JP3764857B2 - 被測定面の局所的変形検出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば、自動車の車体パネルに生じる面歪不具合のうち、局所的に生じている変形(局所的変形)のみを正確に認識できるようにするための被測定面の局所的変形検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車パネルに発生する面形状不良の1つに面歪不具合がある。一般的に、面歪不具合には、自動車パネルのほぼ全域に渡って生じている、「そり」、「ねじれ」に代表される大域的変形と、自動車パネルに局所的に生じている、局所的変形がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来、面歪不具合の発生の認識は、大域的変形と局所的変形とを分離することなく行っていたために、規定値を満たさない面歪不具合が発生していることはわかるものの、それぞれの変形の定量的な評価をすることができなかった。このため、自動車のパネルにどの程度の「そり」、「ねじれ」などの大域的変形が含まれているのか、また、どの程度の局所的変形があるのかが明確に把握できず、その面歪不具合を解消するための最適なフィードバック(特に、局所的変形に対して)を各工程に与えることができなかった。
【0004】
本発明は、以上のような従来の問題点を解決するために成されたものであり、自動車の車体パネルに生じる面歪不具合のうち、局所的に生じている変形(局所的変形)のみを正確に認識できるようにするための被測定面の局所的変形検出方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1に記載の発明にかかる被測定面の局所的変形検出方法は、三次元形状測定装置によって実測された、またはシミュレーション装置に記憶されている、被測定面のデータに基づいて得られた点群データを取得する段階と、前記点群データを構成する点群の各点を相互に結んで測定点近似メッシュを生成する段階と、前記測定点近似メッシュを構成する各点のデータとCAD装置にあらかじめ記憶されている前記被測定面のデータに基づいて得られた各点のデータとから各点ごとの誤差を演算する段階と、前記測定点近似メッシュを構成する点群の各点をあらかじめ定められた形状の二次元平面に写像する段階と、前記二次元平面に写像された測定点近似メッシュの各点に、演算された誤差を加えて差分曲面を生成する段階と、前記差分曲面を低次元の曲面で近似して大域的変形の要素だけを含んだ曲面を生成する段階と、前記差分曲面から前記大域的変形の要素だけを含んだ曲面を差し引いて、局所的変形の要素だけを含んだ曲面を生成する段階と、を有することを特徴とする。
【0006】
この請求項1に記載の発明によれば、三次元形状測定装置によって実測された、またはシミュレーション装置に記憶されている、被測定面のデータに基づいて得られた点群データとCAD装置にあらかじめ記憶されている前記被測定面のデータに基づいて得られた点群データとから差分曲面を生成し、その差分曲面から大域的変形の要素だけを含んだ曲面を差し引いて、局所的変形の要素だけを含んだ曲面を生成するようにしたので、局所的変形の状態を容易に認識することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明にかかる被測定面の局所的変形検出方法は、請求項1に記載の被測定面の局所的変形検出方法において、さらに、局所的変形の要素だけを含んだ曲面に基づいて前記被測定面の面歪状態を可視化する段階を有することを特徴とする。
【0008】
この請求項2に記載の発明によれば、被測定面の面歪状態が可視化されるので、被測定面に局所的に生じている変形(局所的変形)のみが正確に認識できるようになる。
