JP3768470B2 - 土中水分表示用造花 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、土中水分表示用造花に関し、特に、鉢植え植物栽培時等において土中水分の有無を花の開花、閉花で表示する造花に関する。
【0002】
【従来の技術】
近来の園芸ブームの中で鉢植えの草花などを栽培する愛好家が増えているが、栽培時に水のやり過ぎなどで根腐れなどを起こす場合がある。これを回避するためには、水やりを適切に行う必要がある。現在、水やりのタイミングを知る表示具はあるが、その確認作業が煩わしく、また、価格も安くないため、殆ど普及していないのが実情である。
【0003】
鉢植え栽培植物への水やりのタイミングを表示するものとしては、その都度土中に水分測定器を差し込み、表示を確認した上で水やりのタイミングを知る方法がある。また、測定器を土中に差し込んだままにして、水がある時は青色に、水がない時は赤色表示し、色の変化で水やりのタイミングを知る方法がある。更には、造花の形状の表示器に水による動的変化を付与するものとして、100〜1000倍の水を吸収する吸水ポリマーを利用し、その膨張により当該造花を開花又は閉花させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
なお、造花に開花、閉花の動的な変化を与える技術としては、形状記憶合金等を利用し熱を加えることによるもの、モーターの動力を利用するものなどがある。しかし、これらは、鉢植え栽培植物のために土中の水分の変化を表示するものではない上に、高価であったり、構造が複雑であったりする。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−140412号公報(第2頁〜第5頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述の土中に水分測定器を差し込む方法によると、その都度測定器を差し込み確認する作業が必要であり、鉢数が多い場合等には煩わしい。また、色の変化で水やりのタイミングを知る方法によると、目を近づけなければ表示部分が見にくい等の煩わしさがある。
【0007】
そこで、本発明者は、前述の吸水ポリマーを利用しその膨張により花を開花、閉花させる技術について検討した。即ち、前述の吸水ポリマーを利用した造花とはやや構成が異なるが、図7に示す構成の造花を作成して、その特性について実験した。
【0008】
図7は、前述の吸水ポリマーを使用した実験構成断面図であり、図7(a)は吸水前の花が閉じた状態を示し、図7(b)は吸水後の花が開いた状態を示す。図7において、100は吸水ポリマー、101は伸縮性ゴム、102は花弁、103は芯材、104は紙又は布等の吸水材、105は軟質樹脂を示す。
【0009】
原理的には、図7(a)の状態で水が供給されると、吸水材104より吸収された水分は、毛細管現象により次第に上昇し、伸縮性ゴム101に封入された吸水ポリマー100に接触する。これにより、吸水ポリマー100は膨張を始め、伸縮性ゴム101も膨らみ始める。伸縮性ゴム101が膨らみ始めると、伸縮性ゴム101の下部に接着された花弁102は、膨張した伸縮性ゴム101に押され、図7(b)に示すように、膨張の程度に応じて花が次第に開いていく。
【0010】
しかし、この実験の結果によれば、毛細管現象による給水量の絶対量が封入された吸水ポリマー100の量に対して少ないため、これを膨張飽和させるまでに2〜3日かかる。また、飽和した吸水ポリマー100は伸縮性ゴム101に封入されているため、蒸発し乾燥状態に戻るまでに約3日かかる。このように、膨張、収縮に時間がかかりすぎるため、鉢中の土中水分状態と造花の開花、閉花の水分状態とが一致しない。特に、伸縮性ゴム101に封入された吸水ポリマー100に取り込まれた水分の蒸発時間は、鉢中の土中水分の花への吸収と空気中への蒸発時間に比べ、極めて遅くなる。従ってこの構成では、土中水分状態と造花の開花、閉花の水分状態とを一致させることは、困難であることが判った。また、伸縮性ゴム101には剛性が殆ど無いため、花弁102をうまく固定できず、花の形がうまく保てないことが判った。更に、また、伸縮性ゴム101は、繰り返し伸縮させると、その膨張率が大きく下がってしまい、水やりの回数を経る毎に劣化してしまうことが判った。
【0014】
