JP3764054B2 - ワイパ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピボットシャフトを支持するピボットホルダがフレームによって連結されると共に駆動源がこのフレームに固定されて一体に構成されたモジュール型(所謂、フレーム一体式)のワイパ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のウインドシールドガラスを払拭するワイパ装置は、ピボットシャフトに取り付けられたワイパアームが、ピボットシャフトの回転により所定範囲で往復回動することで、ウインドシールドガラス面の雨滴等を払拭する。
【0003】
ここで、このようなワイパ装置のうち、例えば一対のワイパアーム&ブレードを備えた車両においては、ピボットシャフトは車両幅方向両側にそれぞれ設けられており、これらを支持するピボットホルダ(ワイパブラケット)も車体の車両幅方向両側にそれぞれ固定されている。さらに、これら一対のピボットホルダががフレームによって連結されると共に駆動源としてのワイパモータがこのフレームに固定されて一体に構成されたモジュール型(所謂、フレーム一体式)のワイパ装置がある。この種のワイパ装置では、通常、一対のピボットホルダ及びモータ取付用ブラケットの少なくとも計3点(箇所)に取付孔を設け、各取付孔に挿通するボルト等の締結具によって車体に強固に固定している。
【0004】
このようなモジュール型のワイパ装置は、装置が全体としてモータ&リンクのアッセンブリを構成しているため、比較的簡単でコンパクトな構成とすることができる。
【0005】
ところで、この種のワイパ装置において、車両の衝突時当における衝突エネルギー吸収特性を向上させたものが提案されている(一例として、特開平11−139257号公報)。
【0006】
前記公報に提案されたワイパ装置では、車両の衝突時等にワイパピボットの下方への沈み込みを可能とした構成となっている。すなわち、当該車両衝突時等にエンジンフードの後端部に上方から衝突荷重が作用した際には(ワイパピボットに上方から軸方向に所定値以上の衝突荷重が作用すると)、当該部位に配置されるワイパフレームのブラケット部の取付孔に設けたクビレ部がマウントラバーの環状溝から下方へくぐり抜けて、ワイパフレームのブラケット部が車体取付基板から下方へ離脱し、ワイパピボットがワイパフレーム等と共に下方へ沈み込むようにしたものである。
【0007】
前記ワイパ装置では、ワイパピボットに上方から軸方向に所定値以上の衝突荷重が作用するとワイパピボットが下方へ沈み込むため、このワイパピボットにエンジンフード後端部が不要に干渉することがなく、エンジンフード後端部等の下方への変形が自由に許容される。したがって、ワイパ装置が車両の衝突エネルギー吸収量を減少(衝突エネルギー吸収特性を悪化)させてしまう原因とならないようになっている。
【0008】
しかしながら、前記ワイパ装置では、前述の如く所定値以上の衝突荷重によってワイパピボットが下方へ沈み込む際には、ワイパフレームのブラケット部が車体取付基板から離脱してワイパ装置はその全体が完全に自由状態となってしまう。このため、完全に自由状態となったワイパ装置は、2次衝突や3次衝突によって新たに衝撃が作用した場合には不定の姿勢となり、必ずしも車体(エンジンフード後端部等)の変形を自由にするものではない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事実を考慮し、車両の衝突時等にワイパピボットの下方への沈み込みを可能として車体の変形を妨げることを防止できるに止まらず、2次衝突や3次衝突による衝撃が作用した場合であっても前記機能を維持することができ、車体の衝突エネルギー吸収特性の向上を図ることができるワイパ装置を提供することが目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明のワイパ装置は、車体側に固定され先端にワイパアームが固定されるピボットシャフトを回動自在に支持する複数のピボットホルダと、前記各ピボットホルダを互いに連結するフレームと、前記フレームの中間位置に固定された駆動源と、前記駆動源の駆動力を前記ピボットシャフトに伝達するリンク機構と、を備え、前記ピボットホルダ及び前記駆動源が所定の状態で車体に固定されるモジュール型のワイパ装置であって、前記各ピボットシャフトのそれぞれの軸線(SCL 1 ,SCL 2 )を共に含む仮想平面(S)に対し所定距離離間した位置において前記仮想平面(S)と略平行でかつ前記ピボットシャフトの軸線(SCL 1 ,SCL 2 )に対し略直交するように取付軸線(BCL 1 ,BCL 2 )が設定された支軸によって、前記各ピボットホルダをそれぞれ1箇所で車体に軸固定し、かつ、前記ピボットシャフトの軸線方向に作用する所定荷重以上で前記ワイパ装置を前記取付軸線(BCL 1 ,BCL 2 )周りに回転可能に前記車体に支持するにあたり、前記駆動源を前記車体に支持する支持部が前記所定荷重以上で前記車体から離脱されて前記駆動源の前記車体への支持が解除可能である、ことを特徴としている。
【0011】
請求項1記載のワイパ装置では、ピボットシャフトを回転可能に支持するピボットホルダがフレームによって互いに連結され、また、フレームには駆動源が固定され、全体としてアッセンブリ状態とされている。さらに、このワイパ装置は、ピボットホルダ及び駆動源が所定の状態で車体に固定される。すなわち、各ピボットホルダにおいては、所定方向に取付軸線が設定された支軸によってそれぞれ1箇所で車体に軸固定され、しかも、駆動源においては、支持部がピボットシャフトの軸線方向に作用する所定荷重以上で離脱可能に車体に支持される。
【0012】
ここで、ピボットシャフトの軸線方向に荷重が作用すると、この荷重は前記支軸(取付軸線)周りのモーメントとして作用する。したがって、ピボットシャフトの軸線方向に作用する荷重が所定荷重を越えると(前記モーメントが所定値を超えると)、駆動源における支持部が離脱し、ワイパ装置が全体として前記支軸(取付軸線)周りに車体内部方向(地方向)に回転される。
【0013】
したがって、本ワイパ装置が搭載された車両が衝突等に至り衝突荷重が作用した際には(ピボットシャフトの軸線方向に所定値以上の荷重が作用すると)、ワイパ装置が全体として前記支軸(取付軸線)周りに回転されて車体内部へ回転移動される。これにより、ワイパ装置が車体の自由変形を妨げてしまうことを防止し、車両の衝突エネルギー吸収量を減少(衝突エネルギー吸収特性を悪化)させてしまう原因となることがない。
