JP3761922B2 - 段ボール紙管 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、片面段ボールを素材としてー少なくとも一部に利用した段ボール紙管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
段ボールは、軽量である割には強度が大きく、また、衝撃力を吸収する特長を備えている。そのため、従来より、段ボールは、箱の他に、荷物が載置されるパレットの荷重受部材(桁材)や、その全部を構成する素材として用いられている(例えば、米国特許第2,728,545号、同第3,683,822号、同第4,831,938号、同第4,792,325号、同第4,867,074号明細書参照)。また、段ボールは、厚紙などと異なり、再生が極めて容易であり、リサイクル性が優れているという利点を有する。
【0003】
以上のパレットなどに使用する段ボール紙管として、本件出願人は先に、波形板の片面にライナを固着した長尺の片面段ボールを螺旋状に巻回して、円筒形の片面段ボール層を形成し、この段ボール層を径方向に複数積層したものを提案した(特願平6−143833号)。
【0004】
この段ボール紙管は、片面段ボールを芯材の外周囲に螺旋状に複数層巻回して連続的に製造される。このとき、片面段ボールとしては、できるだけ広幅のものを用いることが好ましい。このような広幅の片面段ボールを用いることにより、片面段ボールの芯材への巻回ピッチを大として、段ボール紙管を効率的に製造できて生産性を高められる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、広幅の片面段ボールを用いる場合、この片面段ボールを芯材に螺旋状に巻回したとき、その外周面に片面段ボールが沿い難くなって波形板の形状が崩れる。つまり、一般にシート状物を螺旋状に巻くとシート状物はねじれるので、その表面に皺(しわ)が発生する。この皺は、シート状物の幅が広くなると強くなる。さらに、シート状物が厚みの大きい前記片面段ボールであると、厚紙を巻いた通常の紙管に比べて、径方向の厚さが大きいので、外径が同一の通常の紙管よりも、下層部の直径が小さくなるから、皺が一層強くなり、皺の部分が芯材に対し浮上がり状となる。この状態でその外周に上層部を巻回すると、その巻回時の圧力が浮き上がった皺の部分に付与されることにより、下層部の波形板に型崩れが起こる。
【0006】
前記波形板に型崩れが発生すると、段ボール紙管としたとき、その軸方向および径方向の圧縮強度や曲げ剛性が低下し、特に強度が要求されるたとえばパレットの荷重受部材などとしては使用できなくなる。従って、前記波形板の型崩れを防止するためには、芯材の径φに対し片面段ボールの幅Pを、P≦1.5φ程度とする必要がある。そこで、通常では、前記片面段ボールとして50mm幅程度のものが使用されているが、段ボール紙管の生産性を高めるためには、より広幅のものを用いることが望ましい。
【0007】
この発明は、片面段ボールを使用して軽量化を実現しながら、波形板の型崩れを招くことなく、圧縮強度や曲げ剛性に優れ、かつ、生産性の高い段ボール紙管を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段および作用】
上記目的を達成するために、本発明の段ボール紙管は、波形板の片面にライナを固着してなる片面段ボールを、波形板の稜線に直交する方向に長尺に形成した片面段ボール層が、軸方向にずれた状態で径方向に重合されて、前記波形板の稜線に斜交する方向に沿って曲がりながら螺旋状に巻回されて円筒形の段ボール積層体が形成され、前記段ボール積層体の径方向に重合された各片面段ボール層はほぼ同一幅を有し、少くとも下層の片面段ボール層は軸方向に並んだ複数の分割層からなり、前記分割層の合計幅が前記同一幅に等しい。
【0009】
