JP3761818B2 - 成形板材矯正装置及び成形板材矯正方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂によって一体的に成形され平板部及び当該平板部の端部において当該平板部から折れ曲がった方向に延びる側板部を有する板材の形状を矯正する装置及び方法に関するものである。
【0002】
【発明の背景】
図3に示すように、本発明の板材として、例えば、自動車の前部座席のうちの後部のベース板W(フロントシートバックボード)がある。
そのベース板Wは、平板部P1及び一対の側板部P2を一体的に有している。側板部P2は、平板部P1の両端部において、斜め前方に向かっている。すなわち、一対の側板部P2は、平板部P1の両端部において平板部P1から折れ曲がった方向に延びている。
【0003】
ベース板Wは、本体部L1のおもて面に表皮材L2が設けられて形成されている。ベース板W(本体部L1及び表皮材L2とも)は、合成樹脂によって一体的に成形されて形成されている。例えば、本体部L1は、添加剤を含有するポリプロピレン等によって形成され、表皮材L2は、オレフィン系熱可塑性樹脂又はポリ塩化ビニル(発泡体によって裏打ちされている場合もある)等によって形成されている。その成形の際には、平板部P1に対する各側板部P2の折れ曲がり角度θが所望のものになるように成形される。
【0004】
上記のようなベース板Wでは、成形後に樹脂が冷却して収縮することによって、各側板部P2が外側へ広がって、変形してしまう。すなわち、平板部P1に対する各側板部P2の折れ曲がり角度θが、所望のものより小さくなってしまう。なぜならば、ベース板Wの断面において、一方の側板部P2の端部からその側板部P2,平板部P1,他方の側板部P2に沿って当該他方の側板部P2の端部に及ぶ長さについては、ベース板Wの外側部分の方がベース板Wの内側部分よりも長いため、同じ収縮率で収縮することによって、ベース板Wの外側の方が大きく収縮するからである。
【0005】
【従来の技術】
以上の背景の下、従来においては、図4に示すように、ベース板Wの成形直後(ベース板Wに柔軟性がある状態)に、作業員の手によって、各側板部P2が内側に(すなわち、平板部P1に対する各側板部P2の折れ曲がり角度θが大きくなる方向に)押圧されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法によって、ベース板Wの変形が一応抑制される。
しかしながら、上記の方法では、その押圧度合い等にばらつきが生じ、平板部P1に対する側板部P2の折れ曲がり角度が所定のものになるとは限らず、その折れ曲がり角度にばらつきが生じてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、合成樹脂によって一体的に成形され平板部及び当該平板部の端部において当該平板部から折れ曲がった方向に延びる側板部を有する板材に対して、平板部に対する側板部の折れ曲がり角度を適切に矯正する技術を提供することを課題する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、合成樹脂によって一体的に成形され平板部及び当該平板部の端部において当該平板部から折れ曲がった方向に延びる側板部を有する板材の形状を矯正する装置であって、前記板材の平板部がセットされる平板部セット部と、前記平板部と前記側板部との境界部分に対して熱風を供給する熱風供給機構と、前記平板部に対する前記側板部の折れ曲がり角度が大きくなる方向に前記側板部を押圧する押圧機構と、前記平板部と前記側板部との境界部分に対して冷却用気体を供給する冷却用気体供給機構とを有する、成形板材矯正装置である。
【0009】
この発明の成形板材矯正装置では、平板部セット部に板材の平板部がセットされ、熱風供給機構によって平板部と側板部との境界部分に対して熱風が供給されることにより、その境界部分の柔軟性が高まる。
次に、押圧機構によって、平板部に対する側板部の折れ曲がり角度が大きくなる方向に側板部が押圧されて、側板部がその押圧方向に変形する。それとともに、冷却用気体供給機構によって境界部分に対して冷却用気体が供給されることにより、境界部分の柔軟性が低下する。
