JP3761859B2 - 重防食鋼矢板継手部の防食構造及び防食方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、海洋環境下で並列して打設される鋼矢板の継手部を防食する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、海洋環境下で土止めや水止めに用いられる鋼矢板は、施工現場で継手を介して相互に連結して組み合わされて打設されるものである。長期間にわたる潮の飛翔、干満に晒される状況の下で鋼矢板の腐食を防食する観点から、鋼矢板に重防食被覆膜を施した重防食鋼矢板(特許文献1参照)や、水面下における重防食被覆膜の剥離防止を施した重防食鋼矢板(特許文献2参照)が知られている。
【0003】
このような重防食鋼矢板は、継手以外の部分については、重防食被覆膜の剥離を防止し得るものの、継手部分については、予め工場で重防食被覆膜を施すことができず、たとえ、継手に重防食被覆膜を施したとしてもその重防食鋼矢板を組み合わせる際に継手同士が擦れてその重防食被覆膜が剥がれて無防食に近い状態になる。
【0004】
そのため、施工現場で鋼矢板の継手部分を防食する対策として、鋼矢板にポリエチレン被覆膜を形成した上で相互の継手の間に形成された隙間部分をポリエチレンシートで覆った後に超音波により溶着する技術(特許文献3参照)や、重防食鋼矢板に予めボルトを溶着した上でそのボルトに保護カバーを嵌めてナットで締結することにより重防食鋼矢板の継手部分を覆う技術(特許文献4参照)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−189280号公報
【特許文献2】
特許第3285817号公報
【特許文献3】
特開2001−131957号公報
【特許文献4】
特開平11−280058号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の重防食鋼矢板の継手部分を防食する技術においては、超音波や溶着の際に生じる熱に起因して重防食被覆膜のもつ物性や接着性が低下したり、超音波による接着が不連続であるという問題や、あるいは、既設の重防食鋼矢板に保護カバーを取り付ける場合には、水面下で、継手の狭い領域にボルトを溶着したり、そのボルトに保護カバーを取り付けたりする作業が困難である一方で、ボルトを溶着する部分に重防食被覆膜が形成されている場合には、その重防食被覆膜を剥離しなけばならいないという問題があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、長期に亘る潮の飛翔、干満に晒された重防食鋼矢板の相互の継手部を重防食被覆膜が施されていない部分を含めて強固に且つ簡便に防食するとともに防食被覆膜の剥離を防止し、ひいては鋼矢板自体の寿命の長期化を図り得る重防食鋼矢板継手の防食構造及び防食方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、互いに隣接する鋼矢板に第1、第2の重防食被覆膜が所定の範囲でそれぞれ形成された第1、第2の重防食鋼矢板の継手が相互に結合された継手部に対し、該継手部の長手方向に延在する長尺板状の保護カバーにより、前記第1、第2の重防食鋼矢板の双方の継手の間に形成された継手隙間を含む継手領域を遮蔽して固定することによって前記継手部を防食する重防食鋼矢板継手部の防食構造であって、前記保護カバーは、断面略L字状に一体的且つ弾性的に折曲形成された差込板部と遮蔽板部とからなり、該差込板部は、その先端部が前記継手隙間に差し込まれて前記第1の重防食鋼矢板の継手上の所定部位に当接した状態でその折曲角部が前記第2の重防食被覆膜の端部に当接するように構成されているとともに、前記遮蔽板部は、前記折曲角部が前記第2の重防食被覆膜の前記端部に当接した状態でその先端部が前記継手領域における前記第1の重防食被覆膜上の所定部位に当接するように構成され、前記遮蔽板部には、押圧調整部材が設けられ、該押圧調整部材は、前記第1の重防食鋼矢板を押圧した状態で該第1の重防食鋼矢板と前記遮蔽板部の間隔を調整するように構成され、前記第1、第2の重防食鋼矢板の前記継手部と前記保護カバーとの間で形成された前記継手領域には、水中硬化性防食材が充填されていることを特徴とする重防食鋼矢板継手部の防食構造を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0009】
