JP3766436B2 - 塩化アリルの精製 - Google Patents

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Description

本発明は、或る種の望ましくない副生物を除去することによる塩化アリルの精製に関するものである。
塩化アリルはプロペンの高温塩素化によって工業的に製造される。その主たる用途は異性体1,2−ジクロル−3−ヒドロキシプロパンおよび1,3−ジクロル−2−ヒドロキシプロパンを意味するジクロルヒドリンの製造であり、これは一般に塩化アリル供給物を希薄水相にて水および塩素と反応させて行われる。ジクロルヒドリンの主たる用途は、一般に塩基の存在下で脱塩酸することによるエピクロルヒドリン(1,2−エポキシ−3−クロルプロパン)の製造である。これら反応はバッチ式、半連続式または連続式に行うことができる。塩化アリルの他の用途はエステル、アリルエーテルおよびアリルアミンの製造である[ウルマン・エンサイクロペジア・オブ・インダストリアル・ケミストリー、第5版、第A巻(1985)、第431頁]。
エピクロルヒドリン製造プラントから発生する多量の水性溶出液は著量の他の塩素化有機化合物を含有しうることが知られている(約100mg Cl/Lまでの抽出可能な有機塩素、EOCl)。これら塩素化された有機副生物は主としてクロル脂肪族エーテルおよびクロル脂肪酸アルカンである。これらは常法で作成されたジクロルヒドリンに既に存在し、エピクロルヒドリン製造プラントの流出液に移行する。これら塩素化された有機副生物は毒性であるため、廃水におけるその濃度をこの廃水をたとえば河川および湖のような受入領域に移行させる前にできるだけ減少させねばならない。エピクロルヒドリン製造プラント流出液からの、たとえば分別蒸留のような常法による塩素化有機副生物の除去は極めて高価につくため、そのレベルを減少させる代案方法につきニーズが存在する。
本出願人の欧州特許出願公開明細書第0 359 331号は、塩化アリルと水および塩素との反応の水性生成物を40〜105℃の大気圧沸点を有する水不混和性溶剤で抽出することにより上記反応流出液における塩素化有機副生物のレベルを減少させる方法に向けられる。本出願人の欧州特許出願公開明細書第0 537 846号は、抽出用の水不混和性溶剤が1,2,3−トリクロルプロパンである同様な方法を開示している。
本出願人のWO−94/13611号には、上記反応流出液における塩素化有機副生物のレベルを減少させる異なる手法が示されている。そこには上記の望ましくない塩素化有機副生物が主として9〜12個の炭素原子(C9およびC12)を有するクロル脂肪族エーテルであることが開示され、C15クロル脂肪族エーテルのレベルはずっと低く、さらに塩化アリル供給物におけるその供給源が主としてプロペンから塩化アリルへの高温塩素化の副生物であるヘキサジエン(すなわちC610異性体、特に1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエンおよび2−メチル−1,4−ペンタジエン)であることも開示されている。ジクロルヒドリンを生成させるための水および塩素との上記反応に対する塩化アリル供給物に存在する場合、これらヘキサジエンは塩素、水およびジクロルヒドリンとも反応して、反応流出液に見られるクロル脂肪族エーテルを生成する。
ジクロルヒドリンを製造するべく使用する市販の塩化アリルは少なくとも97.5重量%の純度であって、ヘキサジエンを不純物として含有する[ウルマン・エンサイクロペジア・オブ・インダストリアル・ケミストリー、上記]。この純度に達するには、プロペンの塩素化により製造されて約75〜80%の塩化アリルと軽質および重質の不純物とを含有する粗塩化アリルを常法で精製する。精製は一般に少なくとも2工程にて蒸留により行われ、それぞれ軽質部分および重質部分を除去する。一般にヘキサジエンの0.3〜1.0重量%が、ジクロルヒドリンの製造に使用された精製塩化アリルにまだ存在する。WO−94/13611号には、0.30重量%未満のヘキジエンを含有する塩化アリル供給物をジクロルヒドリンの製造につき水および塩素と共に使用する場合、生成物はずっと少量の望ましくない塩素化有機副生物しか含有せず、プラントから流出する水性流出液の精製コストを相当減少させることが開示されている。
さらにWO−94/13611号は、ジクロルヒドリン製造のための塩化アリル供給物からヘキサジエンを除去する幾つかの方法を、前記望ましくない塩素化有機副生物の生成を減少させる観点から開示している。これら方法の1つは粗塩化アリル供給物中に存在するヘキサジエンをたとえばMoCl5のようなルイス酸の存在下でHClによりモノクロルヘキセンおよびジクロルヘキサンまで塩化水素処理することを含む。モノクロルヘキセンおよびジクロルヘキサンの大気圧における沸点はそれぞれ110〜140℃および170〜220℃の範囲であるため、これらはヘキサジエン(沸点55〜65℃)よりも塩化アリル(沸点45℃)から分離するのがずっと容易である。
