JP3760202B2 - 果 樹 覆 い 具 - Google Patents
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Description
【発明の目的】
この発明は、主としてサクランボやライム等の果実のように、雨水に晒されてしまうことによって割れや病斑等を生じて商品価値を落としてしまう弊害を防止するための果樹覆い具に関するものであり、従前までの予めビニルシートを被せた据付固定式パイプフレームのように大掛かりな作業を必要とせず、所望する果樹1ないし数本毎に迅速、簡便な果樹覆いを実現可能とし、必要に応じてその他の目的の覆いにも転用できるようにした新規な構造の果樹覆い具を提供しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
雨に当たることにより、養育植物期にある苗木は枯れを生じたり、収穫期を迎えようとするサクランボ、レモン、ライム等の果実は、果実の割れや、病斑等を生じる虞が高く、このような弊害を阻止するために、予め骨組みしたパイプフレームにビニールシート等の覆いを被せて防水性の屋根を作り、雨水から幹や枝葉、そして収穫間近い果実を保護したり、根付き部分および周囲の土の乾燥状態を確保すること等といった果樹覆い作業が行われてきたが、こうした従来からのビニールシートの設営作業は、極めて大掛かりな作業であって、老齢者や婦女子では到底実施することが不可能であり、近隣縁者から男手を借りるか、止むなく専門業者に依頼して多額の経費を掛けざるを得なかった。
しかも、こうして設営されてしまった覆い施設は、その後の薬剤の散布や、畑地内に各種農機具を導入することを拒み、果実収穫までに必要とされる一連の農作業の障害となり、効率的な農作業の妨げになるという別の課題を抱えることにもなっていった。
【0003】
山形県特産で、全国的にも愛らしい果実の代表格として知れ渡っているサクランボについてみれば、比較的冷涼で、乾燥した気候を好み、1年を通した果樹の生長と、これに伴う栽培管理は、先ず、1月から3月上旬に掛けて行われる樹形を整え実付きを良くするための整枝・剪定に始まり、後に病害虫予防のための薬剤の散布を行わなければならない。そして、このサクランボには、果実だけでなく、花や若葉をも冒す灰星病や、果実を食害するオウトウミバエが大敵とされ、灰星病には発芽前に石灰硫黄合剤10〜20倍液を散布し、また、開花後は10〜14日間隔でロブラール水和剤10〜20倍液を散布し、同時にサリチオン乳剤1000倍液のような殺虫剤も混用する必要があり、更に、3月の下旬から4月の上旬に掛けて開花した後には人工受粉を行い、5月上旬には良い実を残して摘果する等の多くの手間を掛け、ようやく6月下旬から7月末に掛けて収穫が行われる。
【0004】
この収穫の時期が、丁度梅雨期に重なるため、他の季節に比較して果樹が雨に晒されることが多くなり、収穫前の弾力のあるサクランボの果実は、雨水がかかると表皮から水分を吸収してはち切れてしまう裂果を生じ、果実の美しさはもとよりのこと、商品価値を全く無くしてしまうことになるため、収穫期まで多大な経費と労力を与えて生長させていかなければならないサクランボ栽培農家では、サクランボの商品価値を保持するために、多少の農作業の非効率さを承知の上で、上記した従前からのパイプフレーム設置固定式の覆い具に頼り切っているのが実情である。
【0005】
また、関東地方以南で栽培されるレモンやライム等は、2月から3月に剪定を行い、4月から5月に開花し、11月から12月に収穫期を迎えるものであり、1月から9月に掛けて殺虫剤や殺菌剤等の薬剤散布を必要とし、寒肥えや追肥を頻繁に必要とする等、栽培に関する日常管理には多大な労力を要している。
特に、夏に、かいよう病や黒点病が発生することがあり、病斑が出た果実は速やかに取り除き焼き捨てる等の処置を必要とする。こうした病気は、空中を浮遊している病原菌の胞子が葉や果実に付着し、そこへ雨水が当たり発芽し、発芽した病原菌は、葉や果実の表面にある気孔から侵入し、繁殖して植物から栄養を吸収し、果実は生育が悪化して太らず、商品価値を失わせるものであったから、降雨による悪影響を避けるために、これら果樹にも、上記したとおりの設置固定式パイプフレームにビニールシート等からなる覆いシートを架けた屋根架けが広く行われてきている。
【0006】