本発明によれば、保護カバーを押圧調整部材により撓ませるだけで第1、第2の重防食鋼矢板に固定することができることに加え、保護カバー内の継手領域に水中硬化性防食材を充填してその接着性により保護カバーをさらに強固に固定できるため、保護カバーの防水作用と水中硬化性防食材の防食作用とが相まって、重防食被覆膜の端部分の剥離の防止や、重防食被覆膜が施されていない継手部の防食を簡便且つ強固に行うことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明に係る重防食鋼矢板継手部の防食構造の好ましい一実施形態を図面を参照して説明する。
図1又は図2に示すように、本実施形態の重防食鋼矢板継手部の防食構造1は、互いに隣接する鋼矢板21、22に第1、第2の重防食被覆膜21b、22bが所定の範囲でそれぞれ形成された第1、第2の重防食鋼矢板21A、22Aの継手21a、22aが相互に結合された継手部に対し、継手部の長手方向に延在する長尺板状の保護カバー10により、第1、第2の重防食鋼矢板21A、22Aの双方の継手21a、22aの間に形成された継手隙間Cを含む継手領域を遮蔽して固定することによって第1、第2の重防食鋼矢板21A、22Aの継手部を防食する構造である。
【0011】
保護カバー10は、断面略L字状に一体的且つ弾性的に折曲形成された差込板部11と遮蔽板部12とからなり、差込板部11は、その先端部が継手隙間Cに差し込まれて第1の重防食鋼矢板21Aの継手21a上の第1継手当接縁部(所定部位)に当接した状態でその折曲角部が第2の重防食被覆膜22bの第2被覆端面P2(端部)に当接するように構成されているとともに、遮蔽板部12は、折曲角部が第2被覆端面P2に当接した状態でその先端部が継手領域Cにおける第1の重防食被覆膜21b上の第1被覆当接縁部P3(所定部位)に当接するように構成されている。
【0012】
保護カバー10の遮蔽板部12には、押圧調整部材30が設けられ、この押圧調整部材30は、第1の重防食鋼矢板21Aを押圧した状態でその第1の重防食鋼矢板21Aと遮蔽板部12の間隔を調整するように構成されている。
第1、第2の重防食鋼矢板21A、22Aの継手部と保護カバー10との間で形成された継手領域には、水中硬化性防食材が充填されている。
以下、かかる重防食鋼矢板継手部の防食構造1の詳細を説明する。
【0013】
本実施形態に用いられる鋼矢板21は、例えば、断面U形状の長尺板状のもので、その両端部には、内側に折れ曲がった略鉤状の継手21aが形成されている。かかる点は、鋼矢板22、23についても同様であり、以下、鋼矢板21、22を第1の鋼矢板21、第2の鋼矢板21、22とする。
【0014】
第1の鋼矢板21の継手21a部分を除く外面(海水に晒される側の面)には、押圧調整部材30に当接しない範囲で第1の重防食被覆膜21bが形成されている。この第1の重防食被覆膜21bは、従来品と同様、通常、ポリエチレンライニング及びウレタンエラストマーライニング等であり、その厚さを2mm〜3mmにしたものである。
【0015】
そして、第1の鋼矢板21に第1の重防食被覆膜21bが施された第1の重防食鋼矢板21Aと、第2の鋼矢板22に第2の重防食被覆膜22bが施された第2の重防食鋼矢板22Aとは、それぞれの継手21a、22aが相互に結合された状態で並列して打設される。
第1の重防食鋼矢板21Aの継手21aと、第2の重防食鋼矢板22Aの継手22aとの間には、継手隙間Cが形成されている。保護カバー10が遮蔽すべき継手領域は、その継手隙間Cを含み、第1、第2の継手21a、22aとの間に第2被覆膜端縁部P2及び第1被覆当接縁部P3を境界とする閉じた空間領域である。
【0016】