【0009】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、三次元形状測定装置によって実測された、またはシミュレーション装置に記憶されている、被測定面のデータに基づいて得られた点群データとCAD装置にあらかじめ記憶されている前記被測定面のデータに基づいて得られた点群データとから差分曲面を生成し、その差分曲面から大域的変形の要素だけを含んだ曲面を差し引いて、局所的変形の要素だけを含んだ曲面を生成するようにしたので、局所的変形の状態を容易に認識することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、被測定面の面歪状態が可視化されるので、局所的に生じている変形(局所的変形)のみが正確に認識できるようになる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる被測定面の局所的変形検出方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態においては、三次元形状測定装置から得られた実測データを例に説明するが、シミュレーション装置に記憶されているデータに対しても本発明の適用は可能である。
【0012】
図1は、本発明の被測定面の局所的変形検出方法を実施するために用いられる、被測定物の形状を実測する三次元形状測定装置の外観図である。
【0013】
この三次元形状測定装置は、測定機100とデータ管理装置150とを備えている。測定機100の測定台105上には、被測定物である車体パネル(図示せず)がしっかりと固定されて載置される。固定された車体パネルに対して測定アーム110を前後左右上下に動かし、測定アーム110の先端に取り付けられているプローブ115を車体パネルの表面に当てる。この状態でデータを取り込む指示を与えると、プローブ115の先端の座標(車体パネルとプローブ先端との接触位置座標)がデータ管理装置150に送られる。
【0014】
以上の操作を、車体パネルの表面の全面に対して5から10mm間隔で実施する。データ管理装置150には、以上の操作で送られた何十万点という座標データ(車体パネル表面の座標データ)が記憶される。この記憶された車体パネルのデータが、「実測された被測定面の点群データ」である。
【0015】
図2は、本発明の被測定面の局所的変形検出方法を実施する装置の概略構成を示すブロック図である。この装置は、データ管理装置150、CAD装置200、局所的変形検出装置250によって構成される。
【0016】
CAD装置200は、三次元形状測定装置によって実測された車体パネルと同一の車体パネルの設計データが記憶されている。この設計データは、通常ソリッドモデルを形成する連続的なデータであり、このデータに基づいて点群データが生成される。この生成されたデータが、「CAD装置にあらかじめ記憶されている被測定面のデータに基づいて得られた点群データ」である。
【0017】
局所的変形検出装置250は、実測された車体パネルの点群データをデータ管理装置150から入力するとともに、CAD装置200に記憶されているその車体パネルの各点のデータを入力し、両データから差分曲面を生成し、その差分曲面から大域的変形の要素だけを含んだ曲面を差し引いて、局所的変形の要素だけを含んだ曲面を生成し、その曲面を可視化して表示させるための装置である。
【0018】
つぎに、本発明にかかる被測定面の局所的変形検出方法を詳細に説明する。この検出方法は、図3に示すフローチャートに基づいて局所的変形検出装置250内で行われる。
【0019】
局所的変形検出装置250は、実測された車体パネルの点群データをデータ管理装置150から取得する。実測された車体パネルの点群データは、実際にプレスされた車体パネルから得られた測定データである(S301)。
【0020】
つぎに、局所的変形検出装置250は、取得した点群データを構成する点群の各点を相互に結んで測定点近似メッシュを生成する。測定点近似メッシュの生成は、公知のメッシュ生成アルゴリズムを用いる。このメッシュ生成アルゴリズムの1例を説明する。このメッシュ生成アルゴリズムは次の8つのステップから成る。
【0021】
▲1▼ まず、局所的変形検出装置250は、取得した点群に含まれるすべての点を、線分の長さの総和が最小となるように線でつなぎ、EMSTグラフを作成する。本実施の形態では、曲面を近似するための点群の密度が十分に高ければこの線分は曲面を近似する三角形の稜線となると仮定している。
【0022】
▲2▼ そして、EMSTグラフのノード間を連結する。
【0023】
▲3▼ EMSTグラフ内で、リング形状(線分の連結が閉じているもの)とパス形状(線分の連結が閉じていないもの)を検出する。
【0024】