このような果樹への屋根架けは、最も簡易には、図8の従前のビニールシートによる屋根架けを示す斜視図のように、透明なビニールシート31の四角を、地面に打ち立てた竹竿32,32,……等に、果樹33を上方から覆う高さに保持するように縛り付け、降雨に備えるものであり、また、図示にはしていないが、大掛かりには、所定間隔を置いて並ぶ5〜10本、あるいはそれ以上の本数の果樹をまとめ、恰も1棟の仮設構造物となるように、門型パイプフレームを60〜100cm間隔置きに多数立設、組み合わせていって骨格体となしてそれら果樹を跨がせ、果樹よりも高く作り上げられた骨格体を支持体として、長尺、広幅の覆いシートを被せていって、適宜押えバンドで覆いシートに張りを与えるようにしたものであり、サクランボの果樹の場合は、果実が色付き始める頃にビニールシート31を被せることにより、裂果を防止することができ、また、レモンやライムでは、果実が付いた時にビニールシート31を掛けることにより、雨による病原菌の発芽を防止するようにするが、これら一度設営された従前までのビニールシート31を骨格体に被せるタイプの覆い施設は、度重なる各種薬剤の散布や、追肥作業、果実の収穫等に際して作業の妨げとなったり、果樹畑内にて大型の農業機械を移動する場合等にも竹竿32,32,……やパイプフレーム等の支柱が障害となり、農作業を思うように効率化することができないでいた。
【0007】
本願発明者は、このような収穫期を間近に控えた果樹にとって、欠くことのできないビニールシートの覆いシートによる屋根架けを、薬剤の散布や収穫作業時には、極簡単に折り畳みすることが可能であり、且つ、いざ雨が降りだしそうな場合には、速やか且つ簡単に覆いシートを果樹上に差し掛けることができるようにする新たな覆い具の実現化に着手し、長期に渡って試作および検討を繰り返してきた結果、遂に、実用に値する果樹覆い具を完成することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【0008】
【発明の構成】
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の果樹覆い具は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、地上に立設する支柱の上端に基体用環体を取着する一方、該基体用環体の周囲には、複数の折り畳み骨格基体が、放射状配置であって、略水平に近い状態から下方側に回動して略垂直に近い状態にまで移行し得る回動が自在となるよう夫々の基端部を枢着してあり、しかも、相互にその回動が連動する如くした構造で連接されるようにすると共に、これら折り畳み骨格基体の夫々の遊端部を、前記基体用環体よりも下方で支柱に嵌装された力骨体用環体から放射状に延びる力骨体の中途部に夫々回動自在に接続し、折り畳み骨格基体相互の連動した下方側への回動により、全ての力骨体が、夫々の遊端側を強制的に上方側に窄ませてしまう回動の可能なものとなし、それら力骨体には覆いシートを張設してなるものとした構成を要旨とする果樹覆い具である。
【0009】
これら基本的な構成で示した果樹覆い具は、より具体的な構成のものとして示せば、地上に立設する支柱の上端に、略同心状且つ水平に基体用環体を取着する一方、該基体用環体の周囲には、夫々平面形で略U字状に屈曲形成された複数の折り畳み骨格基体が、放射状配置であって、略水平に近い状態から下方側に回動して略垂直に近い状態にまで移行し得る回動が自在となるよう夫々の両基端部を枢着してあって、且つ、夫々の両基端部側の中の決められた側の一方の基端部側を、決められた側で隣接するものの両基端部の中の他方の基端部側の表裏何れかの側に決められた関係で交差していくよう、互いが同一周回方向に決められた関係で重ね合わせられ、その中の1つを上下方向に回動することにより、重ね合わせ部分が連鎖的に隣接する他を同向きに連動させて全てを自動的に回動させてしまうようにして接続されると共に、これら折り畳み骨格基体の夫々の遊端部頂部を、前記基体用環体よりも下方で支柱に嵌装された力骨体用環体から放射状に延びる力骨体の中途部に夫々回動自在に接続し、折り畳み骨格基体相互の連動した下方側への回動により、全ての力骨体が、夫々の遊端側を強制的に上方側に窄ませてしまう回動の可能なものとなし、それら力骨体には覆いシートを張設してなるものとした果樹覆い具となる。
【0010】
支柱は、少なくとも対象となる果樹の背丈以上の長さを有し、しかも、後述の折り畳み骨格基体や力骨体、その上に被せられる覆いシート等を中心で専ら支えることができ、それらに加わる風圧等に対しても十分に耐えられるだけの構造強度を有したものでなければならず、更に取り扱い作業製上で極力軽量化されていなければならないことから、金属製細管や強化プラスチックス製細管、あるいはそれら素材の複合された細管等が最適であり、更には、単なる単管ではなく、耐久性を増すための公知の構造、例えば表面に複数条のリブを一体形成したもの、中空部に補強フランジを一体または別体で形成したもの、その他複合構造に形成したり、全長を同一径ではなく、上端側程断面を細めた細管とすることもできる外、強度上で必要があれば管体以外の断面のものを採用したり、継ぎ足し式の構造のものとすること等も勿論可能である。