このようにして、この発明の成形板材矯正装置によれば、板材の形状(平板部に対する側板部の折れ曲がり角度)が矯正される。そして、熱風供給機構、押圧機構及び冷却用気体供給機構の作動内容が所定ものに制御されることによって、板材が適切に矯正される。
【0010】
また、この発明の成形板材矯正装置は、熱風供給機構を有しているため、成形されてから所定時間が経過してほぼ常温となった板材に対して矯正を行うことができる(すなわち、境界部分を再度高温にしてから側板部を押圧することができる)。
そして、ほぼ常温となった板材に対して矯正をすることによって、次の効果が得られる。
すなわち、合成樹脂による多数の同一の板材が順次成形される際に、各板材が成形された直後から所定の時間帯においては、各板材が成形されてからの経過時間によって、各板材ごとに温度が大きく異なる。しかし、各板材が一旦ほぼ常温となることによって、各板材の間の温度差はほとんどなくなり、その後の加熱条件が同じであれば各板材の境界部分はほぼ同じ温度(高温状態)となり、各板材の境界部分の柔軟性はほぼ同じとなる。
その状態で、各板材の側板部に対して所定の量の押圧がされるとともに各板材の境界部分が冷却されて固化されることによって、各板材における平板部に対する側板部の折れ曲がり角度は、ほぼ均一に所望のものになる。
以上のようにして、この発明の成形板材矯正装置では、多数の板材がほぼ均一にかつ適切に矯正され得る。
【0011】
請求項2に係る発明は、合成樹脂によって一体的に成形され平板部及び当該平板部の端部において当該平板部から折れ曲がった方向に延びる側板部を有する板材の形状を矯正する方法であって、前記板材が成形された後において常温となった後に、当該板材の平板部と前記側板部との境界部分に対して熱風を供給する熱風供給工程と、前記平板部に対する前記側板部の折れ曲がり角度が大きくなる方向に前記側板部を押圧するとともに、前記平板部と前記側板部との境界部分に対して冷却用気体を供給する、押圧冷却工程とを有する、成形板材矯正方法である。
【0012】
この発明の成形板材矯正方法では、板材が成形された後において常温となった後に、熱風供給工程において、その板材の平板部と側板部との境界部分に対して熱風が供給される。
次に、押圧冷却工程において、平板部に対する側板部の折れ曲がり角度が大きくなる方向に側板部が押圧されることによって側板部がその押圧方向に変形するとともに、平板部と側板部との境界部分に対して冷却用気体が供給されることによって境界部分の柔軟性が低下する。
このようにして、この発明の成形板材矯正方法によれば、板材の形状(平板部に対する側板部の折れ曲がり角度)が矯正される。そして、熱風供給工程及び押圧冷却工程における動作内容が所定のものとされることによって、板材が適切に矯正される。
【0013】
そして、この発明の成形板材矯正方法では、板材が成形された後において常温となった後に、その板材の平板部と側板部との境界部分に対して熱風が供給されて矯正が行われるために、次の効果が得られる。
すなわち、合成樹脂による多数の同一の板材が順次成形される際に、各板材が成形された直後から所定の時間帯においては、各板材が成形されてからの経過時間によって、各板材ごとに温度が大きく異なる。しかし、各板材が一旦常温となることによって、各板材の間の温度差はほとんどなくなり、その後の熱風供給内容が同じであれば各板材の境界部分はほぼ同じ温度(高温状態)となり、各板材の境界部分の柔軟性はほぼ同じとなる。
その状態で、各板材の側板部に対して所定の量の押圧がされるとともに各板材の境界部分が冷却されて固化されることによって、各板材における平板部に対する側板部の折れ曲がり角度は、ほぼ均一に所望のものになる。
以上のようにして、この発明の成形板材矯正方法では、多数の板材がほぼ均一にかつ適切に矯正され得る。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明の一実施形態の成形板材矯正装置について説明する。
図1に示すように、この成形板材矯正装置はハウジング10を有しており、ハウジング10内に平板部セット部20が配設されている。平板部セット部20は、ベース板W(図3参照)の平板部P1及び側板部P2のうちのごく一部(それらのおもて側の面)に対応している。平板部セット部20は、昇降用シリンダ22によって下降位置と上昇位置との間を上下動可能とされている。