上記構成によれば、径方向に積層された複数の片面段ボール層のうち、下層側のものが軸方向に複数に分割されているから、これら各分割層の幅は分割されていない上層よりも小さくなる。したがって、下層を芯材に螺旋状に巻回したとき、皺が発生しにくくなるので、下層側片面段ボール層の波形板の型崩れが防止される。その結果、段ボール紙管としたとき、その軸方向および径方向の圧縮強度や曲げ剛性が大となる。しかも、下層側の片面段ボール層は、その複数の分割層を軸方向に並べて同時に芯材に巻回でき、さらに上層は上記分割層の幅の合計にほぼ等しい広幅の1枚物を使用できるから、下層から上層までの各片面段ボール層を実質的に広幅にできる。その結果、片面段ボールの巻回ピッチを大として、段ボール紙管の効率的な製造が可能になる。
【0010】
また、上記構成では、長尺の片面段ボールを波形板の稜線に斜交する方向に沿って曲げながら、螺旋状に巻回して円筒形に形成するとともに、径方向の複数の片面段ボール層または片面段ボールの重合面を互いに接合して段ボール紙管が形成されるため、円筒形の軸線方向に荷物の荷重を受ける荷重受部材として用いることにより、荷重受部材としての圧縮強度や曲げ剛性が格段に大きくなる。従って、軽量で且つ強度の大きな荷重受部材を得ることができる。
【0011】
つまり、紙材は、一般的特性として、曲げることにより強度が大きくなり、特に、段ボールは、その波形板が波形状に曲がっているために、波形板の稜線に沿った方向の圧縮荷重に対しては、元来、相当高い強度を持っている。しかし、ライナは曲がっていない平板状であるために強度が低い。本発明の構成によれば、段ボールを複数積層し、かつ曲げて互いに固着して円筒形とすることにより、ライナも曲がるので、極めて圧縮強度の高い荷重受部材が得られる。この紙材からなる荷重受部材は、段ボールの持つ潜在的な強度を最大限に利用したものであり、従来のいかなる紙製品よりも格段に高い圧縮強度をもっており、この点で画期的な部材である。
【0012】
また、前記荷重受部材として用いることができる段ボール紙管は、片面段ボールの波形板の頂部に接着剤を塗布しながら片面段ボールを円筒形に巻回していくことで製作できるので、極めて加工性が良く、生産性が高くなる。
【0013】
さらに、紙管が段ボールで形成されているので、リサイクル性に優れている。つまり、段ボール紙管を溶剤に浸漬して溶かして、段ボールの原料として再利用する場合、溶剤が段ボールの波形板で形成された孔の中に入り込む。従って、段ボールの素材と溶剤との接触面積が大きくなって、段ボール紙管が溶け易い。
【0016】
本発明の好ましい実施態様によれば、長尺の片面段ボールを螺旋状に巻回した段ボール紙管において、各段ボール層における長尺の片面段ボールの長手方向に沿った側縁が互いに重ならず、かつ、互いに離れていないほぼ接した状態になっている。この構成によれば、厚い片面段ボールを螺旋状に巻回するに際して、各片面段ボール層における長尺の片面段ボールの長手方向に沿った端縁がほぼ接した状態で巻回することにより、各片面段ボール層を、重なった部分による径方向外方への大きな膨らみのない、正確な円筒形に設定することができる。そのため、より一層強度が大きくなる。また、片面段ボールは、一方の面にのみライナを有し、他方の面にライナがないから、波形板の稜線に直行する方向に沿って曲げ易いので、加工性が良い。
【0017】
また、片面段ボールを、その波形板が径方向の内側になるように巻回すると、波形板の内側に位置される頂部の周方向間隔が小さくなるように波形板が変形して、その波形の密度が高くなるため、軸方向の圧縮強度が一層高くなる。
【0018】
【実施例】
この発明の一実施例に係る段ボール紙管1Aは荷重受部材として使用されるもので、図1に示すように、長尺の片面段ボール2が螺旋状に巻回されて全体が円筒形になっている。円筒形に形成された段ボール層3n は、例えば、図1(B)に示すように、6層形成され、この6層の片面段ボール層3n (n=1〜6)が径方向に互いに固着されて積層され、段ボール積層体を形成している。その一番内側の片面段ボール層31 の内側表面と、一番外側の片面段ボール層36 の外側表面に補強材4,5が固着されている。この補強材4,5は紙材を複数回巻き付けて形成したものである。