【0011】
折り畳み骨格基体は、U字状に屈曲形成した鋼棒の両基端部を上記した支柱に直接か、支柱に取着または嵌装した基体用環体に枢着すると共に、両基端部の中の一基端側を隣接する他の折り畳み骨格基体の他基端側に重ね合わせる構造で、順次一方方向に組み合わせ、配列するようにし、何れか一つに回動作用が惹起されると、全ての折り畳み骨格基体がその動きに連動して所望する連鎖的開閉作用が強制的に得られるようにした構造のものに形成されていなければならず、したがって、必須となる構成としては、隣接する折り畳み骨格基体同士が互いの一部を順次重ね合わせた状態に基体用環体の周方向に沿って規則的に配列され、1つの折り畳み骨格基体を回動操作すると、隣接する折り畳み骨格基体が順次連鎖的に強制回動操作され、全ての折り畳み骨格基体を一度に強制的に回動することができるようにした他の構造、即ち、折り畳み骨格基体は、上記したU字状に湾曲された棒材に限定されず、例えば剛性を有する板材を花弁形状に組み合わせたもの等も包含されていることはいうまでもない。
【0012】
この折り畳み骨格基体の回動は、略水平に近い状態から略垂直に近い状態にまで上方側あるいは下方側に回動され、その作動によって、後述する力骨体を強制的に上方向に窄ませてしまうよう機能するものであり、略水平に近い状態から上方側に回動して略垂直に近い状態にまで移行させるようにするものでは、折り畳み骨格基体の基端部は、支柱の上端から所定範囲(略折り畳み骨格基体の長さ、即ち両基端部から遊端部間での長さに相当する範囲)下方までの間を移動しながら回動できる構造に形成されていなければならず、また、略水平に近い状態から下方側に回動して略垂直に近い状態にまで移行させるようにするものでは、折り畳み骨格基体の基端部は、支柱の上端に取着されて回動できる構造のものとして形成されることになる。
【0013】
力骨体は、その基端部を上記支柱に直接か、力骨体用環体を介して支持され、該支柱から放射状に複数本が延伸し、支柱周り所定面積(即ち、対象となる果樹の上を雨水から遮りたい範囲)をカバーする覆いシートが、これらを支持部として張設できるよう機能する、言わば蝙蝠傘の親骨に相当する機能を果たす構成要素部分であり、したがって、覆いシートをそれらの上面側あるいは下面側に添設支持できる構造強度(極力軽量で適度の剛性と耐久性等)を必要とする外、シートの取付け手段、例えばホック止め、紐止め、クリップ止め等公知の止め金具や止め具が要所要所に取着、組み合わされて取り付けができるようにしたり、あるいは、覆いシート添設側で軸心方向に細溝を刻設した力骨体と成し、覆いシートを添設した後、覆いシートの上から押え棒を押付けて覆いシート部分共々、先の細溝内に押し込むようにした取着手段や、覆いシート部分を力骨体の周囲に添設状に押付け固定する断面Cの字状弾発性鞘体を併用する取着手段によるものとする等、適宜公知の取付け手段が講じられたものとしなければならない。
【0014】
そして、該力骨体夫々は、その基端部側の中途が上記した折り畳み骨格基体の遊端部に1本ずつか、あるいは2〜3本ずつが枢着され、折り畳み骨格基体全体の連動した強制回動によって、夫々の基端部を回動支点として全体がまとめて上方側に回動し、夫々の遊端部側が上方側で窄まるように作動する(したがって、それに添設されている覆いシートも支柱の上方側に強制的に窄められる。)ものとして形成される。
なお、これら力骨体の上方側への回動は、手動で直接折り畳み骨格基体を上下回動操作するようにして実現したり、あるいはまた、1つの折り畳み骨格基体に結着されたワイヤロープ等を、専用の巻き取りハンドルを設けるか、駆動モータによって巻取りおよび解放する等、適宜動力源を採用して開閉操作が実現されるようにすることもできる。これら回動操作手段は、経済性や作業性の面で最も有益なものが適宜選択、採用されれば足りる。
【0015】