【0014】
またしかも、前述の如くピボットシャフトの軸線方向に所定値以上の荷重が作用してワイパ装置が全体として前記支軸(取付軸線)周りに回転されて車体内部へ回転移動される際には、依然として、各ピボットホルダにおいては前記支軸によってそれぞれ車体に軸固定されたままの状態を維持している。したがって、ワイパ装置は完全な自由状態ではなく、特定の姿勢(前記車体内部へ回転移動された状態)となり、車体の変形を新たに阻害することがない。
【0015】
このように、請求項1記載のワイパ装置では、車両衝突時等の車体外部からの所定値以上の荷重に対してワイパ装置全体は車体内方へ回転移動可能でありながらも、この時点では装置は全体として依然として車体に軸固定されており、その姿勢は完全な自由状態ではないため、例えば2次衝突や3次衝突で衝撃が作用した場合であってもワイパ装置が車体の自由変形を妨げてしまうことを防止できる。したがって、車体の衝突エネルギー吸収特性の向上を図ることができる。
【0016】
請求項2に係る発明のワイパ装置は、請求項1記載のワイパ装置において、前記支軸は、前記車体及びピボットホルダに形成した取付孔に挿通されてナットによって締結固定されるボルトとされ、または、前記取付孔に挿通されて端部がカシメられて締結固定されるリベットとされる、ことを特徴としている。
【0017】
請求項2記載のワイパ装置では、ピボットホルダに特別な構造を設けなくても、一般的な連結手段によって安価かつ容易にワイパ装置を全体として回転移動可能に軸固定することができる。
【0018】
請求項3に係る発明のワイパ装置は、請求項1または請求項2記載のワイパ装置において、前記支持部は、前記車体に形成された支持孔に挿通され前記駆動源から突出形成された支持ピンとされ、前記支持部の前記離脱は、前記支持ピンの折損または変形によって前記支持ピンが前記支持孔から抜け出すことによって行なわれる、ことを特徴としている。
【0019】
請求項3記載のワイパ装置では、駆動源から突出形成された支持ピンが折損または変形することで支持孔から抜け出すため、装置に作用した大きな衝撃が支持ピンから支持孔すなわち車体側へ伝達されることを防止できる。
【0020】
請求項4に係る発明のワイパ装置は、請求項1または請求項2記載のワイパ装置において、前記支持部は、前記車体に形成された支持孔に挿通され前記駆動源から突出形成された支持ピンとされ、前記支持部の前記離脱は、前記支持ピンによって前記支持孔が折損または変形して前記支持ピンが前記支持孔から抜け出すことによって行なわれる、ことを特徴としている。
【0021】
請求項4記載のワイパ装置では、支持孔が折損または変形して支持ピンが支持孔から抜け出すため、支持ピンが突出形成された駆動源側の損傷がなく、駆動源を再利用することが可能になる。
【0022】
請求項5に係る発明のワイパ装置は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載のワイパ装置において、前記支持部は、前記ピボットシャフトの軸線方向に前記所定荷重が作用した際に前記支持部の前記離脱を容易にする脆弱部を備える、ことを特徴としている。
【0023】
請求項5記載のワイパ装置では、支持部に設けられた脆弱部の形状や強度を調整することによって(所定の強度になるように設定することによって)、ピボットシャフトの軸線方向に荷重が作用して支持部が離脱する際の所定荷重値を任意に設定することができ、また、他の方向から作用する荷重に対する強度を維持できるように設定することができる。
【0024】
請求項6に係る発明のワイパ装置は、車体側に固定され先端にワイパアームが固定されるピボットシャフトを回動自在に支持する複数のピボットホルダと、前記各ピボットホルダを互いに連結するフレームと、前記フレームの中間位置に直接に固定されたワイパモータと、前記ワイパモータの駆動力を前記ピボットシャフトに伝達するリンク機構と、を備え、前記ピボットホルダ及び前記ワイパモータが所定の状態で車体に固定されるモジュール型のワイパ装置であって、前記各ピボットシャフトのそれぞれの軸線(SCL 1 ,SCL 2 )を共に含む仮想平面(S)に対し所定距離離間した位置において前記仮想平面(S)と略平行でかつ互いに同一線上で一致するように取付軸線(BCL 1 ,BCL 2 )が設定された支軸によって、前記各ピボットホルダをそれぞれ1箇所で車体に軸固定し、かつ、前記ピボットシャフトの軸線方向に作用する所定荷重以上で前記ワイパ装置を前記取付軸線(BCL 1 ,BCL 2 )周りに回転可能に前記車体に支持するにあたり、前記ワイパモータを前記車体に支持する支持部が前記所定荷重以上で前記車体から離脱されて前記ワイパモータの前記車体への支持が解除可能である、ことを特徴としている。
【0025】
請求項6記載のワイパ装置では、ピボットシャフトを回転可能に支持するピボットホルダがフレームによって互いに連結され、また、フレームにはワイパモータが固定され、全体としてアッセンブリ状態とされている。さらに、このワイパ装置は、ピボットホルダ及びワイパモータが所定の状態で車体に固定される。すなわち、各ピボットホルダにおいては、所定方向に取付軸線が設定された支軸によってそれぞれ1箇所で車体に軸固定され、しかも、ワイパモータにおいては、支持部がピボットシャフトの軸線方向に作用する所定荷重以上で離脱可能に車体に支持される。
【0026】
ここで、ピボットシャフトの軸線方向に荷重が作用すると、この荷重は前記支軸(取付軸線)周りのモーメントとして作用する。したがって、ピボットシャフトの軸線方向に作用する荷重が所定荷重を越えると(前記モーメントが所定値を超えると)、ワイパモータにおける支持部が離脱し、ワイパ装置が全体として前記支軸(取付軸線)周りに車体内部方向(地方向)に回転される。
【0027】
したがって、本ワイパ装置が搭載された車両が衝突等に至り衝突荷重が作用した際には(ピボットシャフトの軸線方向に所定値以上の荷重が作用すると)、ワイパ装置が全体として前記支軸(取付軸線)周りに回転されて車体内部へ回転移動される。これにより、ワイパ装置が車体の自由変形を妨げてしまうことを防止し、車両の衝突エネルギー吸収量を減少(衝突エネルギー吸収特性を悪化)させてしまう原因となることがない。
【0028】
