JP3767368B2 - 通水性地中連続壁およびその構築方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、通水性地中連続壁およびその構築方法に関し、特に、用地に制約がある場合などに好適な通水性地中連続壁およびその構築方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地下鉄や車両道路用の地下トンネルなどの地下構造物を開削工法で構築する場合、地山の崩落を防止して、内部の掘削を可能にするために止水性を備えた土留め壁が構築される。
【0003】
この種の土留め壁には、例えば、ソイルセメント柱列式地中連続壁や、コンクリート地中連続壁など各種の構造が提供されている。ところで、このような止水性の地中連続を地中に構築すると、地中連続壁が構築された部分で、地下水脈を遮断するため、地中連続壁の上流側で地下水位が上昇し、下流側で地下水位が低下するいわゆるダムアップ現象が生じる。
【0004】
そこで、このような現象を解消する方策として、地中連続壁の所定個所に通水装置を設置して、通水性を確保することが提案されていて、例えば、特開平2000−64270号公報には、ソイルセメント柱列式地中連続壁に通水性を持たせる工法が開示されている。
【0005】
この公報に開示されている工法は、地盤鉛直方向の掘削孔に、H鋼などの応力負担用の芯材を設置したソイルセメント柱体を連続配置して止水壁を形成する地中連続壁において通水を確保する方法であって、止水壁と外方地山とにラップして砕石ドレーンなどの集水手段を配置することを基本構成としている。
【0006】
この工法では、集水手段は、隣接する芯材の内部側に遮水板を設置し、この遮水板に接するようにして、その外部側に設けている。しかしながら、このような構成の通水工法には、以下に説明する課題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、上記公開公報に開示されている通水工法は、止水壁と外方地山とにラップして砕石ドレーンなどの集水手段を配置するので、集水手段が列状に形成されているソイルセメント柱体の厚みよりも、外方地山側に突出する。
【0008】
このため、周辺用地に制約がある場合には、この工法を採用することができない。また、上記公開公報に開示されている通水工法では、ソイルセメント柱体の構築後に、集水手段を設けるため、集水手段用の掘削などが必要になり、施工工程が複雑化し、手間がかかるのみでなく、施工費も増加する。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、地中連続壁の壁厚よりも外部地山側に突出することがない通水性地中連続壁を提供することにある。
【0010】
また、別の目的は、地中連続壁の構築後に新たな掘削工程を要することなく構築することができる通水性地中連続壁の構築方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、現地盤土砂をセメントスラリーで固化させたソイルセメント壁体と、前記ソイルセメント壁体の固化前にその内部に挿入される応力負担用の芯材と、前記ソイルセメント壁体の外方地山側に設けられる通水部とを備えた通水性地中連続壁において、前記通水部は、前記ソイルセメント壁体の固化前に、前記芯材の外方地山側間に渡設される止水プレートと、前記ソイルセメント壁体の固化前に、前記止水プレートと前記外方地山との間に挿入設置した袋体内に、流体を注入して拡大膨張させて、両端を前記止水プレートと外方地山とに当接させ、前記ソイルセメント壁体の固化後に前記流体および前記袋体を除去した空間部に、粒状固形物を充填したフィルター層と、一端側が前記フィルター層と連通する通水管とを備えるようにした。
このように構成した通水性地中連続壁によれば、通水部は、ソイルセメント壁体の固化前に、芯材間に渡設される止水プレートと、ソイルセメント壁体の固化前に、止水プレートと前記外方地山との間に挿入設置した袋体内に、流体を注入して拡大膨張させ、ソイルセメント壁体の固化後に流体および前記袋体を除去した空間部に、粒状固形物を充填したフィルター層と、一端側がフィルター層と連通する通水管とを備えているので、外方地山側の地下水脈とフイルター層とを連通させると、地中連続壁の通水性が確保される。