また、これら力骨体は、それらの全てあるいは必要なものの遊端部近傍適所に孔が穿設されたり、リングやフック等が装着されたものとなし、それらを利用して、広げられた状態の力骨体の遊端部全てあるいは要所要所が、張綱または細棒を介して地面に連結、固定されたものとなし、張綱あるいは細棒には、長さ調節構造、例えばターンバックル等を組み込む等してそれらの長さを調整することにより、力骨体の遊端側を外方地面側に向けて湾曲させ、且つ、その湾曲状態を調節可能とし、覆いシートに降り注ぐ雨水の排水を促進とすると共に、果樹の側方からの風雨の吹き込みを阻止する、具体的には、果樹に側方から吹き付ける暴風等に対処する必要があるときには、張綱または細棒を短く調節することによって力骨体の曲率を最大限に設定し、側方からの雨滴や強風の侵入を極力阻止して果樹を保護するようにしたり、他方、小雨時には、張綱または細棒を長めに調節し、支柱の強度、即ち左右、前後への揺れを補助するだけの機能を果すものとし、果樹の上方側だけが専ら覆われ、果樹の側部を開放して横からの風の通過を促し、地面の過湿化を防止して可能な限り良好な生育環境を維持できるようにしたものとすることができる。
【0016】
覆いシートの添設状とされた力骨体は、閉鎖状態のみ、または拡開状態と閉鎖状態の双方で、その姿勢をできるだけ安定させて維持しておける適宜仮固定機構を備えたものとするのが望ましい。
即ち、閉鎖状態(力骨体を上方側に窄めた状態)を縛紐等によって結束、その都度仮固定することも勿論可能ではあるが、大型化したものの場合には、1人でそれを実施することは殆ど困難な作業であって、それらについては、少なくとも、例えば、力骨体の基端部(支柱への枢着部)よりもやや下方の支柱部に仮止めリングを嵌挿しておき、該仮止めリングの下方に延ばした操作杆を押し挙げて覆いシートを含む力骨体全体を一まとめ状に仮固定できるようにした簡便な仮固定機構が採用されるべきであろう。
【0017】
更に望ましくは、折り畳み骨格基体部分に、その回動を制御できる仮固定機構、例えば、枢着部の回転軸の回転を阻止、解放できるロック機構が、力骨体用環体に組み込まれ、支柱下方からワイヤで解施錠操作できるようにした機構、あるいは、上記した仮止めリングに相当する止め具が、折り畳み骨格基体部分の外側に嵌合、離脱するよう、支柱下方から操作可能にした機構、更には、一つあるいは要所要所の折り畳み骨格基体基端部適所に向け、支柱からストッパーが出入り可能に装置され、それらストッパーを支柱下方で操作できるようにした機構、更にまた、上記のような機構を、力骨体と支柱または支柱に嵌挿された力骨体用環体との間に組み込むようにした機構やそれらが適宜組み合わされた機構等々、各種仮固定機構が組み込まれたものとすると好都合のものとなる。
【0018】
上記折り畳み骨格基体や力骨体の開閉作動は、手動による直接的な上下動操作を、パイプや細棒等の適宜操作杆を介して所要部に伝達できるようにする外、ラック・アンド・ピニオン等の駆動機構を設け、人の操作で間接的に駆動操作することによって開閉操作を行うようにしたものとしたり、更に開閉作業の省力化を進めるため、電動モータ等の駆動源を設け、スイッチ操作することによって自動的に開閉できる構造としたものとすることも可能であり、更にまた、複数の果樹覆い具の開閉用駆動源の操作スイッチを統一したものとなし、畑全体に設けられた全ての果樹覆い具、または、部分的な果樹覆い具の開閉操作を、自動的に制御することのできるシステム、例えば、スイッチの機動を雨滴を検知する降雨検知装置に連動させ、雨が降り出すと自動的に果樹覆い具を拡開し、また、天候が回復して晴天となり、雨滴を検知しなくなると自動的に果樹覆い具を折り畳み状態に駆動させる等といった自動化された開閉作動が実施できるものとすることも可能となる。
【0019】
覆いシートは、専ら果樹の覆い具を対象とするものであれば、透光性を備え、雨天時であっても光を取り入れ果樹の生長を促進できる、例えばビニルシートやポリエチレンシート等といった既に果樹用覆いシートとして繁用されているプラスチックスシートまたはフィルム、あるいは今後開発されるであろう光透過性や耐久性に秀れた各種透明シートまたはフィルムが対象となり、他の目的の覆い具とする場合、例えば遮光用覆い具、保温用覆い具、あるいは霜害防止用覆い具、暴風用覆い具等とする場合には、当然それらに変えた最適な素材のシートまたはフィルム、ネット等が採用されることになるのはいうまでもなく、それらは、何れも極力軽量で、より耐久性、耐候性に秀れたものであることが望ましい。
【0020】
なお、この覆いシートは、随時コンパクトに折り畳み可能な構造のものとして形成されることから、専ら果樹用覆い具として使用されるものの覆いシートであっても、遮光性あるいは光反射性を備えたシートとすることも可能であり、晴天時には、折り畳んでしまうことによって果樹への光を確保し、雨天時には開いて雨水を遮断するようにする外、強い日差しや強い乾燥から果樹を保護しなければならないときにも、開いて遮光用覆い具にも兼用できるようにしたものとすることも可能となる等、多機能を兼ね備えた果樹保護装置として実現することもできる。その他、覆いシートを単層のものとするだけではなく、性状の異なるものを重ねて採用し、目的に応じて全体あるいは一部をはぐって通気性や採光具合を適宜変更できるものとしたり、あるいは覆いシートの強度の改善を図る等、様々な応用、改変が可能である。