保護カバー10は、これ自体を撓ませる弾性及びこれ自体の防食の観点から、例えば、ステンレス鋼板やポリ塩化ビニル(PVC)樹脂を用いて、差込板部11が遮蔽板部12に対して所定の差込角度θで傾いた薄肉梁状に形成され、さらに、遮蔽板部12の外側の角部周辺には、剥離防止板部13が溶接又は溶着等により固定されている。
【0017】
差込板部11は、その幅W1が、第1継手当接縁部P1と第2被覆端面P2の間隔に設定された平板状に形成されている。ここで、第1、第2の鋼矢板21、22の継手21a、22aの形状、大きさ等により継手隙間Cの大きさが異なるため、差込板部11の幅W1は、10mm〜40mmに設定されている。
遮蔽板部12は、その幅W2が、第1被覆当接縁部P3と第2被覆端面P2の間隔に設定されるように先端部分が曲面状に形成されている。差込板部11及び遮蔽板部12の厚さは、遮蔽板部12の折曲角部を第2被覆端面P2に当接させる観点から、第2の重防食被覆膜22bの厚さより小さく、0.5mm〜3mmに設定されている。
【0018】
保護カバー10の傾斜角度θは、押圧調整部材(詳細後述)30によって先端部が第1の重防食被覆膜21bに当接した遮蔽板部12に対し、差込板部11が、継手22aを除いた第2の鋼矢板22の部分の傾斜とほぼ等しくなるような角度、即ち、その折曲角部が第2被覆端面P2と第2の鋼矢板22の外面の間で形成される段差部分に当接する角度に設定されている。
【0019】
剥離防止板部13は、第2の重防食被覆膜22bの剥離防止の観点から、差込板部11の外面に対し、第2の重防食被覆膜22bの厚さ分だけ内側にずれて配置されている。
【0020】
押圧調整部材30は、ナット31と、これとねじ結合する押圧ボルト32とからなり、保護カバー10の遮蔽板部12に直列的に複数配設されている(図1参照)。ナット31は、保護カバー10の遮蔽板部12の内面の所定位置に固着され、これに対応して、遮蔽板部12には、貫通孔12aが形成されている。押圧ボルト32は、一端部に押圧面が形成され、他端部に六角レンチ用穴が形成されたものである(図4(b)参照)。ここに、第1の重防食被覆膜21bは、それ自体を保護する観点から、押圧ボルト32と当接しない部分にまで形成されている。押圧ボルト32の長さは、その押圧面が第1の鋼矢板21の外面に当接した状態で他端部が遮蔽板部12の貫通孔12aから幾分はみ出る長さに設定されている。
【0021】
第1、第2の重防食鋼矢板21A、22Aと保護カバー10の間で形成される継手領域には、水中硬化性防食材40が充填される。
この水中硬化性防食材は、水中で硬化可能で硬化後に防食機能を有するものであればよいが、主剤と硬化剤とからなる2液型のものが好ましく、主剤としては、通常、例えば、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリサルファイド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の水中硬化型防食用樹脂が挙げられる。これらの中でも、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂及びフッ素系樹脂は、水中硬化性に優れるため好ましい。
【0022】
また、上記水中硬化型防食用樹脂としては、継手領域内の第1、第2の重防食被覆膜21b、22bが形成されていない第1、第2の鋼矢板21、22を防食する観点、及び水中での固化により保護カバー10を第1、第2の鋼矢板21、22に接着させる観点から、適当なインヒビター等を添加したウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が好ましい。この水中硬化型防食用樹脂は、保護カバー10内の継手領域に充填された場合、その内部から保護カバー10と第1、第2の重防食鋼矢板21A、22Aとの間に生じた隙間から漏れるの防止するため、適当な粘性を有するように調整されていることが好ましい。
【0023】
以下、本実施形態の保護カバー10及び押圧調整部材30のの使用態様及び作用を説明する。
