JP3770592B2 - ボ−ルを筆記媒体とするペン先部構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールペンチップのチップ先端に回転自在に抱持したボールを、コイルスプリングにより常に前記チップ先端の内壁面に押圧してなるボ−ルを筆記媒体とするペン先部構造に関する。
【0002】
【従来技術】
従来からボールペンチップのチップ先端に回転自在に抱持したボ−ルをコイルスプリングにより常にチップ先端内壁面に押圧してなる弁機構を具備した、ボ−ルペンチップは知られている。また、こうしたコイルスプリングの形状については様々なものが提案または開示されており、特開平11−263093号公報「ボールを筆記媒体とするペン先部」(以下、単に先願と呼ぶ。)により、後端部に先端外径より膨出した膨出部を有した形状のものも提案されており、作業効率や生産数のアップの観点から、振動を利用した部品供給装置によりコイルスプリングをチップ内に自動的に供給しうる、自動組立機による組立に適した形状が開示されている。
【0003】
ところで、ボールペンチップの先端部分の外観は、ボールに向って徐々に縮径した形状となっていて、ボールペンチップの内孔も同様に、先端に向って徐々に縮径する構造となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、先願に開示された、単に後端部に先端外径より膨出した膨出部を有した形状のコイルスプリングを、ボールペンチップ内に装填した場合、コイルスプリングに荷重が加わっていない、コイルスプリングが自由長の状態では、ボールペンチップの後端部内孔とコイルスプリングのコイル部に間隙が生じることがある。その状態で、ボールとチップ先端縁の内壁との弁機構を得るために、コイルスプリングを自由長から取付長へと圧縮する過程で、コイルスプリングが横振れを生じ、コイルスプリングの保持部に安定して保持できず、棒状部がボールの中心を押圧せずに偏った押圧力を加えたり、設定した押圧力を得られなかったり、インキ出不良や筆跡不良を起こす恐れがあった。
【0005】
そのため、チップ内でのコイルスプリングの横振れを防止する策として、例えば特開平10−315678号で開示されているように、ボールペンチップの内孔構造とコイルスプリングを略同一構造とするため全体をテーパー状に形成する策がある。しかし、コイルスプリングの全体をテーパー状にすると、コイルスプリングが自由長から取付長へと圧縮する過程で座屈し易く、安定した付勢力を得ることはできなかった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑み、コイルスプリングの横振れが原因で、コイルスプリングの保持部に安定して保持できず、棒状部がボールの中心を押圧せずに偏った押圧力を加えたり、設定した押圧力を得られなかったり、インキ出不良や筆跡不良を起こし難く、自動組立機による組立の効率のよいボールを筆記媒体とするペン先部構造を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明では、内孔が、先端に向って徐々に縮径する構造のボールペンチップのチップ先端にボールを回転自在に抱持し、該ボールを先体に形成したコイルスプリング受部に後端部を保持したコイルスプリングによってチップ先端の内壁面に押圧してなるボ−ルを筆記媒体とするペン先部構造において、前記コイルスプリングが、先端にボールの後方に当接する棒状部を形成し、後端部に、ボールペンチップのチップ後端開口部の内径より大きい第1の膨出部を形成し、該第1の膨出部を前記先体のコイルスプリング受部に保持し、第1の膨出部より先端側かつコイル部の後端側に、該第1の膨出部の外径より小さく、かつチップ後端部の内径と外径寸法を略同一としたストレート状の第2の膨出部を形成し、該第2の膨出部の少なくとも一部がチップ後端部内に位置していることを特徴とするボ−ルを筆記媒体とするペン先部構造。
【0008】
さらには、前記第1の膨出部及び第2の膨出部が密着巻きにより形成されたものである。
【0009】
