JP3760862B2 - ヒートポンプ給湯システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気熱をヒートポンプサイクルの熱源として、冷媒で給湯水の加熱を行う装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のヒートポンプ給湯システムとしては、例えば、特開昭60−221661号公報に記載されているようなものがあった。図11は、前記公報に記載された従来のヒートポンプ給湯システムを示すものである。
【0003】
図11に示すヒートポンプ給湯システムにおいて、1は圧縮機、2は圧縮機1から吐出された冷媒が循環するヒートポンプ回路、3は膨張弁、4は貯水槽、4aは貯水槽4へ水を給水する給水配管、4bは貯水槽4に沸き上げた給湯水を出水する出水配管、5は貯水槽4の給湯水とヒートポンプ回路2の冷媒が熱交換する給湯熱交換器、6は貯水槽4の給湯水が給湯熱交換器5との間で循環する水回路、7は水回路6の給湯水を搬送する水ポンプ、8は大気とヒートポンプ回路2の冷媒が熱交換する大気熱交換器、9は大気熱交換器8と大気の送風手段から成る室外ユニット、10は給湯熱交換器5で加熱される給湯水の上限温度を検知する温度センサー、11は外気温度を検知する温度センサー、12は圧縮機1、水ポンプ7、室外ユニット9等の動作を制御する運転制御手段である。
【0004】
上記構成において、大気熱をヒートポンプサイクルの熱源として、貯水槽4の給湯水を冷媒で加熱するときは、以下のような運転を行う。まず、室外ユニット9の送風手段を駆動して、大気を大気熱交換器8へ搬送する。そして、圧縮機1を駆動させてヒートポンプ回路2の冷媒を、圧縮機1、給湯熱交換器5、膨張弁3、大気熱交換器8、圧縮機1の順に搬送する。圧縮機1から吐出された高温高圧の冷媒は、給湯熱交換器5で給湯水と熱交換して保有するエネルギーを給湯水へ放熱する。その後、膨張弁3で減圧されて低温低圧となった冷媒は、大気熱交換器8で大気熱を吸熱し、圧縮機1に吸入される。給湯熱交換器5で冷媒のエネルギーを受熱して高温に沸き上げられた給湯水は、水回路6より貯水槽4に戻される。また、給湯熱交換器5で加熱する給湯水の温度(加熱温度:T0)は、所定の温度、あるいは、使用者の給湯負荷等に応じて決定される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の構成では、地域に応じて水質は多岐に及ぶため、硬度成分(カルシウム、マグネシウムなど)が溶解している水源から水を給湯水として利用した場合は、給湯水をある温度以上に加熱したときに、水に溶解していた硬度成分がスケール(炭酸カルシウム)として析出し、給湯熱交換器5の伝熱壁面に固着して水回路を閉塞してしまうため、装置の運転が不可能になるという課題を有していた。また、酸性水、または、アルカリ性水を給湯水として利用した場合は、給湯熱交換器5の伝熱面、および、配管材料が腐食され、給湯熱交換器5、および、配管部材が破損するという課題を有していた。
【0006】
本発明は、地域に応じて変化する水質によって、硬度成分が多量に溶解している水、あるいは、酸性水、または、アルカリ性水を給湯水として利用しても、給湯熱交換器で加熱できる上限温度を変更して、給湯熱交換器に硬度成分を析出させない、あるいは、給湯熱交換器を破損させない、耐久性に優れたヒートポンプ給湯システムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、貯水槽を有する水回路と、圧縮機を有するヒートポンプ回路と、ヒートポンプ回路の冷媒と水回路の給湯水が熱交換する給湯熱交換器と、給湯熱交換器で加熱できる給湯水の上限温度を変更する上限温度変更手段を備えたことを特徴とするヒートポンプ給湯システムとしたものである。
【0008】
これによって、地域によって変わる水質に応じて、上限温度変更手段は給湯水から硬度成分が析出しない上限温度、あるいは、熱交換器が腐食されない上限温度を定め、給湯熱交換器で加熱できる給湯水の上限温度を、上限温度変更手段で定めた上限温度とすることによって、給湯熱交換器への硬度成分の固着と腐食を抑制することが出来る。
【0009】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、貯水槽を有する水回路と、貯湯槽に蓄えられた湯水を出水する出水配管と、圧縮機を有するヒートポンプ回路と、ヒートポンプ回路の冷媒と水回路の給湯水が熱交換する給湯熱交換器と、給湯熱交換器で加熱できる給湯水の上限温度を変更する上限温度変更手段を備え、前記給湯熱交換器で加熱された湯水温度は、前記上限温度変更手段により変更された上限温度以下となるように制御されるとともに前記出水配管から出水される湯水温度とは独立して設定されることを特徴とするヒートポンプ給湯システムとすることにより、上限温度変更手段は、利用する水の水質で硬度成分が析出しない上限の温度T2、あるいは、熱交換器が腐食されない上限の温度T3を定め、給湯熱交換器で加熱できる給湯水の上限温度T1と上限温度T2、あるいはT3と比較し、T1>T2、あるいはT1>T3となる場合は、給湯熱交換器で加熱できる上限の温度をT1からT2、あるいはT3へと変更する。従って、硬度成分が溶解している水、酸性水、アルカリ性水を給湯水として加熱する場合でも、給湯熱交換器に硬度成分の固着と腐食を抑制することが出来るので、耐久性に優れたヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、上限温度変更手段は、水質情報手段より得られる給湯水の水質を基に、上限温度を変更する請求項記載のヒートポンプ給湯システムとすることにより、上限温度変更手段は、水質情報手段より得られる給湯水の水質を基に、水の硬度成分が析出しない上限の温度T2、あるいは、熱交換器が腐食されない上限の温度T3を定め、給湯熱交換器で加熱できる給湯水の上限温度T1が、水質情報より定めた上限の温度T2、あるいはT3を超えている場合は、給湯熱交換器で加熱できる上限の温度をT1からT2、あるいはT3へと変更する。