WO−94/13611号は塩化アリル供給物中に存在するヘキサジエンの98%程度をモノクロルヘキセンおよびジクロルヘキサンまで選択的に変換するのに極めて効果的である塩化水素処理を示しているが、実際にはこの方法は使用する触媒が高価であると共に反応生成物からこれを分離せねばならないという欠点を有する。さらに、モノクロルヘキセンおよびジクロルヘキサンよりもずっと重質である生成物まで塩化アリルにおけるヘキサジエンを変換することも望ましい。勿論、この変換は塩化アリル自身に対し不当な悪影響を及ぼさずにヘキサジエンに対する選択性を保たねばならない。
さらに粗塩化アリルは副生物としてヘキサジエンの他に少量の他の脂肪族およびシクロ脂肪族ヘキセンおよびヘキサジエン異性体、例えばノルマルヘキセン、メチルペンテン、メチルシクロペンテンおよびメチルシクロペンタジエンをも含有し、これらも常法で精製された塩化アリルまで移行する。存在するとメチルシクロペンテン不純物はエピクロルヒドリン製造過程でエポキシメチルシクロペンタンまで変換されることが判明し、後者は著量で存在すればエピクロルヒドリンの処理に悪影響を及ぼしうる。
米国特許発明明細書第3,914,167号には、塩化アリルの製造にて得られる蒸留残渣よりシス−1,3−ジクロルプロペンを製造する方法が開示されている。前記方法は、元素状塩素または臭素との反応により蒸留残渣中のC6オレフィン成分を選択的にハロゲン化する工程を含む。
今回、粗塩化アリルおよび常法で精製された塩化アリルに存在するヘキサジエン並びにメチルシクロペンテン、さらに脂肪族および脂環式ヘキセンおよびヘキサジエン異性体は液相における分子状塩素での塩素化により効果的かつ効率的に除去しうることが突き止められた。この塩素化工程においてヘキサジエンはジクロルヘキセンおよびテトラクロルヘキサンまで変換され、これらはWO−94/13611号に挙げられた塩か水素処理生成物よりも重質であると共に塩化アリル主流から一層容易に分離される。次いで、メチルシクロペンテンはこの塩素化工程にてジクロルメチルシクロペンタンまで変換され、これも塩化アリル主流から容易に分離することができる。驚くことに正確に行えば塩素化は極めて選択的であり、すなわち塩化アリル自身は不飽和C6不純物に対し大過剰で存在するが相当量まで塩素化されないことが判明した。
したがって本発明は、分子状塩素による塩素化工程を液相中で行うことを特徴とする塩化アリルからの(シクロ)脂肪族ヘキセンおよびヘキサジエン異性体の除去方法に向けられる。
塩素化工程においては、必要に応じ不活性ガスまたはたとえば1,2,3−トリクロルプロパンもしくは四塩化炭素のような不活性液体溶剤と混合しうる分子状塩素を使用される温度と圧力との組合せにて液状に保たれる粗塩化アリルと反応器内で接触させる。塩化アリルを液状に保つことが重要である。何故なら、この場合のみ塩素化反応が充分選択的となるからである。ガス状塩化アリルは極めて容易に塩素と反応して、有用でないトリクロルプロパンとなる。
本発明による塩素化工程を行う温度は−20〜120℃の範囲、好ましくは20〜80℃の範囲で変化することができ、圧力は塩化アリルが使用温度にて液体であるよう確保すべく選択される。
本発明による塩素化につき使用する塩素の全量は好ましくは、粗塩化アリル中に最初に存在する(シクロ)脂肪族ヘキセンおよびヘキサジエンの合計1モル当り1〜5モル、より好ましくは1.5〜3.5モルの範囲である。ヘキセンおよびヘキサジエンの最適塩素化につき必要とされるよりも相当高い塩素濃度は、全不純物を塩素化した後も塩化アリル自身を塩素化し続ける傾向を有する。
粗塩化アリルはしばしば、塩化アリルを作成した残留プロペンをも含有する。プロペンも反応条件下で塩素と反応する(ジクロルプロパンまで)と共に、たとえば蒸留のような慣用の分離手段によるプロペンの直接的除去がヘキサジエンおよびメチルシクロペンテンの除去と同じ困難性を示さないので、本発明による塩素化工程を実施する前に粗塩化アリルからプロペンを分離するのが便利である。したがって本発明の好適具体例においては、塩素化工程を粗塩化アリルからの軽質部分の除去後に行う。
本発明による精製工程はバッチ式でも連続式でも行うことができる。
本発明による塩素化工程を行った後、塩化アリル精製をたとえば蒸留のような慣用手段により完結することができる。従って、好適実施例において本発明は:
a. 粗塩化アリルを蒸留して軽質部分を除去し;
b. 粗塩化アリル中に存在する(シクロ)脂肪族ヘキセンおよびヘキサジエン異性体を液相にて塩素化し;
c. 粗塩化アリルを蒸留して重質部分を除去する
工程からなっている。
以下、実施例により本発明を説明する。
実施例1