本発明は、鉢植え植物の栽培時等において土中水分の有無を花の開花、閉花で表示して、水やりのタイミングを知らせることができる土中水分表示用造花を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の土中水分表示用造花は、土中の水分を毛細管現象により吸い上げる第1の吸水材を備える茎と、茎の一端に前記第1の吸水材に接するように取り付けられた第2の吸水材を備える花蘂と、水膨張性ゴムとこれに貼り合わされた実質的に水膨張性を持たない部材(例えば通常のゴム)とからなり、前記水膨張性ゴムが前記第2の吸水材に接するようにされた複数の萼と、複数の萼に対応して当該萼に取り付けられた複数の花弁とからなる。
【0016】
本発明の土中水分表示用造花によれば、鉢中の土中水分を第1の吸水材の毛細管現象により吸い上げ、その水分を第2の吸水材を介し水膨張性ゴムに供給する。これにより、複数の萼がバイメタルのように所定の方向に反り返り、土中水分表示用造花が咲いた(開いた)状態とすることができる。そして、水膨張性ゴムの水分が蒸発乾燥することにより、複数の萼が元の形状に戻り、土中水分表示用造花が閉じた状態とすることができる。
【0017】
このように、本発明によれば、前述の水分測定器のようにその都度土中に水分測定器を差し込み確認する必要がない。また、前述の色の変化による方法のように目を近づけなくとも、一見して表示されている状態を判別することができる。更に、図7に示す単純に吸水ポリマーを用いた造花のように、開花や閉花に2〜3日を要することはないので、鉢中の土中水分状態と造花の開花、閉花の水分状態とを一致させることができると共に、萼が水膨張性ゴムとこれに貼り合わされた実質的に水膨張性を持たない部材とからなるので、これに花弁を固定して花の形をうまく保つことができ、また、水やりの回数を経て膨張収縮を繰り返してもその膨張率が大きく下がることを防止することができる。
【0018】
従って、本発明によれば、土中水分表示用造花が開花している時は栽培植物への水やりが必要でない状態、土中水分表示用造花が閉花している時は水やりが必要である状態であることを表示することができ、鉢植えの草花などの中にかわいらしい造花が咲いている(開いている)か又は閉じている状態を見て、水やりのタイミングを知ることができ、楽しく水やりができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は土中水分表示用造花説明図であり、本発明の土中水分表示用造花の利用の形態を示す。
【0020】
1は土中水分表示用造花(以下、造花)、2は栽培植物、3は植木鉢、4は土、5及び5’は土4が水分を含んでいるおよその位置(の上限)を示す。植木鉢3に土4が入れられ、これに本来の栽培植物2が植えられている。栽培植物2は土4中の水分をその根から吸い上げる。造花1は、栽培植物2の横において、栽培植物2の根の近傍に造花1の下端がくるように、土4に差し込まれる。
【0021】
図1(a)に示すように、位置5までしか土4中の水分が少ない(又は、ない)場合、栽培植物2は、当該位置5の水を吸い上げることができない。従って、水やりが必要である状態である。この時、造花1は花を閉じている。これにより、造花1は、水やりが必要である状態であることを、一目で判るように表示する。これを見た栽培者が栽培植物2(植木鉢3)に水をやる。これにより、図1(b)に示すように、土4中の水分は位置5' まで上昇する。位置5' まで土4中の水分がある場合、栽培植物2は、当該位置5' の水を十分に吸い上げることができる。従って、水やりが必要でない状態である。この時、造花1は花を開いている。これにより、造花1は、水やりが必要でない状態であることを、一目で判るように表示する。
【0022】
図2乃至図4は土中水分表示用造花構成図であり、本発明の造花1の構成を示す。特に、図2は造花1が閉じている状態を示し、図2(a)は斜視図、図2(b)は平面図、図2(c)は図2(b)のc−c切断線に沿う断面図を示す。図3は造花1が開いている状態を示し、図3(a)は斜視図、図3(b)は平面図、図3(c)は図3(b)のc−c切断線に沿う断面図を示す。図4は造花1の断面拡大図を示し、図4(a)は図2(c)の拡大図、図4(b)は図3(c)の拡大図である。
【0023】
