JP3760468B2 - シリコン基板の評価方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、デバイスが作製されたシリコン基板の評価方法(検査技術)に係わり、特に、シリコン基板の欠陥やデバイスプロセス中の汚染やストレスによる不良解析を行うために、デバイス膜の剥離を新規な手法で行い、露出したシリコン基板表面の欠陥を観察するようにしたシリコン基板の評価方法に関する。
【0002】
【関連技術】
シリコン基板に形成されたデバイスの故障解析をするためには、表面についているデバイス膜を剥離して半導体シリコン基板表面を露出させた後、選択エッチングを行って欠陥を観察しなければならない。デバイス膜としては、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜などの絶縁膜や、ポリシリコン膜やアルミニウムなどの電極や、ポリイミドなどの有機物からなる表面保護膜などがある。
【0003】
このデバイス膜を除去して半導体シリコン基板表面を露出させるため、従来より、フッ酸・硝酸系のエッチング液が使用されている。これを用いて表面についているデバイス膜を剥離するためには、長時間フッ酸・硝酸系のエッチング液に浸漬して置く必要がある。しかし、長時間エッチング液に浸漬しておくと、シリコン基板表面上のデバイス膜を綺麗に剥がすことができず、逆に、表面を虫食い状態にエッチングしてしまい、表面が荒れてシリコン基板の表面欠陥を観察するのに不都合が多かった。
【0004】
また、デバイス膜の種類毎に順次適切なエッチング液を選択してエッチングする方法もあるが、エッチング液を何度も交換する必要があり手間がかかっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
シリコン基板表面上のデバイス膜を綺麗に剥がすために、フッ酸中に長時間半導体基板を浸漬して置くと、表面が虫食い状態にエッチングされてしまう。また、デバイス膜の種類毎に適切なエッチング液を選択してエッチングするのは非常に手間がかかる。従って、短時間でデバイス膜を綺麗に剥がすための方法が必要である。
【0006】
本発明は、上記した問題点に鑑みなされたもので、半導体基板上の結晶欠陥やデバイスプロセス起因の表面欠陥を観察するための綺麗な表面を露出させることによってデバイス膜剥離後のエッチングによる表面欠陥観察がし易くなり、表面にある欠陥が結晶起因の欠陥か、又はプロセス起因のストレスや汚染による欠陥なのかを明らかにすることができるようにしたシリコン基板の評価方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明のシリコン基板の評価方法の第1の態様は、デバイス膜が形成されたシリコン基板を20%以上50%以下の重量濃度のフッ酸に浸漬した後、該シリコン基板の表面を、吸水性を有する樹脂に純水を吸収させた状態で機械的に洗浄することにより、前記デバイス膜を除去してシリコン基板表面を露出させ、露出した表面を選択エッチングすることにより前記シリコン基板表面の欠陥を観察することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のシリコン基板の評価方法の第2の態様は、デバイス膜が形成されたシリコン基板を20%以上50%以下の重量濃度のフッ酸に浸漬した後、該シリコン基板の表面をアンモニアと過酸化水素の混合水溶液で洗浄することにより、前記デバイス膜を除去してシリコン基板表面を露出させ、露出した表面を選択エッチングすることにより前記シリコン基板表面の欠陥を観察することを特徴とするシリコン基板の評価方法である。
【0009】
本発明で使用するフッ酸の重量濃度は20%以上50%以下である。フッ酸は、重量濃度50%が一般的に市販されている原液であるが、その原液のままではエッチング反応が速すぎる場合があるので、フッ酸の重量濃度としては20%以上40%以下とすることが好ましい。
【0010】
また、フッ酸による浸漬を少なくとも2回に分けて行い、いずれの浸漬においても未使用のフッ酸を用いることが好ましい。さらに、フッ酸による浸漬中に、前記シリコン基板を揺動したり、超音波を加えたりすれば効率よくデバイス膜を除去することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面中図1及び図2に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0012】
