JP3765739B2 - ロータコア巻線方法および巻線機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータのロータ巻線方法および巻線機に関し、特に、小型モータにおけるロータへの巻線に好適なロータ巻線方法および巻線機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にモータのロータは、コアの隣り合うスロット間のティース部に夫々コイル状に巻線され、巻線の端部はコアと同軸に固定されたコミュテータの各セグメントから起立する端子(タング)に夫々が絡げられている。
【0003】
そして、コミュテータの各端子は、各セグメントから半径方向に突出し、コアの各スロットの円周方向の中央に位置されており、ロータの外径が充分に大きい場合には、各タング先端はスロットの底部より内側に位置して、スロットへの線材の巻回時においても、タングが巻線作業の支障になることはない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ロータの外径が小さい小型モータ、超小型モータにおいては、ロータ外径の縮小に伴いコアのスロット底部もシャフト内方に移行すると共にコミュテータも小型化される。
【0005】
一方、コミュテータのタングは、巻線の端部が巻付けられて絡げられるために所定の大きさを必要とし、その先端がスロットの底部よりも外径側に突出することがあり、スロット内に進入させて巻回される巻線と干渉する虞があった。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、コミュテータのタングとの干渉なく巻回可能なモータのロータ巻線方法および巻線機を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、巻線方法に係り、シャフトに固定したコアのスロット内に線材を巻線し、その端部を同一シャフト上に固定したコミュテータのタングに絡げるモータのロータ巻線方法において、前記シャフトのコミュテータ側の端部に係合可能であり且つ外周に切欠きを備え、巻線時はコミュテータの各タングを被う回転位置に回転され、巻線の端部をコミュテータのタングに絡げる際には、当該タングを切欠き内に露出させる回転位置に回転されるコミュテータカバーを設けると共に、前記シャフトのコミュテータ側とは反対側の端部を軸方向移動可能に支持すると共にシャフトをコミュテータ側に付勢し、コアの回転方向の割出を行う割出シャフトを設け、前記シャフトのコミュテータ側とは反対側の端部を割出シャフトに係合させた状態でコミュテータカバーをシャフトのコミュテータ側の端部に係合させてモータのロータを支持して、コアの巻線時および絡げる際における位置決めを行うことを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、巻線機に係り、シャフトに固定したコアのスロット内に線材を巻線し、その端部を同一シャフト上に固定したコミュテータのタングに絡げるモータのロータ巻線機において、前記シャフトのコミュテータ側とは反対側の端部軸方向移動可能に支持すると共にシャフトをコミュテータ側に付勢し、コアの回転方向の割出を行う割出シャフトと、前記割出シャフトに対向してシャフトのコミュテータ側の端部に係合することでコアの巻線時における支持および位置決めを行うと共に外周に切欠きを備え、コミュテータの各タングを被う回転位置とコミュテータの一部のタングを切欠き内に露出させる回転位置とに回転されるコミュテータカバーと、を設けたことを特徴とする。
【0010】
の発明は、第2の発明において、前記割出シャフトの先端には、前記シャフトに嵌合し、軸方向に移動可能であり且つ内蔵する付勢手段によりコア側に付勢されるスライダを備えていることを特徴とする。
【0011】
の発明は、第2の発明において、前記割出シャフトの先端外周には、コアのスロットに嵌合する割出ピンを設け、前記割出シャフトの回転によりコアを所定角度回転させてコアの割り出しを行うことを特徴とする。
【0012】
の発明は、第2ないし第の発明において、前記割出シャフトとコミュテータカバーとは、少なくとも二組設けられ、一組はコアのスロット部に線材を巻線する巻線機構に対面して位置し、他の一組はまだ巻線されていないロータおよび巻線済みのロータを貯留する受け渡し治具に対面して位置し、前記二組の割出シャフトとコミュテータカバーとは互いの位置が巻線機構の巻線完了とともに位置が変更されることを特徴とする。
【0013】
の発明は、第の発明において、前記受け渡し治具は、水平方向に若干移動可能にフローティング支持されたロータ保持具を備え、ロータ保持具に設けたシャフト挿入穴にロータのシャフトを挿入することでロータを支持することを特徴とする。
