JP3761245B2 - バックラッシュ制振制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸ねじれ及びギアバックラッシュを有する電動機ドライブシステムの制御方法に係り、特にギアバックラッシュの振動抑制を図るバックラッシュ制振制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
変速装置にギアバックラッシュを有する多慣性軸ねじれ系の制振制御は、電動機ドライブ装置の性能向上による生産性の向上、製品品質の向上等の目標達成には、必須の技術である。
特に、ギア歯の摩耗など機構の劣化より生ずるギアバックラッシュ現象がドライブ装置自体の破壊の原因となることは知られており、ギアバックラッシュの振動抑制は実用上重要な課題である。
ギアバックラッシュの振動抑制対策としては、変速機構を改善してギアバックラッシュを発生させなくする方法と、ギアバックラッシュを含む系を制御で抑制する方法とに大別される。
【0003】
上記変速機構を改善する方法の例としては、バックラッシュのあるギアを複数としてその間にバネ機構を設けたり、電磁作用によりギアバックラッシュを抑制したりしている。
また、制御による方法の例としては、特開平4−109890号公報「ノンバックラッシュ制御の速度制御装置」が提案されている。
これは、バックラッシュ機構のある前と後段に設けた駆動系の各々の速度を検出し、各駆動系を、バックラッシュが介在するねじれ剛性を相殺するように制御することにより、ノンバックラッシュが図られたものである。
さらに、後述する如き平成6年電気学会シンポジュウムにてバックラッシュ対策について検討されているものの、実用例は未だ少ない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
軸ねじれ振動抑制問題については、平成6年電気学会産業応用部門全国大会のシンポジュウムにて、「軸ねじれ系の最新制御技術」のテーマより、さまざまな制御法が提案されている。
例えば、PID制御、速度微分フィードバック、モデル追従制御、外乱オブザーバを用いた共振比制御、状態フィードバック、H∞制御とμシンセシス等がある。
しかしながら、これらの制御は設計法が難解、現場での調整が難しい、制御器の次数が高い、バックラッシュに弱いなどの点が指摘されている。
これらの制御法の中には、バックラッシュの影響が考慮されているものもあるが、バックラッシュを積極的に抑制する方策は見当らない。
その要因として、バックラッシュ現象を評価するモデルが明らかでない点、衝突現象をも含む特異な非線形特性であって従来の線形補償アルゴリズムが取り扱い難い点などがある。
【0005】
従来から、非線形要素の解析に、線形要素の周波数伝達関数の概念を非線形要素に拡張することから、記述関数がよく使われている。
記述関数は非線形要素の出力信号の基本波成分のみを問題にしており、非線形要素を線形要素に近似する方法である。
ギアバックラッシュの非線形要素のモデルとして、不感帯要素がよく使われるが、従来の技術では、ギアのバネ定数すなわちギア歯の弾性係数(Kg )及びギアの慣性(Jg1、Jg2)を無視した上で、記述関数または記述関数曲線から不感帯の非線形要素を線形化してバックラッシュの物理的挙動を解析するため、現実中のギアバックラッシュ衝突現象が正しく扱えない。
【0006】
例えば、図15はギアバックラッシュを有する共振系の構成例を示す図であり、1は電動機、2は負荷機、3はねじれ軸、4はバックラッシュを有するギアを示す。
図15の如き電動機1と負荷機2が細いねじれ軸3及びバックラッシュを有するギア4で接続されている場合、この機械共振系に周波数の低い軸ねじれ振動と周波数の高いギアバックラッシュ振動の2つの振動モードが存在するわけであるが、従来の技術では、ギアのバネおよびギアの慣性の影響を考慮しないため、図15の機械共振系をブロック線図で示すと図16になり、そのギアバックラッシュ部は不感帯要素としている。
ただし、δはギアバックラッシュの幅、T*はトルク指令、Ts は軸ねじれトルク、TL は負荷機側の外乱トルク、ωm は電動機速度、ωL は負荷機速度、θs は軸ねじれ角、Ks は軸のバネ定数である。また、Jm は電動機慣性、JL は負荷機慣性である。
