JP3761223B2 - 四重極イオントラップ内での周波数変調を利用した選択イオン分離方法 - Google Patents

四重極イオントラップ内での周波数変調を利用した選択イオン分離方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,四重極イオントラップ質量スペクトロメータを使用する方法に関し,特にその機器内で選択イオンを分離するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明は,最初Paulらによって米国特許第2939952号に説明された3次元四重極イオントラップ質量スペクトロメータを使用する方法に関する。近年,イオントラップ質量スペクトロメータは,その比較的安いコストと,生産の容易さと,比較的長時間にわたって広範囲の質量に対してイオンを保存する能力を有していることから広く使用されるに至った。後者の特徴は個別のイオン種を分離しかつ扱う際のイオントラップにおいて特に有用であり,それは親イオンが娘イオンを生成するべく分離されかつ分解されまたは解離され,また該娘イオンは従来のイオントラップ検出方法を使用して識別されまたは孫イオンを生成するべくさらに分解されるところのいわゆる,タンデムMS,MS/MSまたはMSn実験のようなイオントラップである。
【0003】
MS/MS実験のための親イオンの分離に加え,孤立イオンの分離もまた他の応用において重要である。比較的低コストの現在の商用イオントラップの感度で,それらは特定の化合物または関連化合物の群の存在のモニター,例えば有毒ガスの発生のモニター等に使用され得る。興味ある特定のイオン種を選択的に分離するイオントラップの制御は,検出が困難であるか全く検出不可能である選択イオンに対するトラップの感度を最適化するのに使用される。この関係において,イオントラップの一つの欠点は,制限されたダイナミックレンジとデバイス内に捕獲されたイオンにより生成された空間電荷に対する感度である。したがって,興味あるイオン以外のイオントラップ内の実質的数のイオンの存在は,興味あるイオンに対するトラップの感度を実質的に劣化させる。興味あるイオンに対する感度を最適化するために,他のイオン質量のトラップを取り除くのが最適である。
【0004】
四重極イオントラップはひとつのリング形の電極及び二つのエンドキャップ電極から成る。理想的に,リング電極及びエンドキャップ電極の両方は双曲面を有し,同軸に整列されかつ対称に配置される。これらの電極にAC及びDC電圧(通常,それぞれV及びUとして示される)の組み合わせを印加することによって,四重極トラッピングフィールドが生成される。トラッピングフィールドは,四重極トラッピングフィールドを生成するべくリング電極及びエンドキャップの間に固定周波数(通常,fで示す)のAC電圧を印加することによって単純に生成される。付加的なDC電圧の使用は任意であり,イオントラップの商業的実施例において,DCトラッピング電圧は通常は使用されない。適正な周波数及び振幅のAC電圧を使用することにより,広範囲の質量が同時に捕獲され得ることは周知である。
【0005】
イオントラップにより生成される四重極トラッピングフィールドの数学は周知であり,上記Paulらの特許に説明されている。赤道半径r0のリング電極と,軸線r=0に沿ってトラップの中心にある原点から距離z0だけ離れたエンドキャップ電極を有するトラップに対し,かつ与えられたU,V及びfに対し,質量電荷比(m/e,また周波数表示ではm/z)のイオンが捕獲されるか否かは,以下の2つの方程式の解に依存している。
【0006】
【数1】
Figure 0003761223
ここで,ω=2πfである。
【0007】
これらの方程式を解くことは,選択されたm/eを有する与えられたイオン種に対し,az及びqzの値を与える。もし,イオントラップのための周知の安定エンベロープ内部に点(az,qz)がマッピングされれば,イオンは四重極フィールド内に捕獲される。もし,点(az,qz)が上記安定エンベロープからはずれれば,イオンは捕獲されず,イオントラップ内に導入されたあらゆるイオンがトラップから急速に放出される。U,Vまたはfの値を変化させることにより,特定のイオン種の安定性に影響を与えることができる。方程式1から,U=0のとき(すなわち,トラップにDC電圧が印加されないとき)az=0であることがわかる。
【0008】
(ここで,イオンの“質量”といった場合,通常はイオンの質量電荷比を指す。実際に,イオントラップ内のほとんどのイオンは一価であるため,質量電荷比は質量と同値である。本明細書においては,実際に即して,質量電荷比の意味で“質量”の語を使用することとする。)
【0009】
トラッピングフィールド内の各イオンは,イオン質量及びトラッピングフィールドのパラメータに依存する永年周波数を有する。周知のように,イオン質量の永年周波数に等しい周波数を有するイオントラップに補助的な双極電圧を印加することにより,トラッピングフィールドに安定に保持される与えられた質量のイオンを励起することは可能である。トラップ内のイオンは,このように共鳴してエネルギーを吸収する。比較的低電圧において,補助双極電圧は,処理中のバックグランドのガス分子内の解離衝突を進行させながら,特定の質量のイオンに対しトラップ内での共鳴を引き起こすために使用される。この技術は解離誘導衝突またはCIDと呼ばれ,通常は娘イオンを生成するべく親イオンを解離するためにMS/MS内で使用される技術である。より高電圧において,補助電圧の周波数に一致する永年周波数を有するイオンがトラップ体積を離れるのに十分なエネルギーが補助電圧により与えられる。この技術は通常,イオントラップから不用なイオンを除去するのに,及び外部検出器による検出用にイオンをトラップから放出するのに使用される。
【0010】
イオントラップを使用する典型的な基本方法は,広範囲の質量にわたってイオンを保持するトラッピングフィールドを確立するべくトラップ電圧に対しrfトラッピング電圧(V0)を印加する工程と,イオントラップ内にサンプルを導入する工程と,サンプルをイオン化する工程と,トラップ内に保存されたイオンが質量の小さいほうから順に放出され検出されるようにトラップの内容をスキャンする工程とから成る。典型的に,イオンはひとつのエンドキャップ内のせん孔を通じて放出され,電子マルチプライアにより検出される。MS/MSのようなより詳細な実験は,概してこの基本方法に立脚し,しばしばイオントラップ内の特定のイオン質量またはイオン質量の範囲の分離を要求する。
【0011】
ひとたびイオンが形成されかつトラップ内に保存されると,多くの技術が興味の特定イオンを分離するために有効となる。トラッピングフィールドがDC成分を含むとき,トラッピングフィードのパラメータ(すなわち,U,V及びf)はトラップ内の一価のイオンまたは非常に狭い質量範囲を分離するべく調節されることは周知である。この方法の問題点は,高精度でトラッピングフィールドのパラメータを制御することは困難であり,一価のイオンまたは狭い質量範囲を分離するのに要求される正確なトラッピングフィールドパラメータの組み合わせを計算することも困難であるということである。他の問題点は,ほとんどの商用イオントラップはDCトラッピング電圧を印加することが不可能であり,これを可能とするには装置のコストが高額になるということである。さらに,この方法は多重不連続質量を分離するのに使用することができない点も注目すべきである。さらにまた,フィールド内に保持されたイオンは,捕獲効果が低い安定性境界周縁付近に存在する点も注目すべきである。
【0012】