【0019】
前記各長尺の段ボール2は、図1(C)に示すように、波形板2aの片面にライナ(平坦な紙材)2bが接着剤で固着された一般的な片面段ボールであり、図3の片面段ボール原反20から、二点鎖線で示す切断線2cに沿って切り取られたものである。この長尺の片面段ボール2は、波形板2aの稜線2dに直交する方向Rに長手方向が設定されており、図2のように、前記稜線2dに斜交する方向R1、つまり、段ボール紙管1Aの周方向R1に沿って、波形板2aが径方向の内側に、ライナ2bが径方向の外側にそれぞれ位置するように、曲がりながら螺旋状に巻回されている。
【0020】
前記片面段ボール2は、その稜線2dに直交する断面が波形であるから、断面2次モーメントが大きく、稜線2dの方向に沿って曲げるのは困難であるが、稜線2dに沿った断面の2次モーメントは小さいので、稜線2dに直交する方向Rに沿って曲げるのは容易である。特に、この片面段ボール2は、両面段ボールと比べて曲げ易い利点がある。
【0021】
また、前記片面段ボール2における長手方向Rに沿った側縁2eは、図2に示すように、互いに接触している。つまり、各片面段ボール層3n における片面段ボール2の側縁2eは、互いに重ならず、かつ、互いに離れていないほぼ接した状態になっている。これにより、各片面段ボール層3n が正確な円筒形に形成されている。内側の補強材4は、紙材からなるシートを複数回巻いたもので、片面段ボール2の場合と同様に、その側縁4e同士がほぼ接した状態になっている。これに対して、外側の補強材5は、やはり紙材からなるシートを複数回巻いたものであり、その側部5a同士が若干重なり合っている。なお、この補強材5も、内側の補強材4と同様に、その側縁5e同士をほぼ接した状態で巻き付けてもよい。
【0022】
一方、前記片面段ボール2の前記側縁2eは、径方向に隣接する片面段ボール層3n および3n +1 (n=1〜5)において、互いに重ならないよう巻回されており、隣接する片面段ボール層3n および3n +1 のライナ2bと波形板2aの波形の頂部2fとが、互いに接着剤で固着されている。それによって、各片面段ボール層3n ,3n +1 が円筒形の形状を保形している。例えば、最外周の長尺の片面段ボール2の側縁2eと、その内側の長尺の片面段ボール2の破線で示す側縁2eとは、互いに重ならない位置に設定されており、最外周の片面段ボール層36 の波形板2aの頂部2fと、その内側の片面段ボール層35 のライナ2bとが互いに接着剤で固着されていることにより、両段ボール層35,36 が円筒形の形状を保形している。
【0023】
さらに、前記段ボール紙管1Aの片面段ボール層3n は、図4に示すように、その各層がほぼ同一幅とされ、これら各層のうち下層側のものが軸方向に並んだ2つの分割層3a,3bから形成されている。例えば、前記6層の片面段ボール層3n のうち、最内層側の段ボール層31 から3層目の段ボール層33 までは、2つの分割層3a,3bで形成され、また、4層目の段ボール層34 から最外層の段ボール層36 までは、分割されない1枚の片面段ボール2により形成されている。
【0024】
次に、前記段ボール紙管1Aの製造手段の一例を図4によって説明する。同図では、芯材として固定軸7と、その軸方向一側(図4の右側)で径方向外方側に設けられた内側補強材(例えば紙材)4の収容ロール41と、このロール41から前記固定軸7に供給されて螺旋状に巻回された前記補強材4を固定軸7の軸方向他側に強制送りするための搬送装置8を備えている。
【0025】