【0014】
【発明の効果】
したがって、第1および第2の発明では、シャフトのコミュテータ側の端部に係合可能であり且つ外周に切欠きを備え、巻線時はコミュテータの各タングを被う回転位置に回転され、巻線の端部をコミュテータのタングに絡げる際には、当該タングを切欠き内に露出させる回転位置に回転されるコミュテータカバーを設けると共に、前記シャフトのコミュテータ側とは反対側の端部を軸方向移動可能に支持すると共にシャフトをコミュテータ側に付勢し、コアの回転方向の割出を行う割出シャフトを設け、前記シャフトのコミュテータ側とは反対側の端部を割出シャフトに係合させた状態でコミュテータカバーをシャフトのコミュテータ側の端部に係合させてモータのロータを支持して、コアの巻線時および絡げる際における位置決めを行うようにしている。このため、コミュテータの取付け位置に誤差があっても保持位置に変化がなく、巻線時および絡げ時におけるロータの位置精度を向上できる。
また、巻線時はタングを被うことでタングと巻線との干渉が防止でき円滑に巻線できる一方、絡げ時にはタングが露出するため、容易に絡げ作業が行える。
【0016】
の発明では、第2の発明の効果に加えて、ロータのシャフトはスライダに嵌合し割出シャフトに軸方向移動可能に装着されるため、割出シャフトの割出動作に伴う軸方向の移動に際し、軸方向の相対移動がスライダと割出シャフトとの間で行われてロータのシャフトに傷が付く等の損傷が防止できる。
【0017】
の発明では、第2の発明の効果に加えて、割出シャフトの先端の割出ピンをロータのスロットに嵌合させて割出シャフトの回転によりコアを所定角度回転させてコアの割り出しを行うため、ロータ側に割り出しのために新たな機構を必要としない。
【0018】
の発明では、第2ないし第の発明の効果に加えて、前記割出シャフトとコミュテータカバーとは、巻線機構に対面する一組と、受け渡し治具に対面する一組との少なくとも二組が巻線完了とともに交互に位置交換するため、連続的にロータに巻線することができ、巻線の作業効率が向上できる。
【0019】
の発明では、第の発明の効果に加えて、受け渡し治具のロータのシャフトを挿入するシャフト挿入穴を備えたロータ保持具は、水平方向に若干移動可能にフローティング支持されているため、ロータのシャフトをシャフト挿入穴に挿入する際に心ずれが生じていても挿入作業が容易となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明を適用したモータのロータ巻線機の一例を示す全体斜視図であり、ベースとなるテーブル1の中央に位置してロータWを保持位置決めする位置決め治具2と、テーブル1の他方に配置され位置決め治具2に位置決めされたロータWに巻線する巻線機構3を備える。また、テーブル1の一方にあっては、供給されたロータWおよび巻線を完了したロータWをストックする受け渡し治具4と、受け渡し治具4と位置決め治具2との間でロータWを受け渡す受け渡し装置5とを備える。
【0021】
ここで、図2によりモータのロータWへの巻線構造について先ず説明する。図示するように、ロータWはシャフトW1にスペーサW2を介して固定されたコアW3を備え、コアW3は円周方向3箇所で開口するスロットW4を備えてスロットW4間に挟まれる3個のティース部W5を形成している。各ティース部W5の両側のスロットW4に線材をコイル状に巻線することでティース部W5が3個の極を形成する。
【0022】
そして、ティース部W5に巻回する前に巻線の端部を同じくシャフトW1に固定されたコミュテータW6のタングW7に絶縁被膜を剥離して絡げ、ティース部W5への巻線を完了した巻端も隣接するタングW7に絶縁被膜を剥離して絡げられる。そして、順次ティース部W5への巻線、巻線端部のタングW7の絡げを、コアW3を一周して行われる。前記コミュテータW6は、図示しない外部ブラシに接触するセグメントW8を備え、各セグメントW8から起立してタングW7が配置されている。前記コミュテータW6、および、コアW3はコミュテータW6側のシャフトW1の端部を基準として夫々規定された軸方向位置に固定されている。
【0023】
ロータWのコミュテータ側シャフトW1は、図示しないハウジングに軸受け支持され、出力側(図中下方部分)シャフトW1は、同じく図示しないハウジングに軸受け支持され、その先端をハウジング外に突出させて出力軸とされる。
【0024】
次に、図1により、巻線機の構造について説明する。
【0025】