本発明は、チップ後端部の内径と、外径寸法を略同一としたストレート形状の第2の膨出部を形成するが、外径寸法が略同一とは、チップ内にコイルスプリングを挿入する際に、チップ後端部に当接すると、設定した位置に配設し難くなるので、ストレート形状の第2の膨出部の外径寸法を、チップ後端部の内径に比べ同一以下に設定するとともに、チップ後端部での横振れを防止できる範囲に設定することである。具体的には同一もしくは線径より小さい範囲、直径で0mm〜0.5mm程度小さく設定する。
【0010】
また、本発明のボ−ルを筆記媒体とするペン先部構造は、チップを先体に嵌着してなるが、該先体とは、先端にチップを、後端にインキ収容管を挿着する樹脂製のチップホルダ−、あるいはインキを収容した樹脂製のインキ収容管、軸筒や容器等の先端のことである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1から図4に示す本実施の形態のボールを筆記媒体とするペン先部構造1は、ステンレス鋼からなるボールペンチップ2に、タングステンカ−バイド系超硬材からなるボ−ル7を抱持可能にするため、ボ−ル抱持室3とボ−ル座4と、該ボ−ル座4にインキ溜溝5及びボール座の中央部にインキ流路孔6を設けた構造である。ボ−ル7は、チップ先端2aをかしめ加工で内側にかしめることにより、ボ−ル7の一部が前記チップ先端2aより外方に臨出させた状態で回転自在に抱持してある。
【0012】
ボ−ル7の後方にはコイルスプリング8を配設してある。図3に示すように、コイルスプリング8は、コイル部10をストレート形状とし、後端部にはコイル部10の外径Lより膨出(L<N)し、外径Nがチップ後端部の内径Kより大きい(N>K)第1の膨出部11を形成してあり、該第1の膨出部11より先端側には外径Mがコイル部10の外径Lより大きく、かつチップ後端部の内径Kと略同一(L<M≦K)としたストレート形状の第2膨出部12を形成してある。さらに先端には、ボール7の後方に当接する棒状部9を形成してある。図2に示すように、コイルスプリング8が荷重の加わっていない自由長の状態では、第2の膨出部12の少なくとも一部がチップ後端部2a内に位置するような長さ関係としてある。こうした長さ関係とすることにより、コイルスプリング8が自由長から取付長へと圧縮する過程で横振れが生じ難く、安定した付勢力を得ることができる。
【0013】
ボールペンチップ2を、先体であるチップホルダー13の先端に形成した係合孔13aに嵌着する。係合孔13aには、インキを導出するためのインキ流通路13bが連通している。インキを導出するためのインキ流通路13bには、該インキ流通路13bが狭幅となることにより形成された段状のコイルスプリング受部14を設けてある。該コイルスプリング受部14にコイルスプリング8の第1の膨出部11の後端部を当接して保持することにより、コイルスプリング8が自由長から取付長へと圧縮して弾発力が生じ、この弾発力によって、コイルスプリングの棒状部9がボ−ル7を前方に付勢し、常にチップ先端2aの内壁面に当接させ、筆記時の筆圧によってボール7とチップ先端2aの内壁とに間隙を設ける弁機構を具備することができる。この時、第2の膨出部12はボールペンチップ2内に位置し、かつ外径Mがボールペンチップ後端部の内径Kと略同一(M≦K)としてあるので、ボールペンチップ2内で横振れが生じ難い。
【0014】
また、図示はしていないが、ボールペンチップ2内にコイルスプリング8を保持するには、チップ後端をかしめたり、保持部材を装着したり、二次的な措置を施さなければならないが、先体(チップホルダー)に段部を形成し、この段部にコイルスプリングを保持するほうが、組立性が容易でかつ安定性も高い。
【0015】
また、本実施の形態のボールペンチップ2は、筆記時のボ−ル7に加わる筆圧を受け止め、かつボ−ル7の回転を円滑にするためにボ−ル座4を設けた構造としてあるが、ボ−ル座4を設けない構造であっても良い。また、チップ先端2aの内壁面を、ボ−ル7と同形の球面状に形成すると、ボ−ル7とチップ先端7aの内壁面とで構成される弁構造の効果が向上することができる。
【0016】
前記したボールペンチップ2は、通常、棒状のステンレス鋼等を切削加工して得られるが、管状物を絞り加工して形成したものであっても良い。