この場合、通水部には、ソイルセメント壁体の外周から外方に突出する部分が存在しない。
前記袋体は、液密性を備え、温水に接触することで溶解する温水溶解性シート、または、土中のバクテリアやカビなどの微生物で分解される生分解性プラスチックシートから構成することができる。
この構成によれば、フイルター層を介して、これに連通する通水管に温水を供給することで、液密性袋体を簡単に溶解して、フィルター層と地下水脈とを連通させることができるし、また、生分解性プラスチックシートで液密性袋体を構成すると、時間の経過に伴って、シートが土中のバクテリアやカビなどの微生物で分解されるので、何もしなくてもフィルター層と地下水脈とを連通させることができる。
前記止水プレートは、柱列状に形成される前記ソイルセメント壁体の端部重合部分に位置対応して設けられた凹部を有する波形に形成することができる。
この構成によれば、厚み方向に凹凸がある列状に形成されるソイルセメント壁体に対して、波形を凹凸に一致させることで、桁高が大きい芯材を挿入する場合でも、止水プレートをソイルセメント柱体内に引き込み易くなる。
前記通水管は、下端開口が前記止水プレートに設けられた貫通孔に固設することができる。
この構成によれば、止水プレートをソイルセメント壁体内に引き込むと、これと同時に通水管も引き込むことができる。
前記貫通孔は、前記止水プレートの前記凹部に設けら、前記通水管を前記貫通孔に固設することができる。
この構成によれば、凹部が設けられているソイルセメント壁体の端部重合部分は、これ以外の部分のように芯材が存在しておらず、ソイルセメントだけが存在して、比較的大きな部材の挿入が可能な個所となっており、このような個所を通水管の設置用として有効に利用することができる。
一方、本発明は、現地盤土砂にセメントスラリーを供給して混合攪拌して固化させるソイルセメント壁体を地盤中に形成する地中連続壁の構築方法において、前記ソイルセメント壁体の固化前に応力負担用の芯材を挿入するとともに、前記ソイルセメント壁体の外方地山側に通水部を形成する通水性地中連続壁の構築方法であって、前記通水部は、止水プレートと、フィルター層と、通水管とを備え前記ソイルセメント壁体の固化前に、前記芯材間に前記止水プレートを渡設し、前記ソイルセメント壁体の固化前に、前記止水プレートと前記外方地山との間に袋体を挿入設置して、前記袋体内に粘性変更可能な流体を注入して拡大膨張させ、前記ソイルセメント柱体の固化後に前記流体および前記袋体を除去した空間部に、粒状固形物を充填して前記フィルター層を形成し、一端が前記フィルター層と連通する前記通水管を設けるようにした。
このように構成した通水性地中連続壁の構築方法によれば、通水部は、止水プレートと、フィルター層と、通水管とを備え、ソイルセメント柱体の固化前に、芯材間に止水プレートを渡設し、ソイルセメント柱体の固化前に、止水プレートと前記外方地山との間に、袋体を挿入設置して、袋体内に粘性変更可能な流体を注入して拡大膨張させ、ソイルセメント柱体の固化後に流体および袋体を除去した空間部に、粒状固形物を充填してフィルター層を形成し、一端が前記フィルター層と連通する通水管を設けるので、外方地山側の地下水脈とフィルター層とを連通させると、地中連続壁の通水性が確保され、ソイルセメント柱体の構築後に新たな掘削孔を設ける必要がない。
上記構築方法では、前記フィルータ層形成材を拡大させる前に、前記芯材と前記ソイルセメント壁体の内方地山との間に、伸縮性袋体を設置し、前記フィルター層形成材を拡大させる時に、前記伸縮性袋体内にセメントミルクなどの硬化性液体を注入して、前記伸縮性袋体を拡開させることができる。
この構成によれば、芯材と前記ソイルセメント壁体の内方地山との間に、伸縮性袋体を設置し、フィルータ層形成材を拡大させる時に、伸縮性袋体内にセメントミルクなどの硬化性液体を注入して、伸縮性袋体を拡開させることで、拡開させた伸縮性袋体を、フィルータ層形成材を拡大させる時の反力受けにすることができ、フィルータ層形成材の拡大膨張に伴う芯材の移動を防止することができる。