前記搬送装置8は、前記固定軸7の両側方に配設されて、固定軸7と直交する軸心を有する駆動ローラ81および従動ローラ82と、これらローラ81,82間に掛け渡されたベルト83とからなり、このベルト83における引張側83aを芯材(固定軸)7に巻かれた前記補強材4に螺旋状に掛回し、緩み側83bを前記補強材4に巻回しないで、直接両ローラ81,82間に張設している。こうしてベルト83の走行により、補強材4を固定軸7に巻き付けながら図4の矢印A方向に強制送りするようになっている。なお、同図では、前記内側補強材4を収容するロール41を1つだけ示しているが、実際には、複数個が設けられており、複数枚の補強材4を、その側縁部が一部重合された状態で前記固定軸7に供給して、内側の補強材4を形成するようになっている。
【0026】
また、前記搬送装置8における固定軸7の軸方向他側(図4の左側)で径方向外方側には、前記6層の片面段ボール層3n を形成するための片面段ボール2が収容された6個の第1〜第6ロール21〜26を設けている。これら各ロールのうち、第1〜第3ロール21〜23には、最内層側(1層目)ないし3層目の段ボール層31 〜33 を2つの分割層3a,3bで形成するために、2つに分割された片面段ボール2Aが収容されている。また、第4〜第6ロール24〜26には、4層目ないし最外層(6層目)の段ボール層34 〜36 を形成するために、分割されない1枚の片面段ボール2が収容されている。さらに、前記固定軸7の軸方向外方側には、外側の補強材(例えば紙材)5が収容されたロール51を設けている。
【0027】
そして、先ず、前記固定軸7の外周面に油のような滑材を塗布して、この固定軸7上に内側の補強材4を手で螺旋状に所定長さだけ巻付け、その後前記ベルト83を補強材4上に掛回して、前記駆動ローラ81を回転させることによりベルト83を回行させる。すると、前記固定軸7とこれに手巻きされた補強材4の間には滑材が塗布されているため、この補強材4が固定軸7上を滑ってA方向に強制送りされ、以後前記ベルト83により後続の補強材4が自動的に固定軸7上に螺旋状に巻回される。
【0028】
続いて、前記各ロール21〜26に収容された各片面段ボール2を、その波形板2aが下向きでライナ2bが上向きとなるように、強制送りされる補強材4の外周囲に互いに平行状に供給する。このように、各片面段ボール2の波形板2aを下向きに供給すると、前記補強材4への巻回時に波形板2aが径方向内側に位置し、その内周頂部間の間隔が小さくなるように波形板2aが変形し、その波形の密度が高くなって軸方向の圧縮強度が高められる。さらに、各段ボール2を補強材4に供給するときの傾角θはそれぞれ同一角度とされ、また、これら各段ボール2はそれぞれ、送りピッチよりも小さい寸法だけ軸方向にずらした位置で前記補強材4の外周に供給され、これにより、巻回された段ボール層3n が互いに一部重合するようになっている。
【0029】
ここで、最内層側の段ボール層31 ないし3層目の段ボール層33 は、2つの分割層3a,3bからなり、これら分割層3a,3bを形成する片面段ボール2Aが2つに分割されているため、これら2つ割り段ボール2Aの内外に位置される各分割層3a,3bが互いに一部重合されるような所定の寸法だけ、軸方向にずらした状態で巻回されている。
【0030】
例えば、図4に示すように、隣接する段ボール層3n 間のずらし寸法Dを巻きピッチの1/2よりも若干小さく設定しておくことにより、最内層側の段ボール層31 を形成する左右2つの分割層3a,3bに、2層目の段ボール層32 を形成する右側の分割層3bがオーバーラップ状に重合し、かつ、前記最内層側段ボール層31 の左側分割層3aの左側一部に、2層目の段ボール層32 の左側の分割層3aが一部重合されるようにする。4層目の段ボール層34 から最外層の段ボール36 までについても同様にずらし寸法を設定する。これにより、後述するように、前記各段ボール2の側縁2e同士を、前記内側補強材4への巻回時に互いに接触させて、強度に優れた円筒形状にできる。
【0031】
