位置する、2〜19J/gに相当する1つの、時々2つの吸熱性ピークが観察された。溶融された状態から冷却することにより、類似するが、しかし発熱性であるピークが観察された。
【0047】
論理的には未知であるが、10〜28℃の温度でのピークは本発明の被膜組成物を構成するアセトグリセリドのαとサブ−α型との間で可逆的なトランスフォーメーションを示すことが仮定される。
【0048】
この可逆的なトランスフォーメーションが生じる温度と曲げヤング率との間に何かの相互関係が見出された。典型的には、トランスフォーメーション温度が低いほど、曲げヤング率が低く、そして本発明の組成物は、ほとんどもろくなく且つより剥離性である被膜組成物として存在する。4人の官能分析パネルは、22℃以上の転移温度を有する被膜組成物の被膜よりも22℃以下の転移温度を有する組成物の被膜が良好な性能を示すことを評価した。
【0049】
従って、本発明の好ましい被膜組成物は、22℃以上の1つの吸熱性DSC−ピークを有し、そしてステアリン酸が組成物に存在する合計の長鎖脂肪酸の24〜53重量%を占め、そしてベヘン酸が38〜67重量%を占める組成物である。
【0050】
上記アセチル化工程に使用される蒸留されたモノグリセリドは、当業界において良く知られている種々の方法、たとえば塩基性又は酸性エステル化触媒を用いての混合された脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルによるグリセロールのエステル化又はエステル交換、又は完全に水素化された天然に存在するトリグリセリド(脂肪及び油)のグリセロール化により得られる。実際、長鎖の脂肪酸成分における炭素原子の平均数はそれらの反応の間、未変化のまま、実質的に存続するであろう。
【0051】
本発明で定義されたような長鎖の脂肪酸成分における脂肪酸含有率及び炭素原子の平均数を有する、混合された脂肪酸自体又は完全に水素化されたトリグリセリドは、本発明の被膜組成物に存在する脂肪酸成分の源として作用できる。
【0052】
従って、本発明の好ましい態様においては、本発明の被膜組成物を構成するアセトグリセリドは、合計脂肪酸の次の主要脂肪酸組成(重量%)を有する、ブラシカ(Brassica) 属、たとえばB.カンペストリス(B.campestris) 又はB.ナパス(B.napas) の種類及び培養物に起因する実質的に十分に水素化された天然の高エルカ酸油から製造されたモノグリセリドに由来する:
(a)多くとも8%のパルミチン酸、
(b)少なくとも30%のステアリン酸、
(c)多くとも10%のアラキン酸、
(d)少なくとも40%のベヘン酸及び
(e)多くとも4%のリグノセリン酸。
【0053】
植物油の中で、高エルカ酸油(ナタネ油)は、その油が不飽和及び飽和C18脂肪酸と共にエルカ酸及びエイコセン酸を含むことにより特徴づけられる。従って、十分に水素化された高エルカ酸油における主な脂肪酸は、ステアリン酸、アラキン酸、及びベヘン酸である。しかしながら脂肪酸組成は、高エルカ酸油の起原、たとえば種、種類、場所に依存して相当に変化する。通常入手できる硬化された高エルカ酸油における脂肪酸分布の範囲は次の通りである:パルミチン酸0.5〜8%、ステアリン酸30〜70%、アラキン酸1〜15%及びベヘン酸30〜60%。
【0054】
被覆されたチーズの外観を高めるために、着色添加剤、たとえば染料及び顔料が本発明の被膜組成物に添加され得る。
第2の観点においては、本発明は、本発明の被膜組成物を用いてチーズ上の保護被膜を生成するための方法に関する。
【0055】
本発明の被膜組成物は、チーズを液体被膜組成物の浴中に、55〜100℃、好ましくは60〜80℃の温度で、被覆されるチーズの完全な被覆を提供するのに十分な時間、含浸することによってチーズに適用され得る。
液体層は、それを室温に又はそれ以下の温度に冷却することによって固化され、そして硬化され、チーズのまわりに固体の連続層が供給される。
【0056】
本発明の方法によれば、被膜の厚さは広く変化され得る。被膜層の厚さは主に、液体被膜組成物の粘度により調節される。ほとんどの他の液体にように、本発明の液体被膜組成物の粘度は温度の上昇と共に低下するであろう。従って、低温でチーズを含浸する場合、被膜は、高温でそれを含浸する場合よりも厚くなる。
