JP3768281B2 - トバモライト結晶生成促進剤を用いた珪酸カルシウム水和物スラリーの製造方法 - Google Patents
トバモライト結晶生成促進剤を用いた珪酸カルシウム水和物スラリーの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、石灰質原料と結晶質珪酸原料との水熱反応の際に使用するトバモライト結晶生成促進剤を用いた珪酸カルシウム水和物スラリーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術・課題】
珪酸カルシウム水和物は、保温材、断熱材、建築材料等として幅広く用いられている有用な材料である。その中でもトバモライト結晶は工業的に容易に合成できるため、珪酸カルシウム水和物の主要な構成物となっている。しかし、トバモライト結晶の生成速度は、石灰質原料、珪酸質原料の種類、配合組成により著しく異なる。例えば水性スラリーを飽和蒸気圧下で水熱反応させることによりトバモライト結晶を含む珪酸カルシウム水和物スラリーを生成する場合、石灰質原料と珪酸質原料の混合比[Ca/(Si+Al)モル]が0.83の水性スラリーからは比較的容易にトバモライト結晶の形成を促進することができるが、Ca/(Si+Al)モル比が0.8以下となると次第にトバモライト結晶は生成し難くなる。
【0003】
珪酸カルシウムを含む水性スラリーの製造方法として、例えば、特公昭58−30259号公報には、珪酸原料および石灰原料を、これら原料固形分に対して15重量倍以上の水中に分散させて混合物を得、該混合物を加圧下で130℃以上の温度で加熱反応させて、沈降体積が15cm3/g以上で、且つ、C−S−Hまたはトバモライトからなる珪酸カルシウムを含む水性スラリーを形成せしめ、次いで、該水性スラリーを脱水成形した後、更に、加圧下で水蒸気養生することにより珪酸カルシウム水和物を転移させることを特徴とする珪酸カルシウム成形体の製造法が開示されている。
【0004】
しかし、該公報に記載されている水性スラリーの製造方法では、Ca/(Si+Al)モル比が0.83程度の水性スラリーにあってはトバモライト結晶は容易に生成されるが、Ca/(Si+Al)モル比が0.8以下のような水性スラリーにあってはトバモライト結晶は生成し難くなるという問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、石灰質原料と結晶質珪酸原料との水熱反応の際に、トバモライト結晶の生成を促進することができるトバモライト結晶生成促進剤を用いた珪酸カルシウム水和物スラリーの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、石灰質原料及び結晶質珪酸原料を含有してなり、発泡剤不含の水性スラリーを飽和蒸気圧下で水熱反応させることからなる珪酸カルシウム水和物スラリーの製造方法において、水熱反応に供する水性スラリーに、無水石膏、半水石膏及び二水石膏よりなる群から選択された1種または2種以上の硫酸カルシウム結晶からなるトバモライト結晶生成促進剤を添加することを特徴とする、珪酸カルシウム水和物スラリーの製造方法を提供することにある。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の珪酸カルシウム水和物スラリーの製造方法に使用されるトバモライト結晶生成促進剤は、無水石膏、半水石膏及び二水石膏よりなる群から選択された1種または2種以上の硫酸カルシウム結晶からなる。石灰質原料と結晶質珪酸原料を含有してなり、発泡剤不含の水性スラリーを飽和蒸気圧下で水熱反応させて珪酸カルシウム水和物スラリーを製造する際に、上記トバモライト結晶生成促進剤を添加すると、その反応機構の詳細は不明であるが、Ca/(Si+Al)モル比が0.8以下、例えば0.3〜0.8のようなトバモライト結晶が通常形成され難いとされる条件下の水性スラリーからでも比較的容易にトバモライト結晶の生成を促進することができる。
【0012】
なお、本明細書に記載する「Ca/(Si+Al)モル比」は、水性スラリーを構成する石灰質原料及び結晶質珪酸原料に含まれるCa含量、Si含量並びにAl含量についてのものであり、トバモライト結晶生成促進剤に由来する成分は含まないものである。
【0013】
トバモライト結晶生成促進剤は、無水石膏、半水石膏及び二水石膏よりなる群から選択された1種または2種以上の硫酸カルシウム結晶からなるものであり、その添加量は、石灰質原料と結晶質珪酸原料の合計乾燥固形分量に対して外割りで0.5〜35重量%、好ましくは2.0〜30重量%[硫酸カルシウム(CaSO4)換算量]の範囲内である。該添加量が0.5重量%未満であると、その添加効果が発現しないために好ましくなく、また、該添加量が35重量%を超えるとトバモライト結晶が逆に形成されなくなるために好ましくない。なお、トバモライト結晶生成促進剤は、例えば後述する乾燥状態の石灰質原料や結晶質珪酸原料と共に配合し、次に所定量の水を加えて水性スラリーを調製するか、または石灰質原料と結晶質珪酸原料に予め水を添加して調製した水性スラリーに添加しても良く、その添加手順は特に限定されるものではない。