また、前記各段ボール2とともに外側の補強材5が、前記最外層の段ボール層36 の外周面に同一傾角θで供給される。なお、外側の補強材5の送りピッチは、前記各段ボール2と同一又は互いに異ならせるようにしてもよい。各段ボール2は、補強材4の外周に供給される前に、その下面、つまり波形板2aの表面に、図示しない接着剤塗布装置によって接着剤が塗布され、径方向の内外に隣接する段ボール層3n 間、および最内層の段ボール層31 と内側の補強材4との間が接着される。同様に、外側の補強材5も、その内面に接着剤が塗布されて、最外層の段ボール層36 の外周面に接着される。
【0032】
さらに、前記各段ボール2の側縁2e同士は、前記内側補強材4への巻回時に互いに接触させる。つまり、ここで、各片面段ボール層3n のライナ2bの巻回される直径をφn 、段ボール幅をPn とすると、各段ボール層3n における側縁2e同士を互いに接触させるためには、下記の(1) 式が成り立つ。
πφn ・sin θ=Pn …(1)
【0033】
また、前記各片面段ボール層3n の直径φn は、外側へ行くほど大きくなるので、段ボール幅Pn も外側へ行くほど徐々に大きくする。例えば、前記各片面段ボール層3n のうち、最内層側の段ボール層31 となる分割層3a,3bの幅を40.2,40.1mm(合計80.3mm)、2層目の段ボール層32 となる分割層3a,3bの幅を40.5,40.5mm(合計81.0mm)、3層目の段ボール層33 となる分割層3a,3bの幅を41.2,41.3mm(合計82.5mm)aとする。また、分割されない4層目の段ボール層34 となる片面段ボール2の幅を83.5mm、5層目の段ボール層35 となる片面段ボール2の幅を84.0am、最外層の段ボール層36 となる片面段ボール2の幅を84.5mmとする。つまり、各段ボール層3n の幅Pn は、外層へ行くほど若干大きくなるが、大まかにはほぼ同一である。
【0034】
以上の幅とすることにより、各片面段ボール2の側縁2e同士を互いに接触させ、かつ、波形板2aの型崩れを招くことなく、複数の段ボール層3n を同時に巻回できる。なお、外側の補強板5は、前記最外層段ボール層36 の幅より広幅の例えば85mmとする。
【0035】
そして、以上の各片面段ボール2と外側の補強材5とを、前記固定軸7上を螺旋送りされる内側の補強材4上に供給することにより、段ボール紙管1Aが連続製造される。そして、この紙管を適当な長さに切断することにより、図2に示す荷重受部材1Aが得られる。
【0036】
以上の荷重受部材1Aでは、径方向に積層された6層の片面段ボール層3n のうち、最内層側の段ボール層31 から3層目の段ボール層33 までが、2つの分割層3a,3bで形成されているため、前記固定軸7上を螺旋送りされる内側の補強材4に螺旋状に巻回したとき、各分割層3a,3bに皺が発生しにくい。したがって、最内層側の段ボール層31 から3層目の段ボール層33 までの波形板2aの型崩れを防止できる。また、4層目の段ボール層34 から最外層の段ボール層36 は、径方向外方に位置しているため、直径、つまり曲率半径が大きいので、元来、これらの波形板2aの型崩れは起こり難い。したがって、こうして得られた荷重受部材1Aは、その軸方向および径方向の圧縮強度や曲げ剛性が高いから、特に強度が要求されるたとえばテーブルなどの荷重受部材として好適な使用ができる。
【0037】
しかも、最内層側の段ボール層31 から3層目の段ボール層33 までを形成する2つの分割層3a,3bは、2つ一組として同時に巻回できる。つまり、分割層3a,3bからなる各片面段ボール層31 ないし33 を、広幅の一枚ものと同様に巻回できる。また、4層目の段ボール層34 から最外層の段ボール層36 までの分割されないものも広幅にできるので、結局、前記各片面段ボール2の内側補強材4に対する巻回ピッチ(補強材4による各段ボール2の送りピッチ)を大として、段ボール紙管1Aの効率的な製造が可能となる。特に、上述した前記各段ボール2では、従来の50mm幅に対し80mm以上の広幅とされているため、巻回ピッチを大として前記段ボール紙管1Aの生産性が高められる。
【0038】
