JP3760618B2 - 直接基礎構造物およびその構築方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、直接基礎による構造物に関し、特に不同沈下を低減化させることができる直接基礎構造物およびその構築方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、基礎フーチングや基礎スラブ等の基礎版によって、建物等の構造物の荷重を直接地盤に伝える直接基礎形式の構造物を構築するに際しては、構造物の自重や支持地盤の硬さに起因して、一定量の地盤沈下の発生が避けられない。そして、このような場合に、最大沈下量および不同沈下量が問題となる。
例えば、図8に示すように、地盤1を基礎底面となる深さまで掘削して、基礎版2を構築した後に、この基礎版2上に建物(構造物)3を建設すると、主として建物3の自重によって基礎版2全体が沈下するとともに、さらにその重量の偏りに起因して、基礎版2の中央部に最も沈下量が大きくなる。この結果、中央部において最大沈下量δ1 が発生し、中央部と両側部との間に不同沈下量δ2 が発生する。
【0003】
また、必ずしも建物の自重およびその偏りのみならず、図10に例示すように、地盤1の一部を上記基礎版2の基礎底面よりもさらに掘削して、極めて固い地層5上に構築した基礎版6によって支持される地下室7を設けた建物8を建設する場合には、地盤1、5の固さの相違に起因して、それぞれ図示するような最大沈下量δ1 および不同沈下量δ2 が発生する。
そして、上記最大沈下量δ1 および不同沈下量δ2 の両者が許容値を上回る場合には、建物3、8としての安全性が確保できなくなるために、図9に示すように、沈下の虞の無い極めて固い地層5まで杭9を打込んで杭基礎形式にすることにより建物3の荷重を支持させたり、あるいは図11に示すように、沈下量が大きくなる地層の地盤改良1aを行なったうえで上述した直接基礎とする方法が採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
また、最大沈下量δ1 は許容値以下であっても、不同沈下量δ2 が許容値を上回る場合には、建物3、8や基礎版2等の構造部材に悪影響を及ぼし、よって安全性を低下させるために、同様の杭基礎形式や、地盤改良が採用されている。
ところが、これらの方法は、安全性は高いものの、不同沈下量δ2 を低減化させることのみを目的とするには、いずれも建築に要するコストが高くなり過ぎて経済性に劣るという問題点がある。
【0005】
本発明は、このような従来の直接基礎構造物が有する課題を有効に解決すべくなされたもので、最大沈下量は許容値以下であるが、不同沈下量が許容値を上回るような直接基礎形式の構造物に対して、低いコストで当該不同沈下量を低減させることができ、よって経済性に優れるとともに、確実に構造物の安全性を確保することが可能となる直接基礎構造物およびその構築方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明に係る直接基礎構造物は、構造物の荷重が基礎版を介して直接地盤に伝えられる直接基礎構造物において、沈下量が相対的に小さい位置の基礎版と地盤との間に、ヤング率が当該位置における地盤のヤング率よりも小さな沈下増幅材を介装したことを特徴とするものである。ここで、請求項2に記載の発明は、上記基礎版が、基礎フーチングまたは基礎スラブであり、かつ上記沈下増幅材が、ヤング率が明らかなシート材、板材またはブロック材から選択されたものであることを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項3に記載の本発明に係る直接基礎構造物の構築方法は、構造物の荷重が基礎版を介して直接地盤に伝えられる直接基礎構造物を構築する方法であって、予め構造物の沈下計算を行ない、地盤を基礎底面となる深さまで掘削した後に、上記沈下計算の結果沈下量が小さい位置の地盤上に、ヤング率が当該位置における地盤のヤング率よりも小さな沈下増幅材を敷設し、次いで基礎版の配筋を行なって、コンクリートを打設することにより上記基礎版を構築し、この基礎版上に順次構造物を構築してゆくことを特徴とするものである。
【0008】
この際に、請求項4に記載の発明は、上記基礎版として、基礎フーチングまたは基礎スラブを構築し、かつ上記沈下増幅材として、ヤング率が明らかなシート材、板材またはブロック材から選択されたものを敷設することを特徴とするものである。
【0009】
請求項1または2に記載の直接基礎構造物および請求項3または4に記載の直接基礎構造物の構築方法によれば、沈下量が相対的に小さい位置の基礎版と地盤との間に、ヤング率が当該位置における地盤のヤング率よりも小さな沈下増幅材を介装しているので、構造物の重量によって上記沈下増幅材が圧縮され、この結果当該位置における沈下量が上記沈下増幅材を介装しない場合と比較して大きくなるために、相対的に構造物や基礎版の不同沈下量が低減化する。