【0007】
図16のように、バックラッシュ非線形特性としての不感帯があるにもかかわらず、制御対象のモデルはただの2慣性軸ねじれ系になり、軸ねじれ振動モードしか残っていなくなってしまうので、図16のモデルで設計した制御器を実際の装置に適用すると、予想の効果が得られない。
本発明は上記した従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、本発明の第1の目的は、ギア歯の衝突が扱えるバックラッシュモデルを使用して、ギア歯の衝突を考慮した多慣性軸ねじれ系の制振制御を行うことである。
本発明の第2の目的は、上記ギア歯の衝突が扱えるバックラッシュモデルを使用して多慣性軸ねじれ系の制振制御を行うに際し、それから電動機側に付けられた外乱オブザーバによる推定されたギアトルク(Tge)をトルク指令(T*)が得られる前段に比例+微分フィードバック補償することにより、ギアバックラッシュ振動及び軸ねじれ振動を効果的に抑制することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
従来のギアバックラッシュモデルには、ギア歯の衝突現象が考慮されていなく、ギアのバネ定数(Kg )及びギアの慣性(Jg1、Jg2)の影響を無視し、図2に示す不感帯非線形特性をギアバックラッシュモデルとして使っていた。ただし、δは軸ねじれ角θs に対するバックラッシュの幅である。
ところで、実際にギアの位相差(θg )がバックラッシュの幅(δ)を越えると、ギア歯の衝突が発生し、衝突に伴ってギアの歯が変形する。歯は図3の如きギアバネと見なせて、衝突が発生するとき、ギアバネ同士の接触でギアトルク(Tg )を伝達することになる。
ここで、入力側ギヤと出力側ギヤを合成したギアバネ定数をKg と置き、また、ギア慣性(Jg1、Jg2)の影響も無視しないと、ギア歯の衝突現象が扱えるギアバックラッシュモデルが図4のブロック線図の如くに表現できる。
【0009】
つまり、入力側ギアの外部からの入力トルク(T1 )とギアトルク(Tg )との偏差を、入力側ギアに入力することにより、入力側ギアの回転角速度(ωg1)が得られ、入力側ギアの回転角速度(ωg1)と出力側ギアの回転角速度(ωg2)との偏差積分値がギアの位相差(θg )となり、ギアの位相差(θg )のバックラッシュ幅(δ)を越える量(θg −δ)がギアバネ定数(Kg )倍され、ギアトルク(Tg )となり、ギアトルク(Tg )と出力側ギアの外部からの入力トルク(T2 )との偏差を、出力側ギアに入力することにより、出力側ギアの回転角速度(ωg2)が得られる。ただし、Jg1とJg2はそれぞれ入力側ギアと出力側ギアの慣性である。
【0010】
さらに、入力側ギアと電動機が短い太い軸で接続されている場合が多い。この場合では、入力側ギアと電動機が一体として回転している(すなわち、ωg1=ωm)ので、この時のギアバックラッシュモデルはさらに図5のブロック線図の如くに表現できる。つまり、図5は図4の一例である。また、このときの電動機の等価慣性(Jmg1 )は下記の式(1)のように表せる。
【0011】
【数1】
Jmg1=Jm+Jg1 …(1)
【0012】
ところで、図4または図5の如きギアバックラッシュモデルを用いた制振制御系において、ギアバックラッシュ振動および軸ねじれ振動を抑制するには、後述する図14に示す開ループ系のゲイン周波数特性において、機械共振モード(低周波域の軸ねじれ振動モードと高周波域のギアバックラッシュ振動モード)に対応するゲイン周波数特性のピーク値を低く抑えることが必要である。
そこで、2慣性系の共振比制御方法を参考にして、本発明においては、後述する図1に示すように、PDフィードバック補償部3を設け、電動機側に付けられた外乱オブザーバによる推定されたギアトルク(Tge)を、比例ゲインKpfをかけてトルク指令(T*)が得られる前段にフィードバックする。