なお、前記分割層3a,3bは、2つに限らず3つ以上に分割することができ、外層の段ボール層34 〜36 も必要に応じて分割される。また、内層側のものを多く分割し、外層側のものを少なく分割するようにしてもよい。さらに、前記各補強材4,5は各片面段ボール2の巻回とは別工程で螺旋状に巻き付けてもよい。また、前記各補強材4,5は、螺旋状に巻き付けるのではなく、荷重受部材1Aの軸方向長さに等しい幅の紙材を渦巻状に巻き付けて形成してもよい。
【0039】
図5は、この発明の第2実施例を示す段ボールの展開した斜視図であり、図5(A)に示すように、下層である第1層ないし第3層31 〜33 を、幅方向に分割しないで、その波形板2aをその稜線2dと直交する方向に切欠することにより、波形板2aの稜線2dに沿って適宜間隔で溝幅1〜2mmの溝からなる切欠部31が形成されている。この切欠部31は、図5(B)に示すように、波形板2aの高さ方向Hの全体にわたって形成され、波形板2aを横断する方向に延びており、ライナ2aには形成されない。これにより、段ボール2の曲がりに主として抵抗する部材である波形板2aが曲がり易くなり、その結果、波形板2aの稜線2dに斜交する方向の曲がりMに追従して、段ボール層31 〜33 を二点鎖線で示すように、皺なしに柔軟に曲げることができる。図5(A)に示す切欠部31の間隔Lnは、曲げ直径φの1/4〜1/1程度が好ましく、下層ほどこの間隔Lnを小さくして曲がり易くしてもよい。
【0040】
また、前記段ボール紙管1Aを製造するにあたっては、以上のように、前記各片面段ボール2を、前記固定軸7上を螺旋送りされる内側補強材4上に同時に巻回して製造するのではなく、先ず、この内側補強材4上に最内層側の片面段ボール2を供給して巻回させた後、その外周囲に2層目の片面段ボール2を巻回し、このように内層側のものに外層側の片面段ボール2を順次巻回することにより製造するようにしてもよい。
【0041】
前記荷重受部材1Aは、例えば、図6(A)、図6(B)に示すように、円筒形の軸線方向の両端部1e,1fがテーブル6の上板6aおよび下板6bに接着されて、テーブル6の桁材として利用される。前記テーブル6の上板6aおよび下板6bは、例えば、図6(C)に示す複両面段ボール2Aまたは図6(D)に示す両面段ボール2Bで構成されている。従って、上板6a、下板6bおよび荷重受部材1Aを含むテーブル6の全体が軽い段ボールで形成されているので、テーブル全体が極めて軽量になる。ただし、上板6aまたは下板6bは、木製としてもよい。このテーブル板6の下面に脚(図示せず)を付けてテーブルが構成される。
【0042】
さらに、前記荷重受部材1Aは、片面段ボール2が複数層に積層されたものであるから、径方向の厚みが大きくなり、従って、その端面の面積も大きくなる。しかも、荷重受部材1Aの両端面は、波形板2aによって、ハニカム構造のように孔2g(図1(C)参照)が多数あいているから、図6(E)に示すように、これらの孔2gに接着剤46の一部が入り込んで、波形板2aの側面2hに粘着する。従って、その分だけ接着面積が大きくなるから、接着強度が向上する。
なお、上記テーブル6の上板6aおよび下板6bや、荷重受部材1Aの外表面には、必要に応じて耐水紙を巻いたりして、防水処理を施す。
【0043】
前記テーブル6における荷重受部材1Aは、図示しない荷物の荷重を軸線方向Sに受ける。荷重受部材1Aは、長尺の片面段ボール2を螺旋状に巻回するとともに、円筒形の片面段ボール層3n を互いに固着して積層しているので、この荷重受部材1Aは、円筒形の軸線方向Sにおける圧縮強度および断面2次モーメントや曲げ剛性が従来よりも格段に大きくなっている。このように、片面段ボールの機械的性質を有効に利用しているので、前記テーブル6における荷重受部材1Aは、軽量で且つ強度の大きなものになっている。
【0044】