この際に、特に請求項2または4に記載の発明のように、上記沈下増幅材として、ヤング率が明らかなシート材、板材またはブロック材から選択されたものを用いれば、当該沈下増幅材の力学特性が明らかであるために、予め沈下計算を行なって上記沈下増幅材の寸法を決定しておくことにより、確実に所望の沈下量増加を得ることができ、一層不同沈下量を低減化させることが可能になる。
【0010】
このような沈下増幅材としては、例えば発泡スチロールやスタイロホームなどのシート材、板材またはブロック材が好適であり、取扱が容易であるとともに施工性に優れていることから、工期の短縮も可能になる。また、上記基礎版としては、べた基礎および独立フーチング基礎、複合フーチング基礎あるいは連続フーチング基礎等における基礎フーチングのいずれにも適用可能である。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る直接基礎構造物を、最大沈下量は許容値以下であるが不同沈下量が許容値を上回る、直接基礎形式の建物10に適用した一実施形態を示すもので、図中符号11がこの建物10の荷重を直接地盤12に伝える基礎版である。
この基礎版11は、べた基礎または独立フーチング基礎、複合フーチング基礎もしくは連続フーチング基礎等の基礎フーチングであり、その周囲の沈下量が相対的に小さい位置の直下には、比較的厚肉の沈下増幅材13aが介装されている。そして、この沈下増幅材13aの内方には、当該沈下増幅材13aよりも薄肉の沈下増幅材13bが介装されている。
【0012】
これら沈下増幅材13a、13bは、発泡スチロールやスタイロホームなどのヤング率が当該位置における地盤12のヤング率よりも小さく、かつそのヤング率が明らかなシート材、板材またはブロック材であり、基礎版11上に建物10を建設した際に、当該位置の沈下量を増加させて中央部との間の不同沈下量を小さくするに充分な厚さ寸法に設定されている。
【0013】
次に、図2〜図6に基づいて、上記構成からなる直接基礎建物を建設するための、本発明に係る直接基礎構造物の構築方法の一実施形態について説明する。
上記建物10を建設するに先立って、予め建物10の総重量およびその分布、並びに地盤12の固さ等のデータに基づいて、建物10を建設した際における沈下計算を行ない、その結果と沈下増幅材のヤング率とに基づいて、沈下増幅材の幅寸法や厚さ寸法を決定しておく。そして、図2に示すように、地盤12を基礎底面となる深さまで掘削し、次いで図3に示すように、上記沈下計算に基づいて、沈下量を増加させる必要のある基礎版11の周辺部およびその内側の直下に、それぞれ上述した沈下増幅材13a、13bを敷設する。この際に、敷設する沈下増幅材13a、13bの上面または下面に捨てコンクリートを打設してもよい。
【0014】
このようにして、沈下増幅材13a、13bを敷設した後に、図4に示すように、基礎版11の配筋14を行なう。次いで、図5に示すように、コンクリートを打設して基礎版11を構築し、さらにこの基礎版11上に、図6に示すように順次建物10を建設してゆく。
すると、建物10の重量によって、沈下増幅材13a、13bが圧縮され、当該部分における沈下量が増加することにより、図1に実線で示すように、建物10および基礎版11全体としての不同沈下量δ2 が、図中点線で示す従来の場合と比較して効果的に減少する。
【0015】
以上のように、上記直接基礎建物およびその構築方法によれば、沈下量が相対的に小さい位置の基礎版11と地盤12との間に、ヤング率が当該位置における地盤のヤング率よりも小さく、かつそのヤング率が明らかな沈下増幅材13a、13bを介装しているので、建物10の重量によって沈下増幅材13a、13bが圧縮され、この結果当該位置における沈下量が中央部と比較して相対的に増加するために、建物10および基礎版11の不同沈下量δ2 が低減化する。
【0016】
ここで、特に沈下増幅材13a、13bとして、ヤング率が明らかな発泡スチロールやスタイロホームなどのシート材、板材またはブロック材を用いているので、沈下増幅材13a、13bの力学特性が明らかであるために、沈下計算に基づいて当該沈下増幅材13a、13bの厚さ寸法等を決定しておくことにより、確実に所望の沈下量増加を得ることができ、よって上記不同沈下量δ2 を効果的に低減化させることができる。
【0017】
さらに、沈下増幅材として用いた発泡スチロールやスタイロホームなどのシート材や板材等は、取扱が容易であるとともに施工性に優れているため、工期の短縮も図ることができる。
このように、上記直接基礎建物およびその構築方法によれば、最大沈下量は許容値以下であるが、不同沈下量が許容値を上回るような直接基礎形式の建物10に対して、低いコストで当該不同沈下量δ2 を低減させることができ、よって経済性に優れるとともに、確実に構造物の安全性を確保することができる。