またしかも、前述の如くピボットシャフトの軸線方向に所定値以上の荷重が作用してワイパ装置が全体として前記支軸(取付軸線)周りに回転されて車体内部へ回転移動される際には、依然として、各ピボットホルダにおいては前記支軸によってそれぞれ車体に軸固定されたままの状態を維持している。したがって、ワイパ装置は完全な自由状態ではなく、特定の姿勢(前記車体内部へ回転移動された状態)となり、車体の変形を新たに阻害することがない。
【0029】
このように、請求項6記載のワイパ装置では、車両衝突時等の車体外部からの所定値以上の荷重に対してワイパ装置全体は車体内方へ回転移動可能でありながらも、この時点では装置は全体として依然として車体に軸固定されており、その姿勢は完全な自由状態ではないため、例えば2次衝突や3次衝突で衝撃が作用した場合であってもワイパ装置が車体の自由変形を妨げてしまうことを防止できる。したがって、車体の衝突エネルギー吸収特性の向上を図ることができる。
【0030】
請求項7に係る発明のワイパ装置は、車体側に固定され先端にワイパアームが固定されるピボットシャフトを回動自在に支持する複数のピボットホルダと、前記各ピボットホルダを互いに連結するフレームと、前記フレームの中間位置に直接に固定されたワイパモータと、前記ワイパモータの駆動力を前記ピボットシャフトに伝達するリンク機構と、を備え、前記ピボットホルダ及び前記ワイパモータが所定の状態で車体に固定されるモジュール型のワイパ装置であって、前記各ピボットシャフトのそれぞれの軸線(SCL 1 ,SCL 2 )を共に含む仮想平面(S)に対し所定距離離間した位置において前記仮想平面(S)と略平行でかつ前記ピボットシャフトの軸線(SCL 1 ,SCL 2 )に対し略直交すると共に互いに平行となるように取付軸線(BCL 1 ,BCL 2 )が設定された支軸によって、前記各ピボットホルダをそれぞれ1箇所で車体に軸固定し、かつ、前記ピボットシャフトの軸線方向に作用する所定荷重以上で前記ワイパ装置を前記取付軸線(BCL 1 ,BCL 2 )周りに回転可能に前記車体に支持するにあたり、前記ワイパモータを前記車体に支持する支持部が前記所定荷重以上で前記車体から離脱されて前記ワイパモータの前記車体への支持が解除可能である、ことを特徴としている。
【0031】
請求項7記載のワイパ装置では、前述した請求項6記載のワイパ装置と同様の作用を奏し、車両衝突時等の車体外部からの所定値以上の荷重に対してワイパ装置全体は車体内方へ回転移動可能でありながらも、この時点では装置は全体として依然として車体に軸固定されており、その姿勢は完全な自由状態ではないため、例えば2次衝突や3次衝突で衝撃が作用した場合であってもワイパ装置が車体の自由変形を妨げてしまうことを防止できる。したがって、車体の衝突エネルギー吸収特性の向上を図ることができる。
【0032】
またしかも、複数の各ピボットホルダをそれぞれ1箇所で車体に軸固定する支軸の取付軸線は互いに平行であれば良く(必ずしも同一線上で一致しなくてよいため)、車体への軸固定位置の自由度が向上する。
【0033】
【発明の実施の形態】
図1には本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置10の全体構成が平面図にて示されており、図2にはワイパ装置10の全体構成が正面図にて示されている。また、図3にはこのワイパ装置10の主要部の構成が分解斜視図にて示されている。
【0034】
ワイパ装置10は、一対のピボットホルダ12及びピボットホルダ14を備えている。ピボットホルダ12とピボットホルダ14は基本的構成は同じ構成である。なお、ピボットホルダ12が運転席側に対応し、ピボットホルダ14が助手席側に対応する構成となっている。運転席側のピボットホルダ12には筒部16が設けられ、助手席側のピボットホルダ14には筒部18が設けられている。これらの筒部16、18は円筒形に形成されており、ピボットシャフト20、ピボットシャフト22がそれぞれ挿通されこれを回転可能に支持している。ピボットシャフト20、22の下端にはピボットレバー24、26がそれぞれ固定されており、ピボットレバー24、26の揺動によってピボットシャフト20、22が回動されるようになっている。
【0035】
また、ピボットホルダ12、14の部材角部には、取付孔28、30がそれぞれ形成されており、これらの取付孔28、30に挿通された支軸としての固定ボルト31、33によって、ワイパ装置10が車体に軸固定される構成である。
【0036】
ここで、取付孔28、30に挿通されたこれらの固定ボルト31、33は、その軸線BCL1、BCL2が所定の方向に設定された状態で固定されている。この場合、図4には、ピボットシャフト20、22及び固定ボルト31、33等の取付状態(配置関係)が、三次元的な概略図にて示されている。この図4に示す如く、これらの固定ボルト31、33の軸線BCL1、BCL2は、各ピボットシャフト20、22のそれぞれの軸線SCL1、SCL2を共に含む仮想平面Sに対し所定距離(距離H)離間した位置において、この仮想平面Sと略平行でかつピボットシャフト20、22のそれぞれの軸線SCL1、SCL2に対し略直交するように設定されており、しかも、本実施の形態においては、互いの軸線BCL1と軸線BCL2とが一致するように(互いに同一線上で一致するように)設定されている。このように取付軸線としての軸線BCL1、BCL2が所定の方向に設定された固定ボルト31、33によって、各ピボットホルダ12、14をそれぞれ1箇所で車体に軸固定した構成となっている。
【0037】
また、ピボットホルダ12、14には、取付孔28、30と反対側の側壁部分に、連結シャフト32、34が設けられている。連結シャフト32、34は、断面円形の中実シャフト(むく軸)とされており、その先端部は後述する中空フレーム42に嵌合連結する連結部36、連結部38とされている。なお、これらの連結シャフト32、34を断面円形の中実シャフトとするに限らず、断面円環状の中空シャフトに形成する構成としてもよい。
【0038】
連結部36、38には、それぞれ凹部40が形成されている。このピボットホルダ12の連結部36とピボットホルダ14の連結部38とが、中空フレーム42によって互いに連結されている。
【0039】
中空フレーム42の長手方向両端部は、前記連結シャフト32、34の連結部36、38に対応する連結部44、連結部46となっている。これらの連結部44、46は、断面円環状に形成されており、連結部44が連結部36に嵌合し連結部46が連結部38に嵌合し、さらにこの状態で、前記凹部40に対応して各連結部44、46がそれぞれカシメられてそれぞれ連結部36、38に連結固定された構成となっている。
