JP3761097B2 - 2−ビニル置換カルバペネム誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、カルバペネム化合物の2位に置換ビニル基を直接導入することにより、2−ビニル置換カルバペネム誘導体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
β−ラクタム系抗生物質の一種であるカルバペネム類としては各種の化合物が知られている。例えば、イミペネム、メロペネムおよびメロペネムのメシレート体、ウレア体などが知られている(特開昭60−19787号公報、特開昭60−233076号公報)。これらは、カルバペネム骨格の2位にS置換基を導入したものである。
【0003】
従来、カルバペネム骨格の2位にC置換基を導入するには、幾つかの工程を経て間接的に導入する方法が用いられており、C置換基を2位に直接導入する方法の例は数少ない。
【0004】
例えば、Thomas A. Ranoら, Tetrahedron Lett., Vol. 31, No. 20, p.2853 (1990)には、カルバペネム化合物のβ−ケトエステル体に無水トリフルオロメタンスルホン酸(Tf2Oと略する)を反応させて、カルバペネム骨格の2位に脱離基のトリフルオロメタンスルホン酸基(−OSO2CF3:−OTfと略する)を導入したエノールトリフレートエステル体を形成し、次いでパラジウム触媒の存在下、アリールトリメチルスズ(ArSnMe3)を反応させ、カルバペネム化合物の2位にアリール基を導入する方法が開示されている。
【0005】
N. Yasudaら, Tetrahedron Lett., Vol. 34, No. 20, p.3211 (1993)には、カルバペネム化合物のβ−ケトエステル体に無水トリフルオロメタンスルホン酸を反応させて、カルバペネム骨格の2位に脱離基の−OTf基を導入したエノールトリフレートエステル体を形成し、次いでパラジウム触媒の存在下、アリールジヒドロキシボラン(ArB(OH)2)を反応させ、カルバペネム化合物の2位にアリール基を導入する方法が開示されている。
【0006】
上記のように、カルバペネム化合物の2位にアリール基が導入されている一因は、アルキル基、アルケニル基よりもアリール基の方が有機電子論的に容易に導入し得るからである。
【0007】
カルバペネム化合物の2位にアリール基以外の基、例えば、置換ビニル基を導入する方法が、国際公開番号WO 93/16080に開示されている。この方法によれば、カルバペネム化合物の2−トリフレートエステル体にパラジウム触媒の存在下、3−(トリ−n−ブチルスズ)アリルアルコールを反応させて、3-ヒドロキシ-1-プロペニル基(−CH=CHCH2OH)が2位に導入される。2位に置換ビニル基を有するカルバペネム化合物としては、例えば、M.Imutaら, Bioorg. Med. Chem. Lett., Vol.3, No.11, p.2199 (1993)に記載の(1S,5R,6S)-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1-メチル-2-[(E)-3-(ピリジニオ-1-イル)-1-プロペン-1-イル]カルバペン-2-エム-3-カルボキシレートなどがあり、このようなタイプの化合物はこれを中間体とする他のカルバペネム化合物の合成にも有用であると考えられる。 しかし、3-ヒドロキシ-1-プロペニル基を導入するために用いる有機スズ試薬は、毒性のあるスズを含有するため、上記の方法は実用的には難点がある。
【0008】
このように、カルバペネム化合物の2位に置換ビニル基を簡便かつ効果的に導入する方法が望まれている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決することにあり、1位の立体配置を保持したまま、緩和な反応条件で効果的にカルバペネム骨格の2位に、スズ、ホウ素などの誘導体に変換することなく置換ビニル基を直接導入することにより、各種カルバペネム誘導体を製造するのに有用な2−ビニル置換カルバペネム誘導体を簡便かつ効果的に製造する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、式(I):
【0011】
【化5】
【0012】
(式中、Rはカルバペネム骨格であり、R4およびR5はそれぞれ独立して水素もしくは有機残基であり、または一緒になって炭素環を形成し、この炭素環はヘテロ原子を含有していてもよく置換基を有していてもよい)
で示される2−ビニル置換カルバペネム誘導体の製造方法であって、この方法は、 式(II):
【0013】
【化6】
【0014】
(式中、Rは式(I)におけるのと同意義を有する)
で示される、2位が脱離基Zで置換されたカルバペネム化合物と、
式(III):
【0015】
【化7】
【0016】
(式中、R4およびR5は式(I)におけるのと同意義を有する)
で示される1−オレフィン化合物とを有機溶媒中パラジウム触媒の存在下で反応させる工程を包含する。
【0017】
好適な実施態様においては、上記脱離基Zはハロゲノ低級アルカンスルホン酸基またはハロゲノスルホン酸基である。
【0018】
他の好適な実施態様においては、上記脱離基Zは−OSO2CF3である。
【0019】
他の好適な実施態様においては、上記2−ビニル置換カルバペネム誘導体は、式(I-1):
【0020】
【化8】
【0021】
(式中、R1は水素または有機残基であり、R2は水素、低級アルキルまたは低級アルコキシ基であり、R3は保護されていてもよいカルボキシル基であり、R4およびR5はそれぞれ独立して水素もしくは有機残基であり、または一緒になって炭素環を形成し、この炭素環はヘテロ原子を含有していてもよく置換基を有していてもよい)
で示される。
【0022】
他の好適な実施態様においては、上記パラジウム触媒は、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、クロロアリルパラジウム(II)ダイマー、およびパラジウムアセテート(II)からなる群から選択される。
【0023】
本明細書における略号の意味を次に示す。
【0024】
Ac:アセチル
Boc:t−ブトキシカルボニル
Bu:ブチル
Et:エチル
Me:メチル
Ph:フェニル
PMB:p−メトキシベンジル
Tf:−SO2CF3
本明細書において、各基の好適な範囲は次の通りである。
【0025】
「低級アルキル」の炭素数は1〜6であり、このようなアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどがある。この低級アルキルの炭素数は、好ましくは1〜4である。最も好ましい低級アルキルは、メチルまたはエチルである。
【0026】
「アリール」とは、フェニル、ナフチルなどの単環あるいは多環の芳香族基を意味する。「アラルキル」とは、前記アリールで置換されている前記低級アルキルを意味する。
【0027】
前記の「低級アルキル」、「アリール」、「アラルキル」はいずれもハロゲン、ニトロ、保護されていてもよいヒドロキシ、保護されていてもよいアミノ、あるいはその他反応に悪影響を及ぼさない置換基により置換されていてもよい。
【0028】
以下の式(I)で表される2−ビニル置換カルバペネム誘導体において、Rはカルバペネム骨格である。このRはカルバペネム化合物に使用し得る置換基を各位に有し得る。
【0029】
【化9】
【0030】
R4およびR5はそれぞれ独立して水素もしくは有機残基である。あるいは、R4およびR5は一緒になって炭素環を形成し得、この炭素環はヘテロ原子を含有していてもよく置換基を有していてもよい。
【0031】