前記位置決め治具2は、ロータWのコミュテータW6を覆ってシャフトW1に上方から係合するコミュテータカバー7と同じくロータWのシャフトW1に下方から係合する割出シャフト8とを同軸上に備えたロータ保持部6を、巻線機構3に対面して二組、受け渡し治具4に対面して二組の合計四組を備える。
【0026】
前記位置決め治具2は、テーブル1の下方に配置された図示しないインデックス機構により反転可能となっており、巻線機構3に対面する二組のロータ保持部6と受渡し治具4に対面する二組のロータ保持部6の位置を交互に変更できる。
【0027】
即ち、巻線機構3に対面している二組のロータ保持部6に保持されているロータWのコアW4に巻線機構3により巻線している間に、受渡し治具4に対面している二組のロータ保持部6に保持された巻線済みのロータWを受渡し装置5により離脱させて受渡し治具4へストックさせる。さらに、受け渡し治具4にストックされているまだ巻線されていないロータWを位置決め治具2の各ロータ保持部6に受け渡し装置5によりセットさせるよう作動する。
【0028】
また、巻線機構3に対面している二組のロータ保持部6に保持されているロータWに巻線機構3により巻線が完了したとき、インデックス機構により反転させて、巻線済みのロータWを受け渡し治具4に対面させる一方、まだ巻線されていないロータWを巻線機構3に対面させ、順次このインデックス作動を繰り返す。
【0029】
前記位置決め治具2におけるロータ保持部6の一方を構成するコミュテータカバー7は、図3にも示すように、治具本体10の上部フランジ11に昇降可能、且つ、回転可能に支持されている。
【0030】
即ち、コミュテータカバー7の上方への延長軸13が治具本体10の上端に設けた押えシリンダ14のピストンロッド15に連結されて、押えシリンダ14のピストンロッド15の伸縮により昇降される。その最下降位置は延長軸13にビス止めにより固定されたストッパ16が治具本体10のストッパ突起17に当接することで設定される。ストッパ16の取付け位置を調節することで最下降位置は調節可能となっている。また、延長軸13にはスプライン(若しくは、セレーション)結合18してプーリ19が摺動可能に嵌合し、プーリ19はカバー回転モータ20の出力軸21に結合したプーリ22にベルト23を介して連結され、カバー回転モータ20を回転させることでコミュテータカバー7は回転位置が位置決めされる。このコミュテータカバー7の回転は一個のカバー回転モータ20により前記二組のコミュテータカバー7が同期して回転し、コミュテータカバー7の昇降動作は各独立して配置した押えシリンダ14によりなされる。
【0031】
前記コミュテータカバー7は、図4(A)、(B)に示すように、コミュテータW6の各セグメントW8を、隙間を持って収容する収容穴24を備え、この収容穴24はロータWのシャフトW1の端部に係合している。また、コミュテータカバー7の外形は、上部でテーパ部25、下部で円筒部26となり、円周方向の一部分に上下方向に伸びる切欠部27が形成されている。コミュテータカバー7は、その回転位置に応じて、その下方に全てのタングW7を覆う図4(A)に示す状態とこの切欠き部27内に一つのタングW7を位置させて露出させる図5に示す状態とが選択できるようにしている。なお、図4においてスロットW4内に巻線されている線材Aの各端部は夫々にスロットW4に臨んでいるタングW7に絡げられるものであり、図5における線材Aは、タングW7に絡げられた後に巻線されたものを示している。
【0032】
図3に戻り、前記位置決め治具2におけるロータ保持部6の他方を構成する割出シャフト8は、治具本体10の下部フランジ12に昇降可能、且つ、回転可能に支持されている。即ち、割出シャフト8は下部フランジ12に設けたブッシュ29に支持され、割出シャフト8に設けたストッパ30が下部フランジ12に当接することで下降位置が規制される。そして、下部フランジ12を貫通した端部31と下部フランジ12との間に配置したスプリング32により下降位置に付勢され、スプリング32に対向して上昇されるとき、ストッパ30が下部フランジ12から離脱するよう構成されている。
【0033】
前記割出シャフト8の上部にはロータWのシャフトW1と係合するスライダ33が摺動自在に嵌合し、このスライダ33は割出シャフト8に内蔵するスプリング34で割出シャフト8から上方へ突出する方向に付勢され図示しないストッパで抜け出しを防止している。
【0034】
また、割出シャフト8の上端の外周には、上方に延長し、ロータWのコアW3のスロットW4に係合する割出ピン35が設けられている。割出シャフト8が下降位置に位置するときには、割出ピン35がロータWのコアW3から軸方向に離れてスロットW4との係合は解除されている。また、割出シャフト8がスプリング32に対向して上昇されるときには、割出ピン35がロータWのコアW3のスロットW4がある位置まで上昇してスロットW4と係合するようにしている。