以下、図面に示す幾つかの実施例について詳述することにより、この発明に包含される果樹覆い具の構成が、より具体的且つ明確に把握できるようにすることとする。
【0021】
【実施例1】
先ず、図1の使用状態を示す斜視図、図2の折り畳み状態を示す斜視図、図3の骨組み構造を示す平面図に示される事例は、この発明の基本的な構成を兼ね備えた最も代表的な果樹用覆い具の実施例である。
果樹覆い具1は、アルミニウム管体製の支柱2の上端側に、図3の平面図が示しているように、折り畳み骨格基体8,8,……を所定の重なり合いで放射状配置に組み込んでなる部分を主要部とした折り畳み機構3が形成されており、その回動操作で、予め力骨体9,9,……からなる骨格体部分4を上方側に窄め、添設してあるビニールシート製の覆いシート5ごとコンパクトな状態にまとめ、その状態が崩れてしまわないよう、適宜索条で縛った図2の状態を地上で必要本数用意しておくようにする。
【0022】
それら果樹覆い具1,1,……は、果樹畑等、対象とする果樹の近傍にまで運び込まれ、アルミニウム管体製の支柱2の根元を、孔を掘った地中に直接突き立てるか、図示にはしていないが、予め立設しておいた補助支柱に添わせる等して立設され、降雨時の際に何時でも覆い具として対応できる状態にしておく。
折り畳み機構3は、図3の平面図に示されるように、支柱2の上端に強固に取着された基体用環体7を介し、円周に沿って、複数が花弁状を成して配列されたU字形状の折り畳み骨格基体8,8,……が設けられている。
これら折り畳み骨格基体8,8,……は、U字状に湾曲された高剛性の特殊鋼棒等から形成され、夫々の左右両端部8a,8bを基体用環体7にルーズに巻着した構造により、略水平に近い状態から遊端側を上方に回動して略垂直に近い状態にまで回動できる枢着構造に形成されている。
【0023】
また、折り畳み骨格基体8,8,……の夫々の基部8a,8bは、隣合う折り畳み骨格基体8の一方の基端部8aが、これに隣接する折り畳み骨格基体8の他方の基端部8bの下側に位置する関係で交差していくよう、全ての折り畳み骨格基体8,8,……は、順次周回方向に一部重なり合っていく状態に配置されていて、1枚の折り畳み骨格基体8を垂直または水平状態になるよう回動することにより、隣り合う折り畳み骨格基体8,8,……を順次連鎖的且つ強制的に鉛直上方に閉鎖、または水平下方に開放されていくようになっている。
【0024】
折り畳み骨格基体8,8,……の湾曲状の遊端部頂部には、支柱2を中心にして放射状であって、その基端側がビス止め等の適宜手段によって上下方向回動自在に枢着されている力骨体9,9,……の中途が連結されており、それら力骨体9,9,……の上側には、全体形状が蝙蝠傘形状を成す如く裁断されたビニールシート等からなる透明な覆いシート5が貼付され結着等により強固に固定されている。
なお、支柱2を中心として配置された折り畳み骨格基体8,8,……を含む部分に対応する覆いシート5の中心部分は、力骨体9,9,……に対して特に貼付構造を備えておらず、折り畳み動作に柔軟に対応できる状態にしている。
【0025】
以上の如く構成された、果樹覆い具1は、その覆い部6の最大径部分の寸法が、対象となる果樹を覆えるだけの、例えば5m〜10m前後のものに形成され、また、支柱2の高さは、対象となる果樹の背丈よりも高くなる、例えば1.5m〜5m前後のものに設定され、使用状態にあっては、図1に示されるように果樹33,33の上部に屋根を形成する如く拡開されて覆い部6を形成し、晴天時等で、特に覆い部6を必要としない時等には、図2の使用状態斜視図に示されるように、果樹33,33の近傍で上方に折り畳まれて待機状態とすることができるよう構成されている。
【0026】
なお、これらの開閉作動には、1つの折り畳み骨格基体8に、図示しない引紐または引き金具等を下方へ吊下させておき、上方に集束された力骨体9,9,……を上記引紐または、引き金具を引き動かすことによって拡開し、あるいはそれを押し上げることによって窄めることができるようにする等、高所に位置する折り畳み骨格基体8,8,……の開閉が容易に操作できるような適宜手段が並設されるようにしてある。
【0027】
【実施例2】
