JP3769976B2 - 電動式パワーステアリング装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動式パワーステアリング装置の製造方法に関し、特に電動式パワーステアリング装置に用いる減速器のウォームギヤの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の電動式パワーステアリング装置として、補助操舵トルクとなる電動モータの回転出力をウォーム歯車機構により減速して操舵機構の出力軸に伝達し、ステアリングホイールに付与された操舵力を補助して、車輪の操舵を行なうように構成したものが、例えば特開平9−309447号に開示されている。
【0003】
ところで、このような電動式パワーステアリング装置に備えられたウォーム歯車機構を例に取ると、回転出力の円滑な伝達を確保するためには、ウォームギヤとウォームホイール間に、ある値以上のバックラッシュを設定する必要がある。一方、バックラッシュが大きいと、例えば車輪のキックバックなどに基づく振動によって、ウォームギヤとウォームホイールの歯同士の間で繰り返し衝接が生じ、それにより連続的な微振動音(歯叩き音)が発生する恐れがある。このような歯叩き音は、電動式パワーステアリング装置が設けられた車両の車室内に侵入し、乗員に不快感を与える恐れがある。従って、ウォームギヤとウォームホイール間のバックラッシュは、ウォームギヤ及びウォームホイールの歯面形状や各部寸法などを正確に測定した上で、部品同士の最適な組み合わせを決定することにより比較的狭い公差範囲内に収まるよう、厳密な管理を行う必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ウォームギヤの歯面形状は精度良く測定することが難しいという問題がある。例えば、ウォームギヤの歯面の精度は、通常3本の検査ピンを用いる3針測定によって行われるが、かかる3針測定で、ミクロン単位まで精度良く値を求めるためには、測定者の熟練を要するという問題がある。一方、測定精度の安定を確保するために、自動的に3針測定を行えるシステムを構築すればよいという考えもあるが、システム全体が大がかりなものとなってしまい、膨大なコストがかかることとなる。
【0005】
更に、かかるウォームギヤとウォームホイールとの間におけるバックラッシュのバラツキは、歯面の精度(形状、面粗度、寸法など)に応じて増減するという傾向がある。しかるに、ウォームギヤの外径面の精度自体は、バックラッシュのバラツキと特に関係がないため、コスト低減を図るべく、電動式パワーステアリング装置に用いるウォームギヤにおいては、その外径面について通常は仕上げ加工を行っていないという実情がある。
【0006】
そこで本発明は、従来技術に比べ、より簡単にかつ精度良く部品測定を行うことができる電動式パワーステアリング装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成すべく、本発明の電動式パワーステアリング装置の製造方法は、電動モータの出力を、ウォームギヤとウォームホイールとからなる減速器を介して伝達する電動式パワーステアリング装置の製造方法であって、前記ウォームギヤの加工に用いる単一の工具が、前記ウォームギヤの外径面を加工する第1加工部と、前記ウォームギヤの歯面を加工する第2加工部との間に、面取り部を加工形成する第3加工部を設けている。
【0008】
【作用】
本発明の電動式パワーステアリング装置の製造方法によれば、前記ウォームギヤの加工に用いる単一の工具が、前記ウォームギヤの外径面を加工する第1加工部と、前記ウォームギヤの歯面を加工する第2加工部との間に、面取り部を加工形成する第3加工部を設けているので、前記ウォームギヤの外径面と前記歯面の加工と同時に、それらの間の面取りを形成することができ、それによりウォームギヤの歯先にバリやシャープエッジなどが形成されることを防止できる。ここで用いる単一の工具とは、外径面と歯面とを同時に加工できれば足りるという意味であるため、常に一体である必要はなく、例えば加工時以外の時は別体となっていても良い。
【0009】
前記第3加工部は円弧形状を有すると好ましい。
【0010】
なお、前記工具を仕上げ加工用の工具とした場合、仕上げ加工だけを単一の工具で行えば足り、従来の加工工程を大きく変更することがないという利点がある。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる電動式パワーステアリング装置100の軸線方向一部断面図である。図2は、図1の構成をII-II線で切断して矢印方向に見た図である。