【0035】
前記割出ピン35とスロットW4との係合時には、割出シャフト8が下端のクラッチ溝36を介して回転駆動されるとロータWを割出回転させる。この割出ピン35とスロットW4の係合時には、図6において点線で図示するように、割出シャフト8とロータWのコアW3との相対距離が短縮されるため、スライダ33は内蔵のスプリング34に抗してロータWのシャフトW1により割出シャフト8の内方に押込まれる。
【0036】
前記位置決め治具2により巻線機構3と対面しているロータ保持部6の下方のテーブル1内には、割出機構9が内蔵され、その割出軸38がテーブル1のブッシュ39を貫通して突出して割出シャフト8の下端のクラッチ溝36と係合される。
【0037】
前記割出機構9は、前記割出軸38の下端は昇降プレート40に回転自在に支持され、昇降プレート40に設けた割出モータ41の出力軸42に固定されたプーリ43と前記割出軸38の下端に固定したプーリ44との間にベルト45を掛け渡すことで、前記割出軸38の割出位置を割出モータ41で割り出すようにしている。
【0038】
前記割出軸38、割出モータ41は、昇降プレート40と共にテーブル1に設けたクラッチシリンダ46により上下に昇降される。即ち、クラッチシリンダ46が伸長すると昇降プレート40が下降され、割出モータ41、および、割出軸38を下降させる。また、クラッチシリンダ46が収縮してゆくとき、昇降プレート40が上昇され、割出モータ41と共に割出軸38が上昇し、割出軸38はテーブル1からの突出量を増加させ、位置決め治具2の割出シャフト8下端のクラッチ溝36に係合する。そして、さらに上昇されて割出シャフト8の割出ピン35がロータWのコアW3のスロットW4に係合するとき、割出モータ41の回転が割出シャフト8を介してロータWの回転位置を割出可能となる。
【0039】
なお、図示していないが、位置決め治具2の巻線機構3に対面している二個のロータ保持部6の割出シャフト8に係合する二本の割出軸38および割出軸38に固定したプーリ44を昇降プレート40に回転可能に支持しており、一個の割出モータ41による二個の割出軸38の割出作動、および、クラッチシリンダ46による割出軸38の昇降作動を同期させている。
【0040】
図1に戻り、前記巻線機構3は、巻線ヘッド48と、巻線ヘッド48に回転可能となり線材を繰出す一対のノズル49と、巻線ヘッド48をXYZ方向に移動させる3軸移動機構50とにより構成されている。前記一対のノズル49は、前記一対のロータ保持部6で位置決めされた一対のロータWに対応するように位置されている。また、ノズル49は、巻線ヘッド48に夫々回転可能な巻線軸48Aに偏心して配置され、巻線軸48Aが左右で同期して回転することでノズル49を旋回させて繰出したコイル材を各々ロータWのコアW3のスロットW4間のティース部W5に巻回可能としている。
【0041】
前記3軸移動機構50は、テーブルの他方に左右方向(テーブル1の縁に沿う方向)のXスライダ駆動機構50Aと、Xスライダ駆動機構50A上において上下方向のZスライダ駆動機構50Bと、Zスライダ駆動機構50B上において前後方向(テーブル1の縁に対して直角な方向であり、ワークWへの接近離脱方向となる)のYスライダ駆動機構50Cとから構成される。この3軸移動機構50は、前記巻線ヘッド48の巻線軸48Aにより旋回移動するノズル49の移動軌跡をコアW3のスロットW4に沿わせるよう巻線軸48Aと同期して巻線ヘッド48を移動させる。
【0042】
前記受け渡し治具4は、テーブル1の一方側に位置され、図7、8に示すように、テーブル1に固定された受台52と、受台52に載せられシャフト挿入穴54により加工前および加工後のロータWを保持するロータ保持具53とにより構成されている。前記ロータ保持具53のシャフト挿入穴54には、図9に示すように、ロータWのシャフトW1が挿入される。
【0043】
前記シャフト挿入穴54にシャフトW1が挿入されたロータWは、一個のスロットW4の外周上の隙間に、ロータ保持具53に配置した位置決めピン54Aを係合させることで、その回転方向の位置を揃えて位置決めされる。即ち、まだ巻線されていないロータWをロータ保持具53にセットする際に、位置決めピン54Aにより回転方向の位置決めがなされ、位置決め治具2へ受け渡される場合にも、所定回転位置が保持された状態で割出シャフト8のスライダ33の挿入穴33Aに挿入される。位置決め治具2においては、治具本体10から出没する図示しない爪が一部のスロットW4の外周の隙間に係合することでロータWの回転方向の位置が保持される。
【0044】
