JP3770782B2 - イオン発生装置を備えた空気清浄機及び空気調和機 - Google Patents

イオン発生装置を備えた空気清浄機及び空気調和機 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン発生装置を備えた空気清浄機並びに空気調和機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、住環境の高気密化に伴い、人体に有害な空気中の浮遊細菌を取り除き、健康で快適な生活を送りたいという要望が強くなっている。この要望に応えるため、各種のフィルタを備えた空気清浄機が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような空気清浄機では、部屋の空気を吸引して汚染物質を部内を分解又は除去する方式であるため、長期に渡る使用によりフィルタの交換等のメンテナンスが不可欠であり、しかも、フィルタの特性が充分でないため、満足のいく性能が得られていない。
【0004】
それに対し、イオン発生装置を用いて、空気中のイオン濃度を増加させる空気清浄機や空気調和機も開発されているが、現在、市販されているものは、負イオンのみを発生させるものであったため、負イオンにより人間をリラックスさせる効果はある程度期待できるものの、空気中の浮遊細菌の積極的な除去についてはほとんど効果が認められていない。
【0005】
また、このような従来のイオン発生装置は、交流電圧方式やパルス高電圧方式を用いて負イオンを放電針から発生させているので、電圧として5kV以上の高電圧を必要とし、このため、製品や周辺の機器等にホコリが付着する問題が生じている。更に、高電圧を使用するために機器の安全性に課題があり、安全回路を設置する等の対策が必要であった。
【0006】
このような問題に鑑み、本発明者らが鋭意研究を進めた結果、負イオンと正イオンの双方を同時に発生させるイオン発生装置をこの程開発し、これを空気清浄機等に搭載して負イオン及び正イオンを空間に送出することで、空気中の浮遊細菌を効率よく除去できることを確認した。
【0007】
このイオン発生装置の原理について説明すると、絶縁体を挟んで対向する電極間に交流電圧を印加することにより、大気中で放電等の電離現象が起こり、正イオンと負イオンが同時に発生する。
【0008】
このとき、発生する正イオンとしては、H+(H2O)n、負イオンとしてはO2 -(H2O)nが最も安定に生成する。これらのイオンは、正イオン又は負イオン単独では、空気中の浮遊細菌に対する格別な滅菌効果はない。しかし、これらのイオンが同時に発生すると、化学反応によって活性種である過酸化水素H22又は水酸化ラジカル・OHが生成する。このH22又は・OHは極めて強力な活性を示すため、これらを空気中に送出することで、空気中の浮遊細菌を除去できる。
【0009】
また、これらの活性種は、金属をも腐食するほどの極めて強い酸化力を有しているので、電極材料の選択は重要な問題であり、劣化の著しい材料では製品寿命が短くなるのは避けられなかった。
【0010】
そこで、本発明は、充分な正イオン及び負イオンを発生でき、生成した活性種による電極の劣化の心配がないイオン発生装置を備えた空気清浄機及び空気調和機を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、絶縁体を挟んで対向する第1電極と第2電極との間に交流電圧を印加することにより、正イオンと負イオンを同時に発生させるイオン発生装置を備えた空気清浄機又は空気調和機において、前記正イオンとしてH + (H 2 O) n と負イオンとしてO 2 - (H 2 O) n とを発生するイオン発生装置の第1電極及び前記第2電極に導電性の耐酸化性材料を用いることを特徴とする。これによると、腐食による電極の劣化の心配がなくなる。
【0012】
そのような耐酸化性材料としては、安価で入手が容易なステンレスメッシュが好適である。また、前記ステンレスメッシュの目開き数を、30〜60meshの範囲内とすることで、不快臭と毒性のあるオゾンの発生を抑えながら、滅菌効果のある正イオンと負イオンを充分多く発生させることができる。
【0013】
そして、オゾン分解触媒を担持した活性炭フィルタを空気の送風回路の吸込口の下流側に設けると、イオン発生装置から発生したオゾンの分解除去が可能な空気清浄機又は空気調和機が得られる。
【0014】
【発明の実施の形態】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る空気清浄機の概略的な側面断面図である。図1において、11は後述する本発明に係るイオン発生装置、12は空気吹出口、13は空気12の下流側に配設されたプレフィルタ、14は二酸化マンガン等のオゾン分解触媒を担持した活性炭フィルタ、15はHEPAフィルタ、16は送風ファン、17は空気吸込口である。
【0015】
次に、イオン発生装置11のイオン発生管の概略的な構成を図2の断面図に示す。一端部が閉管された円筒状絶縁体であるパイレック製ガラス管21(厚さ1mm)を挟んで内側と外側にそれぞれ、金属のメッシュからなる筒状の内電極22と外電極23が対向して配設されている。