【0012】
図1において、電動式パワーステアリング装置100は、ハウジング101とそれから延在するチューブ110とを有している。ハウジング101は、ブラケット114により、またチューブ110は、ブラケット115によリ車体(図示せず)に固定されている。チューブ110の内側には、上端をステアリングホイール(図示せず)に連結するようになっている入力軸111が延在し、チューブ110に対して回転自在に支持されている。入力軸111の他端は、検出手段であるトルク検出装置(測定装置)112に連結されている。
【0013】
トルク検出装置112はまた、ハウジング101内を延在し、回転白在に支持されている出力軸113に連結されている。出力軸113は、図示しない操舵装置に連結されたラック軸に係合し、車輪を操舵するトルクを伝達するようになっている。トルク検出装置112は、入力軸111と出力軸113との間に働く相対(操舵)トルクを検出するようになっている。
【0014】
トルク検出装置112の近傍において、出力軸113にウォームホイール104が同軸に取リ付けられている。ウォームホイール104は、図1において紙面に垂直方向に延在している減速器入力軸103のウォームギヤ103aと噛合している。減速器入力軸103は、モータ102の回転軸(不図示)に連結されている。ウォームホイール104とウォームギヤ103aとで動力伝達機構を形成する。
【0015】
図2において、減速器入力軸103は、軸受106,107によってハウジング101に対して回転自在に支持されている。
【0016】
図1に示す電動式パワーステアリング装置100の作用について以下に説明する。図示しないステアリングホイールからの操舵トルクの入力により、入力軸111が回転し、トルク検出装置112のトーションバー121を介して出力軸113に回転トルクが伝達される。出力軸113は、上述したように操舵装置(図示せず)に連結されている。この場合において、トルク検出装置112で検出されたトルクの値は、図示しない判断回路に送られ、そこで所定値と比較される。該トルクが所定値を超えた場合には補助操舵力を必要とする場合であるので、モータ102を駆動すべく検出トルクに応じた駆動指令が出される。駆動指令により駆動されたモータ102は、所定の回転トルクで減速器入力軸103を回転させ、更にウォームホイール104を介して出力軸113にその回転トルクが伝達される。
【0017】
一方、トルク検出装置112で検出されたトルクの値が所定値より低い場合には、補助操舵力は不要であるので、モータ102は駆動されないこととなる。
【0018】
ところで、図2に示すように、ウォームホイール104とウォームギヤ103aとの間のバックラッシュは、ウォームホイール104とウォームギヤ103aの歯面形状と、出力軸113と減速器入力軸103との間の軸間距離とで定まる。従って、かかるバックラッシュを管理するためには、出力軸113と減速器入力軸103との間の軸間距離と、ウォームホイール104とウォームギヤ103aの歯面形状を正確に測定する必要がある。ここで、出力軸113と減速器入力軸103との間の軸間距離と、ウォームホイール104の歯面形状は、比較的容易に測定することができる。しかしながら、ウォームギヤ103aの歯面形状は、従来技術によれば測定が比較的困難である。
【0019】
そこで、本実施の形態においては、単一の総形ツールを用いてウォームギヤ103aの仕上げ加工を行うようにしている。より具体的には、ウォームギヤ103aは、例えば切削加工、研削加工及びバレル加工などを経て形成されるが、本実施の形態においては、更に仕上げ加工で総形ツールを用いて、ウォームギヤ103aの外径面と歯面とを同時に仕上げるようにしている。
【0020】
図3は、総形ツールTの一部を、加工対象であるウォームギヤ103aと共に示す断面図である。総形ツールTは、概ねウォームギヤ103aの輪郭に対応する形状を有し、ウォームギヤ103aの外径面103bを加工する第1加工部Taと、ウォームギヤ103aの歯面103cを加工する第2加工部Tbと、外径面103bと歯面103cとの間の面取り部103dを加工するR形状の第3加工部Tcとから形成されている。
【0021】
仕上げ加工時には、総形ツールTを、粗加工されたウォームギヤ103aに近接させ、ウォームギヤ103aの外径面103b、歯面103c及び面取り部103dを一度に仕上げ加工できるようになっている。