図4の果樹覆い具21の折り畳み機構23の折り畳み状態を示す正面図、図5の果樹覆い具21の折り畳み機構23の拡開状態を示す正面図、図6の果樹覆い具21の使用状態を示す斜視図、図7の操作杆27の形状を示す斜視図に示される事例は、折り畳み機構23を構成する折り畳み骨格基体24,24,……と力骨体26,26,……との組み合わせに特徴のある果樹覆い具21の他の事例の中、最も実用的なものの代表的な構成からなるものである。
【0028】
即ち、果樹覆い具21は、支柱22の上端部に、支柱22を中心として放射状に配置された折り畳み骨格基体24,24,……の基部が上下に回動自在に枢着され、上記した実施例1の場合とは反対に、略水平に近い状態から下方に回動させて略鉛直に近い状態にまで折り畳み回動可能に枢着されている。
そして、この折り畳み骨格基体24,24,……の遊端側は、基端部が支柱22の中途部に軸方向に沿って上下移動可能に嵌挿された滑動環25に回動自在に枢着され、放射状配置とされた力骨体26,26,……の中途部上側に回動自在に枢着されている。
【0029】
力骨体26,26,……は、上記したとおり、折り畳み骨格基体24,24,……の夫々に対応する下側位置に放射状に配置され、上記滑動環25を上下動することにより、上方に折り畳み、または、略水平に近い状態にまで拡開することができるように構成されており、該滑動杆25は、その下側に、支柱22に沿って下側に延長され、且つ、上下動のための案内構造を備えた操作杆27に連設してあって、この操作杆27を上下作動することにより、2m以上の高い位置にある折り畳み機構23を開閉操作することができるように構成されている。
【0030】
操作杆27は、支柱22を挟んで対峙する如く平行配置した一対の操作棒27a,27aからなり、その上端を滑動環25の下部に連結させる一方、同下端同士は、支柱22の半周を迂回状に屈曲させて一体化されると共に、夫々反対方向に水平状に突出した操作ハンドル27b,27bを有する構造のものに形成されている。
なお、力骨体26,26,……を拡開した使用状態において、操作杆27を固定することのできる、図示しない固定構造を設ければ、覆い部21を開いた状態のままに保持できる。
【0031】
このようにして形成された力骨体26,26,……および折り畳み骨格基体24,24,……の上側には、例えば四角形状に裁断されたビニールシート等からなる覆いシート28が縛付構造等によって添設され、拡開された覆い部21で果樹33,33を覆い、更に、図6に示すように、力骨体26,26,……の先端部分に予め設けられている掛け輪に、夫々ナイロン製のロープやワイヤロープ等からなる張綱29,29,……の一端側のフック部を掛止する一方、他方下端側を、地盤に打ち込んだペグ30,30,……等に連結するようにし、一般にテント設営等に繁用されているような長さ調節金具29a,29a,……を予め張綱29,29,……中途に組み込んだものとしてあって、綱の張り具合を調節し、力骨体26,26,……の湾曲状態を必要に応じて変更できるようにし、覆い部21全体の強度が、支柱22を中心として安定するようにした構成のものとしてある。
【0032】
【作 用】
以上の如く構成されたこの発明の果樹用覆い具1は、先ず、予め、地上において折り畳み機構3を作動して、力骨体9,9,……を上方に向けて折り畳み、覆いシート共々コンパクトな状態に窄め、全体が棒状で、持ち運びに都合の良い状態にしたものとして必要本数用意し、この状態で対象となる果樹33の近傍まで搬入した上、その果樹33の近くに適宜深さの穴を掘り下げるか、あるいは補助支柱を略垂直状に打ち込んでおき、支柱2または22の下方側を穴に突き立てるか、補助支柱に縛って、支柱2または22が地面に略垂直状に立設されるようにする。
この状態で立設された果樹用覆い具1は、覆い部6、即ち縛紐11にて折り畳み骨格基体8,8,……および覆いシート5を含む力骨体9,9,……が束ねて窄められていて、果樹33,33,……の上方は開放されたままとなり、薬剤の散布や果実の収穫作業等の障害になることはない。
【0033】
天候の崩れる兆しが見えたところで、上記のような状態に窄めてある覆い部6は、作業者が、縛紐11を解き、1つの折り畳み骨格基体8を、上方または下方に回動操作すると、全ての折り畳み骨格基体8,8,……が、夫々の基端部8a,8bの重なり部分で連携し、連鎖的且つ強制的に回動される形となり、覆い部6が簡単に拡開され、迅速に対象となる果樹33の上を覆い尽くした状態を実現する。
【0034】