図1は本発明のシリコン基板の評価方法の第1の態様の処理手順の1例を示すフローチャートである。図1に示したように、まずデバイス膜が形成されたシリコン基板をフッ酸に浸漬する(ステップ100)。このフッ酸としては重量濃度が20%以上50%以下のものが用いられ、20%以上40%以下が好ましい。
【0013】
次に、フッ酸に浸漬された上記デバイス膜が形成されたシリコン基板の表面を機械的に洗浄する(ステップ102)。この機械的洗浄は、吸水性を有する樹脂に純水を吸収させたものによって行われる。この機械的洗浄により上記デバイス膜は除去されてシリコン基板の表面が露出される(ステップ104)。
【0014】
続いて、この露出されたシリコン基板表面を選択エッチングする(ステップ106)。この選択エッチングは常法により行えばよいもので、例えば、フッ酸・硝酸系のクロムレスエッチング若しくはSeccoエッチングを1分間程度行う。
【0015】
最後に、この選択エッチングされたシリコン基板表面の欠陥を光学顕微鏡によって観察する(ステップ108)ことにより、シリコン基板の評価を行う。
【0016】
つまり、本発明のシリコン基板の評価方法の第1の態様によれば、シリコン基板上に形成されたデバイス膜は、高濃度のフッ酸と、吸水性を有する樹脂からなる洗浄ブラシを用いるだけで、シリコン基板からデバイス膜のみを簡単かつ綺麗に剥離することができる。
【0017】
吸水性を有する高い樹脂からなる洗浄ブラシとしては、ポリビニルホルマール(PVF)からなるブラシローラー(商品名:カネボウ社製)や、ベルクリン(商品名:カネボウ社製)などのビニル樹脂を挙げることができる。
【0018】
具体的なデバイス膜除去方法としては、例えば25%のフッ酸にデバイス膜の付いたシリコン基板を浸漬し、表面の保護膜(ポリイミド等)が剥がれ出したらシリコン基板を上下に5分間振り、表面の保護膜や配線等を剥がし、シリコン基板を引き上げ純水で10分間以上洗浄する。
【0019】
続いて、新しい25%のフッ酸にシリコン基板を浸漬し、シリコン基板を上下に10分間振る。シリコン基板を引き上げ純水で10分以上洗浄する。この状態で、シリコン基板表面にデバイス膜の残りが付着している場合(茶色になっていることが多い)は新しい25%のフッ酸にシリコン基板を10分間浸漬して置き、その後、シリコン基板を引き上げ純水で10分以上洗浄する。
【0020】
尚、フッ酸への浸漬時間の合計は1時間以下とすることが好ましい。それ以上浸漬しても、デバイス膜除去効果が上がることはなく、むしろ、シリコン基板表面が部分的にエッチングされてしまう場合がある。
【0021】
さらに、フッ酸浸漬処理終了後の状態で、シリコン基板表面にデバイス膜の残りが付着(茶色になっていることが多い)している場合は、ガラスプレートの上にシリコン基板を載せ、シリコン基板上に純水を流しながら綺麗なブラシローラーに純水をたっぷり含ませて、ブラシローラーを回転させながらシリコン基板を軽く擦る。この時、一度シリコン基板を擦ったブラシローラーの面で、シリコン基板を擦ると、ブラシローラーによって除去されたデバイス膜がシリコン基板に再付着する場合があるので、シリコン基板を擦ったブラシローラーの面で再びシリコン基板を擦ることは避けなければならない。
【0022】
前述したように、デバイス膜を剥がすために、フッ酸・硝酸系のエッチング液中に長時間半導体基板を浸漬して置くと、表面が虫食い状態にエッチングされてしまう。これは、デバイスに使用されている金属等がエッチング液中に溶け出し、イオン化してシリコン基板を虫食い状態にエッチングしてしまう原因になっていると考えている。
【0023】
高濃度のフッ酸にデバイス膜の付いたシリコン基板を浸漬し、シリコン基板を上下に振ることにより、表面の保護膜(ポリイミド等)や配線等をシリコン基板から短時間で引き離す効果がある。一旦、表面に付着している膜や配線類のかす等を洗い流すために、シリコン基板を引き上げ純水で10分以上洗浄した後、再度新しいフッ酸にシリコン基板を浸漬することがより効果的なのは、最初に使用したフッ酸を使用すると剥がれたかすが表面に付着したり、デバイス膜の剥がれた部分がフッ酸溶液中に溶けている金属イオン等が原因でエッチングされたりしてしまうためである。このため新しいフッ酸を使用する。シリコン基板を上下に揺動する目的は、まだ完全に落ちていないデバイス膜がある場合、シリコン基板から膜を剥がれやすくするためである。揺動する代わり、あるいは、揺動しながら超音波を加えることによっても高い除去効果が得られる。