【0057】
また、被覆されるチーズの含浸時間及び温度は、被膜の厚さに対していくらかの影響を有する。好ましくは、含浸時間は約2〜約3秒である。チーズの温度はまた、約5℃〜約10℃であることが好ましい。
最とも満足する結果は、本発明の組成物の追加の層が第1被膜上に置かれる場合に得られる。
【0058】
これは、液体被膜組成物の浴にチーズの同じ片をくり返して含浸し、続いてその適用された層を冷却し、そして硬化することによって達成される。この場合、いづれの厚さの被膜でも得ることが可能である。
本発明の被膜組成物の前に適用された層の溶融を減じるためには、続く含浸がいづれかの前での浴の温度よりも低い温度の液体被膜組成物の浴において実施されることが好都合である。
【0059】
固体〜半固体のコンシステンシーの小さなサイズ〜中間サイズのチーズに対する本発明の被膜組成物を用いることによる本発明の方法の完結は、“ピンホール”及び“つらら”を有さず、そしてチーズへの付着を伴わないでこわれない断片でチーズから容易に除去される連続した被膜を提供する。
他方、本発明の被膜組成物は、被覆されるチーズ上にその液体組成物をスプレーし又ははけでぬることによって適用され得る。
本発明は、次の例によりさらに例示される。
【0060】
【実施例】
例1−14
例/組成物1−14は、本発明の態様を表わす。組成物の個々は、ステアリン酸及びベヘン酸を主に含んで成る、十分に水素化された長鎖脂肪酸の蒸留されたモノグリセリドのアセチル化により既知の手段で調製された。その蒸留されたモノグリセリドは高い純度のもの、典型的には95%以上の純度のものである。
【0061】
例13は、脂肪酸の合計量の重量%での次の脂肪酸組成を有する十分に水素化された高エルカ酸ナタネ油のグリセロール分解により調製される蒸留されたモノグリセリドに由来した:C12:0.2,C14:0.2,C16:8.0,C17:0.1,C18:39.7,C18:1:0.5,C18:2:0.1,C20:8.7,C21:0.1,C22:41.3,C23:0.1、及びC24:1.0。炭素の平均数(“平均炭素数”):19.7。
【0062】
例1−14は、当業界において知られている標準の方法により分析された。その結果は表3及び4に示される。
融点は、下記のようにして示差走査熱量法(DSC)により測定された。
【0063】
例1−14の脂肪酸組成物を、いづれかの標準方法、たとえばナトリウムメトキシドを用いてのエステル交換により調製された脂肪酸メチルエステルのガスクロマトグラフィー処理により測定した。表3及び4における脂肪酸組成物は、脂肪酸の合計量の重量%脂肪酸を示す。平均炭素数を、表3及び4における脂肪酸組成物に基づいて計算する。
アセチル化されたモノグリセリドを、それらのTMS誘導体のガスクロマトグラフィー処理により測定した。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
引張試験
例1−14の被膜組成物の引張試験を、自動材料試験機械(Model 4301;Instron Corporation, USA)によりDIN53455に従って行なった。その試験は、室温で実施された。結果(曲げヤング率)は表5に示される。
【0067】
示差走査熱量法
例1−14の被膜組成物の熱挙動性、すなわち溶融及び結晶化を、 Perkin-Elmer DSC−4示差走査熱量計により研究した。サンプル(3〜6mg)を、密封されているアルミニウムサンプルパン中に負荷した。サンプルを10℃/分の速度で80℃に加熱し、そして次に、10℃/分の速度で0℃に冷却し、固化をもたらし、そして10℃/分の速度で80℃に再加熱し、サンプルの熱歴史が同じであることを確認した。取られた転移温度はピーク温度であった。溶融温度及び可逆性α−サブα転移についての温度は表5に示される。
【0068】
【表5】
【0069】
粘度
例1−14の被膜組成物の粘度を、60℃〜100℃の温度で Bohlin Rheometer VORにより測定した。60℃,80℃及び100℃での粘度は表6に示される。
【0070】
【表6】
【0071】
例15:
約25%の脂肪含有率を有する半固体状チーズの片を、例12の被膜組成物によりそれぞれ1回及び2回、被覆した。22gの平均重量及び約46cm2 の表面積を有する、被覆されるチーズ片を冷蔵庫から直接取り、そしてそのチーズ片のまわりに紙リボンを付与し、そして73〜75℃の温度で浴を維持しながら、約2秒間、その浴の表面下にチーズを保持することによってその溶融された被膜組成物の浴中に含浸した。チーズをその浴から取り出し、そして室温で冷却し、被膜を固化した。被膜は約3秒で固化した。4回の試験の結果が表7に示される。
【0072】
【表7】
【0073】
固体被膜組成物について約0.95g/cm2 の比重と仮定して、その被膜組成物は約0.35mmの厚さを有する層で適用された。
被膜組成物により2回被覆する場合、第1回と第2回との含浸の間での室温での冷却期間は約9秒であった。4回の試験の結果が表8に示される。
【0074】
【表8】
被膜層の厚さは、約0.52mmであることが見出された。
【0075】
例16:
例15に記載されるように、チーズ片の被覆は、それぞれ63℃及び92℃で1度、及びそれぞれ63℃及び92℃で2度含浸することによって行なわれた。結果は表9に示される。
【0076】
【表9】
【0077】
計算によれば、適用された被膜の厚さは次の通りであった:
0.4−0.5mm、63℃で1度の含浸、
0.7−0.9mm、63℃で2度の含浸、
0.2−0.3mm、92℃で1度の含浸、及び
0.2−0.4mm、92℃で2度の含浸。
Claims (8)
- 合計脂肪酸の80重量%以上をステアリン酸及びベヘン酸が構成する、混合され、水素化された長鎖の脂肪酸のモノグリセリドの酢酸エステルを包含するチーズのための保護被膜用の被膜組成物であって、前記酢酸エステルの割合が前記組成物の少なくとも90重量%であり、ここで前記組成物の40〜57重量%が二酢酸エステルであり、そして40〜50重量%が一酢酸エステルであり、そして前記組成物に存在する前記長鎖脂肪酸成分における炭素原子の平均数が19.2〜21.5の範囲で存在し、前記組成物が示差走査熱量法により測定される場合、少なくとも48℃の融点を有することを特徴とする組成物。
- 前記酢酸エステルの割合が前記組成物の少なくとも95重量%である、請求項1記載の組成物。
- 示差走査熱量計(DSC)での22℃以上の単一の吸熱ピークにより特徴づけられ、そしてステアリン酸が前記組成物に存在する合計の長鎖脂肪酸の24〜53重量%を構成し、そしてベヘン酸が前記脂肪酸の38〜67重量%を構成することによりさらに特徴づけられる請求項1又は2記載の組成物。
- 合計脂肪酸の重量%に基づいて次の主要脂肪酸組成:
(a)多くとも8重量%のパルミチン酸、
(b)少なくとも30重量%のステアリン酸、
(c)多くとも10重量%のアラキン酸、
(d)少なくとも40重量%のベヘン酸、及び
(e)多くとも4重量%のリグノセリン酸
を有する、水素化された高エルカ酸性ナタネ油から製造されるモノグリセリドに由来するモノグリセリドの酢酸エステルを包含することによって特徴づけられる請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。 - 染料及び色素を含むことによって特徴づけられる請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
- チーズ上に保護被膜を製造するための方法であって:
(i)チーズ上に層を供給するために溶融された条件下で被膜組成物を55〜100℃の範囲での温度でチーズに適用し、
(ii)室温又はそれ以下の温度で冷却することによって前記層の固化を可能にし、そして
(iii) 場合によっては、被膜組成物の追加層をそのようにして被覆されたチーズに上記段階(i)及び(ii)をくり返すことによって適用する段階から成り、ここで前記段階が請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物を有する被膜組成物の使用を包含する方法。 - 請求項6記載の方法により得られる被覆されたチーズ。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物を有する被膜組成物を包含する保護層により被覆されたチーズ。
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