R4およびR5によりそれぞれ単独でまたは一緒になって示される基としては、例えば、公知のカルバペネム系抗菌剤の2位においてS原子と結合している置換基を用いることができ、例えば、置換もしくは非置換低級アルキル基;置換もしくは非置換シクロアルキル基;置換もしくは非置換5〜8員アリール基;置換もしくは非置換の窒素原子、酸素原子および/または硫黄原子を含有する3〜8員脂環式複素環基またはその縮合環式基;置換もしくは非置換の窒素原子、酸素原子および/または硫黄原子を含有する3〜8員芳香族または非芳香族複素環基またはその縮合環基などが挙げられる。これらの基の置換基としては、例えば、低級アルキル基;低級アルケニル基(例えば、C2-6アルケニル基(ビニル、ブテニル、プロペニルなど));シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどのC3-7シクロアルキル基);アリール基(例えば、フェニル、ナフチルなどのC6ー10アリール基であり、このアリール基はさらに水酸基、C1-4アルキル基(メチル、エチルなど)、C1-4アルコキシ基(メトキシ、エトキシなど)などで置換されていてもよい);低級アルケノイルオキシカルボニルアミノ基;芳香族複素環基(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を1〜4個含む5〜6員芳香族複素環基(フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、フラザニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニルなど));窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を1〜4個含む5〜6員芳香族複素環またはベンゼン環が1または2個縮合した窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を1〜5個含む2環性または3環性芳香族縮合複素環基(ベンゾフラニル、イソベンゾフラニルベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、1,2-ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1,2-ベンゾイソチアゾリル、1H-ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、α-カルボリニル、β-カルボリニル、γ-カルボリニル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、フェナトリジニル、フェナトロリニル、インドリジニル、ピロロ[1,2-b]ピリダジニル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジル、イミダゾ[1,2-a]ピリジル、イミダゾ[1,5-a]ピリジル、イミダゾ[1,2-b]ピリダジニル、イミダゾ[1,2-a]ピリミジニル、1,2,4-トリアゾロ[4,3-a]ピリジル、1,2,4-トリアゾロ[4,3-b]ピリダジニルなど);非芳香族複素環基(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を1〜3個含む4〜6員非芳香族複素環基(オキシラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ピロリジニル、テトラヒドロフリル、チオラニル、ピペリジル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニルなど));アミノ基;モノまたはジ低級アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノなどのモノまたはジC1-6アルキルアミノ基);トリ低級アルキルアンモニウム基(例えば、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウムなどのトリC1-6アルキルアンモニウム基);イミノ低級アルキルアミノ基;アミジノ基;グアジニノ基;アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニルなどのC1-6アルカノイル基);カルバモイル基;モノまたはジ低級アルキルカルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジメチルカルバモイルなどのモノまたはジC1-6アルキルカルバモイル基);チオカルバモイル基;スルファモイル基;モノまたはジ低級アルキルスルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジメチルスルファモイルなどのモノまたはジC1-6アルキルスルファモイル基);保護されていてもよいスルファモイルアミノ基;カルボキシル基;保護されていてもよいカルボキシアミノ基;低級アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどのC1-6アルコキシカルボニル基);アラルキルオキシカルボニル基;ヒドロキシル基;低級アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシなどのC1-6アルコキシ基);低級アルケニルオキシ基(例えば、アリルオキシ、2−ブテニルオキシなどのC2-6アルケニルオキシ基);シクロアルキルオキシ基(例えば、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシなどのC3-7シクロアルキルオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ、フェネチルオキシなどのC7-10アラルキルオキシ基);アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、ナフチルオキシなどのC6-10アリールオキシ基など);メルカプト基;低級アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオなどのC1-6アルキルチオ基);アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ、フェネチルチオなどのC7-10アラルキルチオ基);アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、ナフチルチオなどのC6-10アリールチオ基);スルホ基;シアノ基;アジド基;ニトロ基;ニトロソ基;オキソ基;チオキソ基;ハロゲノ基(例、フッ素、塩素、臭素など)などが挙げられる。さらに、上記置換基中のヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基などは、公知の保護基により保護されていてもよい。R4およびR5は同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
上記式(I)の2−ビニル置換カルバペネム誘導体は、好ましくは、以下の式(I-1):
【0033】
【化10】
【0034】
で示される。ここで、R1は水素または有機残基であり、この有機残基はカルバペネム化合物の6位に使用し得る置換基ならばいずれでもよい。例えば、保護されていてもよいヒドロキシ置換低級アルキルまたは低級アルコキシ基などである。R2は水素、低級アルキルまたは低級アルコキシ基などである。R3は保護されていてもよいカルボキシル基である。
【0035】
上記の好ましい2−ビニル置換カルバペネム誘導体(I-1)は、例えば、以下の反応スキーム1に従って合成される。
【0036】
【化11】
【0037】
2−オキソカルバペネム誘導体の2位に脱離基Zを導入して化合物(II-1)を形成させ、この化合物(II-1)にパラジウム触媒の存在下、目的の導入したい置換基を有する1−オレフィン化合物(III)を反応させて、2−ビニル置換カルバペネム誘導体(I-1)を得る。ここでR1、R2およびR3は式(I-1)におけるのと同意義であり、R4およびR5は式(I)におけるのと同意義である。
【0038】
本発明の製造方法において、上記式(II-1)の脱離基Zとしては、例えば、置換もしくは非置換のアリールスルホン酸基、低級アルカンスルホン酸基、ハロゲノ低級アルカンスルホン酸基、ハロゲノスルホン酸基、ジアルキルリン酸基、ジアリールリン酸基、ハロゲノ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが用いられる。上記アリールスルホン酸基としては、ベンゼンスルホン酸基、p−トルエンスルホン酸基、p−ニトロベンゼンスルホン酸基、p−ブロモベンゼンスルホン酸基などがある。上記低級アルカンスルホン酸基としては、メタンスルホン酸基、エタンスルホン酸基などが挙げられる。上記ハロゲノ低級アルカンスルホン酸基としては、トリフルオロメタンスルホン酸基などがある。上記ハロゲノスルホン酸基としては、フルオロスルホン酸基などがある。上記ジアルキルリン酸基としては、ジエチルリン酸基などがある。上記ジアリールリン酸エステルとしては、ジフェニルリン酸基などがある。上記ハロゲノ基としては、塩素、臭素、ヨウ素などがある。アルキルスルフィニル基としては、メチルスルフィニルなどがある。アリールスルフィニル基としては、フェニルスルフィニルなどがある。アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニルなどがある。アリールスルホニル基としては、p−トルエンスルホニルなどがある。好適な脱離基Zとしては、ハロゲノ低級アルカンスルホン酸基、ハロゲノスルホン酸基などが挙げられ、より好適には、トリフルオロメタンスルホン酸基が用いられる。