つまり、紙材は、一般的特性として、曲げることにより強度が大きくなる。段ボールは、その波形板が波形状に曲がっているために、波形板の稜線に沿った方向の圧縮荷重に対しては、元来、相当高い強度を持っている。しかし、ライナは曲がっていないために強度が低い。これに対し、本発明では、図2に示したように、片面段ボール2を複数積層し、かつ、曲げて互いに固着して円筒形とすることにより、ライナ2bも曲がるので、波形板2aの圧縮強度を損うことなく、ライナ2bの圧縮強度が増大する。従って、極めて圧縮強度の高い荷重受部材1Aが得られる。この紙材からなる荷重受部材1Aは、片面段ボール2の持つ潜在的な強度を最大限に利用したものであり、従来のいかなる紙製品よりも格段に高い圧縮強度をもっており、この点で画期的な部材である。
【0045】
さらに、この実施例では、片面段ボール2がその波形板2aを径方向の内側に位置させるように曲げて巻回されているので、波形板2aの内側の頂部2fの周方向に沿った間隔が小さくなるように波形板2aが変形するので、波形の密度が高くなる結果、荷重受部材1Aの圧縮強度が一層向上する。
【0046】
また、特に、前記荷重受部材1Aは、各片面段ボール層3n における側縁2e同士が互いに接触しているので、一般の紙よりも厚い片面段ボール2であっても、各片面段ボール層3n を正確な円筒形にすることができるから、荷重受部材1Aの強度がより一層大きくなっている。
【0047】
さらに、片面段ボール2は水のような溶剤に容易に溶けて、再び段ボールの原料となるから、リサイクル性が高い。つまり、段ボール紙管を溶剤に浸漬して溶かす際に、溶剤が段ボールの波形板で形成された孔2gの中に入り込む。従って、片面段ボール2の素材と溶剤との接触面積が大きくなるので、荷重受部材1Aつまり段ボール紙管が溶け易い。
【0048】
また、最内層の片面段ボール層31 の内側表面および最外層の片面段ボール層36 の外側表面に補強材4,5を固着させているので、荷重受部材1Aの剛性が更に向上して、強度が一層大きくなっている。この補強材4,5は内側または外側の一方のみとしても、それ相当の補強効果がある。
【0049】
さらに、前記荷重受部材1Aは、軸線方向Sに対して、波形板2aの稜線2dが傾斜しているので、図1に示すように、径方向からの荷重Fが加わった場合に、稜線2d(図3)に直交する方向の第1の応力σ1と、稜線方向の第2の応力σ2とで荷重Fに対抗する。従って、第1の応力σ1が小さくなり得るので、径方向からの外力、つまり図1において説明した横荷重に対する剛性が向上し、より一層強度が増大する。
【0050】
また、前記荷重受部材1Aは、片面段ボール2を素材としているから、波形板2aの両面にライナ2bを取り付けた両面段ボール2B(図4(D)参照)に比較して、素材が柔軟であるので、図3に示した波形板2aの稜線2dに直交する方向Rに沿って容易に曲げて巻回することができ、加工性が良い。
【0051】
図3の片面段ボール原反20は、ロール状に巻取りしたものを必要なだけ順次継ぎ足すことにより、R方向に所望の長さのものが得られるので、前記荷重受部材1Aを軸線方向に所望の長さに形成することができる。
【0052】
このように段ボール紙管を軸心方向に所望の長さに形成して、図7に示すように、フィルム9などを巻き付けるための芯管1Bとして用いることもできる。このとき、芯管1Bは径方向(横方向)からの荷重に対する強度も高いので、フィルム9の巻締め圧力によっても変形しない。
【0053】
また、図8に示すように、長く形成した段ボール紙管1Cをその軸線を含む分割面において、例えば2つに分割して、横断面が円弧状の分割体1Chとして用いることもできる。この場合、2つに分割された分割体1Ch,1Chからなる段ボール紙管1Cは、例えば、金属製のシャフト14を外部から覆って保護する保護管に用いることができる。
【0054】
さらに、図9に示すように、段ボール紙管1Dをフィルタとして使用することもできる。この場合、波形板2aとライナ2bとで形成されるハニカム構造のような多数の孔2gの内面に活性炭を添着させておき、このフィルタ1Dの孔3g内に気体または液体からなる浄化対象流体41を流す。こうすると、流体41が螺旋状の孔3gの内部を旋回しながら流れるので、攪拌が充分行われて、流体41中の不純物が活性炭に効果的に吸着され、充分浄化された浄化済み流体42が得られる。