図2に示すように、まず、互いに隣接して打設された第1、第2の重防食鋼矢板21A、22Aに保護カバー10を取り付ける段階では、第1、第2の継手21a、22aの継手隙間Cに保護カバー10の差込板部11を強制的に差し込み、その折曲角部を第2の重防食被覆膜22bの第2被覆端面P2に突き当てた状態で、その先端部を第1の継手21a上の第1継手当接縁部P1に当接する。
また、保護カバー10の遮蔽板部12の先端部を第1の重防食被覆膜21b上の第1被覆膜当接縁部P3に当接する。
【0024】
この場合、保護カバー10の剥離防止板部13は、第2の防食被覆膜22の端部分を遮蔽する。また、押圧調整部材30の押圧ボルト32は、予め、遮蔽板部12の先端部が第1被覆膜当接縁部P3に当接したまま、その押圧面が第1の鋼矢板21の外面に当接するようなねじ高さに設定しておく。
【0025】
次いで、第1、第2の重防食鋼矢板21A、22Aに保護カバー10を固定する段階では、押圧ボルト32を所定のピッチ分だけ締め付け、第1の鋼矢板21の外面と遮蔽板部12の内面の間隔を拡げる。
これにより、遮蔽板部12が、その先端部を第1の重防食被覆膜21b上を内側に摺動させつつ第2被覆端面P2を支軸として第1の鋼矢板21の外面から離れる方向に撓み、これに伴って、差込板部11が第1の継手21aの外面に接近する方向に撓むとともに、剥離防止板部13が第2の重防食被覆膜22bの外面に接近する方向に撓む。
【0026】
この場合、図3に示すように、保護カバー10が第1、第2の重防食鋼矢板21A、22Aに与える外力は、主に、遮蔽板部12が押圧調整部材30を介して第1の鋼矢板21の外面に作用する外力F1、差込板部11の先端部が第1継手当接縁部P1に作用する外力F2、差込板部11の折曲角部が第2被覆端面P2に作用する外力F3、剥離防止板部13が第2の重防食被覆膜22bの端部分に作用する外力F4等である。
そして、保護カバー10は、外力F1〜F4の反力を受けて静力学的につりあい、第1、第2の重防食鋼矢板21A、22Aに固定される。
【0027】
その後、第1,第2の重防食鋼矢板21A、22Aと保護カバー10との間に形成された継手領域内に水中硬化性防食材を充填する。この際、その継手領域の下側から水中硬化型防食材が漏れるのを防止するため、第1,第2の重防食鋼矢板21A、22Aと保護カバー10の底部分に底板を介在させる。
そして、海面下において、水中硬化性防食材が固化すると、保護カバー10が第1、第2の重防食鋼矢板21A、22Aに接着される。すなわち、この接着力は、保護カバー10の撓みに基づく固定力を補うことになる。
【0028】
以上述べたように本実施形態によれば、保護カバー10により、第1の重防食被覆膜21bの端部分を含めた継手領域を遮蔽し、押圧調整部材30により保護カバー10を撓ませるだけで保護カバー10を第1、第2の重防食鋼矢板21A、22Aに固定するようにしたことから、熱溶着等による重防食被覆膜の物性や接着性を低下させることなく、また、重防食被覆膜を剥離せずにそのまま保護カバー10を取り付けるだけで継手領域への海水の浸入を遮断できるため、第1の重防食被覆膜21bの端部分の剥離の防止や、第1、第2の重防食被覆膜21b、22bが施されていない第1、第2の継手21a、22aを防食を簡便に行うことができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、保護カバー10内の継手領域に水中硬化性防食材を充填するようにしたことから、第1の重防食被覆膜21bの端部分の剥離の防止や、第1、第2の重防食被覆膜21b、22bが施されていない第1、第2の継手21a、22aを防食をさらに強化できるとともに、保護カバー10をさらに強固に固定できるため、長期に亘る潮の飛翔、干満から、第1、第2の重防食鋼矢板21A、22Aを防食し、第1の重防食被覆膜21bの剥離を防止し、ひいては鋼矢板自体の寿命の長期化を図ることができる。
【0030】
さらに、本実施形態によれば、保護カバー10の固定する際に剥離防止板部13を第2の重防食被覆膜22bの端部に押さえ付けてその部分に海水が浸入しないようにしたことから、第2の重防食被覆膜22bの剥離をも防止することができる。
【0031】