図2乃至図4において、造花1の茎は、その中心から外側へ向かって順に、芯材9、第1の吸水材10、軟質樹脂11を備える。芯材9は、自然に花が咲いているようにするために繰り返し折り曲げることが可能である程度の剛性を備える材質からなり、例えば針金等からなる。第1の吸水材10は、土4中の水分を毛細管現象により吸い上げる吸水材であって、例えば紙又は布等からなる。なお、ここでいう土4は、栽培植物2に水を供給し得るものであって、第1の吸水材10が水分を吸い上げることが可能なものであれば、他の種々の材質からなるものを含む。第1の吸水材10である紙等は、例えば芯材9に一重又は二重(乃至n重、nは正の整数)に巻き付けられる。軟質樹脂11は、茎の外皮にあたるものであって、成型され表面に着色された軟質樹脂、例えばプラスチック、ビニル等からなる。軟質樹脂11の下部は、植木鉢3内の土4に突きたてるために、その先端がやや尖った形状とされる。軟質樹脂11の下部には、水分取り入れのための開口部13が設けられる(図4参照)。
【0024】
造花1の花蘂(雄しべ及び雌しべに相当する部分)は、第2の吸水材12からなる。第2の吸水材12は吸水スポンジ等の吸水材からなる。第2の吸水材12は、茎の一端に第1の吸水材10に接するように取り付けられる。第2の吸水材12が取り付けられる茎の上端は、その部分の軟質樹脂11が除去されて第1の吸水材10が表面に現れて、第2の吸水材12に直接接する状態で、第2の吸水材12に挿入され、固定される。即ち、第2の吸水材12は、これに挿入された茎(芯材9及び第1の吸水材10)の頭頂部に接着される。第2の吸水材12は、第1の吸水材10から供給された水分を水膨張性ゴム6の表面に供給するための伝達機能を果たすと共に、保水機能をも持つ。即ち、第2の吸水材12は、第1の吸水材10からの水分の供給がなくなった時に、水膨張性ゴム6に水分を供給し、当該水膨張性ゴム6の蒸発乾燥までの時間を遅らせる機能を備える。第2の吸水材12に含まれる水分の蒸発乾燥と、第1の吸水材10からの水分の供給がなくなった時点での鉢3の土4中の水分の蒸発乾燥とは、周囲の湿度に依存するため、両者の間には大差はないと考えてよい。
【0025】
この例では、第2の吸水材12は、下方の円筒形の部分と上方の半球形の部分とからなる。円筒形の部分の下方の平坦面は、下記の萼の水膨張性ゴム6の上面に接するように、取り付けられる。これにより、水膨張性ゴム6の一方の面のみに水分を供給し、萼を効率よく所定の方向(以下にいう通常ゴム7の側)に反り返らせることができる。半球形の部分が、花蘂(特に、雌しべ)に見えるような形状に形成される。
【0026】
造花1の萼は、複数設けられ、その各々が、水膨張性ゴム6とこれに貼り合わされこれと同一形状とされた実質的に水膨張性を持たない部材7とからなる。各々の萼は、その水膨張性ゴム6が第2の吸水材12に接するように、軟質樹脂11に取り付けられる。即ち、萼を構成する水膨張性を持たない部材7が、外皮に当たる軟質樹脂11の上端に、茎に対してほぼ垂直になるように接着され固定される。これにより、造花1が開花した場合、その直径があまり大きくならないようにして、造花1が栽培植物4に触れて傷つけることがないようにしている。なお、部材7の茎に対する接着の角度は、垂直でなく斜めであってもよい。部材7は、例えば通常のゴム7からなる。通常のゴム7は、例えば天然ゴム又は合成ゴム等のゴム(以下、通常ゴム7と言う)からなり、水に接した場合におけるその膨張率が水膨張性ゴム6と異なるものである。即ち、通常ゴム7は、水に接しても実質的には膨張しないと考えてよい。
【0027】
ここで、部材7は、それが水に接した場合において、その膨張(率)が水膨張性ゴム6の膨張と比較して無視してよい材質のものであればよく、例えばステンレス等からなる薄い(例えば、0.1mm〜0.2mm程度の)金属板、例えば塩化ビニル等の薄い(例えば、0.1mm〜0.2mm程度の)軟質樹脂板、布等であってもよい。金属板及び軟質樹脂板は、水に接しても膨張することがなく、これに加えて、後述するように、その剛性又は弾性により萼の復元を助ける。布は、水に接してもあまり膨張することがなく、また、萼の復元を助けることはないが、後述するように、バイメタルのような機能を持たせることができる。
【0028】
造花1の花弁8は、複数(この例では、5個)設けられ、複数の萼に対応して取り付けられる。この例では、花弁8は、その一端(の中央部)が、水膨張性ゴム6の上面に接着剤等により固定される。なお、花弁8が通常ゴム7の下面に接着剤等により固定されるようにしてもよい。花弁8は、例えば当該花弁8の形に成型され着色された軟質樹脂、例えばプラスチック、ビニル等からなる。
【0029】