【0040】
また、中空フレーム42の長手方向中間部には、取付部48が形成されている。この取付部48は、中空でない断面コ字形に形成されており、その上面は取付平座面50となっている。
【0041】
中空フレーム42の取付部48の長手方向両側には、徐変部54、徐変部56が設けられている。徐変部54、56は、取付部48からそれぞれ連結部44、46へ向けて前記中空でない断面コ字形から断面円環状に徐々に中空変化して形成されている。
【0042】
以上の構成の中空フレーム42(取付部48、徐変部54、56等)は、断面円環状の中空母材(パイプ材)をプレス加工することによって形成されており、特に、前述した徐変部54、56は、取付部48を形成するプレス加工の際にこれと同時に形成されている。
【0043】
また、中空フレーム42の取付部48には、取付平座面50に駆動源としてのワイパモータ58が取り付けられている。ワイパモータ58は、モータ部58A及びギヤ部58Bが一体に設けられた構成となっており、ギヤ部58Bのハウジング60には一対の取付足62が突出形成されている。この取付足62が、中空フレーム42の取付部48の取付平座面50上に載置され、この状態でボルト64及びナット(図示省略)によって直接に締結固定された構成となっている。
【0044】
以上の如くワイパ装置10は、一対のピボットホルダ12、14が、ワイパモータ58の支持基台としての中空フレーム42と一体に構成された所謂フレーム一体式の構成となっている。
【0045】
またこのワイパ装置10では、ワイパモータ58のハウジング60に支持部としての支持ピン68が突出形成されている。この支持ピン68は、ハウジング60の前面側(図1において紙面下方側、図2において紙面手前側)へ向けて、すなわち、ピボットホルダ12、14の車体への固定部分(取付孔28、30)を結ぶ直線と反対方向(中空フレーム42と反対側)へ向けて突出形成されており、しかも、後述するワイパモータ58の出力軸70の軸線方向に対して略垂直方向に、換言すればピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2に直交する方向に、好ましくは仮想平面Sに直交する方向に突出(延出)されている。この支持ピン68は、後述する車体側の挿通孔86に挿通されて支持される。したがってこれにより、ワイパ装置10は、ピボットホルダ12、14の取付孔28、30(固定ボルト31、33)による2点の軸固定及び支持ピン68による軸固定の計3点支持で車体に支持される構成である。また、図1に示す如く、支持ピン68及びピボットホルダ12、14の取付孔28、30による車体への固定部分(すなわち、固定ボルト31、33)を結ぶ領域X内にワイパモータ58の重心位置Gが配置された構成となっている。そして、ピボットホルダ12、14の筒部16、18によるピボットシャフト20、22の支持位置は、固定ボルト31、33の軸線BCL1、BCL2に対し、前記領域Xの側にオフセットされて配置されている。
【0046】
またここで、支持ピン68は、ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向(仮想平面Sに平行な方向)に作用する所定荷重で折損するようにその強度が設定されており、これにより、支持ピン68が折損することで車体側の挿通孔86から抜け出し(離脱し)支持が解除されるように構成されている。なお、本第1の実施の形態においては、支持ピン68の離脱強度(折損するための前記所定荷重)は、例えば、ピボットホルダ12、14またはピボットシャフト20、22に980N〜3920Nの軸方向荷重が作用したときに支持ピン68が折損して挿通孔86から抜け出すように設定されることが好ましい。さらにこの場合、支持ピン68が折損(離脱)するための前記所定荷重は、ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向(仮想平面Sに平行な方向)に直接に作用する荷重のみならず、所謂「分力」として作用する荷重であっても当然に適用できる。
【0047】
また、支持ピン68の後端部には、ストッパ部84が形成されており、同様に後述する車体側の挿通孔86に当接する。
【0048】
一方、ワイパモータ58の出力軸70は、ハウジング60の裏面側(図1において紙面裏面側、図2において紙面下方側)へ向けて突出しており、その先端にはクランクアーム72が取り付けられている。クランクアーム72の先端には、ボールジョイント74を介してリンクロッド76及びリンクロッド78が連結されている。一方のリンクロッド76は、ピボットホルダ12に支持されたピボットシャフト20のピボットレバー24にボールジョイント80を介して連結されており、また、他方のリンクロッド78は、ピボットホルダ14に支持されたピボットシャフト22のピボットレバー26にボールジョイント82を介して連結されている。これにより、ワイパモータ58が作動しクランクアーム72が回転することにより、リンクロッド76、78及びピボットレバー24、26を介して駆動力が伝達されて、ピボットシャフト20、22がそれぞれ回動する構成である。
【0049】
一方、車体側のパネル85には、前述したワイパモータ58のハウジング60に形成された支持ピン68に対応する挿通孔86が形成されている。この挿通孔86は、ワイパ装置10を車体に取付け固定する際の複数の支持位置(本実施の形態においては、3点支持)のうちの1つに対応すると共に、位置決めのための基準位置とされている。
【0050】
また、挿通孔86には、弾性材から成るグロメット87が取り付けられている。このグロメット87は、外周が挿通孔86に嵌まり込んで取り付けられる円筒部88と、円筒部88の一端に形成された受部89とから構成されており、円筒部88の内周に支持ピン68が挿通されると共に、支持ピン68が円筒部88に挿通された際に受部89にストッパ部84が当接する。すなわち、グロメット87の受部89にストッパ部84が当接する状態まで支持ピン68を挿通することによって、位置決めかつ支持が成され、かつこの状態でピボットホルダ12、14の取付孔28、30に挿通された固定ボルト31、33を締結することで、ワイパ装置10が車体に固定される構成である。
【0051】