前記受台52のロータ保持具53との接触面(支持面でもある)55には、多数の穴56が形成され、これらの穴56から圧縮空気を噴出させることによってロータ保持具53をフローティング支持し、ロータ保持具53が横方向にずれて移動しないように移動止め57を前後左右に備える。この移動止め57によりロータ保持具53の横方向への移動は阻止されるものであるが、シャフト挿入穴54とロータWのシャフトW1との相対位置が若干ずれていても両者の嵌合が達成できる隙間を移動止め57とロータ保持具53との間に設けている。したがって、この隙間分だけロータ保持具53が横方向に移動できるようにしている。そして、前記穴56から圧縮空気を噴出させるよう、穴56の下方に圧縮空気の通路58が形成され、通路58の一方に圧縮空気を導入するホース59が、通路58の他方に圧縮空気を戻すホース60が夫々配置されている。なお、前記穴56は、図8に示すように、左右一列に配置し、ロータ保持具53を断面「コ」字状に形成すると、左右が一様にフローティングでき、また、少ない圧縮空気でフロッティングできるように、材料、肉抜き形状等は種々選択される。
【0045】
図1に戻り、前記受け渡し装置5は、テーブル1上の位置決め治具2と受け渡し治具4との間に配置され、ロータWのコアW3を把持可能に開閉するフィンガ63を備えるコアチャック62と、コアチャック62を位置決め治具2若しくは受け渡し治具4に振り向ける反転シリンダ64と、コアチャック62のXYZ方向へ位置移動させる3軸移動装置65とから構成されている。
【0046】
テーブル1上に配置された3軸移動装置65は、Y軸方向(位置決め治具2、または、受け渡し治具4に接近離脱方向)に移動可能なYスライド駆動機構65Aと、Yスライド駆動機構65A上にあってY方向に直交する平面方向に移動可能なXスライド駆動機構65Bと、Xスライド駆動機構65B上にあって上下方向に移動可能なZスライド駆動機構65Cとから構成され、Zスライド駆動機構65Cの上に反転シリンダ64を備えている。
【0047】
前記受け渡し装置5は、受け渡し治具4上のロータWを位置決め治具2に受け渡す場合においては、反転シリンダ64によりコアチャック62を受け渡し治具4に反転させ、フィンガ63を開きつつ3軸移動装置65を作動させて目的とするロータWにフィンガ63を位置決めしてロータWを把持させる。次いで、3軸移動装置65により持ち上げ、反転シリンダ64によりコアチャック62を位置決め治具2に対面させ、目的とするロータ保持部6の割出シャフト8のスライダ33の挿入穴33AにシャフトW1を挿入し把持を解除して搬送を完了する。位置決め治具2のロータ保持部6にあるロータWを受け渡し治具4に搬送する場合も同様に作動する。
【0048】
上記構成の巻線機の作動について、以下に説明する。受け渡し治具4に対面している二組のロータ保持部6においては、割出シャフト8はスプリング32により下方に付勢されてストッパ30が下部フランジ12に当接しており、コミュテータカバー7は押えシリンダ14により下方へ付勢されて延長軸13のストッパ16がストッパ突起17に当接して位置しており、両者間に前回の工程での巻線済みのロータWが保持されている。
【0049】
また、巻線済みのロータWはコミュテータカバー7の収容穴24にシャフトW1上端およびコミュテータW6のセグメント部W8が収容され、下部のシャフトW1は割出シャフト8のスライダ33の挿入穴33Aに挿入された状態となっている。
【0050】
他方、巻線機構3に対面している二組のロータ保持部6においては、コミュテータカバー7が押えシリンダ14により下方へ付勢されて延長軸13のストッパ16がストッパ突起17に当接した下端位置に位置している。また、割出シャフト8はテーブル1下方からクラッチシリンダ46により上方に突出された割出機構9の割出軸38の先端にクラッチ溝36を介して係合され、そのストッパ30が下部フランジ12から離間され、割出ピン35の先端がロータWのコアW3の一つのスロットW4に係合して残りのスロットW4間のティース部W5が巻線機構3に正対された状態となっている。
【0051】
次に、受け渡し治具4に対面しているロータ保持部6の作動を、巻線済みのロータWの受け渡し治具4への搬送作動と、受け渡し治具4からまだ巻線されていないロータWのロータ保持部6への搬送作動について説明する。
【0052】