従って、硬度成分が溶解している水、酸性水、アルカリ性水を給湯水として加熱する場合でも、給湯熱交換器に硬度成分の固着と腐食を抑制することが出来るので、耐久性に優れたヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、上限温度変更手段は、給湯水の水質を検知する水質検知手段を備え、水質検知手段が検知した水質を基に、上限温度を変更する請求項1または2記載のヒートポンプ給湯システムとすることにより、上限温度変更手段は、給湯熱交換器で加熱できる給湯水の上限温度T1が、水質検知手段によって検知した水質を基に算出される、水の硬度成分が析出しない上限の温度T2、あるいは、熱交換器が腐食されない上限の温度T3を超えている場合は、上限温度T1を、硬度成分が析出しない上限の温度T2、あるいは、熱交換器が腐食されない上限の温度T3に変更する。従って、硬度成分が溶解している水、酸性水、アルカリ性水を給湯水として加熱する場合でも、給湯熱交換器に硬度成分の固着と腐食を抑制することが出来るので、耐久性に優れたヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、水回路に水ポンプを備え、上限温度変更手段は、水ポンプの出力値を検知する出力検知手段と、出力検知手段の検知した出力値を記憶させる記憶手段を備えて、出力検知手段が検知した水ポンプの出力値と、記憶手段に記憶された出力値を基に上限温度を変更する請求項1記載のヒートポンプ給湯システムとすることにより、水の硬度成分が給湯熱交換器に固着した場合は、給湯熱交換器の給湯水側の圧力損失が増加するため、圧力検知手段で硬度成分の付着を検知することができる。このとき、上限温度変更手段は、その上限温度を低い値に変更する。従って、硬度成分が溶解している水を給湯水として加熱する場合でも、給湯熱交換器に硬度成分の固着を抑制することが出来るので、耐久性に優れたヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、上限温度変更手段は、水回路、あるいは、冷媒の圧力を検知する圧力検知手段と、圧力検知手段の検知した圧力値を記憶させる記憶手段を備えて、圧力検知手段が検知した圧力値と、記憶手段に記憶された圧力値を基に上限温度を変更する請求項1記載のヒートポンプ給湯システムとすることにより、水の硬度成分が給湯熱交換器に固着した場合は、給湯熱交換器の伝熱性能が低下し、圧縮機から吐出される冷媒の圧力が上昇するため、圧力検知手段で給湯熱交換器に硬度成分が付着したことを検知することができる。このとき、上限温度変更手段は、その上限温度を低い値に変更する。従って、硬度成分が溶解している水を給湯水として加熱する場合でも、給湯熱交換器に硬度成分の固着を抑制することが出来るので、耐久性に優れたヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、上限温度変更手段は、給湯水の加熱能力を検知する加熱能力検知手段と、加熱能力検知手段が検知した加熱能力を記憶させる記憶手段を備えて、加熱能力検知手段が検知した加熱能力と、記憶手段に記憶させた加熱能力の差を基に上限温度を変更する請求項1記載のヒートポンプ給湯システムとすることにより、水の硬度成分が給湯熱交換器に固着した場合は、給湯熱交換器の伝熱性能が低下し、給湯水の加熱能力が低下するため、加熱能力検知手段で硬度成分が付着したことを検知することができる。このとき、上限温度変更手段は、その上限温度を低い値に変更する。従って、硬度成分が溶解している水を給湯水として加熱する場合でも、給湯熱交換器に硬度成分の固着を抑制することが出来るので、耐久性に優れたヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、貯水槽を有する水回路と、貯湯槽に蓄えられた湯水を出水する出水配管と、圧縮機を有するヒートポンプ回路と、ヒートポンプ回路の冷媒と水回路の給湯水が熱交換する給湯熱交換器と、給湯熱交換器で加熱できる給湯水の上限温度を設定する上限温度設定手段とを備え、上記上限温度設定手段は異なる上限温度が設定された複数の上限温度の内の一つを用いて前記給湯熱交換器で加熱できる給湯水の上限温度を設定し、前記給湯熱交換器で加熱された湯水温度は、前記上限温度以下となるように制御されるとともに出水配管から出水される湯水温度とは独立して設定されるヒートポンプ給湯システムとすることにより、地域によって変わる水質に応じて給湯水から硬度成分が析出しない上限温度、あるいは、熱交換器が腐食されない上限温度を設定することができ、これによって、給湯熱交換器への硬度成分の固着と腐食を抑制することが出来る。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0017】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例におけるヒートポンプ給湯システムの構成図を示すもので、従来例と同一部分には同一の符号を付記して説明を省略し、異なる部分のみ説明すると、13は給湯熱交換器で加熱できる給湯水の上限温度設定手段、14は上限温度変更手段であり、上限温度変更手段14は、上限温度設定手段13で設定した給湯熱交換器5で加熱できる給湯水の上限温度T1を変更できる手段である。ここで、上限温度設定手段13で設定した給湯熱交換器5で加熱できる上限温度T1とは、冷媒の物性、圧縮機1の出力特性、給湯熱交換器5と大気熱交換器8の熱交換器の性能、外気温度、給湯水の給水温度等の関係から求められる最大限加熱可能な温度のことである。従って、本システムにおいて貯水槽4に貯湯される給湯水の温度T0は、T0≦T1の範囲で貯湯されることとなる。また、上限温度変更手段14が行う上限温度の変更とは、上限温度設定手段13で設定した加熱できる給湯水の上限温度T1が、上限温度変更手段14で設定する上限温度T2に対して、T1>T2となるとき、給湯熱交換器5で加熱できる給湯水の上限温度をT1からT2に変更することである。本実施例において、上限温度変更手段14で設定する上限温度T2は、外部より定めることも可能な構成とした。