一方、ギア歯の衝突が発生する時、衝突によるギアトルクはインパルス状に急に変化する。そこで、ギアトルクの変化の動きを早めに予見し、制御するために、同時に推定ギアトルク(Tge)の微分量も微分ゲインKdfをかけてフィードバックする。以上の手法より推定ギアトルクのPD(比例+微分)フィードバック補償を行うことができる。
また、外乱オブザーバは図1のPDフィードバック補償部3に示すようにトルク指令(T*)と電動機速度(ωm)の情報を活用して、電動機の外乱としたギアトルクの推定値Tgeを算出することにより構成される。
【0013】
上記PDフィードバック補償部3におけるPDフィードバックゲイン(Kpf、Kdf)の設計は、閉ループ系の極配置により行う。具体的には、次のような設計手法を用いることができる。
不感帯非線形特性は下記式(2)のような記述関数で表せる。
【0014】
【数2】
GD(jω)=2/π(π/2− sin-1
−R√(1−R2 ))∠0° …(2)
【0015】
ただし、R=δ/A、Aは周波数ωの正弦波入力信号の振幅である。
上記の記述関数からRとN(=|GD(jω)|)の関数曲線は図6で示される。
前記した図4と図5にある不感帯非線形要素は上述の記述関数の表現から、Nとすることで表現できる。ただし、非線形ゲインNのとりうる範囲は図6の関数曲線から、下記の式(3)のように表せる。
【0016】
【数3】
0≦N≦1 …(3)
【0017】
後述する図9の閉ループ系の根軌跡より、N=0〜1の範囲で、複素平面に閉ループ系の極の位置はNにより連続的に変動していることが見えるので、ギアバックラッシュ振動を抑えるためには、N=1のときの閉ループ系の極配置を取りあげ、ギアバックラッシュ振動モードに対応する高周波域の極(即ち、図9に示す如き原点より遠い共役複素極)を複数平面の左半面に虚軸より遠く移動させる(即ち、ギアバックラッシュ振動の減衰を速くする)ようにPDフィードバックゲイン(Kpf、Kdf)を設計すれば良い。
【0018】
本発明は上述した原理に基づきなされたものであって、次のように構成したものである。
ギアバックラッシュを有する多慣性軸ねじれ系の制振制御方法において、ギアのバネ定数(Kg )及びギアの慣性(Jg1、Jg2)を用いてギア歯の衝突現象が扱えるギアバックラッシュモデルを構成し、該モデルを使用して多慣性軸ねじれ系を制振制御する。
さらに、電動機側に付けられた外乱オブザーバにより、ギアトルク(Tge)を推定し、ギアトルク(Tge)をトルク指令(T*)が得られる前段にPDフィードバック補償し、上記電動機のトルク指令(T*)とギアトルク(Tg )との偏差を電動機に入力して、電動機速度(ωm)を得て、入力側ギアの回転角速度(ωg1)を求め、上記バックラッシュモデルで得た上記出力側ギアの回転角速度(ω g2 )と負荷機速度(ωL)との偏差積分値から軸ねじれ角(θs)を得て、これに軸バネ定数(Ks)を乗じて軸ねじれトルク(Ts)を得て、軸ねじれトルク(Ts)と負荷機の外乱トルク(TL)の偏差を負荷機に入力することにより、負荷機速度ωLを得て、多慣性軸ねじれ系を制振制御する。
本発明においては、上記のようなバックラッシュモデルを使用して多慣性軸ねじれ系を制振制御しているので、ギア歯の衝突現象を考慮した制振制御を行うことができる。
また、電動機側に付けられた外乱オブザーバにより、ギアトルク(T ge )を推定し、ギアトルク(T ge )をトルク指令(T*)が得られる前段にPDフィードバック補償したので、ギアバックラッシュによる持続振動を抑制して、多慣性軸ねじれ系の振動抑制を効果的に行うことが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の1実施例を示す図であり、1はギアバックラッシュを有する機械共振系、2はPID速度制御器、3は推定ギアトルク(Tge)のPDフィードバック補償部である。ただし、Tf は外乱オブザーバのフィルタの時定数、Jmg1nはJmg1 のノミナル値である。ここで、機械共振系1は電動機部1a、前記図5に示したものと同様なギアバックラッシュモデル部1b、ねじれ軸部1c及び負荷機部1dから構成される。
【0020】