先ず、押えシリンダ14によりロータWのコミュテータW6およびシャフトW1上端からコミュテータカバー7を上昇させて、ロータWを割出シャフト8のスライダ33から抜き出し可能とする。次いで、受け渡し装置5のフィンガ63を開き、3軸移動装置65および反転シリンダ64によって割出シャフト8に支持されたロータWを把持できるよう移動させ、フィンガ63によりロータWを把持し、割出シャフト8のスライダ33から引き抜く。そして、反転シリンダ64および3軸移動装置65により受け渡し治具4のシャフト挿入穴54に挿入し、フィンガ63を開放することでロータWの受け渡し治具4への搬送がなされる。受け渡し治具4の位置決めピン54Aは、ロータWのスロットW4の外周側の隙間に係合することでロータWの回転方向の位置決めが行われる。
【0053】
上記ロータWのシャフトW1の受け渡し治具4のシャフト挿入穴54への挿入、および、ロータWのスロットW4の隙間と位置決めピン54Aとの係合は、受け渡し治具4のロータ保持具53が受台52に対して圧縮空気によりフローティングされて水平方向に若干移動可能であるため、シャフトW1とシャフト挿入穴54との心ずれがあっても、また、スロットW4と位置決めピン54Aとのずれがあっても、ロータ保持具53が前記ずれを吸収するよう横方向に移動し、ロータWのシャフトW1はスムーズにシャフト挿入穴54に挿入することができる。
【0054】
次いで、受け渡し治具4にストックされているまだ巻線されていないロータWに受け渡し装置5のフィンガ63を移動させ、該当するロータWをフィンガ63により把持し、3軸移動装置65によりシャフトW1をシャフト挿入穴54から引き抜く。この場合においても、フィンガ63の把持位置とロータWのシャフトW1との心が厳密に一致していなくとも、受け渡し治具4のロータ保持具53がフローティングされて水平方向に移動可能であるため、ロータ保持具53が横方向に前記心ずれを吸収するように移動し、ロータWのシャフトW1をスムーズにシャフト挿入穴54から引き抜くことができる。そして、反転シリンダ64および3軸移動装置65により位置決め治具2のロータ保持部6の割出シャフト8のスライダ33のシャフト挿入穴33Aに挿入し、フィンガ63を開放することでロータWの位置決め治具2への搬送がなされる。このロータWの挿入状態においても、治具本体10から出没する図示しない爪がロータWのスロットW4の隙間に係合することで、ロータWの回転方向の位置決めがなされる。
【0055】
位置決め治具2は、割出シャフト8のスライダ33のシャフト挿入穴33Aに挿入されたロータWに対し、ロータ保持部6のコミュテータカバー7を押えシリンダ14により下降させ、コミュテータカバー7の収容穴24内にコミュテータW6のセグメントW8、および、上端に突出しているシャフトW1を収容し、且つ、コミュテータW8のタングW7はコミュテータカバー7の下方に位置させ、さらに、下降させて延長軸13のストッパ16をストッパ突起17に当接させる。
【0056】
この状態においては、ロータWの下方のシャフトW1はスライダ33と一体となって内蔵のスプリング34に抗して割出シャフト8に押込まれて停止し、ロータWの巻線位置(上下方向位置)の位置決めがなされる。
【0057】
他方、巻線機構3に対面している二組のロータ保持部6においては、図10に示すように、ロータWは割出ピン35の先端がコアW3の巻線機構3から遠く離れた一つのスロットW4に係合して残りのスロットW4間のティース部W5が巻線機構3に正対された状態となっており、この状態で、位置決め治具2の治具本体10側から突出する図示しない爪を、割出ピン35が係合しているスロットW4に係合してロータWの回り止めが行なわれる。
【0058】
回り止めしたロータWに対し、コミュテータカバー7がカバー回転モータ20により旋回され、巻線機構3に正対するティース部W5の一方のスロットW4に位置するタングW7を図5に示すように切欠き部26内に露出させる。次いで、巻線機構3のノズル49から絶縁被膜が剥離された線材を繰出しつつ、巻線機構3の3軸移動機構50によりノズル49をタングW7回りに旋回させて線材AをタングW7に絡げる。
【0059】
次いで、コミュテータカバー7の旋回位置をカバー回転モータ20により図4(A)の位置に戻し、スロットW4間のティース部W5に巻線機構3の巻線軸48Aによりノズル49を旋回させつつ線材Aを繰出し両側のスロットW4に跨って線材を巻線し、ティース部W5回りに巻線する。
【0060】
この巻回時に3軸移動機構50は、巻線軸48Aにより旋回移動するノズル49の移動軌跡が、コアW3の両側のスロットW4の方向に沿うようノズル49の位置調整を行う。この線材の巻回において、線材は、スロットW4からスロットW4へ移るコイルエンド部分の巻回において、コミュテータカバー7のテーパ部25、および、円筒部26にガイドされ、その下方に位置するコミュテータW6のタングW7とは干渉せずに巻回できる。
【0061】