米国特許第4736101号はMS/MS実験用のイオンを分離する他の方法を説明している。該特許に教示された技術により,トラッピングフィールドは広範囲にわたって質量を有するイオンを捕獲するべく確立される。これは当業者にとって周知の方法で実行される。次に,トラッピングフィールドは興味の選択イオン以外のイオンを除去するべく変更される。これを実行するため,イオントラップに印加されるrfトラッピング電圧は,低質量のイオンが連続的に不安定になりかつトラップから除去されることになるように,傾斜される。rfトラッピング電圧の傾斜は,イオントラップから注目イオンのすぐ下の質量のイオンが除去された時点で終了する。米国特許第4736101号は,DC電圧の存在しないとき,注目の質量より大きい質量を有するイオンを除去するために如何にトラッピングフィールドを扱うかについては教示していない。イオントラップの内容がトラッピング電圧を変化させる上記技術により制限された後で,該トラッピング電圧は,再び広範囲のイオンが捕獲されるように平衡状態になる。次に,イオントラップ内の親イオンは,娘イオンを形成するべく好適にはCIDを使って解離される。最後に,すべての質量範囲のイオンが連続的に不安定になりトラップから放出されるように,再び四重極トラッピング電圧を傾斜させることによって,イオントラップがスキャンされる。
【0013】
米国特許第4736101号の方法の主な不足は,DC成分を有するトラッピングフィールドを使用せずに如何にトラップから大質量のイオンを除去するかを教示していない点にある。さらに,低質量イオンが不安定性スキャンによりイオントラップから除去されるような技術もまた問題がある。もしmpがトラップ内に保持されるべき質量であって,トラッピングフィールドはmp-1が不安定になるように扱われるのであれば,mpは,その地点で,安定境界に非常に近接して存在することになる。再び,このことによって,mpに対する捕獲効果が非常に低くなり,不所望の低質量イオンを除去するべくトラッピング電圧を傾斜する際該トラッピング電圧の精確な制御が要求される。
【0014】
イオントラップ内の孤立イオンを分離するための他の方法は,米国特許第5198665号に記載されている。米国特許第5198665号によれば,保持されるべき質量(mp)より低い質量がまず共鳴放出を使用してトラップから連続的にスキャンされる。これは,mpが安定性境界から離れている間にmp-1がトラップから除去されるという長所を有する。低質量のイオンが除去された後,広帯域補助信号が大質量イオンを除去すべくトラップに印加される。mpのすぐ上のイオンを共鳴させるべく補助広帯域電圧を印加する間,トラッピング電圧はほんの少し減少される。この技術は高精度の結果をもたらすことが可能であるが,それはいくらか複雑で,イオントラップから多重不連続質量を分離するのに使用することはできない。さらに,小質量イオンが除去される間,大質量イオンはトラップ内に残るため,大規模な空間電荷が残る。もし適正な処置を講じなければ,この空間電荷は実験の精度に影響を及ぼす。
【0015】
従来技術において,トラップから多重の不所望イオンを同時に除去するべく,さまざまな種類の補助広帯域信号をイオントラップに印加することは知られている。従来技術の教示するところは,(1)不所望イオンの共鳴周波数に対応する離散的周波数成分から成る広帯域信号及び(2)本質的にすべての周波数を含む広帯域ノイズ信号の使用であって,それらはすべての質量スペクトルに作用し,該質量スペクトルはイオントラップ内に保持されるべきイオンの永年周波数に対応する周波数成分を除去するべく濾過される。すべての周知の従来技術において,補助広帯域電圧がイオントラップに印加される間,トラッピングフィールドは一定に維持される。
【0016】
これらの従来の方法によって,イオントラップ内に一価イオンを保持するためには,注目イオン質量以外のトラッピングフィールド内にポテンシャル的に維持されるすべてのイオンを励起させるような非常に多くの周波数成分を有する補助電圧波形を印加することが必要である。典型的なイオントラップは通常の捕獲条件の下に約50〜650amuの範囲の質量に適用可能である。ここで,もし各整数イオン質量を励起するのに単一の周波数成分が要求されるとすれば,すべての質量スペクトルを共鳴して放出するにはほぼ600種類の周波数成分が必要である。しかし,この数の周波数成分は整数質量を有するイオンのみ励起するに過ぎない。多重電荷(例えば,二価にイオン化された分子)を有するイオンがトラップ内に存在すれば,質量電荷比の値は整数値にはならないこともある。さらに,トラップ内の空間電荷は捕獲イオンの永年周波数に影響を与え,その結果,特定のイオン質量を励起するために補助波形内に含まれた周波数成分は機能しないということが知られている。したがって,実際問題として,イオントラップ内の一価イオン質量または狭い範囲のイオン質量を分離するための従来技術を使用する際には,非常に多くの周波数成分を含む必要がある。
【0017】
例えば,米国特許第5256875号には,数千個の周波数成分を使用すべき旨が記載されている。上記特許は,広帯域励起信号内の周波数間隔は信号が物理装置に対する周波数の実質的連続帯域を与えるように十分に小さくなければならない旨を教示し,一価イオン質量がトラップ内に保持されるように設計されたスペクトル内のノッチの幅が,スペクトルの下端周波数において実質的に500Hz以下でなければならないと教示する。さらにこれは,ノッチの一方の側の領域の周波数間隔が他方より十分に狭いことを要求する。しかし,トラップ内のイオンの永年周波数が空間電荷により変化することを説明していないため,これは実際には機能しない。以下に説明するように,イオンの共鳴幅は実質的に500Hz以上であり得る。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
トラップから不所望のイオン質量を除去するために広帯域信号の使用を主張する上記いずれの特許も,イオン質量の近接する永年周波数の間隔が質量スペクトルを横切って変化するという事実を適切にとらえていない。小さい質量に対して近接する整数質量の永年周波数は非常に離れており,一方大きな質量では非常に近接している。結果的に,小さい質量では注目イオンが整数質量でなければ,または空間電荷若しくはトラッピングフィールドの不均一が通常の永年周波数をシフトさせたとすれば,質量が励起及び除去されない危険性がある。一方,大きい質量範囲では,単一の周波数成分は多重質量値の共鳴を引き起こし,その場合広帯域信号内の狭いノッチは所望のイオンがイオントラップ内に保持されていることを保証するには不十分である。
【0019】
波形が非常に多くの周波数成分を含むことによる従来術の欠点は,質量スペクトルを横切ってイオンの励起を引き起こすのに十分な高電圧で各周波数成分が存在することに伴う大電力の要求である。この欠点はノイズ信号及び,直接周波数を選択するかまたは時間ドメインの励起波形を生成するべく周波数ドメインの励起スペクトルの逆フーリエ変換のようなアルゴリズムによって決定された周波数成分を有する構成波形に対して存在する。構成波形において,励起波形のダイナミックレンジを最小化するべく周波数成分の位相を制御することが重要である。周波数成分の数が増加するに従って,よりエレガントかつ時間節約への要求が,最小化されたピークツーピーク電圧である手頃なダイナミックレンジを有する時間ドメイン信号を生成するのに必要とされる。例えば,米国特許第5256875号は,補助電圧波形を生成するためのかなり複雑で時間のかかる反復技術を教示する。
【0020】
イオントラップから不所望のイオンを除去するために広帯域信号を使用する従来の方法の他の欠点は,トラップ内のイオンの共鳴周波数及び共鳴幅がトラップ内の空間電荷及びトラップ内の捕獲イオンの位置により変化することを説明していないことである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
従って,本発明の目的は,トラップ体積内の選択イオン質量を分離するべくイオントラップ質量スペクトロメータを使用する方法を与えることである。
【0022】
本発明の他の目的は,イオントラップから他のすべての質量を除去しながら,イオントラップ質量スペクトロメータ内の多重不連続質量を分離するべくイオントラップ質量スペクトロメータを使用する方法を与えることである。
【0023】
本発明の他の目的は,イオントラップ質量スペクトロメータから不所望の多重質量を同時に除去するべく,トラッピングフィールドとともに使用される補助電圧波形を構成する方法を与えることである。