また、上記構築方法では、前記粘性変更が可能な流体は、植物繊維を主原料とする液体と、無機鉱物を主原料とする液体の混合物からなり、前記流体を除去する際に、前記混合物に消粘剤を注入することにより粘性を低下させることができる。
このような流体を用いると、除去する際に粘性を低下させることで、これを容易に行なうことができる。
さらに、上記構築方法では、前記ソイルセメント壁体を固化させた後に、前記フィルター層を前記通水管を介して洗浄することができる。
この構成によれば、硬化スラリーなどによるフィルター層の目詰まりを洗浄により、使用前ないしは使用後の任意の時期に除去することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1から図9は、本発明にかかる通水性地中連続壁およびその構築方法の一実施例を示している。
【0013】
本実施例にかかる通水性地中連続壁10は、図8,9にその構築完了状態を示すように、現地盤土砂をセメントスラリーで固化させた複数本のソイルセメント柱体12と、各ソイルセメント柱体12中に挿入設置された応力負担用の芯材14と、ソイルセメント柱体12の外方地山Aに設けられた通水部16とを備えている。
【0014】
なお、本実施例においては、図8などの各上面図において、ソイルセメント柱体12の下部側が根切り掘削される内方地山Bとなっていて、柱体12を挟んでその上部側が掘削されない外方地山Aとなっている。
【0015】
本実施例の場合には、ソイルセメント柱体12は、地盤中に所定の間隔を隔てて既に形成されている一対の先行ソイルセメント柱体12aと、この先行ソイルセメント柱体12間に形成される3本の後行ソイルセメント柱体12b1〜12b3とから構成されている。
【0016】
これらの先行および後行ソイルセメント柱体12a,12b1〜12b3は、側方に隣接したもの同士の端部が相互に重なり合った重合部分Cを形成するようにして、一列状に連結形成されている。
【0017】
各ソイルセメント柱体12a,12b1〜12b3は、現地盤土砂を掘削しながらセメントスラリーと混合攪拌することで形成され、このような混合物が固化して形成されるソイルセメント柱体12a,12b1〜12b3からなる柱列壁は、通常、遮水性を備えている。
【0018】
芯材14は、本実施例の場合には、H型鋼から構成されていて、各ソイルセメント柱体12a,12b1〜12b3の中央部に、これらの柱体12a,12b1〜12b3が固化する前に挿入される。
【0019】
通水部16は、遮水性を備えた柱列壁に所定の通水性能を与えるものであって、本実施例の場合には、止水プレート18と、フィルター層20と、通水管22とを備えている。
【0020】
止水プレート18は、後行ソイルセメント柱体12b1〜12b3が固化する前に、後行ソイルセメント柱体12b1〜12b3に挿入設置されるものであって、各後行ソイルセメント柱体12b1〜12b3にそれぞれ挿入された芯材14間に跨るように渡設されている。
【0021】
本実施例の止水プレート18は、芯材14の外方地山A側のフランジ14aにそれぞれ当接される3つの平坦部18aと、これらの平坦部18a間に設けられた一対の凹部18bとを備え、水平断面がほぼ波形に形成されている。
【0022】
一対の凹部18bは、後行ソイルセメント柱体12b1〜12b3の端部に形成された重合部分Cに位置対応するように設けられ、かつ、内方地山B側に突出するように形成されている。
【0023】
このような構成の止水プレート18は、後行ソイルセメント柱体12b1〜12b3で形成した厚み方向に凹凸のある柱列に対して、平坦部18aと凹部18bとで形成する波形をこの凹凸に一致ないしは対応させることで、桁高の大きい芯材14を用いた場合でも、止水プレート18を後行ソイルセメント柱体12b1〜12b3内に容易に挿入設置することができる。
【0024】
フィルター層20は、例えば、砕石やガラス塊などの粒状固形物を空間部21内に充填し、固形物間に形成される隙間が連続した状態になっていて、この隙間により通水性を確保している。
【0025】