【0018】
以上のように構成されたヒートポンプ給湯システムについて、以下その動作、作用を説明する。
【0019】
図1の構成において、大気熱をヒートポンプサイクルの熱源として、貯水槽4の給湯水を冷媒で加熱する運転を行うときは、従来と同様の方式で行う。
【0020】
図2は、加熱した水の温度と、水を加熱する際に水に含まれる硬度成分がスケール(炭酸カルシウム)として析出する量の関係を示す図である。加熱する温度と析出する硬度成分の量は比例しており、さらに同一温度でも硬度成分が多い高硬度水の方が硬度成分の析出量が多くなる。ここで、給湯熱交換器5で加熱する給湯水の温度が、利用する水の硬度で硬度成分が析出する領域である場合は、給湯熱交換器5の水回路に硬度成分が固着する可能性があり、さらに、閉塞に至った場合は給湯水の加熱運転が行えなくなる。従って、給湯水を加熱する温度を、硬度成分が析出しない温度まで下げる必要がある。水に溶解している硬度成分が析出する温度は、水の硬度を知ることによって求めることができるから、水質情報手段(水道局の水質データ、あるいは、硬度計による硬度計測、慣例的な水質情報)より得た水の硬度を基に、硬度成分が析出しない上限の温度を推算し、給湯水を加熱する温度をこの温度以下となるようにすれば良い。即ち、水質情報手段の水質データを基に推算した温度を、上限温度変更手段14の上限温度T2として設定し、上限温度変更手段14は上限温度設定手段13で設定した上限温度T1に対して、T1>T2となるとき、給湯熱交換器5で加熱できる給湯水の上限温度をT1からT2へ変更する。従って、給湯熱交換器5で加熱される給湯水の温度は、硬度成分が析出しない温度T2以下となることから、給湯熱交換器5への硬度成分の固着を抑制することができる。
【0021】
図3は、加熱した水の温度と、給湯熱交換器5、および、水回路6の材料が水に溶解した量(腐食量)の関係を示す図である。加熱する温度と腐食量は比例しており、さらに同一温度でも酸性、およびアルカリ性の強い水の方が材料の腐食量が多くなる。ここで、給湯熱交換器5で加熱する給湯水の温度が、利用する水のpHで材料が多量に腐食される領域である場合は、給湯熱交換器5の水回路が酸性水、または、アルカリ性水によって腐食される可能性があり、さらに、腐食が拡大した場合は給湯熱交換器5、あるいは水回路6が破損する。従って、給湯水を加熱する温度を、材料が多量に腐食されない温度まで下げる必要がある。水が材料を多量に腐食する温度は、水のpHを知ることによって求めることができるから、水質情報手段(水道局の水質データ、あるいは、pH計によるpH計測、慣例的なpH情報)より得た水のpHを基に、材料が多量に腐食されない上限の温度を推算し、給湯水を加熱する温度をこの温度以下となるようにすれば良い。即ち、水質情報手段の水質データを基に推算した温度を、上限温度変更手段14の上限温度T3として設定し、上限温度変更手段14は上限温度設定手段13で設定した上限温度T1に対して、T1>T3となるとき、給湯熱交換器5で加熱できる給湯水の上限温度をT1からT3へ変更する。従って、給湯熱交換器5で加熱される給湯水の温度は、材料が多量に腐食されない温度T3以下となるから、給湯熱交換器5、水回路6の破損を抑制することができる。ここで、材料が多量に腐食されるとは、孔食、あるいは界食により熱交換器、配管が破壊に至るときの溶出量のことである。
【0022】
以上のように、本実施例においては、上限温度設定手段13、上限温度変更手段14等を設置し、上限温度設定手段13で設定した加熱できる給湯水の上限温度T1が、上限温度変更手段14で設定した硬度成分が析出しない上限の温度T2、あるいは、材料が多量に腐食されない上限の温度T3に対して、T1>T2、あるいは、T1>T3となるとき、上限温度変更手段は加熱できる給湯水の上限温度をT1からT2、あるいは、T1からT3へ変更することとした。従って、水に溶解している硬度成分の析出と、材料の腐食を抑制することができるから、耐久性に優れたヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0023】
また、図4は、ヒートポンプ給湯システムに使用者がカラン、シャワー等から出湯するときの給湯温度を好みの温度に変更できるリモコン等の操作部31を備えた場合の構成図であり、操作部31は台所、あるいは浴室等に設置するものである。図5は操作部31の構成図を示すものであり、31aは給湯温度を変更する上下スイッチ、31bは出湯温度表示部、31cは残湯量表示部、31dは沸き上げ運転中であることを示す通電表示部、31eは時刻表示部、31fは時刻設定スイッチである。
【0024】
図4の構成において、上限温度変更手段14は操作部31に組み込まれており、上限温度変更手段14で定める上限温度T2、あるいはT3は、図5の操作部31の例えば、上下スイッチ31a、あるいは、時刻設定スイッチ31fなどを操作することで設定、変更することができる。このとき、設定する上限温度T2、あるいは、T3の温度は、出湯温度表示部31bに表示することとした。従って、地域に応じて変わる水質によって、施工者、あるいは使用者が、簡単に上限温度T2、あるいはT3を設定、変更することができる。また、上限温度変更手段14に設定される上限温度は、給湯温度の設定と同じく1℃刻みで設定することもできるが、例えば、5℃刻みで設定する上限温度を変更することができる構成としても良い。尚、操作部31が複数個(例えば、台所と風呂など)接続されている場合は、どちらか一方で上限温度変更手段14に定められる上限温度T2、あるいは、T3を変更することとしても良い。
【0025】
また、上限温度変更手段14で定める上限温度の変更は、リモコンなどの操作部の他に、電装基盤上にディップスイッチ等を設ける手段や、電装基盤の回路操作等によっても行うことができる。
【0026】