ここで、第1に、本発明において用いられる水膨張性ゴム6は、吸水性ポリマーの配合の割合を、市販の建築用の水膨張性ゴム(例えば、王子ゴム化成株式会社製、アクアケルシーラー(Vシリーズ))におけるそれよりも増やしている。例えば、本発明の水膨張性ゴム6における吸水性ポリマーの割合は、前記市販品のおよそ20%増しとされる。これにより、本発明の水膨張性ゴム6は、水膨張性ゴム6への水の浸透を早くすることができる。また、第2に、本発明の水膨張性ゴム6は、ゴム及び吸水性ポリマーに加えて、例えばポリアルキレンオキサイド誘導体を配合して、水の浸透が早くなるようにしてある。ポリアルキレンオキサイド誘導体は、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドを重合して得られる化合物であり、水膨張性ゴム6への水の浸透を容易ならしめる水路剤として配合される(例えば、特開平7−138413号公報参照)。これにより、本発明の水膨張性ゴム6は、更に、水膨張性ゴム6への水の浸透を早くすることができる。更に、第3に、本発明の水膨張性ゴム6は、萼における水膨張性ゴム6の厚さを1.0〜1.5mmにしている。これにより、本発明の水膨張性ゴム6は、より一層、水膨張性ゴム6への水の浸透を早くすることができる。なお、萼における通常ゴム7の厚さも、後述するように、対応する水膨張性ゴム6の厚さに等しくされる。以上により、本発明の造花1は、水やりから約2〜3時間で、萼を構成する構造体が水膨張性ゴム6の膨張により反り返り、開花できる。
【0030】
なお、水膨張性ゴム6は、周知のように、ゴムの粒子に粉体状の吸水性樹脂を混合して、加硫工程を経て形成する。吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸やアクリル酸共重合体塩からなるポリマーが用いられ、例えば、ポリビニルアルコール−アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体等があるが、水を分子内に取り込みゲル化し膨張する樹脂であれば、特に制限されない。
【0031】
また、本発明の造花1の萼を構成する構造体は、水膨張性ゴム6と通常ゴム7とを貼り合わせ、あたかもバイメタルのような機能を持たせた構造体とされる。これにより、本発明の造花1の萼は、水膨張性ゴム6の水分が飽和しても、造花1の開花状態を保つことができる。即ち、水膨張性ゴム6は水を吸収すると膨張を始めるが、通常ゴム7は膨張しない。このため、萼を構成する構造体は、その一方が膨張し他方が膨張しないので、バイメタルのように反り返る。また、萼を構成する構造体において、通常ゴム7の厚さは、バイメタルのような動作を阻害しないように、前述のように、水膨張性ゴム6の厚さと同様の1.0〜1.5mmの厚さとした。これにより、水膨張性ゴム6と通常ゴム7を貼り合わせた構造体を萼として使用することにより、本発明の造花1は、水膨張性ゴム6が飽和しても花が開花した状態を保つことができる。
【0032】
一方、水膨張性ゴム6と貼り合わされた通常ゴム7は、萼を構成する構造体が反り返った後に元の板状の形状に復元することを助ける。即ち、水膨張性ゴム6中の水分の蒸発に伴ってこれが次第に元の形状に収縮すると、通常ゴム7の反力により、萼を構成する構造体は速やかに元の形状に戻ろうとする。これにより、水膨張性ゴム6の僅かな収縮でも明確に造花1が閉じるようにすることができ、また、バイメタルのような動作を多数回繰り返してもその反応速度等の特性が劣化することを防止することができる。
【0033】
更に、本発明の造花1は、水膨張性ゴム6(又は、萼を構成する構造体)に対して、第2の吸水材12を介して、土4中から吸い上げた水分を供給する。即ち、水膨張性ゴム6に対して第1の吸水材10とを直接接触させることなく、吸い上げた水分を一旦第2の吸水材12において保水している。植木鉢3中の土4中の水分が少なくなり第1の吸水材10が水を吸い上げられなくなった時から、第2の吸水材12及び水膨張性ゴム6の乾燥が始まる。この時点では、植木鉢3中にはまだ水分が少し残っており、また、第2の吸水材12及び水膨張性ゴム6の中にも水分が残っており、造花1は開花した状態にある。その後、植木鉢3中の土4の水分は蒸発し、第2の吸水材12及び水膨張性ゴム6の水分も蒸発する。この際、土4の水分の蒸発速度と第2の吸水材12及び水膨張性ゴム6中の水分の蒸発速度は、共に周囲の環境(例えば、湿度)に依存し、ほぼ同じになる。これにより、両者を水分の状態をほぼ一致させることができるので、造花1の開花、閉花の状態により、植木鉢3中の土4の水分の有無をほぼ正確に表示することができる。