さらにまた、本実施形態によれば、押圧調整部材30の大部分を保護カバーの内部に配置するようにしたことから、押圧調整部材30自体を防食でき、また、押圧調整部材30にボルト及びナットを適用したことから、第1の鋼矢板21の外面と遮蔽板部12の内面の間隔を容易に調整することができ、ひいては、保護カバー10の撓みに基づく固定力を調整することができる。
【0032】
本発明は、上記実施形態に限られることなく、種々の変更等を行うことができる。
上記実施形態においては、保護カバー10の傾斜角度θを第1、第2の重防食鋼矢板21A、22Aに取り付ける際の角度とほぼ同一にしたが、本発明の場合、保護カバー10の傾斜角度θをその取り付ける際の角度より小さくして保護カバー10の撓み量を大きくし、その撓みに基づく固定力を強化することもできる。
【0033】
また、保護カバー10の外面に重防食被覆膜を施したり、剥離防止板部13の外面と第2の重防食被覆膜22bの外面にわたるように別の重防食被覆膜を形成することによって、保護カバー10自体の防食、これに伴う第1、第2の重防食鋼矢板21A、22Aの防食の強化、第2の重防食被覆膜22bの剥離防止の強化を図ることができる。
さらには、遮蔽板部12の先端部の外面と第1の重防食被覆膜21bの外面にわたるように、弾性体からなる別の保護カバーを設けてもよい。
【0034】
また、上記実施形態においては、断面U字形の鋼矢板に適用する保護カバーを示したが、本発明の場合、断面Z形、H形等の鋼矢板に対しては、本発明の範囲内で適宜変更を加えた保護カバーを適用することができる。
【0035】
〈評価試験例〉
図4(a)、(b)に示すように、上記実施形態の保護カバー10及び押圧調整部材30を、U形の重防食鋼矢板の継手部に固定し、保護カバー10の取り付け強度の評価試験を行った。ここでは、保護カバー10は、ポリ塩化ビニル(PVC)製のものを用い、その厚さが2mm、その幅W2が50mmである。
評価試験は、保護カバー10の遮蔽板部12からはみ出た押圧ボルト32(M8)にナット51を締め付けた上で、このナット51に、ブロック材52を固定したスタッドボルト52をねじ結合し、そのブロック材52をばね秤で引っ張ることにより、取り付け強度Fを測定して行う。
【0036】
[評価試験1]
大気中において、保護カバー10のみを重防食鋼矢板に固定し、取り付け強度Fを測定した。その測定値は、12〜20Kgf(118〜196N)であった。
[評価試験2]
海水中において、保護カバー10のみを重防食鋼矢板に固定し、取り付け強度Fを測定した。その測定値は、12〜18Kgf(118〜177N)であった。
[評価試験3]
大気中において、保護カバー10を重防食鋼矢板に固定した上で水中硬化型防食用樹脂(ウレタン樹脂)を充填し、取り付け強度Fを測定した。その測定値は、35〜54Kgf(343〜536N)であった。
[評価試験4]
海水中において、保護カバー10を重防食鋼矢板に固定した上で水中硬化型防食用樹脂(ウレタン樹脂)を充填し、取り付け強度Fを測定した。その測定値は、23〜36Kgf(226〜353N)であった。
【0037】
以上の評価試験から、大気中、海水中において、保護カバーのみでも取り付け強度Fが十分に大きく、保護カバー10を重防食鋼矢板の継手部に強固に固定できるが、水中硬化型防食用樹脂(ウレタン樹脂)を充填すると取り付け強度Fがさらに大きくなり、より強固に保護カバー10を固定できることが明らかになった。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、長期に亘る潮の飛翔、干満に晒された重重防食鋼矢板の相互の継手部を重防食被覆膜が施されていない部分を含めて強固に且つ簡便に防食するとともに防食被覆膜の剥離を防止し、ひいては鋼矢板自体の寿命の長期化を図り得る重防食鋼矢板継手の防食構造及び防食方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の重防食鋼矢板継手部の防食構造の概略構成を示す斜視図である。
【図2】同防食構造の要部を示す断面図である。
【図3】同防食構造の作用を説明する図である。
【図4】(a):同防食構造の保護カバーの取り付け強度の評価試験を説明する図である。