【0015】
ハウジング10内における上部には、熱風発生装置30が配設されている。熱風発生装置30の下部には、一対の熱風流出管32が接続されている。熱風流出管32のうちの上部にはジャバラ部34が形成されており、ジャバラ部34において熱風流出管32の向きが調整可能とされている。これによって、熱風流出管32の先端部は、ベース板W(平板部セット部20が上昇位置にある状態)の平板部P1と各側板部P2との各境界部分Bの近傍に位置し得るようにされている。熱風流出管32等が、本発明の熱風供給機構に該当する。
【0016】
ハウジング10内における下部には、一対の押圧用シリンダ40が配設されている。各押圧用シリンダ40のロッド42の先端部には押圧板部44が設けられている。各押圧板部44(各押圧用シリンダ40)は、ベース板Wの各側板部P2(平板部セット部20が下降位置にある状態)に対応して位置している。押圧板部44が、本発明の押圧機構に該当する。
【0017】
ハウジング10内には、一対の冷却用エア流出管50が設けられている。冷却用エア流出管50の先端部には冷却用エア流出部52が設けられている。冷却用エア流出管50は湾曲しており、その基端部において、回動機構54によって、待機位置と作動位置との間を回動可能である。各冷却用エア流出管50が作動位置にある状態においては、各冷却用エア流出部52がベース板W(平板部セット部20が下降位置にある状態)の平板部P1と各側板部P2との各境界部分Bの近傍に位置するようにされている。
【0018】
冷却用エア流出管50の基端部には冷却用エア供給管56が接続されており、冷却用エア供給管56の基端部はハウジング10外に位置し、ポンプ58に接続されている。ポンプ58の作動によって、ハウジング10の外の常温のエアが冷却用エア供給管56,冷却用エア流出管50を流れ、冷却用エア流出部52から流出する。冷却用エア流出部52等が、本発明の冷却用気体供給機構に該当する。
【0019】
上述の昇降用シリンダ22,熱風発生装置30,押圧用シリンダ40,回動機構54,ポンプ58は、図示しない制御装置に接続されている。
【0020】
次に、上記の成形板材矯正装置の作用(制御内容)を説明することによって、本発明の一実施形態の成形板材矯正方法について説明する。
まず、成形された後に数時間(例えば4時間程度)常温で冷却されて常温又はほぼ常温となったベース板Wの平板部P1が、平板部セット部20(平板部セット部20が下降位置にある状態)に載置されてセットされる。
【0021】
次に、図2(a)に示すように、昇降用シリンダ22の作動によって平板部セット部20が上昇位置まで上昇し、熱風発生装置30が作動状態となり、各熱風流出部から熱風が流出する。その熱風は、ベース板W部の平板部P1と各側板部P2との各境界部分Bに対して供給される。熱風の温度及び熱風が流出(供給)される時間は、予め設定されている。
このようにして、ベース板Wの平板部P1と各側板部P2との各境界部分Bが所定の温度まで加熱され、各境界部分Bの柔軟性が所定の程度まで高くなる。この工程が、本発明の熱風供給工程に該当する。
【0022】
次に、図2(b)に示すように、熱風発生装置30が非作動状態にされるとともに、昇降用シリンダ22の作動によって平板部セット部20が下降位置まで下降する。
そして、図2(c)に示すように、各押圧用シリンダ40の作動によって、各押圧板部44がベース板Wの各側板部P2を内側に押圧する。すなわち、平板部P1に対する各側板部P2の折れ曲がり角度θが大きくなる方向に押圧する。平板部P1に対する各側板部P2の折れ曲がり角度θが所望のものよりも所定角度(微小角度)だけ大きくなるように押圧する。その押圧量(ロッド42の突出長さ)も予め設定されている。
そして、時間の経過とともに、当該折れ曲がり角度θが所望のものになるように、徐々にその押圧量(ロッド42の突出長さ)が微調整される。すなわち、その押圧量(ロッド42の突出長さ)は当初よりも若干小さくされる。この押圧量の調整も予め設定されている。
【0023】