0.36モル%の1,5−ヘキサジエンと全部で0.46モル%の(シクロ)脂肪族ヘキセンおよびヘキサジエンとを>98重量%の塩化アリル中に含有する16.7gの供給物A(すなわち実験室級の塩化アリル(メルク社、Art.800257))を30mLのガラス瓶に21℃および大気圧にて入れた。この液体を磁気攪拌器を用いて撹拌した。塩素ガスをパイプを介し液体表面下にて5mg/secの速度で投入した。生成物をガスクロマトグラフィー/質量スペクトロメトリーにより分析した。(シクロ)脂肪族ヘキセンおよびヘキサジエンの全体に対し1モルおよび2モル当量の塩素を投入した後、ヘキサジエン(ジクロルヘキセンおよびテトラクロルヘキサンまで)および塩化アリル(1,2,3−トリクロルプロパンまで)の全塩素化を第1表に示す。
実施例2および3
供給物Aを400g/hおよび20℃にて垂直位置するガラス管反応器(直径4mm、長さ1m)の底部に連続供給した。
塩素ガスを0.92〜4.70g/hの速度で(シクロ)脂肪族ヘキセンおよびヘキサジエンの全体に対し0.6〜2.7のモル比になるよう反応器の底部へ、この底部から3cmに位置するガラスシンターの直下に設けて反応器の全断面に至る(微細ノズルを介して連続供給することにより塩素ガスを塩化アリル中にバブリングさせた。シンターの下および反応器頂部における反応器圧力はそれぞれ160〜180 kPaおよび大気圧とした。液体試料を反応器頂部から取出して、ガスクロマトグラフィーによりヘキサジエン(ジクロルヘキセンおよびテトラクロルヘキサンの合計)および塩化アリル(トリクロルプロパン)塩素化生成物の含有量につき分析した。全塩素化の結果をも第1表に示す。
実施例4
78重量%の塩化アリルと塩化アリルに対し0.33モル%の1,5−ヘキサジエンと全部で0.45モル%の(シクロ)脂肪族ヘキセンおよびヘキサジエンとを含有する粗塩化アリルを使用した以外は実施例2および3と同様にし、この供給物を先ず最初に蒸留してプロペンを除去した(供給物B)。全塩素化の結果をも第1表に示す。
実施例5
プロペンを除去した後に使用した粗生成物の塩化アリル含有量が80重量%であり、ヘキサジエン含有量が0.31モル%であり、全(シクロ)脂肪族ヘキセンおよびヘキサジエン含有量が0.44モル%である以外は実施例4と同様である(供給物C)。全塩素化の結果をも第1表に示す。さらに、変換された(ジクロルヘキセンおよびテトラクロルヘキサンまで)ヘキサジエンの生成物バランスを第2表に示す。
実施例6
供給物C(実施例5と同様)を400g/hにて垂直位置する鋼管反応器(直径4.4mm、長さ1m)の底部に連続供給した。塩素ガスを反応器の底部へ微細ノズルを介し(シクロ)脂肪族ヘキセンおよびヘキサジエンの全体に対し2.5のモル比にて連続供給した。反応器温度をオイルジャケットで制御した。反応器圧力は反応器出口における背圧調整器で制御した。液体試料を取出し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。種々異なる温度における全塩素化の結果を第3表に示す。
実施例1〜5から明らかなように、塩素化反応はほぼ全部のヘキサジエンが塩素化される点まで選択的である。
実施例6はより高温度における塩素化の効果を示す。
Figure 0003766436
Figure 0003766436
Figure 0003766436

Claims (7)

  1. 塩化アリルから(シクロ)脂肪族ヘキセンおよびヘキサジエン異性体を除去する方法であって、分子状塩素による塩素化工程を液相中で行うことを特徴とする上記方法。
  2. 必要に応じ不活性ガスと混合されたガス状塩素または不活性液に溶解された塩素を供給することにより塩素化を行うことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の方法。
  3. 塩素化を、−20〜120℃の温度および適用温度にて塩化アリルが液体であるよう確保するのに充分な圧力にて行うことを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の方法。
  4. 塩素化を20〜80℃の温度にて行うことを特徴とする請求の範囲第3項に記載の方法。
  5. 塩素化に使用する塩素の量が、粗塩化アリル中に最初に存在する(シクロ)脂肪族ヘキセンとヘキサジエンとの合計1モル当り1〜5モルであることを特徴とする請求の範囲第1〜4項のいずれか一項に記載の方法。
  6. 使用する塩素の量が、粗塩化アリル中に最初に存在する(シクロ)脂肪族ヘキセンおよびヘキサジエンの合計1モル当り1.5〜3.5モルであることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の方法。
  7. a. 粗塩化アリルを蒸留して軽質部分を除去し;
    b. 粗塩化アリル中に存在する(シクロ)脂肪族ヘキセンおよびヘキサジエン異性体を液相にて塩素化し;
    c. 粗塩化アリルを蒸留して重質部分を除去する
    ことを特徴とする請求の範囲第1〜6項のいずれか一項に記載の方法。
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