【0024】
さらに本発明の他の目的は,イオントラップから不所望のイオンを除去するべくトラッピングフィールドとともに使用され,質量スペクトルを横切って永年周波数の幅の変動性を考慮した補助波形を構成する方法を与えることである。
【0025】
さらに本発明の他の目的は,イオントラップ質量スペクトロメータから不所望の多重質量を同時に除去するべくトラッピングフィールドとともに使用される広帯域補助電圧信号内のギャップ内にエッジ周波数を決定するための方法を与えることである。
【0026】
さらに本発明の他の目的は,イオントラップから選択イオン以外のすべてのイオンを除去するのに使用される補助励起波形であって,比較的孤立周波数成分が希薄であるところの補助波形を構成するための方法を与えることである。
【0027】
さらに本発明の他の目的は,選択イオンの永年周波数の変動性及び選択イオンの共鳴幅の変動性を処理するイオントラップ内の選択イオンを分離する方法を与えることである。
【0028】
これらの並びに本明細書及び図面から当業者にとって自明の他の目的は,イオントラップ内に注目のイオンのみ保持されるように,イオントラップ質量スペクトロメータから不所望のイオン除去する方法から成る本発明において明らかとされる。広い態様において,本発明は,第1連続質量範囲内にイオンを捕獲することが可能であり,各捕獲イオンがそれに伴う永年周波数を有するところのイオントラップ内にトラッピングフィールドを確立する段階と,トラッピングフィールドを変調しながらイオントラップに対し補助ダイポールフィールドを印加することによりイオントラップから不所望のイオンを除去する段階であって,該補助ダイポールフィールドは複数の周波数成分からなり,周波数成分の間隔はダイポール電圧の周波数範囲にわたって変化するところの段階と,から成る。好適には,ダイポールフィールドの周波数範囲は複数の連続サブレンジに分割され,各サブレンジ内の周波数成分の間隔は実質的に一定である。好適には,各周波数成分は少なくとも1500Hzだけ離れている。本発明にしたがって,補助励起波形を生成する際に使用される周波数成分のマスターセットを生成するための特定の方法が説明されている。同様に,本発明にしたがって,特定の変調波形が,トラッピング電圧を変調するために教示される。
【0029】
別の態様において,本発明は,イオントラップから不所望なイオンを除去するのに使用される広帯域補助電圧波形内のギャップの境界のエッジ周波数を計算するための方法から成り,イオントラップ内に保持されるべきイオンの質量を決定する段階と,質量範囲の上端及び下端での各質量の永年周波数を決定する段階と,変調トラッピングフィールド内の範囲の端の質量に対しエッジ周波数を決定する段階と,から成る。多重不連続質量がイオントラップ内で分離されるのに必要なだけ,上記方法が繰り返される。
【0030】
さらに他の態様において,トラッピングフィールドの変調は補助励起波形が印加されている間に変化する。好適には,これはACトラッピング電圧のピークツーピーク変調を,イオンがイオントラップ内に導入される時間の間中印加される第1値からより大きな第2値まで,変化させることによって達成される。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明の方法を実行するのに使用される装置は,図1に示されるように周知のものである。断面図として示されるイオントラップ10は,上側及び下側エンドキャップ電極30及び35とそれぞれ同軸に整列されたリング電極20から成る。これらの電極は内部捕獲領域を画成する。好適には,トラップ電極は双極面を有するが,円弧形状の断面を有する他の電極形状も多くの目的に適応するトラッピングフィールドを生成するために使用される得る。イオントラップ質量スペクトロメータの設計及び構成は周知のものであるため,詳細に説明する必要はない。ここに説明されている商用モデルのイオントラップは,サターンと呼ばれるモデルで本発明の譲受人により販売されている。
【0032】
例えば,ガスクロマトグラフ(GC)40からのサンプルはイオントラップ10内に導入される。典型的にGCは大気圧で動作するがイオントラップは非常に減圧状態で動作するため,圧力減圧手段(例えば,真空ポンプ及び適当なバルブ等)が必要である。そのような圧力減圧手段は従来において周知のものである。本発明はサンプル源としてGCを使用して説明されているが,該ソースは本発明の一部ではなく,ガスクロマトグラフを使用することに限定するものではない。他のサンプルソース,例えば特別のインターフェースを有する液体クロマトグラフもまた使用可能である。いくつかの応用に対し,サンプルの分割は要求されず,サンプルガスはイオントラップに直接導入される。
【0033】
試薬ガスのソース50もまた化学イオン化実験を導入するためにイオントラップへ接続される。イオントラップ10の内部に導入されるサンプル及び試薬ガスは,フィラメント電源65により付勢された熱電子フィラメント60からの電子ビームを使用してイオン化され,ゲート電極67によって制御される。上部エンドキャップ電極30の中央は,フィラメント60及び制御ゲート電極67により生成された電子ビームがトラップ内に入射できるように,穴が開けられている。本発明の好適実施例において,電子ビームを生成し制御するための機器がコントローラ70により制御される。ゲートがオンされると,電子ビームがトラップ内に入射して,サンプル及び適用可能ならトラップ内の試薬分子と衝突し,それによってそれらをイオン化する。サンプル及び試薬ガスの電子衝撃イオン化はまた,詳細に説明する必要のない周知技術である。もちろん,本発明の方法はトラップ領域内の電子ビームの使用に制限されない。多くの他のイオン化方法もまた周知技術である。本発明の目的のために,トラップ内にサンプルイオンを導入するのに使用されるイオン化技術は概して重要ではない。
【0034】
図示されていないが,ひとつ以上の試薬ガスソースが,異なる試薬イオンを使用する実験のために,または他の試薬ガスを化学的にイオン化するべく前駆体イオンのソースとして一つの試薬ガスを使用するために,イオントラップへ接続され得る。さらに,典型的に,捕獲イオンの調和振動を減衰させるべくバックグランドガスがイオントラップ内に導入される。CIDに使用されるようなガスは,好適には,電子ビームまたは他のイオン化ソースのエネルギー以上の高イオン化ポテンシャルを有するヘリウム原子から成る。GCとともにイオントラップを使用する際に,ヘリウムはまた好適にGCキャリアガスとして使用される。
【0035】
所望の質量範囲内にイオンを安定に捕獲するべく,所望の周波数及び振幅を有するAC電圧の印加により,トラッピングフィールドが生成される。RFジェネレータ80がこのフィールドを生成するのに使用され,それがリング電極20に印加される。好適には,RFジェネレータの動作はコントローラ70の制御のもとにある。DC電源(図示せず)もまた周知の方法でトラッピングフィールドへDC成分を印加するのに使用される。しかし,好適実施例において,DC成分はトラッピングフィールドに使用されない。
【0036】
コントローラ70は,中央演算装置,揮発性及び不揮発性メモリ,入力/出力(I/O)デバイス,デジタルアナログ及びアナログデジタルコンバータ(DAC及びADC),デジタル信号プロセッサ並びにその他を含む標準的なコンピュータシステムから成る。さらに,制御関数及びシステムオペレータからの指示を実行するためのシステムソフトは,不揮発性メモリ内に組み込まれ,動作中システム内にロードされる。これらの特徴はすべて従来からのもので,これ以上議論することは本発明の欲するところではない。
【0037】