この場合の空間部21は、ソイルセメント柱体12b1〜12b3の固化前に、止水プレート18と外方地山Aとの間に、温水で溶解する液密性袋体24を挿入設置し、その後に、袋体24内に、粘性変更が可能な流体25を注入して、袋体24を拡大,膨張させて、ソイルセメント柱体12b1〜12b3の固化後に、流体25と袋体24とを除去することにより形成される。
【0026】
このような温水溶解性の袋体24は、溶解温度の選択が可能な合成樹脂シート、例えば、ソルブロン(株式会社ニチビ製,商品名)を用いることができる。
【0027】
なお、袋体24は、必ずしもこの構成に限ることはなく、例えば、袋体24を、土中のバクテリアやカビなどの微生物で分解される生分解性プラスチックシート、例えば、スーパーペーパー(信越ポリマー株式会社製、商品名)、プラスターチ(株式会社クラレ製、商品名)、ビオノーレ(昭和高分子株式会社製、商品名)で構成することができる。
【0028】
袋体24を生分解性プラスチックシートで液密性袋体を構成すると、時間の経過に伴って、シートが土中のバクテリアやカビなどの微生物で分解されるので、何もしなくても袋体24を除去することができる。
【0029】
このような方法で空間部21を形成すると、流体25の注入により袋体24が拡大,膨張すると、袋体24の両端が、止水プレート18および外方地山Aの双方に当接するので、フィルター層20は、一方端側が止水プレート18の内面側に接触するとともに、他方端側が外方地山Aに直接接触させられる。
【0030】
このような構造のフィルター層20は、地盤中に存在する地下水脈にその一部ないしは全部が臨むような深度位置や、ソイルセメント柱体12b1〜12b3の全長に渡って設けることができる。
【0031】
通水管22は、両端が開口したパイプ状のものであって、図5および図9に示すように、その下端側が略L字状に屈曲していて、本実施例の場合には、2本から構成されている。
【0032】
通水管22の下端側開口は、止水プレート18に貫通形成された貫通孔18cに固設されており、止水プレート18と外方地山Aとの間に介在するフィルター層20と連通している。
【0033】
止水プレート18の貫通孔18cは、重合部分Cに位置対応するように配置された凹部18bに設けられている。従って、本実施例の場合には、通水管22は、ソイルセメント柱体12b1〜12b3の端部重合部分Cに配設される。
このような位置に通水管22を配置すると、端部重合部分Cは、これ以外の部分のように芯材14が存在しておらず、ソイルセメントだけが存在して、比較的大きな部材の挿入が可能な個所となっており、このような個所を通水管22の設置用として有効に利用することができる。
【0034】
また、通水管22を端部重合部分Cに配設すると、その大径化が容易なので、例えば、通水管22内には、揚水ポンプを内蔵設置することができる。
【0035】
さらに、通水管22の上端側は、ソイルセメント柱体12b1〜12b3の長手軸方向に沿って、上方に延設されている。本実施例のように、通水部16にこのような構成の通水管22を用いると、通水管22は、下端開口がフィルター層20と連通し、上端側がソイルセメント柱体12b1〜12b3に沿って上方に延設されるので、根切り掘削深度以下の地下水脈を対象とする通水性も確保することができる。
【0036】
なお、通水管22の設置状態は、ソイルセメント柱体12b1〜12b3の長手軸方向に沿って、上方に延設すること以外に、図5に仮想線で示すように、水平方向に延設させてもよい。この場合、通水管22の端部は、内部の根切り掘削までは、閉塞しておく。
【0037】
一方、芯材14と内方地山Bとの間には、袋体24内に流体25を注入して拡大,膨張させる際の反力受け部26が設けられている。本実施例の反力受け部26は、両端が芯材14と内方地山Bとにそれぞれ当接していて、伸縮性袋体26aと、この伸縮性袋体26a内に注入充填された硬化体26bとを備えている。
【0038】
硬化体26bは、例えば、モルタルやセメントミルクなどが硬化したものであり、フィルター層20を拡大,膨張させる際に、これらの液体を伸縮性袋体26a内に注入して、伸縮性袋体26aを拡大させて、その両端を芯材14と内方地山Bとにそれぞれ接触させる。