【0016】
ところで、前記イオン発生装置11の内電極22と外電極23にステンレスメッシュを使用した場合、メッシュの目開き数(mesh)によって、発生する負イオンと正イオンの濃度(個/cc)が変化することが観測された。図3は、内電極22に48meshのステンレスメッシュを用い、他方のグランド(GND)の外電極23には、目開き数の異なるステンレスメッシュ(9mesh〜100mesh)用い、両電極22,23間に交流電圧を印加したときの、外電極23のステンレスメッシュの目開き数と、発生したイオンの濃度との関係を示している。
【0017】
条件は次の通りである。外電極23をGND電位として、内電極22に高周波回路を用いて周波数15kHz、電圧1.1〜1.4kV(実効値)の交流電圧を印加した。図3より明らかなように、外電極23の目開き数が増加すると、発生するイオン濃度も上昇する傾向があるが、目開き数が30mesh以上では、イオン濃度の増加は概ね横這いと見てよい。
【0018】
一方、本発明に係るイオン発生装置11に交流電圧を印加すると、イオンとともにオゾンも少なからず発生するが、オゾンは不快な臭気を伴うだけでなく、人体に有害な物質であるため、オゾンの発生量を極力少なくすることが望ましい。図4は、内電極22に48meshのステンレスメッシュを用い、他方のグランド(GND)の外電極23には、目開き数の異なるステンレスメッシュ(9mesh〜100mesh)用い、両電極22,23間に交流電圧を印加したときの、外電極23のステンレスメッシュの目開き数と、発生したオゾンの濃度(ppm)との関係を示している。
【0019】
条件は次の通りである。外電極23をGND電位として、内電極22に高周波回路を用いて周波数15kHz、電圧1.1〜1.4kV(実効値)の交流電圧を印加した。図4より明らかなように、外電極23の目開き数が増加すると、発生するオゾン濃度も上昇する傾向があるが、約30〜60meshの範囲では概ね横這いと見てよい。
【0020】
従って、図3及び図4より、オゾンの発生を抑制して最大限のイオン発生量を確保するには、内電極22に48meshのステンレスメッシュを用いた場合、外電極23の目開き数は30mesh〜60meshの範囲内にあるのが望ましいことが分かった。
【0021】
また、上記と同様の条件において、前記イオン発生装置11から放出されるイオンを空気イオンカウンタによって測定し、移動度1cm2/Vsec以上の小イオンを検出した結果、イオン発生装置11のガラス管21の側面からの距離20cmの位置で、20〜40万個/cc程度の正イオンと負イオンとが同時に測定された。
【0022】
このような特性を持つイオン発生装置11を、図1に示すように、空気清浄機の送風回路の空気吹出口17の上流側に設け、空気中の浮遊細菌に対する除去性能を評価した。容積1m3の容器の中にこの空気清浄機を設置し、予め培地上で培養した一般生菌と真菌を容器内に散布した。そして、イオン発生装置11を動作させるとともに、空気清浄機の運転を開始し、所定の時間ごとに、細菌の濃度を測定した。測定は、エアーサンプラーを用いて、40L/分の割合で容器内の空気を吸引し、4分間のサンプリングを行う方法を採用した。
【0023】
実施例として内電極22と外電極23に48meshのステンレスメッシュを用いた場合と、比較例として内電極22と外電極23に100meshのステンレスメッシュを用いた場合との滅菌効果を比較した。その結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 0003770782
【0025】
空気清浄機の運転を開始してから3時間後、実施例では、一般生菌は92%、真菌は92%除菌できた。一方、比較例の場合は、一般生菌は82%、真菌は82%となり、実施例の方が滅菌効果があった。
【0026】
従って、本実施形態に係るイオン発生装置を備えた空気清浄機を使用することにより、極めて良好に空気中の浮遊細菌を除去できることが裏付けられた。また、正イオン及び負イオンとともに発生したオゾンは、オゾン分解触媒を担持した活性炭フィルタ14でほとんど分解され、オゾン特有の臭気を感じることはなかった。
【0027】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る空気調和機の概略的な側面断面図である。図5において、11は前述した本発明に係るイオン発生装置、42は空気吸込口、43は空気吸込口42の下流側に配設されたプレフィルタ、44は二酸化マンガン等のオゾン分解触媒を担持した活性炭フィルタ、46は送風ファン、47は空気吹出口、48は熱交換器である。
【0028】
上記第1の実施形態と同様に、イオン発生装置11を、図5に示すように、空気調和機の送風回路の空気吹出口47の上流側に設け、空気中の浮遊細菌に対する除去性能を評価した。容積1m3の容器の中にこの空気調和機を設置し、予め培養地で培養した一般生菌と真菌を容器内に散布した。そして、イオン発生装置11を動作させるとともに、空気調和機の運転を開始し、所定の時間ごとに、細菌の濃度を測定した。測定は、エアーサンプラーを用いて、40L/分の割合で容器内の空気を吸引し、4分間のサンプリングを行う方法を採用した。