上記機械共振系1をPID速度制御器のみで制御する場合、速度指令ω*と電動機速度ωmとの偏差を、PID速度制御器を通してトルク指令T*が得られる。このトルク指令T*とギアトルクTg との偏差を、電動機に入力することにより、電動機速度ωmが得られる。
上記電動機速度ωmと出力側ギア速度ωg2との偏差積分値がギアの位相差θg となり、ギア位相差θg のバックラッシュ幅δを越える量(θg −δ)がギアバネ定数Kg 倍されて、ギアトルクTg となる。
ギアトルクTg と軸トルクTs との偏差を、出力側ギアに入力することにより、出力側ギア速度ωg2が得られる。
負荷機部も同様に、出力側ギア速度ωg2と負荷機速度ωLとの偏差積分値が軸ねじれ角θs となり、軸バネ定数Ks 倍されて軸ねじれトルクTs となる。
軸ねじれトルクTs と負荷機の外乱トルクTLの偏差を、負荷機に入力することにより、負荷機速度ωLが得られる。
【0021】
上記構成の多慣性軸ねじれ系の制振制御方法として、まず、PID速度制御器の各ゲインKp、KiとKdを設計する。
ギアにバックラッシュの幅δが非常に小さい、また、ギアのバネ定数Kg が十分大きいとすると、ギアと電動機が一体の剛体として回転している(即ち、ωm=ωg2)ので、図1の機械共振系1は図7のブロック線図で示す2慣性系に近似できる。ただし、この場合の電動機の等価慣性(Jmg12)は下記の式(2)のように表すことができる。
【0022】
【数4】
Jmg12=Jmg1 +Jg2 …(4)
【0023】
図7に示す2慣性系の制振制御問題については、平成7年電気学会産業応用部門誌115-D-1 にて、「PID制御のみによる2慣性系の制御」のテーマで、PID速度制御器設計の一つ手法が堀氏より提案された。この手法を使うことにより、PID速度制御器のゲインKp 、Ki とKd は下記のような式(5)〜(7)で設計できる。
【0024】
【数5】
Kp =10√(2)√(JL Ks )/11…(5)
Ki =4Ks /11 …(6)
Kd =(5JL −11Jmg12)/11 …(7)
【0025】
数値例として、機械共振系の各定数をJmg1 =0.095 [Kgm2]、Jg2=0.01[Kgm2]、JL =0.095 [Kgm2]、Ks =130 [Nm/rad ]のように与えると、上記の式(3)〜(5)より、PID速度制御器の各ゲインはKp=4.52、Ki=47.29 、Kd=-0.062となる。
【0026】
以上のように設計したPID速度制御器を図7に示す2慣性系に適用すると、振動のない良い時間応答が得られるが、図1に示すギアバックラッシュを有する機械共振系(δ=1゜、Kg =500Nm /rad )に適用すると、0sec 時のランプ状な速度指令と、1.5sec 時の定格の67%の外乱トルクをかけた時間応答は図8に示すようになる。
図8から明らかなように、出力側ギア速度ωg2とギアトルクTg がギアバックラッシュの存在のため、減衰の遅い持続振動をしていて、ギアバックラッシュ振動が発生してしまう。
ギアバックラッシュ持続振動の発生原因を調べるために、非線形ゲインN(=0〜1)を変動パラメータとして、上記のPID速度制御器を適用した閉ループ系の根軌跡を描くと図9に示すようになる。
この根軌跡においては、すべてのN(=0〜1)に対して、ギアバックラッシュ振動モードに対応する閉ループ系の高周波域の極(即ち、図9に示す如き原点より遠い共役複素極)が虚軸の近辺にある(即ち、振動の減衰が遅い)ので、上記のPID速度制御器のみにより、ギアバックラッシュの持続振動が抑制できないことがわかる。
【0027】
ギアバックラッシュの持続振動を抑えるために、上記PID速度制御に、図1に示したように、電動機に付けられた外乱オブザーバにより推定されたギアトルクTgeをトルク指令T*が得られる前段にPDフィードバック補償するギアバックラッシュ補償を追加する。
N=1のときの閉ループ系の極配置を取りあげ、ギアバックラッシュ振動の減衰を速くするため、ギアバックラッシュ振動モードに対応する高周波域の極(即ち、原点より遠い共役複素極)を複数平面の左半面に虚軸より遠く移動させれるように、PDフィードバックゲインKpf、Kdfを次のように極配置から設計する。
【0028】
(1)比例ゲインKpfの設計