【0014】
ここで、水性スラリーを構成する石灰質原料及び結晶質珪酸原料は特に限定されるものではなく、慣用の公知の原料を使用することができ、石灰質原料としては消石灰、生石灰等を例示することができ、結晶質珪酸原料としては珪砂、焼成珪藻土等を使用することができる。
【0015】
なお、これら両原料はCa/(Si+Al)モル比が0.3〜0.8の範囲内となるような割合で使用することができる。ここで、Ca/(Si+Al)モル比が0.3未満の水性スラリーを使用すると、トバモライト結晶生成促進剤を添加しても、トバモライト結晶を生成することができないために好ましくない。なお、該モル比が0.83付近でトバモライト結晶の生成が理論上最も容易になるが、該モル比が0.83を超えるに従ってトバモライト結晶は生成しにくくなり、この場合においては、本発明のトバモライト結晶生成促進剤を添加してもトバモライト結晶の生成を促進する効果は余り期待できない。
【0016】
なお、水性スラリーはこれら両原料+トバモライト結晶生成促進剤に対して10〜20倍(重量比)の水を添加することにより調製することができる。ここで、水の添加量が10倍未満の場合には、工業的に使用した場合の濾水性悪化のために好ましくなく、また、20倍を超えると、生産効率低下のために好ましくない。
【0017】
トバモライト結晶生成促進剤を含有する上述のような配合割合を有する水性スラリーを飽和蒸気圧下、温度120〜200℃の条件で水熱反応させることにより比較的短時間で水性スラリー中にトバモライト結晶の生成を促進することができる。なお、水熱反応の温度が120℃未満であると、トバモライトの生成が促進されないために好ましくなく、また、該温度が200℃を超えると、工業的に使用した場合の濾水性悪化のために好ましくない。
【0018】
本発明方法によれば、Ca/(Si+Al)モル比が0.3〜0.8の範囲内にある水性スラリーから、比較的短時間にトバモライト結晶を含有する珪酸カルシウム水和物スラリーを調製できる利点があり、これによって珪酸カルシウム水和物スラリーの製造コストを低減することができる。
【0019】
本発明方法により得られた珪酸カルシウム水和物スラリーは、結晶相としてトバモライト結晶を含有し、更に、トバモライト結晶生成促進剤として配合した硫酸カルシウム結晶を含有するものである。本発明の珪酸カルシウム水和物スラリーは、珪酸カルシウム板等の製造用の珪酸カルシウム水和物スラリーとしての用途が期待できる。
【0020】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明の珪酸カルシウム水和物スラリーの製造方法を更に説明する。
実施例1
生石灰、珪砂、及びトバモライト結晶生成促進剤としての無水石膏、半水石膏及び二水石膏を以下の表1に示す割合で配合し、13倍の水で混合撹拌し、それぞれの条件でオートクレーブ中で水熱反応を行い、トバモライト結晶を含む珪酸カルシウム水和物スラリーを得た。なお、撹拌速度は100m/分で行い、生石灰の純度はCaO:96.0重量%のもの、珪砂の純度はSiO2:97.1重量%、ブレーン比表面積7000cm2/gのものを用いた。また、表1中の無水石膏、半水石膏及び二水石膏の添加量は、硫酸カルシウム(CaSO4)分換算量である。
【0021】
【表1】
【0022】
表1中、トバモライト結晶ピーク高さは、X線回折でのトバモライト結晶のピーク高さを示すもので、空欄は観測されず、Lは低い、Mは中位、Hは高いをそれぞれ示す。
【0023】
なお、本発明例によるトバモライト結晶生成促進剤として無水石膏、半水石膏及び二水石膏を配合した水性スラリーから得られた珪酸カルシウム水和物スラリー中には、硫酸カルシウム結晶が残存していることが確認された。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、トバモライト結晶生成促進剤を珪酸カルシウム水和物スラリー製造用の水性スラリーに添加することにより、Ca/(Si+Al)モル比が0.3〜0.8の範囲内の通常トバモライト結晶が形成し難いとされている水性スラリー中で、比較的容易にトバモライト結晶を形成させることができる効果がある。
Claims (3)
- 石灰質原料及び結晶質珪酸原料を含有してなり、発泡剤不含の水性スラリーを飽和蒸気圧下で水熱反応させることからなる珪酸カルシウム水和物スラリーの製造方法において、水熱反応に供する水性スラリーに、無水石膏、半水石膏及び二水石膏よりなる群から選択された1種または2種以上の硫酸カルシウム結晶からなるトバモライト結晶生成促進剤を添加することを特徴とする、珪酸カルシウム水和物スラリーの製造方法。
- トバモライト結晶生成促進剤の添加量が、石灰質原料と結晶質珪酸原料の合計乾燥固形分量に対して外割りで硫酸カルシウム換算量で0.5〜35重量%の範囲内である請求項1記載の製造方法。
- 石灰質原料と結晶質珪酸原料の混合比[Ca/(Si+Al)モル比]が0.3〜0.8の範囲内にある請求項1または2記載の製造方法。
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