更にまた、操作部31に記憶される上限温度T2、あるいはT3を固定値とし、異なる温度の上限温度T2、あるいは、T3を記憶させた操作部31を複数個、例えばスケールが付着しやすい地区A用、更に付着しやすい地区B用…と複数個用意し、そのいずれか一つ、すなわち利用する水の水質に応じて最適な上限温度を記憶させた操作部31を用いて上限温度を設定することとしても、水に溶解している硬度成分の析出と、材料の腐食を抑制することができる。この場合、同図の一点鎖線で示すように上記操作部31が上限温度設定手段となって運転制御手段12にその上限温度信号を送るようになり、上限温度変更手段が不要となるものである。
【0027】
ここで、上限温度変更手段14に設定する上限温度T2、あるいはT3は、図2、図3に示すように水質情報が判れば、おおよそ一元的に硬度成分が析出する温度、材料が多量に腐食される温度を求めることができる。従って、この温度と水質の関係式を上限温度変更手段14に備えると、上限温度変更手段14に利用する水の硬度、pHを入力すれば、上限となる温度T2、T3を決定することができる。また、水の硬度成分が析出する温度は、水の溶存酸素量、シリカ成分量によって若干下がるため、これらが含まれる水を給湯水として利用する場合は、図2で決定される上限値に対して安全率を考慮し、1℃〜10℃を差し引く値を上限温度変更手段14で設定する上限温度T2とした。また、材料が腐食される温度は、水に溶解する陰イオン量によって若干下がるため、これらが含まれる水を給湯水として利用する場合は、図3で決定される上限温度に対して安全率を考慮し、1℃〜10℃を差し引く値を上限温度変更手段14で設定する上限温度T3とした。
【0028】
尚、上限温度変更手段に設定される上限温度は、硬度より設定する上限温度T2とpHより設定される上限温度T3を比較して、低い温度を上限温度として設定するが、特に利用する水が腐食に影響ない場合であれば、上限温度T3を設定する必要はない。また、本実施例において、スケール付着と腐食の双方を考慮した上限温度を設定しているが、どちらか一方とすることも可能であり、信頼性の高いヒートポンプ給湯機とすることができる。
【0029】
尚、水の硬度は水の電導率に比例するため、水の電導率を測定し、この値を基に上限温度変更手段14に設定する上限値T2を決定することもできる。
【0030】
また、装置を他の地域へ移設する場合であっても、上限温度変更手段14に設定する上限温度T2を、移設先の水質情報手段より得た水質より求めた上限温度に変更することによって、水質が変わっても信頼性の高いヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0031】
尚、本実施例において、上限温度変更手段14に設定される上限温度の初期値は、上限温度設定手段13に設定されている上限温度T1と同じ値とした。
【0032】
(実施例2)
図6は、本発明の第2の実施例におけるヒートポンプ給湯システムの構成図を示すもので、実施例1と異なる部分のみ説明すると、15は給湯熱交換器で加熱できる給湯水の上限温度変更手段、16は給湯水の水質を検知する水質検知手段である。本実施例の上限温度変更手段15は、水質検知手段16を備えて、水質検知手段16が検知した給湯水の水質を基に給湯熱交換器5で加熱できる給湯水の上限温度T4を設定し、上限温度設定手段13で設定した加熱できる給湯水の上限温度T1が、上限温度変更手段15で設定する上限温度T4に対して、T1>T4となるとき、給湯熱交換器5で加熱できる給湯水の上限温度をT1からT4に変更する。本実施例において、給湯水の水質を基に設定される給湯水の上限温度T4は、実施例1と同様に、水の硬度、および、pHで、硬度成分が析出しない上限の温度、あるいは、材料が多量に腐食されない温度とした。
【0033】
以上のように構成されたヒートポンプ給湯システムについて、以下その動作、作用を説明する。
【0034】
図6の構成において、大気熱をヒートポンプサイクルの熱源として、貯水槽4の給湯水を冷媒で加熱する運転は、従来と同様の方式で行うことができる。給湯水の水質は、地域、季節等によって日々変動するため、硬度成分が析出する温度、ならびに材料が多量に腐食される温度も変化する。ここで、上限温度設定手段13で設定した給湯熱交換器5で加熱できる給湯水の上限温度T1が、利用する水の硬度で硬度成分が析出する領域、あるいは、材料が多量に腐食される温度である場合は、給湯熱交換器5の水回路が硬度成分の固着により閉塞される可能性があり、さらには、給湯熱交換器5などが腐食により破壊されるおそれがある。従って、給湯熱交換器5で加熱できる給湯水の上限温度T1を、利用する水の硬度で硬度成分が析出しない温度まで下げる必要がある。そこで、水質検知手段16で給湯水の水質を検知し、この水質より硬度成分が析出しない上限の温度、あるいは、材料が多量に腐食されない温度を求め、この温度を上限温度変更手段16に上限値T4として設定し、上限温度設定手段13で設定した上限温度T1が、T1>T4である場合は、上限温度変更手段16は加熱できる給湯水の上限温度をT1からT4へ変更する。従って、給湯熱交換器5で加熱される給湯水の温度は、材料が多量に腐食されない温度T4以下となるから、給湯熱交換器5、水回路6の破損を抑制することができる。
【0035】
以上のように、本実施例においては、上限温度変更手段15、水質検知手段16等を設置し、上限温度設定手段13で設定した加熱できる給湯水の上限温度T1が、水質検知手段16の検知した水質を基に硬度成分が析出しない上限の温度、あるいは、材料が多量に腐食されない上限の温度を求め、この温度T4に対して、T1>T4となるとき、上限温度変更手段は加熱できる給湯水の上限温度をT1からT4へ変更することとした。従って、水に溶解している硬度成分の析出と、材料の腐食を抑制することができるから、耐久性に優れたヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0036】
また、水質検知手段16を上限温度変更手段15に具備したので、水質情報を得る作業が不要となるばかりでなく、また水質が変化した場合でも、加熱できる給湯水の上限温度の設定を精度良く追従させることが可能となる。
【0037】
(実施例3)