【0018】
なお、本発明は、上記実施形態に示した建物10のみならず、各種の最大沈下量は許容値以下で、かつ不同沈下量が許容値を上回るような構造物に適用可能である。
例えば、図7は、従来例として図9に示したような地下室を有する直接基礎形式の建物に適用し他の実施形態を示すものである。この直接基礎による建物15は、地盤16の一部を基礎版17の基礎底面よりもさらに掘削して、極めて固い地層18上に基礎版19を構築し、この基礎版19によって地下室20を支持した構造のものである。そして、この建物15においては、固い地層18上に支持された基礎版19における沈下量が小さいために、上記基礎版19の直下に、図1に示したものと同様の沈下増幅材21を介装して当該部分の沈下量を増加させることにより、図中点線で示す従来のものと比較して、建物15全体としての不同沈下量δ2 を効果的に低減させることができる。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1または2に記載の直接基礎構造物および請求項3または4に記載の直接基礎構造物の構築方法によれば、沈下量が相対的に小さい位置の基礎版と地盤との間に、ヤング率が当該位置における地盤のヤング率よりも小さな沈下増幅材を介装し、構造物の重量によって上記沈下増幅材を圧縮することにより、当該位置における沈下量を大きくすることができるため、最大沈下量は許容値以下であるが、不同沈下量が許容値を上回るような直接基礎形式の構造物に対して、低いコストで当該不同沈下量を低減させることができ、よって経済性に優れるとともに、確実に構造物の安全性を確保することができる。
【0020】
特に、請求項2または4に記載の発明のように、上記沈下増幅材として、ヤング率が明らかなシート材、板材またはブロック材から選択されたものを用いれば、当該沈下増幅材の力学特性が明らかであるために、予め沈下計算を行なっておくことにより、確実に所望の沈下量増加を得ることができ、一層不同沈下量を低減化させることができるといった効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る直接基礎構造物の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の直接基礎構造物の構築方法において地盤を掘削した状態を示す縦断面図である。
【図3】図2の基礎底面に沈下増幅材を敷設した状態を示す縦断面図である。
【図4】図3の基礎底面に基礎版の配筋を行なった状態を示す縦断面図である。
【図5】図4の基礎底面に基礎版のコンクリートを打設した状態を示す縦断面図である。
【図6】図5の基礎版上に建物を建設した状態を示す縦断面図である。
【図7】本発明の直接基礎構造物の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図8】従来の直接基礎構造物を示す縦断面図である。
【図9】従来の他の直接基礎構造物を示す縦断面図である。
【図10】図8の構造物を杭基礎形式にした状態を示す縦断面図である。
【図11】図9の直接基礎構造物を改良した地盤上に支持した状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10、15 建物(構造物)
11、17、19 基礎版
12、16、18 地盤
13a、13b、21 沈下増幅材
14 配筋
δ2 不同沈下量
Claims (4)
- 構造物の荷重が基礎版を介して直接地盤に伝えられる直接基礎構造物において、沈下量が相対的に小さい位置の上記基礎版と上記地盤との間に、ヤング率が当該位置における上記地盤のヤング率よりも小さな沈下増幅材を介装したことを特徴とする直接基礎構造物。
- 上記基礎版は、基礎フーチングまたは基礎スラブであり、かつ上記沈下増幅材は、ヤング率が明らかなシート材、板材またはブロック材から選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載の直接基礎構造物。
- 構造物の荷重が基礎版を介して直接地盤に伝えられる直接基礎構造物を構築する方法であって、予め構造物の沈下計算を行ない、地盤を基礎底面となる深さまで掘削した後に、上記沈下計算の結果沈下量が小さい位置の上記地盤上に、ヤング率が当該位置における上記地盤のヤング率よりも小さな沈下増幅材を敷設し、次いで上記基礎版の配筋を行なって、コンクリートを打設することにより上記基礎版を構築し、この基礎版上に順次上記構造物を構築してゆくことを特徴とする直接基礎構造物の構築方法。
- 上記基礎版として、基礎フーチングまたは基礎スラブを構築し、かつ上記沈下増幅材として、ヤング率が明らかなシート材、板材またはブロック材から選択されたものを敷設することを特徴とする請求項3に記載の直接基礎構造物の構築方法。
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