トラップの内容をスキャンするための好適方法において,四重極トラッピングフィールドに対し補助的な振動ダイポールフィールドを生成するべく,補助AC電圧がイオントラップのエンドキャップ30,35を横切って印加される。(しばしば,四重極トラッピングフィールド及び補助RFダイポールフィールドの組み合わせは,結合フィールドと呼ばれる)このスキャン方法において,補助AC電圧は主ACトラッピング電圧と異なる周波数を有する。補助AC電圧は,特定の捕獲イオンに対し軸方向の永年周波数での共鳴を引き起こす。イオンの永年周波数が補助電圧の周波数と一致するとき,エネルギーが効果的にイオンに吸収される。この方法により十分なエネルギーが特定の質量のイオンに吸収されると,該イオンは検出器90により検出される軸線方向にトラップから放出される。特定のイオン質量を励起するため補助ダイポールフィールドを使用する技術は,しばしば軸変調と呼ばれる。
【0038】
異なる質量のイオンを補助AC電圧と共鳴させる2つの方法がある。一つは固定トラッピングフィールド内の補助電圧の周波数をスキャンする方法であり,もう一つは補助電圧の周波数を一定に維持した状態でACトラッピング電圧の大きさVを変化させる方法である。典型的に,イオントラップの内容をスキャンするべく軸変調を使用する際,補助AC電圧の周波数が一定に保持され,連続的に大きい質量のイオンが共鳴されかつ放出されるようにVが傾斜される。Vの値を傾斜させることの長所は,実行が比較的単純であることと,補助電圧の周波数を変化させることにより得られるものより良好な線形性を与える点である。補助電圧を使用することによりトラップをスキャンする方法は,共鳴放出スキャンと呼ばれる。
【0039】
スキャン技術として共鳴放出を使用するイオントラップの商用の実施例において,補助AC電圧の周波数はACトラッピング電圧の周波数のほぼ半分に設定される。トラッピング電圧及び補助電圧の周波数の関係は,共鳴状態にあるイオンのqzの値(上記方程式2で定義済み)を決定することがわかる。
【0040】
一方,米国特許第4540884号に説明されるような質量不安定性スキャンと呼ばれる通常の技術は,イオントラップの内容をスキャンする際に使用される。前記特許は,捕獲イオンが連続的に不安定になりトラップから放出されるように,四重極トラッピングフィールドのU,Vまたはfなどの基本トラッピングパラメータのひとつまたはそれ以上をスキャンすることを教示する。前記特許は,標準的な電子増幅回路に接続された上記電子マルチプライアまたはファラデーコレクタ等の多くの技術を使用して検出されるところの軸方向へ,不安定電子を放出するようトラッピングパラメータをスキャンすることを教示する。それにもかかわらず,捕獲イオンの共鳴放出スキャンは上記特許に教示される質量不安定性技術を使用して得られるものより良好な感度を与え,より狭いよりよいピークを画成し,すなわち共鳴放出スキャンは全体的に良好な質量分析をもたらす。また,共鳴放出スキャンはより大きい質量全体にわたってイオンの分析能力を実質的に向上させる。
【0041】
さらに,飛行時間技術のように,補助フィールドの印加によりトラップ内の内容を同時に放出するという方法が使用され得る。米国特許第5105081号に説明されているようなまたは導入電流の計測を含むトラップ内検出方法が,実験後のイオントラップ10の内容を決定するために使用されるということは当業者によって認識されるところである。検出方法が使用されるところでは,検出器により検出されたデータはコントローラ70により回収されかつ処理される。
【0042】
GCからの流入は連続的であり,最近の高分解能GCは,ほんの数秒間持続する狭いピークを生成する。狭いピークの質量スペクトルを得るために,毎秒少なくとも1回のイオントラップの完全なスキャンを実行することが必要である。トラップの急速なスキャンの実行の要求は,質量分解能及び再現性に影響を与える制約を加える。同様な制約は,LCを有するイオントラップまたはさまざまなサンプルストリームの連続流入を使用する際にも存在する。
【0043】
共鳴放出スキャンにおいて使用される補助ダイポール電圧は,トランスミッタ110によりエンドキャップ電極に連結された補助波形ジェネレータ100によって生成される。補助波形ジェネレータ100は,共鳴放出スキャン用に単一の補助周波数成分を生成できるばかりではなく,広範囲の離散的周波数成分から成る電圧波形を生成することができる。コントローラ70の制御を受ける適当な任意の波形ジェネレータが,本発明で使用される補助波形を生成するために使用され得る。本発明に従って,ジェネレータ100により生成された多重周波数補助波形は,トラップから多重イオン質量を同時に共鳴させて放出するために,トラッピングフィールドが変調されている間イオントラップのエンドキャップ電極に印加される。選択イオンを分離するべく補助信号を生成するための本発明の方法が,以下に詳細に述べられている。補助波形ジェネレータ100はまたCIDによりトラップ内の親イオンを分解するべく低電圧共鳴信号を生成するのに使用されることは,周知技術である。
【0044】
さまざまなタイプの広帯域補助励起信号を使用するイオントラップから多重イオンを共鳴して放出する従来の方法において,補助信号が静電トラッピングフィールド内に印加される。そのような環境の下に,全質量範囲にわたって適正に存在するように要求される1000個またはそれ以上の周波数を伴う大量の周波数成分を有する補助広帯域信号を印加することが必要である。本発明において,全質量イオン範囲にわたって存在するのに非常に少ない周波数成分が使用されるような全く異なる方法が使用される。本発明の方法の好適実施例において,132個またはそれ以下の周波数成分を有する補助励起波形が使用される。
【0045】
本発明の方法に従って,補助ダイポール電圧波形が印加される間,トラッピングフィールドのパラメータの一つが変調される。トラッピングフィールド内のイオン質量の永年周波数はイオン質量及びトラッピングフィールドパラメータの両方に依存しているため,トラッピングフィールドパラメータの変調はイオン質量の永年周波数を変調する直接的効果を有する。これを見る有効な方法は,トラップ内の各イオンの永年周波数を値の範囲でスイープしながらトラッピングフィールドの変調を眺めることである。これは,公称値の中央の値の範囲で,各補助周波数成分をスイープするのと効果的に同等である。従って,本発明により,周波数成分のまばらな補助電圧波形と組み合わせたトラッピングフィールドの変調が,イオントラップから多重イオン質量を放出するべく使用される。これらの不所望の質量はひとつまたはそれ以上の範囲内に存在する。
【0046】
図5は,イオントラップの商用実施例の通常の質量範囲にわたって質量(m/z's)の共鳴周波数でのトラッピングフィールドの変調効果を示したグラフである。与えられたデータは公称値V0付近のトラッピング電圧の3%変調に対するものである。すべてのトラッピングパラメータ,すなわちトラッピング電圧の大きさV,トラッピング電圧の周波数f,またはトラッピングフィールドのDC成分の大きさUはトラッピングフィールドを変調するべく変化されが,実際にはVの大きさを変化させることが最も簡単である。したがって,本発明の好適実施例において,トラッピングフィールドの変調は高電圧VHから低電圧VLへトラッピング電圧の大きさを周期的に変化させることを含み,それによってピークツーピークの電圧スイングVH-VLが画成される。以下に説明されるように,VHはVLと同じだけV0からオフセットされる必要はない(すなわち,VH-V0がV0-VLと等しくなくてもよい)。図6は,公称値V0に関してトラッピング電圧を変調するのに使用され得る2つのサンプル変調波形を示す。
【0047】
図5からわかるように,永年周波数でのトラッピングフィールドの変調により生成された効果は質量スペクトルにわたってかなり変化する。大質量イオンのトラッピング電圧での3%変調は与えられた質量の永年周波数に500Hzごとの変化を生じさせ,一方小質量における同様の3%変調は与えられた質量の永年周波数に5000Hzまたはそれ以上ごとの変化を生じさせる。本発明の一つの態様のなかで,この変動性の理解において,イオントラップから範囲の質量を放出するべく生成された補助波形内の周波数成分の周波数間隔は周波数スペクトルを横切って変化する。本発明に従った好適方法において,範囲の質量を除去するのに使用される補助周波数スペクトルは複数のサブレンジに分割され,異なるサブレンジごとに一定の周波数間隔を使用する。
【0048】