【0039】
次ぎに、上記構成の通水性地中連続壁10の構築方法について、添付図面に基づいて説明する。通水性地中連続壁10を構築する際には、まず、図1に示すように、先行ソイルセメント柱体12a間に、後行ソイルセメント柱体12b1〜12b3が形成される。
【0040】
先行ソイルセメント柱体12aは、その内部に芯材14が挿入されていて、すでに固化している。本実施例の場合には、この先行ソイルセメント柱体12a間に、端部に重合部分Cを設けた3連の後行ソイルセメント柱体12b1〜12b3を形成する。
【0041】
後行ソイルセメント柱体12b1〜12b3を形成する際には、従来と同様に、現地盤土砂とセメントスラリーとを混合攪拌して、混合物が固化する前に、図2に示すように、芯材14をそれぞれ挿入するが、この際に、本実施例の場合には、図4,5に示すように、芯材14とともに通水部16の形成部材が設置される。
【0042】
すなわち、本実施例の通水部16の形成部材は、止水プレート18,温水溶解性の液密性袋体24および止水プレート18に固設された通水管22とから構成されているので、液密性袋体24を止水プレート18に係止した状態で、例えば、ロープやワイヤなどを用いて、まだ固化していない後行ソイルセメント柱体12b1〜12b3内に引き込む。
【0043】
この場合、止水プレート18は、平坦部18aと凹部18bとを有する波形に形成され、この波形が柱列の厚み方向の凹凸に対応しているので、比較的容易にソイルセメント柱体12b1〜12b3内に引き込むことができる。
【0044】
止水プレート18は、平坦部18aが、各芯材14の外方地山A側のフランジ14aの外面に当接するようにして、芯材14間に渡設し、かつ、通水管22が重合部分Cに位置するように設置する。
【0045】
また、液密性袋体24は、止水プレート18の外方地山A側において、平坦部18aの全幅に亘るように配置する。一方、各芯材14の内方地山Bのフランジ14bの外方には、一端側がこれに接触するようにして伸縮性袋体26aがそれぞれ挿入配設される。
【0046】
以上の通水部16の形成部材および伸縮性袋体26aが設置されると、図6に示すように、液密性袋体24内に粘性変更が可能な流体25が注入される。この流体25は、本実施例の場合には、植物繊維を主原料とする液体と、無機鉱物を主原料とする液体の混合物が用いられている。
【0047】
この混合物は、消粘剤を注入することにより粘性を低下させることができる。粘性変更が可能な流体25は、これ以外に、例えば、高吸水性樹脂のゲル状物などを用いることもできる。
【0048】
このような流体25を液密性袋体24内に注入して拡大,膨張させると、固化前のソイルセメント柱体12b1〜12b3を外方に押しやるようにして、その両端は、止水プレート18と外方地山Aとに密着する。
【0049】
このとき、流体25の注入に伴う袋体24の拡大,膨張による芯材14の移動を防止するために、伸縮性袋体26a内にセメントミルクなどの硬化材26aを注入して、伸縮性袋体26aを拡径させて、これが芯材14のフランジ14bと内方地山Bの双方に当接するようにし、反力受け部26とする。
【0050】
このような反力受け部26は、必ずしも必須のものではないが、これを設けておくことにより、フィルター層形成材料の拡大,膨張による芯材14の移動を防止することができるし、また、袋体24を外方地山Aに強く押圧密着することもできる。
【0051】
なお、反力受け部26は、袋体24を拡大,膨張させる前に、硬化材26aを注入して、伸縮性袋体26aを拡開させても良い。
【0052】
そして、時間の経過とともにソイルセメント柱体12b1〜12b3が固化すると、図7に示すように、通水管22を介して、消粘剤を流体25に供給して、その粘性を低下させる。
【0053】
そして、粘性が低下した流体25は、通水管22を介して外部に取り出し、その後に、通水管22を介して、温水を供給し、液密性袋体24を溶解させて、空間部21を形成する。
【0054】