【0022】
総形ツールTを用いてウォームギヤ103aの仕上げ加工を行うと、かかるウォームギヤ103aの外形状は一定となり、しかも総形ツールTの形状(例えば第1加工部Taと第2加工部Tbとの角度や、第3加工部の半径など)は既知であるので、ウォームギヤ103aの外径面103bを測定すれば、その歯面103cの形状も精度良く推定することができる。また、外径面103bの測定は比較的容易である。
【0023】
更に、従来技術でも比較的測定が容易である、出力軸113と減速器入力軸103との間の軸間距離と、ウォームホイール104の歯面形状とを併せて求めれば、これらと、ウォームギヤ103aの外径面103bの測定値に基づき得られるウォームギヤ103aの歯面形状とによって、ウォームホイール104とウォームギヤ103aとの間のバックラッシュを、ある程度精度良く求めることができる。従って、部品の組み合わせを変更することによって、かかるバックラッシュの調整を比較的容易に行うことができる。
【0024】
又、ウォームギヤの外径面を測定したところ、バックラッシュが小さいことが判明した場合には、フィードバック制御を行って必要な量だけ再度仕上げ加工を行ったり、バックラッシュが大きいことが判明した場合には、予め測定されている中から、対応する量だけ歯厚の大きいウォームホイールを選別するなど、電動式パワーステアリング装置の組立工程を自動化することも容易となり、コスト低減を図ることができる。
【0025】
加えて、ウォームギヤの歯先は、バリ、シャープエッジ、噛合性向上のために面取りなどを形成することが多いが、本実施の形態によれば、仕上げ加工時に同時に面取りまで形成できるため、粗加工部分と仕上げ加工部分との間に段付きなどが生じないため、精度良い形状のウォームギヤを製造することが可能となる。また、面取り部をR(円弧)形状とすれば、ウォームギヤの歯面と面取り部との境目にシャープエッジが形成されず、噛合性がより向上する。
【0026】
以上、実施の形態を参照して本願発明を詳細に説明してきたが、本願発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきでなく、その趣旨を損ねない範囲で適宜変更、改良可能であることはもちろんである。
【0027】
【発明の効果】
本発明の電動式パワーステアリング装置の製造方法によれば、前記ウォームギヤの加工に用いる単一の工具が、前記ウォームギヤの外径面を加工する第1加工部と、前記ウォームギヤの歯面を加工する第2加工部との間に、面取り部を加工形成する第3加工部を設けているので、前記ウォームギヤの外径面と前記歯面の加工と同時に、それらの間の面取りを形成することができ、それによりウォームギヤの歯先にバリやシャープエッジなどが形成されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態であるラック軸を含む電動式パワーステアリング装置の軸線方向一部断面図である。
【図2】図1の構成をII−II線で切断して矢印方向に見た図である。
【図3】総形ツールTの一部を、加工対象であるウォームギヤ103aと共に示す断面図である。
【符号の説明】
101 ハウジング
103 減速器入力軸
103a ウォームギヤ
104 ウォームホイール
113 出力軸
T 総形ツール
Claims (3)
- 電動モータの出力を、ウォームギヤとウォームホイールとからなる減速器を介して伝達する電動式パワーステアリング装置の製造方法において、
前記ウォームギヤの加工に用いる単一の工具が、前記ウォームギヤの外径面を加工する第1加工部と、前記ウォームギヤの歯面を加工する第2加工部との間に、面取り部を加工形成する第3加工部を設けている電動式パワーステアリング装置の製造方法。 - 前記第3加工部は円弧形状を有する請求項1に記載の電動式パワーステアリング装置の製造方法。
- 前記工具は、仕上げ加工用の工具であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動式パワーステアリング装置の製造方法。
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JP12090199A JP3769976B2 (ja) | 1999-04-28 | 1999-04-28 | 電動式パワーステアリング装置の製造方法 |
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