Kpfを可変とした閉ループ系の根軌跡を図10に示す。ただし、このときは、PID速度制御器の各ゲインKp、KiとKdは上記の数値例で得られた値としている。また、微分フィードバックゲインの初期値としてKdfをKdf=0としている。
ゲインKpfを大きくすると、ギアバックラッシュ振動モードに対応する高周波域の極(即ち、原点より遠い共役複素極)はやや左半面に移動するが、Kpfの値を大きくしすぎると、軸ねじれ振動モードに対応する低周波域の極(即ち、原点に近い共役複素極)の位置が悪くなる(軸ねじれ振動の減衰が遅くなる)ので、ここでは、軸ねじれ振動モードの低周波域の極を最適な配置(軸ねじれ振動の減衰がもっとも速い)に選定し、Kpfの値を0.12とした。
【0029】
(2)微分ゲインKdfの設計
Kdfを可変とした閉ループ系の根軌跡を図11に示す。ただし、比例フィードバックゲインKpfは前項で得られた値としてKpf=0.12としている。また、Kp、KiとKdは前項と同様としている。
ゲインKdfを0より大きく取ると、ギアバックラッシュ振動モードに対応する高周波域の極(即ち、原点より遠い共役複素極)は、大幅に左半面に移動できるが、軸ねじれ振動モードに対応する低周波域の極(即ち、原点に近い共役複素極)は、虚軸に向かって移動し、軸ねじれ振動の減衰が遅くなる。
そこで、ここでは、ギアバックラッシュの振動抑制と軸ねじれの振動抑制とのバランスを考慮して、Kdfの値を0.01として設定した。この時、軸ねじれ振動の減衰はやや遅くなったが、ギアバックラッシュ振動の減衰は大幅に速くなった。このことから、推定ギアトルクTgeの微分フィードバック補償は、高次モードのギアバックラッシュの振動抑制に特に有効であることがわかる。
また、以上のKpf、Kdfの設計を繰り返し、最適なPDフィードバックゲイン(Kpf、Kdf)を得ることが可能なことは明らかである。
【0030】
図12に非線形ゲインN(= 0〜1)を変動パラメータとして、上記のようにして設計した補償器を用いた閉ループ系の根軌跡を示す。
図12を図9と比較すると、図12の場合には、N(= 0〜1)に対して、ギアバックラッシュ振動モードに対応する高周波域の共役複素極は、図9の高周波域の共役複素極より虚軸から遠く離れる。このことから、上記のように設計した補償器を適用すると、ギアバックラッシュ振動が速く減衰し、PID速度制御のみを適用する場合の持続的なギアバックラッシュ振動を抑制できることがわかる。
上記方法で設計した推定ギアトルクTgeのPDフィードバック補償を図1に示したギアバックラッシュを有する機械共振系(δ=1゜、Kg =500Nm /rad )に適用すると、図13のように、その時間応答は図8の応答よりよく改善され、出力側ギア速度ωg2とギアトルクTg に振動がないので、ギアバックラッシュの振動抑制ができたことがわかる。
【0031】
次にボート線図から安定性について考察する。図14は推定ギアトルクTgeのPDフィードバック補償が有る場合と無い場合の開ループ系のトルク指令T*が得られる前段から電動機速度ωmまでのゲイン周波数特性を示す図である(N=0.25、0.5 、1)。同図の点線はPDフィードバック補償のない場合、実線はPDフィードバック補償のある場合である。
図14の開ループ系ゲイン周波数特性から明らかなように、推定ギアトルクTgeの補償をかけると、機械共振モード(低周波域の軸ねじれ振動モードと高周波域のギアバックラッシュ振動モード)に対応するゲイン周波数特性のピーク値が大幅に低減される。このことから、推定ギアトルクTgeのPDフィードバック補償はギアバックラッシュ振動及び軸ねじれ振動の抑制に有効であることがわかる。
【0032】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ギアのバネ定数及びギアの慣性を用いることにより、ギア歯の衝突現象が扱えるギアバックラッシュモデルを構成することができ、ギア歯の衝突現象を考慮した制振制御を行うことができる。
さらに、電動機側に付けられた外乱オブザーバによる推定されたギアトルクのPDフィードバック補償を行うことにより、ギアバックラッシュの振動抑制を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例のブロック線図である。