【0055】
なお、前記荷重受部材1Aは、波形板2aを内側にし、ライナ2bを外側にして長尺の片面段ボール2を巻いたが、波形板2aを外側にし、ライナ2bを内側にして長尺の片面段ボール2を巻回してもよい。この場合、最も外周の片面段ボール層の波形板2bが露出するので、その表面に外側の厚い補強材5を接着するのが好ましいが、内側の補強材4は省略することも可能である。
【0056】
また、上記実施例では、片面段ボール層3n を6層としたが、7層以上設けてもよいし、2層ないし5層であってもよい。
【0057】
また、上記実施例の荷重受部材1Aを用いて構成した図6(A)および図6(B)のテーブル6を廃棄するとき、テーブル6を形成する上板6a、下板6bおよび荷重受部材1A、1Bをハンマーで殴打することにより、三者を容易に分離することができる。従って、廃棄物が嵩張らない。
【0058】
なお、上記実施例の荷重受部材1Aは、テーブル以外のもの、例えば、簡易的な椅子や収納箱脚などにも使用できる。その場合、荷重受部材1Aは、その円筒形の軸線方向に圧縮荷重を受けるように用いる。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明によれば、軽量で、かつ、波形板の型崩れを招くことなく、軸方向の圧縮荷重に対する強度や曲げ剛性に優れ、しかも生産性が高く、リサイクル性にも優れた段ボール紙管が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はこの発明の一実施例に係る段ボール紙管を示す側面図、(B)は同段ボール紙管を示す平面図、(C)は同段ボール紙管の素材である片面段ボールを示す断面図である。
【図2】同段ボール紙管を一部破断して示す斜視図である。
【図3】同段ボール紙管に使用する片面段ボールの素材を一部破断して示す平面図である。
【図4】同段ボール紙管の製造例を示す平面図である。
【図5】(A)はこの発明の第2実施例に係る段ボール紙管の段ボール層を展開して示す斜視図、(B)は(A)の要部を示す拡大した斜視図である。
【図6】(A)は段ボール紙管の第1の使用例を示すテーブルの側面図、(B)は上板が除去された同テーブルを示す平面図、(C)は同テーブルの上板および下板の素材の一例である両面段ボールを示す断面図、(D)は同テーブルの上板および下板の素材の一例である両面段ボールを示す断面図、(E)は同テーブルの接着部を示す縦断面図である。
【図7】この発明の段ボール紙管の第2の使用例を示す斜視図である。
【図8】同段ボール紙管の第3の使用例を示す斜視図である。
【図9】同段ボール紙管の第4の使用例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1A,1B,1C…段ボール紙管、2…片面段ボール、2a…波形板、2b…ライナ、2d…稜線、3n …片面段ボール層、3a,3b…分割層。
Claims (3)
- 波形板の片面にライナを固着してなる片面段ボールを、波形板の稜線に直交する方向に長尺に形成した片面段ボール層が、軸方向にずれた状態で径方向に重合されて、前記波形板の稜線に斜交する方向に沿って曲がりながら螺旋状に巻回されて円筒形の段ボール積層体が形成され、
前記段ボール積層体の径方向に重合された各片面段ボール層はほぼ同一幅を有し、少くとも下層の片面段ボール層は軸方向に並んだ複数の分割層からなり、前記分割層の合計幅が前記同一幅に等しい段ボール紙管。 - 請求項1において、各片面段ボール層における長尺の片面段ボールの長手方向に沿った側縁は、互いに重ならず、かつ、互いに離れていないほぼ接した状態になっている段ボール紙管。
- 請求項1または2において、前記長尺の片面段ボールは、波形板が径方向の内側に、ライナが径方向の外側にそれぞれ位置するように巻回されている段ボール紙管。
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