以上の構成のワイパ装置10のピボットシャフト20、22の先端には、それぞれワイパアーム&ブレード(図示省略)が取り付けられ、各ピボットシャフト20、22の回転によってワイパアーム&ブレードが所定範囲で往復回動するようになっている。
【0052】
次に本第1の実施の形態の作用を説明する。
【0053】
上記構成のワイパ装置10では、ピボットシャフト20、22を回転可能に支持するピボットホルダ12、14が中空フレーム42によって互いに連結され、また、中空フレーム42の取付部48(取付平座面50)にはワイパモータ58が直接固定され、全体としてアッセンブリ状態とされている。この状態で、図5に示す如く、ワイパモータ58のハウジング60に設けられた支持ピン68が車体側のパネル85に設けられた挿通孔86(グロメット87)に嵌入して位置決めかつ支持されると共に、ピボットホルダ12、14の取付孔28、30に挿通された固定ボルト31、33によってウインドシールドガラス下方の車体構造部材に固定される。すなわち、各ピボットホルダ12、14においては、所定方向に取付けのための軸線BCL1、BCL2が設定された支軸としての固定ボルト31、33によってそれぞれ1箇所で車体に軸固定され、しかも、ワイパモータ58においては、支持ピン68がピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向(仮想平面Sに平行な方向)に作用する所定荷重で離脱可能に車体に支持される。
【0054】
さらに、ワイパモータ58の作動によってピボットシャフト20、22が回転して、ワイパアーム&ブレードが所定範囲で往復回動してウインドシールドガラスの雨滴等を払拭する。
【0055】
ここで、このワイパ装置10では、ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向(仮想平面Sに平行な方向)に荷重が作用すると、この荷重は固定ボルト31、33(軸線BCL1、BCL2)周りのモーメントM(図4に矢印にて概略的に図示)として作用する。したがって、ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向に作用する荷重が所定荷重を越えると(前記モーメントMが所定値を超えると)、ワイパモータ58における支持ピン68が図7に示す如く折損して車体側の挿通孔86から抜け出し(離脱し)、当該部位の支持が解除される。このため、図6に示す如く、ワイパ装置10が全体として固定ボルト31、33の軸線BCL1、BCL2周りに回転される。
【0056】
したがって、本ワイパ装置10が搭載された車両が衝突等に至り衝突荷重が作用した際には(ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向に所定値以上の荷重が作用すると)、ワイパ装置10が全体として固定ボルト31、33の軸線BCL1、BCL2周りに回転されて車体内部へ回転移動される。これにより、車体の変形が自由に許容され、ワイパ装置10が車両の衝突エネルギー吸収量を減少(衝突エネルギー吸収特性を悪化)させてしまう原因となることがない。
【0057】
またしかも、前述の如くピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向に所定値以上の荷重が作用してワイパ装置10が全体として固定ボルト31、33の軸線BCL1、BCL2周りに回転されて車体内部へ回転移動される際には、依然として、各ピボットホルダ12、14においては前記固定ボルト31、33によってそれぞれ車体に軸固定されたままの状態を維持している。したがって、ワイパ装置10は完全な自由状態ではなく、特定の姿勢(前記車体内部へ回転移動された状態)となり、車体の変形を新たに阻害することがない。
【0058】
さらに、このワイパ装置10では、前述の如くピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向(仮想平面Sに平行な方向)に作用した荷重によって固定ボルト31、33(軸線BCL1、BCL2)周りにモーメントMが生じるが、このモーメントMは、ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2(仮想平面S)から支持ピン68までの距離H(図4に図示)に依存する。すなわち、ピボットシャフト20、22(ピボットホルダ12、14)に作用する荷重が仮に同じであっても、前記距離Hが異なれば前記モーメントMが異なって作用する。したがって、前記距離Hを変更することで前記モーメントMすなわち支持ピン68の離脱強度を調整することが可能である。
【0059】
このように、本第1の実施の形態に係るワイパ装置10では、車両衝突時等の車体外部からの所定値以上の荷重に対してワイパ装置10全体は車体内方へ回転移動可能でありながらも、この時点では装置は全体として依然として車体に軸固定されており、その姿勢は完全な自由状態ではないため、例えば2次衝突や3次衝突で衝撃が作用した場合であってもワイパ装置10が車体の自由変形を妨げてしまうことを防止できる。したがって、車体の衝突エネルギー吸収特性の向上を図ることができる。
【0060】
また、ワイパ装置10が回転移動した姿勢を予め特定できるので、この特定姿勢を事前に考慮した車両ボデーの衝突エネルギー吸収構造を設計することもできる。
【0061】
なお、前述した第1の実施の形態においては、ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向(仮想平面Sに平行な方向)に作用する荷重が所定荷重を越えると(前記モーメントMが所定値を超えると)支持ピン68が折損して車体側の挿通孔86から抜け出して(離脱して)当該部位の支持が解除される構成としたが、前記支持ピン68による当該部位の支持固定を解除する態様(支持ピン68が離脱する態様)はこれに限るものではない。
【0062】
例えば、図8に示す如く、前記荷重が所定荷重を越えると(前記モーメントMが所定値を超えると)支持ピン68が変形する(折れ曲がる)ことで当該部位の支持固定が解除されるように構成してもよい。また、図9に示す如く、前記荷重が所定荷重を越えるとグロメット87がパネル85に設けられた挿通孔86から離脱することで支持ピン68が実質的に抜け出して当該部位の支持固定が解除されるように構成してもよい。さらに、図10に示す如く、グロメット91に支持孔93及びスリット95を設け、通常は支持ピン68が支持孔93に嵌入することで支持し、前記荷重が所定荷重を越えると支持ピン68がグロメット91の支持孔93からスリット95へ移動することで実質的に抜け出して当該部位の支持固定が解除されるように構成してもよい。、