【0039】
上記反応で用いられる2位が脱離基Zで置換されたカルバペネム化合物(II-1)は、2−オキソカルバペネム化合物に有機溶媒(ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、トルエンなど)中で、アミン類(N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリンなど)の存在下、脱離基Zを導入し得る酸無水物(無水トリフルオロメタンスルホン酸、無水フルオロスルホン酸など)などを反応させることにより得られ得る。
【0040】
上記スキーム1の反応に用いられるパラジウム触媒としては、パラジウムの価数が0価または2価である触媒が好ましく、例としては、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、クロロアリルパラジウム(II)ダイマー、パラジウムアセテート(II)などが挙げられ、好適には、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、およびパラジウムアセテート(II)などである。
【0041】
上記パラジウム触媒の使用量は、実施する反応条件により異なり、特に限定されるものではないが、経済的観点からはより少量で用いることが好ましく、一方、反応速度論的にはある程度多くの量を用いて行うことが好ましい。一般的には、基質の0.1モル%から100モル%、好ましくは1モル%から30モル%を使用するのが好ましい。
【0042】
上記スキーム1の反応は適切な有機溶媒中で行われる。この有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジオキサン、N-メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0043】
この反応には、添加剤として、リン酸カリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミンなどを添加することが好ましい。
【0044】
反応温度は、−20〜160℃であり、好適には、20〜100℃である。
【0045】
反応時間は、原料および反応試薬などの反応条件により変動するが、数分〜数十時間、好適には、30分〜4時間である。
【0046】
カルバペネム化合物と反応させる1−オレフィン化合物(III)としては、置換もしくは非置換の1−オレフィン、置換もしくは非置換のメチレンシクロアルカン、置換もしくは非置換メチレンシクロアルケン、置換もしくは非置換の窒素原子、酸素原子および/または硫黄原子を含有する3〜8員メチレン非芳香族複素環化合物などが挙げられる。
【0047】
一般に、有機ハライドにオレフィンを反応させて置換ビニル基を導入する方法としては、Heck反応(Richard F. Heckの「第2章:パラジウム触媒による有機ハライドのビニル化」、Organic Reaction、Vol. 27、p.345-389 (1982))が知られている。しかし、この方法では、高い反応温度および長い反応時間などきびしい反応条件が必要とされる。これに対して、本発明においては、緩和な反応条件(反応温度、反応時間など)で効果的にカルバペネム骨格の2位に置換ビニル基を直接導入できる。このとき、カルバペネム骨格の1位の立体配置は保持されている。
【0048】
このようにして得られた2−ビニル置換カルバペネム誘導体は、抗菌活性を有する化合物を得るための中間体として重要である。例えば、後述の実施例6の化合物(26)は、M.Imutaら, Bioorg. Med. Chem. Lett., Vol.3, No.11, p.2199 (1993)に記載の抗菌活性を有する一連の誘導体、例えば、(1S,5R,6S)-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1-メチル-2-[(E)-3-(ピリジニオ-1-イル)-1-プロペン-1-イル]カルバペン-2-エム-3-カルボキシレートなどの重要中間体として極めて有用である。実施例7の化合物(27)は、抗菌活性を有する(1S,5R,6S)-2-[(E)-2-(6,7-ジヒドロ-5H-ピラゾロ[1,2-a][1,2,4]トリアゾリウム-6-イル)エテン-1-イル]-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1-メチルカルバペン-2-エム-3-カルボキシレートなどの合成前駆体として有用である。実施例8の化合物(28)は、抗菌活性を有する(5R,6S)-2-[(E)-4-ホルムイミドイルアミノ-1-ブテン-1-イル]-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]カルバペン-2-エム-3-カルボン酸などの合成前駆体として有用である。これらの合成例を以下に示す。
【0049】
【化12】
【0050】
【実施例】
以下に、本発明を参考例および実施例に基づいて説明する。
【0051】
本発明の2−ビニル置換カルバペネム誘導体(I)の製造方法において、置換ビニル基を導入するために使用される1−オレフィン化合物(III)は通常の方法で合成される。上記の1−オレフィン化合物(III)およびその中間体の合成例を以下の参考例1(スキーム2)、参考例2(スキーム3)および参考例3(スキーム4)に示す。
【0052】
参考例
(参考例1)
【0053】
【化13】
【0054】
N-(p- メトキシベンジルオキシカルボニル )-2- プロペニルアミン (2)
アリルアミン(1)(5g)とトリエチルアミン(14.6ml)の塩化メチレン(200ml)溶液に、窒素雰囲気下、氷冷してS-p-メトキシベンジルオキシカルボニル-4,6-ジメチル-2-メルカプトピリミジン(31.98g)を加えた後、室温で約5時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、水-酢酸エチルを加え、有機層を分離した後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(2)(14.5g、収率:75%)を無色液体として得た。この化合物のIR、1H-NMRおよび元素分析のデータを以下に示す。
【0055】
IR(CHCl3) : 3442, 1714 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 3.70-3.90(m, 5H), 4.62-4.88(br, 1H), 5.05(s, 2H), 5.07-5.25(m, 2H), 5.72-5.96(m, 1H), 6.89(d, 2H, J=8.6Hz), 7.31(d, 2H, J=8.6Hz)
元素分析: C12H15NO3として
計算値(%): C, 65.14; H, 6.83; N, 6.33
実測値(%): C, 64.80; H, 6.87; N, 6.38。
【0056】
(参考例2)
【0057】
【化14】
【0058】
(a) ジ -tert- ブチルヒドラゾジカルボキシレート (9)
tert-ブチルカルバゼート(8)(25g)の2-プロパノール(100ml)溶液に、ジ-tert-ブチルジカルボネート(49.54g)の2-プロパノール(20ml)溶液を室温で滴下し、約2時間攪拌した。反応液を減圧濃縮後、ベンゼン(150ml)に溶解させ、石油エーテル(300ml)を加え、結晶をろ取した。石油エーテルで洗浄し、標題化合物(9)(41.75g、収率:95%)を無色粉末として得た。この化合物のIR、1H-NMRおよび元素分析のデータを以下に示す。
【0059】
IR(CHCl3) : 3420, 1727 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 1.48(s, 18H), 6.05-6.35(br, 2H);
元素分析: C10H20N2O4として
計算値(%): C, 51.71; H, 8.68; N, 12.06
実測値(%): C, 51.62; H, 8.51; N, 12.03。
【0060】