【0024】
上記した本発明方法の第1の態様においては、フッ酸に浸漬されたデバイス膜が形成されたシリコン基板の表面をブラシローラー等の機械的洗浄を行うことによってデバイス膜を除去する構成を採用したが、機械的洗浄以外の洗浄方法を適用することも可能であり、以下に説明する。
【0025】
図2は本発明のシリコン基板の評価方法の第2の態様の処理手順の1例を示すフローチャートである。本発明方法の第2の態様は、フッ酸に浸漬されたデバイス膜が形成されたシリコン基板の表面をアンモニアと過酸化水素の混合水溶液によって洗浄する(ステップ103)ことが特徴であり、その他の工程(ステップ100、104、106及び108)は本発明方法の第1の態様と全く同様に行えばよいので再度の説明は省略する。
【0026】
このようにブラシローラー等による機械的洗浄の代わりにアンモニアと過酸化水素の混合水溶液で洗浄することによって、フッ酸溶液中で落ちなかったデバイス膜のカスをアルカリエッチングにより落とすことができる。アンモニアと過酸化水素の混合水溶液による洗浄は、一般的にSC1洗浄と呼ばれ、シリコン基板表面のパーティクルや有機物や金属等による汚染物を除去するための洗浄であり、溶液組成は、NH4OH(29重量%):H2O2(30重量%):H2O=1:1:5〜10の比率(容量比)で行われる。この洗浄によって、殆どのデバイス膜を剥がすことができる。
【0027】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0028】
(実施例1)
重量濃度20%、25%、40%のフッ酸にそれぞれデバイス膜の付いたシリコン基板を浸漬したところ、約20秒経過したところで、表面の保護膜(ポリイミド)が剥がれ始めた。そこで、シリコン基板を上下に5分間振り、表面の保護膜や配線等を剥がし、シリコン基板を引き上げ純水で10分間洗浄した。この状態のシリコン基板の表面を光学顕微鏡で観察したところ、図3の写真に示したように綺麗にデバイス膜が落ちていないことがわかった。
【0029】
その後、それぞれの濃度の新しいフッ酸にシリコン基板を移し変え、シリコン基板を上下に10分間振った。そして、シリコン基板を引き上げ純水で10分以上洗浄した後、再びフッ酸にシリコン基板を10分間浸漬し純水で10分間以上洗浄した後、ガラスプレートの上にシリコン基板を載せ、シリコン基板上に純水を流しながら綺麗なブラシローラーに純水をたっぷり含ませて、ブラシローラーを回転させながらシリコン基板を軽く擦った。この状態のシリコン基板の表面を光学顕微鏡で観察したところ、図4の写真に示したように綺麗にデバイス膜が落ちていることがわかった。
【0030】
このシリコン基板に選択エッチング(Seccoエッチング)を1分間行った後、光学顕微鏡にて表面を観察したところ、デバイス膜が綺麗に落ちていたため、表面のどの領域においても欠陥観察を行うことができ、十分な不良解析を行うことができた。
【0031】
(実施例2)
25%フッ酸に超音波を印加しながら、デバイス膜の付いたシリコン基板を浸漬したところ、約15秒経過したところで、表面の保護膜(ポリイミド)が剥がれ始めた。そこで、シリコン基板を上下に5分間振り、表面の保護膜や配線等を剥がし、シリコン基板を引き上げ純水で10分間洗浄した。さらに、新しいフッ酸にシリコン基板を移し変えて10分間浸漬させた後、シリコン基板を引き上げ純水で10分間洗浄した。
【0032】
その後、重量濃度29%のアンモニア水と、重量濃度30%の過酸化水素水と、純水とを、容量比1:1:10で混合したアンモニア過水溶液(液温80℃)で5分間の洗浄を行い、5分間の純水リンスを行った後、シリコン基板の表面を光学顕微鏡で観察したところ、図5の写真のように綺麗にデバイス膜が落ちていることがわかった。
【0033】
このシリコン基板に選択エッチング(Seccoエッチング)を1分間行った後、光学顕微鏡にて表面を観察したところ、デバイス膜が綺麗に落ちていたため、表面のどの領域においても欠陥観察を行うことができ、十分な不良解析を行うことができた。