図7は、本発明の第3の実施例におけるヒートポンプ給湯システムの構成図を示すもので、実施例1,2と異なる部分のみ説明すると、17は上限温度変更手段、18は水ポンプ7の出力を検知する出力検知手段、19は出力検知手段18の出力値を記憶する記憶手段である。上限温度変更手段17は出力検知手段18と記憶手段19を具備し、出力検知手段18が検知した水ポンプ7の出力値と、記憶手段19が記憶している出力値を比較して、上限温度設定手段13で設定した給湯熱交換器5で加熱できる給湯水の上限温度T1を変更する。本実施例において、記憶手段19に記憶する値は、装置を設置して累積運転時間が間もない時、即ち、給湯熱交換器5に水の硬度成分が固着していない状態での出力検知手段18の検知出力を水ポンプ7の出力値とする。
【0038】
以上のように構成されたヒートポンプ給湯システムについて、以下その動作、作用を説明すると、給湯熱交換器5の伝熱面に硬度成分が固着した場合は、給湯熱交換器5の給湯水が流れる水回路の圧力損失が増加するため、水ポンプ7に必要な出力が増加する。従って、出力検知手段18で水ポンプの出力を検知し、検知した出力値が増加すれば給湯熱交換器5の伝熱面に硬度成分が固着したと判断することができる。検知した出力値が増加したかどうかは、記憶手段19に記憶した給湯熱交換器5に硬度成分が固着していないときの水ポンプ7の出力値と比較することによって判定することができる。上限温度制限手段17はこの出力値の増加に基づいて、上限温度設定手段13で設定した給湯水の上限温度T1を低い値に変更する。従って、給湯熱交換器5への硬度成分が固着する量を低減させることができる。また、上限温度を低い値に変更しても、水ポンプ7の出力値がさらに上昇する場合は、変更した上限温度が硬度成分が析出する温度以上となっているので、上限温度変更手段17で変更した上限温度を、再度さらに低い温度に変更する。
【0039】
以上のように、本実施例においては、上限温度変更手段17、出力検知手段18、記憶手段19などを設置し、出力検知手段18で水ポンプ7の出力を検知し、この検知した出力値が記憶手段19に記憶した出力値と比較して増加している場合は、給湯熱交換器5へ硬度成分が固着していると判断し、上限温度変更手段17で加熱する給湯水の上限温度を変更することとした。従って、給湯熱交換器に硬度成分の固着を抑制することが出来るので、耐久性に優れたヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0040】
本実施例で上限温度変更手段17が変更する上限温度は、上限温度設定手段13で設定した上限温度T1から1〜10℃を差し引く値とし、この値を上限温度に変更しても、水ポンプ7の出力値がさらに上昇する場合は、さらに1〜10℃を差し引く値を上限値として設定する。また、利用する水の硬度が判っているとき、実施例1で示したように利用する水の硬度で硬度成分が析出しない上限となる温度にすることもできる。
【0041】
尚、本実施例の水ポンプ7は、印可電圧(ACまたはDC)を変化させて流量制御を行うため、出力検知手段18は印可電圧を検知して水ポンプ7の出力値とすることができる。また、インバーター回路を利用して水ポンプ7を駆動する場合も同様に、インバーター回路の出力電流値、電圧値などを基に水ポンプ7の出力値を検知することができる。
【0042】
また、水回路6の給湯水の流量を制御する手段は水ポンプ7の出力を可変する他に、水回路に流量制御弁を設けて行うこともできる。この場合は、流量制御弁の開度を基に上限温度変更手段17で設定した上限温度を変更する。給湯熱交換器5の伝熱面に硬度成分が固着した場合は、給湯熱交換器5の給湯水が流れる水回路の圧力損失が増加し、流量制御弁の開度を大きくする必要があるため、この開度が大きくなった場合は給湯熱交換器5の伝熱面に硬度成分が固着したと判断することができる。上限温度変更手段17はこの流量制御弁の開度に基づいて給湯熱交換器5で加熱される給湯水の上限値を、上限温度設定手段13で設定した上限温度T1より低い値に変更する。従って、給湯熱交換器5への硬度成分の固着を抑制することができる。また、上限温度を変更しても、流量制御弁の開度がさらに大きくなる場合は、上限温度として設定した温度が硬度成分が析出する温度以上となっているので、上限温度変更手段16で変更した上限温度をさらに低い温度に変更する。
【0043】
また、実施例1で示した上限値の設定を行い、水の硬度の測定誤差、あるいは硬度の変動によって給湯熱交換器5に硬度成分が固着するような状態となっても、給湯熱交換器5への硬度成分の固着を判定できることから、上限温度変更手段17で変更した上限温度をさらに低い温度に設定することができるので、耐久性に優れるヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0044】
また、本実施例において、出力検知手段18で検知した出力値の記憶手段19への記憶は、以下のように行う。予め事前に、あるいは装置設置後まもなく、給湯熱交換器5に硬度成分が付着しない状態で、一つ、あるいはそれ以上の運転条件(消費電力、外気温度、各センサーが検知する値など)における水ポンプ7の出力を記憶手段19に基準値として記憶させる。装置運転中に出力検知手段18で検知した出力と、予め記憶した基準値とを比較し、水ポンプ7の出力増加の判定を行う。尚、水ポンプ7の出力は、装置の運転状態や加熱熱力によって異なるので、運転条件が予め記憶した運転条件に近いときに出力増加の判定を行うのが好ましいが、水ポンプ7の出力を、装置の運転状態や加熱熱力を考慮して出力の増加判定を行うこととしても良い。
【0045】
(実施例4)
図8は、本発明の第4の実施例におけるヒートポンプ給湯システムの構成図を示すもので、実施例1,2,3と異なる部分のみ説明すると、20は上限温度変更手段、21は給湯熱交換器5の水回路の水圧を検知する圧力検知手段、22は圧力検知手段21の圧力値を記憶する記憶手段である。上限温度変更手段20は圧力検知手段21と記憶手段22を具備し、圧力検知手段21が検知した水回路6の圧力値と、記憶手段22が記憶した圧力値を比較して、上限温度設定手段13で設定した給湯熱交換器5で加熱できる給湯水の上限温度T1を変更する。本実施例において、記憶手段22に記憶する値は、装置を設置して累積運転時間が間もない時、即ち、給湯熱交換器5に水の硬度成分が固着していない状態での圧力検知手段21が検知した圧力とする。