▲4▼ つぎに、EMSTグラフ内のコンポーネントを分割する。入力点数が2以上のコンポーネントから構成されている場合、コンポーネント間は必ず1つの線分で連結されている。このステップでは、この線分を削除し、コンポーネントの抽出を行う。
【0025】
▲5▼ リング形状になり得るパス形状を検出し、リングに変換する。
【0026】
▲6▼ EMSTグラフ内に平行な稜線があり、これらが四角形を形成していなければ、四角形を形成するようにノードを連結させる。
【0027】
▲7▼ ワイヤーフレームを三角形で埋める。
【0028】
▲8▼ もし、穴が存在すればこれも三角形で埋める(S302)。
【0029】
そして、局所的変形検出装置250は、測定点近似メッシュを構成する各点のデータとCAD装置にあらかじめ記憶されている被測定面のデータに基づいて得られた各点のデータとから各点ごとの誤差を演算する。具体的には、測定点近似メッシュの各頂点をCADデータ上に投影して、各頂点がCADデータに対してどちらの方向にどれだけずれているのかを示す誤差ベクトルを演算する。なお、測定点近似メッシュの各頂点をCADデータ上に投影するに当たって、測定点近似メッシュの座標系とCADデータの座標系とを合わせておく(S303)。
【0030】
局所的変形検出装置250は、測定点近似メッシュを構成する点群の各点をあらかじめ定められた形状の二次元平面に写像する。この写像は、公知の、三次元上のトポロジー的に円盤と等価な三次元メッシュを二次元メッシュにハーモニック写像する手法を用いる。たとえば、測定点近似メッシュが図4(A)のウサギの形状であった場合、これのA、B、C、Dの位置と正方形の二次元平面のコーナーのA、B、C、Dの位置とを合わせて測定点近似メッシュの写像(三次元から二次元への写像)を行うと、同図(B)のようになる。また、測定点近似メッシュが図5(A)の牛の首の形状であった場合、これのA、B、C、Dの位置を正方形の二次元平面のA、B、C、Dの位置に合わせて写像すると、同図(B)のようになる。なお、ハーモニック写像は、まず境界部の写像を行い、つぎに境界内部の点の写像を行うという手順で行われる。このハーモニック写像は公知であるので、その手順についての詳細な説明は省略する(S304)。
【0031】
つぎに、局所的変形検出装置250は、二次元平面に写像された測定点近似メッシュの各点に、演算された誤差を加えて差分曲面を生成する。すなわち、測定点近似メッシュの各頂点にCADデータに対する誤差ベクトルを加えて複合差分データを生成し、この複合差分データに基づいて差分曲面を生成する。複合差分データは、(X,Y,Error)から成るデータである。なお、XはX座標を、YはY座標を、ErrorはZ方向のCADデータとの誤差である。したがって、差分曲面は、Errorの大きさに応じて部分的に高さの異なる二次元平面となる。
【0032】
たとえば、車体パネルの取っ手取り付け部分周辺の点群データからは、図6に示すような測定点近似メッシュが得られる。この場合、トポロジー的に円盤と等価なデータのみが処理の対象となるので、図6のような穴などが存在する点群では、メッシュを構築する際に穴を充填する処理が必要となる。したがって、最終的に得られる測定点近似メッシュは、穴の内部に円盤と等価なメッシュが張られた図7に示すようなものとなる。
【0033】
この測定点近似メッシュを正方形の二次元平面にハーモニック写像すると、図8に示すような図形が得られる。この図形を構成する各点に、CADデータとの誤差から演算された複合差分データを加えると、図9に示してあるような複合差分曲面が得られる。この複合差分曲面は実測された被測定面の点群データとCAD装置にあらかじめ記憶されている前記被測定面の点群データとの差分から得られる曲面であるので、大域的変形と局所的変形とが混在している曲面である(S305、S306)。
【0034】
つぎに、局所的変形検出装置250は、複合差分曲面を低次元の曲面で近似して大域的変形の要素だけを含んだ曲面を生成する。すなわち、図9に示した複合差分曲面を低次元の曲面(一次双曲面または二次双曲面)で近似する。たとえば、図9の複合差分曲面を二次双曲面で近似すると、その結果得られる曲面は図10のような曲面となる。複合差分曲面を二次双曲面で近似すると、その複合差分曲面に含まれていた大域的な「そり」や「ねじれ」の成分を表すことができる。したがって、図10に示されている曲面は、図9の複合差分曲面に含まれていた「そり」や「ねじれ」の成分からなる曲面である(S307)。