【0017】
コイルスプリング8は、先体13のインキ流通路13bに形成した段状のコイルスプリング受部14に、第1の膨出部11の後端部を当接して保持しているが、第1の膨出部11を密着巻きにすることで、保持した際にコイルスプリング8が安定する。また、第2の膨出部12の外径Mをチップ後端部の内径Kと略同一としたストレート形状とすることで、チップ内で横振れを防止することができ、第2の膨出部12を密着巻きにすることで、コイルスプリング8が自由長から取付長になる圧縮過程での安定度が高いので好ましい。
【0018】
本実施の形態では、ボールペンチップ2内へコイルスプリング8を装填した後、チップホルダー(先体)13を嵌着しているが、ボールペンチップ2内へのコイルスプリング8の装填方法は特に限定されるものではなく、先体にコイルスプリングを装填した後、ボールペンチップを嵌着してもよいが、前述したようにボールペンチップ内へコイルスプリングを装填するには、自動組立機により行うほうが好ましい。自動組立機としては、例えば、コイルスプリング8を、振動を利用した部品供給装置(図示せず)に投入し、振動により部品供給装置の出口に流動したコイルスプリング8は、第1の膨出部12を搬送部材15及び第2の膨出部12を搬送部材16に引っ掛けて、図5のように吊り下げられる。さらに、振動によりコイルスプリング装填口に流動し、ボールペンチップ2の後端開口部2bよりボールペンチップ2内に装填される。吊り下げ部を第1の膨出部及び第2の膨出部の2ヶ所にすることによって、第1の膨出部又は第2の膨出部の1ヶ所で吊り下げるより安定して流動することができる。
【0019】
【発明の効果】
本発明は前述した構成なので、コイルスプリングの横振れが原因で、コイルスプリングの保持部に安定して保持できず、棒状部がボールの中心を押圧せずに偏った押圧力を加えたり、設定した押圧力を得られなかったり、インキ出不良や筆跡不良を起こし難く、自動組立機による組立の効率のよいボールを筆記媒体とするペン先部構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態のボ−ルを筆記媒体とするペン先部構造を示す、要部拡大縦断面図である。
【図2】本実施の形態の、コイルスプリングが自由長の状態を示す要部拡大縦断面図である。
【図3】本実施の形態におけるチップ内にコイルスプリングを挿入する前の要部拡大縦断面図である。
【図4】図1における一部省略したボールペンチップの拡大図である。
【図5】コイルスプリングの搬送状態を示す拡大図(a)と90°回転させた拡大図(b)である。
【符号の説明】
1 ボールを筆記媒体とするペン先部構造
2 ボールペンチップ
2a チップ先端
2b 後端開口部
7 ボール
8 コイルスプリング
9 棒状部
10 コイル部
11 第1の膨出部
12 第2の膨出部
13 チップホルダー
14 保持部
15、16 搬送部材
K チップ後端部の内径
L コイル部の外径
M 第2の膨出部の外径
N 第1の膨出部の外径
Claims (2)
- 内孔が、先端に向って徐々に縮径する構造のボールペンチップのチップ先端にボールを回転自在に抱持し、該ボールを先体に形成したコイルスプリング受部に後端部を保持したコイルスプリングによってチップ先端の内壁面に押圧してなるボ−ルを筆記媒体とするペン先部構造において、前記コイルスプリングが、先端にボールの後方に当接する棒状部を形成し、後端部に、ボールペンチップのチップ後端開口部の内径より大きい第1の膨出部を形成し、該第1の膨出部を前記先体のコイルスプリング受部に保持し、第1の膨出部より先端側かつコイル部の後端側に、該第1の膨出部の外径より小さく、かつチップ後端部の内径と外径寸法を略同一としたストレート状の第2の膨出部を形成し、該第2の膨出部の少なくとも一部がチップ後端部内に位置していることを特徴とするボ−ルを筆記媒体とするペン先部構造。
- 前記第1の膨出部及び第2の膨出部が密着巻きにより形成してなる、請求項1に記載のボ−ルを筆記媒体とするペン先部構造。
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