(b) 1,2- ジ (tert- ブトキシカルボニル )-4- メチレンピラゾリジン (10)
参考例2-(a)で得られたジ-tert-ブチルヒドラゾジカルボキシレート(9)(5g)のジメチルホルムアミド(100ml)溶液に、窒素雰囲気下、室温で水素化ナトリウム(ca.60%, 947mg)を加え、約1時間攪拌した。反応液に3-クロロ-2-クロロメチル-1-プロペン(3.74ml)を加えた後、約1時間攪拌した。さらに、水素化ナトリウム(947mg)を加え、30分間攪拌した後、反応液を約90℃に加温し、4時間攪拌した。放冷後、反応液を水-酢酸エチル中に加え、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(10)(5.12g、収率:84%)を無色粉末として得た。この化合物のIR、1H-NMRおよび元素分析のデータを以下に示す。
【0061】
IR(CHCl3) : 1691 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 1.48(s, 18H), 3.84(br-d, 2H, J=15Hz), 4.44(br-d, 2H, J=15Hz), 5.07(quint, 2H, J=2.4Hz);
元素分析: C14H24N2O4として
計算値(%): C, 59.14; H, 8.51; N, 9.85
実測値(%): C, 58.86; H, 8.48; N, 9.95。
【0062】
(c) 1,2- ジ (tert- ブトキシカルボニル )-4- ヒドロキシメチルピラゾリジン (11)
窒素雰囲気下、参考例2-(b)で得られた1,2-ジ(tert-ブトキシカルボニル)-4-メチレンピラゾリジン(10)(10g)のテトラヒドロフラン(100ml)溶液に、氷冷下、9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9-BBN;0.5Mテトラヒドロフラン溶液, 105.5ml)を加えた後、室温で約2時間攪拌した。反応液を、再び氷冷し、2N水酸化ナトリウム水溶液(26.4ml)、30%過酸化水素(16.2ml)を順次加えた後、室温で約1時間攪拌した。反応液を水-酢酸エチルに加え、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(11)(10.07g、収率:95%)を無色油状物として得た。この化合物のIR、1H-NMRおよび元素分析のデータを以下に示す。
【0063】
IR(CHCl3) : 3436, 1686 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 1.48(s, 18H), 1.90-2.07(br, 1H), 2.53-2.70(m, 1H), 2.98-3.15(m, 1H), 3.20-3.38(m, 1H), 3.46-3.65(m, 2H), 3.75-3.91(m, 1H), 3.91-4.05(m, 1H);
元素分析: C14H26N2O5として
計算値(%): C, 55.61; H, 8.67; N, 9.26
実測値(%): C, 55.28; H, 8.68; N, 8.95。
【0064】
(d) 1,2- ジ (tert- ブトキシカルボニル )-4- ホルミルピラゾリジン (12)
窒素雰囲気下、ジメチルスルホキシド(5.07ml)の塩化メチレン(100ml)溶液に、−78℃でオキサリルクロライド(3.12ml)を加え、約30分間攪拌した。次に、参考例2-(c)で得られた1,2-ジ(tert-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシメチルピラゾリジン(11)(9g)の塩化メチレン(50ml)溶液を加え、約1時間攪拌した後、さらにトリエチルアミン(12.4ml)を加え、約1時間攪拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液-酢酸エチル中に加え、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(12)(8.68g、収率:97%)を無色油状物として得た。この化合物のIR、1H-NMRおよび元素分析のデータを以下に示す。
【0065】
IR(CHCl3) : 1724, 1692 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 1.47(s, 18H), 3.17-3.50(m, 2H), 3.55-3.74(m, 1H), 3.86-4.13(m, 1H), 4.22-4.44(m, 1H), 9.69(d, 1H, J=1.6Hz);
元素分析: C14H24N2O5 0.5H2Oとして
計算値(%): C, 54.36; H, 8.15; N, 9.06
実測値(%): C, 54.36; H, 8.08; N, 8.95。
【0066】
(e) 1.2- ジ (tert- ブトキシカルボニル )-4- エテニルピラゾリジン (13)
窒素雰囲気下、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(15.7g)のテトラヒドロフラン(90ml)溶液に、−78℃でn-ブチルリチウム(1.61Mのヘキサン溶液、21.5ml)を加えた後、約2時間攪拌した。反応液に、参考例2-(d)で得られた1,2-ジ(tert-ブトキシカルボニル)-4-ホルミルピラゾリジン(12)(4g)のテトラヒドロフラン(30ml)溶液を加えた後、室温で約3時間攪拌した。反応液を水-酢酸エチルに加え、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(13)(1.92g、収率:48%)を無色粉末として得た。この化合物のIR、1H-NMRおよび元素分析のデータを以下に示す。
【0067】
IR(CHCl3) : 1687 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 1.48(s, 18H), 2.90-3.11(m, 2H), 3.40-3.67(m, 2H), 3.93-4.11(m, 1H), 5.11(d, 1H, J=9.9Hz), 5.16(d, 1H, J=9.9Hz), 5.71(ddd, 1H, J=17.1, 9.9, 7.2Hz);
元素分析: C15H26N2O4として
計算値(%): C, 60.38; H, 8.78; N, 9.39
実測値(%): C, 60.20; H, 8.75; N, 9.32。
【0068】
(参考例3)
【0069】
【化15】
【0070】
(a) 3- ブチニル -N-(p- メトキシベンジルオキシカルボニル ) アミン (15)
E.C. Taylorら, Tetrahedron Lett., 28, p.379 (1978)に記載の方法に従って、ホモプロパルギルアルコール(14)からホモプロパルギルアミンを合成し、次いで参考例1と同様にして標題化合物(15)(収率:88%)を無色粉末として得た。この化合物のIR、1H-NMRおよび元素分析のデータを以下に示す。
【0071】
IR(CHCl3) : 3440, 3298, 1714 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 1.99(t, 1H, J=2.6Hz), 2.40(dt, 2H, J=6.2, 2.6Hz), 3.35(dd, 2H, J=12.8, 6.2Hz), 3.81(s, 3H), 5.04(s, 2H), 4.91-5.19(br, 1H), 6.89(d, 2H, J=8.6Hz), 7.30(d, 2H, J=8.6Hz);元素分析: C13H15NO3として
計算値(%): C, 66.94; H, 6.48; N, 6.00
実測値(%): C, 66.88; H, 6.53; N, 6.04。
【0072】
(b) 3- ブテニル -N-(p- メトキシベンジルオキシカルボニル ) アミン (16)
参考例3-(a)で得られた3-ブチニル-N-(p-メトキシベンジルオキシカルボニル)アミン(15)(2g)の酢酸エチル(30ml)溶液に、10%Lindlar触媒(200mg)を加え、室温下、常圧で接触還元した。反応液をろ過し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(16)(1.89g、収率:94%)を無色液体として得た。この化合物のIR、1H-NMRおよび元素分析のデータを以下に示す。