(b):(a)のQ部分を拡大して示す図である。
【符号の説明】
10 保護カバー
11 差込板部
12 遮蔽板部
21、22 鋼矢板
21A、22B 第1、第2の重防食鋼矢板
21b、22b 第1、第2の重防食被覆膜
30 押圧調整部材
31 ナット
32 押圧ボルト
P1 第1継手当接縁部
P2 第2被覆端面
P3 第1被覆当接縁部
Claims (5)
- 互いに隣接する鋼矢板に第1、第2の重防食被覆膜が所定の範囲でそれぞれ形成された第1、第2の重防食鋼矢板の継手が相互に結合された継手部に対し、該継手部の長手方向に延在する長尺板状の保護カバーにより、前記第1、第2の重防食鋼矢板の双方の継手の間に形成された継手隙間を含む継手領域を遮蔽して固定することによって前記継手部を防食する重防食鋼矢板継手部の防食構造であって、
前記保護カバーは、断面略L字状に一体的且つ弾性的に折曲形成された差込板部と遮蔽板部とからなり、該差込板部は、その先端部が前記継手隙間に差し込まれて前記第1の重防食鋼矢板の継手上の所定部位に当接した状態でその折曲角部が前記第2の重防食被覆膜の端部に当接するように構成されているとともに、前記遮蔽板部は、前記折曲角部が前記第2の重防食被覆膜の前記端部に当接した状態でその先端部が前記継手領域における前記第1の重防食被覆膜上の所定部位に当接するように構成され、
前記遮蔽板部には、押圧調整部材が設けられ、該押圧調整部材は、前記第1の重防食鋼矢板を押圧した状態で該第1の重防食鋼矢板と前記遮蔽板部の間隔を調整するように構成され、
前記第1、第2の重防食鋼矢板の前記継手部と前記保護カバーとの間で形成された前記継手領域には、水中硬化性防食材が充填されていることを特徴とする重防食鋼矢板継手部の防食構造。 - 前記保護カバーは、前記押圧調整部材によって定められた前記遮蔽板部に対し、前記差込板部が、前記折曲角部が前記第2の重防食被覆膜の前記端部及び前記第2の重防食鋼矢板上の間で形成された段差部分に当接する所定の角度で傾いた薄肉梁状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の重防食鋼矢板継手部の防食構造。
- 前記押圧調整部材は、前記保護カバーの前記遮蔽板部の内面に固着されたナットと、該ナットとねじ結合する所定長さの雄ねじとから構成されていることを特徴とする請求項1又は2の何れか1項記載の重防食鋼矢板継手部の防食構造。
- 前記保護カバーには、前記第2の重防食被覆膜を覆う剥離防止板部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の重防食鋼矢板継手部の防食構造。
- 互いに隣接する鋼矢板に第1、第2の重防食被覆膜が所定の範囲で形成された第1、第2の重防食鋼矢板の継手を相互に結合した継手部に対し、請求項1乃至4の何れか1項記載の保護カバー及び押圧調整部材を用い、
前記第1、第2の重防食鋼矢板の双方の継手の間に形成された隙間部分に前記保護カバーの前記差込板部を挿入しつつ前記差込板部の先端部を前記第1の重防食鋼矢板の継手上に当接した状態で前記差込板部の折曲角部を前記第2の重防食被覆膜の端部に突き当てるとともに、前記保護カバーの前記遮蔽板部の先端部を前記第1の重防食被覆膜上に当接することによって前記保護カバーを前記第1、第2の重防食鋼矢板の双方に取り付け、
前記押圧調整部材により前記第1の重防食鋼矢板を押圧した状態で前記第1の重防食鋼矢板と前記保護カバーの前記遮蔽板部の間隔を調整して前記遮蔽板部を撓ませることにより、前記遮蔽板部の先端部を前記第1の重防食被覆膜上に当接したまま、前記差込板部の先端部を前記第1の重防食鋼矢板の継手上に突き当てるとともに折曲角部を前記第2の重防食鋼矢板の前記段差部分に突き当てることによって、前記保護カバーを前記第1、第2の重防食鋼矢板の双方に固定し、
前記第1、第2の重防食鋼矢板の前記継手部と前記保護カバーとの間に形成された空間部分に水中硬化性防食材を充填することを特徴とする重防食鋼矢板の防食方法。
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