図2は,如何に周波数成分のマスターセットがイオントラップ内のすべてのイオンを励起するべく生成されるかを示すフローチャートである。この周波数成分のマスターセットは以下に説明される補助電圧波形を生成するのに使用される。ブロック210からスタートする際,公称トラッピング電圧V0が印加されるときトラップ内に保持される質量範囲を知ることがまず必要であり,次にこの質量範囲に対応する永年周波数の範囲を決定する。例えば,本発明の譲受人の販売する典型的なイオントラップが約50〜650amuの範囲でイオンを保存する。(ACトラッピング電圧のみ有するトラッピングフィールドはフィールド内に捕獲される質量の上限を有しない。しかし実際には,捕獲効果は大きい質量では極端に低下するため,トラップ内に保持された多数の非常に大きい質量は無視され得る。)大質量が低永年周波数を有し小質量が高永年周波数を有する状態でV0をトラップに印加する典型的な捕獲条件の下で,50〜650amuの質量範囲は25〜420kHzの永年周波数範囲に対応する。この全周波数範囲はその後連続的なサブレンジに分割され(ステップ220)各サブレンジに対し周波数間隔が決定される(ステップ230)。本発明の好適方法によって,図5に示された関係は異なるサブレンジで周波数間隔を決定する際に使用される。現好適方法において第1サブレンジは周波数レンジの25〜80kHzにわたっており,周波数成分は1500Hzだけ離隔される。したがって,第1サブレンジは20,21.5,23,24.5,...78.5,80kHzで周波数成分を有する。第2サブレンジは82〜132kHzの間の周波数にわたっており,82,84.5,87,...129.5,132のように2500Hzだけ離隔された周波数成分を有する。135〜205kHz及び210420kHzの第3及び第4の周波数範囲はそれぞれ3500及び4500Hzだけ離隔された周波数成分から成る。各サブレンジに対する周波数成分の選択は図2におけるステップ240において識別される。4つのすべてのサブレンジにわたっている周波数成分の完全セットは,その後システムメモリ内またはそれと同等のものに保存される(ステップ250)。
【0049】
図2の方法は,トラッピングフィールドの変調に関して使用される際全質量スペクトルにわたってイオントラップからすべてのイオンを除去することが可能な補助電圧周波数のセットを生成する点に関して説明されてきたが,トラップのトータル質量範囲のサブセットである与えれた質量レンジのすべてのイオンを共鳴して除去するための周波数のセットを生成するのに,同様の方法が使用可能であることは当業者の知るところのである。本発明は従来技術に比べ,補助信号内に使用する周波数成分が非常に少ないという大きな長所を有する。これが補助電圧波形の電力を非常に低下させ,波形の生成,保存及び処理の作業を単純化する。
【0050】
マスターセット内の補助周波数のすべての成分は500Hzの積であることがわかる。短い構成波形が位相シフト無しで積の回数だけ繰り返されるように周波数成分がすべて共通因子を有するのが好適である。共通因子の選択はシステムのクロック周波数及び波形を画成するのに必要なデータポイント数に依存する。例えば,2ミリ秒続くマスター周波数の内の複数の周波数からなる波形が構成されメモリ内に保存される。この波形は補助電圧信号として45ミリ秒続く励起を与えるため30回繰り返しイオントラップに印加される。
【0051】
(しかし,コンピュータにおける処理速度及び処理パワーの現在の増加傾向が進行して,非常に特別のコンポーネントが開発されると期待されるので,リアルタイムに多重補助励起波形を生成しかつ実行することが可能となることが予想される。これが実現すれば,もはやメモリに保存された短い波形の反復に依存する必要がなく,すべての周波数成分に対しての共通因子を使用する必要もなくなる。さらに,リアルタイムの処理が実現する前でも,これらの傾向はより長い波形の簡単な生成及び保存を可能とし,その結果短い波形のセグメントが必要なくなる。)
図3は,本発明にしたがって,如何に,イオントラップ内に選択イオンを保持するべく補助電圧波形を生成するかを示すフローチャートである。まず,イオントラップ内に保持されるべき質量範囲が決定される。本発明の目的のため,ひとつ以上の質量範囲が存在し,それぞれがひとつ以上の質量値を含む。または,イオントラップ内に保持されるべき注目質量がひとつだけ存在してもよい。ここで使用されるように,各質量範囲はひとつまたはそれ以上の連続質量値からなる。ここでの議論の目的のため,質量範囲m1−m2が考えられる。次に,質量範囲の上端または下端での質量の永年周波数が,V0での捕獲電圧セットとして非変調トラッピングフィールド内で決定される(段階320)。これらの値はf1及びf2としてそれぞれ示されている。f1及びf2の値は,トラッピングフィールドの変調及びトラップ内のイオンの共鳴幅を補償するべく調節される(段階330)。エッジ周波数の調節値はそれぞれfE1及びfE2として示される。単一の質量のみがトラップ内に保持されるようなm1=m2の場合には,周波数の調節はエッジ周波数スペクトルを含むかどうかに依存しているため,f1=f2,すなわち,fE1≠fE2である。周波数を調整するべき好適技術は以下に図4とともに説明される。トラップ内に保持されるべきが一つ以上の質量範囲であれば,段階310〜330の連続が各質量範囲に対して繰り返される(段階340)。エッジ周波数は以下に説明されるように補助電圧波形内にギャップを画成するべく使用され,その結果トラップ内に保持されるイオンの共鳴周波数が捕獲電圧変調の全範囲にわたって失われることは当業者にとって周知である。すべての質量範囲に対してエッジ周波数が決定された後,補助電圧波形はエッジ周波数及び図2に関して上記された周波数のマスターセットから構成される(段階350)。
【0052】
補助電圧波形を構成するための好適方法が以下にしめされる。まず,すべてのエッジ周波数が波形に付加される。つぎに,補助周波数のセット内の各周波数が,周波数スペクトル内にひとつ以上のギャップを画成するエッジ周波数の値と比較される。(周波数のセットはfiで示され,ここでiは1から132までの範囲にわたっている。)各iの値に対し,ギャップ内に周波数fiが存在すれば,それは放棄される。さもなければ,周波数が波形に付加される。エッジ周波数fE1及びfE2を画成して,イオントラップ内に単一の質量範囲のみが保持される場合には,各fiは基準fi<fE1,fi>fE2に一致する補助電圧信号に付加される。
【0053】
周知技術であるように,最終波形のダイナミックレンジを最小化するために,最終波形内に含まれる周波数成分の初期位相は好適に制御される。好適実施例において,各周波数成分の初期位相はランダムに指定される。満足な結果を生じさせる構成補助電圧波形内の周波数成分に対して位相を指定するための他の技術が周知である。本発明は,構成広帯域信号に基づく従来技術より非常に少ない周波数成分に基づくため,周波数成分の位相を制御する必要がそれほど大きくない。上記方法で構成された最終波形セグメントは実験で使用するためメモリに保存される。
【0054】
一方,マスター波形が周波数成分のマスターセットから生成され,システムメモリ内に記録される。マスター波形の周波数成分の位相は,ランダムに,または最終マスター波形のダイナミックレンジを最小化する適当なアルゴリズムにより指定される。最終波形は,エッジ周波数を付加しエッジ周波数間に存するその他の周波数を除去することにより,マスター波形から引出される。孤立周波数成分,マスター波形及び最終印加波形はすべてデジタルであり,処理はシステムソフトまたはデジタル信号プロセッサを通じて便利に実行される。もちろん,アナログ信号を生成し処理するための手段,及びアナログ信号をデジタル信号に変換するためのまたはその逆の手段は,周知技術である。
【0055】
本発明にしたがって,ひとつまたはそれ以上の範囲の不所望のイオンをイオントラップから除去するべく,最終波形がトラッピングフィールドの変調に関連して使用される。好適には,範囲はトラップ内に保持されるべき質量の側または質量範囲のいずれかに存する。ひとつ以上の不連続質量または保持される質量範囲が存在する結果,補助波形は3つ以上の範囲の質量をイオントラップから除去させる。