【0073】
IR(CHCl3) : 3440, 1712 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 2.25(dt, 2H, J=6.9, 6.6Hz), 3.26(dd, 2H, J=12.9, 6.6Hz),3.81(s, 3H), 4.62-4.84(br, 1H), 5.03(s, 2H), 5.00-5.13(m, 2H), 5.65-5.83(m, 1H), 6.89(d, 2H, J=8.7Hz), 7.30(d, 2H, J=8.7Hz);
元素分析: C13H17NO3として
計算値(%): C, 66.36; H, 7.28; N, 5.95
実測値(%): C, 66.17; H, 7.39; N, 5.94。
【0074】
2位に脱離基のトリフルオロメタンスルホン酸基が導入されたカルバペネム化合物の合成例を以下の参考例4に示す。
【0075】
(参考例4)
【0076】
【化16】
【0077】
(a) (3S, 4R)-4-(3- ジアゾ -3-p- メトキシベンジルオキシカルボニル -2- オキソ - プロピル )-3-[(1R)-1- ヒドロキシエチル ]- アゼチジン -2- オン (17a)
Y. Uedaら, Can. J. Chem., 62, p.2936 (1984)に記載の方法に従って、(3S, 4R)-4-アセトキシ-3-[(1R)-1-(tert-ブチルジメチルシリロキシ)エチル]-アゼチジン-2-オンに4-メトキシベンジル 2-ジアゾ-3-オキソ-ブチレートを反応させた後に脱保護して、淡黄色の泡状物として標題化合物のPMBエステル体(17a)を合成した。この化合物のIR、1H-NMRおよびMSのデータを以下に示す。
【0078】
IR(CHCl3) : 3404, 2140, 1754, 1712, 1641 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 1.32(d, 3H, J=6.3Hz), 2.88(dd, 1H, J=7.5, 2.4Hz), 2.91-3.04(br, 1H), 3.15-3.37(m, 2H), 3.82(s, 3H), 3.97(dt, 1H, J=6.9, 2.4Hz),4.10-4.23(m, 1H), 5.21(s, 2H), 6.06-6.19(br, 1H), 6.91(d, 2H, J=8.7Hz), 7.32(d, 2H, J=8.7Hz);
HR-MS: C17H19N3O6Na[M+Na]+として;計算値:384.1171, 実測値:384.1175。
【0079】
(b) (3S, 4R)-3-[(1R)-1- ヒドロキシエチル ]-4-[(1R)-1- メチル -3- ジアゾ -3-p- メトキシベンジルオキシカルボニル -2- オキソ - プロピル ]- アゼチジン -2- オン (17b)
S. Uyeoら, Tetrahedron Lett., 32, p.2143 (1991)に記載の(3S, 4R)-4-[(3R)-1-ブテン-3-イル]-3-[(1R)-1-(tert-ブチルジメチルシリロキシ)エチル]-アゼチジン-2-オンを出発原料として、H. Fliriら, J. Org. Chem., 50, p.3438 (1985)に従って、(3S, 4R)-3-[(1R)-1-(tert-ブチルジメチルシリロキシ)エチル]-4-[(1R)-1-カルボキシエチル]-アゼチジン-2-オンに導いた後、D.H. Shihら, Heterocycles, 21, p.29 (1984)の手法に従って、無色粉末として標題化合物のPMBエステル体(17b)を合成した。この化合物のIR、1H-NMRおよび元素分析のデータを以下に示す。
【0080】
IR(CHCl3) : 3476, 3402, 2142, 1755, 1710, 1638 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 1.21(d, 3H, J=6.6Hz), 1.30(d, 3H, J=6.2Hz), 2.62-2.74(br, 1H), 2.85-2.94(m, 1H), 3.69-3.88(m, 2H), 3.82(s, 3H), 4.03-4.21(m, 1H),5.21(s, 2H), 6.06-6.20(br, 1H), 6.91(d, 2H, J=8.8Hz), 7.32(d, 2H, J=8.8Hz);
元素分析: C18H21N3O6として
計算値(%): C, 57.59; H, 5.64; N, 11.19
実測値(%): C, 57.63; H, 5.70; N, 11.08。
【0081】
(c) (3S, 4R)-4-(3- ジアゾ -3-p- メトキシベンジルオキシカルボニル -2- オキソ - プロピル )-3-[(1R)-1-( トリエチルシリロキシ ) エチル ]- アゼチジン -2- オン (18a)
参考例4-(a)で得られた(3S, 4R)-4-(3-ジアゾ-3-p-メトキシベンジルオキシカルボニル-2-オキソ-プロピル)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-アゼチジン-2-オン(17a)(8.19g)のジメチルホルムアミド(50ml)溶液に、窒素雰囲気下氷冷して、トリエチルクロロシラン(5.7ml)とイミダゾール(3.09g)を加え、30分間撹拌した。反応液を10%リン酸水溶液-酢酸エチル中に加え、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、10%リン酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(18a)(10.12g、収率:94%)を無色油状物として得た。この化合物のIR、1H-NMRおよび元素分析のデータを以下に示す。
【0082】
IR(CHCl3) : 3408, 2138, 1755, 1711, 1646 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 0.59(q, 6H, J=8.0Hz), 0.94(t, 9H, J=8.0Hz), 1.23(d, 3H,J=6.0Hz), 2.85(dd, 1H, J=5.4, 2.4Hz), 2.99(dd, 1H, J=18.0, 10.0Hz), 3.40(dd, 1H, J=18.0, 3.3Hz), 3.82(s, 3H), 4.00(dt, 1H, J=9.6, 2.7Hz), 4.19(quint, 1H, J=6.0Hz), 5.21(s, 2H), 6.02(br-s, 1H), 6.91(d, 2H, J=8.7Hz), 7.31(d, 2H, J=8.7Hz);
元素分析: C23H33N3O6Siとして
計算値(%): C, 58.08; H, 6.99; N, 8.83
実測値(%): C, 58.04; H, 6.99; N, 8.83。
【0083】
(d) (3S, 4R)-4-[(1R)-1- メチル -3- ジアゾ -3-p- メトキシベンジルオキシカルボニル -2- オキソ - プロピル ]-3-[(1R)-1-( トリエチルシリロキシ ) エチル ]- アゼチジン -2- オン (18b)
参考例4-(b)で得られた(3S, 4R)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-[(1R)-1-メチル-3-ジアゾ-3-p-メトキシベンジルオキシカルボニル-2-オキソ-プロピル]-アゼチジン-2-オン(17b)(30g)のジメチルホルムアミド(150ml)溶液に、窒素雰囲気下氷冷して、トリエチルクロロシラン(20.1ml)とイミダゾール(10.88g)を加え、30分間撹拌した。反応液を10%リン酸水溶液-酢酸エチル中に加え、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、10%リン酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、ヘキサン-エーテルより固形化し、標題化合物(18b)(34.89g、収率:89%)を無色粉末として得た。この化合物のIR、1H-NMRおよび元素分析のデータを以下に示す。
【0084】