このようにして形成される空間部21は、流体25の注入により袋体24を拡大,膨張させているので、これに対応した形状となっていて、内方が止水プレート18の外面に倣い、外方がソイルセメント柱体12b1〜12b3を形成する際の掘削孔の内面に倣った円弧が連続した凹面となっている。
【0055】
このような空間部21が形成されると、必要に応じて、通水管22を介して、洗浄水や圧縮空気をフイルター層20に送り込んで、外方地山A側に残っているスラリー固化物などを除去して、通水能力の向上を図る。
【0056】
そしてこの後、図8に示すように、空間部21内に砕石などの粒状固形物を充填してフィルター層20を形成すると、地中連続壁10に通水部16が形成される。
【0057】
なお、流体25に消粘剤を供給する際には、その供給前に、通水管22を介して温水を供給して、袋体24を破断するか、あるいは、通水管22内に棒を挿入して、袋体24を機械的に破断する。
【0058】
以上のようにして、地中連続壁10に通水部16が設けられると、例えば、同一構成の地中連続壁10を所定の間隔を隔てて、対向形成し、地中連続壁10間に構造物を築造する場合には、対向形成された連続壁10のそれぞれに設けられた通水部16を、通水管22同士の接続により連通することで、地下水の遮断現象が解消される。
【0059】
また、一列状に形成された地中連続壁10の場合には、通水部16の連通管22の上端側を、連続壁10で遮断した地下水脈の下流側に放流すれば、地下水の遮断現象が解消される。
【0060】
さらに、地下水の排除だけを目的とする場合には、例えば、通水部16の通水管22の下端側に揚水ポンプを内蔵させると、通水性地中連続壁10をディープウエルとして用いることもできる。
【0061】
さて、以上のように構成した通水性地中連続壁10によれば、通水部16には、ソイルセメント柱体12b1〜12b3の外周から外方地山A側に突出する部分が存在しない。
【0062】
従って、従来の通水性地中連続壁のように、周辺用地に制約がある場合に、施工が制限されることがなく、施工の自由度が広くなる。
【0063】
また、上記工程で施工される通水性地中連続壁の構築工法によれば、ソイルセメント柱体12b1〜12b3の構築後に、集水手段を設けるための掘削などが不用になり、施工工程の複雑化を回避しつつ、手間と施工費の低減を図ることができる。
【0064】
また、本実施例の場合には、ソイルセメント柱体12b1〜12b3を固化させて列状に形成した後に、フィルター層20を、通水管22を介して洗浄することができるので、硬化スラリーなどによるフィルター層20の目詰まりを洗浄により、使用前ないしは使用後の任意の時期に除去することができる。
【0065】
なお、上記実施例では、後行ソイルセメント柱体12b1〜12b3に通水部16を設ける場合を例示したが、通水部16は、先行ソイルセメント柱体12a側に設けることもできる。
【0066】
また、上記実施例では、一対の先行ソイルセメント柱体12a間に、3連の後行ソイルセメント柱体12b1〜12b3を形成する場合を例示したが、本発明の実施は、これに限定されることはなく、たとえば、一方向に連続してソイルセメント柱体を列状に形成する場合にも適用することができるし、一連のソイルセメント柱体の数も3に限ることはない。
【0067】
また、上記実施例では、本発明を柱列状のソイルセメント柱体で形成する壁体に適用した場合を例示したが、本発明の実施は、これに限定されることはなく、例えば、トレーダートレンチ工法などにより等厚のソイルセメント壁を構築する場合にも適用することができる。
【0068】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明にかかる通水性地中連続壁およびその構築方法によれば、構築後に新たな掘削工程を要することなく構築することができるとともに、適用する際の用地制限となる外部地山側への突出部分がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる通水性地中連続壁の構築方法の初期工程の上面説明図である。
【図2】図1に引続いて行われる工程の上面説明図である。
【図3】図2の要部縦断面説明図である。