またさらに、前述の如く支持ピン68が折損(切損)、変形するに限らず、図11に示す如く、パネル85に設けられた挿通孔86が変形することで支持ピン68が挿通孔86からに抜け出して当該部位の支持固定が解除されるように構成してもよく、あるいは、図12に示す如く、挿通孔86が折損(切損)することで支持ピン68が挿通孔86からに抜け出して当該部位の支持固定が解除されるように構成してもよい。
【0063】
またさらに、前述した実施の形態においては、ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向(仮想平面Sに平行な方向)に作用した荷重に基づいて支持ピン68の離脱強度を説明したが、この支持ピン68の離脱強度を荷重の作用方向に応じて異ならせるように構成してもよい。
【0064】
すなわち、車両に搭載したこのようなワイパ装置10においては、前述の如くピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向に所定値以上の荷重が作用した場合は速やかに支持ピン68による支持が解除され(換言すれば、例えば支持ピン68が容易に折損、変形し)、かつ、例えば「雪溜り」等によるワイパアーム下反転位置付近での回動拘束時における反力に対しては充分な強度を確保することが望ましい。この場合、前記「雪溜り」等によるワイパアーム下反転位置付近での回動拘束時における反力は、ピボットシャフト20、22、ピボットレバー24、26、リンクロッド76、78等を介して支持ピン68に作用するが、この場合の荷重(反力)は、支持ピン68に対し、固定ボルト31、33の軸線BCL1、BCL2と同方向(仮想平面Sと略平行な方向)、換言すればピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2と直交する方向に作用する。したがって、支持ピン68による支持固定部位においては、ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向には所定値以上の荷重で速やかに支持が解除され、かつ、ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2と直交する方向に作用する荷重に対しては充分な強度を確保することが望ましい。
【0065】
このため、例えば、図13に示す如く、支持ピン68に脆弱部としての切欠部69を形成し、ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向に所定値以上の荷重が作用した際に当該支持固定部分の離脱(支持解除)を容易にするように構成することができる。また、支持ピン68を円柱形(断面円形)に形成するに限らず、図14に示す支持ピン71の如く、ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向に薄肉の偏平形に形成し、ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向に所定値以上の荷重が作用した際には支持ピン68が速やかに折損、変形して当該支持固定部分の離脱(支持解除)を容易にすると共に、軸線BCL1、BCL2方向(支持ピン71の偏平長手方向)には比較的高強度とする構成とすることができる。またさらに、図15に示す如く、パネル85に設けられた挿通孔86に脆弱部としての切欠部90を形成し、ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向に所定値以上の荷重が作用した際に当該支持固定部分の離脱(支持解除)を容易にするように構成してもよい。
【0066】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。なお、前記第1の実施の形態と基本的に同一の部品には前記第1の実施の形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0067】
図16には本発明の第2の実施の形態に係るワイパ装置100の構成が斜視図にて示されている。
【0068】
このワイパ装置100では、ピボットホルダ12、14の部材角部には、取付孔102、104がそれぞれ形成されており、これらの取付孔102、104に挿通された支軸としての固定ボルト31、33によって、ワイパ装置100が車体に軸固定される構成である。
【0069】
ここで、一方のピボットホルダ12に設けられた取付孔102は、固定ボルト31よりも大径に形成されており、また、他方のピボットホルダ14に設けられた取付孔104は長穴とされている。
【0070】
またさらに、本第2の実施の形態においては、取付孔102、104に挿通されたこれらの固定ボルト31、33は、その軸線BCL1、BCL2が所定の方向に設定された状態で固定されている。この場合、図18には、ピボットシャフト20、22及び固定ボルト31、33等の取付状態(配置関係)が、概略的な平面図として示されている。この図18に示す如く、ワイパ装置100の車体への取付けでは、固定ボルト31、33の軸線BCL1、BCL2は、各ピボットシャフト20、22のそれぞれの軸線SCL1、SCL2を共に含む仮想平面Sに対し所定距離離間した位置において、この仮想平面Sと略平行でかつピボットシャフト20、22のそれぞれの軸線SCL1、SCL2に対し略直交すると共に互いに平行となるように設定されることがある。すなわち換言すれば、軸線BCL1と軸線BCL2とが互いに一致しないで設定されてしまうことがある。このように取付軸線BCL1、BCL2が所定の方向に設定された固定ボルト31、33によって、各ピボットホルダ12、14をそれぞれ1箇所で車体に軸固定した構成となっている。
【0071】
なお、支持ピン68等の他の構成については、前述した第1の実施の形態に係るワイパ装置10と同様である。
【0072】
次に本第2の実施の形態の作用を説明する。
【0073】