【0034】
本発明の造花1は、例えば以下のように使用される。最初に、造花1は、図1(a)に示すように、植木鉢3の土4に差し込まれる。この時、土4の中の水分の位置5が低いので、造花1の花弁8は、差し込んでから2〜3時間(即ち、開花に必要な時間)たっても、閉じたままである。即ち、図2又は図4(a)に示す状態となる。そこで、これを見た栽培者は、植木鉢3の花2に水をやるタイミングであることを知って、水をやる。これにより、植木鉢3の土4の中の水分が、花2の根に水分が行き渡る位置5' (図1(b)参照)にまで上昇する。
【0035】
この結果、図1(b)から判るように、土4中の水分が、茎の外皮である軟質樹脂11に設けられた開口部13に達し、この開口部13から茎内の第1の吸水材10の毛細管現象により吸い上げられ、第2の吸水材12に供給される。第2の吸水材12に供給された水分は、これの底面に接している水膨張性ゴム6の表面に供給され、これにより、水膨張性ゴム6が膨張を始める。水膨張性ゴム6の膨張が始まると、萼全体は次第にバイメタルのように所定の方向に反り返る。この時、通常ゴム7の中心の円形状の部分は、茎(芯材9及び第1の吸水材10)を貫通させるために前記円形状の部分の中心に設けられた穴の外周部で軟質樹脂11に固定されており、茎(芯材9及び第1の吸水材10)は第2の吸水材12に接着固定されており、水膨張性ゴム6はほぼ全体に膨張している。このため、膨張した水膨張性ゴム6は、下方への膨張が軟質樹脂11及び通常ゴム7により妨げられるので、第2の吸水材12の底面の主として中心部を上方に押し上げる。一方、膨張した水膨張性ゴム6は、バイメタルのような機能により、その全体が反り返るので、第2の吸水材12は、その底面の周縁になるほど押し上げられなくなる。これにより、萼(の水膨張性ゴム6)の端に接着されている花弁8は、図1(b)、図3及び図4(b)に示すように、水やりから約2〜3時間で開花状態になる。
【0036】
水膨張性ゴム6が十分に水分を吸収して飽和状態になっても、萼を構成する構造体は通常ゴム7を貼り合わせてあるため、反り返った状態を保つ。即ち、当該飽和状態の間でも、造花1は開花状態を維持する。
【0037】
これを見た栽培者は、植木鉢3の花2に水をやるタイミングではないことを知って、水をやらない。これにより、土4中に水分の位置5' は、次第に低下してくる。一方、水膨張性ゴム6及び第2の吸水材12からは、その中の水分が蒸発する。しかし、土4中に水分が位置5に低下するまでは、第1の吸水材10からの水分の供給がある。従って、この間も、水膨張性ゴム6は水分を吸収して飽和状態にあり、造花1は開花状態を維持する。
【0038】
土4中に水分が位置5に低下すると、第1の吸水材10からの水分の供給がなくなる。この状態で、水膨張性ゴム6及び第2の吸水材12からの水分の蒸発が続くと、第1の吸水材10により吸い上げられ第2の吸水材に保水されていた水分が水膨張性ゴム6との接する面に供給されなくなり、水膨張性ゴム6は、飽和状態から水分を失い、これに伴って次第に元の形状に戻る。この結果、萼を構成する構造体が次第に元の板状の形状に戻り、造花1は閉じる状態になる。
【0039】
図5は本発明の他の実施形態を示し、図5(a)は花が閉じている状態、図5(b)は花が開いている状態を示す。
【0040】
図2においては第2の吸水材12の全体を吸水スポンジで構成したが、図5においては、図2の第2の吸水材12における下方の円筒形の部分を、吸水スポンジに代えて、高吸収性ポリマーを使用した高吸収性吸水材14により構成している。なお、第2の吸水材12における上方の半球形の部分は、図2と同様に、吸水スポンジからなる。高吸収性吸水材14は、紙オムツや生理用品等で広く使用されているものであり、周知のように、一般には、アクリルアミド、アクリル酸からできる水溶性高分子を架橋して、水に不溶で、しかも大きく膨潤する構造にすることにより得られる。図2の第2の吸水材12の水膨張性ゴム6に接する部分を高吸収性吸水材14とすることにより、水膨張性ゴム6への水分供給を早くすることができる。
【0041】
図6は本発明の更に他の実施形態を示し、図6(a)は花が閉じている状態、図6(b)は花が開いている状態を示す。
【0042】