【0046】
以上のように構成されたヒートポンプ給湯システムについて、以下その動作、作用を説明すると、給湯熱交換器5の伝熱面に硬度成分が固着した場合は、給湯熱交換器5の給湯水が流れる水回路の圧力損失が増加し、水ポンプ7の供給水圧が上昇するため、給湯熱交換器5の水回路入口圧力が増加する。従って、圧力検知手段21で水回路の圧力を検知し、検知した圧力値が増加すれば給湯熱交換器5の伝熱面に硬度成分が固着したと判断することができる。検知した圧力値が増加したかどうかは、記憶手段に記憶した給湯熱交換器5に硬度成分が固着していないときの水回路の圧力値と比較することによって判定することができる。上限温度制限手段20はこの圧力値の増加に基づいて、上限温度設定手段13で設定した給湯水の上限温度T1を低い値に変更する。従って、給湯熱交換器5への硬度成分が固着する量を低減させることができる。また、上限温度を低い値に変更しても、水ポンプ7の供給水圧がさらに上昇して、給湯熱交換器5の入口側の水回路の圧力値がさらに上昇する場合は、変更した上限温度が硬度成分が析出する温度以上となっているので、上限温度変更手段20で変更した上限温度を、再度さらに低い温度に変更する。
【0047】
また、図9は、圧力検知手段24を給湯熱交換器5の前後の冷媒の圧力を検知できるように設置したときの模式図である。給湯熱交換器5に硬度成分が固着した場合は、給湯熱交換器5の伝熱性能が低下するため、圧縮機1から吐出される冷媒の圧力が上昇する。従って、冷媒の吐出圧力を検知し、検知した圧力値が増加すれば給湯熱交換器5の伝熱面に硬度成分が固着したと判断することができる。上限温度変更手段23はこの圧力上昇値に基づいて、給湯熱交換器5で加熱できる給湯水の上限温度を変更する。このとき、記憶手段25には、装置を設置して累積運転時間が間もない時、即ち、給湯熱交換器5に水の硬度成分が固着していない状態での圧力検知手段25が検知した冷媒圧力が記憶されており、上限温度変更手段23は検知した圧力値と記憶した圧力値を比較して、硬度成分が付着したか否かの判断を行う。上限温度制限手段23は冷媒の圧力値の増加に基づいて、上限温度設定手段13で設定した給湯水の上限温度T1を低い値に変更する。従って、給湯熱交換器5への硬度成分が固着する量を低減させることができる。また、上限温度を低い値に変更しても、冷媒の圧力がさらに上昇する場合は、変更した上限温度が硬度成分が析出する温度以上となっているので、上限温度変更手段23で変更した上限温度を、再度さらに低い温度に変更する。
【0048】
以上のように、本実施例においては、上限温度変更手段20、23、圧力検知手段21、24、記憶手段22、25などを設置し、圧力検知手段21、24で給湯熱交換器5の入口側の水回路の圧力、あるいは冷媒の圧力を検知し、この検知した圧力値が記憶手段22、25に記憶した圧力値と比較して増加している場合は、給湯熱交換器5へ硬度成分が固着していると判断し、上限温度変更手段20、あるいは、23で加熱する給湯水の上限温度を変更することとした。従って、給湯熱交換器に硬度成分の固着を抑制することが出来るので、耐久性に優れたヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0049】
本実施例で上限温度変更手段20、23が変更する上限温度は、先の実施例と同様上限温度設定手段13で設定した上限温度T1から1〜10℃を差し引く値とし、この値を上限温度に変更しても、水回路の圧力、あるいは冷媒の圧力がさらに上昇する場合は、さらに1〜10℃を差し引く値を上限値として設定する。また、利用する水の硬度が判っているとき、実施例1で示したように利用する水の硬度で硬度成分が析出しない上限となる温度とすることもできる。
【0050】
尚、本実施例においては、水ポンプ7の供給水圧の上昇を検知して硬度成分の付着を検知したが、硬度成分が給湯熱交換器5に付着した場合、給湯熱交換器5の差圧が大きくなるため、圧力検知手段21は給湯熱交換器5の水回路の差圧を検知する手段としても同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、給湯熱交換器5に硬度成分が固着した場合は、給湯熱交換器5の伝熱性能が低下とともに、給湯水の加熱能力が低下する。加熱能力が低下する場合は、室外ユニット9より吸熱する熱量が減るため、圧縮機1の吸入圧力が下がる。従って、圧力検知手段24を冷媒の低圧側に備えて、この検知した圧力が低下した場合は、給湯熱交換器5へ硬度成分が固着していると判断し、上限温度変更手段23で加熱する給湯水の上限温度を低い温度へ変更することもできる。従って、給湯熱交換器に硬度成分の固着を抑制することが出来るので、耐久性に優れたヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0052】
また、給湯熱交換器5に硬度成分が固着した場合は、冷媒の吐出圧力の上昇とともに、冷媒の吐出温度も上昇する。また、冷媒の吐出圧力、吐出温度が上昇すると、給湯熱交換器5を流出する冷媒の温度も上昇する。従って、圧力検知手段24の代わりに冷媒の温度を検知する温度センサーを備えて、この検知した温度が上昇した場合は、給湯熱交換器5へ硬度成分が固着していると判断し、上限温度変更手段23で加熱する給湯水の上限温度を変更することもできる。従って、給湯熱交換器に硬度成分の固着を抑制することが出来るので、耐久性に優れたヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0053】