一方、各冷却用エア流出管50は、待機位置から作動位置に変位される。そして、上述の各押圧用シリンダ40による各側板部P2に対する押圧とともに、ポンプ58の作動に基づいて、各冷却用エア流出部52から冷却用エアが流出する。その冷却用エアは、ベース板Wの平板部P1と各側板部P2との各境界部分Bに対してが供給される。
こうして、その冷却用エアによって各境界部分Bの柔軟性が低下され、平板部P1に対する各側板部P2の折れ曲がり角度θが所望のものとなった状態で各境界部分Bが固化する。
以上の工程が、本発明の冷却押圧機構に該当する。
【0024】
次に、各押圧用シリンダ40の作動によって、各ロッド42が没入状態となって、各押圧部が各側板部P2から離隔する。
【0025】
次に、ベース板W(平板部P1)が平板部セット部20から取り外され、ベース板Wがハウジング10から取り出される。
以上のようにして、ベース板Wの矯正が行われる。
【0026】
以上のように、この実施形態では、ベース板Wが成形後において常温又はほぼ常温となった状態から所定の量だけ加熱されるため、各ベース板Wの各境界部分Bは、ほぼ所定の高温状態となる。
すなわち、多数のベース板Wが順次成形される際に、各ベース板Wが成形された直後から所定の時間帯においては、各ベース板Wが成形されてからの経過時間によって、各ベース板Wごとに温度が大きく異なる。しかし、各ベース板Wが一旦常温又はほぼ常温となることによって、各ベース板Wの間の温度差はほとんどなくなり、その後の加熱条件(熱風供給内容)が同じであれば各ベース板Wの各境界部分Bはほぼ同じ温度(高温状態)となり、各ベース板Wの各境界部分Bの柔軟性はほぼ同じとなる。
【0027】
その状態で、各ベース板Wの各側板部P2に対して所定の量の押圧がされるとともに各ベース板Wの各境界部分Bが冷却されて固化されるため、各ベース板Wにおける平板部P1に対する各側板部P2の折れ曲がり角度θは、ほぼ均一に所望のものになる。
このようにして、この実施形態では、多数のベース板Wがほぼ均一にかつ適切に矯正される。
【0028】
なお、上記のものはあくまで本発明の一実施形態にすぎず、当業者の知識に基づいて種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の成形板材矯正装置を示す図である。(a)は縦断面図であり、(b)は横断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の成形板材矯正装置の作用(本発明の一実施形態の成形板材矯正方法)を示す図である。
【図3】本発明の矯正対象となる成形板材の一例を示す図である。(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
【図4】従来の矯正方法を示す図である。
【符号の説明】
20 平板部セット部
32 熱風流出管(熱風供給機構)
44 押圧板部(押圧機構)
52 冷却用エア流出部(冷却用気体供給機構)
W ベース板(成形板材)
P1 平板部
P2 側板部
B 境界部分
Claims (2)
- 合成樹脂によって一体的に成形され平板部及び当該平板部の端部において当該平板部から折れ曲がった方向に延びる側板部を有する板材の形状を矯正する装置であって、
前記板材の平板部がセットされる平板部セット部と、
前記平板部と前記側板部との境界部分に対して熱風を供給する熱風供給機構と、
前記平板部に対する前記側板部の折れ曲がり角度が大きくなる方向に前記側板部を押圧する押圧機構と、
前記平板部と前記側板部との境界部分に対して冷却用気体を供給する冷却用気体供給機構と
を有する、成形板材矯正装置。 - 合成樹脂によって一体的に成形され平板部及び当該平板部の端部において当該平板部から折れ曲がった方向に延びる側板部を有する板材の形状を矯正する方法であって、
前記板材が成形された後において常温となった後に、当該板材の平板部と前記側板部との境界部分に対して熱風を供給する熱風供給工程と、
前記平板部に対する前記側板部の折れ曲がり角度が大きくなる方向に前記側板部を押圧するとともに、前記平板部と前記側板部との境界部分に対して冷却用気体を供給する、押圧冷却工程と
を有する、成形板材矯正方法。
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