IR(CHCl3) : 3404, 2138, 1755, 1709, 1645 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 0.59(q, 6H, J=8.0Hz), 0.94(t, 9H, J=8.0Hz), 1.16(d, 3H,J=6.8Hz), 1.21(d, 3H, J=6.2Hz), 2.91-2.99(m, 1H), 3.77-4.02(m, 2H), 3.82(s, 3H), 4.17(dq, 1H, J=6.2, 4.8Hz), 5.20(s, 2H), 5.82-5.94(br, 1H), 6.91(d, 2H, J=8.8Hz), 7.31(d, 2H, J=8.8Hz);
元素分析: C24H35N3O6Siとして
計算値(%): C, 58.87; H, 7.20; N, 8.58
実測値(%): C, 58.94; H, 7.23; N, 8.57。
【0085】
(e) p- メトキシベンジル (5R, 6S)-2- オキソ -6-[(1R)-1-( トリエチルシリロキシ ) エチル ] カルバペナム -3- カルボキシレート (19a)
窒素雰囲気下、参考例4-(c)で得られた(3S, 4R)-4-(3-ジアゾ-3-p-メトキシベンジルオキシカルボニル-2-オキソ-プロピル)-3-[(1R)-1-(トリエチルシリロキシ)エチル]-アゼチジン-2-オン(18a)と酢酸ロジウム(II)ダイマー(0.5mol%)のベンゼン溶液を、約30分間加熱還流した。放冷後、減圧濃縮し、粗製の標題化合物である2-ケト体(19a)を淡黄色油状物として得た。この化合物のIRおよび1H-NMRのデータを以下に示す。
【0086】
(19a)
IR(CHCl3) : 1764 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 0.60(q, 6H, J=7.8Hz), 0.95(t, 9H, J=7.8Hz), 1.30(d, 3H,J=6.3Hz), 2.40(dd, 1H, J=19.0, 7.5Hz), 2.85(dd, 1H, J=19.0, 7.2Hz), 3.11(dd, 1H, J=6.3, 2.0Hz), 3.81(s, 3H), 4.08(dt, 1H, J=7.2, 2.0Hz), 4.28(quint, 1H, J=6.3Hz), 4.67(s, 1H), 5.12 and 5.14(ABq, 2H, J=12.0Hz), 6.89(d,2H, J=8.7Hz), 7.29(d, 2H, J=8.7Hz)。
【0087】
(f) p- メトキシベンジル (1S, 5R, 6S)-1- メチル -2- オキソ -6-[(1R)-1-( トリエチルシリロキシロキシ ) エチル ] カルバペナム -3- カルボキシレート (19b)
参考例4-(e)と同様に、参考例4-(d)で得られた(3S, 4R)-4-[(1R)-1-メチル-3-ジアゾ-3-p-メトキシベンジルオキシカルボニル-2-オキソ-プロピル]-3-[(1R)-1-(トリエチルシリロキシ)エチル]-アゼチジン-2-オン(18b)から、標題化合物(19b)を淡黄色油状物として得た。この化合物のIRおよび1H-NMRのデータを以下に示す。
【0088】
(19b)
IR(CHCl3) : 1763 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 0.60(q, 6H, J=8.0Hz), 0.95(t, 9H, J=8.0Hz), 1.18(d, 3H,J=7.8Hz), 1.29(d, 3H, J=6.2Hz), 2.75(quint, 1H, J=7.8Hz), 3.19(dd, 1H, J=6.2, 2.4Hz), 3.81(s, 3H), 4.19(dd, 1H, J=7.8, 2.4Hz), 4.28(quint, 1H, J=6.2Hz), 4.64(s, 1H), 5.13(s, 2H), 6.89(d, 2H, J=8.8Hz), 7.29(d, 2H, J=8.8Hz)。
【0089】
(g) p- メトキシベンジル (5R, 6S)-6-[(1R)-1-( トリエチルシリロキシ ) エチル ]-2- トリフルオロメタンスルホニルオキシカルバペン -2- エム -3- カルボキシレート (20a)
参考例4-(e)で得られた粗製のp-メトキシベンジル (5R, 6S)-2-オキソ-6-[(1R)-1-(トリエチルシリロキシ)エチル]カルバペナム-3-カルボキシレート(19a)の塩化メチレン溶液に、窒素雰囲気下、−78℃でN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.2当量)、無水トリフルオロメタンスルホン酸(Tf2O:1.1当量)を順次加え、約30分間撹拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液-酢酸エチル中に加え、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧濃縮し、粗製の標題化合物のトリフレート体(20a)を淡黄色油状物として得た。この化合物のIRおよび1H-NMRのデータを以下に示す。
【0090】
(20a)
IR(CHCl3) : 1793, 1726 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 0.59(q, 6H, J=8.0Hz), 0.94(t, 9H, J=8.0Hz), 1.25(d, 3H,J=6.3Hz), 3.03-3.21(m, 2H), 3.27(dd, 1H, J=5.4, 3.0Hz), 3.80(s, 3H), 4.16-4.28(m, 2H), 5.25(s, 2H), 6.87(d, 2H, J=8.7Hz), 7.36(d, 2H, J=8.7Hz)。
【0091】
(h) p- メトキシベンジル (1S, 5R, 6S)-1- メチル -6-[(1R)-1-( トリエチルシリロキシ ) エチル ]-2- トリフルオロメタンスルホニルオキシカルバペン -2- エム -3- カルボキシレート (20b)
参考例4-(g)と同様に、参考例4-(f)で得られたp-メトキシベンジル (1S, 5R, 6S)-1-メチル-2-オキソ-6-[(1R)-1-(トリエチルシリロキシロキシ)エチル]カルバペナム-3-カルボキシレート(19b)から、標題化合物(20b)も淡黄色油状物として得た。この化合物のIRおよび1H-NMRのデータを以下に示す。
【0092】
(20b)
IR(CHCl3) : 1787, 1727 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 0.59(q, 6H, J=8.0Hz), 0.94(t, 9H, J=8.0Hz), 1.24(d, 3H,J=6.4Hz), 1.26(d, 3H, J=7.2Hz), 3.33(dq, 1H, J=11.0, 7.2Hz), 3.35(dd, 1H,J=6.0, 3.4Hz), 3.80(s, 3H), 4.24(quint, 1H, J=6.0Hz), 4.27(dd, 1H, J=11.0, 3.4Hz), 5.21 and 5.29(ABq, 2H, J=11.9Hz), 6.88(d, 2H, J=8.8Hz), 7.37(d, 2H, J=8.8Hz)。
【0093】
実施例
上記のように得られた2位に脱離基を有する化合物(20a)または(20b)と1−オレフィン化合物(2、3、4、5、6、7、13、16)とから、2−ビニル置換カルバペネム誘導体(21、22、23、24、25、26、27、28)を合成した例を以下の実施例1〜8に示す。
【0094】
【化17】
【0095】
(実施例1)
p- メトキシベンジル (1S, 5R, 6S)-2-[(E)-3-(p- メトキシベンジルオキシカルボニル ) アミノ -1- プロペン -1- イル ]-1- メチル -6-[(1R)-1-( トリエチルシリロキシ ) エチル ] カルバペン -2- エム -3- カルボキシレート (21)
窒素雰囲気下、室温で、参考例4-(h)で得られたp-メトキシベンジル (1S, 5R, 6S)-1-メチル-6-[(1R)-1-(トリエチルシリロキシ)エチル]-2-トリフルオロメタンスルホニルオキシカルバペン-2-エム-3-カルボキシレート(20b)(265mg)と参考例1で得られたN-(p-メトキシベンジルオキシカルボニル)-2-プロペニルアミン (2)(2当量)のジメチルホルムアミド溶液に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(5mol%) 、リン酸カリウム(1.2当量)を順次加えた後、約60℃で約1時間加温した。反応液を放冷後、水-酢酸エチル中に加え、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(21)(231mg、収率:78%)を無色粉末として得た。この化合物のIR、1H-NMR、MSおよび元素分析のデータを以下に示す。