なお、本実施例において、圧力検知手段21、24で検知した圧力値の記憶手段22、25への記憶は、以下のように行う。予め事前に、あるいは装置設置後まもなく、給湯熱交換器5に硬度成分が付着しない状態で、一つ、あるいはそれ以上の運転条件(外気温度、各センサーが検知する値など)における水回路の圧力、あるいは冷媒の圧力を記憶手段22、25に基準値として記憶させる。装置の設置後、運転条件が予め記憶した運転条件に近いとき、装置運転中に圧力検知手段21、24で検知した圧力と、予め記憶した基準値とを比較し、圧力増加の判定を行う。尚、水ポンプ7の給水圧力、あるいは冷媒の圧力は、装置の運転状態や加熱熱力によって異なるので、運転条件が予め記憶した運転条件に近いときに出力増加の判定を行うのが好ましいが、水ポンプ7の給水圧力、あるいは冷媒の圧力を、装置の運転状態や加熱熱力を考慮して出力の増加判定を行うこととしても良い。
【0054】
(実施例5)
図10は、本発明の第5の実施例におけるヒートポンプ給湯システムの構成図を示すもので、先の各実施例と異なる部分のみ説明すると、26は上限温度変更手段、27は水回路の流量を検知する流量検知手段、28は給湯熱交換器5の水回路上流側の給湯水の温度を検知する温度センサー、29は加熱能力検知手段で、温度センサー10、28、流量検知手段27を具備しており、これらの検知した温度、流量情報より加熱能力を算出する。30は加熱能力検知手段29の加熱能力を記憶する記憶手段である。上限温度変更手段26は加熱能力検知手段29と記憶手段30を具備し、加熱能力検知手段29が検知した加熱能力と、記憶手段29が記憶した加熱能力を比較して、上限温度設定手段13で設定した給湯熱交換器5で加熱できる給湯水の上限温度T1を変更する手段である。本実施例において、記憶手段30に記憶する値は、装置を設置して累積運転時間が間もない時、即ち、給湯熱交換器5に水の硬度成分が固着していない状態での加熱能力検知手段29が検知した加熱能力とする。
【0055】
以上のように構成されたヒートポンプ給湯システムについて、以下その動作、作用を説明すると、給湯熱交換器5の伝熱面に硬度成分が固着した場合は、給湯熱交換器5の伝熱性能が低下するため、給湯水の加熱能力が低下する。従って、加熱能力検知手段29で給湯水の加熱能力を検知し、検知した加熱能力が減少すれば給湯熱交換器5の伝熱面に硬度成分が固着したと判断することができる。検知した加熱能力が現象したかどうかは、記憶手段に記憶した給湯熱交換器5に硬度成分が固着していないときの加熱能力と比較することによって判定することができる。上限温度制限手段26はこの加熱能力の減少に基づいて、上限温度設定手段で設定した給湯水の上限温度T1を低い値に変更する。従って、給湯熱交換器5への硬度成分が固着する量を低減させることができる。また、上限温度を低い値に変更しても、給湯熱交換器5における加熱能力がさらに減少する場合は、変更した上限温度が硬度成分が析出する温度以上となっているので、上限温度変更手段26で変更した上限温度を、再度さらに低い温度に変更する。
【0056】
以上のように、本実施例においては、上限温度変更手段26、加熱能力検知手段29、記憶手段30などを設置し、加熱能力検知手段29で給湯水の加熱能力を検知し、この検知した加熱能力が記憶手段30に記憶した加熱能力と比較して減少している場合は、給湯熱交換器5へ硬度成分が固着していると判断し、上限温度変更手段26で加熱する給湯水の上限温度を変更することとした。従って、給湯熱交換器に硬度成分の固着を抑制することが出来るので、耐久性に優れたヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0057】
なお本実施例においても上限温度変更手段26が変更する上限温度は、上限温度設定手段13で設定した上限温度T1から1〜10℃を差し引く値とし、この値を上限温度に変更しても、加熱能力がさらに上昇する場合は、さらに1〜10℃を差し引く値を上限値として設定する。また、利用する水の硬度が判っているとき、実施例1で示したように利用する水の硬度で硬度成分が析出しない上限となる温度することもできる。
【0058】
また、実施例1で示した上限値の設定を行い、水の硬度の測定誤差、あるいは硬度の変動によって給湯熱交換器5に硬度成分が固着するような状態となっても、給湯熱交換器5への硬度成分の固着を判定できることから、上限温度変更手段26で変更した上限温度をさらに低い温度に設定することができるので、耐久性に優れるヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0059】
また、加熱能力検知手段29で検知した加熱能力の記憶手段30への記憶も先の実施例と同様以下のように行う。予め事前に、あるいは装置設置後まもなく、給湯熱交換器5に硬度成分が付着しない状態で、一つ、あるいはそれ以上の運転条件(消費電力、外気温度、加熱能力検知手段29の各センサーが検知する値など)における加熱能力を記憶手段30に基準値として記憶させる。装置の設置後、運転条件が予め記憶した運転条件に近いとき、装置運転中に加熱能力検知手段29で検知した加熱能力と、予め記憶した基準値とを比較し、加熱能力の減少の判定を行う。尚、加熱能力は、装置の運転状態や外気温度によって異なるので、運転条件が予め記憶した運転条件に近いときに加熱能力の減少の判定を行うのが好ましいが、加熱能力を、装置の運転状態や外気温度を考慮して能力の減少判定を行うこととしても良い。
【0060】
尚、本実施例の加熱能力検知手段29の温度センサー28は、水回路6に設置したが、給水配管4aに貯水槽4に給水される水の温度を検知する温度センサーが備えられている場合は、この温度センサーを加熱能力を推算するために利用することもできる。この場合、温度センサー19を廃することができる。
【0061】
さらに、本実施例において、圧縮機1、あるいは装置が消費する電力を検知する消費電力検知手段を備えて、加熱能力検知手段29で検知した加熱能力を消費電力で除した値、即ち、成績係数(COP)を算出し、同一の消費電力で加熱能力が、低下したか否かの判断を、行うことができる。予め事前に、あるいは装置設置後まもなく、給湯熱交換器5に硬度成分が付着しない状態で、一つ、あるいはそれ以上の運転条件(消費電力、外気温度、加熱能力検知手段29の各センサーが検知する値など)における成績係数を記憶手段30に基準値として記憶させる。装置の設置後、運転条件が予め記憶した運転条件に近いとき、装置運転中に加熱能力検知手段29で検知した加熱能力から求まる成績係数と、予め記憶した基準値とを比較すると、加熱能力の低下判定を行うことができる。