【0056】
好適には,補助励起波形は,イオントラップのエンドキャップ電極30,35へ,イオン化電子ビームがゲートオン状態になりトラップ内へのイオン導入の間及びイオン化が完了した後の短時間の間に印加される。波形が印加されている間,トラップ内のイオンの永年周波数を変化させるためにトラッピングフィールドが変調される。好適に,トラッピングフィールドの変調は,公称値V0に関して高いVHから低いVLへとRFトラッピング電圧を変調することによって実行される。変調波形は捕獲電圧を変調させるために印加される。サンプル変調波形は図6との関係で以下に説明される。図6は本発明の他の態様にしたがって特別に構成された変調波形を示すが,他の単純な波形も印加可能である。例えば,変調波形は単純な正弦波でもよい。好適実施例において,図6(C)の波形に類似する変調波形を有する500Hzの変調周波数が使用される。図6(C)の波形において,三角波がトラップに対し,イオン化の間及びイオン化の終了後の1サイクルまでの間に印加される。その結果,ユーザが選択した特殊なドウェル時間tHOLDが三角形の頂点に付加される。
【0057】
本発明の微細な点において,異なるサブレンジの周波数成分の振幅は変化する。イオントラップから大きい質量のイオンを放出するのに必要なエネルギーは,小質量のイオンを放出するのに必要なエネルギーより低いことは周知である。さらに,イオンを放出するのに非常に大きな電圧を使用することが,分解能を劣化させる逆の効果を有する。したがって,補助周波数成分の電圧を最適化することが最もよい。本発明の好適実施例において,最大周波数成分に使用される電圧の約70%である最小周波数成分に使用する電圧とともに,一定だが異なる電圧レベルが各4つの周波数サブレンジに対して使用される。各サブレンジ内で一定値を使用する以外は,各孤立周波数成分(または,さまざまなサブレンジのサブセット)は異なる値に指定される。
【0058】
図4は,図3の方法に使用される最終エッジ周波数を決定するための好適方法のフローチャートである。該方法は図3の段階320と同様に,イオントラップ内に保持される質量範囲(m1−m2,m1≦m2)の端での質量(m1,m2)の公称永年周波数(f1,f2)が非変調トラッピング電圧V0に対し決定されるところの,段階410から開始される。次に,予備的なエッジ周波数(fPE1,fPE2)が,公称永年周波数をエッジスケーリング因子により調節することによって計算される。エッジスケーリング因子fEは(大質量m2に対応する)最小周波数から減じられ,(小質量m1に対応する)最大周波数に付加される,すなわち,fPE1=f1+fE及びfPE2=f2−fEである。
【0059】
イオントラップ内の質量は有限の共鳴幅を有し,その結果すべての与えられた質量はその永年周波数と一致する補助電圧からのエネルギーばかりでなく,その付近の補助電圧からのエネルギーも吸収するという認識のもとに,エッジスケーリング因子が使用される。これを見るひとつの方法は,もし,m1=m2,f1=f2であれば,単一の周波数成分より広い周波数スペクトル内のギャップが存在する必要があるという点である。本発明者は与えられた質量のイオンの共鳴幅は大きい空間電荷の存在する状況では1.0〜1.5kHzの幅であって,全質量スペクトルにわたって比較的一定であるということを決定した。非常に広い共鳴幅を生じさせる因子は,空間電荷の効果及びトラッピングフィールドの欠陥を含む。イオントラップ内の空間電荷は捕獲イオンの永年周波数に影響を与え,さらに捕獲イオンの空間的分布に影響を与える。実際,大きな空間電荷の存在はトラップに印加される小さいDC電圧Uを有することと同値であるとして観測される。さらに,最も注意深く構成されたイオントラップでさえ,トラップ内のイオンの位置を変化させる高次の成分(例えば,六重極,八重極等)を有するということが知られている。いくつかの商用イオントラップでは,高次のフィールドは故意に導入される。これらの効果はトラップ内のイオンの共鳴幅を広げる要因となる。たとえ信号が空間電荷を生成する要因となる不所望なイオンを放出するのにトラップに印加されたとしても,イオンはトラップから即座に除去されない。したがって,イオン化が完了し,補助電圧信号の印加により不所望なイオンがトラップから除去されるまでに,それらはトラップ内の空間電荷に寄与する。トラップ内に選択的に保存されたイオンの永年周波数及びそれらの共鳴幅は,イオン構造及び保存プロセスを通じて変化する。単一イオンがトラップ内の最適レベルで保存されると,共鳴幅は500〜800Hzになる。
【0060】
従来技術は,概してこれらの因子を認識する代わりに,イオンの永年周波数の変動性及び永年周波数の共鳴幅の変動性に伴う問題を無視した。したがって,多くの従来技術は高帯域信号内の非常に狭い周波数ギャップまたはノッチを使用することを説明する。しかし,大きな空間電荷の存在のもとで,周波数ノッチを有する高帯域励起からなる単一波形は,ノッチの中心周波数及びノッチ幅がターゲットイオンの永年周波数及び共鳴幅と常に一致するわけではないため,非最適状態である。空間電荷及び高次のフィールド成分の影響によりシフトされた永年周波数を有する一部のターゲットイオンは,高帯域信号により放出される。トラップ内のほとんどの空間電荷が除去され,かつ注目のイオンが高次のフィールドの効果が最小であるところのトラップの中心付近の軌道を占有するまでは,ターゲットイオンの永年周波数は概して周波数ノッチの中心周波数に近づかない。好適に,エッジスケーリング因子は,少なくとも補助励起波形の初期印加の間は,半分の高さの約1500Hzの共鳴幅にほぼ等しい。以下に説明するように,効果的ノッチ幅は,イオン化の完了した後の補助波形をトラップに印加している一部の時間中に縮小され得る。これはエッジスケーリング因子の効果的な減少として観測される。
【0061】
図4の議論にもどって,エッジスケーリング因子によりエッジ周波数を調節した後(段階420),エッジ周波数はトラッピング電圧が高電圧VH及び低電圧VLの間で変調されるという事実を考慮するべくさらに調節される。この調節は,段階430及び440から成る。段階430において,小質量イオンm1に対する永年周波数内の変化Δf1は公称電圧V0と変調捕獲電圧の最高値VHでのm1の永年周波数の差を決定することにより計算され,大質量イオンm2に対する永年周波数内の変化Δf2は公称電圧V0と変調捕獲電圧の最低値VHでのm2の永年周波数の差を決定することにより計算される。次に,段階440において,予備エッジ周波数は段階430内で計算された量,すなわち,fE1=fPE1-Δf1及びfE2=fPE2+Δf2により調節される。これらの値は最終エッジ周波数と呼ばれている。しかし,好適には,該値はマスター周波数セット内の周波数に対し共通因子を有するという基準に一致する近接の周波数に囲まれている。図4の段階は,選択的に保存されるべき質量の各範囲に対し繰り返される。
【0062】
本発明により方法のさらに詳細な点において,最終エッジ周波数の振幅は,トラップ内に保持されるイオンの比較的大きい共鳴幅に伴う問題をさらに軽減するべく,小さくスケーリングされる。変調電圧波形の形状に依存して,捕獲電圧が変調される際,最終エッジ周波数は捕獲電圧が変調の端点に接近するに従いすなわちピーク値に達し向きを変更する際に大量の時間間隔を費やす。トラップ内に保持されるべき質量範囲の上端及び下端付近でイオンを共鳴させるような結合フィールド条件は最長のドウェル時間を有する。上端及び下端のイオンに共鳴して結合されたエネルギーは比較的長時間存在し,そのため所望のイオンの不本意な除去を引き起こす。エッジ周波数成分の電圧を減少させることにより,この問題は軽減される。
【0063】