【図4】図2に引続いて行われる工程の上面説明図である。
【図5】図4の要部縦断面説明図である。
【図6】図4に引続いて行われる工程の上面説明図である。
【図7】図6に引続いて行われる工程の上面説明図である。
【図8】図7に引続いて行われる工程の上面説明図である。
【図9】図8の要部縦断面説明図である。
【符号の説明】
10 通水性地中連続壁
12 ソイルセメント柱体
12a 先行ソイルセメント柱体
12b1〜12b3 後行ソイルセメント柱体
14 芯材
16 通水部
18 止水プレート
20 フィルター層
22 通水管
24 液密性袋体
25 流体
26 反力受け部
Claims (9)
- 現地盤土砂をセメントスラリーで固化させたソイルセメント壁体と、
前記ソイルセメント壁体の固化前にその内部に挿入される応力負担用の芯材と、
前記ソイルセメント壁体の外方地山側に設けられる通水部とを備えた通水性地中連続壁において、
前記通水部は、前記ソイルセメント壁体の固化前に、前記芯材の外方地山側間に渡設される止水プレートと、
前記ソイルセメント壁体の固化前に、前記止水プレートと前記外方地山との間に挿入設置した袋体内に、流体を注入して拡大膨張させて、両端を前記止水プレートと外方地山とに当接させ、前記ソイルセメント壁体の固化後に前記流体および前記袋体を除去した空間部に、粒状固形物を充填したフィルター層と、
一端側が前記フィルター層と連通する通水管とを備えたことを特徴とする通水性地中連続壁。 - 前記袋体は、液密性を備え、温水に接触することで溶解する温水溶解性シート、または、土中のバクテリアやカビなどの微生物で分解される生分解性プラスチックシートからなることを特徴とする請求項1記載の通水性地中連続壁。
- 前記止水プレートは、柱列状に形成される前記ソイルセメント壁体の端部重合部分に位置対応して設けられた凹部を有する波形に形成することを特徴とする請求項1または2記載の通水性地中連続壁。
- 前記通水管は、下端開口が前記止水プレートに設けられた貫通孔に固設されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の通水性地中連続壁。
- 前記貫通孔は、前記止水プレートの前記凹部に設けられ、前記通水管を前記貫通孔に固設することを特徴とする請求項3記載の通水性地中連続壁。
- 現地盤土砂にセメントスラリーを供給して混合攪拌して固化させるソイルセメント壁体を地盤中に形成する地中連続壁の構築方法において、 前記ソイルセメント壁体の固化前に応力負担用の芯材を挿入するとともに、前記ソイルセメント壁体の外方地山側に通水部を形成する通水性地中連続壁の構築方法であって、
前記通水部は、止水プレートと、フィルター層と、通水管とを備え、
前記ソイルセメント壁体の固化前に、前記芯材間に前記止水プレートを渡設し、
前記ソイルセメント壁体の固化前に、前記止水プレートと前記外方地山との間に袋体を挿入設置して、前記袋体内に粘性変更可能な流体を注入して拡大膨張させ、前記ソイルセメント壁体の固化後に前記流体および前記袋体を除去した空間部に、粒状固形物を充填して前記フィルター層を形成し、
一端が前記フィルター層と連通する前記通水管を設けることを特徴とする通水性地中連続壁の構築方法。 - 前記フィルータ層形成材を拡大させる前に、前記芯材と前記ソイルセメント壁体の内方地山との間に、伸縮性袋体を設置し、前記フィルター層形成材を拡大させる時に、前記伸縮性袋体内にセメントミルクなどの硬化性液体を注入して、前記伸縮性袋体を拡開させることを特徴とする請求項6記載の通水性地中連続壁の構築方法。
- 前記粘性変更が可能な流体は、植物繊維を主原料とする液体と、無機鉱物を主原料とする液体の混合物からなり、前記流体を除去する際に、前記混合物に消粘剤を注入することにより粘性を低下させることを特徴とする請求項6または7記載の通水性地中連続壁の構築方法。
- 前記ソイルセメント壁体を固化させた後に、前記フィルター層を前記通水管を介して洗浄することを特徴とする請求項6から8のいずれか1項記載の通水性地中連続壁の構築方法。
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