一方、折り畳み機構3を折り畳み、再び覆い部6を窄めた状態に移行する場合にも、折り畳み骨格基体8,8,……の基端部8a,8b同士の交差構造による連鎖構造が有効に作用し、一つの折り畳み骨格基体8を上方に持ち上げることにより、全ての折り畳み骨格基体8,8,……、および、これに一体に設けられた力骨体9,9,……が連動し、折り畳まれてコンパクト化された状態に簡単に戻すことができる。この作業は、実施例に示したものの場合、1人の作業者が力骨体9,9,……の折り畳み状態を保持し、別の作業者が縛紐11で覆い部6を縛付することによって実現するという、2人の作業員によって実施されるが、実施例2の覆い具で説明してあるとおり、操作杆27にストッパー等の姿勢固定手段を有するものの場合、そのストッパーを作動させて覆い部6を窄んだ状態にした上、同じ作業者が、上記のように縛紐11で縛ってしまうか、縛紐11に代えて仮固定用のリングを下方から押し上げて折り畳み状態が、風によって影響されてしまわないようにする。
なお、この操作杆27は、上方に移動することにより、力骨体26,26,……の基端部は滑動環25の上昇させ、折り畳み骨格基体24,24,……に中途が枢着、規制されている力骨体26,26,……は、その遊端部を降下させる方向に回動し、覆い部全体を略水平に近い状態にまで拡開状態とする作用も果たす。
【0035】
拡開されて果樹上方に被る状態とされた覆い部6は、力骨体9の先端に設けてある掛け輪9aに、夫々張綱29上端のフックを掛止して引き下げ、下端を地面に固定する(必要に応じて長さ調節金具29aでその長さを調整する)ことにより、力骨体9,9,……を撓らせ、その反発力で覆い部6全体に張りを持たせ、覆いシートを含む覆い部6全体のバタつきを阻止して設営強度を高めるるようにすると共に、略水平に近い状態になっている覆い部6の周辺遊端部分を下側に引き下げ、これにより、覆いシート28上に降り注いだ雨滴が速やかに周囲に流下してしまうようにし、覆いシート28上に水が溜まり、その重量によって覆い具へ負荷が掛かり、覆い具としての構造強度に支障を来すことがないようにすると共に、果樹33,33に対して吹き付ける側方からの風雨が、少しでも果樹へ掛からないように操作する。
【0036】
【効 果】
以上のように構成された果樹用覆い具によれば、何よりも先ず、従前から行われてきたビニールシート等の覆いシートを門型パイプフレームで架構した大掛かりな骨格体に添設して実現する雨避け設備のように、晴天時等、実際は屋根架けを不要とする場合にあってもそれらを簡単に撤去することを困難とし、また、薬剤散布や収穫作業等では、作業効率を著しく低下させる障害物とならしめてしまうといった弊害を一切払拭し、降雨時には拡開操作して迅速に屋根架けして確実に雨水を避け、晴天時には折り畳み機構を操作することによって屋根部分を折り畳んで陽射しが直接果樹に当るようにすると共に、果樹を熱気で蒸らして樹勢に影響が出てしまわないようするといった、果樹栽培の過程に応じた臨機応変な対応を可能として農作業の効率を高め、省力化を果たすことを可能にするという秀れた特徴を有している点が高く評価されなければならない。
【0037】
このような特徴は、この発明の果樹覆い具の連鎖的に拡開される折り畳み機構によって覆いシートの添設された力骨体を有する構造によって簡単、確実に実施されることが保証され、大型の覆い具であっても1人の作業員によって速やかに操作することを可能にすると共に、従前の固定的に設営された雨避け施設に比較して遥かに設備費用を軽減化することが可能になることとも相俟って、生産効率を高める上で大いにその威力が発揮されるものとなると予想される。
また、その構成から、設営場所の変更、新設が比較的容易になるため、単に果樹の覆い具としてだけではなく、果樹園内の適宜空き地に立設、設営して臨時の集荷場あるいは選果場のための覆い施設としたり、もぎ取り果樹園等では、観光客用の臨時の休憩施設等としての利用も簡単にできるものになるという多様性をも兼ね備えたものとなっている。
【0038】
更に、折り畳み、開閉自在な構成から、暴風対策も容易であり、従前までのもののように、暴風時であってもその前に簡単な撤去ができずに、止むを得ず暴風雨に晒してしまって施設そのものに大きな被害を被ってしまうような虞が極めて少なくなり、比較的簡素な構造でありながら長年に渡る使用が可能になると共に、保管、搬入等の取扱い時には、極めてコンパクトな全体を棒状資材として繰り返し使用が可能となり、しかも、力骨体の先端部分を張綱で簡単且つ最適な張り具合で固定でき、覆い具自体の構造強度の確保が容易であるため、通常状態における耐久性に富むと共に、雨水の吹き込みへの対策や水溜まりによる負荷の回避対策も極めて容易になること等も有利に作用し、その経済的効果は、従前までのものに比較にならないものとなっている。
【0039】