【0029】
実施例として内電極22と外電極23に48meshのステンレスメッシュを用いた場合と、比較例として内電極22と外電極23に100meshのステンレスメッシュを用いた場合との滅菌効果を比較した。その結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
Figure 0003770782
【0031】
空気清浄機の運転を開始してから3時間後、実施例では、一般生菌は91%、真菌は91%除去できた。一方、比較例の場合は、一般生菌は80%、真菌は87%となり、実施例の方が滅菌効果があった。
【0032】
従って、本実施形態に係る空気調和機を使用することにより、極めて良好に空気中の浮遊細菌を除去できることが裏付けられた。また、正イオン及び負イオンとともに発生したオゾンは、オゾン分解触媒を担持した活性炭フィルタ44でほとんど分解され、オゾン特有の臭気を感じることはなかった。
【0033】
尚、上記実施形態では電極22及び23として導電性の耐酸化性材料であるステンレス(SUS304)のメッシュを用いたが、耐酸化性物質であればタングステン、白金、金、銀、パラジウム等の他の金属でも差し支えない。そのうち、白金、金、銀、パラジウム等の貴金属を用いる場合は、チタン等の比較的安価な金属の表面に被膜を形成した電極としてもよい。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によると、絶縁体を挟んで対向する第1電極と第2電極間に交流高電圧を印加することにより、正イオンとしてH + (H 2 O) n 負イオンとしてO 2 ―(H 2 O) n とを同時に発生させるイオン発生装置を備えた空気清浄機又は空気調和機において、前記第1電極及び前記第2電極として安価なステンレスメッシュを使用したため、空気清浄機又は空気調和機のコストダウンが図られるとともに、イオン発生装置から発生する正負の両イオンの化学反応によって生ずる活性種を大量に空間に送出して、空気中の浮遊細菌を速やかに除去できる。
【0035】
この場合、そのメッシュ電極の目開き数を30〜60meshの範囲とすることで、滅菌作用のあるイオンの発生量を充分に確保できるとともに、不快な異臭のあるオゾンの発生を抑制できる。また発生したオゾンは、空気清浄機又は空気調和機の空気の送風回路の吸込口の下流に設けたオゾン分解触媒を担持した活性炭フィルタを通過させることで、大部分を分解除去できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態に係るイオン発生装置を備えた空気清浄機の概略的な側面断面図である。
【図2】 そのイオン発生装置の概略的な側面断面図である。
【図3】 そのイオン発生装置のGND電極の目開き数に対する正イオンと負イオンの発生濃度の関係を示すグラフである。
【図4】 そのイオン発生装置のGND電極の目開き数に対するオゾンの発生濃度の関係を示すグラフである。
正イオンと負イオンの発生濃度を示すグラフである。
【図5】 本発明の第2の実施形態に係るイオン発生装置を備えた空気清浄機の概略的な側面断面図である。
【符号の説明】
11 イオン発生装置
12,42 空気吸込口
13,43 プレフィルタ
14,44 活性炭フィルタ
15 HEPAフィルタ
16,46 送風ファン
17,47 空気吹出口
21 円筒ガラス
22 内電極
23 外電極
48 熱交換器

Claims (4)

  1. 絶縁体を挟んで対向する第1電極と第2電極との間に交流電圧を印加することにより、正イオンと負イオンを同時に発生させるイオン発生装置を備えた空気清浄機において、
    空気中に浮遊する浮遊細菌を除去する正イオンとしてH+(H2O)nと負イオンとしてO2 -(H2O)nとを発生するイオン発生装置の前記第1電極及び前記第2電極に、目開き数が30〜60meshの範囲内のステンレスメッシュを用いることを特徴とするイオン発生装置を備えた空気清浄機。
  2. オゾン分解触媒を担持した活性炭フィルタを空気の送風回路の吸込口の下流側に設けたことを特徴とする請求項1に記載のイオン発生装置を備えた空気清浄機。
  3. 絶縁体を挟んで対向する第1電極と第2電極との間に交流電圧を印加することにより、正イオンと負イオンを同時に発生させるイオン発生装置を備えた空気調和機において、
    空気中に浮遊する浮遊細菌を除去する正イオンとしてH + (H 2 O) n と負イオンとしてO 2 - (H 2 O) n とを発生するイオン発生装置の前記第1電極及び前記第2電極に、目開き数が30〜60meshの範囲内のステンレスメッシュを用いることを特徴とするイオン発生装置を備えた空気調和機。
  4. オゾン分解触媒を担持した活性炭フィルタを空気の送風回路の吸込口の下流側に設けたことを特徴とする請求項3に記載のイオン発生装置を備えた空気調和機。
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