さらに本発明の方法の詳細な点において,結合フィールドは,トラップ内のイオンの共鳴周波数及び共鳴幅が変化するに従って,時間的に変化する。例えば,イオン除去及び分離の段階は2つの段階で実行される。第1段階において,広い効果的ノッチ幅が,イオン形成またはイオン注入処理の間及びその後の短時間の間に使用される。この第1段階はトラップからほとんどの空間電荷除去し,かつ残存イオンが高次のトラッピングフィールドの効果が非常に減少されるところのトラップの中心を占有するようにする。トラップ内の残存イオンの共鳴幅は,それにより実質的に減少し,残存イオンの永年周波数はそれぞれの公称永年周波数に接近するかまたはそれ上にある。第2段階の間に,効果的ノッチ幅はイオン分離の分解能を増加させるべく減少される。この2段階処理は,第1段階の間に印加される第1レベルから第2段階の間に印加されるより大きな第2レベルまで,トラッピング電圧のピークツーピーク変調範囲を単純に増加させることにより実行される。この関係において,トラッピング電圧を変調することは,効果として各補助電圧成分を値の範囲にわたってスィープすることと同じであり,変調量を増加させることは効果的スィープを増加させることであることがわかる。変調電圧を増加させることは補助電圧波形内のエッジ周波数のスィープを増加させ,それによってそれらの間のギャップをせばめる。さらに,補助電圧波形の大きさは第1時間間隔では高いレベルで,第2時間間隔では低いレベルで印加される。
【0064】
もちろん,結合捕獲/補助フィールドを変化させる他の方法は当業者に周知である。例えば,捕獲電圧変調の2つの精確な値を使用せずに,捕獲電圧の変調は時間的に傾斜される。他の実施例において,トラッピングフィールドの傾斜はイオン化時間間隔の終点またはそれ付近に始まる(すなわち,一定のピークツーピーク変調はすべてまたはほとんどのイオン化時間間隔に使用され,イオン化が完全にまたはほぼ完了したのち徐々に傾斜される)。同様に,これは実行が困難であるために好適ではないが,エッジ周波数及び/またはそれらの振幅は補助電圧波形が一定に印加されまたはトラッピングフィールド変調を変化させる間の時間間隔にわたって変化する。
【0065】
さらに,他の詳細な点における本発明は,四重極フィールドに付加される高次の多重極成分を有するイオントラップにおいて,捕獲イオンの永年周波数とrf捕獲電圧を増加させることによる補助波形の周波数成分との間で共鳴に近づくことは,捕獲電圧を減少させることにより共鳴に近づくことと同値ではないという周知事実を扱うべく実行される。この非対称形を処理する2つの方法が図6の(A)及び(B)に示されている。図6(A)は公称捕獲電圧V0610に関して捕獲電圧を変調するのに使用される鋸の歯状の波形620を示す。波形620は捕獲電圧Vrfを急速に低から高電圧へ増加させかつ比較的よりゆるやかに減少させる。示された波形において,低から高へ捕獲電圧を増加させるのに用する時間は,高から低へ捕獲電圧を減少させるのに用する時間の約半分である。
【0066】
図6(B)の波形630において,該波形は公称電圧V0に関して対称では無く,その結果高ピーク電圧は低ピーク電圧と等しくはない(すなわち,V0-VL≠VH-V0)。トラッピングフィールドの下方変調の間のピーク電圧は図6(B)の波形に減少されるが,捕獲電圧がV0以下に減少する時間間隔は間隔tHOLDの挿入によりトラッピングフィールドが増加する時間間隔と同一である。
【0067】
このタイプのほとんどの機器において,イオントラップのダイナミックレンジは制限され,トラップが最適数のイオンに満たされた状態のとき最高に精確かつ有用な結果を生じさせることが知られている。もし,トラップ内に存在するイオンが非常に少なければ,感度は低くかつピークはノイズにより損なわれる。もし,トラップ内に存在するイオンが非常に多ければ,空間電荷効果が非常にトラッピングフィールドを歪め,かつピーク分解能が損なわれる。
【0068】
従来技術はこの問題を,一定レベルでトラップ内の全電荷数を維持するためのいわゆる自動利得制御(AGC)を使用して処理してきた。特に,従来のAGC技術はトラップ内の電荷数を見積もるためのトラップの高速プレスキャンを使用し,その後このプレスキャンを次の分析スキャンを制御するべく使用する。本発明にしたがって,プレスキャンはまた空間電荷を制御しかつ分析スキャン用にトラップ内を最適化するのにも使用される。プレスキャンの間,上記同様の補助波形がトラップに印加され,その結果補助分析スキャンの間のイオン化時間は注目イオンでトラップを満たすよう最適化され得る。
【0069】
したがって,当業者は本発明が,(1)選択的に所望のイオンを保存しかつ不所望のイオンを除去するべくトラッピングフィールド変調と連動して使用するための補助励起波形を構成する単純な方法,(2)励起波形内の周波数成分の数を最少化するような波形を構成する方法,(3)効果的な質量範囲の幅が有用であるところのトラップ内に保持された質量範囲を画成する,イオントラップ内の結合トラッピング及び励起フィールドを生成するための方法,(4)空間電荷効果が減少するようにトラッピング電圧の変調を変化させる方法,及び(5)異方向からのイオンを共鳴に近づける際存在する非対称性を補償するフィールド変調の方法,を提供することを理解されよう。
【0070】
本発明は特定の実施例について説明されて来たが,特許請求の範囲に記載された発明の思想及び態様から離れることなく,さまざまな変更及び改良が可能であることは当業者の知るところである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法を実行するために使用されるイオン質量スペクトロメータ装置の部分略示図である。
【図2】本発明によるマスター周波数セットを構成するための方法のフローチャートである。
【図3】本発明の方法にしたがった補助電圧波形を形成するための方法のフローチャートである。
【図4】 本発明による注目の質量範囲を保持するべく補助電圧波形内のエッジ周波数成分を調整するための方法のフローチャートである。
【図5】トラッピングフィールド電圧の3%変化に対するイオン質量の永年周波数の変化を質量数の関数として表したグラフである。
【図6】 (A),(B)及び(C)は,本発明に従うトラッピング電圧を変調するための交流波形を示した図である。

Claims (29)

  1. 四重極イオントラップ質量スペクトロメータを使用するための方法であっって、
    第1連続質量範囲内のイオンがイオントラップ内に捕獲されるように、イオントラップ内にトラッピングフィールドを確立する段階であって、捕獲された各イオンはそれに関連する永年周波数を有するところの段階と、
    トラッピングフィールドを変調しながら、イオントラップ内に第1補助ダイポールフィールドを形成することによって、イオントラップから第2連続質量範囲内のイオンを除去する段階であって、前記第2連続質量範囲は前記第1連続質量範囲のサブセットであり、前記第1補助ダイポールフィールドはそれぞれの永年周波数でイオンを励起るための複数の周波数成分から成り、前記第1補助ダイポールフィールド内の周波数成分は第1周波数範囲にわたっており、前記周波数成分の間隔は前記第1周波数範囲にわたって変化する、ところの段階と、
    から成り、
    前記第1周波数範囲は複数の連続周波数サブレンジに分割され、各サブレンジ内の周波数成分の間隔は実質的に一定である、ところの方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、さらに、トラッピングフィールドを変調しながらイオントラップ内に第2補助ダイポールフィールドを形成することにより、第3連続質量範囲内のイオンをイオントラップから除去する段階であって、前記第3連続質量範囲は前記第1連続質量範囲のサブセットであり、前記第2及び第3質量範囲の間には不連続性が存在するように、前記第3連続質量範囲は前記第2連続質量範囲と異なるところの段階から成り、前記第2補助ダイポールフィールドは前記第3連続質量範囲内のイオンをそれぞれの永年周波数で励起するための複数の周波数成分から成り、前記第2補助ダイポールフィールド内の周波数成分は第2周波数範囲にわたっている、
    ところの方法。
  3. 請求項2に記載の方法であって、前記第2及び第3連続質量範囲の間の前記不連続性は単一質量単位のオーダーである、