所定回数の巻回が完了すると、再び、カバー回転モータ20によりコミュテータカバー7をティース部W5の他方のスロットW4に位置するタングW7を切欠き部27内に露出させ、巻線機構3のノズル49から絶縁被膜が剥離された線材部分を繰出しつつ、巻線機構3の3軸移動機構50によりノズル49をタングW7回りに旋回させて線材をタングW7に絡げる。
【0062】
一つのティース部W5回りへの巻線が完了すると、ロータWの回転位置が所定角度(例えば、120度)回転されて、隣接するティース部W5の両側のスロットW4に巻線がなされる。この場合に、割出シャフト8によりロータWを回動させる割出旋回と割出シャフト8の割出ピン35を巻線時に巻線機構3と離反するスロットW4へ挿入する空旋回とを必要とし、その順序は任意である。
【0063】
ここでは、割出旋回を行った後に空旋回を行わせるものについて説明する。先ず、位置決め治具4の治具本体10から突出する図示しない爪をスロットW4から後退させ、割出シャフト8を割出機構9により所定角度(例えば、120度)回転させ、隣接するティース部W5を巻線機構3に正対させる。
【0064】
次いで、巻線機構3とは反対の治具本体10側に位置するスロットW4に治具本体側10から突出する図示しない爪を当該スロットW4へ係合させてコアW3の巻線位置(旋回方向)の位置出しを行う。
【0065】
次いで、割出シャフト8を割出機構9のクラッチシリンダ46で下方に後退させて割出ピン35とスロットW4との係合を離脱させ、割出機構9により割出シャフト8を前回とは反対の方向(戻す方向)に前記所定角度旋回(空旋回)させ、割出機構9のクラッチシリンダ46により上昇させて前記爪が係合しているスロットW4に割出ピン35を係合させて隣接するティース部W5への巻線の準備が完了する。
【0066】
そして、前回と同様に、巻線機構3により隣接するティース部W5両側のスロットW4への巻線がなされる。この巻線が終了すると、コミュテータカバー7が同様に旋回されて、コミュテータW6のセグメントW8から立設する新たなタングW7に絶縁被膜が剥離された線材部分が絡げられる。そして、ロータWの巻線位置への旋回が同様に割出シャフト8および割出機構9により行われ、新たなティース部W5両側のスロットW4に線材が巻回される。その端部の絶縁被膜を剥離した線材部分をコミュテータカバー7から露出させたタングW7に絡げて、ロータWへの巻線が終了し、割出機構9の割出軸38はクラッチシリンダ46により下降され、割出シャフト8との係合が離脱する。
【0067】
全てのティース部W5に巻線がなされ、全てのタングW7に絡げられると、巻線動作は終了し、位置決め治具2がインデックス機構により旋回され、新たに、受け渡し治具4とのロータWの受け渡しと、巻線機構3による巻線動作が行われる。
【0068】
本実施の態様においては、以下に記載する作用効果を奏することができる。即ち、ロータWのシャフトW1のコミュテータW6側を支持し外周に切欠き27を備えてコミュテータカバー7を構成し、巻線時はコミュテータW6の各タングW7を覆う回転位置としてスロットW4内に線材を巻線し、巻線の端部をコミュテータW6のタングW7に絡げる際には当該タングW7を切欠き27内に露出させる回転位置として切欠き27により露出されたタングW7に巻線の端部を絡げるようにしたため、巻線時はタングW7を被うことでタングW7と巻線との干渉が防止でき円滑に巻線できる一方、絡げ時にはタングW7が露出するため、容易に絡げ作業が行える。
【0069】
また、コミュテータカバー7はシャフトW1端部に係合してロータWの巻線時の位置決めを行うため、上記シャフトW1の端部位置を基準として配置されるコミュテータW6およびコアW3に対して巻線時および絡げ時におけるロータWの位置精度を向上できる。
【0070】
さらに、ロータWのシャフトW1はスライダ33に嵌合し割出シャフト8に軸方向移動可能に装着されるため、割出シャフト8の割出動作に伴う軸方向の移動に際し、軸方向の相対移動がスライダ33と割出シャフト8との間で行われてロータWのシャフトW1に傷が付く等の損傷が防止できる。
【0071】
前記割出シャフト8は、その先端の割出ピン35をロータWのスロットW4に係合させて割出作動するものであるため、ロータ側に割出のために新たな機構を必要としない。
【0072】
また、前記割出シャフト8とコミュテータカバー7とは、巻線機構3に対面する一組と、受け渡し治具4に対面する一組との少なくとも二組が巻線完了とともに交互に位置交換するため、連続的にロータWに巻線することができ、巻線の作業効率が向上できる。
【0073】
そして、受け渡し治具4のロータWのシャフトW1を挿入するシャフト挿入穴54を備えたロータ保持具53は、水平方向に若干移動可能にフローティング支持されているため、ロータWのシャフトW1をシャフト挿入穴54に挿入する際に心ずれが生じていても挿入作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すモータのロータ巻線機の一例を示す全体斜視図。