このワイパ装置100では、ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向(仮想平面Sに平行な方向)に荷重が作用すると、この荷重は固定ボルト31、33(軸線BCL1、軸線BCL2)周りのモーメントMとして作用する。したがって、ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向に作用する荷重が所定荷重を越えると(前記モーメントMが所定値を超えると)、ワイパモータ58における支持ピン68が前記第1の実施の形態と同様に折損、変形して、あるいはパネル85に設けられた挿通孔86が折損、変形して当該部位の支持が解除される。このため、図17に示す如く、ワイパ装置100が全体として固定ボルト31、33の軸線BCL1、BCL2周りに回転される。
【0074】
この場合、前記ワイパ装置100が全体として回転される際には、固定ボルト31の軸線BCL1と固定ボルト33の軸線BCL2が互いに一致しないで設定されてしまうことがあるため(各ピボットシャフト20、22と軸線BCL1、BCL2との間の距離R1、R2が互いに異なるため)、ワイパ装置100は所謂「こじれて」回転しようとする。しかしながら、ピボットホルダ12、14の取付孔102、104のうち、一方の取付孔102は固定ボルト31よりも大径に形成されており(所謂バカ穴となっており)、また、他方の取付孔104は長穴とされているため、ワイパ装置100の前記脱落回動動作は多少妨げられるものの、実質的には支障なく行なわれる。
【0075】
したがって、本ワイパ装置100が搭載された車両が衝突等に至り衝突荷重が作用した際には(ピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向に所定値以上の荷重が作用すると)、ワイパ装置10が全体として固定ボルト31、33の軸線BCL1、BCL2周りに回転されて車体内部へ回転移動される。これにより、車体の変形が自由に許容され、ワイパ装置100が車両の衝突エネルギー吸収量を減少(衝突エネルギー吸収特性を悪化)させてしまう原因となることがない。
【0076】
またしかも、前述の如くピボットシャフト20、22の軸線SCL1、SCL2方向に所定値以上の荷重が作用してワイパ装置100が全体として固定ボルト31、33の軸線BCL1、BCL2周りに回転されて車体内部へ回転移動される際には、依然として、各ピボットホルダ12、14においては前記固定ボルト31、33によってそれぞれ車体に軸固定されたままの状態を維持している。したがって、ワイパ装置100は完全な自由状態ではなく、特定の姿勢(前記車体内部へ回転移動された状態)となり、車体の変形を新たに阻害することがない。
【0077】
このように、本第2の実施の形態に係るワイパ装置100においても、車両衝突時等の車体外部からの所定値以上の荷重に対してワイパ装置100全体は車体内方へ回転移動可能でありながらも、この時点では装置は全体として依然として車体に軸固定されており、その姿勢は完全な自由状態ではないため、例えば2次衝突や3次衝突で衝撃が作用した場合であってもワイパ装置100が車体の自由変形を妨げてしまうことを防止できる。したがって、車体の衝突エネルギー吸収特性の向上を図ることができる。
【0078】
なお、前記第2の実施の形態に係るワイパ装置100の如く固定ボルト31、33の軸線BCL1、BCL2が互いに一致しない設定であっても、ワイパ装置100の全体的な前記脱落回動動作は実質的には支障なく行なわれるが、この脱落回動動作をより一層スムースに行なうために、前記脱落回動動作に伴って固定ボルト31、33(軸線BCL1、BCL2)が移動する(ズレる)ように構成することも可能である。
【0079】
すなわち、図19に示す如く、何れかの固定ボルト31、33を支持する車体側の取付孔106に連続してスライド溝108を設け、通常はこの取付孔106によって支持するものの、ワイパ装置100が全体的に脱落回動動作するときは、何れかの固定ボルト31、33が取付孔106からスライド溝108へとスライド移動して、前記「こじれて」回転することを防止するように構成してもよい。この場合には、ワイパ装置100の全体的な前記脱落回動動作がより一層スムースに行なわれ、ワイパ装置100が車体の自由変形を妨げてしまうことを一層防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置の全体構成を示す正面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置の主要部の構成を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置のピボットホルダ(ピボットシャフト)及び固定ボルト等の取付状態(配置関係)を示す三次元的な概略図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置の取付状態(通常状態)を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置が回動動作した状態を示す図5に対応した斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置の支持ピンが折損(切損)した状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置の支持ピンが変形(折曲)した状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置のグロメットが支持ピンと共に挿通孔から離脱して支持固定が解除された状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置のグロメットによる支持ピンの保持態様の他の例を示す斜視図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置の挿通孔が変形(折曲)した状態を示す斜視図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置の挿通孔が折損(切損)した状態を示す斜視図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置の支持ピンに設けられた切欠部を示す斜視図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置の支持ピンの他の例を示す斜視図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置の挿通孔に設けられた切欠部を示す斜視図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係るワイパ装置の取付状態(通常状態)を示す斜視図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係るワイパ装置が回動動作した状態を示す図16に対応した斜視図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係るワイパ装置のピボットホルダ(ピボットシャフト)及び固定ボルト等の取付状態(配置関係)を示す概略的な平面図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態に係るワイパ装置の取付孔に設けられたスライド溝を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 