【0062】
尚、本実施例においては、圧縮機1が加熱能力制御ができるインバーター回路を備えていて、給湯熱交換器5に硬度成分が付着して加熱能力が低下するとき、インバーター制御によって圧縮機1の出力を増加させて、加熱能力の低下を補う。従って、圧縮機1を制御するインバーター回路の情報を基に、給湯熱交換器5に硬度成分が付着したかどうかの判定もできるので、インバーター回路の情報を基に、上限温度変更手段で給湯水を加熱できる上限温度を変更することができる。従って、耐久性に優れるヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【0063】
尚、本各実施例においては上限温度設定手段で上限温度を設定するもので説明したが、上限温度が予め固定値として設定されているような場合は必要でなく、この予め設定されている上限温度を上限温度変更手段が変更するものであっても良い。また、使用する冷媒としては、自然冷媒、HFC冷媒等種々の物が利用できる。
【0064】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、給湯熱交換器で加熱できる給湯水の上限温度T1を、T2、あるいはT3に変更或いは設定可能としたので、硬度成分が溶解している水、酸性水、アルカリ性水を給湯水として加熱する場合でも、給湯熱交換器に硬度成分の固着と腐食を抑制することが出来るので、耐久性に優れたヒートポンプ給湯システムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1におけるヒートポンプ給湯システムの構成図
【図2】 同実施例における給湯水温度と硬度成分の析出量の関係を示す図
【図3】 同実施例における給湯水温度と材料の腐食量の関係を示す図
【図4】 同実施例におけるヒートポンプ給湯システムの構成図
【図5】 同実施例における操作部の構成図
【図6】 本発明の実施例2におけるヒートポンプ給湯システムの構成図
【図7】 本発明の実施例3におけるヒートポンプ給湯システムの構成図
【図8】 本発明の実施例4におけるヒートポンプ給湯システムの構成図
【図9】 同実施例におけるヒートポンプ給湯システムの構成図
【図10】 本発明の実施例5におけるヒートポンプ給湯システムの構成図
【図11】 従来のヒートポンプ給湯システムの構成図
【符号の説明】
1 圧縮機
2 ヒートポンプ回路
4 貯水槽
5 給湯熱交換器
6 水回路
7 水ポンプ
13 上限温度設定手段
14、15、17、20、23、26 上限温度変更手段
18 出力検知手段
16 水質検知手段
19、22、25、30 記憶手段
21、24 圧力検知手段
29 加熱能力検知手段
31 操作部
Claims (7)
- 貯水槽を有する水回路と、前記貯湯槽に蓄えられた湯水を出水する出水配管と、圧縮機を有するヒートポンプ回路と、前記ヒートポンプ回路を循環する冷媒と前記水回路を流れる給湯水が熱交換する給湯熱交換器と、前記給湯熱交換器で加熱できる給湯水の上限温度を変更する上限温度変更手段とを備え、前記給湯熱交換器で加熱された湯水温度は、前記上限温度変更手段により変更された上限温度以下となるように制御されるとともに前記出水配管から出水される湯水温度とは独立して設定されることを特徴とするヒートポンプ給湯システム。
- 上限温度変更手段は、水質情報手段より得られる給湯水の水質を基に上限温度を変更することを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ給湯システム。
- 上限温度変更手段は、給湯水の水質を検知する水質検知手段を備え、前記水質検知手段が検知した水質を基に上限温度を変更することを特徴とする請求項1または2記載のヒートポンプ給湯システム。
- 水回路に水ポンプを備え、上限温度変更手段は、前記水ポンプの出力値を検知する出力検知手段と、前記出力検知手段の検知した出力値を記憶させる記憶手段を備えて、前記出力検知手段が検知した水ポンプの出力値と記憶手段に記憶された出力値を基に上限温度を変更することを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ給湯システム。
- 上限温度変更手段は、水回路、あるいは、冷媒の圧力を検知する圧力検知手段と、前記圧力検知手段の検知した圧力値を記憶させる記憶手段を備えて、圧力検知手段が検知した圧力値と記憶手段に記憶された圧力値を基に上限温度を変更することを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ給湯システム。
- 上限温度変更手段は、給湯水の加熱能力を検知する加熱能力検知手段と、前記加熱能力検知手段が検知した加熱能力を記憶させる記憶手段を備えて、前記加熱能力検知手段が検知した加熱能力と前記記憶手段に記憶させた加熱能力の差を基に上限温度を変更することを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ給湯システム。
- 貯水槽を有する水回路と、前記貯湯槽に蓄えられた湯水を出水する出水配管と、圧縮機を有するヒートポンプ回路と、前記ヒートポンプ回路を循環する冷媒と前記水回路を流れる給湯水が熱交換する給湯熱交換器と、前記給湯熱交換器で加熱できる給湯水の上限温度を設定する上限温度設定手段とを備え、前記上限温度設定手段は異なる上限温度が設定された複数の上限温度の内の一つを用いて前記給湯熱交換器で加熱できる給湯水の上限温度を設定し、前記給湯熱交換器で加熱された湯水温度は、前記上限温度以下となるように制御されるとともに前記出水配管から出水される湯水温度とは独立して設定されるヒートポンプ給湯システム。
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