【0096】
IR(CHCl3) : 3440, 1766, 1710 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 0.58(q, 6H, J=8.0Hz), 0.94(t, 9H, J=8.0Hz), 1.15(d, 3H,J=7.0Hz), 1.28(d, 3H, J=5.8Hz), 3.17(dd, 1H, J=6.8, 2.6Hz), 3.16-3.40(m,1H), 3.78(s, 3H), 3.80(s, 3H), 3.83-3.99(m, 2H), 4.09(dd, 1H, J=9.2, 2.6Hz), 4.20(quint, 1H, J=6.4Hz), 4.78-4.99(br, 1H), 5.05(s, 2H), 5.20(s, 2H), 5.86-6.10(m, 1H), 6.87(d, 4H, J=9.0Hz), 7.18(d, 1H, J=16.4Hz), 7.30(d, 2H, J=9.0Hz), 7.38(d, 2H, J=9.0Hz);
HR-MS: C36H48N2O8SiNa[M+Na]+として;計算値:687.3074, 実測値:687.3067。
【0097】
元素分析: C36H48N2O8Siとして
計算値(%): C, 65.03; H, 7.28; N, 4.21
実測値(%): C, 64.90; H, 7.24; N, 4.30。
【0098】
(実施例2)
p- メトキシベンジル (1S, 5R, 6S)-2-[(E)-2-( メトキシカルボニル ) エテン -1- イル ]-1- メチル -6-[(1R)-1-( トリエチルシリロキシ ) エチル ] カルバペン -2- エム -3- カルボキシレート (22)
実施例1と同様な方法により、参考例4-(h)で得られたp-メトキシベンジル (1S, 5R, 6S)-1-メチル-6-[(1R)-1-(トリエチルシリロキシ)エチル]-2-トリフルオロメタンスルホニルオキシカルバペン-2-エム-3-カルボキシレート(20b)(210mg)およびメチルアクリレート(3)(2当量)から標題化合物(22)(151mg、収率:81%)を無色油状物として得た。この化合物のIR、1H-NMRおよびMSのデータを以下に示す。IR(CHCl3) : 1773, 1711 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 0.59(q, 6H, J=7.8Hz), 0.94(t, 9H, J=7.8Hz), 1.20(d, 3H,J=7.0Hz), 1.27(d, 3H, J=6.2Hz), 3.25(dd, 1H, J=6.2, 2.8Hz), 3.20-3.42(m,1H), 3.77(s, 3H), 3.80(s, 3H), 4.14-4.31(m, 2H), 5.26(s, 2H), 6.05(d, 1H,J=16.0Hz), 6.89(d, 2H, J=8.6Hz), 7.41(d, 2H, J=8.6Hz), 8.21(d, 1H, J=16.0Hz);
HR-MS: C28H39NO7SiNa[M+Na]+として;計算値:552.2392, 実測値:552.2393。
【0099】
(実施例3)
p- メトキシベンジル (1S, 5R, 6S)-1- メチル -2-[(E)-2-phenylethen-1-yl]-6 -[(1R)-1-( トリエチルシリロキシ ) エチル ] カルバペン -2- エム -3- カルボキシレート (23)
実施例1と同様な方法により、参考例4-(h)で得られたp-メトキシベンジル (1S,5R, 6S)-1-メチル-6-[(1R)-1-(トリエチルシリロキシ)エチル]-2-トリフルオロメタンスルホニルオキシカルバペン-2-エム-3-カルボキシレート(20b)(205mg)およびビニルベンゼン(4)(2当量)から標題化合物(23)(172mg、収率:91%)を無色油状物として得た。この化合物のIR、1H-NMRおよびMSのデータを以下に示す。
【0100】
IR(CHCl3) : 1765, 1704 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 0.61(q, 6H, J=8.0Hz), 0.96(t, 9H, J=8.0Hz), 1.26(d, 3H,J=7.2Hz), 1.31(d, 3H, J=6.2Hz), 3.22(dd, 1H, J=6.8, 2.4Hz), 3.48(quint, 1H, J=8.2Hz), 3.82(s, 3H), 4.15(dd, 1H, J=9.0, 2.4Hz), 4.23(quint, 1H, J=6.4Hz), 5.23 and 5.29(ABq, 2H, J=12.1Hz), 6.77(d, 1H, J=16.6Hz), 6.92(d,2H, J=8.7Hz), 7.24-7.43(m, 5H), 7.44(d, 2H, J=8.7Hz), 7.82(d, 1H, J=16.6Hz);
HR-MS: C32H41NO5SiNa[M+Na]+として;計算値:570.2650, 実測値:570.2654。
【0101】
(実施例4)
p- メトキシベンジル (1S, 5R, 6S)-2-[(E)-3,3- ジエトキシ -1- プロペン -1- イル ]-1- メチル -6-[(1R)-1-( トリエチルシリロキシ ) エチル ] カルバペン -2- エム -3- カルボキシレート (24)
実施例1と同様な方法により、参考例4-(h)で得られたp-メトキシベンジル (1S, 5R, 6S)-1-メチル-6-[(1R)-1-(トリエチルシリロキシ)エチル]-2-トリフルオロメタンスルホニルオキシカルバペン-2-エム-3-カルボキシレート(20b)(247mg)およびアクロレインジエチルアセタール(5)(2当量)から標題化合物(24)(184mg、収率:77%)を無色油状物として得た。この化合物のIR、1H-NMRおよびMSのデータを以下に示す。
【0102】
IR(CHCl3) : 1767, 1709 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 0.59(q, 6H, J=8.0Hz), 0.94(t, 9H, J=8.0Hz), 1.19(d, 3H,J=7.0Hz), 1.21(t, 6H, J=7.2Hz), 1.29(d, 3H, J=6.0Hz), 3.19(dd, 1H, J=6.8,2.6Hz), 3.32(dq, 1H, J=9.0, 7.2Hz), 3.40-3.75(m, 4H), 3.80(s, 3H), 4.11(dd, 1H, J=9.0, 2.6Hz), 4.20(quint, 1H, J=6.4Hz), 4.94(dd, 1H, J=5.6, 1.0Hz), 5.21 and 5.25(ABq, 2H, J=12.0Hz), 5.93(dd, 1H, J=16.2, 5.6Hz), 6.88(d, 2H, J=8.8Hz), 7.33(d, 1H, J=16.2Hz), 7.40(d, 2H, J=8.8Hz);
HR-MS: C31H47NO7SiNa[M+Na]+として;計算値:596.3016, 実測値:596.3014。
【0103】
(実施例5)
p- メトキシベンジル (1S, 5R, 6S)-2-[(E)-3- アセトキシ -1- プロペン -1- イル ]-1- メチル -6-[(1R)-1-( トリエチルシリロキシ ) エチル ] カルバペン -2- エム -3- カルボキシレート (25)
実施例1と同様な方法により、参考例4-(h)で得られたp-メトキシベンジル (1S,5R, 6S)-1-メチル-6-[(1R)-1-(トリエチルシリロキシ)エチル]-2-トリフルオロメタンスルホニルオキシカルバペン-2-エム-3-カルボキシレート(20b)(208mg)およびアリルアセテート(6)(2当量)から標題化合物(25)(108mg、収率:57%)を無色油状物として得た。この化合物のIR、1H-NMRおよびMSのデータを以下に示す。
【0104】