ワイパ装置
12 ピボットホルダ
14 ピボットホルダ
20 ピボットシャフト
22 ピボットシャフト
28 取付孔
30 取付孔
31 固定ボルト(支軸)
33 固定ボルト(支軸)
42 中空フレーム
58 ワイパモータ(駆動源)
68 支持ピン
S 仮想平面
BCL1、BCL2 軸線
SCL1、SCL2 軸線
Claims (7)
- 車体側に固定され先端にワイパアームが固定されるピボットシャフトを回動自在に支持する複数のピボットホルダと、前記各ピボットホルダを互いに連結するフレームと、前記フレームの中間位置に固定された駆動源と、前記駆動源の駆動力を前記ピボットシャフトに伝達するリンク機構と、を備え、前記ピボットホルダ及び前記駆動源が所定の状態で車体に固定されるモジュール型のワイパ装置であって、
前記各ピボットシャフトのそれぞれの軸線(SCL 1 ,SCL 2 )を共に含む仮想平面(S)に対し所定距離離間した位置において前記仮想平面(S)と略平行でかつ前記ピボットシャフトの軸線(SCL 1 ,SCL 2 )に対し略直交するように取付軸線(BCL 1 ,BCL 2 )が設定された支軸によって、前記各ピボットホルダをそれぞれ1箇所で車体に軸固定し、
かつ、前記ピボットシャフトの軸線方向に作用する所定荷重以上で前記ワイパ装置を前記取付軸線(BCL 1 ,BCL 2 )周りに回転可能に前記車体に支持するにあたり、前記駆動源を前記車体に支持する支持部が前記所定荷重以上で前記車体から離脱されて前記駆動源の前記車体への支持が解除可能である、
ことを特徴とするワイパ装置。 - 前記支軸は、前記車体及びピボットホルダに形成した取付孔に挿通されてナットによって締結固定されるボルトとされ、または、前記取付孔に挿通されて端部がカシメられて締結固定されるリベットとされる、
ことを特徴とする請求項1記載のワイパ装置。 - 前記支持部は、前記車体に形成された支持孔に挿通され前記駆動源から突出形成された支持ピンとされ、
前記支持部の前記離脱は、前記支持ピンの折損または変形によって前記支持ピンが前記支持孔から抜け出すことによって行なわれる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のワイパ装置。 - 前記支持部は、前記車体に形成された支持孔に挿通され前記駆動源から突出形成された支持ピンとされ、
前記支持部の前記離脱は、前記支持ピンによって前記支持孔が折損または変形して前記支持ピンが前記支持孔から抜け出すことによって行なわれる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のワイパ装置。 - 前記支持部は、前記ピボットシャフトの軸線方向に前記所定荷重が作用した際に前記支持部の前記離脱を容易にする脆弱部を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のワイパ装置。 - 車体側に固定され先端にワイパアームが固定されるピボットシャフトを回動自在に支持する複数のピボットホルダと、前記各ピボットホルダを互いに連結するフレームと、前記フレームの中間位置に直接に固定されたワイパモータと、前記ワイパモータの駆動力を前記ピボットシャフトに伝達するリンク機構と、を備え、前記ピボットホルダ及び前記ワイパモータが所定の状態で車体に固定されるモジュール型のワイパ装置であって、
前記各ピボットシャフトのそれぞれの軸線(SCL 1 ,SCL 2 )を共に含む仮想平面(S)に対し所定距離離間した位置において前記仮想平面(S)と略平行でかつ互いに同一線上で一致するように取付軸線(BCL 1 ,BCL 2 )が設定された支軸によって、前記各ピボットホルダをそれぞれ1箇所で車体に軸固定し、
かつ、前記ピボットシャフトの軸線方向に作用する所定荷重以上で前記ワイパ装置を前記取付軸線(BCL 1 ,BCL 2 )周りに回転可能に前記車体に支持するにあたり、前記ワイパモータを前記車体に支持する支持部が前記所定荷重以上で前記車体から離脱されて前記ワイパモータの前記車体への支持が解除可能である、
ことを特徴とするワイパ装置。 - 車体側に固定され先端にワイパアームが固定されるピボットシャフトを回動自在に支持する複数のピボットホルダと、前記各ピボットホルダを互いに連結するフレームと、前記フレームの中間位置に直接に固定されたワイパモータと、前記ワイパモータの駆動力を前記ピボットシャフトに伝達するリンク機構と、を備え、前記ピボットホルダ及び前記ワイパモータが所定の状態で車体に固定されるモジュール型のワイパ装置であって、
前記各ピボットシャフトのそれぞれの軸線(SCL 1 ,SCL 2 )を共に含む仮想平面(S)に対し所定距離離間した位置において前記仮想平面(S)と略平行でかつ前記ピボットシャフトの軸線(SCL 1 ,SCL 2 )に対し略直交すると共に互いに平行となるように取付軸線(BCL 1 ,BCL 2 )が設定された支軸によって、前記各ピボットホルダをそれぞれ1箇所で車体に軸固定し、
かつ、前記ピボットシャフトの軸線方向に作用する所定荷重以上で前記ワイパ装置を前記取付軸線(BCL 1 ,BCL 2 )周りに回転可能に前記車体に支持するにあたり、前記ワイパモータを前記車体に支持する支持部が前記所定荷重以上で前記車体から離脱されて前記ワイパモータの前記車体への支持が解除可能である、
ことを特徴とするワイパ装置。
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