【図2】モータのロータの構造を示す斜視図。
【図3】ロータ保持部および割出機構の詳細を示す断面図。
【図4】コミュテータカバーの作動状態を示す平面図(A)、および、側面図(B)。
【図5】コミュテータカバーの別の作動状態を示す平面図。
【図6】割出シャフトとロータのシャフトとの相対関係を示す拡大図。
【図7】受け渡し治具を示す斜視図。
【図8】受け渡し治具をロータ保持具と受け台とに分離して示す斜視図(A)、および、受台の断面図(B)。
【図9】受け渡し治具のロータのシャフト挿入穴を示す断面図。
【図10】ロータ保持部および割出機構の動作状態を示す断面図。
【符号の説明】
W ロータ(ワーク)
W1 シャフト
W3 コア
W4 スロット
W5 ティース部
W6 コミュテータ
W7 タング
1 テーブル
2 位置決め治具
3 巻線機構
4 受け渡し治具
5 受け渡し装置
6 ロータ保持部
7 コミュテータカバー
8 割出シャフト
9 割出機構
10 治具本体
14 押えシリンダ
20 カバー回転モータ
33 スライダ
33A 挿入穴
35 割出ピン
38 割出軸
41 割出モータ
46 クラッチシリンダ
48 巻線ヘッド
49 ノズル
50、65 3軸移動機構
52 受台
53 ロータ保持具
54 シャフト挿入穴
56 穴
58 通路
59、60 ホース
62 コアチャック
63 フィンガ
64 反転シリンダ

Claims (6)

  1. シャフトに固定したコアのスロット内に線材を巻線し、その端部を同一シャフト上に固定したコミュテータのタングに絡げるモータのロータ巻線方法において、
    前記シャフトのコミュテータ側の端部に係合可能であり且つ外周に切欠きを備え、巻線時はコミュテータの各タングを被う回転位置に回転され、巻線の端部をコミュテータのタングに絡げる際には、当該タングを切欠き内に露出させる回転位置に回転されるコミュテータカバーを設けると共に、
    前記シャフトのコミュテータ側とは反対側の端部を軸方向移動可能に支持すると共にシャフトをコミュテータ側に付勢し、コアの回転方向の割出を行う割出シャフトを設け、
    前記シャフトのコミュテータ側とは反対側の端部を割出シャフトに係合させた状態でコミュテータカバーをシャフトのコミュテータ側の端部に係合させてモータのロータを支持して、コアの巻線時および絡げる際における位置決めを行うことを特徴とするモータのロータ巻線方法。
  2. シャフトに固定したコアのスロット内に線材を巻線し、その端部を同一シャフト上に固定したコミュテータのタングに絡げるモータのロータ巻線機において、
    前記シャフトのコミュテータ側とは反対側の端部軸方向移動可能に支持すると共にシャフトをコミュテータ側に付勢し、コアの回転方向の割出を行う割出シャフトと、
    前記割出シャフトに対向してシャフトのコミュテータ側の端部に係合することでコアの巻線時における支持および位置決めを行うと共に外周に切欠きを備え、コミュテータの各タングを被う回転位置とコミュテータの一部のタングを切欠き内に露出させる回転位置とに回転されるコミュテータカバーと、を設けたことを特徴とするモータのロータ巻線機。
  3. 前記割出シャフトの先端には、前記シャフトに嵌合し、軸方向に移動可能であり且つ内蔵する付勢手段によりコア側に付勢されるスライダを備えていることを特徴とする請求項2に記載のモータのロータ巻線機。
  4. 前記割出シャフトの先端外周には、コアのスロットに嵌合する割出ピンを設け、前記割出シャフトの回転によりコアを所定角度回転させてコアの割り出しを行うことを特徴とする請求項2に記載のモータのロータ巻線機。
  5. 前記割出シャフトとコミュテータカバーとは、少なくとも二組設けられ、一組はコアのスロット部に線材を巻線する巻線機構に対面して位置し、他の一組はまだ巻線されていないロータおよび巻線済みのロータを貯留する受け渡し治具に対面して位置し、前記二組の割出シャフトとコミュテータカバーとは互いの位置が巻線機構の巻線完了とともに位置が変更されることを特徴とする請求項2ないし請求項のいずれか一つに記載のモータのロータ巻線機。
  6. 前記受渡し治具は、水平方向に若干移動可能にフローティング支持されたロータ保持具を備え、ロータ保持具に設けたシャフト挿入穴にロータのシャフトを挿入することでロータを支持することを特徴とする請求項に記載のモータのロータ巻線機。
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