【0034】
(比較例1)
重量濃度10%、15%のフッ酸にそれぞれデバイス膜の付いたシリコン基板を浸漬したところ、約20秒経過したが表面の保護膜(ポリイミド)は剥がれが発生せず、20%未満の低濃度のフッ酸では、膜除去に長時間を要することがわかった。
【0035】
(比較例2)
25%のフッ酸にシリコン基板を24時間浸漬したあと水洗してその表面を光学顕微鏡で観察したところ、図6及び図7の写真に示したようにデバイス膜は除去されたものの、シリコン基板表面が部分的にエッチングされしまっていることがわかった。
【0036】
このシリコン基板に選択エッチング(Seccoエッチング)を1分行った後、光学顕微鏡にて表面を観察したところ、シリコン基板表面が部分的にエッチングされてしまった箇所については欠陥の評価ができず、十分な不良解析ができなかった。
【0037】
【発明の効果】
以上述べたごとく、本発明のシリコン基板の評価方法によれば、シリコン基板上の結晶欠陥やデバイスプロセス起因の表面欠陥を観察するための綺麗な表面を形成し、その綺麗な表面を観察しシリコン基板の評価を行うため、デバイス膜剥離後のエッチングによる表面欠陥観察がしやすくなり、表面にある欠陥が結晶起因の欠陥なのか、またはプロセス起因のストレスや汚染による欠陥なのかを明らかにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のシリコン基板の評価方法の第1の態様の処理手順の1例を示すフローチャートである。
【図2】 本発明のシリコン基板の評価方法の第2の態様の処理手順の1例を示すフローチャートである。
【図3】 実施例1における1回目のフッ酸洗浄を行った後のシリコン基板の表面状態(綺麗にデバイス膜が落ちていない状態)を示す写真である。
【図4】 実施例1におけるフッ酸洗浄及び機械洗浄終了後のシリコン基板の表面状態(綺麗にデバイス膜が落ちている状態)を示す写真である。
【図5】 実施例2におけるフッ酸洗浄及びアンモニアと過酸化水素の混合水溶液による洗浄終了後のシリコン基板の表面状態(綺麗にデバイス膜が落ちている状態)を示す写真である。
【図6】 比較例2における長時間フッ酸浸漬後のシリコン基板の表面状態(表面侵蝕された状態)を示す写真である。
【図7】 図6の写真の拡大写真である。
Claims (6)
- デバイス膜が形成されたシリコン基板を20%以上50%以下の重量濃度のフッ酸に浸漬した後、該シリコン基板の表面を吸水性を有する樹脂に純水を吸収させた状態で機械的に洗浄することにより、前記デバイス膜を除去してシリコン基板表面を露出させ、露出したシリコン基板表面を選択エッチングし、この選択エッチングされたシリコン基板表面の欠陥を観察することを特徴とするシリコン基板の評価方法。
- デバイス膜が形成されたシリコン基板を20%以上50%以下の重量濃度のフッ酸に浸漬した後、該シリコン基板の表面をアンモニアと過酸化水素の混合水溶液で洗浄することにより、前記デバイス膜を除去してシリコン基板表面を露出させ、露出した表面を選択エッチングし、この選択エッチングされたシリコン基板表面の欠陥を観察することを特徴とするシリコン基板の評価方法。
- 前記フッ酸の重量濃度を20%以上40%以下とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリコン基板の評価方法。
- 前記フッ酸による浸漬を少なくとも2回に分けて行い、いずれの浸漬においても未使用のフッ酸を用いることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシリコン基板の評価方法。
- 前記フッ酸による浸漬中に、前記シリコン基板を揺動することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシリコン基板の評価方法。
- 前記フッ酸による浸漬中に、前記シリコン基板に超音波を加えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシリコン基板の評価方法。
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