特に、実施例1のものでは、環体7の周囲に枢着された複数の折り畳み骨格基体8,8,……の一部を互いに重なり合う状態に配置し、1つの折り畳み骨格基体8を回動操作することにより、他の全ての折り畳み骨格基体8,8……が連鎖的且つ自動的な回動を可能とする最も実用的な構成からなるもので、上記したこの発明の特徴を遍く発揮できるものとなっており、また、実施例2の果樹用覆い具21は、力骨体26,26,……を開閉操作する摺動環25を支柱22に沿って延長された操作杆27によって操作可能とした開閉操作に秀れた代表的な構成からなるものであり、省力化を期待する果樹農家に対して大いに貢献するものになるものと予想される。
【0040】
叙上の如く、この発明の果樹覆い具は、主として果樹への雨水を避けるために必要とされる覆い具として構造的に比較的簡潔であって製造も容易であり、安価に提供することを可能にすると共に、資材としての搬入、保管や、覆い具としての操作性等といった取扱い性にも極めて秀れる上、果樹栽培過程に応じた迅速な操作性が保証されるものとなっていることから、果樹農家の省力化に大いに寄与して生産性の高い農家経営を可能にし、海外からの輸入果実製品との厳しい価格競争に対する一つの有効な対策手段になり得るものと予想される。
【図面の簡単な説明】
図面は、この発明の果樹覆い具の技術的思想を具現化した幾つかの代表的な実施例を示すものである。
【図 1】この発明の果樹覆い具の拡開状態を示す斜視図である。
【図 2】同上覆い具の折り畳まれた状態を示す斜視図である。
【図 3】同覆い部の折り畳み機構部を示す平面図である。
【図 4】他の例の果樹覆い具の折り畳まれた状態を示す正面図である。
【図 5】同上覆い具の拡開状態を示す正面図である.
【図 6】同覆い具に張綱を施した状態を示す斜視図である。
【図 7】同覆い具の操作杆の形状を示す斜視図である。
【図 8】従来の果樹への屋根架け施設を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 果樹覆い具
2 同 支柱
3 同 折り畳み機構部
4 同 骨格体
5 同 覆いシート
6 同 覆い部
7 同 基体用環体
8 同 折り畳み骨格基体
8a 同基体の一方の基端部
8b 同基体の他方の基端部
9 同 力骨体
11 同 縛 紐
21 他の例の果樹覆い具
22 同 支柱
23 同 折り畳み機構
24 同 折り畳み骨格基体
25 同 力骨体用環体(滑動環)
26 同 力骨体
27 同 操作杆
28 同 覆いシート
29 同 張綱
29a 同 長さ調節構造
30 同 ペグ
Claims (2)
- 地上に立設する支柱の上端に基体用環体を取着する一方、該基体用環体の周囲には、複数の折り畳み骨格基体が、放射状配置であって、略水平に近い状態から下方側に回動して略垂直に近い状態にまで移行し得る回動が自在となるよう夫々の基端部を枢着してあり、しかも、相互にその回動が連動する如くした構造で連接されるようにすると共に、これら折り畳み骨格基体の夫々の遊端部を、前記基体用環体よりも下方で支柱に嵌装された力骨体用環体から放射状に延びる力骨体の中途部に夫々回動自在に接続し、折り畳み骨格基体相互の連動した下方側への回動により、全ての力骨体が、夫々の遊端側を強制的に上方側に窄ませてしまう回動の可能なものとなし、それら力骨体には覆いシートを張設してなるものとしたことを特徴とする果樹覆い具。
- 地上に立設する支柱の上端に、略同心状且つ水平に基体用環体を取着する一方、該基体用環体の周囲には、夫々平面形で略U字状に屈曲形成された複数の折り畳み骨格基体が、放射状配置であって、略水平に近い状態から下方側に回動して略垂直に近い状態にまで移行し得る回動が自在となるよう夫々の両基端部を枢着してあって、且つ、夫々の両基端部側の中の決められた側の一方の基端部側を、決められた側で隣接するものの両基端部の中の他方の基端部側の表裏何れかの側に決められた関係で交差していくよう、互いが同一周回方向に決められた関係で重ね合わせられ、その中の1つを上下方向に回動することにより、重ね合わせ部分が連鎖的に隣接する他を同向きに連動させて全てを自動的に回動させてしまうようにして接続されると共に、これら折り畳み骨格基体の夫々の遊端部頂部を、前記基体用環体よりも下方で支柱に嵌装された力骨体用環体から放射状に延びる力骨体の中途部に夫々回動自在に接続し、折り畳み骨格基体相互の連動した下方側への回動により、全ての力骨体が、夫々の遊端側を強制的に上方側に窄ませてしまう回動の可能なものとなし、それら力骨体には覆いシートを張設してなるものとしたことを特徴とする果樹覆い具。
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