【図2】不感帯非線形特性を示す図である。
【図3】ギア歯の衝突現象とギアバネ定数の定義を説明するための図である。
【図4】ギアバックラッシュのモデルを示すブロック線図である。
【図5】図4に示したモデルの一例である。
【図6】不感帯の非線形ゲインNとパラメータRの関数曲線である。
【図7】2慣性ねじれ軸系を示すブロック線図である。
【図8】PID制御方式によるギアバックラッシュを有する共振系の時間応答を示す図である。
【図9】非線形ゲインNを変動パラメータとした閉ループ系の根軌跡を示す図である。
【図10】比例フィードバックゲインKpfを可変とした閉ループ系の根軌跡を示す図である。
【図11】微分フィードバックゲインKdfを可変とした閉ループ系の根軌跡を示す図である。
【図12】非線形ゲインNを変動パラメータとして本発明の補償器を適用した閉ループ系の根軌跡を示す図である。
【図13】本発明の制御方式で制御されたギアバックラッシュを有する共振系の時間応答を示す図である。
【図14】本発明の推定ギアトルクのPDフィードバック補償の効果を説明するための開ループ系の周波数特性を示す図である。
【図15】ギアバックラッシュを有する機械共振系の構成例を示す図である。
【図16】図15の機械共振系を従来の技術で処理したブロック線図である。
【符号の説明】
1 ギアバックラッシュを有する機械共振系
2 PID速度制御器
3 推定ギアトルクのPDフィードバック補償部
Jg1 入力側ギアの慣性
Jg2 出力側ギアの慣性
Kg ギアのバネ定数
δ ギアバックラッシュの幅
Jm 電動機の慣性
JL 負荷機の慣性
Jmg1 電動機の等価慣性
Jmg12 電動機の等価慣性
T* トルク指令
Tg ギアトルク
Tge 推定ギアトルク
Ts 軸ねじれトルク
TL 負荷機側の外乱トルク
T1 入力側ギアの外乱トルク
T2 出力側ギアの外乱トルク
ω* 速度指令
ωm 電動機速度
ωL 負荷機速度
ωg1 入力側ギアの回転角速度
ωg2 出力側ギアの回転角速度
θs 軸ねじれ角
Ks 軸のバネ定数
θg 入力側ギアと出力側ギアの位相差

Claims (1)

  1. ギアバックラッシュを有する多慣性軸ねじれ系の制振制御方法において、
    入力側ギアの外部からの入力トルク(T1 )とギアトルク(Tg )との偏差を、入力側ギアに入力することにより、入力側ギアの回転角速度(ωg1)を得て、
    上記入力側ギアの回転角速度(ωg1)と出力側ギアの回転角速度(ωg2)との偏差積分値よりギアの位相差(θg )を求め、
    上記ギアの位相差(θg )のバックラッシュ幅(δ)を越える量(θg −δ)をギアバネ定数(Kg )倍して、前記ギアトルク(Tg )を求め、
    上記ギアトルク(Tg )と出力側ギアの外部からの入力トルク(T2 )との偏差を出力側ギアに入力して、該出力側ギアの回転角速度(ωg2)を得ることにより、ギア歯の衝突現象が扱えるギアバックラッシュモデルを構成し、
    電動機のトルク指令(T*)と電動機速度(ω m )を外乱オブザーバに入力し、該外乱オブザーバの出力として、推定ギアトルク(T ge )を算出し、前記推定ギアトルク(T ge )を前記電動機のトルク指令(T*)が得られる前段に比例+微分フィードバック補償し、
    上記電動機のトルク指令(T*)とギアトルク(Tg )との偏差を電動機に入力して、電動機速度(ωm)を得て、入力側ギアの回転角速度(ωg1)を求め、
    上記バックラッシュモデルで得た上記出力側ギアの回転角速度(ω g2 )と負荷機速度(ωL)との偏差積分値から軸ねじれ角(θs)を得て、これに軸バネ定数(Ks)を乗じて軸ねじれトルク(Ts)を得て、軸ねじれトルク(Ts)と負荷機の外乱トルク(TL)の偏差を負荷機に入力することにより、負荷機速度ωLを得て、多慣性軸ねじれ系を制振制御する
    ことを特徴とするギアバックラッシュ制振制御方法。
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