IR(CHCl3) : 1766, 1736, 1713 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 0.59(q, 6H, J=8.0Hz), 0.94(t, 9H, J=8.0Hz), 1.19(d, 3H,J=7.4Hz), 1.28(d, 3H, J=6.0Hz), 2.07(s, 3H), 3.19(dd, 1H, J=6.6, 2.8Hz),3.31(dq, 1H, J=9.0, 7.4Hz), 3.80(s, 3H), 4.11(dd, 1H, J=9.0, 2.8Hz), 4.21(quint, 1H, J=6.2Hz), 4.67(d, 2H, J=6.2Hz), 5.23(s, 2H), 6.03(dt, 1H, J=16.0, 6.2Hz), 6.88(d, 2H, J=8.6Hz), 7.31(d, 1H, J=16.0Hz), 7.39(d, 2H, J=8.6Hz);
HR-MS: C29H41NO7SiNa[M+Na]+;計算値:566.2548, 実測値:566.2555。
【0105】
(実施例6)
p- メトキシベンジル (1S, 5R, 6S)-2-[(E)-3- ヒドロキシ -1- プロペン -1- イ ル ]-1- メチル -6-[(1R)-1-( トリメチルシリロキシ ) エチル ] カルバペン -2- エム -3- カルボキシレート (26)
実施例1と同様な方法により、参考例4-(h)で得られたp-メトキシベンジル (1S,5R, 6S)-1-メチル-6-[(1R)-1-(トリエチルシリロキシ)エチル]-2-トリフルオロメタンスルホニルオキシカルバペン-2-エム-3-カルボキシレート(20b)(210mg)およびアリルアルコール(7)(2当量)から標題化合物(26)(65mg、収率:37%)を無色結晶として得た。この化合物のIR、1H-NMR、MSおよび元素分析のデータを以下に示す。
【0106】
mp: 106-107℃
IR(CHCl3) : 3400, 1762, 1706 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 0.59(q, 6H, J=8.0Hz), 0.94(t, 9H, J=8.0Hz), 1.19(d, 3H,J=7.4Hz), 1.29(d, 3H, J=6.0Hz), 3.18(dd, 1H, J=6.6, 2.7Hz), 3.32(quint, 1H, J=7.4Hz), 3.80(s, 3H), 4.11(dd, 1H, J=9.2, 2.7Hz), 4.21(quint, 1H, J=6.3Hz), 4.29(d, 2H, J=5.5Hz), 5.22(s, 2H), 6.13(dt, 1H, J=16.2, 5.5Hz),6.88(d, 2H, J=8.7Hz), 7.28(d, 1H, J=16.2Hz), 7.40(d, 2H, J=8.7Hz);
元素分析: C27H39NO6Siとして
計算値(%): C, 64.64; H, 7.84; N, 2.79
実測値(%): C, 64.56; H, 7.78; N, 2.85。
【0107】
HR-MS: C27H40NO6Si[M+H]+として;計算値:502.2622, 実測値:502.2615。
【0108】
(実施例7)
p- メトキシベンジル (1S, 5R, 6S)-2-[(E)-2-[N,N- ビス (tert- ブトキシカルボニル ) ピラゾリジン -4- イル ] エテン -1- イル ]-1- メチル -6-[(1R)-1-( トリエチルシリロキシ ) エチル ] カルバペン -2- エム -3- カルボキシレート (27)
実施例1と同様な方法により、参考例4-(h)で得られたp-メトキシベンジル (1S,5R, 6S)-1-メチル-6-[(1R)-1-(トリエチルシリロキシ)エチル]-2-トリフルオロメタンスルホニルオキシカルバペン-2-エム-3-カルボキシレート(20b)(600mg)および参考例2-(e)の1.2-ジ(tert-ブトキシカルボニル)-4-エテニルピラゾリジン(13)(2当量)から標題化合物(27)(577mg、収率:77%)を無色油状物として得た。この化合物のIRおよび1H-NMRのデータを以下に示す。
【0109】
IR(CHCl3) : 1766, 1707 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 0.58(q, 6H, J=8.0Hz), 0.94(t, 9H, J=8.0Hz), 1.16(d, 3H,J=7.5Hz), 1.29(d, 3H, J=6.3Hz), 1.48(s, 18H), 2.94-3.20(m, 2H), 3.17(dd,1H, J=6.6, 2.4Hz), 3.26(dq, 1H, J=9.0, 7.5Hz), 3.41-3.70(m, 2H), 3.80(s,3H), 3.96-4.14(m, 1H), 4.08(dd, 1H, J=9.0, 2.4Hz), 4.19(quint, 1H, J=6.4Hz), 5.21 and 5.23(ABq, 2H, J=12.3Hz), 5.80(dd, 1H, J=15.9, 8.3Hz), 6.89(d, 2H, J=8.7Hz), 7.19(d, 1H, J=15.9Hz), 7.40(d, 2H, J=8.7Hz)。
【0110】
(実施例8)
p- メトキシベンジル (5R, 6S)-2-[(E)-4-(p- メトキシベンジルオキシカルボニル ) アミノ -1- ブテン -1- イル ]-6-[(1R)-1-( トリエチルシリロキシ ) エチル ] カルバペン -2- エム -3- カルボキシレート (28)
実施例1と同様な方法により、参考例4-(g)で得られたp-メトキシベンジル (5R,6S)-6-[(1R)-1-(トリエチルシリロキシ)エチル]-2-トリフルオロメタンスルホニルオキシカルバペン-2-エム-3-カルボキシレート(20a)(800mg)および参考例3-(b)の3-ブテニル-N-(p-メトキシベンジルオキシカルボニル)アミン(16)から標題化合物(28)(735mg、収率:80%)を無色油状物として得た。この化合物のIRおよび1H-NMRのデータを以下に示す。
【0111】
IR(CHCl3) : 3440, 1774, 1711 cm-1;
1H-NMR(CDCl3) d: 0.61(q, 6H, J=8.0Hz), 0.95(t, 9H, J=8.0Hz), 1.28(d, 3H,J=6.0Hz), 2.29-2.46(m, 2H), 2.74-3.16(m, 2H), 3.08(dd, 1H, J=6.9, 3.0Hz),3.18-3.36(m, 2H), 3.79(s, 3H), 3.80(s, 3H), 4.01-4.16(m, 1H), 4.20(quint,1H, J=6.3Hz), 4.64-4.81(br, 1H), 5.02(s, 2H), 5.19 and 5.24(ABq, 2H, J=12.3Hz), 5.79(dt, 1H, J=15.9, 7.0Hz), 6.87(d, 4H, J=8.7Hz), 7.19(d, 1H, J=15.9Hz), 7.29(d, 2H, J=8.7Hz), 7.38(d, 2H, J=8.7Hz)。
【0112】
上記各実施例で使用された1−オレフィン化合物(III)およびそれから得られた2−ビニル置換カルバペネム誘導体(I)ならびにその収率を以下の表1および表2に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
【発明の効果】
このように、本発明によれば、緩和な反応条件で効果的にカルバペネム骨格の2位に置換ビニル基を直接導入でき、しかも1位の立体配置は保持されている。従って、各種カルバペネム誘導体を製造するのに有用な2−ビニル置換カルバペネム誘導体が簡便かつ効果的に製造され得る。
Claims (4)
- 式(I):
式(II):
式(III):
- 前記脱離基Zが−OSO2CF3である、請求項1に記載の方法。
- 前記パラジウム触媒が、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、クロロアリルパラジウム(II)ダイマー、およびパラジウムアセテート(II)からなる群から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
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