    ところの方法。
  4. 請求項2または3に記載の方法であって、前記周波数成分の間隔は前記第2周波数範囲にわたって変化する、
    ところの方法。
  5. 請求項lから4のいずれかに記載の方法であって、実質的にすべての周波数成分は少なくとも1500Hz離れている、
    ところの方法。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の方法であって、前記第1周波数範囲における境界である最終エッジ周波数f E1 を決定する段階をさらに含み、この最終エッジ周波数 f E1 を決定する段階が、
    (a)イオントラップ内に保持されるベきイオンの質量m1を決定する段階であって、該質量が第2質量範囲端をこえた第1質量であるところの段階と、
    (b)非変調トラッピングフィールド内のm1の永年周波数f1を決定する段階と、
    (c)トラッピングフィールドの変調を補償するべくf1の値を計算上調節することで、最終エッジ周波数 f E1 を求める段階と、
    を含むところの方法。
  7. 請求項6に記載の方法であって、f1の値を調節する段階が、
    所定のエッジスケーリング周波数fEだけf1をオフセットすることで予備エッジ周波数fPE1を計算する段階と、
    前記予備エッジ周波数 f PE1 に基づいて、前記最終エッジ周波数 f E1 を求める段階と、
    を含む、ところの方法。
  8. 請求項7に記載の方法であって、f1の値を調節する段階がさらに、トラッピングフィールドの変調に関連するf1の変化△f1を計算する段階を含み、
    前記予備エッジ周波数 f PE1 に基づいて、前記最終エッジ周波数 f E1 を求める段階が、△f1だけfPE1をオフセットすることで前記最終エッジ周波数fE1を計算する段階を含む、ところの方法
  9. 請求項8に記載の方法であって、前記第1周波数範囲内のすベての周波数成分が整数の共通因子を有する、ところの方法。
  10. 請求項9に記載の方法であって、さらに前記共通因子の整数倍である周波数に前記最終エッジ周波数を丸める段階から成る、ところの方法。
  11. トラッピングフィールドがACトラッピング電圧から成るところの請求項1から10のいずれかに記載の方法であって、該方法はさらに、ACトラッピング電圧を上下のピーク値間で変調する段階から成り、
    第1補助ダイポールフィールドが印加される間、前記ACトラッピング電圧の上下ピーク値が変化する、
    ところの方法。
  12. 請求項11に記載の方法であって、トラッピングフィールド変調のピークツーピーク値は、イオンがイオントラップ内に導入される間一定であり、その後増加する、
    ところの方法。
  13. 第1補助ダイポールフィールド及びトラッピングフィールドが結合フィールドを形成し、イオントラップ内にイオンが選択的に保存されるように、該結合フィールドがイオンの永年周波数に対応する周波数ノッチを効果的に画成するところの請求項から1のいずれかに記載の方法であって、当該方法がさらに、第1補助ダイポールフィールドがイオントラップに印加されている間に、周波数ノッチの幅を変化させるべく結合フィールドを制御する段階から成り、前記制御する段階は、前記 f 1 の値を調節する段階に基づいて、前記第1補助ダイポールフィールドを構成するために付加されるべき周波数成分の組み合わせを変化させる段階から成る、ところの方法。
  14. 請求項13に記載の方法であって、周波数ノッチの幅は第1補助ダイポールフィールドがイオントラップに印加されている間に減少する、ところの方法。
  15. 請求項13またはl4に記載の方法であって、前記変化させる段階は前記最終エッジ周波数の少なくともひとつを変更する段階から成る、ところの方法。
  16. 請求項13または14に記載の方法であって、前記変化させる段階はそれぞれの前記最終エッジ周波数を有する波の振幅を、変調電圧波形の形状に依存して変更する段階から成る、ところの方法。
  17. 請求項1から16のいずれかに記載の方法であって、前記周波数成分の電圧は前記第l周波数範囲にわたって変化する、ところの方法。
  18. 請求項17に記載の方法であって、前記第1周波数範囲は複数の連続周波数サブレンジに分割され、各サブレンジ内の周波数成分の電圧は実質的に一定である、ところの方法。
  19. 公称トラッピング条件の下でのトラップにより保持された質量範囲内で選択された範囲のイオンを除去するベく、イオントラップ内の変調トラッピングフィールドとともに使用するための補助ダイポール電圧波形を生成する際に使用する周波数成分のマスターセットを作り出すための方法であって、
    公称トラッピング条件のもとでイオントラップ内に効果的に保持される質量範囲を決定する段階と、
    周波数範囲を画成するべく、質量範囲の端点の永年周波数を決定する段階と、
    複数の連続サブレンジへ前記周波数範囲を分割する段階と、
    各周波数サブレンジに対し、サブレンジにわたっている複数の一様に離隔された周波数成分を周波数成分のマスターセットに付加する段階であって、周波数成分の間隔は異なるサブレンジにおいて異なるところの段階と、
    から成る方法。
  20. 請求項19に記載の方法であって、周波数成分の間の間隔は各サブレンジ内で少なくとも1500Hzである、
    ところの方法。
  21. 請求項19または20に記載の方法であって、少なくとも4つのサブレンジが存在する、
    ところの方法。
  22. 請求項19から21のいずれかに記載の方法であって、少なくともひとつの前記サブレンジ内の周波数間隔が少なくとも4500Hzである、
    ところの方法。
  23. 請求項19から22のいずれかに記載の方法であって、さらに、
    (a)イオントラップ内に選択的に保存されるべき質量m1〜m2の連続範囲を決定する段階であって、前記範囲が少なくともひとつの質量値から成る段階と、
    (b)非変調トラッピングフィールドにおいて、m1及びm2の永年周波数(f1及びf2)を決定する段階と、
    (c)トラッピングフィールドの変調の効果を補償するベく、f1及びf2の値を計算上調節することによってエッジ周波数のセットを計算する段階と、
    (d)イオントラップ内に選択的に保存されるべき質量の付加的範囲のそれぞれに対し、段階(a)から(c)を繰り返す段階と、
    (e)各エッジ周波数を有する波と、エッジ周波数の各セット間にある以外の周波数成分のマスターセット内の各周波数成分とを合体することにより最終波形を生成する段階と、
    から成る方法。
  24. 請求項23に記載の方法であって、トラッピングフィールドを与える段階を含み、該トラッピングフィールドはAC成分を有し、トラッピングフィールドの変調はトラッピングフィールドのAC成分の電圧を変調することから成る、
    ところの方法。
  25. 請求項24に記載の方法であって、変調波形がACトラッピング電圧の変調をもたらすよう印加される、
    ところの方法。
  26. 請求項25に記載の方法であって、前記変調波形は鋸歯状の波形であって、波形の増加部分の傾斜は波形の減少部分の傾斜と異なる、
    ところの方法。
  27. 請求項23または26に記載の方法であって、公称トラッピング電圧より上の波形のピーク振幅は、公称トラッピング電圧より下の波形のピーク振幅と異なる、
    ところの方法。
  28. 請求項23に記載の方法であって、エッジ周波数を計算する段階(c)は、さらに、トラッピングフィールドの変調を補償する前にスケーリング因子によりf1及びf2の値を調節する初期段階から成る、ところの方法。
  29. 請求項28に記載の方法であって、前記補助波形内の周波数成分がすべて共通因子の整数倍であり、段階(c)はさらに、エッジ周波数を最も近くの前記共通因子の整数倍に丸める段階から成る、
    ところの方法。
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