【0035】
局所的変形検出装置250は、複合差分曲面から前記大域的変形の要素だけを含んだ曲面を差し引いて、局所的変形の要素だけを含んだ曲面を生成する。すなわち、図9の複合差分曲面から図10の曲面を差し引いて、図11に示すような局所的変形のみから成る曲面を生成する(S308)。
【0036】
最後に、局所的変形検出装置250は、最終的に生成された図11の曲面から(X,Y,Error)形式の三次元メッシュを生成し、その等高線を表示すると、図12に示すような画像を得ることができる。この画像は、局所的変形の要素だけを含んだ曲面に基づいて車体パネルの取っ手取り付け部分周辺の面歪状態を可視化したものである。
【0037】
なお、図13に示す画像は、大域的な「そり」や「ねじれ」の成分が含まれている図9の複合差分曲面に基づいて、車体パネルの面歪状態を可視化するための処理を行い、この結果を、図示さされていないディスプレイに表示したものである。したがって、この画像には、大域的変形と局所的変形とが含まれている。
【0038】
図12と図13の画像を比較してみれば明らかなように、図13の画像には左上が正方向に右上が負方向に偏向している部分(反り、ねじれに相当する部分)があるが、図12の画像では、その偏向が取り除かれていることが良くわかる。
【0039】
なお、本発明にかかる被測定面の局所的変形検出方法のアルゴリズムは、あらゆる種類のCADシステム、シュミレーションソフトウェアのポストプロセッサに導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するために用いる三次元形状測定装置の外観図である。
【図2】本発明の被測定面の局所的変形検出方法を実施する装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の被測定面の局所的変形検出方法を示すフローチャートである。
【図4】ハーモニック写像の手法の説明に供する図である。
【図5】ハーモニック写像の手法の説明に供する図である。
【図6】測定点近似メッシュの一例を示す図である。
【図7】差分曲面の生成手法の説明に供する図である。
【図8】差分曲面の生成手法の説明に供する図である。
【図9】実際に得られた差分曲面の一例を示す図である。
【図10】図9に示した差分曲面を低次元の曲面で近似した結果得られた曲面である。
【図11】局所的変形のみが含まれる曲面を示す図である。
【図12】本発明の方法によって得られた評価結果を示す図である。
【図13】本発明の方法によって得られた評価結果を示す図である。
【符号の説明】
100…測定機、
105…測定台、
110…測定アーム、
115…プローブ、
150…データ管理装置、
200…CAD装置、
250…局所的変形検出装置。
Claims (2)
- 三次元形状測定装置によって実測された、またはシミュレーション装置に記憶されている、被測定面のデータに基づいて得られた点群データを取得する段階と、
前記点群データを構成する点群の各点を相互に結んで測定点近似メッシュを生成する段階と、
前記測定点近似メッシュを構成する各点のデータとCAD装置にあらかじめ記憶されている前記被測定面のデータに基づいて得られた各点のデータとから各点ごとの誤差を演算する段階と、
前記測定点近似メッシュを構成する点群の各点をあらかじめ定められた形状の二次元平面に写像する段階と、
前記二次元平面に写像された測定点近似メッシュの各点に、演算された誤差を加えて差分曲面を生成する段階と、
前記差分曲面を低次元の曲面で近似して大域的変形の要素だけを含んだ曲面を生成する段階と、
前記差分曲面から前記大域的変形の要素だけを含んだ曲面を差し引いて、局所的変形の要素だけを含んだ曲面を生成する段階と、
を有することを特徴とする被測定面の局所的変形検出方法。 - さらに、局所的変形の要素だけを含んだ曲面に基づいて前記被測定面の面歪状態を可視化する段階を有することを特徴とする請求項1に記載の被測定面の局所的変形検出方法。
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