図2においては、萼を構成する水膨張性ゴム6と通常ゴム7とからなる構造体を茎に垂直となる方向に設けたが、図6においては、萼を構成する構造体を茎に平行となる方向に設けている。なお、萼を構成する構造体は、図2と同様に、水膨張性ゴム6と通常ゴム7とからなる。また、第2の吸水材12における上方の半球形の部分は図2と同様とされるが、下方の円筒形の部分は、図6に示すように、茎を差し込む太い円筒部分と、造花1が閉じた場合に花弁12の動きを制限しないように細くされた円筒部分とからなる。更に、茎の外皮に相当する軟質樹脂11が萼を構成する構造体の下方の一部を覆うようにされる。萼を構成する構造体を茎に平行となる方向に設けることにより、造花1が開花した場合にはその直径を(図2より)より大きく、閉花した場合にはその直径を(図2より)より小さくすることができ、水やりのタイミングを示すのみでなく、実際の花を栽培しているのに近い感覚を得ることができる。
【0043】
なお、本発明は、図2の実施形態、図5の実施形態、図6の実施形態を、適宜組み合わせるようにして、実施してもよい。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、土中水分表示用造花において、鉢中の土中水分を第1の吸水材の毛細管現象により吸い上げ、その水分を第2の吸水材を介し水膨張性ゴムに供給することにより、複数の萼をバイメタルのように所定の方向に反り返らせ、当該土中水分表示用造花が開いた状態とし、水膨張性ゴムの水分が蒸発乾燥することにより、複数の萼を元の形状に戻らせ、土中水分表示用造花が閉じた状態とすることができる。また、本発明によれば、測定の都度土中に水分測定器を差し込む必要なく、一見して表示されている状態を判別することができ、鉢中の土中水分状態と造花の開花、閉花の水分状態とを一致させることができ、萼に花弁を固定して花の形をうまく保つことができ、水やりの回数を経てもその膨張率が大きく下がることを防止することができ、水膨張性ゴムの水分が飽和しても花が開いた状態を保つことができる。以上から、本発明によれば、土中水分表示用造花が開花している時は栽培植物への水やりが必要でない状態、土中水分表示用造花が閉花している時は水やりが必要である状態であることを表示することができ、水やりのタイミングを正確に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す図である。
【図2】本発明の造花が閉じている状態を示す図である。
【図3】 本発明の造花が開いている状態を示す図である。
【図4】本発明の造花の拡大断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態図である。
【図7】吸水ポリマーを使用した実験を説明する図である。
【符号の説明】
1 土中水分表示用造花(造花)
2 栽培植物
3 植木鉢
4 土
5、5' 水分を含んでいる位置線
6 水膨張性ゴム
7 ゴム(通常ゴム)
8 花弁
9 芯材
10 第1の吸水材
11 軟質樹脂
12 第2の吸水材
Claims (2)
- 土中の水分を毛細管現象により吸い上げる第1の吸水材を備える茎と、
前記茎の一端に前記第1の吸水材に接するように取り付けられた第2の吸水材を備える花蘂と、
水膨張性ゴムとこれに貼り合わされた実質的に水膨張性を持たない部材とからなり、前記水膨張性ゴムが前記第2の吸水材に接するようにされた複数の萼と、
前記複数の萼に対応して当該萼に取り付けられた複数の花弁とからなる
ことを特徴とする土中水分表示用造花。 - 前記第1の吸水材により吸い上げられた水分が前記第2の吸水材と前記水膨張性ゴムとの接する面に供給された場合に、前記水膨張性ゴムが膨張して前記複数の萼が所定の方向に反り返ることにより、当該造花が開き、
前記第1の吸水材により吸い上げられた水分が前記第2の吸水材と前記水膨張性ゴムとの接する面に供給されなくなった場合に、前記水膨張性ゴムが元の形状に戻り前記複数の萼が元の形状に戻ることにより、当該造花が閉じる
ことを特徴とする請求項1に記載の土中水分表示用造花。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002317783A JP3768470B2 (ja) | 2002-10-31 | 2002-10-31 | 土中水分表示用造花 |
Applications Claiming Priority (1)
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